説明

巻線方法及び巻線装置

【課題】隣接する磁極の隙間が小さい場合でも、その隙間に線材を整列巻きすることができ、かつ巻線後の後工程を必要としない巻線方法を提供すること。
【解決手段】複数のティース4が放射状に配置されたステータ1に対してノズル9から繰出される線材2を巻線する巻線方法であって、ノズル9から繰出された線材2をガイド7,8にて保持し、ティース4に対して位置決めする位置決め工程と、ガイド7,8にて線材2を保持した状態で、ノズル9を隣接するティース4A,4Bの間を通すことなくステータ1に対して相対移動させ、ノズル9から繰出される線材2を隣接するティース4A,4Bの間に挿入する線材挿入工程とを備え、位置決め工程及び線材挿入工程によって線材2をティース4に対して導き巻線を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの磁極に線材を巻線する巻線方法及び巻線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステータの磁極に線材を巻線する方法として、線材を直接磁極に巻き付ける直巻方法と、予め巻枠等に巻線した後、巻線したコイルを磁極に挿入するインサート方式とがある。
【0003】
直巻方法は、線材を磁極に密着して巻線することができると共に、ノズルの移動によって容易に整列巻線が行えるため占積率を向上させることができる。したがって、近年のモータ等の性能向上の要求から、直巻方法が主流になっている。
【0004】
直巻方法によってステータの磁極に対して2相の巻線を行う場合には、1相目はステータの磁極に対して一つおきに巻線し、2相目は1相目が巻線された磁極の間の巻線されていない磁極に対して巻線する。
【0005】
直巻方法では、ノズルを隣接する磁極間のスロット内を移動させて巻線が行われるため、2相目の巻線を行う場合において、スロット内の対向する線材の隙間(1相目と2相目との隙間)がノズルの幅よりも小さくなると、それ以上巻線を行うことができない。
【0006】
そのため、従来は、隣接する磁極の隙間が小さくノズルが磁極間を通過するのが難しい場合には、フックを用いてノズルから線材を引き出し、引き出した線材を磁極間に導いた後に、線材をフックから外して磁極に巻落として巻線する方法が一般的であった(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】国際公開第2004/032311号パンフレット
【特許文献2】特開2002−199673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような方法では、巻落とした線材が緩み易く、整列に巻線することが難しいため、巻乱れが生じて占積率を向上させることができないという問題があった。
【0008】
そこで、フックを用いない方法としては、ステータを分割コアとし、予め各コアに巻線し、巻線された各コアをヨークに固定することによって占積率を高めるという方法もある。しかし、この方法では、巻線後にコア挿入工程や結線工程等の後工程を行う必要があり生産効率が悪い。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、隣接する磁極の隙間が小さい場合でも、その隙間に線材を整列巻きすることができ、かつ巻線後の後工程を必要としない巻線方法及び巻線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の磁極が放射状に配置されたステータに対して線材繰出し部材から繰出される線材を巻線する巻線方法であって、前記線材繰出し部材から繰出された線材をガイドにて保持し、磁極に対して位置決めする位置決め工程と、前記ガイドにて線材を保持した状態で、前記線材繰出し部材を隣接する磁極の間を通すことなく前記ステータに対して相対移動させ、前記線材繰出し部材から繰出される線材を隣接する磁極の間に挿入する線材挿入工程とを備え、前記位置決め工程及び前記線材挿入工程によって線材を磁極に対して導き巻線を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、隣接する磁極の隙間が小さく線材繰出し部材が磁極間を通過するのが難しい場合には、線材繰出し部材は、隣接する磁極の間を通ることなく、繰出される線材を隣接する磁極の間に挿入するように移動する。この線材繰出し部材の移動の際、線材はガイドによって位置決めされた状態を保持する。このように、線材繰出し部材が磁極間を通過するのが難しい場合でも、線材繰出し部材から繰出される線材は、磁極に対して導かれ整列巻きされる。また、本発明によれば、ステータの各磁極に対して直接線材を巻線することができるため、巻線後の後工程を必要とせず、効率良くステータを生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る巻線装置100の構成について説明する。図1は巻線装置100を示す斜視図であり、図2は巻線装置100の要部拡大斜視図である。
【0014】
なお、以下では、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が略鉛直方向として説明する。
【0015】
巻線装置100は、ステータ1に対して線材2を巻線する装置である。
【0016】
ステータ1は、環状のヨーク3と、ヨーク3の内周に配置されステータ1の中心に向かって放射状に延在するティース4(磁極)とを備えるインナーステータである。各ティース4の周囲には巻線装置100によって線材2が巻線され、隣接するティース4の間に形成されたスロット5に巻線が収容される。
【0017】
本実施の形態では、ティース4は断面が四角形に形成され、隣合うティース4に対峙する側面とヨーク3の内周面とでスロット5が構成される。また、各ティース4の先端面には鍔部4cが設けられ、鍔部4cによってティース4に巻線されるコイルの巻幅が規定される。
【0018】
巻線装置100は、ステータ1をその中心軸回りに回転させるインデックス機構10と、線材2を繰出すノズル9(線材繰出し部材)と、ノズル9を直交三軸方向に移動させるノズル移動機構11(線材繰出し部材移動機構)とを備える。巻線装置100は基台13上に載置される。
【0019】
インデックス機構10は、ステータ1を水平に支持する支持台6と、支持台6を回転駆動する駆動機構(図示省略)とを備える。ステータ1は、外周に形成されたキー溝1aに支持台6の内周に形成されたキー6aが嵌合することによって、支持台6の内周に支持される。
【0020】
支持台6は、基台13に形成された円形の開口部13aの内周に軸受(図示省略)を介して回転自在に配置される。
【0021】
これにより、駆動機構によって支持台6を回転駆動することによって、支持台6に支持されたステータ1は軸中心に回転する。
【0022】
ノズル移動機構11は、基台13上に立設する支柱14に支持されX軸方向に延在する一対のX軸移動機構11xと、一対のX軸移動機構11xの間に介装されY軸方向に延在するY軸移動機構11yと、Y軸移動機構11yに連結されZ軸方向に延在するZ軸移動機構11zとを備える。
【0023】
X軸移動機構11xは、支柱14に支持された一対の筐体15xと、筐体15xの端部に配置された駆動モータ16xと、駆動モータ16xの出力軸に連結されX軸方向に延在するボールねじ17xと、ボールねじ17xに螺合しボールねじ17xに沿って移動する従動子18xとを備える。
【0024】
Y軸移動機構11yは、両端部がX軸移動機構11xの一対の従動子18xに結合されボールねじ17xに沿って移動する筐体15yと、筐体15yの端部に配置された駆動モータ16yと、駆動モータ16yの出力軸に連結されY軸方向に延在するボールねじ17yと、ボールねじ17yに螺合しボールねじ17yに沿って移動する従動子18yとを備える。
【0025】
Z軸移動機構11zは、Y軸移動機構11yの従動子18yに結合されボールねじ17yに沿って移動する筐体15zと、筐体15zの端部に配置された駆動モータ16zと、駆動モータ16zの出力軸に連結されZ軸方向に延在するボールねじ17zと、ボールねじ17zに螺合しボールねじ17zに沿って移動する従動子18zとを備える。
【0026】
Z軸移動機構11zの従動子18zには、Z軸方向に延在する円筒状のノズル保持部材21が支持部材22を介して連結される。
【0027】
ノズル保持部材21の端部には、軸23を中心に揺動可能にノズル9が取り付けられる。したがって、ノズル9は、X軸移動機構11x、Y軸移動機構11y、及びZ軸移動機構11zを駆動することによって、直交3軸方向に自在に移動することができる。
【0028】
ノズル保持部材21の両端部には、それぞれ軸中心に回転する第1滑車24a,第2滑車24bが設けられる。線材供給装置(図示省略)から供給される線材2は、第1滑車24aに案内されてノズル保持部材21の中空部内に導かれると共に、第2滑車24bに案内されてノズル9へと導かれ、ノズル9の先端部から繰出される。なお、線材供給装置から供給される線材2には、テンション装置(図示省略)によって所定の張力が付与される。
【0029】
ノズル保持部材21の外周面にはエアシリンダ25が配置される。エアシリンダ25には圧縮空気によって進退するピストンロッド26が挿入され、ピストンロッド26の先端部はノズル9の後端部に連結される。
【0030】
これにより、エアシリンダ25を駆動することによって、ノズル9は軸23を中心に揺動する。このように、エアシリンダ25の動作を制御することによって、ノズル9の向きが変化し、ノズル9から繰出される線材2の角度を調節することができる。
【0031】
ノズル9は、ティース4間のスロット5を通過可能なように平板状に形成された部材であり、線材2はノズル9をY軸方向に挿通する。
【0032】
ティース4に対して線材2を巻線する場合には、インデックス機構10によってステータ1を回転させ、巻線対象である所望のティース4をノズル9に対峙させる。つまり、巻線を施したいティース4をノズル9と同軸上(Y軸上)に配置する。なお、以下では、ノズル9と同軸上に配置され巻線が施されるティースを「巻線対象ティース」と称する。
【0033】
そして、ノズル9は、繰出された線材2の先端部がチャック(図示省略)にて保持された状態で、ノズル移動機構11の駆動によって、線材2を繰出しながらティース4の周囲を周回すると共にティース4の巻軸方向(Y軸方向)に移動する。これにより、ティース4には線材2が多層に整列巻きされる。
【0034】
具体的には、X軸移動機構11x及びZ軸移動機構11zを駆動することによってノズル9をティース4の周囲を周回させる。また、ノズル9がティース4の周囲を1周する毎にY軸移動機構11yを駆動することによって、ノズル9をティース4の巻軸方向(Y軸方向)に線材2の線径分だけ移動させる。これを繰り返すことによって、ティース4には、先端側から根元側に向かって1層目の線材2が整列巻きされ、次いで、根元側から先端側に向かって2層目の線材2が整列巻きされ、順次同様にして所定の層数だけ線材2が整列巻きされる。
【0035】
ティース4に対する巻線は、UV2相や、UVW3相等の場合があり、例えば、UV2相の巻線を行う場合には、始めにU相をステータ1のティース4に対して一つおきに順次巻線する。次いで行われるV相の巻線は、U相が巻線されたティース4の間の巻線されていないティース4に対して行われる。このように、V相の巻線は、巻線対象ティース4の両隣りに、すでにU相が巻線された状態で行われる。このため、ノズル9をティース4の周囲を周回させV相の巻線を行う場合、層数が増えるに従って、次第にティース4に巻線された線材2の間隔、つまり、スロット5の幅が小さくなる。
【0036】
また、UVW3相の巻線を行う場合には、始めにU相をステータ1のティース4に対して二つおきに順次巻線する。次いで行われるV相の巻線は、巻線対象ティース4の片側に、すでにU相が巻線された状態で行われる。最後に行われるW相の巻線は、巻線対象ティース4の両隣りに、すでにU相、V相が巻線された状態で行われる。このため、ノズル9をティース4の周囲を周回させV相又はW相の巻線を行う場合、層数が増えるに従って、次第にティース4に巻線された線材2の間隔、つまり、スロット5の幅が小さくなる。
【0037】
スロット5の幅が小さい場合には、ノズル9のスロット5内の移動(Z軸方向への移動)が困難となる。そして、スロット5の幅がノズル9の幅よりも小さくなった場合には、ノズル9のスロット5内の移動は不可能となる。しかし、このような場合でも、スロット5の幅が線材2の直径よりも大きい場合には、線材2のみをスロット5内に挿入することは可能となる。
【0038】
そこで、巻線装置100は、ティース4に巻線された線材2の間隔が小さい場合でも、線材2をティース4に対して巻線するための機構を備える。以下に、その機構について説明する。
【0039】
巻線装置100は、巻線対象ティース4に対して巻線を行う過程で、ノズル9から繰出された線材2を保持すると共に、保持した線材2をティース4に対して位置決めする上部ガイド7及び下部ガイド8を備える。
【0040】
上部ガイド7は、巻線対象ティース4の外周面のうち、隣接するティース4に対峙しない表面4a(非対峙面)に対向して配置され、下部ガイド8は、表面4aの反対側の裏面4b(非対峙面)に対向して配置される。
【0041】
図2示すように、上部ガイド7は、線材2の巻線方向(X軸方向)に並んで配置された一対の上部左ガイド7A及び上部右ガイド7Bからなる。さらに、上部左ガイド7A及び上部右ガイド7Bのそれぞれは、巻線対象ティース4に巻線される線材2の巻線方向(X軸方向)と平行に配置された第1ガイド7aと、第1ガイド7aとの間に線材2の線径分の間隔をもって第1ガイド7aと平行に配置された第2ガイド7bとを備える。
【0042】
同様に、下部ガイド8も、線材2の巻線方向(X軸方向)に並んで配置された一対の下部左ガイド8A及び下部右ガイド8Bからなり、下部左ガイド8A及び下部右ガイド8Bも、それぞれ第1ガイド8aと第2ガイド8bとを備える。
【0043】
基台13上には、一対の上部左ガイド7A及び上部右ガイド7Bを、それぞれ直交三軸方向に移動させる一対のガイド移動機構12が配置される。
【0044】
ガイド移動機構12は、上部ガイド7を巻線対象ティース4の巻軸方向(Y軸方向)に移動させる巻軸方向移動機構12yと、上部ガイド7を巻線対象ティース4に巻線される線材2の巻線方向(X軸方向)に移動させる巻線方向移動機構12xと、上部ガイド7を巻線対象ティース4に対して接近離反方向(Z軸方向)に移動させる鉛直方向移動機構12zとを備える。
【0045】
巻軸方向移動機構12yは、基台13上に載置された載置台30に支持された筐体31yと、筐体31yの端部に配置された駆動モータ32yと、駆動モータ32yの出力軸に連結されY軸方向に延在するボールねじ33yと、ボールねじ33yに螺合しボールねじ33yに沿って移動する従動子34yとを備える。
【0046】
巻線方向移動機構12xは、巻軸方向移動機構12yの従動子34yに結合されボールねじ33yに沿って移動する筐体31xと、筐体31xの端部に配置された駆動モータ32xと、駆動モータ32xの出力軸に連結されX軸方向に延在するボールねじ33xと、ボールねじ33xに螺合しボールねじ33xに沿って移動する従動子34xとを備える。
【0047】
巻線方向移動機構12xの従動子34xには、X軸方向に延在するロッド35が結合され、ロッド35の先端にはL字型の支持体36が結合される。支持体36におけるX軸方向と直交する面36a及びY軸方向と直交する面36bには、鉛直方向移動機構12zが配置される。
【0048】
鉛直方向移動機構12zは、支持体36の面36a,36bのそれぞれに配置されZ軸方向に延在するガイドレール37a,37bと、ガイドレール37a,37bに案内されガイドレール37a,37bに沿って移動可能な移動体38a,38bとを備える。
【0049】
支持体36内にはエアシリンダ(図示省略)が収容される。エアシリンダには圧縮空気によって進退するピストンが挿入され、ピストンは移動体38a,38bに連結される。したがって、エアシリンダを駆動することによって、移動体38a,38bはガイドレール37a,37bに沿って移動する。
【0050】
移動体38aには第1ガイド7aが結合され、移動体38bには第2ガイド7bが結合される。したがって、第1ガイド7a及び第2ガイド7bは、巻軸方向移動機構12y、巻線方向移動機構12x、及び鉛直方向移動機構12zを駆動することによって、巻線対象ティース4の表面4aに対して直交3軸方向に自在に移動することができる。また、ガイド移動機構12は、一対の上部左ガイド7A及び上部右ガイド7Bのそれぞれに対して個別に設けられるため、一対の上部左ガイド7A及び上部右ガイド7Bは、それぞれ個別に巻線対象ティース4の表面4aに対して直交3軸方向に自在に移動することができる。
【0051】
なお、ガイド移動機構12は、下部ガイド8における一対の下部左ガイド8A及び下部右ガイド8Bのそれぞれに対しても個別に設けられる。
【0052】
次に、主に図3及び図4を参照して、上部ガイド7及び下部ガイド8を用いて線材2をティース4に対して巻線する方法について説明する。図3及び図4は巻線動作を時系列順に示した図である。なお、以下に示す巻線装置100の動作は、図1に示すコントローラ20によって自動制御される。
【0053】
まず、前述したように、インデックス機構10によってステータ1を回転させ、巻線対象ティース4をノズル9に対峙させる。そして、ノズル移動機構11を駆動することによって、ノズル9を巻線対象ティース4の周囲を周回させ、ノズル9から繰出される線材2を巻線対象ティース4に対して整列巻きする。つまり、ノズル9をスロット5内を通過させることによって巻線を行う。
【0054】
巻線対象ティース4に巻線される線材2の層数が増えるに従って、巻線対象ティース4に巻線された線材2と隣接するティース4A,4Bに巻線された線材2との間隔、つまり、スロット5の幅Wが小さくなる。そして、スロット5の幅Wがノズル9の幅よりも小さくなった場合には、ノズル9は、スロット5内を移動することが不可能となる。
【0055】
しかし、このような場合でも、スロット5の幅Wが線材2の直径よりも大きい場合には、線材2をスロット5内に挿入することが可能であり、巻線を続行することができる。以下では、スロット5の幅Wがノズル9の幅よりも小さくなった場合における巻線方法について説明する。
【0056】
図3(a)は、巻線対象ティース4に対して線材2をN層(Nは自然数)巻線した結果、スロット5の幅Wがノズル9の幅よりも小さくなった状態であり、かつ、巻線対象ティース4に対してN+1層目を巻始める直前の状態である。以下では、N層目における端部の線材2aとその隣りの線材2bとの間の溝51に線材2を巻線する場合について説明する。
【0057】
まず、N+1層目を巻始めるにあたって、図3(a)に示すように、ガイド移動機構12を駆動することによって、上部ガイド7における一対の第1ガイド7aを巻線対象ティース4に向けて接近させ、線材2の巻線方向(X軸方向)に並べて配置する。
【0058】
次に、図3(b)に示すように、ノズル移動機構11を駆動することによって、スロット5外に位置するノズル9を、巻線対象ティース4の表面4aに沿ってX軸方向に移動させ、ノズル9から繰出される線材2を一対の第1ガイド7aの表面に当接させる。これにより、ノズル9から繰出される線材2は、巻線対象ティース4の表面4aにおけるN層目上に導かれる。
【0059】
次に、図3(c)に示すように、ガイド移動機構12を駆動することによって、上部ガイド7における一対の第2ガイド7bを巻線対象ティース4に向けて接近させる。一対の第1ガイド7aと一対の第2ガイド7bとの対峙する面の間隔は、線材2の線径分であるため、ノズル9から繰出される線材2は、一対の第1ガイド7aと一対の第2ガイド7bとの対峙する面に挟持され保持される。また、上部ガイド7は、保持した線材2を巻線対象ティース4の表面4aにおけるN層目の線材2aと線材2bとの間の溝51に対峙した位置に位置決めする。このように、上部ガイド7は、線材2を保持すると共に、保持した線材2を巻線対象ティース4に対して位置決めする(位置決め工程)。
【0060】
以下では、巻線対象ティース4に対して線材2を巻線するにあたって、線材2が巻線されるべき位置を「巻線位置」と称する。図3及び図4に示す巻線方法では、N層目における線材間の溝51が「巻線位置」である。
【0061】
次に、図3(d)に示すように、ノズル移動機構11を駆動することによって、スロット5外に位置するノズル9を、スロット5におけるステータ1表面に開口する開口部5aに沿って巻線対象ティース4の巻軸方向(Y軸方向)に移動させ、巻線対象ティース4から遠ざける。なお、このとき、上部ガイド7は、線材2を保持した状態を維持するため、上部ガイド7にて保持された線材2は巻線位置に位置決めされた状態を保つ。
【0062】
次に、図3(e)に示すように、ノズル移動機構11を駆動することによって、スロット5外に位置するノズル9を、スロット5におけるステータ1内周に開口する開口部5bに沿ってステータ1の軸方向に移動させ、ノズル9から繰出される線材2をスロット5内に挿入する。このように、ノズル9は、スロット5内を通過することなく、繰出される線材2をスロット5内に挿入するように動作する(線材挿入工程)。なお、このとき、上部ガイド7は、線材2を保持した状態を維持するため、上部ガイド7にて保持された線材2は巻線位置に位置決めされた状態を保つ。
【0063】
次に、図4(a)に示すように、ノズル移動機構11を駆動することによって、スロット5外に位置するノズル9を、スロット5におけるステータ1裏面に開口する開口部5cに沿って巻線対象ティース4の巻軸方向(Y軸方向)に移動させる。そして、繰出される線材2が巻線対象ティース4の一側面(ティース4Bに対峙する面)におけるN層目の線材2aと線材2bとの間の溝51に対峙した状態で、ノズル9を停止させる。
【0064】
このように、上部ガイド7にて線材2を保持した状態で、ノズル9を、スロット5の各開口部5a,5b,5cに沿ってスロット5外を移動させ、繰出される線材2をスロット5内に挿入することによって、ノズル9から繰出される線材2を巻線対象ティース4の一側面の巻線位置に導くことができる。したがって、ノズル9がスロット5内を通過不能な場合でも、巻線対象ティース4に対して線材2を巻線することができる。
【0065】
ノズル9から繰出された線材2が巻線対象ティース4の一側面の巻線位置に導かれた状態で、図4(a)に示すように、上部ガイド7を巻線対象ティース4から離反させ、上部ガイド7による線材2の保持を解除する。また、これと同時に、下部ガイド8における一対の第1ガイド8aを巻線対象ティース4に向けて接近させ、線材2の巻線方向(X軸方向)に並べて配置する。
【0066】
次に、図4(b)に示すように、ノズル移動機構11を駆動することによって、スロット5外に位置するノズル9を、巻線対象ティース4の裏面4bに沿ってX軸方向に移動させ、ノズル9から繰出される線材2を一対の第1ガイド8aの表面に当接させる。これにより、ノズル9から繰出される線材2は、巻線対象ティース4の裏面4bにおけるN層目上に導かれる。また、このとき、上部ガイド7による保持が解除された線材2は、巻線対象ティース4の表面4aにおけるN層目の巻線位置に巻線されると共に、スロット5内に挿入された線材は、巻線対象ティース4の一側面におけるN層目の巻線位置に巻線される。なお、ノズル9のX軸方向への移動は、インデックス機構10を駆動し、ステータ1を軸中心に回転させることによって行ってもよい。
【0067】
次に、図4(c)に示すように、ガイド移動機構12を駆動することによって、下部ガイド8における一対の第2ガイド8bを巻線対象ティース4に向けて接近させる。これにより、ノズル9から繰出される線材2は、一対の第1ガイド8aと一対の第2ガイド8bとの対峙する面にて挟持して保持されると共に、巻線対象ティース4の裏面4bにおける巻線位置に対峙する位置に位置決めされる。
【0068】
次に、図4(d)〜図4(f)に示すように、下部ガイド8にて線材2を保持した状態で、ノズル9を、スロット5の各開口部5d,5e,5fに沿ってスロット5外を移動させ、繰出される線材2をスロット5内に挿入する。これにより、ノズル9から繰出される線材2は、巻線対象ティース4の他側面(ティース4Aに対峙する面)の巻線位置に導かれる。そして、図4(f)に示すように、下部ガイド8を巻線対象ティース4から離反させ、下部ガイド8による線材2の保持を解除する。
【0069】
以降は、線材2が巻線対象ティース4に対して1巻される毎に、ノズル9を巻線対象ティース4の巻軸方向(Y軸方向)に線材2の線径分だけ移動させると共に、上部ガイド7及び下部ガイド8もY軸方向に線材2の線径分だけ移動させる。そして、上記手順を繰り返すことによってN+1層目の巻線を行う。
【0070】
以上のようにして、ノズル9を巻線対象ティース4の周囲を周回させることによって、N層目上にN+1層目が整列巻きされる。
【0071】
N+1層目以降は、スロット5の幅Wが線材2の直径よりも小さくなった時点で巻線を終了する。
【0072】
なお、以上では、ノズル9を巻線対象ティース4の周囲を周回させることによって、巻線対象ティース4に対して線材2を巻線し、スロット5の幅Wがノズル9の幅よりも小さくなった場合に、上部ガイド7及び下部ガイド8を用いた巻線方法に変更するとして説明した。この巻線方法の変更は、巻線中、スロット5の幅Wをセンサ(検知器)によって常時測定し、コントローラ20にて、測定結果とノズル9の幅とを比較し、スロット5の幅Wがノズル9の幅よりも小さくなったと判定された場合に行われる。また、巻線を開始する前に、巻線対象ティース4と隣接するティース4A,4Bとの間隔、ノズル9の幅寸法、及び線材2の直径の各値をコントローラ20に入力し、コントローラ20は、各値からスロット5の幅Wがノズル9の幅よりも小さくなる線材2の層数を算出し、巻線対象ティース4に対する線材2の層数が前記算出値に到達した場合に、上部ガイド7及び下部ガイド8を用いた巻線方法に変更するようにしてもよい。
【0073】
以下に、図3及び図4を参照して説明した巻線方法の他の態様について説明する。
(1)線材2が巻線されていない状態で、隣合うティース4の間隔がノズル9の幅よりも小さいステータ1に対して巻線を行う場合には、1層目から上部ガイド7及び下部ガイド8を用いた巻線が行われる。
(2)以上の巻線方法では、ノズル9がスロット5内を通過不能となった場合には、ノズル9を、スロット5の各開口部5a,5b,5c(各開口部5d,5e,5f)に沿ってスロット5外を移動させ、繰出される線材2をスロット5内に挿入させた。これに代わり、ノズル9を移動させずに、ステータ1及び上部ガイド7、下部ガイド8を移動させることによって、ノズル9をスロット5の各開口部5a,5b,5c(各開口部5d,5e,5f)に沿って相対移動させ、ノズル9から繰出される線材2をスロット5内に挿入するようにしてもよい。
(3)以上の巻線方法では、上部ガイド7による線材2の保持の解除は、スロット5内に挿入された線材2が巻線対象ティース4の一側面の巻線位置に導かれた直後(図4(a)に示す状態)に行った。しかし、上部ガイド7による線材2の保持の解除は、スロット5内に挿入された線材2が巻線対象ティース4の一側面の巻線位置に導かれた直後から下部ガイド8が線材2の保持を解除するまでの間(図4(a)から図4(f)の間)であれば、どのタイミングにて行ってもよい。
(4)以上では、ヨーク3の内周にティース4が放射状に配置されるインナーステータに対して線材2を巻線する場合について説明した。しかし、ステータ1は、ヨーク3の外周にティース4が放射状に配置されるアウターステータであってもよい。この場合、ノズル移動機構11は、アウターステータの外周に配置される。
【0074】
次に、図5を参照して、巻線対象ティース4の表面4aにおけるN層目上に線材2を斜めに巻線する場合について説明する。
【0075】
まず、図5(a)に示すように、ガイド移動機構12を駆動することによって、上部ガイド7における一対の第1ガイド7aを巻線対象ティース4に向けて接近させ、巻軸方向(Y軸方向)にずらして配置する。一対の第1ガイド7aは、ガイド移動機構12によってそれぞれ別個に移動させることができるため、Y軸方向にずらして配置することができる。そして、ノズル移動機構11を駆動することによって、ノズル9をX軸方向に移動させた後、Y軸方向に移動させ、ノズル9から繰出される線材2を一対の第1ガイド7aの表面に当接させる。これにより、ノズル9から繰出される線材2は、巻線対象ティース4の表面4aにおけるN層目上に斜めに導かれる。
【0076】
次に、図5(b)に示すように、上部ガイド7における一対の第2ガイド7bを巻線対象ティース4に向けて接近させ、ノズル9から繰出される線材2を、一対の第1ガイド7aと一対の第2ガイド7bとの対峙する面にて挟持して保持すると共に、巻線対象ティース4の表面4aにおけるN層目上に斜めに位置決めする。
【0077】
上部ガイド7によって位置決めした後は、図3及び図4に示した巻線方法と同様に、図5(c)〜図5(e)に示すように、ノズル9を、スロット5の各開口部5a,5b,5cに沿ってスロット5外を移動させ、繰出される線材2をスロット5内に挿入する。これにより、ノズル9から繰出される線材2は、巻線対象ティース4の一側面(ティース4Bに対峙する面)の巻線位置に導かれる。
【0078】
次に、図5(e)に示すように、上部ガイド7を巻線対象ティース4から離反させ、上部ガイド7による線材2の保持を解除する。そして、ノズル移動機構11を駆動することによって、ノズル9をX軸方向に移動させ、線材2をN層目上に巻線する。
【0079】
以上のように、上部ガイド7における一対の上部左ガイド7A及び上部右ガイド7Bは、ガイド移動機構12によってそれぞれ別個に移動させることができるため、Y軸方向にずらして配置することができる。したがって、線材2を巻線対象ティース4に対して斜めに巻線することが可能となる。
【0080】
図5では、上部左ガイド7Aを巻線対象ティース4の先端側、上部右ガイド7Bを巻線対象ティース4の根元側に配置した状態で、ノズル9を時計回りに周回させて線材2を斜めに巻線する場合について示した。
【0081】
図6では、上部左ガイド7Aを巻線対象ティース4の根元側、上部右ガイド7Bを巻線対象ティース4の先端側に配置した状態で、ノズル9を時計回りに周回させて線材2を斜めに巻線する場合について示す。
【0082】
この場合には、図6に示すように、上部ガイド7の配置の順番を図5に示した場合と逆にする。つまり、図6(a)に示すように、最初に一対の第2ガイド7bを巻線対象ティース4に向けて接近させ、ノズル9から繰出される線材2を一対の第2ガイド7bの表面に当接させる。次に、図6(b)に示すように、一対の第1ガイド7aを巻線対象ティース4に向けて接近させ、一対の第1ガイド7aと一対の第2ガイド7bとの対峙する面にてノズル9から繰出される線材2を保持して位置決めする。
【0083】
このように、線材2を斜めに巻線する場合には、線材2の向き及びノズル9の回転方向に応じて、上部ガイド7の配置の順番が設定される。
【0084】
次に、図7を参照して、上部ガイド7及び下部ガイド8の形状について説明する。上部ガイド7及び下部ガイド8の形状は同じであるため、以下では、上部ガイド7についてのみ説明する。
【0085】
図7(a)に示すように、一対の第1ガイド7a及び一対の第2ガイド7bを、それぞれ一体に形成するようにしてもよい。このように上部ガイド7を構成することによって、ガイド移動機構12を簡便な構成にすることができる。
【0086】
また、図7(b)に示すように、上部左ガイド7Aにおける第1ガイド7aと第2ガイド7bを一体に形成すると共に、上部右ガイド7Bにおける第1ガイド7aと第2ガイド7bを一体に形成にしてもよい。この場合には、上部左ガイド7A及び上部右ガイド7Bのそれぞれの底面に線材2を保持する切欠部55が形成される。このように上部ガイド7を構成することによって、ガイド移動機構12を簡便な構成にすることができると共に、上部左ガイド7Aと上部右ガイド7Bとは別体に形成されるため、線材2を斜めに巻線する場合にも用いることができる。
【0087】
また、図7(c)に示すように、一対の第1ガイド7a及び一対の第2ガイド7bをそれぞれ一体に形成すると共に、上部左ガイド7Aと上部右ガイド7Bを一体に形成するようにしてもよい。この場合には、上部左ガイド7A及び上部右ガイド7Bのそれぞれの底面に線材2を保持する切欠部55が形成される。このように上部ガイド7を一体型に構成することによって、ガイド移動機構12をさらに簡便な構成にすることができる。
【0088】
次に、図8を参照して、図7(c)に示す一体型の上部ガイド7を用いて、線材2を巻線対象ティース4に対して巻線する方法について説明する。
【0089】
図8(a)は、ノズル9から繰出される線材2を、巻線対象ティース4に対して巻始める直前の状態を示す図である。
【0090】
まず、図8(b)に示すように、ノズル移動機構11を駆動することによって、スロット5外に位置するノズル9を、X軸方向に移動させて巻線対象ティース4から遠ざける。このようにして、ノズル9から線材2を引き出す。ノズル9から引き出す線材2の長さは、分割された上部ガイド7を用いた巻線方法の場合(図3(b)に示す状態)と比較して長くする。
【0091】
次に、図8(c)に示すように、ノズル移動機構11を駆動することによって、ノズル9をZ軸方向に移動させ、ノズル9から引き出された線材2を巻線対象ティース4の表面4a上の巻線位置に這わせる。そして、ガイド移動機構12を駆動することによって、上部ガイド7を巻線対象ティース4に向かって接近させ、切欠部55にて表面4a上に這わされた線材2を保持する。
【0092】
このように、一体型の上部ガイド7を用いて巻線を行う場合には、ノズル9から線材2を引き出し、巻線対象ティース4に対して這わした状態で、上部ガイド7にて線材2を保持する。つまり、ノズル9から繰出された線材2は、巻線対象ティース4の表面4aにおける巻線位置に巻線された状態で、上部ガイド7によって位置決めされる。
【0093】
図8(d)及び図8(e)に示す以降の手順は、前述した巻線方法と同様である。
【0094】
以上の本第1の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0095】
隣接するティース4の隙間、つまり、スロット5の幅Wがノズル9の幅よりも小さくなり、ノズル9がスロット5内を通過不能となった場合には、ノズル9は、スロット5内を通ることなく、繰出される線材2がスロット5内に挿入されるように移動する。このノズル9の移動の際、線材2は上部ガイド7,下部ガイド8によって巻線位置に位置決めされた状態を保持する。このように、ノズル9がスロット5内を通過不能となった場合でも、ノズル9から繰出される線材2は、ティース4に対して導かれ整列巻きされる。また、巻線装置100による巻線方法では、ステータ1の各ティース4に対して直接線材2を巻線することができるため、巻線後の後工程を必要とせず、効率良くステータ1を生産することができる。
【0096】
(第2の実施の形態)
図9を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る巻線装置200について説明する。図9は巻線装置200を示す断面図である。
【0097】
なお、以下の説明において、上記第1の実施の形態に用いた符号と同一の符号は、第1の実施の形態にて説明した部材と同一の部材を指すものとし、説明を省略する。
【0098】
本第2の実施の形態における上記第1の実施の形態との相違点は、ノズル9を移動させるノズル移動機構の構成が異なる点である。以下に、巻線装置200におけるノズル移動機構60(線材繰出し部材移動機構)について説明する。
【0099】
第1の実施の形態に係る巻線装置100におけるノズル移動機構11は、ノズル9を直交三軸方向に移動させることによって、巻線対象ティース4に対して線材2を巻線するものであった。これに対して、ノズル移動機構60は、ノズル9を巻線対象ティース4の巻軸を中心に回転させるノズル回転機構61と、ノズル9を巻線対象ティース4の巻軸方向に移動させる軸方向移動機構62とを備え、この二つの機構によって巻線対象ティース4に対して線材2を巻線する。
【0100】
ノズル回転機構61は、巻線対象ティース4の巻軸と同軸上に配置された円筒状のスピンドル63と、スピンドル63の端部に結合されたフライヤ64と、スピンドル63を軸中心に回転させるスピンドルモータ65とを備え、ノズル9は、フライヤ64の内周面にノズル支持部材66を介して支持される。
【0101】
スピンドルモータ65の出力軸は、プーリ67及びベルト68を介してスピンドル63に連結される。したがって、スピンドルモータ65を駆動することによって、ノズル9は、巻線対象ティース4の巻軸を中心に回転する。
【0102】
軸方向移動機構62は、スピンドル63の内周面にスプライン69を介して摺動自在に支持されたスライド軸70と、スライド軸70の端部に設けられスライド軸70の動きをノズル9に伝達するノズル駆動部71と、スライド軸70を巻線対象ティース4の巻軸方向に移動させる軸方向移動モータ72とを備える。
【0103】
軸方向移動モータ72の出力軸にはボールねじ73が結合され、ボールねじ73に螺合する従動子74はスライド軸70に軸受75を介して連結される。したがって、軸方向移動モータ72を駆動することによって、スライド軸70が巻線対象ティース4の巻軸方向に移動する。これにより、ノズル9は、ノズル駆動部71の作用によって、フライヤ64の内周面に沿って巻線対象ティース4の巻軸方向に移動する。
【0104】
ノズル移動機構60を用いて巻線を行う場合には、まず、ノズル回転機構61を駆動することによって、ノズル9を巻線対象ティース4の周囲を周回させると共に、1周する毎に軸方向移動機構62を駆動することによって、ノズル9を巻線対象ティース4の巻軸方向に線材2の線径分だけ移動させて巻線を行う。
【0105】
そして、スロット5の幅Wが小さくなり、ノズル9がスロット5内を通過不能となった場合には、上部ガイド7及び下部ガイド8を用いた巻線が行われる。
【0106】
具体的には、上記第1の実施の形態にて説明した図3及び図4に示す巻線方法において、図3(b)、図3(e)、図4(b)、及び図4(e)に示すノズル9の移動はノズル回転機構61を駆動することによって行われ、図3(d)、図4(a)、図4(d)、及び図4(f)に示すノズル9の巻線対象ティースの巻軸方向への移動は軸方向移動機構62を駆動することによって行われる。
【0107】
以上のように、本第2の実施の形態においても、スロット5の幅Wが小さくなり、ノズル9がスロット5内を通過不能となった場合に巻線を続行することができる。
【0108】
ただ、ノズル移動機構60を用いて巻線を行う場合、ノズル9は、ノズル回転機構61によって円形軌道を描いて動作するため、スロット5内を直線状に通過することができない。したがって、第1の実施の形態による巻線方法と比較して、ノズル9がスロット5内を通過不能となるスロット5の幅Wが大きく、上部ガイド7及び下部ガイド8を用いて巻線を行う時間が長くなる。
【0109】
そこで、ノズル9がスロット5内を直線状に通過することができるように、スピンドル63をステータ1の軸方向に移動させる機構、つまり、ノズル移動機構60全体を支持する基台77をステータ1の軸方向に移動させる機構を設けてもよい。このように構成することによって、上部ガイド7及び下部ガイド8を用いて巻線を行う時間が短くなり、作業効率が向上する。なお、基台77をステータ1の軸方向に移動させる機構に代えて、ステータ1を軸方向に移動させる機構を設けてもよい。
【0110】
本発明は、上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、ステータの磁極に線材を巻線する巻線方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る巻線装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る巻線装置を示す要部拡大斜視図である。
【図3】巻線方法を時系列順に示した図である。
【図4】巻線方法を時系列順に示した図である。
【図5】他の巻線方法を時系列順に示した図である。
【図6】他の巻線方法を時系列順に示した図である。
【図7】上部ガイドを示す斜視図である。
【図8】他の巻線方法を時系列順に示した図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る巻線装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0113】
100,200 巻線装置
1 ステータ
2 線材
3 ヨーク
4 ティース
4A,4B 巻線対象ティースに隣接するティース
5 スロット
5a〜5f スロットの開口部
7 上部ガイド
8 下部ガイド
9 ノズル
10 インデックス機構
11 ノズル移動機構
12 ガイド移動機構
21 ノズル保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁極が放射状に配置されたステータに対して線材繰出し部材から繰出される線材を巻線する巻線方法であって、
前記線材繰出し部材から繰出された線材をガイドにて保持し、磁極に対して位置決めする位置決め工程と、
前記ガイドにて線材を保持した状態で、前記線材繰出し部材を隣接する磁極の間を通すことなく前記ステータに対して相対移動させ、前記線材繰出し部材から繰出される線材を隣接する磁極の間に挿入する線材挿入工程と、を備え、
前記位置決め工程及び前記線材挿入工程によって線材を磁極に対して導き巻線を行うことを特徴とする巻線方法。
【請求項2】
前記線材繰出し部材を磁極の周囲を周回させることによって磁極に対して線材を巻線する過程にて、前記線材繰出し部材が隣接する磁極に巻線された線材との間を通過不能となった場合に、前記各工程を行って巻線することを特徴とする請求項1に記載の巻線方法。
【請求項3】
前記位置決め工程の位置決めは、巻線対象の磁極の外周面のうち、隣接する磁極に対峙しない非対峙面に対して行われ、
前記線材挿入工程は、前記線材繰出し部材を、隣接する磁極の間に形成されたスロットの開口部に沿って相対移動させることによって行われる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の巻線方法。
【請求項4】
前記ガイドは、巻線対象の磁極の外周面のうち、隣接する磁極に対峙しない非対峙面に対向して配置され、
線材が巻線対象の磁極に対して1巻きされる毎に、前記ガイドを前記巻線対象の磁極の巻軸方向に線材の線径分だけ移動させ、巻線対象の磁極に対する線材の整列巻きを行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の巻線方法。
【請求項5】
前記ガイドは、
前記巻線対象の磁極に巻線される線材の巻線方向と平行に配置された第1ガイドと、
当該第1ガイドとの間に線材の線径分の間隔をもって配置された第2ガイドと、を備え、
前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間にて線材を保持することを特徴とする請求項4に記載の巻線方法。
【請求項6】
前記第1ガイド及び前記第2ガイドは、それぞれ前記非対峙面に対向して一対配置されることを特徴とする請求項5に記載の巻線方法。
【請求項7】
前記位置決め工程は、
前記線材繰出し部材から繰出された線材を、前記巻線対象の磁極に対向して配置された前記第1ガイドに当接させ磁極上に導く工程と、
前記第2ガイドを磁極に対して接近させ、前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間にて線材を保持すると共に、保持した線材を磁極に対して位置決めする工程と、
を備えることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の巻線方法。
【請求項8】
前記ガイドは、線材を保持する切欠部を有することを特徴とする請求項4に記載の巻線方法。
【請求項9】
複数の磁極が放射状に配置されたステータに対して線材繰出し部材から繰出される線材を巻線する巻線装置であって、
前記線材繰出し部材を前記ステータに対して相対移動させる線材繰出し部材移動機構と、
前記線材繰出し部材から繰出された線材を保持し、磁極に対して位置決めするガイドと、を備え、
前記線材繰出し部材から繰出される線材を隣接する磁極の間に導くには、前記ガイドにて線材を保持した状態で、前記線材繰出し部材を隣接する磁極の間を通すことなく前記ステータに対して相対移動させ、前記線材繰出し部材から繰出される線材を隣接する磁極の間に挿入することを特徴とする巻線装置。
【請求項10】
前記線材繰出し部材から繰出される線材を隣接する磁極の間に導くには、前記ガイドにて線材を保持した状態で、前記線材繰出し部材を、隣接する磁極の間に形成されたスロットの開口部に沿って相対移動させることを特徴とする請求項9に記載の巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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