説明

巻返機の停電における張力制御方法

【課題】 停電や電圧低下で糸弛みや糸切れなく停止させるビーム巻返機の制動方法を提供する。
【解決手段】 巻返機はビームスタンドの張力と巻取張力の制御を必要とし、スタンドはパウダーブレーキで制御する。巻取機の駆動はインバータモータやサーボモータで行い、巻取張力はスタンドの張力をティークアップロールで増減して調整する。パウダーブレーキの電流は比較的小さく小型の無停電電源装置が使用できる。ティークアップロールと巻取用のモータ電源は大きな容量が必要なのでフリーランの状態にして常状態の約半分の減速時間で停止させる。セクションビーム側もこれと同期して停止させる減速補償電圧を与え、スタンド部分の張力と巻取張力を確保する。糸張力でセクションビームの惰性回転による糸の乱を防ぐためパウダーブレーキの電圧を漸減して少し糸弛みを与えて停止させる。巻取側にはワンウェィークラッチが入れてあり巻取ビームは逆転しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビームスタンドの張力制御にパウダーブレーキを使用した巻返機の張力制御方法の改良技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、パウダーブレーキを使用した巻返機においては、停電したとき、制御装置の電圧からバッテリーの電圧に切り替えてビームスタンドの糸ゆるみを防止していた。しかし一定電圧のためセクションビーム径の変化に対応できず、過張力や糸ゆるみが発生していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
繊維機械を日本国内で使用するときは、商用電源に異常がなく、有っても年1度程度で、とりあえず機械が停止すればよかった。しかし繊維機械の輸出が多くなり、停電や電圧低下が頻繁に発生するところで使用されるようになり、停電や電圧低下でも普通の停止状態が求められるようになった。巻返機においても糸ゆるみや過張力が発生しないで停止することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明ではパウダーブレーキ部分の電気容量は比較的小さく、巻き取りビームのモータ容量は大おきいが一般的に、逆転防止用のワンウェィークラッチが付けてあることに着目して、パウダーブレーキの電圧とその制御電圧を無停電電源装置により供給し、ティクアップ用モータと巻き取りモータは惰性運転で張力を確保する方法を発明した。
【0005】
無停電電源装置を商用電源に接続して電力を確保してこの電圧で巻返機の制御回路とパウダーブレーキの制御電圧に使用する。ティクアップモータと巻き取りモータの電源は直接商用電源に接続される。停電が発生して、停電検出器が動作すると制御装置に停電停止の信号が出て、定常状態とは異なる減速補償電圧をパウダーブレーキに与える。ティクアップモータと巻き取りモータは停電で電圧が無くなると、フリーランとなり、惰性で回転を継続する。
【0006】
このときモータトルクは発生しないので定常の停止時間より短い時間で巻き取り部分は停止する。このため、ビームスタンドに設置されているビームの回転エネルギーを定常より早く吸収するため、パウダーブレーキに定常状態より高い電圧を与える必要がある。
【発明の効果】
【0007】
停電や電圧降下で機械の運転ができなくなっても、従来の機械停止に近い張力制御を行いながら機械停止が可能になり、織物品質の低下がなくなった。又このとき糸ゆるみや糸乱れが無くなり作業効率の低下を防止できた。無停電電源装置はパソコン用の比較的小型で安価な物が使用可能でコスト的にも問題がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は巻返機の側面図である。ビームスタンド部分12に設置されたセクションビーム4、セクションビーム5,セクションビーム6はパウダーブレーキPB1,パウダーブレーキPB2、パウダーブレーキPB3に機械的にギァーで連結されている。各セクションビームには約1000本から1500本のたて糸が巻かれている。図面の都合でセクションビームの数を3本にしてあるが一般的には数本から10本程度が仕掛けられる。
【0009】
たて糸7はプッシングロール2、ティークアップロール3,を通って巻き取りビーム1に巻き取られる。ティークアップロール3にはサーボモータM2が機械的に連結されており、各セクションビームの張力の合計値、すなわちビームスタンド張力をプラス、又はマイナスして巻き取り張力にしている。巻き取りビーム1には巻き取りモータM1が機械的に連結されており、巻き取り速度を制御されている。図示していないが巻き取り部分には機械停止時、糸張力で巻き取りビーム1が逆転しないようにワンウエークラッチが付いている。
【0010】
図2は機械停止時のパウダーブレーキ減速補償電圧が普通運転停止と停電停止で異なり、又停電停止では減速補償電圧を徐々に0Vにすることを示している。これは停電のとき、無停電電源装置がバッテリーにより電源を供給しているため、この消耗を防止するため、電源を一定時間後に切る必要がある。このとき一度に電圧を0Vにすると、パウダーブレーキのトルクが急に無くなり、たて糸の張力でセクションビームが何回も回転して糸が乱れる。これを少し糸がゆるんだ状態にして停止しておくために電圧を徐々に0Vまで下げる。
【0011】
図3は制御回路のブロック図である。商用電源からドライバD1、ドライバD2に電圧が供給される。又無停電電源装置8にも電圧が与えられる。停電検出器10は商用電源の電圧を監視しており、停電又は一定の電圧降下があると、停電信号を制御装置9に出力する。無停電電源装置8は停電又は一定の電圧降下があると、内部にあるバッテリーに自動的に電源を切り替えて、制御装置に電圧を出しつづける。
【0012】
制御装置9は停電検出信号を受けると、パウダーブレーキ用制御装置11を普通の制御状態から、停電停止用の減速補償電圧を出すように指令する。パウダーブレーキ用制御装置11にはセクションビーム4からセクションビーム6までの巻き径データが有り、これに適した減速補償電圧がパウダーブレーキPB1、パウダーブレーキPB2、パウダーブレーキPB3に供給される。このようにパウダーブレーキの巻き径に対応した減速補償電圧により、たて糸7の張力が確保される。
【0013】
巻き取りビーム1の回転は商用電源が無くなると、ドライバD1の直流回路に接続されたコンデンサーの電圧で駆動されるが、この電圧は1秒程度でなくなり、制御装置9からのコントロール信号を受けてもフリーランの状態となる。巻き取りビーム1の巻き取り張力はこのビームスタンドのたて糸7の張力に、巻き取りビーム1と同じようにフリーランの状態になる、プッシングロール2、ティークアップロール3、サーボモータM2を減速する、慣性エネルギーによる張力が低下した、巻き取り張力となる。このため少し慣性補償電圧を高めに設定して、ビームスタンドのたて糸7の張力を高めにして、巻き取り張力を確保するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
送り出し側の制御パワーが小さく、巻き取り側の制御パワーが大きい機械で、停電対策を比較的安い価格で構成するものに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】巻返機の側面図である。
【図2】パウダーブレーキ電圧カーブ図である。
【図3】制御回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0016】
1 巻き取りビーム
2 プッシングロール
3 ティークアップロール
4 セクションビーム
5 セクションビーム
6 セクションビーム
7 たて糸
8 無停電電源装置
9 制御装置
10 停電検出器
11 パウダーブレーキ用制御装置
12 ビームスタンド部分
M1 巻き取りモータ
M2 サーボモータ
PB1 パウダーブレーキ
PB2 パウダーブレーキ
PB3 パウダーブレーキ
D1 ドライバ
D2 ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームスタンドの張力制御にパウダーブレーキを使用した巻返機において、停電検出器が動作したとき、パウダーブレーキの減速補償電圧を定常の減速補償電圧より高くする方法。
【請求項2】
請求項1において、機械停止後パウダーブレーキの電圧を徐々に0vにする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−77366(P2006−77366A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263263(P2004−263263)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(300072266)有限会社エィブィアール (8)
【Fターム(参考)】