説明

布の耐久性処理

布に性能増強特性を与える組成物であって、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとの間の複合体を含む組成物が開示され、ここで、このアニオン性ポリマーもしくはカチオン性ポリマーは、布にこの性能増強特性を与えることが可能である官能基を含む。この性能増強特性は、耐久性であり、そして多くの家庭での洗濯に耐え得る。さらに、ポリ電解物複合体を布に適用し、布に持続性の性能増強特性を与えるための方法が、開示される。耐久性の性能増強コーティングを有する布が記載され、このコーティングは、ポリ電解物から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/591,296号(2004年7月27日出願)および米国仮特許出願第60/624,875号(2004年11月3日出願)の優先権を主張し、この両出願は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
(分野)
本明細書中で記載される組成物および方法は、布(fabric)についての性能増強処理の分野内にあり、より具体的には、耐久性コーティング組成物およびこのような組成物を布(繊維、不織布、皮革、フィルムおよびプラスチックを含む)に適用する方法に対する。処理された布は、非工業適用(例えば、衣料品、履物、生地、カーテン、寝具、家具装飾、屋外用布(例えば、傘、日よけ、テントなど)、カーペットおよびラグ)に特に有用である。処理された布はまた、自動車内装および工業織物にも有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
(背景)
表面コーティングを適用することによって、繊維および布に性能増強特性を与えることが、しばしば望ましい。特性の例としては、帯電防止特性、よごれ耐性特性、防汚特性、撥水性もしくは撥油性または耐性(例えば、油もしくは水に対する)、吸湿特性、抗菌特性および難燃性が挙げられる。しかし、このような性能増強コーティングは、代表的に、耐久性ではない。すなわち、これらは、洗濯後、洗浄後あるいは水、油もしくは汚染物質または機械的ストレス(例えば、引き伸ばしもしくは磨耗)への曝露後に、その効力を失う。
【0004】
撥水性の織物(textile)を作製するための方法が、開発されている。撥水性布は、一般に、通気孔を有し、そして空気および水蒸気に対し透過性である。撥水性布を製造するための製品化プロセスは、成層プロセスおよびポリシロキサンコーティングに基づく。1つの成層プロセスは、ポリマー性材料(例えば、微小孔を作るために伸展されているTEFLON(登録商標)フルオロポリマー)の層を布に接着する工程を包含する。このプロセスは、耐久性の撥水性フィルムを産生し得るが、このプロセスは、高価で、特別な製造設備を要し、そして布とポリマー性フィルムとの間の不適合性もしくは縮みに起因する他の問題の、不都合を有する。ポリシロキサンコーティングは、家庭での洗濯に対して低い耐久性を有する。
【0005】
布(例えば、綿)は、物理吸着性(physi−sorptive)もしくは化学吸着性(chemi−sorptive)のプロセスを使用して付着する疎水性ポリマーフィルムもしくは疎水性モノマーを使用することによって、疎水性特性を与えられている。この目的のために使用されているモノマー性炭化水素疎水基を使用する撥水剤は、アルミニウムおよびジルコニウムの石鹸、蝋、QUILON(登録商標)クロム金属複合体、ピリジニウム化合物、メチロール化合物、および他の繊維反応性撥水剤を含む。しかし、布に非共有結合した石鹸および蝋は、強いコーティングを形成せず、洗浄もしくはドライクリーニングの際に崩壊する。また、重合体化してCr−O−Cr結合を形成し得、かつ繊維の表面に共有結合を形成して撥水性半耐久性コーティングを形成し得るので、QUILON(登録商標)クロム複合体が、使用されている。しかし、QUILON(登録商標)複合体は、反応するために酸性条件を必要とし、この条件は、繊維をセルロース加水分解を介して崩壊させ得る。強い酸性条件もしくは強い塩基性条件、または長時間の高温硬化時間(布もしくは繊維を損傷し得る)を要する他の方法は、従って、その適用を制限する。なお他の方法は、毒性成分もしくは毒性副生成物を含む。
【0006】
撥水特性および撥油特性を与えるための、繊維性基材のフルオロケミカル組成物による処理が、公知である。一般に、撥水性および撥油性を直接与えることができるペルフルオロアルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマー、処理される材料の表面に接着可能であるフッ素非含有モノマー、ならびに、自己架橋するかもしくは処理される材料の表面上の反応基と反応することによって耐久性を与えることが可能なモノマーを含むコポリマーが、使用される。代表的なポリマーは、主鎖と結合しているN−メチロール基を有するコポリマー(例えば、ペルフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートとN−メチロールアクリルアミド−ベースのコポリマーとのコポリマー)である。
【0007】
不溶性金属複合体は、フッ化化合物を織物に永久的に付着させて、撥油性および発水性、ならびに防汚性を織物に与えるために使用されている。しかし、これらの方法は、イソプロパノールおよび四塩化炭素のような溶媒の使用を必要とし得、これらの溶媒は経済的および環境的理由のために好ましくない。他の方法は、水溶性フルオロポリマー/金属複合体の使用を包含し、この複合体は、フッ化複合体を基材表面上に沈殿させる。しかし、基材への弱い結合に起因して、耐久性は低い。別の方法は、他の酸含有モノマーからなるブロックコポリマーの使用を包含し、このブロックコポリマーは、羊毛もしくは他の繊維性基材と金属およびフッ化モノマーとを結合させることが可能である。このような方法は、特許文献1(本明細書中で参考として援用される)に記載される。
【0008】
フルオロポリマーを、撥水性および撥油性を繊維性基材に与える無水物官能基もしくは無水物官能基を形成することが可能である官能基を有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーから調製されたタッキング(tacking)ポリマーと共に使用することもまた、公知である。このような系の例は、特許文献2(本明細書中で参考として援用される)において記載される。特許文献2において、タッキングポリマー上の反応基は、硬化工程の間の共有結合によって繊維性材料と反応すると考えられる。
【0009】
チオール基、ヒドロキシル基およびカルボン酸基のような官能基を有する基材を、この基材と共有結合可能であるか、またはこの基材と多官能性ポリマーとの間の水素結合、ファンデルワールス相互作用、イオン性相互作用、もしくは他の非共有性相互作用を介してこの基質と結合可能である結合性官能基を含む多官能性ポリマーでコートすることが、特許文献3および特許文献4(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。この多官能性ポリマーは、疎水性基、親水性基もしくは疎油性基を含み得る。コーティングされた基材は、改善された特性を有する。この特性は、例えば、耐水性、撥水性、撥油性、耐久プレス特性、および速乾性である。この多官能性ポリマーは、疎水性領域および親水性領域を含み得、それにより、コーティングの際、このポリマーは、親水性領域が基材と共有結合性結合もしくは非共有結合性結合のどちらかで結合し得、そして疎水性領域は基材から背くように配置されて、コーティングされた基材に疎水性特性を提供するような、構造をとり得る。
【0010】
ポリ電解物は、高分子量のイオン性ポリマーであり、その溶液は、導電性が高い。ポリ電解物複合体は、反対に帯電したポリ電解物の溶液を混合することによって形成され得る。反対に帯電したポリマーは、ポリ電解物間の静電的相互作用に起因して、比較的不溶性である複合体を形成する。さらに、ポリ電解物層の積層(layer−by−layer:LbL)沈着によって作製された薄いポリマー性フィルムは、材料の表面特性を改変するために使用されている。LbLフィルムが堆積していく間、帯電した基材は、正に帯電したポリ電解物の溶液と不に正に帯電したポリ電解物の溶液との間を往復して浸漬され、各浸漬工程の間に洗浄工程が行われる。浸漬工程の間、ポリ電解物は、表面上に吸着され、そして表面電荷はそれによって交互になり、ポリカチオン−ポリアニオン層を構築する。ポリ電解物層は、自己構成化可能であり、ここで、層構築を支える原動力には、反対に帯電した層の間の静電的相互作用が含まれる。静電的相互作用を使用して多層を形成することは、特に有利である。何故なら、静電的相互作用は、化学結合と同じ立体制限を有さないからである。このようなプロセスは、非特許文献1および特許文献5(これらは、本明細書中で参考として援用される)に記載される。LbLコーティングの利点としては、対象を絶縁保護コーティングするその能力、およびその水ベースの加工の使用が挙げられる。ポリ電解物は、気体、液体、分子およびイオンのための、調整可能な透過性を有するろ過障壁として(例えば、イオン交換のためのろ過膜として)機能し得る。さらに、ポリ電解物は、電池の電極、金属の対象の耐食コーティング、薄いオプティカルコーティング、および電気的用途のための帯電防止コーティングに使用されている。
【0011】
合成ポリマー性繊維および合成ポリマー性布は、長時間にわたって静電気を帯びる傾向を有する。静電気蓄積は、迅速に起こり得、そして放電は非常に遅い(何時間もかかるかそれ以上かかる)。この特性は、製造の間の取扱い上の問題、衣料品の着心地の悪さ、および衣料品およびカーペットなどからの電気的ショックを起こし得る。さらに、帯電した材料は、塵、埃および屑を誘引し得る。従って、帯電した合成布および合成繊維は、静電気の放電によって利益を受け得る。
【0012】
布の静電気を放電するために、多くの方法が提唱されている。このような方法の例としては、布表面上への帯電防止剤の適用が挙げられる。帯電防止剤は、広範な範囲の化学的クラスを網羅する。これらの化学的クラスとしては、有機アミンおよび有機アミド、脂肪酸のエステル、有機酸、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ水素(polyhydridic)アルコール、金属、カーボンブラック、半導体ならびに種々の有機塩および無機塩が挙げられる。多くは、また、界面活性でもあり、天然もしくはイオン性であり得る。しかし、このような薬剤は、その水溶性に起因して耐久性を欠くことが証明されている。帯電防止特性は、代表的に、洗浄もしくは清浄化の間に失われるか、または機械的損傷によって失われる。また、ポリマー性基材を形成する間にポリマー性基材中に直接組み込まれ、同時に繊維の紡ぎ能力および構造の質の維持を企図する帯電防止剤も、提唱されている。
【0013】
合成繊維における静電気の蓄積およびその遅い放電は、完成したポリマー性布が、所望の様式で裁断され、そして着用されることを妨げ得る。高い静電気感受性を有する繊維は、しばしば、製造および加工の間に織物機械装置中のガイドおよびロールにくっつき、結果として、最終産物を損傷し得かつ弱め得、最終産物の質の低下を生じる。これらの理由のために、ならびに布(例えば、衣料品、家具装飾、靴下、ラグ、寝具、カーテンおよび生地)のエンドユーザーが静電気の蓄積および維持の傾向を低減することによって利益を受け得るので、永久的帯電防止性組成物が布に適用されることが、必要とされる。
【0014】
現在、合成ポリマー性繊維の商業用生産において、紡がれたままのフィラメントは、代表的に、その帯電特性および取扱適性を改善するために何らかの処理を受ける。この処理は、通常、束の形態であるフィラメントを浴(bath)に通すか、またはコーティングされた車輪の上を通して、仕上げ液剤(finishing liquid)の処理を行う工程からなる。このようにして適用される仕上げは、コーティングであり、そして永久的な性質の仕上げではない。繊維表面上の(全てではないが)ほとんどの帯電防止剤は、機械的な取扱い、加熱、洗浄、スカーリングおよび染色によるその後のフィラメントの処理において、失われる。最終的な最終産物が産生されるまで帯電防止剤が繊維上に残る場合、しばしば、この帯電防止剤は、この最終産物が一定期間使用される間に、特に多くの洗浄操作もしくはドライクリーニング操作の後に、有効性を低下させる。
【0015】
過去において、より永久的なコーティングの適用によって永久的な帯電防止性ポリマー性繊維および製品を産生する努力がなされてきた。しかし、厳しい仕上げ処理に起因して、このコーティングは、除去されるか、そして/または適切に実施され損なう。帯電防止型のコモノマーを直接塩基性ポリマー材料中に組み込む試みもまた、なされてきた。これらの方法は、得られるざらざらの繊維表面、または所望の繊維物理的特性の犠牲のような、種々の理由のために不首尾であることが証明されてきた。
【0016】
耐久性の帯電防止材料を達成するための別の方法は、導電性繊維を合成織物中に織り込むことである。しかし、この繊維は、布のいたるところにしわ(streak)を示す傾向があり、このことは望ましくない。さらに、繊維は破損することによってその導電性を失うことがあり、導電性繊維は、帯電防止仕上げよりずっと高い費用がかかることがある。
【0017】
帯電防止性組成物はまた、(例えば、自動車用製品において)静電気的に適用されるコーティングに対するプラスチック表面の受容性を増強するためにも使用される。この適用において、水性すすぎ液もしくは洗浄液に対して曝露された際に、この帯電防止組成物が、除去に抵抗することもまた、望ましい。
【特許文献1】米国特許第6,855,772号明細書
【特許文献2】米国特許第6,472,476号明細書
【特許文献3】米国特許第6,617,267号明細書
【特許文献4】米国特許第6,379,753号明細書
【特許文献5】米国特許第5,208,111号明細書
【非特許文献1】Decher,Science,第277巻,1997年8月29日,p.1232−1237
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、種々の布を改変し、その性質を変え、異なる用途における使用のために最適化するための、方法および組成物についての需要が存在する。特に、性能特性を耐久性に改善するための方法および組成物についての需要が存在する。これらの性能特性としては、天然の材料もしくは繊維、人工の材料もしくは繊維、および/または合成の材料もしくは繊維を含む種々の布の、帯電防止性、撥油性、撥水性、耐油性、耐水性、疎水性、親水性、難燃性、防汚性、抗菌性、難燃性、速乾性、しわ回復性、温度調節およびUV耐性が挙げられるが、これらに限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(要旨)
布のための耐久性性能増強コーティングを産生するための組成物、および布に耐久性性能増強コーティングを適用するための方法が、本明細書中で記載される。一般に、本明細書中に記載される処理された布は、非工業適用(例えば、着用可能な衣料品および履物、カーテン、生地、寝具、家具装飾、屋外用布(例えば、傘、日よけ、テントなど)、カーペットおよびラグ)において有用である。処理された布はまた、自動車内装および工業織物にも有用であり得る。
【0020】
「布」としては、合成繊維、人工繊維および天然繊維またはこれらの組み合わせもしくは混紡が挙げられ、完成製品、ヤーン、クロスが挙げられ、そして織られていても織られていなくてもよく、編まれるか、房飾りが付けられるか、縫い合わせるなどされていてもよい。布はまた、革、不織布、プラスチック、フィルムなどをも含む。布には、粒子状充填材、結合剤およびサイズのような非線維性成分が含まれ得る。合成繊維もしくは合成の布は、任意の所望の組成であり得るこのようなフィラメントおよび/もしくは繊維を含む、連続した単層もしくは不連続の単層、マルチフィラメント、スフおよびヤーンの形状で、合成繊維を含み得る。天然繊維および天然の布の例としては、綿、羊毛、絹、黄麻およびリネンを含む。人工繊維および人工の布の例としては、再生セルロース、レーヨン、酢酸セルロースおよび再生タンパク質が挙げられる。合成繊維の例としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリプロピレンテレフタレート)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、アクリルポリマーおよびアクリルコポリマー、オレフィンポリマーおよびオレフィンコポリマー、アラミドポリマーおよびアラミドコポリマー、アズロンポリマーおよびアズロンコポリマー、モダクリルポリマーおよびモダクリルコポリマー、ノボロイド(novoloid)ポリマーおよびノボロイドコポリマー、ニトリルポリマーおよびニトリルコポリマー、アラミドポリマーおよびアラミドコポリマー、スパンデックスポリマーおよびスパンデックスコポリマー、ビニルポリマーおよびビニルコポリマー、バイナル、ビニヨン、ビニロン、Nomex(登録商標)ポリマー(DuPont)ならびにKevlar(登録商標)ポリマー(DuPont)が挙げられる。
【0021】
繊維または布の「性能増強」特性もしくは「性能増強」特徴としては、帯電防止性、撥水性および/または撥油性、耐水性および/または耐油性、疎水性、親水性、よごれ耐性、防汚性、水分運搬性(moisture wicking)、しわ耐性、しわ回復性、抗菌性、難燃性、温度調節、紫外線(UV)耐性およびこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
耐久性性能増強特性とは、洗浄後(例えば、この布の少なくとも約10回の家庭洗濯(home laundering)の後、少なくとも約25回の家庭洗濯の後、少なくとも約30回の家庭洗濯の後、少なくとも約40回の家庭での洗濯の後、または少なくとも約50回の家庭での洗濯の後)も持続する、布の特性もしくは特徴をいう。この性能増強特性は、洗浄(例えば、家庭での洗濯)後には最初のレベルから変化し得るが、これらは、特定の回数の家庭での洗濯、工業洗濯、ドライクリーニングまたは任意の他の洗浄法(例えば、カーペットのスチームクリーニング)の後も持続する(すなわち、最小限受容可能なレベルより上に保たれる)。
【0023】
1つの局面において、布に性能増強特性を与える組成物が提供され、ここで、この組成物は、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとの間の複合体を含有する。このアニオン性ポリマーまたはカチオン性ポリマーのいずれかは、布に性能増強特性を与えることができる官能基を有する。いくつかのバリエーションにおいて、この複合体は、このアニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーのうちの1つを、布の表面の少なくとも一部分に付着させる最初の工程、ならびに、このアニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーの他方を布に適用するその後の工程によって形成される。このアニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーのうち最後に適用したポリマーは、上記官能基を含む。いくつかのバリエーションにおいて、上記複合体は、上記カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーを溶液中で最初に混合することによって形成される。いくつかのバリエーションにおいて、上記カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーは、各々、1meq/gより高い電荷密度を有する。
【0024】
別の局面において、布を処理する方法が、提供される。この方法は、第1電荷を有するイオンもしくはイオン化可能化合物をこの布の表面上の少なくとも一部分に提供することによって、表面を改変する工程を包含する。第1電荷と反対の電荷を有する第1イオン性ポリマーは、この布に適用される。この第1イオン性ポリマーは、この布に性能増強特性を与えることが可能である官能基を有する。いくつかのバリエーションにおいて、布の表面の上記改変は、第1電荷を有する第2イオン性ポリマーを、この布に適用する工程を包含する。他のバリエーションにおいて、第1イオン性ポリマーは、1meq/gより高い電荷密度を有する。なお他のバリエーションにおいて、第1イオン性ポリマーおよび第2イオン性ポリマーの両方は、1meq/gより高い電荷密度を有する。
【0025】
別の実施形態において、布を処理するための方法が提供され、この方法は、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの間の複合体を布の表面に適用する工程を包含する。このカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーのうちの1つは、この布に性能増強特性を与えることが可能である官能基を含む。
【0026】
別の局面において、性能増強特性を有する布が、提供される。この性能増強特性は、撥水性、撥油性、よごれ耐性、帯電防止性、防汚性、しわ耐性、疎水性、親水性、抗菌性、難燃性、温度調節およびUV耐性、ならびにこれらの2以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない群より選択される。コーティングが、この布上の少なくとも一部分に置かれ、ここで、このコーティングは、この布に性能増強特性を与えることが可能である官能基を有するイオン性ポリマーを有する。いくつかのバリエーションにおいて、上記コーティングは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの間の複合体を含有し、そしてこのカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーのうちの1つは、官能基を含む。いくつかのバリエーションにおいて、このイオン性ポリマーは、1meq/gより高い電荷密度を有する。他のバリエーションにおいて、このカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーの両方は、1meq/gより高い電荷密度を有する。いくつかの実施形態において、この性能増強特性は、この布の25回の家庭洗濯後も持続する。他のバリエーションにおいて、この性能増強特性は、この布の50回の家庭洗濯後も持続する。
【0027】
布を処理するためのキットもまた、提供される。このキットは、アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーを含み、このアニオン性ポリマーもしくはカチオン性ポリマーのどちらかは、布に性能増強特性を与えることが可能である官能基を含む。このキットはまた、ポリマーをこの布に適用するための指示書をも含む。
【0028】
方法および組成物の任意の組み合わせが、本明細書中で開示される布を産生するために使用され得ることが、企図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(詳細な説明)
布を改変するための方法および組成物、ならびに処理された布が、提供される。本明細書中で記載される方法および組成物を使用して、種々の布が、選択された性能増強特性をこの布に与えるために改変され得る。
【0030】
図1は、ポリマーフィルムを表面上に構築するための公知のLbLプロセスの図解を示す。最初に、荷電された表面を有する基材1が、提供される。説明の目的のみのために、電荷2は、正電荷として図示されている。この基材は、表面上の電荷と反対の電荷を有するイオン性ポリマーの水溶液中に浸漬される。この説明図において、荷電された基材1は、アニオン性ポリマー3の水溶液22中に浸漬される。次いで、コーティングされた基材は、すすがれる。このアニオン性ポリマー3は、荷電された表面1の上に、正に荷電した表面と負に荷電したポリイオン3との間の静電的相互作用を介して、整列されそして吸着される。次いで、基材上に吸着されたアニオン性ポリマーを有する基材は、すすがれ、そしてカチオン性ポリマー4の水溶液32の中に浸漬される。このカチオン性ポリマー4は、2つのイオン性ポリマーの間の静電的相互作用を介して、アニオン性ポリマーと共に自ら並び、そしてアニオン性ポリマー上に吸着される。フィルムは、このような様式で多くの層で構築され得る。幾つかの場合、立体構造(例えば、伸長)は、水溶液中の対イオンの濃度を変えることによって制御され得る。
【0031】
図2は、本明細書中で記載される布を処理するための方法の1つのバリエーションの説明図を示す。布201は、第1ポリ電解物203の水溶液202と(例えば、浸漬されるか、染色機械において排出される(exhaust)か、または任意の他の適切なプロセスによって)接触させられる。説明の目的のために、ポリ電解物203は、アニオン性として図示されるが、ポリ電解物203は、負に荷電されても正に荷電されてもよい。その後、この布は洗浄され、布に吸着したポリ電解物203に起因して荷電された表面を有する布211を生じる。次いで、この布211は、第1ポリ電解物と反対に荷電し、かつ官能基Rを有する、第2のポリ電解物205の溶液204と接触させられる。この第2ポリ電解物205は、布211の荷電された表面上に吸着し、そして、反対に荷電したポリ電解物203とポリ電解物205との間の静電的相互作用によって、少なくとも部分的にこの表面に付着する。その後、この布は、洗浄され、そして乾燥されて、処理された布221を生じる。あるいは、ポリ電解物203は、ポリ電解物203を布201に共有結合することを可能にする条件の下で、(例えば、布201を溶液202中に浸漬しそしてすすぐ工程の後に硬化工程を含めることにより)布201に適用され得る。最も外側の(すなわち、最後に適用された)ポリ電解物205は、1種以上の官能基を有し得る。さらに、ポリ電解物203およびポリ電解物205の両方は、官能基を有し得る。最も外側のポリ電解物205の官能基は、この布に性能増強特性を与えることが可能である。必要に応じて、最も外側の官能性付与されたポリ電解物205の適用の前に、多数のポリ電解物層が、構築され得る。ポリ電解物203およびポリ電解物205は、安定的なポリ電解物複合体を形成し、この複合体は、水に不溶性であり、それによって、水ベースの洗浄条件(例えば、家庭での洗濯、工業洗濯、またはスチームクリーニング)に耐久性であるコーティングを布に提供する。いくつかのバリエーションにおいて、ポリ電解物203およびポリ電解物205から形成されたこの安定的なポリ電解物複合体は、ほとんどの有機溶媒に不溶性であり、それによって、溶媒ベースの洗浄条件(例えば、ドライクリーニング)に耐久性であるコーティングを布に提供する。
【0032】
図3は、処理された布221の断面図を示す。第1ポリ電解物203は、布201に付着させられる(点線200によって示される)。点線200は、非共有結合性相互作用(例えば、水素結合もしくはファンデルワールス相互作用)を示し得る。あるいは、第1ポリ電解物203は、布201に共有結合させられ得る。第1ポリ電解物203と反対の電荷を有する官能性付与された第2電解物205は、ポリ電解物203とポリ電解物205の間の静電性相互作用によって、布211上の少なくとも一部分に吸着されそしてこれに付着する。このポリ電解物203およびポリ電解物205は、安定的なポリ電解物複合体を形成し、この複合体は、水中での低い溶解性を有する。1種を超える官能基を含み得る官能基Rは、最も外側のポリ電解物205に由来し、そして処理された布221に対して性能増強特性を与えることが可能である。代表的なバリエーションにおいて、ポリ電解物205は、ポリ電解物205の官能基Rが布の表面から伸び、一方でポリ電解物205の荷電された部分は反対に荷電されたポリ電解物203と共に整列しそしてこれに付着するように、方向付けられる。官能基Rは、布に所望の特性を与えるように選択され得る。例えば、R基は、フルオロカーボン基またはフルオロカーボン基と炭化水素鎖との両方を含み得、これらは、布に、疎油性、疎水性および汚れ耐性を与える。
【0033】
図4は、本明細書中で記載される布を処理するための方法の、別のバリエーションの図解である。荷電された表面を有する布211’は、官能基Rを有するポリ電解物205’の溶液204’に(例えば、浸漬されるか、排出されるか、または任意の他の適切な技術によって)接触させられる。その後、この布は、洗浄されそして乾燥させられ、処理された布221’を生じる。荷電された布211’は、説明の目的のために、負の電荷を有するように図示されているが、布211’はまた、正に荷電され得る。官能性付与されたポリ電解物205’は、荷電された布211’とは反対に荷電される。官能基Rは、1種より多くの官能基を含み得、そして布に性能増強特性を与えることができる。ポリ電解物205’は、布の荷電された表面とポリ電解物205’上の荷電された基との間の静電性相互作用によって、布の少なくとも一部分に吸着されそしてこれに付着する。必要に応じて、官能性付与されたポリ電解物205’は、静電性相互作用に加え、ポリ電解物205’が布と共有結合することが可能である条件下で、荷電された布211’に適用され得る。
【0034】
図5は、処理された布221’の断面図を示す。ポリ電解物205’は、荷電された布211’および官能性付与されたポリ電解物205’の反対に荷電された表面の間の静電性相互作用によって、荷電された布211’上に吸着されそしてこれに付着する。官能性付与されたポリ電解物205’は、官能基Rを含み、官能基Rは、処理された布221’に性能増強特性を与えることができる、1種より多い官能基を含み得る。
【0035】
図6は、本明細書中に記載される布を処理するための別の方法の図解を示す。第1ポリ電解物303、および第1ポリ電解物と反対の電荷を有する第2ポリ電解物305は、溶液中で混合されて、ポリ電解物複合体307を形成する。この複合体は、溶液302から分離され得るが、溶液302から析出しない。布201は、例えば、浸漬されるか、排出するか、または任意の他の適切な技術によって、溶液302と接触させられる。その後、この布は、洗浄されて、残りの溶液302を除去され、そして乾燥させられて、官能性付与された布231を生じる。説明の目的のために、負のポリ電荷異物305が官能基Rを有するように図示されるが、ポリ電解物303およびポリ電解物305のどちらが官能基を有してもよく、または両方が官能基を有してもよい。さらに、官能基Rは、1種より多い官能基を含み得る。官能基は、処理された布231に、性能増強特性を与えることができる。ポリ電解物複合体307は、布201上に吸着され、そしてこれに付着される。この複合体は、水素結合もしくはファンデルワールス力のような、非共有結合的相互作用によって布に付着され得る。必要に応じて、ポリ電解物複合体307は、複合体307と布201との間に共有結合を形成することを可能にする条件下で布201に適用され得る。
【0036】
図2〜図6は、説明の目的で、イオン性ポリマー203、205、205’、303、305が、骨格上に荷電された部分を有し、そして官能基を側鎖として有するように図解的に示すが、電荷がポリマー側鎖上に存在し得、そして官能基がポリマー骨格の一部であり得ることもまた、理解される。
【0037】
布に疎水特性を与えるために、官能性付与されたポリ電解物は、炭化水素鎖を有するモノマーまたは他の疎水性部分を含み得る。ペンダント炭化水素側鎖の長さ、密度、および分枝の程度は、布の表面に所望の疎水特性を与え、そして処理の目的のために、ポリ電解物の溶液中への可溶性を調整するために、選択され得る(例えば、C6〜C30の直鎖状、分枝状、または環状のアルキル基)。このようなモノマーの例としては、N−(tert−ブチル(buytl))アクリルアミド、n−デシルアクリルアミド、n−デシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリルアミド、2−エチルヘキシルアクリレート、1−ヘキサデシルメタクリレート、N−(n−オクタデシル)アクリルアミド、n−tert−オクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ビニルラウレートおよびビニルステアレートが挙げられる。
【0038】
布に疎水特性および/または疎油特性を与えるために、官能性付与されたポリ電解物は、フルオロカーボン基を有するモノマーを含み得る。布の表面へのフルオロカーボン基の適用は、耐水性および/または耐油性、撥水性および/または撥油性、よごれ耐性、および防汚特性を布に与え得る。このようなフルオロカーボン基は、完全にフッ化した炭化水素もしくは部分的にフッ化した炭化水素を含めて、直鎖状、分枝状、または環状のフルオロカーボンを含み得、そして直鎖状、分枝状、または環状のC1〜C30アルキル基を含み得る。ペンダントフッ化側鎖もしくはペンダント非フッ化側鎖の長さ、密度、および分枝の程度は、処理の目的のために所望の可溶性を与えるために、そして所望のレベルの疎水性もしくは疎油性を保持するために、選択され得る。特に有用なフッ化モノマーは、HC=CHCOCHCH(CFFおよびHC=C(CH)COCHCH(CFFの構造を有するアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーであって、ここで両方の場合、nは、1〜20であるか、またはおよそ5と12との間である。さらに、広範な鎖の長さを含む市販のモノマーのような、これらの範囲外の鎖の長さもまた有用であり得る。このようなモノマーの例としては、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、1H,1H−ヘキサフルオロブチルアクリレート、1H,1H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、ヘキサフルオロ−イソプロピルアクリレート、1H,1H−ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、1H,1H−ペンタデカフルオロオクチルメタクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロ(fluror)プロピルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、および2,2,2− トリフルオロ(fluor)エチルメタクリレートが挙げられる。
【0039】
布に疎水特性を与えるために、官能性付与されたポリ電解物は、以下を含むモノマーを含み得る:アクリルアミド、アクリル酸、N−アクリロイル三(ヒドロキシメチル)メチルアミン、グリセロール一(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(グリコールメタクリレート)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−メタクリロイル三(ヒドロキシメチル)メタミン(methamine)、N−メチルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)一メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)一メチルエーテル一メタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、およびN−ビニル−2−ピロリドン(1−ビニル−2−ピロリドン)。疎水特性を有するように処理された布は、帯電防止性を示し得る。
【0040】
布に難燃特性を与えるために、アミノ基を含むポリ電解物とリンを含むポリ電解物との間のポリ電解物複合体が、布に適用され得る。アミノ基およびリンを含む一種のポリ電解物が、使用され得る。N−P相互作用は、相乗的な難燃性効果をもたらし得る。例えば、四重アンモニウム基を含むポリカチオンおよびリン(例えば、リン酸)を含むポリアニオンが使用されて、ポリ電解物複合体を形成し得る。
【0041】
さらに、布に抗菌特性(例えば、抗細菌特性もしくは抗真菌特性)を与えるモノマーが、布に適用されるポリ電解物中に含まれ得る。抗菌特性は、過剰な正電荷を有するポリ電解物もしくはポリ電解物複合体を布に適用することによって、達成され得る。このようにして得られた布は、抗菌特性を有し得るカチオン性の表面を有する。
【0042】
しわ耐性およびしわ回復性が、本明細書中に記載されるポリ電解物もしくはポリ電解物複合体を用いて達成され得る。布にイオン的に架橋し得るポリ電解物もしくはポリ電解物複合体を適用することによって、所望のしわ耐性およびしわ回復特性が、布に与えられ得る。
【0043】
従って、図2および図4において2つのバリエーションで説明されるような本明細書中で「二工程プロセス」と呼ばれるいくつかの実施形態において、官能性付与されたポリ電解物を含む耐久性コーティングは、主な2つの工程によって布の表面に適用され得る。官能性付与されたポリ電解物は、性能増強特性を布に与えることが可能である官能基を有する。第1の工程において、布201の表面は、イオンもしくは同じ電荷のイオン化可能な基を表面上に配置することによって、改変されている(すなわち、帯電している)。図2に示されるように、表面は、布を表面改変性イオン性ポリマー203で処理することによって、電荷を有するように改変され得る。この表面改変性イオン性ポリマーは、任意の適切な方法(例えば、パディング(padding)、浸漬など)で適用され得る。この表面改変性イオン性ポリマーは、布の表面上に吸着され、そして、非共有結合性相互作用(例えば、水素結合もしくはファンデルワールス相互作用)を介して布に付着し得る。必要に応じて、この表面改変性イオン性ポリマーは、このポリマーと布との間の共有結合形成を(例えば、ポリマーおよび布表面のどちらかもしくは両方における反応基の使用によるか、または硬化工程の使用によって)可能にする条件下で適用され得る。あるいは、図4に図解されるように、布201の表面は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、または四重アンモニウムのような荷電した基を布表面上に導入することによって、または布をプラズマ処理することによって、電荷を有する(すなわち、帯電した布211’を形成する)ように改変され得る。負に帯電した布211’を形成するための布表面改変の例としては、腐食性デニール還元(caustic denier reduction)(アルカリ加水分解)、アミノ分解、および他の官能性改変が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
図2および図4において図解されるバリエーションにおいて説明される、「二工程プロセス」の第2の工程において、表面を改変された布211または第1電荷を有する211’は、第1電荷と反対の電荷を有する官能性付与されたポリマー205または205’によって処理される。官能性付与されたイオン性ポリマー205または205’は、任意の適切な技術(例えば、パディングもしくは(例えば染色機械を介して)排出すること)によって、それぞれ溶液202もしくは204’から、布に適用され得る。官能性付与されたイオン性ポリマー205および205’は、布に性能増強特性を与えることが可能である官能基を含む。官能性付与されたイオン性ポリマーは、改変された布211または211’の表面上に、少なくとも部分的に静電的相互作用を介して、吸着されそしてこれと相互作用する。
【0045】
他の実施形態において、布は、1つの工程(「一工程プロセス」)で処理される(図6に図解される)。浴302は、アニオン性ポリマー303とカチオン性ポリマー305との両方を含むポリ電荷物複合体307を含むように提供される。アニオン性ポリマー303およびカチオン性ポリマー305の一方または両方は、処理される布に性能増強特性を与えることができる官能基を有する。このポリ電解物複合体307は、安定であり、そして溶液から分離し得るが、一般に、溶液から析出しない。このポリ電解物複合体307は、布201の表面に適用されて、処理された布211’を形成する。ポリ電解物複合体307は、布の表面上に吸着され、そして非共有結合性相互作用(例えば、水素結合またはファンデルワールス力)を介して、この布に付着し得る。あるいは、この複合体307は、この複合体が(例えば、布表面およびポリ電解物複合体のどちらかもしくは両方に反応基を提供することによるか、または硬化工程の使用によって)布に共有結合形成され得る条件下で適用され得る。
【0046】
一工程プロセスおよび二工程プロセスの両方において、布211、211’または311は、乾燥されて、性能増強仕上げが繊維もしくは布に耐久的に固定される。必要に応じて、最終乾燥工程の後に硬化工程を行い得る。布の表面張力を低下させ得る湿潤剤もしくは界面活性剤が、イオン性ポリマーもしくはポリ電解物複合体の布に対する適用を容易にするために使用されてもよい。「耐久的な固定」または「耐久性」は、本明細書中で記載される処理された布の性能増強特性が、洗浄後も(例えば、少なくとも約10回の家庭での洗濯、少なくとも約25回の家庭での洗濯、少なくとも30回の家庭での洗濯、少なくとも40回の家庭洗濯、または少なくとも50回の家庭での洗濯について)維持されることを意味する。幾つかの場合、処理は、永久的であり得る。すなわち、この性能増強特性は、処理された布の寿命の間維持される。「維持される」とは、性能増強特性が、特定の回数の家庭洗濯後、最初のレベルからは変化し得るが、最小限受容可能なレベルより上に留まることを意味する。
【0047】
幾つかのバリエーションにおいて、本明細書中で記載されるコーティング、方法および布のために有用であるカチオン性ポリマーは、1meq/gより高い正の電荷密度を有し得る。特に有用な電荷密度は、4.0meq/g以上、6.0meq/g以上、または8.0meq/g以上である。上述の二工程プロセスにおいて使用される場合、カチオン性ポリマーは、高い分子量(例えば、約10,000〜約1,000,000ダルトン、約10,000〜約100,000ダルトン、約100,000〜約300,000ダルトン、約300,000〜約500,000ダルトン、約500,000〜約700,000ダルトン、または約700,000〜約1,000,000ダルトン)を有する。上述の一工程プロセスにおいて使用される場合、カチオン性ポリマーは、より低い分子量(例えば、約1000〜約100,000ダルトン、約1,000〜約3,000ダルトン、約3,000〜約5,000ダルトン、約5,000〜約10,000ダルトン、約10,000〜約20,000ダルトン、約20,000〜約40,000ダルトン、約40,000〜約60,000ダルトン、約60,000〜約80,000ダルトン、または約80,000〜約100,000ダルトン)を有し得る。これらのカチオン性ポリマーのモノマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2−アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジニトロジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2−(tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、ジアリルアミン、2−(イソ−プロピルアミノ)エチルスチレン、エチレンイミン、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、N−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]−メタクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ポリエチレンイミン、ionene、ポリアミド−ポリアミン−エピクロヒドリン、およびポリヘキサメチレンビグアナイド。このカチオン性ポリマーは、分枝状(例えば、約0.001%〜約10%分枝)であり得る。特に、本明細書中で記載されるコーティングのために使用され得るカチオン性ポリマーの例としては、ポリクオタニウム−16(約40,000の分子量および6.1meq/gの電荷密度を有する)、ポリクオタニウム−1、ポリクオタニウム−4、ポリクオタニウム−5、ポリクオタニウム−7、ポリクオタニウム−10、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−22、およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDADMAC)(100,000〜500,000の分子量および6.2meq/gの電荷密度を有する)が挙げられる。
【0048】
幾つかのバリエーションにおいて、本明細書中で記載されるコーティング、方法および布のために有用なアニオン性ポリマーは、高い負の電荷密度(1meq/g以上)を有する。幾つかのバリエーションにおいて、このアニオン性ポリマーは、4.0meq/g以上、6.0meq/g以上、8.0meq/g以上、または10.0meq/g以上の負の電荷密度を有する。上述の二工程プロセスにおいて使用される場合、このアニオン性ポリマーは、好ましくは高い分子量(例えば、100,000〜1,000,000ダルトン、約100,000〜約300,000ダルトン、約300,000〜約500,000ダルトン、約500,000〜約800,000ダルトン、または約800,000〜約1,000,000ダルトン)を有する。上述の一工程プロセスにおいて使用される場合、このアニオン性ポリマーは、より低い分子量(例えば、1,000〜100,000ダルトン、約1,000〜約3,000ダルトン、約3,000〜約5,000ダルトン、約5,000〜約10,000ダルトン、約10,000〜約20,000ダルトン、約20,000〜約40,000ダルトン、約40,000〜約60,000ダルトン、約60,000〜約80,000ダルトン、または約80,000〜約100,000ダルトン)を有する。理論に縛られることはないが、より低い分量のアニオン性ポリマーは、アニオン性およびカチオン性ポリマーのポリ電解物複合体を可溶化させる、水溶液中のいくらかの浮遊能力(suspendability)を許容すると考えられる。
【0049】
幾つかのバリエーションにおいて、本明細書中で記載されるコーティング、方法および布のために使用され得るアニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基、カルボン酸基、またはカルボキシル前駆体基を含むアニオン性ポリマーが挙げられ、これらは、本明細書中で「カルボキシル含有ポリマー」または「ポリカルボン酸」と呼ばれる。カルボキシル含有ポリマーは、カルボキシル基、カルボン酸基、または化学反応を介してカルボキシル基もしくはカルボン酸基になり得る基(カルボキシル前駆体基)を含む1以上のモノマーの重合体化もしくは共重合体化を介して得られ得る。このようなモノマーの非限定の例としては、以下が挙げられる:アクリル酸、メタクリル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸、マレイン酸のモノエステル[ROC(O)CH=CHC(O)OH、ここでRは、アルキル基またはペルフルオロアルキル基を表す]、無水マレイン酸、フマル酸、フマル酸のモノエステル[ROC(O)CH=CHC(O)OH、ここでRは、アルキル基またはペルフルオロアルキル基を表す]、無水アクリル、クロトン酸、ケイヒ酸、イタコン酸、無水イタコン酸、イタコン酸のモノエステル[ROC(O)CH=(CH)C(O)OH、ここでRは、アルキル基またはペルフルオロアルキル基を表す]、カルボキシル基(例えばアルギン酸基)、カルボン酸基またはカルボキシル前駆体基を有する糖類、ならびにカルボキシル基、カルボン酸基またはカルボキシル前駆体基を含む高分子。カルボキシル前駆体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:酸塩化物、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル類、アミド類、エステル類、ニトリル類および無水物類。カルボキシル前駆体基を有するモノマーの例としては、以下が挙げられる:(メタ)アクリレートクロリド、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシスクシンイミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、アスパリギン(asparigine)、およびグルタミン。本明細書中で、「(メタ)アクリル」との表記は、モノマーのアクリル型およびメタクリル型の両方を示す。カルボン酸カチオンは、アルミニウム、バリウム、クロム、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、ストロンチウム、亜鉛、ジルコニウムおよびホスホニウム(R、ここでRはアルキル基またはペルフルオロアルキル基を表す)、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムを含み得る。アニオン性ポリマーは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。アニオン性ポリマーは、例えば、約0.001%以上約10%以下の分枝状部分を有する分枝鎖であり得る。
【0050】
カルボキシル前駆体基を含むポリマーがカルボキシル含有アニオン性ポリマーとして使用される場合、この前駆体は、官能性付与されたポリ電解物の布への適用の間、および適用後のいずれかで、加水分解されて、カルボキシル基を形成しなければならない。加水分解の条件は、前駆体の性質に依存する。幾つかの状況において、加水分解は、布が処理される条件と類似するpH条件および温度条件の下で起こり得、このことは、官能性付与されたイオン性ポリマーが布に適用されるのと同時にカルボキシル基を形成することを容易にし得る。前駆体基の例としては、酸塩化物および無水物が挙げられる。他の前駆体基は、加水分解のために、水性の酸性条件もしくは塩基性条件および高温を必要とし得る。このような基としては、エステルおよびアミドが挙げられる。
【0051】
二工程プロセスにおけるカルボキシル含有アニオン性ポリマーの布への適用において、処理温度は、反応物の反応性に依存して、広範に変動し得る。しかし、温度は、反応物を分解させるほど高くあってはならず、または反応の阻害もしくは溶媒の凍結を起こすほど低くあってはならない。反対のことが指定されない限り、布は、大気圧で、約5℃〜約110℃の間、約15℃〜約60℃の間の範囲の温度または約20℃の室温で、ポリマーと接触させられる。このアニオン性ポリマーが適用されるpHは、pH7未満(例えば、およそpH1〜およそpH5の間、またはおよそpH2〜およそpH4.5の間)であり得る。本明細書中で処理のために必要な時間は、使用される温度および開始材料の相対的反応性に大部分依存する。他のことが指定されない限り、処理時間および条件は、概算で表される。硬化工程が使用される場合、硬化条件は、約5℃〜約250℃の間、または約150℃〜約200℃の間の範囲であり得る。
【0052】
高い負電荷密度を有する他のアニオン性ポリマー(例えば、スルホン酸含有ポリマーおよびリン酸含有ポリマー)は、任意の適切な技術(例えば、パディングもしくはパディングもしくは排出)によって布に適用され得る。例としては、ポリ(スチレンスルホン酸)(分子量約1000,000、4.9meq/gの電荷密度)、スルホン化ポリエステル繊維、ポリ(ビニルスルホン酸)、タウリン、およびアスパラギン酸が挙げられる。加水分解(アルカリ加水分解もしくはアミノ酸加水分解)を用いる表面改変は、代表的に、染色機械において、20℃〜120℃の間、20℃〜100℃の間、または60℃〜90℃の間の温度範囲にわたって行われる。
【0053】
イオン性ポリマーは、適切な技術(例えば、染色機械における連続様式もしくはバッチ様式での排出、またはパディング、スプレーコーティング、あるいは洗濯プロセスの間の添加)によって、布に適用され得る。イオン性ポリマーの処方は、使用される適用方法について適切であるように調整され得る。
【0054】
帯電防止特性を有する布を調製するために、布は、カチオン性ポリマーを含む溶液に接触させられ、それにより、このカチオン性ポリマーは、布の表面の少なくとも一部分をコーティングする。この布は、任意の適用方法(例えば、排出、パディングなど)によってこの溶液に曝露され得る。理論にとらわれることはないが、処理された布の帯電防止特性は、イオン伝導メカニズムから得られると考えられる。カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーの両方が、小さな可動性の対イオンを有する。例えば、織物表面上に水を形成するかまたは保持することを補助する吸水性官能基を介して吸水性の性質を有するカチオン性ポリマーは、可動性を増大して、これらのイオンの静電気を分散し得る。カチオン性コーティングの耐久性を最大化するため、すなわち、布の洗浄耐性を改善しかつ洗濯後に十分な帯電防止性能を保持するために、布の表面を改変して、カチオン性ポリマーの適用前もしくは適用と同時に、この布が負電荷を有するようにし、それによって、このカチオン性ポリマーは、反対に帯電した表面とポリカチオンとの間の静電性相互作用によって、少なくとも部分的に、布の帯電した表面と相互作用し得るかもしくは複合体形成(complex)し得る。
【実施例】
【0055】
以下の非限定の実施例は、本明細書中に記載される布の処理のための組成物および方法の、さらなる理解のために提供される。
【0056】
(一般情報)
標準的な家庭洗濯を、AATCC方法124−2001(最新の改定2001年)に基づいて、28gの顆粒状のTide(登録商標)洗剤(Proctor&Gamble)を66gのAATCC標準参照洗剤に置き換えて行う。家庭洗濯を行うために、正方形の布(約8”×8”)を標準的な家庭用洗濯機に入れた。このサンプルを、温水で「正常な」洗浄および旋回周期で洗浄した。このサンプルを、標準的AATCC方法124−2001に記載の通り、回転乾燥させた。
【0057】
1種の性能標的は、100%綿布と同じかよりよい帯電防止特性(表面抵抗率、付着時間(cling time)、および静電崩壊(static decay))を有するポリエステル布もしくはナイロン布のような合成布を作製することである。帯電防止性能は、以下の表に示す工業基準(Chemical Finishing of Textiles,Wolfgang D.SchindlerおよびPeter J.Hauser,2004,Woodhead Publishing,Limitedより)によって測定され得る。5×1011ohm/平方を超える表面抵抗率が不適当であるとみなされるが、これらの値と異なる表面抵抗率は、消費者に適切であり得かつ所望され得る。
【0058】
(表A)
工業的帯電防止性能分類(65%相対湿度、20℃)
【0059】
【表1】

(実施例1)
ポリエステル布の小布(swatch)(無地の織布(woven)、6oz/yd)を、ポリ(アクリル酸)(PAA)で以下のように処理した:各布サンプルを、20重量%のPAA(平均分子量1,000,000、pH3.3〜3.9)および0.1重量%のWetAidTM湿潤剤を含有する水溶液中に浸漬し、そしてウェットピックアップ(wet pick−up)約100%までパディングした。このサンプルを華氏250度で5分間乾燥させ、次いで、華氏320度で30秒間硬化させ、その後、洗浄しそして乾燥させた。
【0060】
第2の工程において、1重量%〜10重量%のカチオン性ポリマーポリクオタニウム−16(分子量約40,000)の水溶液を、PAA処理された布に適用した。ポリクオタニウム−16溶液を、PAA処理したポリエステルの小布の上に、ウェットピックアップ60%〜100%でパディングした。次いで、このサンプルを、乾燥させ、そして60%の相対湿度および華氏70度の条件に4時間置いて、その後試験した。ポリエステルの小布の表面抵抗率を、60%の相対湿度(RH)、華氏70度において測定した。これは、5回の家庭洗濯後に「申し分ない」と評価された。
【0061】
(実施例2)
実施例1のように調製したPAA処理したポリエステル布を、3〜5重量%のPDADMAC(分子量400,000〜500,000)の水溶液中に浸漬し、そしてウェットピックアップ90〜100%までパディングした。次いで、この布を、華氏300度で30秒間乾燥させた。表面抵抗率を、家庭洗濯の回数の関数として、以下の表Bにおいて報告する。
【0062】
(実施例3)
実施例1のように調製したPAA処理したポリエステル布を、2〜3重量%のポリクオタニウム−16(分子量約400,000)の水溶液中に浸漬し、そしてウェットピックアップ90〜100%までパディングした。この布を、華氏300度で30秒間乾燥させた。表面抵抗率を、家庭洗濯の回数の関数として、以下の表Bにおいて提供する。
【0063】
(実施例4)
3〜5重量%のPDADMAC(分子量400,000〜500,000)の水溶液(リカー比10:1)を、染色機械中で15〜30分間、40℃〜60℃で、アニオン性に改変したPAA処理したポリエステル布(実施例1のプロセスに従って調製した)上に排出した。次いで、サンプルをすすぎ、乾燥させ、そして60%の相対湿度および華氏70度の条件に少なくとも4時間置き、その後試験した。表面抵抗率を、家庭洗濯の回数の関数として、以下の表Bにおいて提供する。
【0064】
(実施例5)
2〜3重量%のポリクオタニウム−16(分子量約400,000)の水溶液(リカー比10:1)を、染色機械中で15〜30分間、40℃〜60℃で、アニオン性に改変したPAA処理したポリエステル布(実施例1のプロセスに従って調製した)上に排出した。次いで、サンプルをすすぎ、乾燥させ、そして60%の相対湿度および華氏70度の条件に少なくとも4時間置き、その後試験した。表面抵抗率を、家庭洗濯の回数の関数として、以下の表Bにおいて提供する。
【0065】
(実施例6)
ポリエステル布サンプル(無地織布、6oz/yd)を、パディングにより、一工程プロセスで、以下のように処理した:6重量%のカチオン性ポリマーPDADMAC(分子量400,000〜500,000)を、水中に溶解し、その後、4重量%のNaClおよび1重量%のアニオン性ポリマー(PAA、分子量約1,000〜10,000)を撹拌しながら加えて、ポリ電解物を形成した。さらに、0.2重量%のセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)を、界面活性剤として、この溶液に加えた。布を、ポリ電解物複合体の調製した溶液中に浸漬し、そしてウェットピックアップ100%までパディングした。次いで、これを華氏380度で30秒間、乾燥させそして硬化させた。表面抵抗率を、家庭洗濯の回数の関数として、以下の表Bにおいて提供する。
【0066】
(実施例7)
ポリエステル布サンプル(無地織布、6oz/yd)を、排出により、一工程プロセスで、以下のように処理した:0.5重量%〜1重量%のカチオン性ポリマーPDADMAC(分子量400,000〜500,000)を、水中に溶解し(リカー比5:1〜20:1)、その後、0.2重量%〜6重量%のアニオン性ポリマー(PAA、約1,000〜10,000の分子量を有する)を撹拌しながら加えた。ポリ電解物複合体の調製した溶液を、染色機械中で10〜30分間、30℃〜100℃で、布上に排出した。サンプルを、華氏250度で5分間乾燥させた。表面抵抗率を、家庭洗濯の回数の関数として、以下の表Bにおいて提供する。
【0067】
(実施例8)
ポリエステル布サンプル(無地織布、6oz/yd)を、一工程プロセスで、染色機械中でカチオン性ポリマー層およびアニオン性ポリマー層を交互に基材上に堆積することにより、処理した。リカー比は、5:1〜20:1であり、そして全ての重量は、製品に基づく。排出温度は、約30℃〜100℃の範囲である。計0.5重量%〜10重量%のポリクオタニウム−16(分子量約40,000)を、水中に溶解した。同じ手順を適用し、0.1重量%〜6重量%のアニオン性ポリマー(PAA、分子量1,000,000未満)を作製した。次いで、カチオン性ポリマーの溶液を染色機械に加え、アニオン性ポリマーの溶液と交互に、布上に、多数回排出した。プロセス全体に、約30分間〜60分間かかった。排出後、全てのサンプルをすすぎ、華氏250度で5分間乾燥させ、そして60%の相対湿度、華氏70度の条件に置き、その後試験した。表面抵抗率を、家庭洗濯の回数の関数として、以下の表Bにおいて提供する。
【0068】
(表面抵抗率データ)
実施例2〜8に記載のように処理した100%ポリエステル(織布、6oz/yd)サンプルの表面抵抗率(ohm/平方)を、100%綿サンプルおよび未処理ポリエステルサンプルと共に、家庭洗濯回数の関数として、表Bに列挙する。
【0069】
(表B)
処理サンプルおよび未処理サンプルの表面抵抗率(60%相対湿度、20℃)(ohm/平方で測定)
【0070】
【表2】

上記の組成物、方法および布は、明確な理解のために、説明のためおよび例示の目的である程度詳細に記載されているが、ある程度の重要でない変更および改変が実施されることは、当業者に理解される。従って、説明および実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、ポリ電解物を用いるポリマーフィルムの積層(LbL)構築のプロセスの図解を提供する。
【図2】図2は、ポリ電解物複合体を用いて繊維の特性を改変するための方法のバリエーションの図解を提供する。この説明図において、複合体は、第1ポリ電解物を溶液から布に吸着させ、洗浄し、次いで第2のポリ電解物をこの布に吸着させ、そして洗浄しそして乾燥させることによって、形成される。第2のポリ電解物は、1つ以上の性能増強特性をこの布に与えることが可能である、1つ以上の官能基を含む。
【図3】図3は、官能性付与されたポリ電解質複合体を布の表面に付着することによって処理された、布の断面図を提供する。
【図4】図4は、ポリ電解物複合体を用いて布の特性を改変する方法のバリエーションの図解を提供する。この説明図において、布の表面は荷電され、そして反対の電荷を有する官能性付与されたポリ電解物が、この布に吸着される。この官能性付与されたポリ電解物は、布に性能増強特性を与えることができる官能基を有する。
【図5】図5は、官能性付与されたポリ電解物を荷電された布表面に付着することによって処理された布の断面図を提供する。
【図6】図6は、ポリ電解物複合体を用いて布の特性を改変するための方法の図解を提供する。この説明図において、2つの反対に荷電されたポリ電解物の間の複合体は、布への適用の前に、溶液中で調製される。この複合体は、次いで、溶液から布に適用される。これらのポリ電解物のうちの少なくとも1つは、この布に性能増強特性を与えるために選択された官能基を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布に性能増強特性を与えるための組成物であって、該組成物は、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとの間の複合体を含有し、ここで、該アニオン性ポリマーもしくは該カチオン性ポリマーのどちらかは、該布に該性能増強特性を与えることが可能である官能基を含む、組成物。
【請求項2】
前記複合体は、前記アニオン性ポリマーおよび前記カチオン性ポリマーのうちの1つを前記布の表面の少なくとも一部分に付着させる最初の工程、ならびに、該アニオン性ポリマーおよび該カチオン性ポリマーの他方を該布に適用するその後の工程によって形成され、ここで、該アニオン性ポリマーおよび該カチオン性ポリマーのうち最後に適用したポリマーが、前記官能基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記複合体は、前記カチオン性ポリマーおよび前記アニオン性ポリマーを溶液中で最初に混合することによって形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記性能増強特性は、撥水性、撥油性、よごれ耐性、しわ耐性、帯電防止性、防汚性、疎水性、親水性、抗菌性、難燃性、温度調節およびUV耐性からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記官能基は、フッ化炭化水素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン性ポリマーおよび前記アニオン性ポリマーは、各々1meq/gより高い電荷密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アニオン性ポリマーは、カルボキシル基、カルボン酸基、カルボキシル前駆基、スルホン酸基、硫酸基またはリン酸基を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記カチオン性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)またはポリクオタニウムポリマーを含み、前記アニオン性ポリマーは、ポリアクリル酸を含み、そして前記性能増強特性は、帯電防止性を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記カチオン性ポリマーは、2−アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジニトロジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノフェニルスルホン、2−(tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、ジアリルアミン、2−(イソ−プロピルアミノ)エチルスチレン、エチレンイミン、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、N−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]−メタクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、および2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドからなる群より選択されるモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
布を処理する方法であって、該方法は、以下:
a)イオンもしくはイオン化可能化合物を該布の表面上の少なくとも一部分に提供することによって該表面を改変し、該布に性能増強特性を与える工程であって、該イオンもしくはイオン化可能化合物は、第1電荷を有する、工程;ならびに
b)第1イオン性ポリマーを該布に適用する工程であって、ここで;
該第1イオン性ポリマーは、該第1電荷と反対の電荷を有し;
該第1イオン性ポリマーの少なくとも一部分は、該改変された表面の該イオンもしくはイオン化可能化合物と相互作用し;そして
該第1イオン性ポリマーは、該布に該性能増強特性を与えることが可能である官能基を含む、工程
を、包含する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、イオンもしくはイオン化可能化合物を前記布の前記表面上の少なくとも一部分に提供する工程による該表面の前記改変は、該第1電荷を有する第2イオン性ポリマーを該布に適用する工程を包含する、方法。
【請求項12】
前記性能増強特性は、撥水性、撥油性、よごれ耐性、しわ耐性、帯電防止性、防汚性、疎水性、親水性、抗菌性、難燃性、温度調節およびUV耐性、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1電荷は負電荷であり、前記第1イオン性ポリマーは1meq/gより高い電荷密度を有するカチオン性ポリマーを含み、そして前記性能増強特性は帯電防止性を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記官能基は、フッ化炭化水素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1電荷は正電荷であり、前記第1イオン性ポリマーはアニオン性フルオロポリマーを含み、そして前記性能増強特性は撥水性、撥油性もしくは疎水性を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第2イオン性ポリマーの前記布への適用は、該第2イオン性ポリマーと該布との間の非共有結合性相互作用の形成を生じる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第2イオン性ポリマーが前記布へ適用される際の条件は、該第2イオン性ポリマーと該布との間の共有結合の形成を生じる、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第1イオン性ポリマーは1meq/gより高い正電荷密度を有するカチオン性ポリマーを含み、そして前記第2イオン性ポリマーは1meq/gより高い負電荷密度を有するアニオン性ポリマーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記第1イオン性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)またはポリクオタニウムポリマーを含み、前記第2イオン性ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸またはポリスルホン酸を含み、そして前記性能増強特性は、帯電防止性を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
布を処理する方法であって、該方法は、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの複合体を該布の表面に適用する工程を包含し、ここで、該カチオン性ポリマーおよび該アニオン性ポリマーのうちの1つは、該布に性能増強特性を与えることが可能である官能基を含む、方法。
【請求項21】
性能増強特性を有する布であって、
該性能増強特性は、撥水性、撥油性、よごれ耐性、帯電防止性、防汚性、しわ耐性、疎水性、親水性、抗菌性、難燃性、温度調節およびUV耐性、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択され、そして
該布は、該布上の少なくとも一部分に置かれたコーティングを有し、ここで、該コーティングは、該布に性能増強特性を与えることが可能である官能基を有するイオン性ポリマーを含む、布。
【請求項22】
前記コーティングは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの間の複合体を含有し、そして該カチオン性ポリマーおよび該アニオン性ポリマーのうちの1つは官能基を含む、請求項21に記載の布。
【請求項23】
前記第1イオン性ポリマーは1meq/gより高い電荷密度を有する、請求項21に記載の布。
【請求項24】
前記カチオン性ポリマーおよび前記アニオン性ポリマーの各々は1meq/gより高い電荷密度を有する、請求項22に記載の布。
【請求項25】
前記カチオン性ポリマーはポリクオタニウムポリマーを含み、前記アニオン性ポリマーはポリアクリル酸を含み、そして前記性能増強特性は帯電防止性を含む、請求項24に記載の布。
【請求項26】
請求項21に記載の布であって、前記性能増強特性は、該布の家庭での25回の洗濯後に持続する、布。
【請求項27】
請求項21に記載の布であって、前記性能増強特性は、該布の家庭での50回の洗濯後に持続する、布。
【請求項28】
衣料品、履物、寝具、生地、カーテン、家具装飾、屋外用布、カーペット、ラグ、不織布、自動車内装、もしくは工業織物における使用に適合される、請求項21に記載の布。
【請求項29】
布を処理するためのキットであって、該キットは、以下:
アニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーであって、該アニオン性ポリマーもしくは該カチオン性ポリマーのどちらかは、該布に性能増強特性を与えることが可能である官能基を含む、ポリマー;ならびに
該ポリマーを該布に適用するための指示書
を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−508440(P2008−508440A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523794(P2007−523794)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/026714
【国際公開番号】WO2006/015080
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507025940)ナノ−テックス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】