説明

布団

【課題】型崩れを起こしたり、綿切れやキルトのパンクをできる限り防止し、比較的簡単に丸ごと全体的に洗濯することができる布団を提供する。
【解決手段】繊維を細長い板状にまとめて構成した板状繊維集合体6を各板面同士が互いに合わさるとともに各縁部が平坦に並ぶように重ね合わせた多数の板状繊維集合体6で内側層60を構成し、この内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面にそれぞれ隣接して、繊維を所定の厚さで平面的にまとめて構成された平面状繊維集合体で第1、第2の外側層70、80を構成し、全体を第1、第2の表面布地71、81と周端被覆布地91で覆い、この覆われた布団の縁部をヘム巻端処理している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸ごと洗濯することができる布団に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば介護施設、医療機関、宿泊施設などの施設においては、高齢者、病人、宿泊者などの利用者を宿泊させるために布団は必要不可欠のものである。このような施設で使用される布団は、さまざまな異なる利用者によって、短期間、あるいは長期間に亘って利用されることから、常に衛生的で清潔であることが求められる。
【0003】
このような布団を常に衛生的でかつ清潔に保つためには、布団を丸ごと洗濯することが最良の方法ではあるが、従来は、布団を丸ごと洗濯することは、布団が型崩れを起こしたり、硬直化や綿切れやキルトパンクを起こすことから難しい状況であった。そのため、布団を全体的に覆っているカバーだけを洗濯し、この洗濯したカバーで布団を覆うことで清潔感を保ち、次の利用者の利用に供していた。または布団そのものについては、定期的に、乾燥機によって乾燥させたり、日光にあてて干したりすることで、衛生面での管理を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−254259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、布団のカバーだけを洗濯したり、または布団を乾燥機による乾燥や日光にあてて日干しする程度では、布団を衛生的でかつ清潔にすることは完全にできでいるとは言い難い場合も想定される。例えば、前の利用者による何らかの汚物が布団に付着し、布団の内部に侵入するなどで布団が非衛生的で汚れたままである可能性も指摘されている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、型崩れを起こしたり、硬直化や綿切れやキルトパンクを起こすことなく、比較的簡単に丸ごと全体的に洗濯することができる布団を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、請求項1記載の布団は、繊維を細長い板状にまとめて構成した板状繊維集合体を各板面同士が互いに合わさるとともに各縁部が平坦に並ぶように重ね合わせた多数の板状繊維集合体で構成される内側層と、この内側層を構成する多数の板状繊維集合体の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面にそれぞれ隣接して内側層を挟むように設けられ、繊維を所定の厚さで平面的にまとめて構成された平面状繊維集合体で形成される第1および第2の外側層と、前記内側層およびこの内側層を挟んで両側に設けられた第1および第2の外側層の全体を収納するように被覆する被覆布地とを有することを要旨とする。
【0008】
請求項1記載の布団では、内側層が多数の板状繊維集合体を重ね合わせて構成され、この内側層を挟むように平面状繊維集合体からなる第1、第2の外側層を設けているため、布団の厚さ方向に適度な弾力性があり、敷き布団として用いた場合には、快適な寝心地を得ることができるとともに、柔らかい平面状繊維集合体からなる第1、第2の外側層により寝心地は更に快適なものとなり、また多数の板状繊維集合体の重ね合わせる方向が布団の長手方向であり、布団の長手方向での折り曲げを容易にし、三つ折りなどに折り畳んで、運んだり、収納することが容易となることに加えて、丸ごと洗濯することができる。
【0009】
請求項2記載の布団は、前記被覆布地が、前記内側層を挟んだ第1および第2の外側層の外表面をそれぞれ外側から全体的に被覆する第1および第2の表面布地と、縁部が第1および第2の表面布地の縁部に重なるように内側層を挟んだ第1および第2の外側層の周端部全体を被覆する周端被覆布地と、この周端被覆布地の縁部と第1および第2の表面布地の縁部とが重なった部分において当該両縁部から第1および第2の外側層の縁部を貫通して布団の全周囲を縫製する全周縫製糸と、この全周囲を縫製された布団の第1の方向において所要の間隔で厚さ方向の全体を貫通するように縫製する第1方向縫製糸と、全周囲を縫製された布団の第1の方向に直交する第2の方向において所要の間隔で厚さ方向の全体を貫通するように縫製する第2方向縫製糸とを有することを要旨とする。
【0010】
請求項2記載の布団では、第1、第2の表面布地で第1、第2外側層の外表面を全体的に被覆し、この周端部全体を周端被覆布地で被覆してから、全周囲を全周縫製糸で縫製するとともに布団全体を貫通するように第1、第2の方向に縦横に第1、第2方向縫製糸で縫製するため、布団の中の板状繊維集合体や平面状繊維集合体がほつれたり、ばらばらになることがなく、布団全体を丸ごと、洗濯機に入れて、洗濯することができ、常に衛生的で清潔にすることができ、型崩れや綿切れやキルトのパンクを防ぎ、きれいな元の状態に戻ることができる。
【0011】
請求項3記載の布団は、前記内側層を構成する多数の板状繊維集合体は、各々が所定の割合で接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成されるとともに、各板状繊維集合体の各板面同士を接着して構成され、前記第1および第2の外側層を構成する平面状繊維集合体は、所定の割合で接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項3記載の布団では、内側層を構成する多数の板状繊維集合体は接着剤で繊維同士を互いに接着されるとともに、各板状繊維集合体の各板面同士も接着され、外側層を構成する平面状繊維集合体は接着剤で繊維同士を互いに接着されているため、板状繊維集合体や平面状繊維集合体がほつれたり、ばらばらになったりすることが防止され、布団全体を丸ごと、洗濯機に入れて洗濯することができる。
【0013】
請求項4記載の布団は、前記全周縫製糸で縫製される周端被覆布地の縁部が、ヘム巻端処理で縫製されていることを要旨とする。
【0014】
請求項4記載の布団では、周端被覆布地の縁部がヘム巻端処理で縫製されているため、縁部はほつれることなく、縫製される。
【0015】
請求項5記載の布団は、繊維を細長い板状にまとめて構成した板状繊維集合体を各板面同士が互いに合わさるとともに各縁部が平坦に並ぶように重ね合わせた多数の板状繊維集合体で構成される内側層と、この内側層を構成する多数の板状繊維集合体の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面の一方に隣接して設けられ、繊維を比較的薄い所定の厚さで平面的にまとめられた平面状繊維集合体で構成される第1の外側層と、前記内側層を構成する多数の板状繊維集合体の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面の他方に隣接し、前記第1の外側層との間に前記内側層を挟むように設けられ、繊維を比較的厚い所定の厚さで平面的にまとめられた平面状繊維集合体で構成される第2の外側層と、前記内側層と第2の外側層との間に設けられ、内側層を構成する多数の板状繊維集合体の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面の他方の面および第2の外側層の内側層に対向する内側の面の両方の面をそれぞれ全面的に被覆するように設けられる第1および第2の内側被覆布地と、前記第1の外側層の外表面を被覆する第1の表面布地と、この第1の表面布地、第1の外側層、内側層および第1の内側被覆布地を第1の布団部として縫製する第1の布団部縫製糸と、前記第2の外側層の外表面を被覆する第2の表面布地と、この第2の表面布地、第2の外側層および第2の内側被覆布地を第2の布団部として縫製する第2の布団部縫製糸と、縁部が第1および第2の表面布地の縁部に重なるように第1および第2の布団部の周端部全体を両布団部が重なった状態で被覆する周端被覆布地と、この周端被覆布地の縁部と第1および第2の表面布地の縁部とが重なった部分において両縁部から第1および第2の布団部の縁部を貫通して布団の全周囲を縫製する全周縫製糸とを有することを要旨とする。
【0016】
請求項5記載の布団では、多数の板状繊維集合体で構成される内側層の一方の面に平面状繊維集合体で構成される比較的薄い第1の外側層を隣接して設け、内側層の他方の面に平面状繊維集合体で構成される比較的厚い第2の外側層を隣接して設け、内側層と第2の外側層との間に第1、第2の内側被覆布地を設け、第1、第2の外側層の外表面を第1、第2の表面布地で被覆し、第1の表面布地、第1の外側層、内側層および第1の内側被覆布地を第1の布団部縫製糸で縫製して第1の布団部とし、第2の表面布地、第2の外側層および第2の内側被覆布地を第2の布団部縫製糸で縫製して第2の布団部とし、第1、第2の布団部の縁部を貫通して布団の全周囲を全周縫製糸で縫製するため、布団の厚さ方向に適度な弾力性があり、敷き布団として用いた場合には、快適な寝心地を得ることができるとともに、柔らかい平面状繊維集合体からなる外側層により寝心地は更に快適なものとなり、この平面状繊維集合体で構成される外側層として薄い方か厚い方を選択でき、また多数の板状繊維集合体の重ね合わせる方向が布団の長手方向であり、布団の長手方向での折り曲げを容易にし、三つ折りなどに折り畳んで、運んだり、収納することが容易となるとともに、布団の中の板状繊維集合体や平面状繊維集合体がほつれたり、ばらばらになることがなく、布団全体を丸ごと、洗濯機に入れて洗濯することができ、常に衛生的で清潔にすることができ、型崩れや綿切れやキルトのパンクを防ぎ、きれいな元の状態に戻すことができる。また、第1の布団部と第2の布団部に分けて、別々に独立して製造し、最後に両者を全周縫製糸1で縫い合わせればよいものであり、製造工程を簡単化でき、効率化を図ることができる。
【0017】
請求項6記載の布団は、前記内側層を構成する多数の板状繊維集合体が、各々が所定の割合で接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成されるとともに、各板状繊維集合体の各板面同士を接着して構成され、前記第1および第2の外側層を構成する平面状繊維集合体が、所定の割合で接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成されていることを要旨とする。
【0018】
請求項6記載の布団では、多数の板状繊維集合体および平面状繊維集合体が接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成され、各板状繊維集合体の各板面同士が接着されているため、板状繊維集合体や平面状繊維集合体がばらばらになったり、ほつれたりすることが防止され、布団全体を丸ごと、洗濯機に入れて洗濯することができる。
【0019】
請求項7記載の布団は、前記全周縫製糸で縫製される周端被覆布地の縁部が、ヘム巻端処理で縫製されていることを要旨とする。
【0020】
請求項7記載の布団は、周端被覆布地の縁部がヘム巻端処理で縫製されているため、縁部はほつれることなく縫製される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、内側層が多数の板状繊維集合体を重ね合わせて構成され、この内側層を挟むように平面状繊維集合体からなる第1、第2の外側層を設けているので、布団の厚さ方向に適度な弾力性があり、敷き布団として用いた場合には、へたりにくく快適な寝心地を得ることができるとともに、柔らかい平面状繊維集合体からなる第1、第2の外側層により寝心地は更に快適なものとなり、また多数の板状繊維集合体の重ね合わせる方向が布団の長手方向であり、布団の長手方向での折り曲げを容易にし、三つ折りなどに折り畳んで、運んだり、収納することが容易となることに加えて、丸ごと洗濯することができる。
【0022】
また、本発明によれば、第1、第2の表面布地で第1、第2外側層の外表面を全体的に被覆し、この周端部全体を周端被覆布地で被覆してから、全周囲を全周縫製糸で縫製するとともに布団全体を貫通するように第1、第2の方向に縦横に第1、第2方向縫製糸で縫製するので、布団の中の板状繊維集合体や平面状繊維集合体がほつれたり、ばらばらになることがなく、布団全体を丸ごと、洗濯機に入れて洗濯することができ、常に衛生的で清潔にすることができ、型崩れや綿切れやキルトのパンクを防ぎ、きれいな元の状態に戻ることができる。
【0023】
更に、本発明によれば、多数の板状繊維集合体および平面状繊維集合体は接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着されるとともに、各板状繊維集合体の各板面同士も接着されているので、板状繊維集合体や平面状繊維集合体がばらばらになったり、ほつれたりすることが防止され、布団全体を丸ごと、洗濯機に入れて洗濯することができる。
【0024】
本発明によれば、周端被覆布地の縁部がヘム巻端処理で縫製されているので、縁部はほつれることなく縫製される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係わる布団の平面図である。
【図2】図1に示した布団の長手方向の断面を示す図である。
【図3】図1および図2に示した布団の短い横方向の、図1において線B−Bに沿って見た断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る布団の表面の平面図である。
【図5】図4に示す布団の裏面の平面図である。
【図6】図4および図5に示す布団の長手方向の、図4において線A−Aに沿って見た断面図である。
【図7】図4および図5に示す布団の短い横方向の、図4において線B−Bに沿って見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる布団の平面図である。この図1に示す布団100は、例えば横100cm、縦200cmの平面的大きさを有し、厚さが例えば16cm程度であって、敷き布団に適したものである。この布団100の全周囲は、布団の外縁部に沿って、糸1で後述するようにヘム巻端処理で全体的に縫製されている。なお、このように全周囲を縫製する糸1を全周縫製糸1と称することにする。
【0028】
また、この布団100は、第1の方向である長手方向、すなわち図1では縦方向に4本、すなわち4箇所、糸3で布団100全体を厚さ方向に貫通するように縫製されているとともに、この第1の方向に直交する第2の方向である横方向には2本、すなわち2箇所、糸5で同様に布団100全体を厚さ方向に貫通するように縫製されている。この糸3および糸5をそれぞれ第1方向縫製糸3および第2方向縫製糸5と称することにする。なお、第1方向縫製糸3は、布団100の横幅を均等に5分割した4箇所の位置において布団100を縫製し、第2縫製糸5は、布団100の長手方向の縦寸法を均等に3分割した2箇所の位置において布団100を縫製しているが、この第1方向縫製糸3および第2方向縫製糸5は、布団100の縁部まで縫製されず、縁部の少し手前で終わっている。このような縫製により、布団100は強固に一体化される。
【0029】
図2は、図1に示した布団100の長手方向の断面を示す図、すなわち、図1において線A−Aに沿って見た断面図である。図2から分かるように、布団100は、内部の中心に板状繊維集合体6を多数重ね合わせて構成される弾力性を有する内側層60と、この内側層60の表裏両面にそれぞれ隣接して内側層60を挟むように設けられ、繊維を比較的薄い所定の厚さで平面的にまとめて構成される比較的柔らかい平面状繊維集合体で形成される第1および第2の外側層70および80とを有する。
【0030】
内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6の各々は、例えばポリエステルなどの繊維を細長い板状にまとめて構成したものであって、この1枚の大きさは、例えば長さが布団100の横幅に相当する約100cm、高さが布団100の厚み方向の縦幅よりも少し小さい約10cm、厚さが約0.6乃至1.0cmである。内側層60は、この大きさが例えば約100×10×0.6〜1cmの板状繊維集合体6を多数、各板面同士を互いに密接に合わせるとともにこのように合わせられた各板状繊維集合体6の縁部が平坦に並ぶように重ね合わせて構成され、いわゆる縦積層と称される構造をとる。
【0031】
また、内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6は、各々が所定の割合、例えば10乃至80%程度、好適には40乃至50%の割合で接着剤を混入され、この接着剤で繊維同士を互いに接着してばらばらになったり、固まったりしないようにしながらもある程度の弾力性や柔軟性を有するように構成されるとともに、多数の板状繊維集合体6は、各板面同士が接着剤で接着されてまとまり、ばらばらにならないように構成されている。また、多数の板状繊維集合体6からなる内側層60は、繊維の密度が例えば約100g/mである。
【0032】
第1および第2の外側層70および80を構成する平面状繊維集合体は、所定の割合、例えば0乃至20%程度、好適には5乃至10%程度の割合で接着剤を混入され、この接着剤で繊維同士を互いに接着してばらばらになったり、固まったりしないようにしながらもある程度の弾力性や柔軟性を有するように構成されている。平面状繊維集合体の大きさは、例えば長さが布団100の長さに相当する約200cm、横幅が布団100の横幅に相当する約100cm、厚さが約2乃至8cm、好適には3乃至5cmである。また、第1および第2の外側層70および80を構成する平面状繊維集合体の繊維の密度は、例えば約200g/mである。
【0033】
また、図2に示す布団100においても、図1で説明したように布団100全体を厚さ方向に貫通して縫製する全周縫製糸1と第2方向縫製糸5が図示されているがわかる。
【0034】
図3は、図1および図2に示した布団100の短い横方向の断面を示す図、すなわち、図1において線B−Bに沿って見た断面図である。図2で説明したように、布団100は、内部の中心に内側層60が設けられ、この内側層60の表裏両面にそれぞれ隣接して内側層60を挟むように第1および第2の外側層70および80が設けられて構成されている。
【0035】
なお、図3においては、内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6は、図1の線B−Bで示す断面のところに位置する1枚の板状体のみが平板的に図示され、多数の板状繊維集合体6が重なり合った部分は見えない。
【0036】
また、図3に示す布団100においても、図1で説明したように布団100全体を厚さ方向に貫通して縫製する全周縫製糸1と第1方向縫製糸3が図示されているがわかる。
【0037】
以上は、布団100の内部構造について説明したが、次に布団100全体を収納するように被覆している被覆布地について説明する。
【0038】
この布団100全体を覆っている被覆布地は、図2および図3から分かるように、内側層60を挟んだ第1および第2の外側層70および80の外表面をそれぞれ外側から全体的に覆う側地と称する第1および第2の表面布地71および81と、布団100の周端部全体をぐるりと囲むように覆っている周端被覆布地91とから構成される。この周端被覆布地91は、内側層60を挟んだ第1および第2の外側層70および80の周端部全体を囲んで覆うとともに、周端被覆布地91の縁部が第1および第2の表面布地71および81の縁部に重なっているが、この重なりにおいては、周端被覆布地91の縁部のほつれを防止すべくヘム巻端処理され得るように内側に折り返されて重なるようになっている。
【0039】
上述したように、布団100を全体的に外側から覆っている第1および第2の表面布地71および81と周端被覆布地91は、周端被覆布地91の折り返された縁部と第1および第2の表面布地71および81の縁部とが重なった部分が図1で説明した全周縫製糸1で布団100の外縁部に沿って布団100の全周をヘム巻端処理するように全体的に縫製されるが、この全周縫製糸1による縫製では、周端被覆布地91および第1、第2の表面布地71、81の両縁部の外側表面から第1、第2の外側層70、80の縁部を貫通して布団100の全周囲を全周縫製糸1が縫製している。
【0040】
更に、布団100の第1の方向である長手方向において所要の間隔、好適には均等な間隔で布団100全体を厚さ方向に貫通するように図1で説明した第1方向縫製糸3が4箇所縫製されている。また、布団100の第1の方向に直交する第2の方向である横方向において均等な間隔で布団100全体を厚さ方向に貫通するように図1で説明した第2方向縫製糸5が2箇所縫製されている。
【0041】
上述したように、内側層60および第1、第2の外側層70、80を収納するように被覆する周端被覆布地91および第1、第2の表面布地71、81を図1に示すように全周縫製糸1および第1、第2方向縫製糸3、5で縫製して構成される布団100は、内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6を布団100の長手方向に重ね合わせるとともに、多数の板状繊維集合体6の板幅方向が布団100の厚さ方向となるように設けられているため、布団100の厚さ方向において適度な弾力性があり、布団100を敷き布団として用いた場合には、洗濯した場合でも強固に一体化された状態を維持し、バラバラにならず、快適な寝心地を得ることができる。
【0042】
また、内側層60を挟むように内側層60の表裏両面に隣接して、比較的柔らかい平面状繊維集合体からなる第1、第2の外側層70、80が設けられているため、布団100を敷き布団として利用する場合、弾力性のある板状繊維集合体6からなる内側層60が利用者の体に直接当たるのでなく、柔らかい平面状繊維集合体からなる第1、第2の外側層70、80に直接当たり、それから弾力性のある内側層60の板状繊維集合体6に当たることになり、寝心地は更に快適なものとなる。
【0043】
更に、内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6は、その重ね合わせる方向が布団100の長手方向であるため、布団100を長手方向に折り曲げることが比較的容易である。従って、布団100を三つ折りなどに簡単に折り畳んで、布団100を運んだり、収納することが容易となる。
【0044】
上述した特徴に加えて、本実施形態の布団100は、内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6が所定の割合で接着剤を混入されて繊維同士を互いに接着してほつれたり、ばらばらになったりすることを防止するとともに、多数の板状繊維集合体6が板面において互いに接着剤で接着されてまとまり、ばらばらにならないように構成されるとともに、第1、第2の外側層70、80を構成する平面状繊維集合体も所定の割合で接着剤を混入され、繊維同士を互いに接着してほつれたり、ばらばらになったりすることを防止するように構成される。
【0045】
そしてさらに上述した接着剤による接着に加えて、全周縫製糸1および第1、第2方向縫製糸3、5で布団100の縁部および平面部において縦横に縫製されているものであるため、布団の中の板状繊維集合体や平面状繊維集合体がほつれたり、ばらばらになることがなく、布団100全体を丸ごと、例えば業務用の強力な洗濯機であっても洗濯することができる。
【0046】
従って、汚れた布団100でも汚れを落とし、きれいにすることができ、常に衛生的で清潔にすることができる。そして、布団100を丸ごと洗濯機で洗濯しても、布団100はほつれたり、型崩れを起こしたり、綿切れやキルトのパンク防止を防ぎ、きれいな元の快適な状態に戻すことができる。
【0047】
図4乃至図7は、本発明の第2の実施形態に係る布団200の平面乃至断面を示す図である。更に詳しくは、図4は、この第2の実施形態の布団200の第1の面である表面の平面図であり、図5は、布団200の第2の面である裏面の平面図であり、図6は、布団200の長手方向の断面を示す図、すなわち、図4において線A−Aに沿って見た断面図であり、図7は、布団200の短い横方向の断面を示す図、すなわち、図4において線B−Bに沿って見た断面図である。
【0048】
この第2の実施形態の布団200は、第1の実施形態の布団100における第2の外側層80の代わりに該第2の外側層80の厚さよりも更に厚い第2の外側層280を使用し、この第2の外側層280と内側層60との間に2枚の第1および第2の不織布210および220を設けることが大きく異なるとともに、第1の表面布地71と第1の外側層70と内側層60と第1の不織布210とで第1の布団部を構成し、第2の不織布220と第2の外側層280と第2の表面布地81とで第2の布団部を構成し、この第1および第2の布団部に対する縫製をそれぞれ図4および図5に示すように別々に行っている点が第1の実施形態と異なるものである。
【0049】
なお、第1の不織布210と第2の不織布220は、接着などされず、単に隣接して配設されているものである。また、内側層60および第1の外側層70の繊維密度は、第1の実施形態と同じ例えば約100g/mであるが、第2の外側層280の繊維密度は、例えば800g/mである。
【0050】
すなわち、第1の外側層70、内側層60、第1および第2の表面布地71および81、周端被覆布地91は、第1の実施形態のものと同じであり、第2の外側層280は、第1の実施形態の第2の外側層80の厚さを厚くしただけで、構成は同じであり、また布団200の縁部の全周を縫製している全周縫製糸1も第1の実施形態と同じである。また、布団200は、第1の実施形態の布団100と同様に、例えば横100cm、縦200cmの平面的大きさを有し、厚さが布団100よりも少し厚く、例えば20cm程度であって、敷き布団に適したものである。
【0051】
第1の表面布地71と第1の外側層70と内側層60と第1の不織布210とからなる第1の布団部は、図4に示すように、長手方向に4本、すなわち4箇所、第1方向縫製糸203で厚さ方向に第1の布団部のみを貫通するように縫製されるとともに、この長手方向に直交する横方向には2本、すなわち2箇所、第2方向縫製糸205で同様に厚さ方向に第1の布団部のみを貫通するように縫製されて構成されている。なお、この縫製位置は、第1の実施形態の図1で示した縫製位置と同じであるが、第1の実施形態において布団を長手方向に4箇所行われている縫製では、糸は布団の縁部まで縫製されず、縁部の少し手前で終わっていたが、本第2の実施形態では、糸は布団の縁部まで完全に縫製されている。
【0052】
また、第2の不織布220と第2の外側層280と第2の表面布地81とからなる第2の布団部は、図5に示すように、長手方向に2本、すなわち2箇所、第1方向縫製糸223で厚さ方向に第2の布団部のみを貫通するように縫製されるとともに、この長手方向に直交する横方向には4本、すなわち4箇所、第2方向縫製糸225で同様に厚さ方向に第2の布団部のみを貫通するように縫製されて構成されている。
【0053】
上述したように縫製されて構成される第1および第2の布団部は、それぞれ別々に作られた後、図6および図7に示すように、第1の布団部の第1の不織布210と第2の布団部の第2の不織布220とを互いに合わせながら第2の布団部の上に第1の布団部を重ね、平面的には図1および図2に示すような1枚の布団のように組み合わせてから、第1、第2の両布団部の外縁部に沿って、全周縫製糸1で全体的に縫製し、1枚の布団200として完成する。
【0054】
なお、この全周縫製糸1による第1、第2の両布団部の外縁部に沿った縫製では、周端被覆布地91の表面側の折り返された縁部から第1の表面布地71の縁部、第1の外側層70の縁部、第1の不織布210の縁部、第2の不織布220の縁部、第2の外側層280の縁部、第2の表面布地81の縁部、および周端被覆布地91の裏面側に折り返された縁部を貫通して、第1、第2の両布団部の外縁部に沿って全周囲を全周縫製糸1でヘム巻端処理するように縫製し、布団200を完成する。
【0055】
上述したように構成される布団200では、内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6を布団200の長手方向に重ね合わせるとともに、多数の板状繊維集合体6の板幅方向が布団200の厚さ方向となるように設けられているため、布団200の厚さ方向において適度な弾力性があり、布団200を敷き布団として用いた場合には、快適な寝心地を得ることができる。
【0056】
また、内側層60を挟むように内側層60の表裏両面に隣接して、比較的薄く柔らかい平面状繊維集合体からなる比較的薄い第1の外側層70と比較的厚く柔らかい第2の外側層280が設けられているため、布団200を敷き布団として利用する場合、弾力性のある板状繊維集合体6からなる内側層60が利用者の体に直接当たるのでなく、柔らかい平面状繊維集合体からなる第1、第2の外側層70、280に直接当たり、それから弾力性のある内側層60の板状繊維集合体6に当たることになり、寝心地は更に快適なものとなるとともに、外側層として比較的薄い第1の外側層70と比較的厚い第2の外側層280とがあり、いずれの外側層を上にするか下にするかを利用者の好みによって選択でき、使用方法を広げることができる。
【0057】
更に、内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6は、その重ね合わせる方向が布団200の長手方向であるため、布団200を長手方向に折り曲げることが比較的容易である。従って、布団200を三つ折りなどに簡単に折り畳んで、布団200を運んだり、収納することが容易となる。
【0058】
上述した特徴に加えて、本実施形態の布団200は、内側層60を構成する多数の板状繊維集合体6が所定の割合で接着剤を混入されて繊維同士を互いに接着してほつれたり、ばらばらになったりすることを防止するとともに、多数の板状繊維集合体6が板面において互いに接着剤で接着されてまとまり、ほつれたり、ばらばらにならないように構成されるとともに、第1、第2の外側層70、280を構成する平面状繊維集合体も所定の割合で接着剤を混入され、繊維同士を互いに接着してほつれたり、ばらばらになったりすることを防止するように構成されることに加えて、上述したように、全周縫製糸1および第1、第2方向縫製糸203、205で第1の布団部の縁部および平面部において縦横に縫製されているとともに、全周縫製糸1および第1、第2方向縫製糸223、225で第2の布団部の縁部および平面部において縦横に縫製されているものであるため、布団200全体を丸ごと、洗濯機に入れて、何回でも洗濯することができる。従って、汚れた布団200でも汚れを落とし、きれいにすることができ、常に衛生的で清潔にすることができる。そして、布団200を丸ごと洗濯機で洗濯しても、布団200はほつれたり、型崩れを起こしたり、綿切れやキルトのパンクを防ぎ、きれいな元の状態に戻ることができる。
【0059】
更に、本実施形態の布団200は、第1の表面布地71と第1の外側層70と内側層60と第1の不織布210とからなる第1の布団部と第2の不織布220と第2の外側層280と第2の表面布地81とからなる第2の布団部の2つの布団部に分かれ、この2つの布団部を全周縫製糸1で縫製して、1つの布団200として完成しているものであるため、布団200の製造に当たっては、第1の布団部と第2の布団部に分けて、別々に独立して製造し、最後に両者を全周縫製糸1で縫い合わせればよいものであり、製造工程を簡単化でき、効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 全周縫製糸
3、203、223 第1方向縫製糸
5、205、225 第2方向縫製糸
6 板状繊維集合体
60 内側層
70 第1の外側層
71 第1の表面布地
80、280 第2の外側層
81 第2の表面布地
91 周端被覆布地
100、200 布団
210 第1の不織布
220 第2の不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を細長い板状にまとめて構成した板状繊維集合体を各板面同士が互いに合わさるとともに各縁部が平坦に並ぶように重ね合わせた多数の板状繊維集合体で構成される内側層と、
この内側層を構成する多数の板状繊維集合体の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面にそれぞれ隣接して内側層を挟むように設けられ、繊維を所定の厚さで平面的にまとめて構成された平面状繊維集合体で形成される第1および第2の外側層と、
前記内側層およびこの内側層を挟んで両側に設けられた第1および第2の外側層の全体を収納するように被覆する被覆布地と
を有することを特徴とする布団。
【請求項2】
前記被覆布地は、
前記内側層を挟んだ第1および第2の外側層の外表面をそれぞれ外側から全体的に被覆する第1および第2の表面布地と、
縁部が第1および第2の表面布地の縁部に重なるように内側層を挟んだ第1および第2の外側層の周端部全体を被覆する周端被覆布地と、
この周端被覆布地の縁部と第1および第2の表面布地の縁部とが重なった部分において当該両縁部から第1および第2の外側層の縁部を貫通して布団の全周囲を縫製する全周縫製糸と、
この全周囲を縫製された布団の第1の方向において所要の間隔で厚さ方向の全体を貫通するように縫製する第1方向縫製糸と、
全周囲を縫製された布団の第1の方向に直交する第2の方向において所要の間隔で厚さ方向の全体を貫通するように縫製する第2方向縫製糸と
を有することを特徴とする布団。
【請求項3】
前記内側層を構成する多数の板状繊維集合体は、各々が所定の割合で接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成されるとともに、各板状繊維集合体の各板面同士を接着して構成され、
前記第1および第2の外側層を構成する平面状繊維集合体は、所定の割合で接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の布団。
【請求項4】
前記全周縫製糸で縫製される周端被覆布地の縁部は、ヘム巻端処理で縫製されていることを特徴とする請求項3記載の布団。
【請求項5】
繊維を細長い板状にまとめて構成した板状繊維集合体を各板面同士が互いに合わさるとともに各縁部が平坦に並ぶように重ね合わせた多数の板状繊維集合体で構成される内側層と、
この内側層を構成する多数の板状繊維集合体の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面の一方に隣接して設けられ、繊維を比較的薄い所定の厚さで平面的にまとめられた平面状繊維集合体で構成される第1の外側層と、
前記内側層を構成する多数の板状繊維集合体の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面の他方に隣接し、前記第1の外側層との間に前記内側層を挟むように設けられ、繊維を比較的厚い所定の厚さで平面的にまとめられた平面状繊維集合体で構成される第2の外側層と、
前記内側層と第2の外側層との間に設けられ、内側層を構成する多数の板状繊維集合体の平坦に並んだ各縁部で構成される表裏両面の他方の面および第2の外側層の内側層に対向する内側の面の両方の面をそれぞれ全面的に被覆するように設けられる第1および第2の内側被覆布地と、
前記第1の外側層の外表面を被覆する第1の表面布地と、
この第1の表面布地、第1の外側層、内側層および第1の内側被覆布地を第1の布団部として縫製する第1の布団部縫製糸と、
前記第2の外側層の外表面を被覆する第2の表面布地と、
この第2の表面布地、第2の外側層および第2の内側被覆布地を第2の布団部として縫製する第2の布団部縫製糸と、
縁部が第1および第2の表面布地の縁部に重なるように第1および第2の布団部の周端部全体を両布団部が重なった状態で被覆する周端被覆布地と、
この周端被覆布地の縁部と第1および第2の表面布地の縁部とが重なった部分において両縁部から第1および第2の布団部の縁部を貫通して布団の全周囲を縫製する全周縫製糸と、
を有することを特徴とする布団。
【請求項6】
前記内側層を構成する多数の板状繊維集合体は、各々が所定の割合で接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成されるとともに、各板状繊維集合体の各板面同士を接着して構成され、
前記第1および第2の外側層を構成する平面状繊維集合体は、所定の割合で接着剤を混入され、接着剤で繊維同士を互いに接着するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の布団。
【請求項7】
前記全周縫製糸で縫製される周端被覆布地の縁部は、ヘム巻端処理で縫製されていることを特徴とする請求項5または6記載の布団。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−50772(P2012−50772A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197595(P2010−197595)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(509150961)株式会社グリフ (5)
【出願人】(507282314)ニッシン・トーア株式会社 (4)
【Fターム(参考)】