説明

布地用エンボス形成装置

【課題】 普通の布地においても容易にエンボス形成ができるようにするとともに、エンボス形成部の周囲を押えてエンボスにシワがよらないようにしエンボスがきれいに形成できるようにしエンボス形成布地の品質向上を図る。
【解決手段】 間欠的に送られる熱可塑性の布地Wの送り方向に直交する幅方向に延び布地Wを支持する支持部30と、支持部30上の布地Wに対して進退動可能に設けられ進出時に布地Wを押圧して布地WにエンボスBを形成する複数の押圧ピン40とを備え、支持部30を、布地Wを支持するダイ31と、ダイ31に列設され押圧ピン40の先端部が没入する穴を有したダイボタン33とを備えて構成し、押圧ピン40を進退動可能に保持するホルダ41を設け、このホルダ41の端部に布地Wをダイ31の支持面に対して押える押え部60を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維などで形成された熱可塑性の布地に熱を加えてエンボスを形成する布地用エンボス形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の布地用エンボス形成装置としては、例えば、特開平8−284059号(特許文献1)に記載された技術が知られている。
これは、図20に示すように、合成繊維などで形成され表面にパイルが形成された熱可塑性の布地Wに熱を加えて、パイルの表面にエンボスを形成して模様を現出させる装置であり、図示外の加熱室で例えば200℃程度に加熱された布地Wにテンションを付与して間欠的に送る複数のローラなどの組からなる布地送り機構(図示せず)と、布地送り機構によって送られる布地Wの送り方向に直交する幅方向に延び布地Wを支持するドラム状の支持部100と、支持部100に対峙して幅方向に密に列設されるとともに支持部100上の布地Wに対して進退動可能に設けられ進出時に布地Wを押圧して布地Wにエンボスを形成する複数の押圧ピン101と、押圧ピン101を進退動させるエアシリンダ102の列からなる押圧ピン駆動部103とを備えて構成されており、図示外の制御部によりこの押圧ピン駆動部103を制御して押圧ピン101を選択的に進退動させてパイルを押圧し、パイルを熱収縮させてエンボスに形成して模様を現出させるようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−284059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の布地用エンボス形成装置にあっては、布地Wがパイル用のものであり、パイルのない普通の布地に適用した場合、エンボス形成ができないという問題があった。
そのため、パイルのない普通の布地に適合させるために、例えば、支持部100に押圧ピン101に対応し押圧ピン101の先端部が没入する穴を形成して、布地Wを押圧ピン101で押圧して布地Wの裏面側に布地を突出させて、エンボスを形成することも考えられる。
しかしながら、単に、支持部100に穴を形成しても、押圧ピン101に押圧されて穴に入り込む布地Wが押圧ピン101に対応する部分のみならずその周囲も引っ張られて穴に入り込み、そのため、布地Wのエンボス部やエンボス周囲にシワが寄ってエンボスがきれいに形成されない欠点を有してしまう。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、普通の布地においても容易にエンボス形成ができるようにするとともに、エンボス形成部の周囲を押えてエンボスにシワがよらないようにしエンボスがきれいに形成できるようにしエンボス形成布地の品質向上を図った布地用エンボス形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明の布地用エンボス形成装置は、熱可塑性の布地に熱を加えてエンボスを形成する布地用エンボス形成装置であって、布地を間欠的に送る布地送り機構と、該布地送り機構によって送られる布地の送り方向に直交する幅方向に延び該布地を支持する支持部と、該支持部に対峙して幅方向に列設されるとともに該支持部上の布地に対して進退動可能に設けられ進出時に布地を押圧して該布地にエンボスを形成する複数の押圧ピンと、該押圧ピンを進退動させる押圧ピン駆動部と、該押圧ピン駆動部を制御して上記押圧ピンを選択的に進退動させる制御部とを備えた布地用エンボス形成装置において、
上記支持部を、上記布地を支持する支持面を有したダイと、該ダイに上記複数の押圧ピンに対応して幅方向に複数列設され上記押圧ピンの進出時に該押圧ピンの先端部が没入する穴を有したダイボタンとを備えて構成し、
上記押圧ピンを進退動可能に保持するとともに上記支持部に対して進退動可能なホルダと、該ホルダを進退動させるホルダ駆動部とを設け、上記ホルダの上記ダイに対峙する端部に該ホルダの進出時に上記布地を上記ダイの支持面に対して押える押え部を設けた構成としている。
【0007】
これにより、布地にエンボス加工を行なうときは、布地送り機構により布地を送ると、ホルダ駆動部が駆動し、ホルダは支持部に対して進出して、ホルダの押え部により、布地がダイの支持面に対して押えられる。布地が押えられると、押圧ピン駆動部が押圧ピンを進退動させる。この際には、押圧ピンが、布地を押圧し、ダイボタンの穴に押圧ピンの先端部が没入し、これにより、布地にエンボスが形成される。この場合、押圧ピンに対応する布地部分以外の布地が、ホルダの押え部によりダイの支持面に対して押えられているので、押圧ピンに対応する布地部分のみが押圧ピンに押圧されて穴に入り込み、そのため、その周囲が引っ張られて穴に入り込むなどしてエンボス部やエンボス周囲にシワが寄ってしまう事態が防止され、このため、エンボスがきれいに形成されるようになり、エンボス形成布地の品質向上が図られる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記押え部を、一側縁が上記ホルダに固定され他側縁が解放された板バネで構成している。これによれば、例えば、布地が、洋服の型に合わせてカットしたものであり、この布地を上紙及び下紙に挟んだ状態でエンボス形成するように布地送り機構で送られるような場合には、布地のあるところと布地のないところでは、上紙及び下紙の厚さが異なっているが、押え部は、板バネで構成されているので、厚さの違いに追従して上紙及び下紙を均等に押えることができ、そのため、確実に布地が押えられ、これによっても、エンボスがきれいに形成されるようになり、エンボス形成布地の品質向上が図られる。
この場合、上記板バネを、幅方向に沿って列設された多数の板バネ単体の集合で構成したことが有効である。幅方向に沿って列設された多数の板バネ単体の集合なので、板バネ単体が布地側の厚さの違いに夫々追従して均等に押えることができ、そのため、確実に布地が押えられ、これによっても、エンボスがきれいに形成されるようになり、エンボス形成布地の品質向上が図られる。
【0009】
また、必要に応じ、上記押圧ピンの断面形状と、上記ダイボタンの穴の断面形状とを相似形にした構成としている。押圧ピンの先端部がダイボタンの穴に没入してエンボスが形成される際、押圧ピンの断面形状とダイボタンの穴の断面形状とが相似形なので、所要の形状のエンボスが確実に形成される。
【0010】
更に、必要に応じ、上記ダイボタンをダイに対して着脱可能にし、上記押圧ピンをホルダに対して着脱可能にし、上記ダイボタン及び押圧ピンの組であってこれらの断面形状の異なる組を変更可能にした構成としている。エンボス自体の模様を変えたいときは、適宜の形状の押圧ピンとダイホルダの組を選択し、これに交換する。この場合、支持台やホルダ全部を変えなくても、ダイボタンや押圧ピンの部品を変えるだけでよいので、コストを高くすることなく、種々の模様に対応することができ、汎用性が向上させられる。
【0011】
更にまた、必要に応じ、上記押圧ピンによるエンボス形成後に、布地を支持部から持ち上げて布地のエンボス形成部をダイボタンから離間させる離間機構を設けた構成としている。押圧ピンがエンボスを形成後して後退すると、離間機構が駆動し布地を支持部から持ち上げて布地のエンボス形成部をダイボタンから離間させる。そして、再び、布地送り機構が駆動して布地を設定した送り量分前進動させる。この場合、離間機構により、布地のエンボス形成部がダイボタンから離間させられているので、エンボス形成部がダイボタンに引っかかってしまう事態が防止され、単に、送りを行なう場合に比較して、エンボスを傷めることなく、確実に布地の送りを行なうことができる。
【0012】
また、必要に応じ、上記支持部及びホルダを幅方向に移動可能にし、該支持部及びホルダを移動させる幅方向駆動部を設けた構成としている。エンボス形成毎に、幅方向駆動部により支持部及びホルダを幅方向に所定量移動させるようにすると、エンボスを幅方向に少しずつ位相をずらせて、例えば、ジグザグ状に形成することができるようになり、そのため、エンボス模様形成の幅が広くなり、汎用性が大幅に向上させられる。
【0013】
更に、必要に応じ、上記制御部を、上記布地送り機構が布地を送る1回毎の布地の送り量を設定する送り量設定手段と、各回毎に進退動させる押圧ピンを選択して設定する押圧ピン選択設定手段と、各回毎に幅方向移動量を設定する幅方向移動量設定手段と、各設定手段が設定した設定結果をパターン化して記憶する記憶手段と、該記憶手段が記憶した設定結果に基づいて上記各駆動部を駆動させる指令を送出する駆動部指令送出手段とを備えて構成している。送り量を適宜設定し、押圧ピンを選択できることは勿論、幅方向の移動量を適宜設定することができるので、エンボスを幅方向に少しずつ位相をずらせて、例えば、ジグザグ状に形成することができるようになり、そのため、エンボス模様形成の幅が広くなり、汎用性が大幅に向上させられる。
【0014】
そして、必要に応じ、上記布地送り機構を、布地の幅方向両端部の送り量を可変にする機能を備えて構成している。これによれば、エンボス形成毎に、布地の幅方向両端部の送り量を異ならせることができ、そのため、布地の送り毎に布地が斜めになり、相対的にエンボスの行を傾斜して形成することができるようになる。このため、エンボス模様形成の幅が広くなり、汎用性が大幅に向上させられる。
【0015】
この場合、上記布地送り機構を、開閉可能に設けられ閉時に布地を把持する一対の把持板と、該把持板の幅方向両端部に夫々設けられ把持板を送り方向に移動させ夫々個別に駆動可能な一対の把持板駆動部とを備えて構成したことが有効である。一対の把持板駆動部制御により、容易に布地の幅方向両端部の送り量を可変にすることができる。
そしてまた、上記制御部を、上記布地送り機構による布地の幅方向両端部の送り量を夫々個別に設定する端部個別送り量設定手段を備えて構成したことが有効である。布地の幅方向両端部の送り量を適宜設定できるので、布地を斜めにしてエンボスの行を傾斜して形成することができるようになり、エンボス模様形成の幅が広くなり、汎用性が大幅に向上させられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の布地用エンボス形成装置によれば、エンボスの形成時に、押圧ピンに対応する布地部分以外の布地を、ホルダの押え部によりダイの支持面に対して押えるので、押圧ピンに対応する布地部分の周囲が引っ張られて穴に入り込むなどしてエンボス部やエンボス周囲にシワが寄ってしまう事態を防止することができ、エンボスをきれいに形成できるようになり、エンボス形成布地の品質向上を図ることができる。
また、ダイボタンをダイに対して着脱可能にし、押圧ピンをホルダに対して着脱可能にした場合には、ダイボタンや押圧ピンの部品を変えるだけでエンボス自体の模様を変えることができ、コストを高くすることなく、種々の模様に対応することができ、汎用性を向上させることができる。
【0017】
更に、支持部及びホルダを幅方向に移動させるようにすると、エンボスを幅方向に少しずつ位相をずらせて、例えば、ジグザグ状に形成することができるようになり、そのため、エンボス模様形成の幅が広くなり、汎用性を大幅に向上させることができる。
更にまた、布地の幅方向両端部の送り量を可変にする機能を備えて構成した場合には、エンボス形成毎に、布地の幅方向両端部の送り量を異ならせることができ、エンボスの行を傾斜して形成することができるようになり、この点でも、エンボス模様形成の幅が広くなり、汎用性を大幅に向上させることができるなどの種々の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置について詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置は、図1乃至図4に示すように、熱可塑性の布地Wに熱を加えてエンボスBを形成するもので、ロールに巻回された布地Wあるいは洋服の型に合わせてカットした布地Wに対してエンボスBを形成する。実施の形態では、洋服の型に合わせてカットした布地Wを上紙Pa及び下紙Pbに挟んだ状態でエンボスBを形成するように設定されている。
【0019】
詳しくは、布地用エンボス形成装置は、図4に示すように、前側にテーブル2を有した機台1と、機台1に設けられ布地Wを間欠的に送る布地送り機構10とを備えている。
布地送り機構10は、洋服の型に合わせてカットした布地Wを機台1のテーブル2上で人手で上紙Pa及び下紙Pbに挟んで送るものであり、テーブル2の上部に設けられ上紙Paを巻回した上紙ロール11とテーブル2の下部に設けられ下紙Pbを巻回した下紙ロール12とを備え、上紙ロール11及び下紙ロール12から繰り出される上紙Pa及び下紙Pbをテーブル2上で接合し、この接合した上紙Pa及び下紙Pbに布地Wを挟んだ状態でテーブル2の前位にある一対のプレッシャローラ13に挟み、後流に至らしめる。機台1の後側においては、上紙Paを巻き取る上紙巻取ロール14と、下紙Pbを巻き取る下紙巻取ロール15とが設けられている。16は上紙巻取ロール14を回転させる一対の支持ローラである。下紙巻取ロール15は、支持ローラ16に連携したチェーン伝動機構17を介して回転させられる。この上紙巻取ロール14及び下紙巻取ロール15による上紙Pa及び下紙Pbの巻取により布地Wが開放されて排出される。
尚、布地Wを開放せずに、布地Wを挟んだ状態の上紙Pa及び下紙Pbを、上紙巻取ロール14に巻き取っても良い。この場合、下紙巻取ロール15に別の巻紙を巻回しておき、下紙巻取ロール15からの別の巻紙を下紙Pbの上に重ねて巻き取るようにすると良い。巻き取り方については、適宜変更してよい。
【0020】
また、布地送り機構10は、図5及び図6に示すように、布地Wの送り方向に直交する幅方向に延びるとともに開閉可能に設けられ閉時に上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wを把持する一対の把持板20と、この把持板20の幅方向両端部に夫々設けられ把持板20が布地Wを把持したとき把持板20を送り方向に移動させるとともに夫々個別に駆動可能な左右一対の把持板駆動部21とを備えて構成されている。
各把持板20は、一側縁が取付部材22に固定され他側縁が解放された板バネで構成され、この板バネは、図6に示すように、他側縁側が所定間隔で送り方向に沿って切込みが入れられており、これにより、幅方向に沿って列設された多数の板バネ単体20aの集合で構成されている。
一対の把持板20においては、上側の把持板20が、下側の把持板20に対してエアシリンダ24により駆動されるリンク機構25により取付部材22を介して開閉可能になっている。
【0021】
また、各把持板駆動部21は、下側の把持板20の取付部材22をネジ送り機構26により前後動させるもので、ネジ送り機構26は、サーボモータ27によりギヤ機構28を介して駆動される。各サーボモータ27は、夫々個別に回転数を異ならせることができ、各サーボモータ27の回転数を変化させて左右の送り速度を変えることができるようにしてある。即ち、本装置においては、布地送り機構10は、布地Wの幅方向両端部の送り量を可変にする機能を備えて構成されている。
【0022】
また、本装置は、図1,図7乃至図10に示すように、布地送り機構10によって送られる布地Wの送り方向に直交する幅方向に延び布地Wを支持する支持部30と、支持部30に対峙して幅方向に列設されるとともに支持部30上の布地Wに対して進退動可能に設けられ進出時に布地Wを押圧して布地WにエンボスBを形成する複数の押圧ピン40とを備えている。
支持部30は、布地送り機構10の把持板20の後位に設けられている。詳しくは、支持部30は、上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wを支持する支持面32を有したダイ31と、ダイ31に複数の押圧ピン40に対応して幅方向に複数列設され押圧ピン40の進出時に押圧ピン40の先端部が没入する穴34を有したダイボタン33とを備えて構成されている。
【0023】
ダイボタン33は、ダイ31に対して着脱可能に構成されている。図9に示すように、ダイボタン33は、ダイ31に形成された挿入孔35に挿脱可能に挿入され、ダイ31の側部に設けられ挿入孔35に連通する雌ネジ36に、雄ネジ37をねじ込むことにより、挿入されたダイボタン33が固定され、雄ネジ37を緩めることにより、ダイボタン33が取外し可能に構成されている。ダイボタン33の上面は、ダイ31の布地Wの支持面32と面一に取り付けられる。
【0024】
押圧ピン40は、図1,図7乃至図9に示すように、ホルダ41に進退動可能に保持されている。この押圧ピン40はホルダ41に対して着脱可能に構成されている。図9に示すように、押圧ピン40は、ホルダ41に形成された摺動孔42に挿脱可能に挿通され、ホルダ41の側部に設けられ摺動孔42に連通する雌ネジ43にねじ込まれた雄ネジキー44の先端を押圧ピン40に形成された長手方向の溝45に臨ませることにより回り止めされている。また、押圧ピン40の頭40aと摺動孔42の上部に形成された段部42aとの間にコイルスプリング46が介装され、押圧ピン40は、ダイボタン33から抜ける方向に常時付勢されている。
【0025】
また、ホルダ41と、ダイ31が固定された支持台30aには、電熱ヒータ47が設けられており、電熱ヒータ47の加熱により、押圧ピン40及びダイボタン33を加温し、押圧ピン40及びダイボタン33によるエンボスBの形成を可能にしている。
【0026】
更にまた、押圧ピン40を進退動させる押圧ピン駆動部50が設けられている。押圧ピン駆動部50は、図1,図2,図7乃至図9に示すように、ホルダ41の上側に位置しホルダ41に連結部材51を介して連結されたプレート50に押圧ピン40に対応して列設された複数のエアシリンダ53を備えて構成されている。エアシリンダ53には夫々個別に作動が可能なようにエア供給本管54からのエア配管55が並列に配管されている。エアシリンダ53は、図9に示すように、エアの供給により突出して押圧ピン40をコイルスプリング46の付勢力に抗して押圧し、これにより押圧ピン40を進出させて押圧ピン40の先端をダイボタン33に没入させ、エア供給の解除によりコイルスプリング46の付勢力による押圧ピン40の戻りに応じて元位置に復帰するピストン53aを備えている。エアシリンダ53の外側は雄ネジ53bに形成され、プレート52の雌ネジ52aに螺合することにより取り付けられている。そして、エアシリンダ53のプレート52に対する螺合位置を調整することにより、押圧ピン40のストロークを調整可能にしている。56はエアシリンダの設定された螺合位置でエアシリンダ53をロックするロックナットである。尚、図8において、符号59は、押圧ピン駆動部50を覆う開閉可能なフードである。
【0027】
このような構成の押圧ピン40の断面形状と、上記のダイボタン33の穴34の断面形状とは、相似形に形成されている。例えば、図11に示すように、円形(a),六角形(b)などの多角形,星型(c)等種々の種類の組み合わせが用意される。そして、上記のように、ダイボタン33をダイ31に対して着脱可能にし、押圧ピン40をホルダ41に対して着脱可能にすることにより、ダイボタン33及び押圧ピン40の組であってこれらの断面形状の異なる組が変更可能になる。そのため、ダイボタン33及び押圧ピン40の組を変更する簡単な機構で、種々の形状のエンボスBを形成することができるようになる。
【0028】
更に、ホルダ41は支持部30に対して進退動可能に設けられている。詳しくは、図7及び図9に示すように、ホルダ41は、幅方向に伸びる一対の取付バー57間に摺動可能に取り付けられている。ホルダ41の前後面には、レール57aが取り付けられており、取付バー57には、レール57aをスライド可能に包持するレールガイド57bが設けられている。
そして、取付バー57の両端部は、機台1に固定されたエアシリンダ装置からなるホルダ駆動部58のピストン58aに固定されており、このホルダ駆動部58のピストン58aの駆動により、ホルダ41は取付バー57を介して、進退動させられる。また、プレート52も連結部材51を介してホルダ41と同動し、これにより、エアシリンダ53も同動する。
【0029】
更にまた、図1,図7乃至図9に示すようにホルダ41のダイ31に対峙する端部にホルダ41の進出時に布地Wをダイ31の支持面32に対して押える押え部60が設けられている。押え部60は、一側縁がホルダ41に固定され他側縁が解放され、他側縁側がホルダ41の端部と離間してこの端部に対峙して設けられる板バネで構成されている。板バネには、押圧ピン40が通過して進退動可能な通孔61が形成されている。板バネは、図12に示すように、他側縁側に所定間隔で送り方向に沿って切込みが入れられており、これにより、幅方向に沿って列設された多数の板バネ単体60aの集合で構成されている。
【0030】
また、図5,図8及び図9に示すように、押圧ピン40によるエンボスBの形成後に、布地Wを支持部30から持ち上げて布地Wのエンボス形成部をダイボタン33から離間させる離間機構70が設けられている。この離間機構70は、ダイボタン33の前後に夫々設けられており、上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wを支持する支持板71と、支持板71をリンク機構72を介して上下動させるエアシリンダ73とから構成されている。支持板71の下動位置で、エンボスBの加工を行ない、エンボスBの加工後に、エアシリンダ73を駆動して支持板71を上動させ、布地Wを支持部30から持ち上げて布地Wのエンボス形成部をダイボタン33から離間させる。
【0031】
更に、支持部30及びホルダ41は、図1に示すように、幅方向に移動可能に機台1に設けられている。詳しくは、上述もしたように、図7及び図9に示すように、ホルダ41は、幅方向に伸びる一対の取付バー57間に摺動可能に取り付けられている。ホルダ41の前後面には、レール57aが取り付けられており、取付バー57には、レール57aをスライド可能に包持するレールガイド57bが設けられている。これにより、ホルダ41は、取付バー57に対して幅方向に移動可能になっている。
また、図7に示すように、支持部30は、機台1に対して幅方向に移動可能に支持されており、支持部30の端部には、上開放のU字状の凹部81を有した連結体80が設けられている一方、ホルダ41の端部には、連結体80の凹部81に上下動可能に係合するロッド82が突設されている。この連結体80及びロッド82により、支持部30及びホルダ41は同動して幅方向に移動可能になっている。
更に、機台1には、支持部30及びホルダ41を幅方向に移動させる幅方向駆動部83が設けられている。幅方向駆動部83は、支持部30をネジ送り機構84により前後動させるもので、ネジ送り機構84は、サーボモータ85によりギヤ機構86を介して駆動される。
【0032】
更にまた、本装置においては、図2,図3及び図13に示すように、布地送り機構10の把持板駆動部21,押圧ピン駆動部50,ホルダ駆動部58,幅方向駆動部83などの駆動系を制御するCPUなどで構成される制御部90を備えている。
詳しくは、制御部90は、図13に示すように、布地送り機構10の把持板駆動部21が布地Wを送る1回毎の布地Wの送り量(実施の形態では布地Wの全幅に亘って均等に送る送り量をいう)を設定する送り量設定手段91と、各回毎に進退動させる押圧ピン40を選択して設定する押圧ピン選択設定手段92と、各回毎に幅方向移動量を設定する幅方向移動量設定手段93と、各設定手段が設定した設定結果をパターン化して記憶するハードディスクや磁気ディスク等の記憶手段94と、記憶手段94が記憶した設定結果に基づいて各駆動部を駆動させる指令を送出する駆動部指令送出手段95と、各設定手段による設定データを入力する入力手段96と、入力手段96による入力データを表示する表示手段97とを備えて構成されている。特に、制御部90においては、布地送り機構10による布地Wの幅方向両端部の送り量を夫々個別に設定する端部個別送り量設定手段98を備えて構成されている。表示手段97はCRTなどのモニターで構成され、入力手段96は、モニターに設定画面を表示し、この設定画面においてモニターに設けたタッチパネルにより設定データを入力するように構成されている。
【0033】
図14には、制御部90の送り量設定手段91及び幅方向移動量設定手段93における設定時のモニターの設定画面例を示す。設定画面110においては、ステップが書き込まれているステップ欄111が設けられ、このステップ欄111毎に送り欄112,揺動欄113,回数欄114,戻りステップ欄115が設けられている。送り欄112においては、送り量設定手段91に設定する送り量(単位「mm」)を書き込む送り量書込欄116(「平行」と表示)を有している。また、送り欄112においては、ステップ毎に、端部個別送り量設定手段98に設定する送り量(単位「mm」)を書き込む端部個別送り量書込欄を有している。端部個別送り量書込欄においては、右側の送り量を設定する右側端部個別送り量書込欄117(「右」と表示)、左側の送り量を設定する左側端部個別送り量書込欄118(「左」と表示)を有している。
【0034】
更に、揺動欄113においては、ステップ毎に、幅方向移動量設定手段93に設定する幅方向移動量(単位「0.1mm」)を書き込む幅方向移動量書込欄120(「幅」と表示)を有している。幅方向移動量書込欄120において、書き込まれる数値は原点から右側に移動する寸法であり、「0」は前のステップにおいて右側に移動する寸法があるとき、原点に復帰すること意味する。また、「0」は前のステップにおいて右側に移動する寸法指定がないときは、幅方向移動をさせないで原点位置を維持することを意味する。更に、揺動欄113において、幅方向に移動する場合、移動の間欠回数を書き込む回数書込欄121(「回数」と表示)を有している。例えば、幅方向移動量書込欄120(「幅」)に「450」,回数書込欄121(「回数」)に「10」と書き込んだときは、4.5mmずつ10回幅移動することを意味する。この場合、4.5mmずつ移動毎に、送り量書込欄116(「平行」)に書き込んだ送り量分送りが行なわれる。
【0035】
更にまた、回数欄114に書き込まれる数値は、各ステップにおいて、送り欄112,揺動欄113に書き込んだデータを繰り返して行なう回数である。
戻りステップ欄115に書き込まれる数値は、1つ前のステップ終了後に戻るべきスタートした最初のステップのステップ番号である。例えば、ステップ2で、戻りステップ欄115に「1」を書き込むと、ステップ1終了後ステップ1に戻ることを意味する。図14の例では、布地Wが15mm進む毎に全ての押圧ピン40が作動し、エンボスBが行列状に形成される。
【0036】
また、この設定画面におけるタッチパネルキー(釦)は、各欄毎に設けられ、書き込みすべき該当欄を押釦すると当該欄の書込が可能になる。書き込むべき数値は、数値キー122の押釦により行なわれる。またステップの移動は、矢印キー123において行なわれる。
「設定」キー124は、書き込んだ数値を確定させるとき押釦する。「新規」キー125は、新しいパターンを書き込むときに押釦する。「読込」キー126は、記憶手段94に記憶したデータを呼び出す際に押釦する。「保存」キー127は、記憶手段94に保存登録するときに押釦する。「終了」キー128は設定作業が終了した際に押釦する。「エンボスデザイン」キー129は、以下に説明する押圧ピン選択設定手段92における設定画面130に移行するときに押釦する。
【0037】
図15には、制御部90の押圧ピン選択設定手段92における設定画面130を示している。この設定画面130は、ステップ毎に押圧ピン40に該当する欄を並べた表131を備えて構成され、上記のステップ毎に使用する(進退動させる)押圧ピン40をその該当する欄に対応するタッチパネルキー(釦)を押釦する(図中黒塗り部)ことで指定する。
【0038】
従って、本実施の形態に係る布地用エンボス形成装置により、布地WにエンボスBの加工を行なうときは以下のようにする。取り扱う布地Wとしては、洋服の型に合わせてカットした布地Wの場合で説明する。
今、図16(a)に示すように、行列状に円形のエンボスBを形成するもので、各行においては、押圧ピン40を1つ置きに用い、かつ、行毎に押圧ピン40を交互に位相をずらせて用い、行列状に円形のエンボスBを形成する際の設定を行なう場合で説明する。予め、押圧ピン40及びダイボタン33は、横断面が円形のものが選択され、夫々、ホルダ41及びダイ31に対して取り付けられている。
【0039】
この際は、図16(b)(c)に示すように、予め、制御部90において、エンボスBに係る設定を行なっておき、記憶手段94に記憶しておく。そして、記憶手段94から該当する設定結果(パターン)を呼び出して、駆動部指令送出手段95により各駆動部を駆動させる指令を送出し、各駆動部を駆動させてエンボスBを形成する。
【0040】
機台1においては、図4に示すように、上紙ロール11と下紙ロール12からの上紙Pa及び下紙Pbがテーブル2上で接合され、この接合した上紙Pa及び下紙Pbが、プレッシャローラ13に挟み込まれて、機台1の後側の巻取ロール14,15に至っている。この状態で、テーブル2上で洋服の型に合わせてカットした布地Wを、人手で上紙Pa及び下紙Pbに挟み、布地Wの押圧ピン40に対する位置出しが行なわれると、布地送り機構10により送りが行なわれる。この際には、押圧ピン40及びダイボタン33は、電熱ヒータ47の加熱により加温されている。
【0041】
布地送り機構10においては、図5及び図6に示すように、先ず、把持板20が閉駆動され、上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wを把持する。この場合、布地Wのあるところと布地Wのないところでは、上紙Pa及び下紙Pbの厚さが異なっているが、各把持板20は、板バネで構成され、しかも、幅方向に沿って列設された多数の板バネ単体20aの集合で構成されているので、厚さの違いに追従して上紙Pa及び下紙Pbを均等に把持することができ、確実に布地Wが把持される。
【0042】
次に、各把持板駆動部21が駆動し、下側の把持板20の取付部材22をネジ送り機構26により前進させ、上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wを、設定した送り量分、前進動させる。
この状態で、ホルダ駆動部58が駆動し、ホルダ41は支持部30に対して進出し、これにより、ホルダ41の押え部60により、上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wがダイ31の支持面32に対して押えられる。この場合、布地Wのあるところと布地Wのないところでは、上紙Pa及び下紙Pbの厚さが異なっているが、押え部60は、板バネで構成され、しかも、幅方向に沿って列設された多数の板バネ単体60aの集合で構成されているので、厚さの違いに追従して上紙Pa及び下紙Pbを均等に押えることができ、確実に布地Wが押えられる。布地Wが押えられると、布地送り機構10においては、把持板20が開駆動され、上紙Pa及び下紙Pbの把持を解除し、各把持板駆動部21は、下側の把持板20の取付部材22をネジ送り機構26により後退させ、把持板20を元位置に復帰させ、次の送りに備える。
【0043】
また、布地Wが押えられると、押圧ピン駆動部50が押圧ピン40を進退動させる。これにより、図9及び図10に示すように、押圧ピン40が、進出時に上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wを押圧し、ダイボタン33の穴34に押圧ピン40の先端部が没入し、これにより、布地WにエンボスBを形成し、その後、後退して元位置に復帰する。
この場合、押圧ピン40の先端部がダイボタン33の穴34に没入するので、布地Wの裏面側に布地Wが突出し、確実にエンボスBが形成される。また、押圧ピン40の断面形状と、ダイボタン33の穴34の断面形状とが相似形なので、所要の円形のエンボスBが確実に形成される。しかも、この場合、押圧ピン40に対応する布地部分以外の布地Wが、ホルダ41の押え部60によりダイ31の支持面32に対して押えられているので、押圧ピン40に対応する布地部分のみが押圧ピン40に押圧されて穴34に入り込み、そのため、その周囲が引っ張られて穴34に入り込むなどしてエンボスBやエンボスBの周囲にシワが寄ってしまう事態が防止され、そのため、エンボスBがきれいに形成されるようになる。また、押え部60は、板バネなので、弾性により押えることができ、布地Wに無理をかけることなく確実に押えることができる。
【0044】
次に、押圧ピン40が、後退して元位置に復帰すると、離間機構70が駆動し、支持板71が上動させられ、上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wを支持部30から持ち上げて布地WのエンボスBの形成部をダイボタン33から離間させる。
そして、再び、各把持板駆動部21が駆動し、下側の把持板20の取付部材22をネジ送り機構26により前進させ、上紙Pa及び下紙Pbを介して布地Wを、設定した送り量分、前進動させる。
この場合、離間機構70により、布地WのエンボスBの形成部がダイボタン33から離間させられているので、エンボスBの形成部がダイボタン33に引っかかってしまう事態が防止され、単に、送りを行なう場合に比較して、エンボスBを傷めることなく、確実に布地Wの送りを行なうことができる。
このような繰り返しにより、布地WにエンボスBが形成されていく。この例では、図16(a)に示すように、行列状のエンボスBが形成される。エンボスBが形成された布地Wは、上紙Pa及び下紙Pbとともに送られ、上紙Pa及び下紙Pbは夫々上紙巻取ロール14及び下紙巻取ロール15に巻き取られるので、この上紙Pa及び下紙Pbから開放され、排出されていく。
【0045】
また、上記の例では、円形のエンボスBを形成したが、円形以外の形状に形成するときは、図11に示すように、適宜の形状の押圧ピン40とダイボタン33の組を選択し、これに交換する。交換に際しては、図9に示すように、ダイボタン33においては、ダイ31の側部に設けられた雄ネジ37を緩め新たなダイボタン33に交換し、再び雄ネジ37を締付ける。押圧ピン40においては、連結部材51からプレート50を外し、新たな押圧ピン40に交換し、プレート50を再び連結部材51に取り付ける。この場合、支持部30やホルダ41全部を変えなくても、ダイボタン33や押圧ピン40の部品を変えるだけでよいので、コストを高くすることなく、種々の模様に対応することができ、汎用性が向上させられる。
【0046】
図17(a)には、エンボス形成の別の例を示す。これは、エンボスBを、行毎に1個→間隔を1つ開けた2個→間隔を1つずつ開けた3個→間隔を1つ開けた2個→1個と形成した「ひし形」模様を行列状に形成するもので、「ひし形」模様の行毎に「ひし形」の位相を交互にずらせるようにしたものである。この場合も上記と同様に、図17(b)(c)に示すように、設定画面110,130で設定を行ない、装置を作動させる。詳細は上記と同様である。
【0047】
次に、図18(a)に示すように、エンボスBを幅方向に少しずつ位相をずらせてジグザグ状に形成する場合について説明する。この例では、図18(b)に示すように、制御部90の設定画面110の揺動欄113において、例えば、以下の設定を行なっておく。ステップ(実施例では「165」)では、原点から右側に移動する寸法が45mmであり、更に、移動の間欠回数が10回であるので、幅方向移動量書込欄120(「幅」)に「450」,回数書込欄121(「回数」)に「10」と書き込む。ステップ(実施例では「166」)では、右側の移動端から左側の原点に同様に復帰させるので、即ち、左側に移動する寸法が45mmであり、更に、移動の間欠回数が10回であるので、幅方向移動量書込欄120(「幅」)に「0」,回数書込欄121(「回数」)に「10」と書き込む。これらを繰り返すので、ステップ(実施例では「166」)では、戻りステップ欄115に、戻るべきステップ(実施例では「165」)の数値を書き込む。これにより、右側へ4.5mmずつ10回幅移動し、次に左側へ4.5mmずつ10回幅移動し、4.5mmずつ移動毎に、送り量書込欄116(「平行」)に書き込んだ送り量(実施例では15mm)分送りが行なわれる。また、作動させる押圧ピン40は、特定のものを、押圧ピン選択設定手段92における設定画面で選択指定しておけば良い。
【0048】
これによれば、上記と同様に、エンボスBの形成が行なわれるが、エンボスBの形成毎に、図7に示すように、幅方向駆動部83により、支持部30及びホルダ41が幅方向に移動させられる。この場合、幅方向駆動部83のネジ送り機構84が作動し、支持部30が幅方向に移動すると、連結体80及びロッド82を介してホルダ41も同動する。そして、幅方向移動毎に、上記と同様に所定の押圧ピン40が作動させられ、図18(a)に示すように、所定のエンボスBが形成されていく。
【0049】
次に、図19(a)に示すように、エンボスBの行を交互に傾斜して形成する場合について説明する。この例では、図19(b)に示すように、制御部90の設定画面110の送り欄112において、例えば、以下の設定を行なっておく。ここでは、先の行を、右40mm,左15mm送り、次の行を、右15mm,左40mm送り、再び、その次の行を、右40mm,左15mm送り、このように行毎に交互に送り量を逆にしながら送るので、送り欄112においては、ステップ(実施例では「300」)において、右側端部個別送り量書込欄118に40mm,左側端部個別送り量書込欄117に15mmと書き込む。ステップ(実施例では「301」)において、右側端部個別送り量書込欄118に15mm,左側端部個別送り量書込欄117に40mmと書き込む。これらを繰り返すので、ステップ(実施例では「302」)では、戻りステップ欄115に、戻るべきステップ(実施例では「300」)の数値を書き込む。
【0050】
これによれば、上記と同様に、エンボスBの形成が行なわれるが、図6に示すように、各把持板駆動部21においては、夫々、ネジ送り機構26による把持板20の送り量が左右で異なり、布地Wの幅方向両端部の送り量が違う。そのため、図19(a)に示すように、布地Wの送り毎に布地Wが斜めになり、上記と同様に所定の押圧ピン40が作動させられると、相対的にエンボスBの行が行毎に傾斜方向が異なるように形成されていく。
【0051】
尚、上記の実施の形態において、エンボスBを形成するパターンをいくつか示したが、上述したパターンに限定されるものではなく、制御部90での設定により、無数のパターンの設定を行なうことができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置を示す要部斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置を示す側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置において、布地送り機構の要部構成を示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置において、布地送り機構の要部構成を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置の支持部及び押圧ピンに係る要部構成を示す正面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置の支持部及び押圧ピンに係る要部構成を示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置の支持部及び押圧ピンに係る要部構成を示す拡大側面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置のダイボタンと押圧ピンの関係を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置のダイボタンと押圧ピンの形状例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置の押え部の構成を示す平面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置において、制御部の設定画面例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置において、制御部の別の設定画面例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置を用いてエンボスを形成する実施例を示す図であり、(a)は布地におけるエンボスの形成状態を示す図、(b)(c)は制御部の設定画面を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置を用いてエンボスを形成する別の実施例を示す図であり、(a)は布地におけるエンボスの形成状態を示す図、(b)(c)は制御部の設定画面を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置を用いてエンボスを形成するまた別の実施例を示す図であり、(a)は布地におけるエンボスの形成状態を示す図、(b)は制御部の設定画面を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態に係る布地用エンボス形成装置を用いてエンボスを形成する更にまた別の実施例を示す図であり、(a)は布地におけるエンボスの形成状態を示す図、(b)は制御部の設定画面を示す図である。
【図20】従来の布地用エンボス形成装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
W 布地
B エンボス
Pa 上紙
Pb 下紙
1 機台
2 テーブル
10 布地送り機構
11 上紙ロール
12 下紙ロール
13 プレッシャローラ
14 上紙巻取ロール
15 下紙巻取ロール
16 支持ローラ
20 把持板
21 把持板駆動部
26 ネジ送り機構
27 サーボモータ
30 支持部
31 ダイ
33 ダイボタン
40 押圧ピン
41 ホルダ
47 電熱ヒータ
50 押圧ピン駆動部
53 エアシリンダ
58 ホルダ駆動部
60 押え部
70 離間機構
71 支持板
80 連結体
82 ロッド
83 幅方向駆動部
84 ネジ送り機構
85 サーボモータ
90 制御部
91 送り量設定手段
92 押圧ピン選択設定手段
93 幅方向移動量設定手段
94 記憶手段
95 駆動部指令送出手段
96 入力手段
97 表示手段
98 端部個別送り量設定手段
110,130 設定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性の布地に熱を加えてエンボスを形成する布地用エンボス形成装置であって、布地を間欠的に送る布地送り機構と、該布地送り機構によって送られる布地の送り方向に直交する幅方向に延び該布地を支持する支持部と、該支持部に対峙して幅方向に列設されるとともに該支持部上の布地に対して進退動可能に設けられ進出時に布地を押圧して該布地にエンボスを形成する複数の押圧ピンと、該押圧ピンを進退動させる押圧ピン駆動部と、該押圧ピン駆動部を制御して上記押圧ピンを選択的に進退動させる制御部とを備えた布地用エンボス形成装置において、
上記支持部を、上記布地を支持する支持面を有したダイと、該ダイに上記複数の押圧ピンに対応して幅方向に複数列設され上記押圧ピンの進出時に該押圧ピンの先端部が没入する穴を有したダイボタンとを備えて構成し、
上記押圧ピンを進退動可能に保持するとともに上記支持部に対して進退動可能なホルダと、該ホルダを進退動させるホルダ駆動部とを設け、上記ホルダの上記ダイに対峙する端部に該ホルダの進出時に上記布地を上記ダイの支持面に対して押える押え部を設けたことを特徴とする布地用エンボス形成装置。
【請求項2】
上記押え部を、一側縁が上記ホルダに固定され他側縁が解放された板バネで構成したことを特徴とする請求項1記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項3】
上記板バネを、幅方向に沿って列設された多数の板バネ単体の集合で構成したことを特徴とする請求項2記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項4】
上記押圧ピンの断面形状と、上記ダイボタンの穴の断面形状とを相似形にしたことを特徴とする請求項1,2または3記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項5】
上記ダイボタンをダイに対して着脱可能にし、上記押圧ピンをホルダに対して着脱可能にし、上記ダイボタン及び押圧ピンの組であってこれらの断面形状の異なる組を変更可能にしたことを特徴とする請求項4記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項6】
上記押圧ピンによるエンボス形成後に、布地を支持部から持ち上げて布地のエンボス形成部をダイボタンから離間させる離間機構を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項7】
上記支持部及びホルダを幅方向に移動可能にし、該支持部及びホルダを移動させる幅方向駆動部を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項8】
上記制御部を、上記布地送り機構が布地を送る1回毎の布地の送り量を設定する送り量設定手段と、各回毎に進退動させる押圧ピンを選択して設定する押圧ピン選択設定手段と、各回毎に幅方向移動量を設定する幅方向移動量設定手段と、各設定手段が設定した設定結果をパターン化して記憶する記憶手段と、該記憶手段が記憶した設定結果に基づいて上記各駆動部を駆動させる指令を送出する駆動部指令送出手段とを備えて構成したことを特徴とする請求項7記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項9】
上記布地送り機構を、布地の幅方向両端部の送り量を可変にする機能を備えて構成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項10】
上記布地送り機構を、開閉可能に設けられ閉時に布地を把持する一対の把持板と、該把持板の幅方向両端部に夫々設けられ把持板を送り方向に移動させ夫々個別に駆動可能な一対の把持板駆動部とを備えて構成したことを特徴とする請求項9記載の布地用エンボス形成装置。
【請求項11】
上記制御部を、上記布地送り機構による布地の幅方向両端部の送り量を夫々個別に設定する端部個別送り量設定手段を備えて構成したことを特徴とする請求項9または10記載の布地用エンボス形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−183162(P2006−183162A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375996(P2004−375996)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(592239774)株式会社東洋工機 (6)
【Fターム(参考)】