説明

布状質感ELランプ

【課題】視覚及び触覚に訴えるELランプを提供すること。
【解決手段】質感付きELパネルは、第1の主要面と第2の主要面とを有する、半透明のシート(14)と、前記第1の主要面に配置されたフロック(13)と、前記第2の主要面に配置されたELランプ材料(12)とを備えている。ELランプ材料は、前面電極(15)、蛍光層(16)、誘電層(17)、背面電極(18)を有する。ランプ材料は、第2の主要面にスクリーン印刷されるか積層されることができ、パネルは、3次元物体に成型されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜無機エレクトロルミネセンス(EL)ランプに関し、特に布状の質感を有するELランプに関する。
【0002】
本明細書中、当業者に理解されるように、「厚膜」とは、ある種類のELランプを指し、「薄膜」とは、別の種類のELランプを指す。これらの用語は、広く厚みに関するものにすぎないが、実際は、異なる分野を区別するものである。一般に、薄膜ELランプは種々の層を、通常はガラス基板もしくは前層に真空蒸着させることにより、形成される。厚膜ELランプは、通常、インク層を基板に、例えば、ロールコーティングやスプレー、または種々の印刷技術により付着させることによって形成される。インク付着のための技術は排他的ではないが、通常は、いくつかのランプ層が同じ方法で、例えばスクリーン印刷により付着される。薄い厚膜ELランプは用語として矛盾するものではなく、そのようなランプは薄膜ELランプよりかなり厚い。
【0003】
厚膜ELランプにおいて、当業者に理解されるように、「無機」とは、ホスト結晶としてシリコンやガリウムを含まない、結晶体からなる蛍光材料、即ち蛍光体を指す。(結晶は不用意に、または故意に不純物をドープされていてよい。「ホスト」とは、結晶自体を指し、ドーパントを指すものではない。)「無機」という用語は、ELランプの原料となるその他の材料を指すものではない。厚膜EL蛍光体粒子は、通常、硫化亜鉛をベースにした物質であり、色中心として、活性化剤として、または蛍光体の特性を必要に応じて修正するため結晶格子の欠陥を修正するように、小量の他の物質を含んでいる。
【0004】
本明細書中、EL「パネル」とは1以上の発光領域を含む一枚のシートであり、各発光領域がEL「ランプ」である。ELランプは、主に、2枚の導電電極の間に誘電層を有するコンデンサからなり、これら導電電極のうち少なくとも1枚は透明である。誘電層は蛍光粉末を含むことができ、または別個の蛍光粉末の層を誘電層に隣接して設けることもできる。蛍光粉末は、比較的低電流を用い、強い電場の存在下で光を放射する。
【背景技術】
【0005】
近年(1990年以後)のELランプは、通常、約7.0ミル(0.178mm)の厚みを有するポリエステルまたはポリカーボネート材料でできた透明な基板を備えている。酸化インジウムスズまたは酸化インジウムの透明な前面電極が約1000Å(0.0001mm)の厚みまで基板上に真空蒸着される。蛍光層が前面電極にスクリーン印刷され、蛍光層に誘電層がスクリーン印刷される。背面電極は誘電層にスクリーン印刷される。当該技術分野では、ロールコーティングによって各層を付着させることも知られている。
【0006】
スクリーン印刷に用いられるインクはバインダ、溶媒および充填材を含み、充填材が、インクの性質を決める。従来、当該技術分野で知られているように、各層の溶媒及びバインダが化学的に同一もしくは化学的に類似であることは、隣接する層の間に化学的融和性と良好な接着性を提供する。例えば、米国特許第4816717号(ハーパーら)を参照。例えば、米国特許第5565733号(クラフチックら)とそのファミリーにより開示されているように、ランプを3次元形状に成型することが、当該技術分野で知られている。
【0007】
質感表面を有するELランプも当業者には従来から知られているが、それは単に外観上のものに過ぎず、触感のある物体ではなかった。例えば、米国特許第5224078号(マリン)は、交換可能な文字盤を有する腕時計を開示する。米国特許第5620348号(サンタナら)及び米国特許第6515416号(チコ)は、種々の視覚効果を生じさせる、透明な層の表面処理を開示する。米国特許第5964514号(カーターら)は、ELランプにより照明される計測器背面の質感表面を開示する。質感表面は、反射防止機能を提供する。きめが粗いように示されていても、反射防止コーティングは、通常、肉眼で見える特徴よりはむしろ顕微鏡的な特徴を有する。そうであっても、当該技術分野で知られる製品のいずれも、触覚に訴えるものではない。
【0008】
ELランプは、主に、商業上、装飾的というより機能的な方法で用いられる。自動車、靴、バックパックなどのアクセント用にELランプを開示する特許は存在するが、商業的な使用は稀である。ELランプが、1つの感覚よりも2つの感覚に訴えたならば、ELランプの装飾的な用途はかなり増えるであろう。このように、視覚だけでなく触覚にも訴える、質感付きELランプの必要性が当該技術分野には存在する。
【0009】
プラスチック基板にフロック(flock;短繊維)を付着させてビロードのような質感表面を形成することが知られている。例えば、米国特許第4810549号(アブラムスら)及び第5047103号(アブラムスら)を参照。この技術によれば、種々の細かいカラーデザインを接着力の強い、不織布状の被覆物で作成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記を鑑みて、本発明の目的は、視覚及び触覚に訴えるELランプを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、布状の質感を有するELランプを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、3次元形状に成型できる、質感表面を有するELランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、以下のような本発明において達成される。即ち、本発明において、質感付きELパネルは、第1の主要面と第2の主要面を有する半透明のシートと、第1の主要面に配置されるフロックと、第2の主要面に配置されるELランプ材料とを備えている。ELランプ材料は、前面電極と、蛍光層と、誘電層と、背面電極とを備えている。ランプ材料は、第2の主要面にスクリーン印刷されるか、積層されることができ、パネルは、3次元形状に成型されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することによって、より完全に理解されるであろう。
【0015】
図1は、本発明による、質感(触感)表面を有するELランプの平面図である。この表面は微細な、斜めのリブを有しており、これは、室内外両用カーペットか、または1940年代に製造された自動車の内装の布張りを思い起こさせる。リブは、かすかではあるが、指先で感じることができる。点灯しない時、ランプは灰色である。いかなる色も照明に用いることができる。この特定のサンプルは、点灯した時、青みがかった緑色であった。サンプルは、美的な証明ではなく、概念的な証明のために作られた。図1と図2は、平台スキャナーでサンプルをスキャンし、色をグレースケールに制限することにより作成された。
【0016】
図2は、数色のフロックを用いることによって可能な細部を示す。原物は多色である。例えば、最も暗い部分は濃い青である。濃いグレーの領域はマゼンタである。中間的なグレーの領域は濃い黄色である。外側の境界は、青みを帯びたグレーであり、淡い(light)境界はオフホワイトである。サンプルは均一な質感を有し、ミニチュアペルシャ絨毯のような外観と触感がある。
【0017】
図3は、本発明により構成されるELランプの断面図である。種々の層は、正確な比率では示されていない。ランプは、質感付き基板11を備え、この基板は対向する主要な面を有する、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネイトなどのプラスチック製半透明シートを備えている。図1のような向きで、フロック(flock;短繊維)13がシート14の下側の主要面に取り付けられている。ELランプ材料12は、シート14の上側の主要面に、例えば、スクリーン印刷により設けられている。溶媒ベースであるかUV硬化性であるかにかかわらず、現在最も入手しやすいランプ材料は、ポリカーボネイト、ポリエステル、またはポリウレタンのうちの少なくとも1つと融和性がある。
【0018】
透明な前面電極15がシート14の上に重なり、これは、導電性インクの薄い層である。蛍光層16は前面電極の上に重なり、誘電層17は蛍光層の上に重なっている。層16と17は、用途によっては組み合わされる。誘電層17の上に重なっているのは、背面電極18である。随意の支持層19を、例えば、ランプ10をシールするために設けることができる。フロックはパターンを形成していてよい。即ち、ELパネル10の全面にわたって付着していなくてもよい。いずれの電極も、付着されるフロックのデザインと共に所望の効果を生じさせるようにパターンを形成していてよい。ELパネル10は、当業者に知られているように、蛍光層でパターンを形成したり、適当な縦続接続層(cascading layers)を用いることによって、いくつかの異なる色のランプを備えることができる。ランプ材料12を基板11の面に設けるために、公知の方法や材料を用いることができることは、本発明の明白な利点である。
【0019】
層20は接着層である。即ち、層20は、接着促進剤で払拭する(wiping)などの表面処理を示すか、又は、例えば、基板11とランプ材料12との接着を促進する樹脂層のような、ランプ内に残る層のいずれかである。本発明の一実施形態では、層20は、ランプ材料12の他の層と略同一の溶媒及びバインダを有する別個の樹脂層である。
【0020】
ELランプからの光は、通常、ランバートの法則による(Lambertian)。即ち、輝度(brightness)は法線方向に対する角度の余弦関数である。光は、主に、ランプ10からフロック13を通じて照射されるが、フロックがあるために、ランバートの法則にはよらない(non−Lambertian)。光は、フロックの長さによって減衰が起こり、かなりぼんやりしたオフアクシス(off−axis;軸外光)となる。
【0021】
フロックは、音がフロックによってわずかに弱められるという第2の効果を有しており、この効果もまた、フロックの長さによって変化する。音はランプ自体から発生するものであっても良いし、ランプに入射するものであってもよい。
【0022】
図4は、本発明により構成される質感付きランプを備えた成型物品の斜視図である。物品21は、例えば、インストルメントパネルの計測器のベゼル(bezel)であり、物品の前面に3次元形状に成型される、質感付きELパネル23を備える。すべての質感表面が発光する必要はなく、質感は、たとえば、ELパネルが点灯したとき目に見えるメッセージを、隠すために用いることができる。ベゼルの外面は、物品の外観をさらに向上させるために、質感のない、または異なる質感の外縁を含む。このように、質感を与えることは、特徴を際立たせたり、目立たなくしたりするために利用することができる。この場合、ベゼルの前面は、インストルメントパネルの残り(図示せず)や、ベゼルが取り付けられる他の部分に溶け込むように質感を与えられる。
【0023】
上記したように、本発明は視覚と触覚に訴えるELパネルを提供し、特に、布状の質感を有するELパネルを提供する。ELパネル自体は、公知の材料や技術を用いて作られるので、本発明による質感付きパネルは、やはり公知の技術を用いて3次元形状に成型することができる。
【0024】
上述したことから、種々の変更が本発明の範囲内で可能であることは、当業者には明らかであろう。例えば、ELパネルは、リリース紙や基板11に積層されることができる。この技術は、特に、ポリウレタンのような、薄くて可撓性の高いランプ材料に有用である。「布のような」質感を有すると言っても、材料は、通常、フェルトのように押しつぶされてはいない。むしろ、フロックは、通常、成型前のランプの面に対して垂直な向きである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明により構成されるELランプの平面図である。
【図2】図2は、本発明により構成される、他のELランプの平面図である。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施形態により構成されるELランプの断面図である。
【図4】図4は、本発明により構成される質感付きランプを備えた、3次元形状の成型物品である。
【符号の説明】
【0026】
10 ELランプ
11 質感付き基板
12 ELランプ材料
13 フロック
14 シート
15 前面電極
16 蛍光層
17 誘電層
18 背面電極
19 支持層
20 樹脂層
21 物品
23 パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主要面と第2の主要面とを有する、半透明のシートと、
前記第1の主要面に配置されたフロック(flock;短繊維)と、
前記第2の主要面に配置されたELランプ材料とを備えた、質感付きELパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のELパネルであって、
前記ELランプ材料は、前面電極と、蛍光層と、誘電層と、背面電極とを備えることを特徴とする、ELパネル。
【請求項3】
請求項1に記載のELパネルであって、
前記ランプ材料は、前記第2の主要面にスクリーン印刷されることを特徴とする、ELパネル。
【請求項4】
請求項1に記載のELパネルであって、
前記ランプ材料は、前記第2の主要面に積層されることを特徴とする、ELパネル。
【請求項5】
請求項1に記載のELパネルであって、
前記パネルは、3次元形状の物体に成型されることを特徴とする、ELパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−536709(P2007−536709A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511526(P2007−511526)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/015413
【国際公開番号】WO2005/109962
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(500105311)ワールド・プロパティーズ・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】