説明

布製印刷品及びその製造プロセス

【課題】布地上に印刷された紫外線インキを瞬間的にドライングさせ、紫外線インキの拡張を防止でき、布製印刷品上の画像がより精美かつ綺麗になり、且つ、機器により大量生産でき、コストを有効に低下し、工数を削減できることを課題とする。
【解決手段】布製印刷品製造プロセスは、結合層及び布地を用意し、前記布地及び前記結合層を貼り付ける工程と、前記結合層及び前記布地を印刷機に搬送して紫外線印刷を行う工程とを含む。さらに、布製印刷品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布製印刷品及びその製造プロセスに関り、特に、印刷された布製印刷品及びその製造プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの印刷方式は、大体、スクリーン印刷(例えば、服上の模様)や、大型出力(例えば、路傍の布製旗及びポスター)及び熱転写(例えば、服上の絵柄)等の方式であり、絵柄や文字を布地上に付けていくものである。スクリーン印刷は、直接にスクリーン版上のインキを布地上にかき付けてプリントする方式であるが、布地が濡れるため収縮が生じ、インキは布地の毛細現象によって拡張してはみ出され、色を正しく重ねることが難く、絵柄や文字も曖昧になり易く、しかも、人為的な作業及び気候の要素もその印刷品質に影響を与えている。さらに、スクリーン版は色の塊を主とすることから、単一の版により複雑な絵柄の諧調を印刷することができないので、十分な網点でパターンの諧調を良好に表現するためには、数十の版を作る必要があり、コストはかなり大きくなる。
【0003】
印刷による効果を求めるため、例えば、「大型出力」でポスターを印刷するようなデジタル印刷の方式を使用するようになってきた。このような印刷方式は、大型のインクジェットプリンタを用いている。大型出力は印刷品をより精美にすることができるが、印刷過程において時間が非常にかかり、且つ、大型出力の画像ファイルは、所定のフォーマットを必要とし、また、一般に印刷数量も少量なので、大量に出版印刷する必要がある書籍や、ポスター及びカレンダーなどの印刷品にとって、コストが合わない。
【0004】
熱転写は、昇華インキ(昇華インク)を用い絵柄を布地上に印刷するものであり、昇華インキの分子は、加熱により気体に変化(即ち、昇華という)するが、熱転写の過程において、少なくとも160℃〜200℃の高温が必要なので、熱転写は、一般にセラミックや、金属及び人工繊維の服にしか使うことができない。また、布地が収縮されるので、熱転写された後の絵柄は、クラックまたは色落ちが発生し易く、且つ、機器は大量に印刷することができない。
【0005】
そのため、本発明者は、上記欠点を改良することに鑑みて、長年以来この領域で積み上げた経験により、専念な観察かつ研究をし、さらに学術理論の運用に合せ、合理的に設計され、かつ前記欠点を有効に改善できる本発明を提案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、布製印刷品をより精美にすることができ、且つ、機器により大量生産でき、コストを有効に低下し、工数を削減できる布製印刷品及びその製造プロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明による布製印刷品製造プロセスは、
結合層及び布地を用意し、前記結合層の一面にゲル層を塗布し、さらに前記布地を前記ゲル層を介して前記結合層に貼り付けて、前記ゲル層を前記結合層と前記布地との間に介在させる工程と、
前記結合層及び前記布地を印刷用サイズにカットし、さらに、前記結合層及び前記布地を押圧して平坦化させる工程と、
印刷しようとする画像を用意し、前記画像の三原色(RGB)を印刷用の四色(CMKY)に変換する工程と、
印刷用の四色にそれぞれ対応して複数の版を作製し、さらに前記版を印刷機のインキタンク内にそれぞれ装着する工程と、
前記結合層及び前記布地を前記印刷機に搬送して紫外線印刷を行い、前記布地に印刷された紫外線インキを瞬間的にドライングさせる工程と、
前記結合層及び前記布地を後加工し、様々な布製印刷品を作製する工程とを含む。
【0008】
本発明による布製印刷品は、一面にゲル層が塗布された結合層と、一面に紫外線インキ層が印刷され、もう一面は前記ゲル層を介して前記結合層に重ねられた布地とを含み、前記ゲル層は前記布地と前記結合層との間に介在されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による布製印刷品製造プロセスは、前記結合層及び布地を紫外線照射で印刷することにより、紫外線は高いエネルギーを有し、さらに、紫外線インキは乾きが速い特性を持っているので、前記布地上に印刷された紫外線インキを瞬間的にドライングさせ、紫外線インキの布地の毛細現象による拡張を防止でき、布製印刷品上の画像がより精美となり、且つ、機器により大量生産でき、コストを有効に低下し、工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による布製印刷品製造プロセスの工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明による布製印刷品製造プロセスにおける結合層及び布地の結合を示す図である。
【図3】本発明による布製印刷品製造プロセスにおける印刷機を示す斜視図である。
【図4】本発明による布製印刷品製造プロセスにおける印刷機を示す正面図である。
【図5】本発明による布製印刷品を示す分解斜視図である。
【図6】本発明による布製印刷品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴及び技術内容をさらに理解ならしむため、以下に本発明に関る詳しい説明及び添付図面を参照する。これにより、深く且つ具体的な理解が得られるが、それらの添付図面は参考及び説明のみに使われるものであり、本発明の主張範囲を狭義的に限定するものではないことは言うまでもないことである。
【0012】
図1〜図4に示すように、本発明による布製印刷品製造プロセスは、以下のステップを含む。
【0013】
(ステップS101)結合層1及び布地2を用意し、該結合層1及び布地2は、その一部がリールに巻き取られ、コータ4(図2に示すように)で結合層1の一面にゲル層3を塗布し(図5に示すように)、ゲル層3の厚さは約0.015mmであり、さらに、布地2と結合層1とを2つのローラ5で加圧して接着させ、ゲル層3を結合層1と布地2との間に挟まれるようにする。圧力は約300kg/平方インチ(約50kg/cm)である。
【0014】
結合層1は紙材またはプラスチック材であり、布地2はシルク、ベッチンまたはその他の布地である。結合層1が紙材である場合、ゲル層3はヒドロゲルであり、結合層1がプラスチック材である場合、ゲル層3は有機ゲルであり、結合層1は必要に応じて異なる厚さにして、布地2に十分な支持力を与え、布地2が濡れて収縮して反り返ることを避ける。
【0015】
(ステップS103)結合層1及び布地2を印刷用サイズにカットし(例えば、全判、1/2判または1/4判)、さらに、結合層1及び布地2を油圧機(図示せず)で押圧して平坦化させる。少量印刷の際には、手作業で結合層1及び布地2を押圧して平坦化させてもよい。
【0016】
(ステップS105)印刷しようとする画像(図示せず)を用意し、コンピュータや他のデジタル電子設備で画像の赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の三原色(RGB)を印刷用の青(cyan)、赤(Magenta)、黒(black)、黄(Yellow)の四色(CMKY)に変換する。
【0017】
(ステップS107)製版機(図示せず)で印刷用の四色にそれぞれ対応して複数の版6を作製し、さらに版6を印刷機7のインキタンク74の一側方(図4に示すように)にそれぞれ差し込む。その後、版6は印刷機7のインキタンク74内に巻き込んで収納される。本実施例では、これらの版6の数は4である。
【0018】
これらの版6は、先に化学薬液でアルミ版に塗布しておき、そして、印刷用の四色(CMKY)に対応して露光しプレ−センシタイズド プレート(PS版)を作製する。
【0019】
ここで、該印刷機7は六色の専用印刷機であって、デジタル印刷を行うことができる。印刷機7は、結合層1及び布地2を載置するための昇降台711を有する入力端71を含む。入力端71はベース72に近接し、ベース72の内部に結合層1及び布地2を入力端71から印刷機7の他端に搬送する搬送機73が設けられている。ベース72の頂部に6つのインキタンク74が設けられ、インキタンク74毎の頂部に紫外線インキ21を添加するための開口741が備えられている。インキタンク74の内部にインキローラ742及びゴムローラ743が設けられ、ゴムローラ743はインキローラ742の下方かつ搬送機73の上方に位置され、ゴムローラ743は弾性を有し、転写の効果を向上できる。ベース72の内部においてこれらのインキタンク74の間にそれぞれ紫外線ランプ75が設けられ(図4に示すように)、これらの紫外線ランプ75は搬送機73の上方に位置され、布地2に印刷された紫外線インキ21を照射して一回目のドライングを行う。ベース72は入力端71に対向する他端に出力端76が近接され、出力端76は昇降台761及び制御パネル762を備え、昇降台761は、搬送機73より搬送された結合層1及び布地2を載置し、制御パネル762は、印刷機7に対する様々な設定を行うことができ、例えば、印刷の線数(即ち、平方インチ毎の網点の数)の多さ及び圧印の大きさを制御する。ベース72の内部においてインキタンク74と出力端76との間にさらに5つの紫外線ランプ75が設けられ、布地2に印刷された紫外線インキ21を照射して二回目のドライングを行うことができる。
【0020】
(ステップS109)結合層1及び布地2を印刷機7に送って紫外線印刷(UV印刷)を行い、布地2に印刷された紫外線インキ21(紫外線硬化型インキ)を瞬間的にドライング(乾燥)させる。
【0021】
ここで、紫外線印刷は、平版印刷の原理、即ち水と油の反発現象を利用しており、化学薬液によって版6上の画像部は、インキを吸収すると共に水を弾く特性を有し、非画像部分は水を吸収すると共にインキを弾く特性を有するようになる。そのため、先に版6に水を通しておき、インキローラ742で紫外線インキ21を版6につけて、版6で該画像をゴムローラ743に転写し、さらに、ゴムローラ743により搬送機73上に搬送されてきた布地2に転写し、最後に、紫外線ランプ75の照射により紫外線インキ21を瞬間的にドライングさせる。
【0022】
(ステップS111)結合層1及び布地2を後加工し、例えば、裏当てや貼り付け、カットなどの過程を経て、様々な布製印刷品を作製する。結合層1が紙材である場合、布製印刷品は、書籍表紙や、雑誌、袋類、封筒、ファイル、カード、ボックス類、名刺、卓上カレンダー、カレンダー、ポスター、またはメニューなどに作製される。また、傘布、マウスパッド或いはランプシェードなどに作製される。
【0023】
前記の布製印刷品製造プロセスによると、本発明の布製印刷品を構成でき(図5及び図6に示すように)、布製印刷品は、結合層1、布地2、ゲル層3及び紫外線インキ21などの構造説明を含んでおり、ここで本発明について繰り返して説明しない。
【0024】
本発明は、結合層1及び布地2を印刷機7に搬送し紫外線印刷することにより、紫外線は高いエネルギーを有し、さらに、紫外線インキ21が乾き易い特性を持っているので、布地2に印刷された紫外線インキ21が紫外線ランプ75に照射されて瞬間的にドライングされ、紫外線インキ21が布地2の毛細現象で拡張されることを防ぎ、布製印刷品上の画像がより精美、綺麗になり、且つ、印刷機7により大量生産でき、コストを有効に低下し、工数を削減できる。
【0025】
以上の説明は、単に本発明の好ましい具体的な実施例の詳細説明及び図面に過ぎず、本発明の特許請求の範囲を限定するものではなく、いずれの当該分野における通常の知識を有する専門家が本発明の分野の中で、適宜に変更や修飾などを実施できるが、それらの実施が本発明の主張範囲内に包含されるべきことは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0026】
1 結合層
2 布地
21 紫外線インキ
3 ゲル層
4 コータ
5 ローラ
6 版
7 印刷機
71 入力端
711 昇降台
72 ベース
73 搬送機
74 インキタンク
741 開口
742 インキローラ
743 ゴムローラ
75 紫外線ランプ
76 出力端
761 昇降台
762 制御パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合層及び布地を用意し、前記結合層の一面にゲル層を塗布し、前記布地を前記ゲル層を介して前記結合層に貼り付けて、前記ゲル層を前記結合層と前記布地との間に介在させる工程と、
前記結合層及び前記布地を印刷用サイズにカットし、前記結合層及び前記布地を押圧して平坦化させる工程と、
印刷しようとする画像を用意し、前記画像の三原色(RGB)を印刷用の四色(CMKY)に変換する工程と、
印刷用の四色にそれぞれ対応して複数の版を作製し、さらに前記版を印刷機のインキタンク内にそれぞれ装着する工程と、
前記結合層及び前記布地を前記印刷機に搬送して紫外線印刷を行い、前記布地に印刷された紫外線インキを瞬間的にドライングさせる工程と、
前記結合層及び前記布地を後加工し、様々な布製印刷品を作製する工程とを含む布製印刷品製造プロセス。
【請求項2】
前記布地を前記結合層に貼り付ける工程において、コータで結合層の一面にゲル層を塗布し、さらに前記布地と前記結合層とをローラで加圧することを特徴とする請求項1に記載の布製印刷品製造プロセス。
【請求項3】
印刷用の四色に対応して前記版を作製する工程において、前記版は、薬液でアルミ版に塗布し、露光してプレ−センシタイズド プレート(PS版)を作製することを特徴とする請求項1に記載の布製印刷品製造プロセス。
【請求項4】
前記紫外線印刷は、平版印刷の原理を利用し、先に版に水を通しておき、紫外線インキを前記版につけて、前記版で前記画像をゴムローラに転写し、さらに、前記ゴムローラにより前記布地に転写し、最後に、紫外線ランプの照射によりドライングさせることを特徴とする請求項1に記載の布製印刷品製造プロセス。
【請求項5】
一面にゲル層が塗布された結合層と、
一面に紫外線インキ層が印刷され、もう一面は前記ゲル層を介して前記結合層に重ねられた布地とを含み、前記ゲル層は前記布地と前記結合層との間に介在されていることを特徴とする布製印刷品。
【請求項6】
前記結合層は紙材であり、前記ゲル層はヒドロゲルであることを特徴とする請求項5に記載の布製印刷品。
【請求項7】
前記布製印刷品は、書籍表紙、雑誌、袋類、封筒、ファイル、カード、ボックス類、名刺、卓上カレンダー、カレンダー、ポスター、またはメニューであることを特徴とする請求項6に記載の布製印刷品。
【請求項8】
前記結合層はプラスチック材であり、前記ゲル層は有機ゲルであることを特徴とする請求項5に記載の布製印刷品。
【請求項9】
前記布製印刷品は、傘布、マウスパッド或いはランプシェードであることを特徴とする請求項8に記載の布製印刷品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−269400(P2009−269400A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92929(P2009−92929)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(509099154)安普洛股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】