説明

帆立貝ペースト食材

【課題】帆立貝の内臓を液状化し、更にペースト化することにより、帆立貝の利用価値を高めることを目的とするものである。
【解決手段】帆立貝の内臓に水を加え、蛋白質加水分解酵素プロテアーゼを加え液状化し、更に増粘剤を加えペースト化することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帆立貝の貝柱及び内臓を液状化し、更にペースト化した食材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帆立貝は、生のままでの生紐着貝柱、貝柱のみ冷凍した玉冷、貝柱のみボイルしたボイル貝柱、貝柱のみ乾燥した乾燥帆立貝柱などの形態で生産されている。
【0003】
過去にはEU関係に生殖巣(以下ランという)着玉冷が多く輸出されていたが、近年この輸出がほとんど無くなっている状態である。また、乾燥帆立貝柱は東南アジアに多く輸出されているが、逆に中国のイタヤ貝が同様に乾燥貝柱として安く日本に出回っている状況で、北海道の乾燥帆立貝柱は東南アジアでは高値で取り引きされているものの、帆立貝の生産量から見ると量的には少ない状態である。
【0004】
また、玉冷の生産で必要なのは貝柱が主体であり、貝紐、ランなどの多くは廃棄物として処理されている状況にあり、一時は貝紐を珍味などに利用されていたが、今はこの量も少なくウロと一緒に廃棄されている状況にある。
【0005】
更に、乾燥帆立貝柱は乾燥の工程で割れの発生があり、これは安価で販売されている状態にある。
【0006】
なお、現在帆立貝を液状化し、ペースト状にした食材は提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、近年少なくなってきている帆立貝の需要の増大と、廃棄物として処理されている帆立貝内蔵を少しでも利用できないかとの発想から、貝柱単独または帆立貝の貝紐、卵との組み合わせで溶解し、更にペースト化することで、帆立貝の利用範囲が拡大されるものとの考えから発明されたものである。
【0008】
尚、廃棄処分されている帆立貝内臓を処理するのに多くの経費をかけているが、この経費削減にも寄与することができる。
【0009】
本発明は、上述した現状の課題に鑑みなされたもので、帆立貝の内臓を含めた食材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために構成された本発明の手段は、帆立貝を蛋白質加水分解酵素プロテアーゼ(以下単に酵素という)で液状化し、さらに増粘剤でペースト化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述の方法で製造した食材を、各種料理の調味料として加えることにより、帆立風味の豊な料理となり、非常に美味な料理となる。
【0012】
また、廃棄処分となる帆立貝内臓の需要も増え、廃棄処理にかけていた費用が軽減され、経済効果を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
使用する帆立は、生、ボイル、乾燥いずれでも良く、部位は中腸腺(ウロ)を除いた、貝柱、外套膜、ランのそれぞれの単独または任意の割合で混合したものまで可能である。
【0014】
帆立はミキサーなどで粗砕し、水で帆立絶乾重量当り5%〜40%濃度としたものに、pH5.5〜8.0の状態で、酵素を0.05%〜1%を加え撹拌しながら40℃〜60℃で、2〜4時間酵素分解処理を行う。その後、100メッシュのフィルターを通し、80℃〜90℃で15分間加熱し、酵素を死活させ液状化溶液とする。
【0015】
上述の液状化溶液に対し増粘剤を0.5〜3%加え、60℃〜80℃でかき混ぜながら加温し、ペースト状の製品を製造する。
【0016】
上述の増粘剤には、CMC、タマリンドウガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガムなどを用いるのが良い。
【実施例1】
生貝柱を絶乾重量100gに水を加え1kgとする。これに酵素ヤクルト薬品工業(株)アロアーゼAP10を0.5g加え、50℃でゆっくり撹拌しながら3時間処理し、完全に液状化した後、80℃〜90℃で15分酵素を死活した。これに増粘剤タマリンドウガムシキボウ(株)フードメードTA−115を1.5%加え増粘させ製品とした。これをスープに加えほのかな香りを与えることが出来た。
【実施例2】
帆立貝柱の粉砕したもの200gに水を加え1kgとし、これに酵素ヤクルト薬品工業(株)アロアーゼAP10を0.7g加え50℃でゆっくり撹拌しながら3時間処理し、完全に液状化した後、100メッシュのフィルターを通した後、80℃〜90℃で15分酵素を死活後、常温まで冷却後、エコーガム(キサンタンガム)を2%加えペースト化し製品とした。これを餃子、シュウマイに加えたところ無添加のものに比べ非常に美味な餃子、シュウマイを得ることが出来た。
【実施例3】
帆立貝柱破砕後150gにラン50g(絶乾量として)に水を加え1kgとし酵素ヤクルト薬品工業(株)アロアーゼAP10を0.5g加えゆっくり撹拌しながら3時間処理した後、100メッシュのフィルターを通した後、80℃〜90℃で15分酵素を死活させ常温まで冷却後、エコーガム(キサンタンガム)を1.5g加え、柔らかいペーストを製品化した。これをうどん(手作り)に対小麦粉ペースト状で2%加え、食べたところほのかに帆立貝の香りがする。
【実施例4】
帆立貝柱粉砕後150g(絶乾量として)に水を加えて1kgとし、酵素ヤクルト薬品工業(株)アロアーゼAP10 0.5gを加え50℃でゆっくり撹拌しながら3時間処理し、完全に液状化した後、100メッシュのフィルターを通した後、80℃〜90℃で15分処理し酵素を死活後、タマリンドウガムシキボウ(株)フードメードTA−115 1.5%加え70℃に加温し増粘ペースト状にし、米2合に対し製品10gを加え、少量の帆立貝柱を加え帆立ご飯とし美味なご飯とすることが出来た。
【実施例5】
帆立貝柱破砕後、200gに水を加え1kgとし、酵素ヤクルト薬品工業(株)アロアーゼAP10 0.7gを加え50℃でゆっくり撹拌しながら3時間処理し、完全に液状化した後、80℃〜90℃で15分処理し酵素を死活後、100メッシュフィルターでろ過後、エコーガム(キサンタンガム)1%を加え、軟らかいペーストとし、豆腐の製造時の豆乳に対し5%加え。美味な豆腐を製造することが出来た。
【産業上の利用可能性】
以上、実施例では、日本料理で実施したが、特に中華料理には幅広く利用できるものと考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帆立貝柱または/および帆立貝内臓を絶乾重量濃度として5〜40%の濃度で水中に分散させ、pH5.5〜8.0の状態で中性プロテアーゼを対基質濃度0.05%〜1%加え、40℃〜55℃で液状化し、増粘剤0.05%〜3%加えペースト化する食材。