説明

希土類元素を含む組成物および希土類元素を用いる方法

本発明は、希土類金属含有固定剤を用いることによって、様々なストリームから1つあるいは複数の選択標的物質を除去することを対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、いずれも参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる、2008年11月11日に出願した「Arsenic Removal Using Rare Earth Metals」という名称の米国仮特許出願第61/113,435号、2009年5月19日に出願した「Arsenic Removal Using Rare Earth Metals」という名称の米国仮特許出願第61/179,622号、2009年6月11日に出願した「Arsenic Removal Using Rare Earth Metals」という名称の米国仮特許出願第61/186,258号、2009年6月12日に出願した「Arsenic Removal Using Rare Earth Metals」という名称の米国仮特許出願第61/186,662号、2009年7月6日に出願した「Arsenic Removal Using Rare Earth Metals」という名称の米国仮特許出願第61/223,222号、2009年7月7日に出願した「Arsenic Removal Using Rare Earth Metals」という名称の米国仮特許出願第61/223,608号、2009年9月9日に出願した「Arsenic Removal Using Rare Earth Metals」という名称の米国仮特許出願第61/240,867号、2009年7月9日に出願した「Removal of Soluble Arsenic from a Sulfide Waste Stream」という名称の米国仮特許出願第61/224,316号、2009年8月10日に出願した「Lanthanide‐Based Compound for Arsenic Removal in Sulfide Waste Stream」という名称の米国仮特許出願第61/232,702号、および2009年8月10日に出願した「Aluminium‐Induced Precipitation for Arsenic Removal in Sulfide Waste Stream」という名称の米国仮特許出願第61/232,703号の利益を主張するものである。
【0002】
2007年12月18日に出願した米国特許出願第11/958,602号、2007年12月18日に出願した米国特許出願第11/958,644号、および2007年12月18日に出願した米国特許出願第11/958,968号を相互参照し、各々が参照により本出願書に組み入れられる。
【0003】
(技術分野)
本発明は、主に希土類金属を用いる標的物質の除去に関し、詳細には希土類金属を用いるヒ素の除去と安定化に関する。
【背景技術】
【0004】
ヒ素のような有害金属、重金属のオキシアニオン、およびそれらの放射性同位体は、地中に様々な結合型で自然に生じる。それらの天然水中の存在は、たとえば地球化学的反応、工業廃棄物(核、石油、および/または石炭火力発電所により生じる廃棄物を含む)、または農業用、工業用、および/または家庭用の農薬、除草剤、殺虫剤、および殺鼠剤、ならびに他の発生源に由来し得る。特定の有害金属、特にヒ素の高濃度の存在が、生命体に発癌性作用および他の悪影響を及ぼし得るので、米国環境保護庁(EPA)および世界保健機関は、飲料水中の様々な有害金属に対して最大汚染濃度(MCL)を設定している。廃水、地下水、地表水、地中水、および地熱水中の有害金属濃度は、このレベルを超えることが多い。したがって、現行のMCLおよび今後のさらなる低下によって、飲料水、井戸水、および工業水からヒ素を経済的および効果的に除去する新技術の必要性が生じる。
【0005】
多くの有害金属は、それらの除去を複雑にし得る多数の酸化状態を有する。たとえば、標準条件下において、+3および+5の酸化状態で水溶液系または利水系に溶解したヒ素が認められ、通常は亜ヒ酸塩(AsO−1)およびヒ酸塩(AsO−3)型である。吸着技法または沈殿技法によるヒ素の除去では、ヒ素がヒ酸塩型であることを必要とする。ヒ素が+3酸化状態で存在する亜ヒ酸塩は、吸着技法および沈殿技法によって部分的にしか除去されない。何故なら、亜ヒ酸塩の主要型が、亜ヒ酸(HAsO)であるからである。亜ヒ酸は弱酸であり、最も効果的に吸着が起こるpH5〜pH8のpHでは、中性電荷(すなわち、あったとしても最小の亜ヒ酸塩(AsO−1)を含有する)を保つ。
【0006】
水溶液系から有害金属を除去するために、様々な他の技術が用いられてきた。そのような技術の例には、たとえばアルミナおよび活性化炭素のような高表面積物質による吸着、陰イオン交換樹脂によるイオン交換、任意に凝集剤を用いる共沈殿、および電気透析が包含される。有害金属を除去する大部分の技術は、これらの金属のうちの幾つかを除去することが難しいことによって妨害される。
【0007】
有害金属の除去は、有価金属との共起によってさらに複雑化され得る。多くの工業プロセスにおいて、汚染されたプロセス固体および溶液は、たとえばヒ素のような有害金属だけでなく、たとえば銅、ニッケル、コバルトのような有価金属、および貴金属のうちの少なくともいずれかを含有する。ヒ素は、固形廃棄物から選択的に溶解されると共に、共沈プロセスを用いることによってストリームから単離されることが多い。このプロセスは、鉄試薬を用いることによって、ヒ素をヒ酸第二鉄として沈殿させる。この沈殿法は、ヒ酸第二鉄沈殿を形成するため、多くの適用においては非常に大量のヒ酸第二鉄沈殿を生成すべく、一連のpH調整を必要とする。
【0008】
希土類金属を用いる沈殿は、汚染された廃棄ストリームから有害金属と有価金属のうちの少なくとも一方を除去する見込みを示した新たに発明された技術である。特に、セリウムは、たとえばヒ素、アンチモン、モリブデン、タングステン、バナジウム、およびウランのような様々な有害金属のオキシアニオンを除去するのに用いられてきた。
【0009】
固体および液体のうちの少なくとも一方のストリームから有害金属と有価金属のうちの少なくとも一方を効果的に除去する方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの必要性および他の必要性は、本発明の様々な実施形態および構成によって解決される。この開示は主に、流体からの標的物質の除去と除去標的物質の安定化に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、以下の工程:
(a)希土類元素を含む可溶性固定剤と、ヒ素以外の標的物質を含むプロセスストリーム(液体、ガス、スラリ、その他であり得る)を接触させることによって、標的物質と希土類元素を含む不溶性標的物質含有組成物を形成する工程と、
(b)プロセスストリームから不溶性標的物質含有組成物を除去することによって、精製プロセスストリームを形成する工程と
を含む方法が提供される。
【0012】
不溶性標的物質含有組成物は、典型的には固体として除去され得る沈殿物の状態である。好ましくは、不溶性標的物質含有組成物は、標的物質のうちの少なくとも約0.01wt%、さらに好ましくは少なくとも約0.1wt%、さらに好ましくは約5〜約50wt%を有する。標的物質は、一般的に酸素含有陰イオン型であり、たとえばオキシアニオンである。可溶性固定剤、または沈殿剤は、適切な担体によって支持されてもよく、または支持されなくてもよい。比較的高濃度の標的物質を含む固体型の不溶性標的物質含有組成物を形成する能力によって、廃棄を必要とする不溶性標的物質含有組成物の容量を大きく減らすことが可能であり、それによって、廃棄コストを下げることができる。
【0013】
別の実施形態において、以下の工程:
(a)ヒ素および有価金属含有固体物質を提供する工程と、
(b)固体物質を浸出剤と接触させることによって、溶解ヒ素とヒ素枯渇固体を含む浸出ストリームを形成する工程であって、溶解ヒ素は、固体物質中に含まれるヒ素のうちの大部分を含み、ヒ素枯渇固体は、固体物質中に含まれる有価生成物のうちの大部分を含むことと、
(c)浸出ストリームを可溶性固定剤と接触させることによって、浸出ストリーム中のヒ素のうちの大部分と可溶性固定剤を含む標的物質含有組成物を形成する工程と
(d)浸出ストリームから標的物質含有組成物のうちの大部分を除去する工程であって、可溶性固定剤が希土類元素を含むことと
を含む方法が提供される。
【0014】
固定剤は、たとえば固体、被膜、粒子、ナノ粒子、サブミクロン粒子、溶解希土類元素種、および粉末のうちの少なくとも1つの任意の適切な形態であることが可能である。希土類元素は、固体の状態であってもよく、あるいはその固体は、希土類元素含有化合物の高分子結合剤相互接続粒子によって支持され得る。被膜は、任意の適切な担体上にあり得る。1つの適用において、固定剤は、ランタノイド元素、特にセリウムである。セリウムは、一般的に酸化セリウム(IV)型か、たとえばセリウム(III)と(IV)のうちの少なくとも一方の溶液であり得る溶解セリウム種である。
【0015】
有価生成物は、任意の金属または半金属であることが可能であるが、典型的には遷移金属、アルミニウム、スズ、および鉛であり、より典型的にはチタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、白金族金属、貴金属、およびそれらの混合物である。
【0016】
別の実施形態において、
(a)標的物質と、
(b)酸素と、
(c)水と、
(d)希土類元素と
を含む固相組成物が提供される。
【0017】
結晶相の格子構造は、三方晶系空間群に属すると考えられている。
標的物質がヒ素の場合、組成物の化学式は、
REAsO・(HO)であると考えられる。式中、0<X≦10かつ「RE」は希土類元素を指す。
【0018】
組成物は実質的に結晶質であり、ヒ素、酸素、希土類元素、および水和水は結晶格子を形成する。
別の実施形態において、方法は、以下の工程:
(a)標的物質含有ストリームを提供する工程と、
(b)標的物質含有ストリームを以下のもの:
(i)+3酸化状態の希土類元素と+3酸化状態の非希土類金属を含む希土類塩添加物、および
(ii)+3酸化状態の非希土類金属を含むと共に、実質的に希土類元素を含有しない非希土類塩添加物
のうちの一方または両方と接触させる工程と、
(c)標的物質と、希土類塩添加物および非希土類塩添加物のうちの少なくとも一方との間で沈殿物を形成させる工程と
を含む。
【0019】
非希土類金属は、+3酸化状態の任意の非希土類金属であることが可能であり、遷移金属、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、およびビスマスが好適であり、遷移金属とアルミニウムが特に好適である。好適な遷移金属には、原子番号が22〜29、40〜45、47、72〜77、および79の元素が含まれる。
【0020】
1つの処方において、第1塩添加物は二金属性ランタニド系塩溶液である。好適な処方において、第1塩添加物は、+3酸化状態のセリウムと+3酸化状態のアルミニウムを含む。
【0021】
第2塩添加物は、好適な処方において、+3酸化状態のアルミニウムを含有する。第1と第2の塩添加物は、選択された標的物質、特にヒ素を除去するのに必要とされる希土類元素量を有意に減少させることが可能である。
【0022】
別の実施形態において、以下の工程:
(a)標的物質を含む供給ストリームを提供する工程と、
(b)イットリウム、スカンジウム、およびランタノイド元素のうちの少なくとも1つを含む不溶性固定化剤と供給ストリームとを接触させることによって、供給ストリーム中の標的物質のうちの大部分を含む標的物質負荷不溶性固定剤を形成し、それによって、標的物質負荷不溶性固定剤中の標的物質が、不溶性固定剤と共に組成物を形成する工程と、
(c)標的物質負荷不溶性固定剤を剥離溶液と接触させることによって、標的物質負荷不溶性固定剤中の標的物質のうちの大部分を溶解、可溶化、あるいは置換して負荷剥離溶液と非負荷不溶性固定剤を形成する工程と、
(d)負荷剥離溶液から溶解標的物質のうちの少なくとも大部分を除去する工程と
を含む方法が、提供される。
【0023】
1つのプロセス構成において、第1と第2の固定剤が用いられる。第1段階において、供給流は、第1濃度の標的物質を有する標的物質含有水溶液を含む。標的物質含有水溶液を、吸着剤または吸収剤などの不溶性第1固定剤と接触させることによって、標的物質含有第1固定剤を生成する。第1段階は、標的物質含有水溶液から標的物質のうちの全部ではなくても大部分を除去する。第2段階において、標的物質含有第1固定剤をアルカリ性剥離溶液(「放出剤」)と接触させることによって、第2濃度の標的物質を有する中間体標的物質富化溶液を生成する。標的物質の第2濃度は、標的物質の第1濃度を超えるかもしれない。アルカリ性剥離溶液は、たとえば上記の浸出剤であってもよく、あるいは上記の浸出剤を含んでいてもよい。一般的に、第2濃度の標的物質は、標的物質の溶解限界にほぼ等しい濃度である(第2段階のプロセス条件で)。より一般的には標的物質の第2濃度は、約0.1〜約2,500g/l、さらに一般的には約0.1〜約1,000g/l、さらに一般的には約0.25〜約500g/lである。最後に、可溶性または溶解した第2固定剤を、標的物質含有固体として標的物質のうちの全部でなくても大部分を沈殿させるのに十分な量の中間体標的物質富化溶液と接触させる。標的物質含有固体を、任意の適切な固体/液体分離技術によって中間体溶液から分離することによって、廃棄用分離固体と第2段階への再循環用の剥離溶液を生成してもよい。
【0024】
不溶性第1固定剤は、一般的に粒子状固体である。第1固定剤は、好ましくは不溶性希土類金属化合物であり、好ましくは、たとえば含水または無水希土類元素の酸化塩、フッ化物、炭酸塩、フルオロ炭酸塩、ケイ酸塩などの不溶性希土類元素化合物を含む不溶性希土類元素酸化物である。特定の好適第1固定剤はCeOである。第1固定剤は、+3か+5の酸化状態を有するヒ素の除去において特に有効である。
【0025】
可溶性第2固定化剤は、一般的に第1固定剤の酸化状態よりも低い酸化状態を有する。好ましくは、第2固定剤の酸化状態は、+3か+4のうちの一方である。可溶性固定剤は、好ましくは可溶性希土類元素金属化合物であり、より好ましくは希土類元素化合物を含有する塩、たとえば臭化物、硝酸塩、亜リン酸塩、塩化物、亜塩素酸塩、塩素酸塩、硝酸塩などを含む。より好ましくは、可溶化固定剤は、希土類元素(III)の塩化物である。
【0026】
いくつかの実施形態において、標的物質は、低い酸化状態で存在することになり、この状態は望ましくないかもしれない。そのような場合、酸化剤を溶液と接触させることにより、標的物質の酸化状態を増加させることができる。例としてヒ素を用いる場合、亜ヒ酸塩が存在すれば、固定剤が適用される前に、酸化剤を使用するのが好都合かもしれない。
【0027】
中間体溶液は、残存有価生成物を含み得る。有価生成物は、一般的に目的の任意の金属であり、より一般的には1つあるいは複数の遷移金属を含み、さらに一般的には銅、ニッケル、コバルト、鉛、貴金属、およびそれらの混合物からなる金属群から選択される金属を含む。残存有価生成物のうちの全てまたは一部は、中間体溶液から回収され得る。
【0028】
さらに別の実施形態において、以下の工程:
(a)標的物質の希土類元素沈殿に悪影響を及ぼす(たとえば希土類元素沈殿のレベル、程度、および度合いのうちの少なくともいずれかを損なう)干渉源を含む標的物質含有ストリームを受容する工程と、
(b)標的物質含有ストリームから干渉源のうちの少なくとも大部分を除去することによって、標的物質のうちの少なくとも大部分を含む処理ストリームを形成する工程と、
(c)その後、処理ストリームを希土類元素固定剤と接触させることによって、処理溶液から標的物質のうちの大部分を沈殿させる工程と
を含む方法が提供される。
【0029】
干渉源、特にリン酸塩、フッ化物、炭酸塩、ケイ酸塩、およびバナジウム酸塩は、標的物質と組成物を容易に形成し得るか、でなければ、たとえばヒ素のような標的物質を除去することが望ましい場合、希土類元素固定剤による標的物質除去を妨害し、それによって不必要に固定剤を消費させることがわかっている。固定剤を標的物質と接触させる前に、競合あるいは妨害オキシアニオン干渉源を除去することによって、固定剤の消費量を低減することが可能である。
【0030】
さらに別の実施形態において、以下の工程:
(a)溶解標的物質と溶解有価生成物とを含む標的物質含有ストリームを提供する工程であって、標的物質はオキシアニオン型であり、有価生成物は遷移金属、アルミニウム、スズ、および鉛のうちの少なくとも1つであると共に、オキシアニオン以外の形態であることと、
(b)標的物質含有ストリームを希土類元素固定剤と接触させることによって、溶解有価生成物のうちの少なくとも大部分を処理ストリーム中に残しながら、溶解標的物質のうちの少なくとも大部分を標的物質含有沈殿物として沈殿させる工程と、
(c)処理ストリームから標的物質含有沈殿物のうちの少なくとも大部分を分離する工程と
を含む方法が提供される。
【0031】
本発明は、特定の構成に依存して幾つかの利点を含むことが可能である。本発明の方法は、適用および方法の要件に従うべく必要に応じて、様々な量の標的物質を除去することが可能である。たとえば、標的物質の除去プロセスは、高濃度の標的物質を除去することによって、約500ppm以下、場合によっては、約100ppm以下、他の場合において約50ppm以下、さらに他の場合において約20ppb以下、さらに他の場合において約1ppb以下の標的物質を有する処理溶液を生成することが可能である。不溶性希土類元素/標的物質生成物は、無害の廃棄物としてみなされ得る。標的物質の除去プロセスは、pHに対して比較的感受性が低い。開示の方法は、標的物質、特にヒ素を広範囲にわたるpH値、ならびに極めて高いpH値および低いpH値の溶液から効果的に固定することが可能である。多くの従来式の標的物質除去技術とは対照的に、この能力によって、標的物質を除去する場合、狭域内に溶液pHの変更および/または維持を行う必要がなくなる。しかも、ヒ素含有物質を改質することによって水溶液が生成される場合、ヒ素含有物質からヒ素を浸出するための物質および方法の選択は、得られるヒ素含有溶液のpHをあまり考慮せずに行うことが可能であるため、自由度が高くなる。さらに、ヒ素含有溶液からヒ素を固定する間のpH調整および維持の必要性をなくすことによって、かなりのコスト上の利点を提供することが可能である。標的物質の除去プロセスは、標的物質濃度に対しても比較的感受性が低い。この方法は、比較的低濃度および高濃度の標的物質、特にヒ素を水性ストリームから除去することが可能である。この方法は、確固とした汎用的方法であり得る。
【0032】
これらの利点および他の利点は、本明細書に含まれる本発明の開示から明らかになる。
本明細書において用いられるように、用語「1つ」の構成要素は、1つあるいは複数の構成要素をさす。そのように用語「1つ」、「1つあるいは複数」および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に用いられ得る。また、用語「含む」、「含有する」、および「有する」は、互換的に用いられ得ることにも注意すべきである。
【0033】
本明細書において用いられるように、「吸収」は、ある物質が別の物質の内部構造内に浸透することを指し、吸着とは区別される。
本明細書において用いられるように、「吸着」は、原子、イオン、分子、多原子イオン、またはガスや液体の他の物質が別の物質、いわゆる吸着剤の表面に接着することを指す。吸着の引力は、たとえば、共有結合のようなイオン力、または、たとえばファンデルワールス力および/またはロンドン力のような静電力であり得る。
【0034】
本明細書において用いられるように、「少なくとも1つ」、「1つあるいは複数」、および「および/または」は、実施の上で接続語と離接語の両方である制約のない表現である。たとえば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうちの1つあるいは複数」、「A、B、またはCのうちの1つあるいは複数」および「A、B、および/またはC」の各々の表現は、A単独、B単独、C単独、AとB、AとC、BとC、またはA、BおよびCを意味する。
【0035】
本明細書において用いられるように、「組成物」は、たとえば分子、多原子イオン、化学化合物、配位錯体、配位化合物、その他の1つあるいは複数の原子からなる1つあるいは複数の化学的単位を指す。明らかなように、組成物は、たとえば共有結合、金属結合、配位結合、イオン結合、水素結合、静電力(たとえばファンデルワールス力およびロンドン力)、その他の様々な種類の結合および/または力によって結合することが可能である。
【0036】
本明細書において用いられるように、「不溶性」は、水中において固体であり、および/または水中で固体として残存するように意図される物質を指すと共に、たとえばカラムのような装置内に保持され得るか、たとえばろ過のような物理的手段を用いることによって、バッチ反応から容易に回収されることができる。不溶性物質は、ほとんど質量が損失することなく(<5%)、数週間または数カ月間にわたって水に長く暴露できるべきである。
【0037】
本明細書において用いられるように、「オキシアニオン」またはオキソアニオンは、一般式AOy(式中、Aは、酸素以外の化学元素を表し、Oは、酸素原子を表す)を有する化学化合物である。標的物質含有オキシアニオンにおいて「A」は、金属、半金属、およびSe(非金属である)のうちの少なくともいずれかの原子を表す。金属性オキシアニオンの例には、クロム酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、アルミニウム酸塩、ジルコン酸塩、などが含まれる。半金属性オキシアニオンの例には、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、アンチモン酸塩、ゲルマン酸塩、ケイ酸塩などが含まれる。
【0038】
本明細書において用いられるように、「粒子」は、形状に制限なく、1μm未満から100μm以上までの範囲のサイズを有する固体かマイクロカプセル化された液体を指す。
本明細書において用いられるように、「沈殿」は、不溶性種型の標的物質含有イオンの除去を指すだけではなく、不溶性粒子上か不溶性粒子内での汚染物含有イオンの固定化も指す。たとえば、「沈殿」は、吸着および吸収のようなプロセスを含む。
【0039】
本明細書において用いられるように、「希土類元素」は、イットリウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムのうちの1つあるいは複数を指す。明らかなように、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムは、ランタノイドとして公知である。
【0040】
本明細書において用いられるように、「可溶性」は、水に容易に溶解する物質を指す。本発明の目的に関し、可溶性化合物の溶解は、日単位よりはむしろ分単位の時間的尺度で必然的に生じることが見込まれる。可溶性であると考えられる化合物では、5g/l以上の化合物が、溶液中で安定であることができるように、有意に高い溶解度積を有することが必要である。
【0041】
本明細書において用いられるように、「ソーブ(sorb)」は、吸着および吸収のうちの少なくとも一方を指す。
上記は、本発明のうちのいくつかの特徴への理解を与えるために本発明を簡略化した概要である。この概要は、本発明およびその種々の実施形態の広域的な概説でも包括的な概説でもない。本発明の重要または決定的な要素を同定することも、本発明の範囲を詳述することも目的とされていないが、下記のより詳細な説明の導入として本発明の選択概念を簡素化して提示することを目的としている。明らかなように、上記に示すか下記に詳細される特徴のうちの1つあるいは複数を単独または組み合わせで用いることによって、本発明の他の実施形態が、可能である。
【0042】
添付図面は、本発明のいくつかの実施例を例示すべく、明細書に組み込まれると共に、明細書の一部を形成する。説明と共にこれらの図面は、本発明の原理を説明する。図面は、本発明がどのように構成され、用いられるかの好適な実施例および代替実施例を簡単に例示するが、例示および説明された実施例のみに本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0043】
さらに別の特徴および利点は、下記の参照図面によって例示されるように、以下の本発明の様々な実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】第1実施形態にしたがうプロセスフローチャート。
【図1B】第1実施形態にしたがうプロセスフローチャート。
【図2】第2実施形態にしたがうプロセスフローチャート。
【図3】負荷容量(mg/g)(縦軸)対ヒ素濃度(g/l)(横軸)のプロット。
【図4】最終ヒ素濃度(mg/l)(縦軸)対セリウム:ヒ素のモル比(横軸)のプロット。
【図5】最終ヒ素濃度(mg/l)(縦軸)対ヒ素に対するセリウムのモル比(横軸)のプロット。
【図6】硫化物−亜ヒ酸塩溶液と硫酸塩−ヒ酸塩溶液へのCe(III)またはCe(IV)溶液の添加によって形成された沈殿物の一連のXRDパターン。
【図7】捕捉されたヒ素(マイクロモル)(縦軸)と添加したセリウム(マイクロモル)(横軸)のプロット。
【図8】ガスパーライト(CeAsO)と新規な三方晶相CeAsO・(HO)との間の構造差を示す一連のXRDパターン。
【図9】残存ヒ素濃度(mg/l)(縦軸)対Ce/Asモル比(横軸)のプロット。
【図10】負荷容量(As mg CeO g)(縦軸)対モル比(Ce/As)(横軸)のプロット。
【図11】残存ヒ素濃度(mg/l)(縦軸)対モル比(横軸)のプロット。
【図12】三方晶CeAsO・(HO)(実験的)、三方晶CeAsO・(HO)(シミュレート)、および三方晶BiPO・(HO)0.67(シミュレート)間の構造差を示す一連のXRDパターン。
【発明を実施するための形態】
【0045】
一態様において、本発明は、不溶性の固定剤または可溶性の固定剤あるいはそれらの両方を用いることによって、水溶液から選択標的物質を除去する。可溶性か不溶性かにかかわらず、固定剤は、希土類元素を含んでいることが好ましい。ヒ素を除去すると説明されているそのような物質の具体的な例には、ランタン(III)化合物、可溶性ランタン金属塩、酸化ランタン、二酸化セリウム、および可溶性セリウム塩が含まれる。
【0046】
除去される特定の標的物質は、特に標準条件下(たとえば、標準温度および圧力(Standard Temperature and Pressure)「STP」)において、固定剤が水性プロセスに不溶性か可溶性かに依存する。任意の理論に縛られることを望まないが、例としてヒ素とセリウムを用いる場合、不溶性セリウム固定剤は、錯体多原子構成単位のうちの一部が好ましくは+3かそれ以上の酸化状態、さらに好ましくは+3〜+5の酸化状態を有するとき、ヒ素を有効に除去すると考えられる。一方、可溶性セリウム固定剤は、錯体多原子構成単位のうちの一部が+5の酸化状態を有するとき、有効にヒ素を除去すると考えられる。本明細書において用いられるような「標的物質」は、好ましくはヒ素だけでなく、原子番号5、9、13、14、22〜25、31、32、33、34、35、40〜42、44、45、49〜53、72〜75、77、78、80、81、82、83、85、92、94、95、および96からなる群から、さらに好ましくは原子番号5、13、14、22〜25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、および96からなる群から選択される原子番号の元素も含む。これらの原子番号は、ヒ素、アルミニウム、アスタチン、臭素、ホウ素、フッ素、ヨウ素、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ガリウム、タリウム、ゲルマニウム、セレン、水銀、ジルコン、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、ルテニウム、イリジウム、白金、鉛、ウラン、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、およびビスマスの元素を含む。原子番号92のウランは、放射性同位体を有する標的物質の一例である。不溶性固定剤による除去および安定化の可能性がある標的物質の例には、限定しないが、たとえば金属、半金属、およびセレンのオキシアニオンのような錯体アニオン型の標的物質が含まれる。
【0047】
1つの構成において、固定剤は、1つあるいは複数の標的物質含有オキシアニオンを含む水溶液と反応することによって、精製水性ストリームを形成する。固定剤は、標準条件下(たとえばSTP)において、水溶液に可溶であるか水溶液中に存在し得る。実施例によっては、固定剤は、固定剤の混合物を含むことが可能であり、その混合物は、可溶性か不溶性の固定剤を含む。固定剤は、供給水溶液中の標的物質含有オキシアニオン、オキシアニオン放射性同位体、または他の有害元素のうちの1つあるいは複数と反応することによって、固定剤との不溶性種を形成する。不溶性種は、たとえば沈殿によって固定化されることにより、処理されかつ実質的に精製された水性ストリームを生じさせる。
【0048】
本開示は、主としてヒ素と、たとえばヒ酸塩および亜ヒ酸塩のオキシアニオンのようなヒ素含有種に関連して討議されているが、当然のことながらこの開示の教示は、他のヒ素含有化合物と非ヒ素元素および上記に列挙された化合物に等しく適用されることが理解されよう。
【0049】
図1Aにおける第1実施形態を参照すると、標的物質含有固体100は、1つあるいは複数の標的物質および任意に有価生成物(それ自体が、標的物質の定義に含まれ得る)を含み、有価生成物はたとえば、遷移金属(たとえばニッケル、コバルト、銅、貴金属(たとえば金、および銀)および/または白金族金属(たとえばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金、アルミニウム、スズ、および鉛)である。標的物質および有価生成物は、元素または化合物として存在することが可能である。固体100の例には、たとえば採鉱;金属精錬;製鉱業;ガラス製造;金属加工処理および/および製造;化学および石油化学物質の生産、処理および製造など;ならびに汚染土壌、廃水スラッジ、およびプロセスストリーム浄化などの業界由来の生成物、副産物および廃棄物が含まれる。標的物質を含む固体100の具体的な例には、原鉱、鉱山尾鉱または精錬尾鉱、選鉱物、カルサイン、スラグ、およびマット、ならびに使用済触媒が含まれる。
【0050】
1つの適用において、標的物質含有固体100は、約5mg/l〜約1,000g/lのニッケルの濃度の溶解ニッケル、約5mg/l〜約1,000g/lの濃度の塩素、約5mg/l〜約5,000g/lの濃度の硫酸塩、約1〜約1,500mg/lの濃度のヒ素(III)、約5〜約5,000mg/lの濃度のコバルト、約0.1〜約1,500mg/lの濃度の銅、約1〜約1,500mg/lの濃度のナトリウム、および約10mg/l〜約1,500g/lの濃度の鉛を含有する電解液、剥離溶液、または浸出溶液から得られる。標的物質含有固体100は、たとえば還元剤、好ましくはHSを接触させる、たとえば溶液中に分散させることによって得られる。得られる標的物質含有固体100は、一般的に約1〜約10wt%のAs、約25〜約75wt%のCuS、約0.1〜約2.5wt%の鉛、および約1〜約25wt%のNiSを含む。
【0051】
段階104において、標的物質含有固体100は、水性浸出剤と接触させることによって、標的物質(および任意に有価生成物)を溶解すると共に標的物質含有ストリーム108を形成する。水性浸出剤は、標的物質含有固体100から標的物質のうちの少なくとも大部分を溶解可能な任意の酸性(たとえば、約pH7未満のpH)またはアルカリ性(たとえば約pH7より高いpH)浸出溶液であることが可能である。浸出剤の例には、無機塩(たとえばアルカリおよびアルカリ土類金属のリン酸塩、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、および塩素酸塩)、無機酸(たとえば硫酸、塩酸、硝酸、およびリン酸のような鉱酸)、有機塩(たとえばクエン酸塩および酢酸塩)、有機酸(たとえばクエン酸および酢酸)、およびアルカリ性剤(たとえば、水酸化物、シアン化物、チオ硫酸塩、およびチオ尿素)が含まれる。好ましくは、浸出剤は、たとえば、炭酸塩(XCO)、重炭酸塩(XHCO)、水酸化物(XOH)、および他の金属酸化物および非結合電子対を有する酸素、窒素、および硫黄の化合物の塩基である。Xは、通常アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。より好ましくは、アルカリ性溶液は、約25wt%未満、さらに好ましくは約20wt%未満、さらに好ましくは約1〜約15wt%の量で浸出剤を含むが、約5wt%が好適である。標的物質がヒ素の場合、水性浸出剤は、ヒ素のうちの大部分を選択的に溶解するが、有価生成物のうちの大部分を固体物質中に残す。任意の理論によって縛られることを望まないが、苛性浸出剤は、銅により変質することによって、可溶性ヒ素化合物を形成すると考えられている。
【0052】
水性浸出剤が炭酸塩であり、かつ上記の標的物質含有固体100と接触する場合、ヒ素含有水性浸出剤は、一般的に約15〜約25g/lのNaCO、1〜約30g/lのヒ素(III)、約1〜約10g/lの硫黄(たとえば、硫化物、硫酸塩、および/または亜硫酸塩)、約5g/l以下の塩素、約10mg/l以下のニッケル、および約5mg/l以下の銅を含む。得られる溶液のpHは、典型的には約pH9かそれ以上、さらに典型的には約pH9〜約pH12である。
【0053】
標的物質含有ストリーム108は、任意の周知の液体/固体分離技術によって、標的物質枯渇固体から分離される。固体/液体分離は、一般的にろ過、ハイドロサイクロン、スクリーニング、遠心分離および、たとえば向流型デカンテーションおよび沈降による重力分離技法などの技法のうちのいくつかによって実行される。
【0054】
標的物質含有ストリーム108は、典型的にそのストリームの条件下において約0.1g/lからストリーム中の標的物質の溶解度限界までの濃度の溶解あるいは可溶化標的物質を含む。より典型的には、標的物質含有ストリーム濃度は、約0.1g/l〜約1,000g/lであり、さらに典型的には標的物質濃度は、約0.1〜約500g/lであり、さらに典型的には標的物質濃度は、約0.1g/l〜約100g/lである。
【0055】
任意の段階112は、標的物質または標的物質を包含する組成物のうちの大部分、さらに好ましくは約75%以上の電荷を選択された電荷に調整する。たとえば、標的物質がヒ素の場合、好適酸化状態は+5であり得る。なぜなら、可溶性固定剤は、他のヒ素酸化状態、具体的には−3(ヒ化物)および+3(亜ヒ酸塩)でヒ素と沈殿物を形成し得ないからである。酸化状態は、任意の適当な酸化および/または還元技法によって、および/または任意の適切な酸化剤および/または還元剤の使用によって調整することができる。好適な酸化剤の非限定的例は、酸素分子含有ガスである。酸素分子含有ガスは、一般的に標的物質含有ストリーム中に分散される。
【0056】
図示されていないが、標的物質含有ストリーム中の標的物質の濃度は、たとえば水の除去によってなど、適切な技法によって増加され得る。水は、たとえば、蒸発、蒸留、およびろ過技法(たとえば膜ろ過)のうちの少なくともいずれかによって除去され得る。他の技法には、標的物質の沈殿と再溶解、吸収または吸着に続く剥離、イオン交換に続く剥離などが含まれる。
【0057】
1つの適用において、干渉源(標的物質の除去を干渉する)、特にフッ化物、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、およびバナジウム酸化物のうちの大部分は、たとえば、イオン交換、膜ろ過、沈殿、錯化剤、その他の適切な技法によって標的物質含有ストリームから除去される。干渉源は、利用可能な固定剤に対し、他の標的物質、特にヒ素と競合し、それによって消費固定剤が増加し、かつ/または標的物質除去レベルが低下する。この適用において、干渉源の濃度は、好ましくは約300ppm/干渉源種を超えない濃度、さらに好ましくは約10ppm/干渉源種を超えない濃度に維持される。
【0058】
段階116において、標的物質含有ストリーム100は、可溶性固定剤と接触させることによって、標的金属含有沈殿物128を含有する沈殿物含有溶液120を形成する。好ましくは、標的物質または標的物質を包含する組成物のうちの大部分、さらに好ましくは75%またはそれ以上が、可溶性固定剤と共に標的物質含有沈殿物128を形成する。可溶性固定剤は、好ましくはスカンジウム、イットリウム、およびランタノイド元素のうちの1つあるいは複数であり、水および水性浸出剤のうちの少なくとも一方に可溶性の形態である。可溶性固定剤がセリウムを含む場合、一般的に+4以下の酸化状態を有する。固定剤は、限定しないが、たとえば、スカンジウム、イットリウム、またはランタノイド元素の臭化物、硝酸塩、亜リン酸塩、塩化物、亜塩素酸塩、塩素酸塩、その他の可溶性塩であることが可能であり、セリウム(III)またはセリウム(IV)の塩化物が、好適である。任意の理論によって縛られることを望まないが、セリウム(IV)の可溶型は、ナノ結晶二酸化セリウムを形成し得ると考えられている。これは、次に標的物質または標的物質を包含する組成物をソーブする。可溶性固定剤は、一般的に別個の水溶液として、好ましくは、約8:1未満、より好ましくは約0.5:1〜約5:1の溶液における固定剤と標的物質の平均モル比を生成する量で標的物質含有ストリームに添加される。
【0059】
段階116の間、標的物質含有ストリームのpHは、好ましくは約pH4〜約pH9、さらに好ましくは約pH5.5〜約pH8である。例によっては、pH調整は、段階116の前に必要とされ得る。pHが高すぎるか低すぎる場合、可溶性固定剤(下記で考察される)が溶液から沈殿し得る(たとえば、pHが高すぎる場合、固定剤は、炭酸塩か水酸化物として溶液から沈殿し得るが、pHが低すぎると、固定剤は、硫酸塩として溶液から沈殿し得る)。
【0060】
可溶性固定剤水溶液にキレート剤を添加することによって、水溶液中の固定剤の溶解度を増加させることが可能である。典型的なキレート剤は、金属原子およびイオンのうちの少なくとも一方と結合可能な少なくとも2つの非金属構成要素を含有する化学化合物である。任意の理論によって縛られることを望まないが、キレート剤は、金属イオンといくつかの化学結合を行うことによって機能する。模範的キレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジメルカプロール(BAL)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)、およびαリポ酸(ALA)、アミノヘノキシエタン−四酢酸(BAPTA)、デフェラシロックス、デフェリプロン、デフェロキサミン、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジメルカプトプロパンスルホン酸(DMPS)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、エチレンジアミン四酢酸(カルシウム二ナトリウムversante)(CaNa−EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、D−ペニシラミン、メタンスルホン酸、メタンホスホン酸、およびそれらの混合物が含まれる。
【0061】
可溶性固定剤はさらに、有機または無機添加剤を含むことが可能である。好ましくは、添加剤は、沈殿固体の凝集、沈降、および形成のうちの少なくともいずれかを誘発するための凝集剤、凝固剤、および濃化剤のうちの1つあるいは複数である。そのような添加剤の例には、石灰、ミョウバン、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム、三塩化アルミニウム、ポリ電解質、ポリアクリルアミド、ポリアクリレートなどが含まれる。
【0062】
1プロセス構成において、標的物質含有ストリームは、標的物質に加えて、解離性または溶解性陽イオンとして溶解有価生成物を含む。すなわち、溶解有価生成物は、ストリーム条件下においてオキシアニオン型ではなく、正電荷金属イオンとして生じる。可溶性固定剤が添加されると、標的物質のうちの大部分は沈殿するが、有価生成物のうちの大部分は沈殿物含有溶液中に溶解したままである。
【0063】
段階124において、得られるスラリ中の標的物質含有沈殿物のうちの少なくとも大部分が、水性浸出剤(段階104に再循環され得る)から分離されることによって、分離された標的物質含有沈殿物128(標的物質のうちの大部分を含む)と処理されたストリーム140(浸出剤のうちの大部分を含む)を形成する。段階124の後、処理ストリーム140は、一般的に約500ppm以下、さらに一般的には約50ppm以下の溶解標的物質を含有する。
【0064】
水性浸出剤中に溶解した残存可溶性固定剤は、たとえば、鉱酸塩(たとえばNaCl)かハロゲン化物(たとえば、アルカリ金属かアルカリ土類金属のフッ化物)の塩、またはたとえば、リン酸塩や硫酸塩のような選択されたオキシアニオンを水性浸出剤に添加することによって、除去されることが可能である。あるいは、可溶性希土類元素は、たとえば酸素を分散させることによって、より高い酸化状態に酸化され、任意に続いてより高いpHにpH調整されることによって、たとえば、希土類元素酸化物の不溶性化合物として希土類元素を沈殿させることが可能である。別の技法において、水性浸出剤のpHは、好ましくは少なくとも約pH7のpH、さらに好ましくは少なくとも約pH10のpHに増大されることによって、残存可溶性固定剤を沈殿させる。過剰な可溶性固定剤の除去は、段階124の前か後で生じ得る。
【0065】
分離された標的物質含有沈殿物128は、段階132において脱水されることによって、脱水沈殿物136を形成する。好ましくは、脱水は、分離された標的物質含有沈殿物128内に含まれる水のうちの少なくとも約50%、さらに好ましくは少なくとも約75%を除去するのに十分な期間および温度で行われる。典型的には、分離された標的物質含有沈殿物128は、約0.1〜約24時間の期間、約0〜約250℃の温度で脱水されるが、約100℃で約8時間が、さらに好適である。脱水沈殿物136は、典型的には水性浸出剤において高嵩密度および低溶解度を有する低表面積凝集体である。ヒ素(V)が標的物質であり、セリウム(III)が可溶性固定剤である場合、沈殿物は、主にガスパーライト(ヒ酸セリウム)であると考えられる。典型的には、脱水した物質は、少なくとも約5wt%、さらに好ましくは少なくとも約10wt%、さらに好ましくは少なくとも約20wt%の標的物質を含む。脱水沈殿物136は、標的物質含有ストリーム108中の溶解標的物質のうちの好ましくは少なくとも大部分、さらに好ましくは少なくとも約85%を含有し、処理ストリーム140は、典型的には標的物質含有ストリーム108中の溶解標的物質のうちの約25%以下を含有する。
【0066】
1つの構成において、比較的高速で添加される濃縮酸性希土類塩溶液を用いて段階116を実行することによって、理論的に「最良」の計算(希土類元素:ヒ素のモル比1:1に対して)に基づいて予測されるよりも多くのヒ素を所定量の希土類元素に対して捕捉する沈殿物を生成する。塩溶液中の好適な希土類塩濃度は、好ましくは少なくとも約50g/l、さらに好ましくは約100〜約400g/l、さらに好ましくは約300〜約400g/lである。塩溶液の好適pHは、約pH2以下であり、さらに好ましくは約pH0を超えない。特に好適な処方は、塩化物および/または硝酸塩の対イオンを含む+3および/または+4の酸化状態のセリウムの溶液を含む。得られる沈殿物は、低密度であると共にゲル様である。沈殿物は、ヒ素と希土類元素固体の任意の結晶相を実質的に含有しない。ゲル中の希土類元素(たとえば、セリウム(III)か(IV))1モルに対し、典型的には1モルより多いヒ素、さらに典型的には少なくとも約1.1モルのヒ素、さらに典型的には少なくとも約1.25モルのヒ素が存在する。
【0067】
別の構成において、新規な希土類元素−標的物質沈殿物が生成される。1つのプロセスにおいて、希土類元素は+3酸化状態のセリウムであり、標的物質は+5酸化状態のヒ素である。好ましくは、セリウムは、塩化セリウム(CeCl)および/またはと硝酸セリウム(Ce(NO)の形態である。標的物質含有ストリーム108は、一般的に酸性pH、さらに一般的には約pH5以下のpHを有する。希土類元素含有可溶性固定剤の添加後または添加と同時に、標的物質含有ストリーム108のpHを、第2pH、好ましくは少なくとも約pH6、さらに好ましくは約pH6〜約pH10に上昇させる。標的物質含有ストリーム108のpHは、たとえば、アルカリ金属水酸化物とアンモニア、アミド、および第1級、第2級、第3級、または第4級アミンの第I族塩の強塩基で上昇させるが、アルカリ金属水酸化物がより好適であり、アルカリ金属水酸化物が、さらに好適である。沈殿物は、ガスパーライトとは異なる結晶構造を有する。ガスパーライト(CeAsO)は、モナザイト型構造の単斜晶系空間群を有する。任意の理論によって縛られることを望まないが、沈殿物の結晶構造は、たとえば、明らかに構造的に類似した、空間群がP321の化合物BiPO(HO)0.67のような三方晶系空間群に属すると考えられる。三方晶水和BiPOのPDFカード番号は、01−080−0208である。さらに、沈殿物の式は、REAsO・(HO)と考えられており、式中、0<X≦10、「RE」は希土類元素である。水分子は、格子部位を占めると考えられるか、または結晶構造中に詰め込まれていると考えられる。
【0068】
別の構成において、可溶性固定剤は、他のヒ素除去剤と組み合わされることによって、混合型塩添加物を形成する。たとえば、可溶性固定剤は、1つあるいは複数の+3酸化状態の非希土類元素、特に遷移金属か元素の周期表の第13族金属と組み合わされ、+3酸化状態のアルミニウムまたは鉄が好適である。好ましくは、可溶性固定剤は、+3酸化状態の希土類金属であり、可溶性固定剤と非希土類金属は、各々水解離性塩の形態である。たとえば、二重塩混合物は、塩化セリウム(III)を塩化アルミニウム(III)と混合することによって形成される。別の実施例において、二重塩混合物は、塩化ランタン(III)を塩化アルミニウム(III)と混合することによって形成される。別の実施例において、二重塩混合物は、塩化ランタン(III)を塩化鉄(III)と混合することによって形成される。好適な処方において、希土類元素可溶性固定剤1モルに対して少なくとも1モルの非希土類元素が存在する。より好適な処方において、希土類元素可溶性固定剤1モルに対して少なくとも3モルの非希土類元素が存在する。さらに好適な処方において、+3の酸化状態を有する希土類元素可溶性固定剤1モルに対して+3の酸化状態を有する少なくとも1モルの非希土類元素が存在する。さらに好適な処方において、酸化状態が+3の希土類元素可溶性固定剤1モルに対して酸化状態が+3の少なくとも3モルの非希土類元素が存在する。
【0069】
混合塩型添加物と標的物質含有ストリーム108の接触条件は、適用に依存する。混合型塩添加物は、任意のpHを有することができる。すなわち、混合型塩は、酸性、中性、または塩基性のpHを有することが可能である。好ましくは、混合型塩添加物は、標的物質含有ストリーム108のpHよりも低い、つまりより酸性のpHを有する。より好ましくは、特に標的物質含有ストリーム108のpHが塩基性の場合、混合型塩添加物は酸性pHを有する。混合型塩添加物は、典型的には二金属性ランタニド系塩溶液であり、標的物質含有ストリーム108と標準温度またはより高温で接触させる。混合型塩添加の前と後の標的物質含有ストリーム108のpHは、約pH0〜約pH14であり得る。より好ましくは、混合溶液のpHは、約pH8.5〜約pH13.5である。混合型塩溶液は、広い温度範囲にわたって、好ましくはストリームの凍結点付近から標的物質含有ストリームの沸点付近の温度で標的物質含有ストリームと接触させることが可能である。
【0070】
二金属性ランタニド系の塩と標的物質含有ストリーム108との接触によって、沈殿物が生成する。標的物質がヒ素の場合、混合型塩添加物が希土類元素(「RE」)とアルミニウム(III)を含むとき、沈殿物は、たとえばアルセノフローレンサイト−(RE)[(RE)Al(AsO(OH)]であり、混合型塩添加物が希土類元素と鉄(III)を含むとき、沈殿物は、たとえばグラウリチト(graulichite)−(RE)[(RE)Fe(AsO(OH)]であると考えられる。
【0071】
沈殿物含有溶液120の分離液体相(以後、処理ストリーム140)は、溶解硫化物のうちの全部でなくても大部分を保持し、一方、標的物質含有沈殿物128は、標的物質、混合型塩添加物中に含有される希土類元素、および非希土類元素のうちの全部でなくても大部分を含有する。上記の無機化合物式を見ても分かるように、希土類元素とヒ素の比率は、少なくとも約1:2であり、これは、希土類元素ヒ酸塩、[REAsO]が沈殿する上記の構成に対して希土類元素の消費が有意に低下することを表す。
【0072】
別の構成において、可溶性固定化剤は、希土類金属を含まないか、実質的に希土類金属がない非希土類塩添加物である。たとえば、非希土類元素は、特に遷移金属か元素の周期表の第13族の金属であり、酸化状態が+3のアルミニウムが好適である。好ましくは、可溶性固定剤は、標準条件下(たとえば、STP)において水中で実質的に解離する非希土類元素(+3酸化状態)の塩の形態である。
【0073】
混合型塩添加物と標的物質含有ストリーム108の接触条件は、重要ではない。塩添加物溶液のpHは、酸性または塩基性であり得るが、特に標的物質含有ストリーム108のpHが塩基性の場合、好適なpHは酸性である。塩添加物溶液は、標準温度(たとえば、STP)またはより高温で標的物質含有ストリーム108と接触させる。塩添加の前と後の標的物質含有ストリーム108のpHは、約pH0〜約pH14に及び得る。より好ましくは、混合溶液のpHは、約pH8.5〜約pH13.5である。混合型塩溶液は、広い温度範囲、好ましくは標的物質含有ストリームの凝固点付近から沸点付近にわたって標的物質含有ストリームに添加されることが可能である。
【0074】
沈殿物は、塩添加物溶液と標的物質含有ストリーム108との接触により形成される。標的物質がヒ素の場合、混合型塩添加物がアルミニウム(III)を含むとき、沈殿物はアラース石[AlAsO]またはマンスフィールド石[AlAsO・HO]であると考えられ、混合型塩添加物が鉄(III)を含むときは、スコロド石[FeAsO]であると考えられる。
【0075】
沈殿物含有溶液120の分離液相(または処理ストリーム140)は、溶解硫化物のうちの全部でなくても大部分を保持し、一方、標的物質と酸化状態が+3の非希土類金属のうちの全部でなくても大部分は、標的物質含有沈殿物128中に含まれる。
【0076】
上記の1プロセス構成において、標的物質含有ストリームは、オキシアニオン以外の形態の溶解有価生成物を含む。ストリームは、処理溶液および標的物質含有沈殿物を形成すべく、段階112(任意)、120、124および128にかけられる。溶解有価生成物のうちの全部でなくても少なくとも大部分は、回収のために、任意の適切な技法によって溶液中に残される。任意の理論に縛られることを望まないが、可溶性と不溶性の希土類元素固定剤は、一般的に溶液から金属および半金属の解離性陽イオンを除去しないと考えられている。これは、金属および半金属のオキシアニオンが金属と半金属のオキシアニオンと解離性陽イオンとの両方を含有する溶液から選択的に除去され得るようにする。
【0077】
次に図2を参照して第2実施形態について述べる。
標的物質含有ストリーム200が提供される。標的物質含有ストリーム200は、ストリーム108か、たとえば、採鉱;金属精錬;製鉱業;ガラス製造;金属製造、加工および/または処理;化学および石油化学物質の生産、処理および製造の業界由来の任意の他のプロセスストリーム、副産物および廃棄ストリーム;汚染土壌、廃水スラッジなどの処理および/または浄化から生成されたストリームであり得る。標的物質含有ストリームの具体的な例は、浸出物含有溶液または浸出物非含有溶液、および/または、たとえば汚染水のような他の廃水ストリームを含む。本明細書における開示の一部は、採鉱尾鉱および湿式精錬工程の残存物からのヒ素の除去に言及するが、そのような参照は例示であり、限定と解釈されるべきではない。当業者には明らかになるように、本教示は、他の標的物質に適用できる。
【0078】
ストリーム200中の標的物質濃度は、典型的には標的物質含有ストリーム108中の標的物質濃度と同じである。たとえば、ヒ素は、約20ppbのヒ素よりも高い濃度、さらに1,000ppbのヒ素よりも高い濃度で存在し得る。ストリーム200は他の溶解成分、たとえば硫化物および/または硫酸塩を、この開示の他の個所に記載された濃度で含み得る。ストリーム200のpHは、適用に依存して酸性、中性、または塩基性であり得る。またストリーム200は、溶解固体を含むことが可能であり、一般的な総溶解固体(「TDS」)レベルは、少なくとも約5g/l、より一般的には少なくとも約20g/l、さらに一般的には少なくとも100g/lである。
【0079】
段階204において、ストリーム200は、不溶性固定剤と接触させることによって、標的物質を負荷した不溶性固定剤212と処理ストリーム208を形成する。好ましくは、標的物質のうちの大部分、さらに好ましくは約75%以上が、不溶性固定剤に負荷される。標的物質は、不溶性固定剤と共に組成物を形成する。特定の標的物質に対する不溶性固定剤の親和性は、pHおよび標的物質濃度のうちの少なくとも一方の関数であると考えられる。不溶性固定剤は、一般的に固定床か流動床において粒子状物質として用いられ、特定の構成において撹拌槽型反応器内で用いるのが望ましいかもしれない。1つの構成において、不溶性固定剤は、直列または並列に配置された1つあるいは複数のカラム内に含有される。1つの構成において、不溶性固定剤は、床において実質的に均一な粒子分布を維持すべく、たとえば、上記のような凝集剤と分散剤のうちの少なくとも一方を含む。
【0080】
いくつかの不溶性固定剤では、段階204に先立って、標的物質除去効率および/または不溶性固定剤に対する標的物質の親和性を改善するために、標的物質を酸化する酸化段階112が行われ得る。
【0081】
不溶性固定剤は、希土類元素が好ましく、水に実質的に不溶性の形態である。不溶性固定剤は、たとえば、スカンジウム、イットリウム、またはランタノイド元素の含水または無水希土類元素酸化物、フッ化物、炭酸塩、フルオロカルボン酸塩、またはケイ酸塩であり、好適にはセリウムの酸化物であり、さらに好適には酸化セリウム(IV)であり得る。不溶性固定剤は、平均表面積が、好ましくは約25m/g〜約500m/g、より好ましくは約70m/g〜約400m/g、さらに好ましくは約90m/g〜約300m/gの微細固体である。
【0082】
不溶性固定剤には、たとえば、イオン交換物質(たとえば、合成イオン交換樹脂)、たとえば活性化炭素の多孔性炭素、金属酸化物(たとえば、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、γ−アルミナ、活性化アルミナ、酸性化アルミナ、およびチタニア)、不安定金属陰イオンを含む金属酸化物(たとえば、オキシ塩化アルミニウム)、非酸化物難溶性物質(たとえば、窒化チタン、窒化ケイ素、および炭化ケイ素)、珪藻土、ムライト、多孔性高分子材料、たとえば、ゼオライト(合成または天然性)の結晶性アルミノケイ酸塩、無晶系シリカ−アルミナ、鉱物および粘土(たとえば、ベントナイト、スメクタイト、カオリン、ドロマイト、モントモリリナイト、およびその派生物)、イオン交換樹脂、多孔性セラミック金属ケイ酸塩物質および鉱物(たとえば、リン酸塩と酸化物クラスのうちの1つ)、鉄塩、および繊維状物質(合成(たとえば、限定しないが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、およびそれらの組み合わせ)と天然(たとえば、限定しないが、植物性繊維、動物性繊維、無機性繊維、セルロース誘導体、綿、紙、ガラスおよびそれらの組み合わせ)など)の他の成分を配合しまたは含ませることが可能である。
【0083】
不溶性固定剤は、希土類金属塩の沈殿からか、たとえば空気などの酸化剤の存在下、炉内において好ましくは約100〜約700℃、さらに好ましくは約180〜350℃の温度での、たとえば、希土類金属炭酸塩かシュウ酸塩の熱分解から得られ得る。不溶性固定剤の形成は、2007年10月31日に出願された同時係属米国特許出願第11/932,837号においてさらに検討されている。これらは、この参照によって明細書に組み込まれる。
【0084】
好適な不溶性固定剤は希土類元素化合物を含むが、他の固定剤を用いてもよい。沈殿、イオン交換、または何らかの他の機構によって溶液中の標的物質を固定するのに有効である任意の固定剤は、固体、液体、ガス状またはゲルに関係なく用いられ得る。他の固定剤の例には、少なくとも上記に示すものが含まれる。
【0085】
1つの構成において、不溶性固定剤は、平均表面積が少なくとも約1m/gの凝集粒子である。適用に依存して、より大きい表面積が望まれ得る。たとえば、凝集粒子は、少なくとも約5m/gの表面積を有することが可能であり、他の場合において、約10m/gより大きい表面積を、さらに他の場合において、約25m/gより大きい表面積を有することが可能である。より大きい表面積が、望まれる場合、粒子は、約70m/gより大きい表面積、他の場合においては、約85m/gより大きい表面積、さらに他の場合において、約115m/gより大きい表面積、さらに他の場合において、約160m/gより大きい表面積を有することが可能である。凝集粒子は、不溶性固定剤成分を所望のサイズ、構造、密度、多孔性、および流体特性のうちの1つあるいは複数を有する粒子内に結合、固着、および/または引き付けを行うべく、たとえば、熱硬化性重合体、熱可塑性重合体、弾性重合体、セルロース性重合体、およびガラスの高分子結合剤を含むことが可能である。
【0086】
不溶性固定剤は、1つあるいは複数の流動補助剤を結合剤の有無にかかわらず含むことが可能である。流動補助剤は、スラリ成分の分離防止、微粒子の沈殿防止、および、いくつかの場合においては、固定剤と他の成分の適所保持を行うべく、不溶性固定剤の上および/または中を通る流体の流体動態を改善することが可能である。
【0087】
プロセス200の作動条件は、制御されるべきである。たとえば、ヒ素が標的物質である場合、不溶性固定剤は、適切なプロセス条件下において、ヒ素のうちの少なくとも大部分を選択的に除去し、一方、溶液中に溶解(陽イオン性)種として有価生成物のうちの少なくとも大部分を残す。不溶性固定剤は、広範囲のpHレベルにわたって溶液からヒ素を効果的に固定することが可能であり、標的物質含有ストリームのpHは、ヒ素(V)とヒ素(III)の両方を吸着すべく、好ましくは約pH6以下、さらに好ましくは約pH2〜約pH5の範囲である。ヒ素(III)は、広いpH範囲にわたって不溶性固定剤上に吸着するが、ヒ素(V)は、より低pHレベルで不溶性固定剤によって吸着されるのが好ましい。水溶液は溶解固体を含み、典型的には、総溶解固体含有量は少なくとも約50g/lになり得る。
【0088】
処理ストリーム208は、ストリーム200に対して、低濃度の標的物質を有する。一般的に、ストリーム200中の標的物質のうちの大部分、さらに一般的には約75%以上、さらに一般的には約95%か、それ以上が、不溶性固定剤上に負荷される。1つの適用において、処理ストリーム208は、好ましくは約1,000ppm以下、さらに好ましくは約500ppm以下、さらに好ましくは約50ppm以下、さらに好ましくは約5ppm以下の標的物質を有する。
【0089】
事前に選択した程度の標的物質の負荷が生じる場合、標的物質負荷固定剤212が、段階216において、剥離溶液、または放出剤238と接触することによって、好ましくは固定剤のうちの大部分、さらに好ましくは約95%か、それ以上を放出または溶解すると共に、非負荷固定剤220(段階204に再循環される)および標的物質富化剥離溶液224を形成する。任意の酸性、中性、または塩基性の剥離溶液または放出剤が用いられ得る。希土類元素を負荷した不溶性固定剤の脱着プロセスは、1)吸着標的物質またはその組成物よりも放出剤に対する希土類元素による強い親和性と、2)固定剤212および/または吸着標的物質および/または吸着標的物質含有オキシアニオンの表面上の希土類元素の酸化状態の上方調整または下方調整とのうちの1つあるいは複数の結果であると考えられる。
【0090】
1つの適用において、剥離溶液はアルカリ性であり、上記の強塩基などの強塩基を含む。任意の理論によって縛られることを望まないが、高濃度での水酸化イオンは、不溶性固定剤の表面のオキシアニオンと競合し、さらにそれを置換すると考えられる。1つの処方において、剥離溶液は、好ましくは約1〜約15wt%、さらに好ましくは約1〜約10wt%、さらに好ましくは約2.5〜約7.5wt%の量で苛性化合物を含み、約5wt%が、さらに好適である。
【0091】
剥離溶液238の好適pHは、好ましくは標的物質が、固定剤212上に負荷された時のpHよりも大きい(たとえば、より塩基性)。剥離溶液238のpHは、好ましくは少なくともpH10、さらに好ましくは少なくとも約pH12、さらに好ましくは少なくとも約pH14である。
【0092】
別の適用において、(第1)剥離溶液は、広範囲のpHにわたり不溶性固定剤によって標的物質含有オキシアニオンに対して優先的に吸着されるシュウ酸塩またはエタン二酸塩を含む。シュウ酸塩イオンを脱着する1つのプロセス変法において、不溶性固定剤は、少なくとも約pH9、さらに好ましくは少なくとも約pH11の好適pHを有する第2剥離溶液(表示なし)と接触することによって、水酸イオンを好むシュウ酸塩イオンとエタン二酸塩イオンのうちの少なくとも一方を脱着する。強塩基は、第2剥離溶液(表示なし)に好適である。あるいは、吸着シュウ酸塩イオンとエタン二酸塩イオンのうちの少なくとも一方は、少なくとも約500℃の好適温度に加熱されることによって、吸着シュウ酸塩イオンとエタン二酸塩イオンのうちの少なくとも一方を熱的に分解し、さらにそれらを不溶性固定剤から除去することが可能である。
【0093】
別の適用において、(第1)剥離溶液238は、たとえば、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、バナジウム酸塩、またはフッ化物などの強吸着性交換オキシアニオンを含むことによって、ソーブされた標的物質含有オキシアニオンを置換する。第1剥離溶液は、比較的高濃度の交換オキシアニオンを有する。交換オキシアニオンの脱着は、第1剥離溶液と異なる(より高い)pHと交換オキシアニオン濃度のうちの少なくとも一方で行われる。たとえば、脱着は、強塩基を含むと共に、第1剥離溶液中のオキシアニオン濃度よりも低い濃度の交換オキシアニオンを有する第2剥離溶液(表示なし)によって行われることが可能である。あるいは、交換オキシアニオンは、不溶性固定剤を再生すべく、熱により分解されることが可能である。あるいは、交換オキシアニオンは、不溶性固定剤か交換オキシアニオンの酸化または還元によって脱着されることが可能である。
【0094】
別の適用において、剥離溶液は、たとえば、第1鉄イオン、水素化アルミニウムリチウム、発生期水素、ナトリウムアマルガム、ホウ化水素ナトリウム、スズイオン、亜硫酸塩化合物、ヒドラジン(ウォルフ・キシュナー(Wolff−Kishner)還元)、亜鉛−水銀アマルガム、水素化ジイソブチルアルミニウム、リンドラ触媒、シュウ酸、ギ酸、およびカルボキシル酸(たとえば、アスコルビン酸などの糖酸)の還元剤または還元性剤を含むことによって、希土類元素、吸着標的物質、および/またはソーブされた標的物質含有オキシアニオンを還元する。任意の理論によっても、例によっても縛られることを望まないが、不溶性固定剤の表面還元は、セリウム(IV)をセリウム(III)に還元することになり、標的物質およびオキシアニオンとあまり強く相互作用しないかもしれない。不溶性固定剤の表面還元の後または同時にpHを増大させることによって、ソーブされた標的物質またはそのオキシアニオンを脱着する。
【0095】
別の適用において、剥離溶液は、ソーブされた標的物質とそのオキシアニオンのうちの少なくとも一方をより高い酸化状態に酸化する、たとえば、ヒ素(III)をヒ素(V)にする、たとえば、過酸素化合物(たとえば、過酸化物、過マンガン酸塩、過硫酸塩、など)、オゾン、塩素、次亜塩素酸塩、フェントン(Fenton’s)試薬、酸素分子、リン酸塩、二酸化硫黄、その他の酸化剤または酸化性剤を含み、pH調整および脱着プロセスが続く。たとえば、不溶性希土類元素化合物からのヒ素(V)の脱着は、一般的に少なくとも約pH12、さらに一般的には少なくとも約pH14のpHで生じる。
【0096】
的確な剥離機構にかかわりなく、標的物質含有ストリーム200中の標的物質の第1濃度は、典型的には標的物質富化剥離溶液224中の第2標的物質濃度よりも低い。一般的に、標的物質の第1濃度は、第2濃度の約75%以下、さらに一般的には第2濃度の約50%以下である。例として、ヒ素の第1濃度は、約0.1mg/l〜約5g/lであり、ヒ素の第2濃度は、約0.25g/l〜約7.5g/lである。
【0097】
段階228において、標的物質が、適切な技法によって富化剥離溶液224から除去されることによって、標的物質232と貧剥離溶液236(段階216に再循環される)を形成する。除去は、沈殿(たとえば、硫化物(繊維金属に対して)、アルカリ土類金属炭酸塩(フッ化物に対して)、および希土類元素か鉄の塩(ヒ素に対して)を用いることによって)、吸着、吸収、電気分解、浸透法、アマルガム化などを含む任意の適切な技法によってもたらされ得る。1つの構成において、上述のような可溶性希土類元素固定剤を用いることによって標的物質を沈殿させる。
【0098】
別の実施形態において、標的物質含有ストリーム200は、標的物質含有ストリーム104(図1A)であり、段階112の直前か段階112の直後および段階116の直前に段階204と216を実行することによって、段階116の前に溶液中の標的物質の濃度を増大させる。このことは、たとえば、段階116で水溶液の処理容量を減らすという利点を提供可能である。さらに、ヒ素が標的物質であり、処理される溶液が溶解金属を含有する場合、可溶性固定剤による沈殿の前に不溶性固定剤を用いてヒ素の除去を行うことによって、他の金属からヒ素を単離および選択的に除去することが可能である。明らかなように、可溶性固定剤は、ヒ素だけを沈殿させ得るだけではなく、溶解金属も減らし/除去し得る。
【0099】
実験
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示すべく提供されるのであって、添付の特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。特に明記しなければ、全ての部およびパーセンテージは、重量による。
【0100】
実施例1
ヒ素濃度を50ppm未満に減らすべく、ヒ素含有ストリーム108中の可溶性塩化セリウム(III)CeClの最大ヒ素負荷容量を測定する一連の試験を行った。表1に示されるように、試験したヒ素含有ストリーム108(以降アルカリ性浸出溶液)は、以下の組成を有していた。
【0101】
【表1】

7つのアルカリ性浸出溶液の初期pHは約pH11であり、溶液の温度は約70〜80℃、反応時間は約30分間であった。
【0102】
7つのアルカリ性浸出溶液は、上記の表1から分かるように、様々なヒ素(V)濃度で調製された。各々の溶液は、同量の炭酸ナトリウム(20g/l)と硫酸ナトリウム(17.75g/l)を含有していた。第1系列の試験において、3.44mlの塩化セリウム(CeCl)が、全ての等温線に添加され、これは、0.918gのCeO(約0.05モルのCe)に等しい。第2系列の試験において、6.88mlの塩化セリウムが、全ての試験に添加され、これは、1.836gのCeO(約0.1モルのCe)に等しい。以下は、各々の等温線試験を実行した方法に関する指針である。
【0103】
第1段階において、200mlの溶液を重量で量り分け、400mlのパイレックス(Pyrex:登録商標)ビーカに移した。次にビーカをホット/撹拌プレート上に置き、撹拌しながら70〜80℃に加熱した。
【0104】
第2段階において、3.44mlの塩化セリウムを重量で量り分け、熱アルカリ性浸出溶液の混合ビーカ内に注ぎ込んだ。塩化セリウムの添加によって、瞬時に白色沈殿が形成された。白色沈殿が炭酸セリウム[Ce(CO・xHO]でなかったことを確認するため、第3段階を行った。
【0105】
第3段階において、4.8mlの濃HClを徐々に滴下した。シューという音と共に発泡が観察された。溶液を30分間連続して混合した後、サンプリングの前に4時間冷却させた。
【0106】
結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

図3は、ヒ酸セリウム(CeAsO)が形成されると、負荷容量が、436mg/gの理論容量で横ばい状態になり始めることを示す。これは、ヒ酸セリウムが形成されたことを思わせる。図4は、ヒ素濃度を50ppm未満に低下させるのに必要とされるセリウムとヒ素のモル比が、1モル比〜2モル比のどこかにあることを示す。しかしながら、2のモル比で217の負荷容量が得られた。図5は、非常に類似した結果(本質的には、2倍のCeCl添加)を示し、1〜2のモル比では、溶解ヒ素濃度は、50ppmより下であり得る。この容量は、より低いモル比とより厳しいpH制御によって改善され得る。
【0108】
実施例2
別の実験において、40gの二酸化セリウム(IV)粒を2.54cm(1インチ)のカラムに充填し、このベッドボリュームは約50mlであった。二酸化セリウムベッドは、ヒ素含有プロセスストリーム[75%As(V)、25%As(III)]を通過させ、その媒体にCeCOグラム当たり約44mgのヒ素、すなわちカラムに添加された全ヒ素の約1,700mgを負荷させることに成功した。この後、ヒ素を負荷した二酸化セリウムベッドに、6ベッドボリュームに相当する5%NaOH溶液を2ml/分の流速で通過させた。この溶液は、CeOグラム当たり44mgのヒ素のうちの約80%を放出した。続いて、同じセリウム媒体をヒ素汚染プロセスストリーム[75%As(V)、25%As(III)]で再度処理し、CeOグラム当たり更に25mgのヒ素、すなわち更に1,000mgのヒ素を媒体に負荷した。この実験は、不溶性固定剤の再生方法およびそれによって不溶性固定剤の寿命を延長する方法を示すと共に、ヒ素含有溶液のpHが、不溶性固定剤の性能を決定するのに重要であり得ることを示す。
【0109】
実施例3
アルカリ性浸出溶液から残存希土類元素固定剤を除去する試験を行った。
硝酸セリウム添加由来の残存セリウムを含有する150mlのアルカリ性浸出溶液に15gの食卓塩(NaCl)を添加した。表6は、アルカリ性浸出溶液中の開始濃度(対照)と塩添加後の濃度を示す。
【0110】
【表3】

この表3から分かるように、94%の残存セリウムが除去されていた。
【0111】
実施例4
この実施例において、セリウムとヒ素の生成物は、ガスパーライト、すなわち、セリウムとヒ素の予測生成物の化学量論に基づいて予測され得るよりも多くのヒ素を含有することが示された。さらにX線回折パターンは、生成物が、非晶質かナノ結晶質であり、セリアか、恐らくガスパーライトと一致している。非晶相またはナノ結晶相は、ヒ素捕捉後のプロセス水の再利用を可能にするだけではなく、他の型のセリウム添加から観測されるよりもずっと大きいヒ素除去能力を可能にするので、処理コストを減らすと共に環境ハザードを制限する。
【0112】
8つの50mlの遠沈管に各々25mlのヒ酸塩/硫酸塩/NaOHの完全酸化溶液を満たし、別の8つの50mlの遠沈管には酸素分子を2時間分散させた各々25mlの亜ヒ酸塩/硫化物/NaOHの完全還元溶液を満たした。両溶液は、24g/lのヒ素、25g/lのNaOH、および80g/lの硫化物相当量を含有していた。次に各々の試料を硝酸セリウム(IV)か塩化セリウム(III)のいずれかで処理した。セリウム塩溶液は1、2、3、または5mlの用量で添加した。pH調整は行われず、周囲温度22℃から温度を調整する試みも行われなかった。
【0113】
16の試験試料のうちの15試料は、迅速な沈殿物形成を示し、全容積〜25mlの容積を占めた。2種類の濃溶液間の反応は、ほとんど直ちに起こり、ゲル様沈殿物で溶液容積全体を満たした。5mlのセリウム(IV)を含有する16の試料は鮮黄色を保っていたが、さらに5mlの50%NaOHを添加すると、その時点で紫色の固体が形成された。
【0114】
セリウムとヒ素の反応から形成された固体を1時間沈積させたが、清澄化はほとんど観察されなかった。次に試料を50%速度で5分間遠心分離した。この時点で溶液の総容積と沈殿固体の容積を記録し、5mlの試料を分析用に収集した。5mlをやや上回る上清溶液を入手できたため(ヒ素濃度は24g/lで、セリウムの濃度もかなり上昇したことを意味する)、試料は、0.45μmのろ紙を用いてろ過した。5mlのセリウム塩を添加した4試料は、ろ過しなかった。上清溶液を収集し、容積を記録した。
【0115】
反応由来のろ過ケーキを週末にかけて乾燥室の上のプラスチック計量ボート内に放置した。72時間後、各々のボートの含有物を秤量し、ペレットが、依然として非常に湿っていること(溶解固体として試料に添加されたよりも多くの質量が存在する)が分かった。2mlのセリウム塩溶液を有する試料の半乾燥固体を130℃の乾燥室に移し、1時間後、XRDによって分析した。
【0116】
XRD結果を図6に示す。XRD結果は、ガスパーライト(予測生成物)および実験中に存在した種々の系に対して示され、「セリア」は二酸化セリウムに対応する。図6から分かるように、XRD分析は、種々の系においてヒ素固体とセリウム固体の結晶ピークまたは相を何ら検出しなかった。存在する唯一の結晶物質は、NaCl、NaNO(希土類元素溶液で導入された)またはNaSOから調製された試料において存在したNaSOのいずれかとして同定された。しかし、29、49、および57度2−θ付近での広い回折ピークは、非常に小さい粒子のセリアか、場合によってはガスパーライトを示し得る。
【0117】
上清溶液のヒ素含有量は、ICP−AESを用いることによって測定された。セリウム(IV)とセリウム(III)の両方が、ほぼ同じ程度に系からヒ素を効果的に除去したことが確認された。下記の表4と図7から分かるように、ヒ素除去の大きな差が、完全に酸化された系と、酸素分子分散前に完全に還元された系との間で認められた。図7は、ヒ酸塩から始まる「酸化」系と、続いて酸素分子分散によって後にヒ酸塩に酸化される亜ヒ酸塩から始まる「酸素分子分散」系において除去されたヒ素マイクロモルに対するプロットを示す。
【0118】
【表4】

図7は、添加セリウム量の関数としてプロットされた、沈殿固体の形成によって消費されたヒ素量を示す。この実験から得られる可溶性ヒ素濃度を2つの群:すなわち完全に酸化されたヒ酸塩および硫酸塩を含有する試料と、酸素分子が分散された亜ヒ酸塩および亜硫酸塩を含有する試料に区分することが可能である。可溶性固定剤として用いられるセリウムの酸化状態は、プロセスの有効性に及ぼす影響がかなり少なかったので、Ce(III)とCe(IV)データの両方は、各々の試験液の単回帰直線に適合した。完全酸化溶液の場合、固体によるヒ素捕捉によって、ヒ素対セリウムのモル比が1:3に増加するので、化学量論的にCeAsの生成物を構成する可能性がある。
【0119】
実施例5
一連の実験を行い、新規なCe−As化合物の合成に成功した。実験は、Ce(III)状態の可溶性セリウム塩を添加し、続いて水酸化ナトリウム(NaOH)でpH6〜pH10の範囲に滴定することによって、pH2未満のpHの高度に濃縮された廃棄ストリームからAs(V)状態のヒ素の沈殿を具体化する。
【0120】
第1試験において、0.07125モル/lのNaHAsO溶液33.5mlを含有する溶液400mlをビーカ内において室温で撹拌した。4.0モル/lのHNOを添加することによって、pHをpH1.5におおまかに調整した。その後、1.05gのCe(NO・6HOを添加した。セリウム(III)塩の添加による色調変化や何らかの沈殿物は、観察されなかった。NaOH(1.0モル/l)を撹拌した溶液に滴下し、pHをpH10.1にした。pHは、磁気撹拌下で1.5時間、pH10.2±0.2に維持した。反応後、溶液を撹拌プレートから除去し、12〜18時間、静かに沈積させた。上清をデカンテーションして除き、CeとAsのICP−MS分析用に確保した。固体を0.4μmのセルロース膜でろ過し、500〜800mlの脱イオン水で十分に洗浄した。固体を風乾し、X線回折によって分析した。
【0121】
第2試験において、シミュレート廃棄ストリーム溶液を以下の成分:As(1,200ppm)、F(650ppm)、Fe(120ppm)、S(80ppm)、Si(50ppm)、Ca(35ppm)、Mg(25ppm)、Zn(10ppm)、および10ppm未満のAl、K、およびCuで調製した。溶液のpHを濃HCl(12.1モル/l)で滴定してpH0.4に下げ、溶液を70℃に加熱した。CeCl(6.3ml、1.194モル/l)の溶液を熱溶液に加え、NaOH(20wt%、6.2モル/l)を滴下することによって、pHを徐々にpH7.5に増大させた。次に磁気撹拌下、70℃で1.5時間エージングさせ、溶液をpH7.5±0.2に維持した。次に溶液を熱源から取り出し、12〜18時間、静かに沈積させた。上清をデカンテーションして除き、CeとAsのICP−MS分析用に確保した。沈殿固体を遠心分離し、2回洗浄後、0.4μmのセルロース膜でろ過し、500〜800mlの脱イオン水で十分に洗浄した。固体を風乾し、X線回折によって分析した。
【0122】
第3試験において、新規なCe−As化合物の固体粉末を低pH浸出試験において安定性について試験した。0.5gの新規なCe−As化合物をpH2.9かpH5.0のいずれかのpHの酢酸溶液10mlに加えた。容器を密閉し、22±5℃の範囲の周囲温度、30±2回転/分で18±2時間、回転させた。必要回転時間後、溶液を0.2μmのフィルタでろ過し、固体から浸出されたかもしれないCeとAsについてICP−MSによって分析した。1ppm未満のAsが、ICP−MSによって検出された。
【0123】
図8は、新規なCe−As化合物(三方晶CeAsO・(HO)(実験的およびシミュレートの両方)として示される)とガスパーライト(実験的およびシミュレートの両方)のX線回折(XRD)結果を比較している。図12は、三方晶CeAsO・(HO)(実験的とシミュレートの両方)と三方晶BiPO・(HO)0.67(シミュレート)のXRD結果を比較している。XRD結果は、沈殿した結晶化合物が単斜晶系空間群においてモナザイト型構造で結晶化するガスパーライト(CeAsO)と構造的に異なり、かつ、三方晶BiPO・(HO)0.67と極めて類似していることを示す。
【0124】
異なる酸化状態のCeとAsに関する実験は、新規なCe−As化合物が、Ce(III)状態のセリウムとAs(V)状態のヒ素を必要とすることを明示する。水酸化ナトリウムなどの強塩基によるpH滴定が必要であると思われる。炭酸ナトリウムによるpH滴定が、ガスパーライト、つまり公知の天然に生じる化合物かガスパーライトと三方晶CeAsO・(HO)の組み合わせのいずれかを生成する。塩化セリウムと硝酸セリウムの使用は、共に新規な化合物の合成の成功を首尾よく実証した。マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、鉄、銅、および亜鉛などの他の金属種の存在によって、新規化合物の合成が阻害されることは、示されていなかった。存在するフッ化物は、ヒ素除去と競合し、不溶性CeF沈殿物を生成することになる。ヒ素とセリウムのみを含有する溶液は、1:1の原子比のCe:Asが、新規化合物の形成に好ましいこと、さらに過剰セリウムを含有する溶液は、新規化合物に加えて酸化セリウム(CeO)沈殿物を生成したことを示す。さらに、新規化合物は、pH2.9とpH5.0の溶液中のヒ素の溶解が1ppm未満であることを要求する浸出試験を検討したとき、極めて安定であるように思われる。
【0125】
実施例6
第1試験において、24g/lのヒ素、25g/lの水酸化ナトリウム、および80g/lの硫化ナトリウムを含有する50mlの合成廃水をフラスコに加え、磁気撹拌下、70℃に加熱した。初期溶液のpHはpH12.0であることが認められた。19.6gの塩化セリウム・アルミニウム溶液(83.7g/lのCe、54.0g/lのAl、D=1.29g/l)を滴下することによって、片状の白色固体沈殿物が得られた。水酸化ナトリウム溶液(NaOH、20%)を必要に応じて添加することによって、二金属ランタノイド系塩溶液の添加中、溶液pHをpH10.0以上に維持した。二金属ランタノイド系塩溶液を完全に添加した後、溶液を磁気撹拌下で30分間、70℃でエージングする。冷却後、最終溶液pHはpH10.4である。固体沈殿物を0.4μm膜でろ過し、乾燥させた。供給溶液および処理溶液のICP−AES分析は、ヒ素濃度が23,800ppmから4,300ppmに減少したことを示す。これは、730mgのヒ素/グラムCeOの処理容量で82%の除去率である。
【0126】
第2試験において、24g/lのヒ素、25g/lの水酸化ナトリウム、および80g/lの硫化ナトリウムを含有する30mlの合成廃水を磁気撹拌下、22℃でフラスコに加えた。初期溶液pHはpH13.0であると認められた。11.9gのセリウム−アルミニウム塩化物溶液(83.7g/lのCe、54.0g/lのAl、D=1.29g/l)を滴下することによって、片状の白色固体沈殿物が得られた。二金属ランタノイド系塩溶液の添加中、溶液のpHをpH10.0以上に維持すべく、必要に応じて水酸化ナトリウム溶液(NaOH、20%)を添加した。二金属ランタノイド系塩溶液を完全に添加した後、溶液を磁気撹拌下、70℃に加熱し、60分間エージングする。冷却後、最終溶液pHはpH11.0である。固体沈殿物を遠心分離し、水で2回洗浄した後、乾燥させた。供給溶液および処理溶液のICP−AES分析は、ヒ素濃度が、23,800ppmから2,750ppmに減少したことを示す。これは、770mgのヒ素/グラムCeOの処理容量で89%の除去率である。
【0127】
実施例7
第1試験において、24g/lのヒ素、25g/lの水酸化ナトリウム、および80g/lの硫化ナトリウムを含有する30mlの合成廃水をフラスコに加え、磁気撹拌下、70℃に加熱した。初期溶液のpHはpH12.8であることが認められた。17.3gの塩化アルミニウム溶液(54.0g/lのAl、D=1.20g/l)を滴下することによって、片状の白色固体沈殿物が得られた。塩化アルミニウム溶液の添加中、溶液pHをpH10.0以上に維持すべく、水酸化ナトリウム溶液(NaOH、20%)を必要に応じて添加した。アルミニウム性塩溶液を完全に添加した後、溶液を磁気撹拌下、30分間、70℃でエージングする。冷却後、最終溶液のpHはpH10.3である。固体沈殿物を遠心分離し、水で2回洗浄した後、風乾した。供給溶液および処理溶液のICP−AES分析は、ヒ素濃度が、23,800ppmから6,830ppmに減少したことを示す。これは、200mgのヒ素/グラムAlの処理容量で73%の除去率である。
【0128】
第2試験において、24g/lのヒ素、25g/lの水酸化ナトリウム、および80g/lの硫化ナトリウムを含有する30mlの合成廃水をフラスコに加え、磁気撹拌下、70℃に加熱した。初期溶液のpHはpH12.5であることが認められた。17.3gの塩化アルミニウム溶液(54.0g/lのAl、D=1.20g/l)を滴下することによって、片状の白色固体沈殿物が得られた。アルミニウム塩溶液の添加中、溶液pHをpH9.0以上に維持すべく、必要に応じて水酸化ナトリウム溶液(NaOH、20%)を添加した。アルミニウム塩溶液を完全に添加した後、溶液を磁気撹拌下、70℃に加熱し、30分間エージングする。冷却後、最終溶液のpHはpH9.2である。固体沈殿物を遠心分離し、水で2回洗浄した後、風乾させた。供給溶液および処理溶液のICP−AES分析は、ヒ素濃度が、23,800ppmから3,120ppmに減少したことを示す。これは、245mgのヒ素/グラムAlの処理容量で87.5%の除去率である。
【0129】
実施例8
溶液相セリウムイオン沈殿を評価すべく、いくつかの試験を行った。
試験1:
250ppmのSe(IV)かSe(VI)を含有する溶液を、モル比が2:1のSe:Ceを生成するのに十分な濃度で塩化Ce(III)か硝酸Ce(IV)のいずれかによって補正した。CeとSe(IV)との間の反応において数分以内に固体形成が観察され、同様にCe(IV)がSe(IV)と反応した場合も固体形成が観察された。しかし、Ce(III)がSe(VI)と反応した場合、固体は、観察されなかった。
【0130】
これらの試料の一部を0.45μmのシリンジフィルタでろ過し、ICP−AESを用いて分析した。残りの試料は、Ce(IV)を添加した場合、pH3に調整し、Ce(III)を添加した場合、pH5に調整した。ろ液は、Ce(III)が、Se(VI)の濃度を有意に下げなかったことを示した。しかし、Ce(IV)は、可溶性Se(VI)の濃度を250ppmから60ppmに減少させた。Ce(IV)は、1.5の初期系pHでSe(IV)の濃度を最初に減少させなかったが、pH3に増加後、Seのうちの>99%が、試料からろ過された。Ce(III)は、添加およびpH5に調整すると、Se(IV)の濃度を250ppmから75ppmに減少させた。
【0131】
試験2:
250ppmのCr(VI)を含有する溶液を塩化Ce(III)か硝酸Ce(IV)のいずれかとして供給されたモル当量のセリウムで補正した。クロム酸塩へのCe(III)の添加によって、直ちに目に見える影響を溶液に及ぼさなかったが、24時間後、暗色固体の微細沈殿物が出現した。対照的に、Ce(IV)の添加によって、直ちに大量の固体形成がもたらされた。
【0132】
先の実施例と同様に、一定分量をろ過し、pHをCe(IV)についてはpH3に調整し、Ce(III)についてはpH5に調整した。Ce(III)の添加によるCr溶解度に及ぼす影響はごくわずかであったが、Ce(IV)は、pH3で溶液からCrのうちのほぼ90%を除去した。
【0133】
試験3:
250ppmのフッ化物を含有する溶液をセリウム:フッ化物のモル比が1:3になるようにセリウムで補正した。この場合もやはり、セリウムは、塩化Ce(III)か硝酸Ce(IV)のいずれかとして供給された。Ce(IV)は、フッ化物と直ちに固体沈殿物を形成したが、Ce(III)は、3〜4.5のpH範囲において何らかの目に見えるフッ化物固体を生成しなかった。
【0134】
試験4:
50ppmのモリブデンSpex社ICP標準液、恐らくモリブデン酸塩を含有する溶液をモル当量の塩化Ce(III)で補正した。先の試料と同様に、セリウムの添加後に固体が観察され、一定分量をICP分析用に0.45μmのシリンジフィルタでろ過した。pH3では溶液中にほぼ30ppmのMoが残存したが、pHを5に上げたとき、Mo濃度は、20ppmに低下し、pH7付近でMo濃度は10ppmしか示されなかった。
【0135】
試験5:
50ppmのリン酸塩を含有する溶液をモル当量の塩化Ce(III)で補正した。添加によって直ちに固体の沈殿が生じた。イオンクロマトグラフィーによって測定したとき、リン酸塩濃度は、3〜6のpHにおいて20〜25ppmに低下した。
【0136】
実施例9
塩化セリウム(CeCl)を用いる場合、特定のハロゲン、特にフッ化物が、ヒ素および他の標的物質除去を干渉するかどうかを判断すべく、一連の試験を行った。これは、フッ化物を含有する貯蔵溶液とフッ化物を含有しない貯蔵溶液間の比較試験を行うことによって、判断されることになる。使用した物質は、CeCl(1.194MのCeまたは205.43g/lのREO)と400mlの貯蔵溶液であった。貯蔵溶液の構成成分を表5〜6に示す。
【0137】
【表5】

【0138】
【表6】

貯蔵溶液の初期pHは、pH約0から1であった。貯蔵溶液の温度を70℃に上昇させた。反応または滞留時間は、約90分間であった。
【0139】
フッ化物の存在下と不在下でヒ酸セリウムを沈殿させる操作は、以下の通りである。
段階1:
2つの3.5lの合成貯蔵溶液を調製した。1つはフッ素を含まず、もう1つはフッ素を含んでいた。両溶液は、上記に列挙した成分を含有した。
【0140】
段階2:
400mlの合成貯蔵溶液を重量測定法により測定し(402.41g)、600mlのパイレックス(登録商標)ビーカに移した。次に、ビーカをホット/撹拌プレート上に置き、撹拌しながら70℃に加熱した。
【0141】
段階3:
セリウムとヒ素の所定のモル比を満たすのに十分な塩化セリウムを貯蔵溶液に加えた。たとえば、1セリアモルと1モルのヒ素のモル比を得るため、5.68mlの塩化セリウムを重量測定法により測定し(7.17g)、撹拌BHP液に加えた。塩化セリウムの添加によって、黄色/白色沈殿が瞬時に形成され、塩化セリウム溶液の規定度が0.22であるため、pHが低下した。20%水酸化ナトリウムを用いることによって、pHを約7に調整した。
【0142】
段階4:
塩化セリウムを70℃のBHPに添加し、サンプリングの前に90分間反応させた。
段階5:
フッ化物含有BHP溶液とフッ化物非含有BHP溶液の全ての所望モル比に対して段階2〜4を繰り返す。
【0143】
結果を表7と図10〜11に示す。
【0144】
【表7】

フッ化物含有溶液またはフッ化物非含有溶液の負荷容量を比較することによって、セリウムの添加前にフッ化物を除去する利点が示唆される。図10は、セリウム対ヒ素の低モル比におけるフッ化物非含有溶液の負荷容量(CeOグラム当たりのAsのmgとして定義される)がかなり高いことを示す。今後、貯蔵溶液からのフッ化物捕捉方法を究明する対策が講じられるべきである。
【0145】
セリウム対ヒ素のモル比が約1.4〜1かそれ以上の溶液では、Fを含有する溶液とFを含有しない溶液間の負荷容量における差は、無視できる程度であった。これは、Fを捕捉するために余分に40%のセリウムが必要とされ、その結果として、残存セリウムがヒ素と反応し得ると考えられる。
【0146】
これらの結果は、フッ化物の存在がヒ素の捕捉を干渉していることを裏付ける。干渉は、CeFを形成する競合反応に由来する。この反応は、ずっと有利なKspを有する。セリウムのより効率的な活用を実現するために、フッ化物の前処理方法を検討および開発すべきである。
【0147】
したがって、フッ化物を含有しない溶液は、用いるセリウム対ヒ素のモル比が低いほど、より優れたヒ素除去を与えるので、実質的により高い負荷容量を与える。
実施例10
2.02gのAs(III)か1.89gのAs(V)のいずれかを含有する1.00lの溶液に40.00gのセリウムを添加した。懸濁液を24時間にわたって約5回、定期的に振動させた。懸濁液をろ過し、ろ液中のヒ素濃度を測定した。As(III)では、ヒ素濃度は、11ppmに低下した。As(V)では、ヒ素濃度は依然としてほぼ1g/lであったので、3mlの濃HClを添加することによって、pHを調整した。
【0148】
0.45μmのトラックエッチング・ポリカーボネート膜の真空フィルタを用いることによって、両懸濁液を完全にろ過した。溶液中のヒ素の最終または残存濃度をICP−AESによって測定した。固体を定量的に保持し、250mlのDI水中に約15分間再懸濁させた。洗浄懸濁液を前述同様にヒ素分析用にろ過し、ろ過した固体を計量ボートに移し、ベンチトップ上に4時間放置した。
【0149】
ろ過固体を秤量し、各々の試料が、5gの固体と3.5gの水分(および吸着塩)を含有すると見込まれるように算出された水分を占める8つの部分に分割した。ヒ素含有固体(As(III)またはAs(V))のそれぞれから1試料を秤量し、乾燥器に24時間移し、その後再度秤量することによって、水分含有量を決定した。
【0150】
ヒ素含有セリア試料を秤量し、抽出溶液を含有する50mlの遠沈管に移した(表8)。溶液(H以外)は、20時間の接触時間を有したが、たまに振動させて混合しただけであった。過酸化水素をヒ素含有固体と2時間接触させ、電子レンジで50℃に加熱することによって反応を加速させた。
【0151】
対照試料として8.5gのヒ素含有セリア試料を調製し、他の抽出試験と同じ期間45mlのDI水中に置いた。
第1抽出試験は、45mlの新たに調製した1NのNaOHを用いた。ヒ素を排除する可能性を高めるため、20%NaOH溶液も試験した。競合反応を検討するため、10%シュウ酸、0.25Mリン酸塩、および1g/l炭酸塩を抽出液として用いた。還元経路を試験するため、5gのヒ素含有セリアを45mlの0.1Mアスコルビン酸に加えた。あるいは、酸化経路は30mlのDI水を加えた2mlの30%Hを用いることによって検討された。
【0152】
選択脱着反応が生じるように十分な時間が経過した後、試料を各々遠心分離し、上清液を除去し、0.45μmのシリンジフィルタを用いてろ過した。ろ液をヒ素含有量について分析した。リトマス紙を用いることによって、ろ液のおおよそのpHを得た。
【0153】
酸化還元変化に基づく反応は、多量のヒ素放出を示さなかったので、依然としてヒ素を含有する固体を15mlの1N NaOHと10mlのDI水で1時間洗浄し、再度遠心分離した後、ろ過し、分析した。
【0154】
これらの脱着実験の結果は、表8において見ることができる。要するに、As(III)の脱着は、最小程度生じているようである。対照的に、As(V)吸着は、pHに対して鋭い感受性を示す。これは、As(V)が、11か12の値以上にpHを上昇させることによって脱着され得ることを意味する。As(V)吸着は、高濃度で存在する他の強吸着陰イオンとの表面部位をめぐる競合が生じ易い。
【0155】
As(III)をAs(V)に変換すべく過酸化水素を用いることは、Hによる処理後、NaOHを用いてpHを上昇させた場合に、大量のヒ素が回収されたという点において、比較的成功したようであった。しかし、NaOHが添加されるまで、ヒ素はほとんど脱着されなかった。
【0156】
アスコルビン酸塩は、負荷媒体の劇的な色調変化を生じさせたが、セリア表面からのAs(III)の除去にもAs(V)の除去にも失敗した。対照的に、シュウ酸塩は、検出量の吸着As(III)とかなり大量のAs(V)を放出した。
【0157】
他の吸着剤を用いた実験において:
これらの実験では、ヒ素試験用に確立された方法と類似した方法を用いることによって、一連の非ヒ素陰イオンの吸着および脱着を試験した。
【0158】
過マンガン酸塩:
2つの実験を行った。第1実験において、40gのセリア粉末を250mlの550ppm KMnO溶液に添加した。第2実験において、20gのセリア粉末を250mlの500ppmのKMnO溶液に添加し、1.5mlの4N HClでpHを低下させた。スラリpHを低下させることによって、セリアへのMn負荷が4倍に増加した。
【0159】
両実験において、セリアを過マンガン酸塩と18時間接触させた後、ろ過し、固体を保持した。ろ液をICP−AESを用いてMnについて分析し、固体を250mlのDI水で洗浄した。pH未調整固体は、洗浄を二度繰り返した。
【0160】
ろ過および洗浄したMn接触固体の重量を測定し、一連の3つの抽出試験と1つの対照に分割した。これらの試験では、1NのNaOH、10%シュウ酸、または1Mリン酸塩と接触させた場合のマンガンがセリア表面から回収され得る程度を、同じ条件下のDI水の作用と比較して実験した。
【0161】
対照として水と接触させた過マンガン酸塩負荷セリア粉末の試料は、5%未満のMnの放出を示した。ヒ酸塩と同様に、NaOHは、セリア表面からの過マンガン酸塩の脱着を効果的に促進した。pHを低下させた第2実験の場合、NaOHの作用は、過マンガン酸塩がより高pH条件下で吸着した第1実験よりも大きかった。
【0162】
リン酸塩は、ヒ酸塩脱着の誘発時よりも過マンガン酸塩脱着の誘発時においてずっと効果的であった。リン酸塩は、我々が過マンガン酸塩を用いて試験した中で最も効果的な脱着促進剤であった。
【0163】
シュウ酸は、過マンガン酸塩溶液において有意な色調変化を生じさせた。これは、Mn(VII)が還元され、恐らくMn(II)かMn(IV)に還元されたことを示し、MnOかMnOの沈殿物形成は、セリアから除去され得るかどうかは分からないさらなるMnの検出を防止し得る。pH未調整試料において、脱着されたMnは、検出されなかった。しかし、スラリを僅かに酸性化することによって調製された試料において、有意量のMnがセリア表面から回収された。
【0164】
クロム酸塩
0.6gの二クロム酸ナトリウムを用いて250mlの溶液を調製し、溶液を20gのセリウム粉末とpH調整せずに18時間接触させた。スラリをろ過し、固体をDI水で洗浄した後、50mlの遠沈管に分割し、セリア表面からクロムを抽出する3つの溶液の能力を試験した。
【0165】
クロム酸塩に対するセリア容量は、有意であり、>20mgのCr/gセリアの負荷が、任意のpH調整も系の最適化もせずに得られた(ろ液のpHは、約8であった)。同様に、吸着クロム酸塩の抽出も、容易に成し遂げられた。1NのNaOHを用いてクロム酸塩含有セリアを含むスラリのpHを上昇させることは、試験されたクロムを脱着する最も効果的な方法であった。リン酸塩を使用すると、かなり少ないクロム酸塩しか脱着されず、シュウ酸を使用するとさらに微量しか脱着されなかった。対照試験において、負荷固体を蒸留水と接触させた場合、わずか5%のクロム酸塩しか回収されなかった。
【0166】
亜セレン酸塩
1gのNaSeOを用いることによって、1リットルの亜セレン酸塩溶液を調製した。pHは、2mlの4M HClを用いて低下させた。40gのセリアを加え、18時間接触させることによって、スラリを生じさせた。スラリをろ過し、Se負荷セリアを保持し、秤量し、さらに抽出すべく50mlの遠沈管に分けた。
【0167】
セリアに、>6mg/gのSeを負荷した。この反応から生じた固体は、調製段階においては洗浄されなかったが、DI水を用いる対照抽出は、2%未満のセレンの放出を示した。セレン吸着の程度は、1NのNaOHを負荷セリアに添加することによって減少したが、その効果は、他のオキシアニオンで見られたほど劇的ではなかった。しかし、Se(IV)をSe(VI)に酸化すべく過酸化水素を用いることによって、吸着セレンは、セリア表面から容易に放出され、回収された。シュウ酸は、セレン吸着の程度に顕著な影響を及ぼさなかった。
【0168】
アンチモン
アンチモンの溶解度は、むしろ低いので、これらの反応は、溶解され得るアンチモン量によって制限された。この場合、100mgの酸化アンチモン(III)を10mlの濃HClと共に1リットルの蒸留水中に入れ、数日間平衡化させ、0.8μmのポリカーボネート膜でろ過することによって、不溶性アンチモンを除去した。1リットルのアンチモン溶液を16gのセリア粉末と接触させ、アンチモンが溶液から効果的に除去されたが、表面に高負荷させるには利用可能なSb(III)が少なすぎた。1つには、低い表面被覆率と強い表面陰イオン相互作用のため、抽出試験は、Sb回収がほとんどないことを示した。Sb(III)を容易に吸着され難いSb(V)種に変換すると期待されていた過酸化水素を使用しても、有意量のSb回収を生じなかった。
【0169】
表8〜11は、試験パラメータと結果を示す。
【0170】
【表8】

【0171】
【表9】

【0172】
【表10】

【0173】
【表11】

実施例11
貯蔵池のプロセス水からヒ素を除去するためにセリウム(IV)溶液を用いることができるか否かを判断する実験、つまり使用されるセリアの負荷容量を測定する実験を行った。これらの試験において、貯蔵池溶液は、DI水で希釈されることになる。なぜなら、それによってより優れたヒ素除去能力が生じることを、先の試験結果が裏付けていたからである。使用される可溶性セリウム(IV)種は、硫酸セリウム→0.1MのCe(SOおよび硝酸セリウム→Ce(NOである。使用される池溶液は、pH2で27%のAs(III)と73%のAs(V)に二分されたヒ素を有する。池溶液中のその他の成分を表12に示す。
【0174】
【表12】

試験1:
DI水を用いて、50mlの貯蔵池溶液を350mlに7倍希釈した。希釈池溶液を加熱して沸騰させ、50mlの0.1M Ce(SOを添加し、さらに沸騰させながら15分間混合した。黄色/白色沈殿が形成された。これをブフナー(Buchner)漏斗と40ワットマン(Whatman:登録商標)ろ紙を用いてろ過した。沈殿物を110℃で一晩乾燥させ、重量測定したところ、0.5gであった。ろ液をサンプリングし、0.2μフィルタでろ過した。ICP−AESを用いてろ液についてフルアッセイを行った。
【0175】
試験2:
DDI水を用いて、200mlの貯蔵池溶液を300mlに希釈した。溶液を加熱して沸騰させ、8.95mlの2.22Ce(NOを添加した。溶液を15分間沸騰させると、黄色/白色沈殿が形成された。ブフナー漏斗と40ワットマン(登録商標)ろ紙を用いてこれをろ過した。沈殿物を110℃で一晩乾燥させ、2.46gの重量を得た。ろ液をサンプリングし、0.2μフィルタを用いてろ過した。ICP−AESを用いて、ろ液のフルアッセイを行った。
【0176】
結果を以下の表11〜12に示す。
【0177】
【表13】

【0178】
【表14】

表13と14は、セリウム(IV)溶液が、ヒ素に対して優先的親和性を有することを明示する。データを詳細に検討すると、他の金属のいくつかの、すなわちニッケルの濃度が変動するように見える。使用される希釈スキームおよび計器の限界に準じて、報告された濃度に最大15%の誤差が存在し得る。これは、変動の一部を説明し得るであろう。表12に移ると、試験1と試験2は、それぞれヒ素のうちの85%と74%を除去した。
【0179】
本発明のいくつかの変形および改変を用いることが可能である。本発明の他の特徴を提供することなく、いくつかの特徴を提供することが可能になり得る。
種々のプロセスは、液体を参照して考察されているが、当然のことながら、たとえば、ガスのような他の流体に適用されることも可能である。ヒ素含有ガスの例には、精錬所および焙焼炉の排ガスおよび公益施設の排ガスが含まれる。
【0180】
種々の実施形態、構成、または特徴における本発明は、様々な実施形態、構成、特徴、部分的組み合わせ、およびそれらの部分集合を含む、実質的に本明細書において示されると共に説明されるような成分、方法、プロセス、システムおよび装置のうちの少なくとも1つを含む。当業者は、本開示の理解を得た上で、本発明を構成および使用する方法を理解するだろう。様々な実施形態、構成、および特徴における本発明は、たとえば、性能の改良、実装の容易化および/または実装コストの削減を行うべく、先の装置またはプロセスで用いられ得るような要素が不在の場合を含む、本明細書か種々の実施形態、構成、またはその特徴において図示および/または説明が行われない要素がない場合に装置およびプロセスを提供することを含む。
【0181】
本発明の前述の考察は、例示および説明を目的として提示されている。前述の考察は、本明細書において開示される形態に本発明を限定するよう意図されていない。たとえば、前述の詳細な説明において、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化する目的で1つあるいは複数の実施形態、構成、または特徴においてまとめられている。本発明の実施形態の特徴、構成、または態様は、上記の実施形態以外の別の実施形態、構成、または態様において組み合わされ得る。この開示の方法は、請求される発明が、各々の請求項において明確に列挙されるよりも多くの特徴を要求するという意図を表していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明の態様は、前述の開示された単独の実施形態、構成、また態様の全ての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、以下の請求項は、本明細書によって、この詳細な説明に盛り込まれ、各々の請求項は、本発明の別個の好適実施形態として自立する。
【0182】
しかも、本発明の説明は、1つあるいは複数の実施形態、構成、または特徴および特定の変形および改変を包含していたが、たとえば、本開示を理解した上で当業者の技術および知識の範囲内であり得るような他の変形、組み合わせ、および改変は、本発明の範囲内にある。請求されるものと別の交換可能な構造と等価構造のうちの少なくとも一方、機能、範囲または段階が、本明細書において開示されているか否かにかかわらず、さらに任意の特許可能な主題を公の場で使用する意図なしに、そのような別の、交換可能な構造および/または等価構造、機能、範囲または段階を含む、許される範囲で別の実施形態、構成、または特徴を含む権利を得ることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素を含む可溶性固定剤とヒ素以外の標的物質を含むプロセスストリームとを接触させることにより、標的物質と希土類元素とを含む不溶性標的物質含有組成物を形成する工程と、
プロセスストリームから不溶性標的物質含有組成物を除去することによって、精製プロセスストリームを形成する工程と
からなる方法。
【請求項2】
希土類元素はイットリウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムのうちの少なくとも1つからなる群から選択され、
標的物質は、原子番号5、9、13、14、22〜25、31、32、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、および96からなる群から選択される原子番号を有する元素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的物質は、ホウ素、フッ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ガリウム、ゲルマニウム、タリウム、セレン、水銀、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、水銀、鉛、ビスマス、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、ウランおよびそれらの混合物からなる群から選択される元素である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
可溶性固定剤は、塩化物、臭化物、硝酸塩、亜リン酸塩、亜塩素酸塩、および塩素酸塩のうちの1つの形態であり、
可溶性固定剤は、pH7未満のpHを有する塩溶液中に含有される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒ素および有価金属を含む固体物質を提供する工程と、
固体物質を浸出剤と接触させることによって、固体物質由来のヒ素のうちの少なくとも大部分を含む浸出ストリームを形成し、かつ有価金属のうちの少なくとも大部分を固体物質中に残存させる工程と、
浸出ストリームを可溶性固定剤と接触させることによって、浸出ストリーム由来のヒ素のうちの少なくとも大部分と可溶性固定剤とを含むヒ素含有組成物を形成する工程と、
ヒ素含有組成物のうちの少なくとも大部分を浸出ストリームから除去する工程とを含む方法であって、
可溶性固定剤は、希土類元素を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
希土類元素は、イットリウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムのうちの少なくとも1つであり、
浸出剤は、アルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、および水酸化物のうちの1つあるいは複数を含み、
浸出剤は、少なくとも約pH9のpHを有し、前記方法はさらに、
浸出ストリームを可溶性固定剤と接触させる前および接触と同時のうちの少なくとも一方で、溶解ヒ素を選択された酸化状態に酸化する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
浸出ストリームは、フッ素と、リン、炭素、ケイ素、およびバナジウムのうちの少なくとも1つを含む溶解オキシアニオンとのうちの少なくとも一方を含み、前記方法はさらに、
浸出ストリームを可溶性固定剤と接触させる前に、浸出ストリームから溶解オキシアニオンとフッ化物のうちの少なくとも一方のうちの少なくとも大部分を除去する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
有価金属は遷移金属であり、
前記組成物は、結晶質溶解ヒ素および不溶性固定剤を実質的に含まない溶液沈殿物であり、前記方法はさらに、
浸出ストリームから可溶性固定剤を沈殿させることによって、任意の残存可溶性固定剤のうちの少なくとも大部分を除去する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物は沈殿物の状態であり、
浸出ストリームのpHは約pH5以下であり、
浸出ストリームを可溶性固定剤と接触させる工程は、
浸出ストリームと可溶性固定剤の接触後および接触と同時のうちの少なくとも一方で、強塩基によって浸出ストリームのpHを少なくとも約pH6に上げる工程を含み、
前記組成物は、三方晶系空間群に属する結晶構造を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
浸出ストリームは溶解有価金属陽イオンを含み、有価金属は、遷移金属、アルミニウム、スズ、および鉛のうちの1つあるいは複数であり、
可溶性固定剤は、イットリウム(III)、スカンジウム(III)、ランタン(III)、セリウム(III)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、プロメチウム(III)、サマリウム(III)、ユウロピウム(III)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム エルビウム(III)、ツリウム(III)、イッテルビウム(III)、およびルテチウム(III)のうちの少なくとも1つを含む第1塩添加物と、+3酸化状態の非希土類金属を含む第2塩添加物を含むと共に、非希土類金属は、遷移金属、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、およびビスマスのうちの1つであり、
除去工程の後、溶解有価金属のうちの少なくとも大部分は、浸出ストリーム中に残存する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
標的物質、酸素、水、および希土類元素を含む組成物であって、
前記組成物は、結晶相を有する実質的な結晶質であるとともに、水和水が結晶格子内の部位を占めている組成物。
【請求項12】
前記組成物の結晶相の化学式は、
REAsO・(HO)、(ただし0<X≦10)であり、
REは、イットリウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される希土類元素である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
標的物質はヒ素であり、かつ結晶構造は三方晶系空間群に属する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
(a)ヒ素含有ストリームを提供する工程と、
(b)(i)+3酸化状態の希土類元素と+3酸化状態の非希土類元素とを含む希土類塩添加物、および
(ii)+3酸化状態の非希土類元素を含み、実質的に希土類元素を含まない非希土類塩添加物
のうちの少なくとも1つとヒ素含有ストリームとを接触させる工程と
を含む方法であって、
非希土類元素は、原子番号5、13、22〜29、31、40〜45、47、49、72〜77、79、81、および83からなる群から選択される原子番号を有し、それによって、希土類塩添加物および非希土類塩添加物のうちの少なくとも1つは、ヒ素と沈殿物を形成する方法。
【請求項15】
希土類塩添加物をヒ素含有ストリームと接触させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
+3酸化状態の希土類元素1モルに対して少なくとも3モルの+3酸化状態の非希土類元素が存在し、かつ
希土類元素1モルに対して少なくとも2モルのヒ素が沈殿物中に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
非希土類塩添加物をヒ素含有ストリームと接触させる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
標的物質を含む供給ストリームを提供する工程と、
供給ストリームを不溶性固定剤と接触させることにより、標的物質負荷不溶性固定剤を形成する工程であって、不溶性固定剤は希土類元素を含み、負荷不溶性固定剤は、供給ストリーム中の標的物質のうちの少なくとも大部分を含み、それによって、負荷不溶性固定剤中の標的物質は、不溶性固定剤と組成物を形成する工程と、
負荷不溶性固定剤を剥離溶液と接触させることにより、剥離溶液中に標的物質のうちの少なくとも大部分を溶解すると共に、負荷剥離溶液および非負荷不溶性固定剤を形成する工程と、
負荷剥離溶液から溶解標的物質のうちの少なくとも大部分を除去する工程と
を含む方法。
【請求項19】
標的物質は、原子番号5、13、14、22〜25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、および96からなる群から選択される元素を含み、
不溶性固定剤と接触する時の供給ストリームのpHは約pH6以下であり、かつ
剥離溶液のpHは少なくとも約pH7である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
標的物質は、原子番号5、13、14、22〜25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、および96からなる群から選択される元素を含み、かつ
剥離溶液は強塩基を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
標的物質は、原子番号5、13、14、22〜25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、および96からなる群から選択される元素を含み、
剥離溶液はエタン二酸塩を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
標的物質は、原子番号5、13、14、22〜25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、および96からなる群から選択される元素を含み、
剥離溶液は還元剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
標的物質は、原子番号5、13、14、22〜25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、および96からなる群から選択される元素を含み、
剥離溶液は酸化剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記除去工程は、負荷剥離剤を可溶性固定剤と接触させて溶解標的物質を沈殿させることによって実行され、
可溶性固定剤は希土類元素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
(a)標的物質と、標的物質を希土類元素により沈殿させることに悪影響を及ぼす干渉源とを含む標的物質含有ストリームを受容する工程と、
(b)標的物質含有ストリームから干渉源のうちの少なくとも大部分を除去することにより、標的物質のうちの少なくとも大部分を含む処理ストリームを形成する工程と、
(c)上記工程の後、希土類元素を含む可溶性固定剤および不溶性の固定剤のうちの少なくとも1つと処理ストリームとを接触させることにより、処理溶液から標的物質のうちの少なくとも大部分を沈殿させる工程と
からなる方法。
【請求項26】
干渉源はリン、フッ素、ケイ素、炭素、およびバナジウムのうちの少なくとも1つを含み、
標的物質は原子番号5、13、22、24、25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、および96からなる群から選択される元素を含み、
固定剤はランタノイドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
標的物質は原子番号5、13、22、24、25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、96からなる群から選択される元素を含み、
固定剤は可溶性である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
標的物質は原子番号5、13、22、24、25、31、32、33、34、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、80、81、82、83、92、94、95、96からなる群から選択される元素を含み、
固定剤は不溶性である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
溶解標的物質および溶解有価生成物を含む標的物質含有ストリームを提供する工程であって、標的物質はオキシアニオン型であり、有価生成物は遷移金属、アルミニウム、スズ、および鉛のうちの少なくとも1つであると共に、オキシアニオン以外の型である工程と、
標的物質含有ストリームを希土類元素固定剤と接触させることによって、標的物質含有沈殿物として溶解標的物質のうちの少なくとも大部分を沈殿させるのと同時に、処理ストリーム中に溶解した有価生成物のうちの少なくとも大部分を残す工程と、
処理ストリームから標的物質含有沈殿物のうちの少なくとも大部分を分離する工程と
を含む方法。
【請求項30】
溶解有価生成物は溶解陽イオン型である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
有価生成物は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、モリブデン、白金族金属、貴金属、およびそれらの混合物から選択されると共に、前記方法はさらに、
その後、処理ストリームから有価生成物のうちの少なくとも大部分を回収する工程を含む、請求項29に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−508106(P2012−508106A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535788(P2011−535788)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/064023
【国際公開番号】WO2010/056742
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510120056)モリーコープ ミネラルズ エルエルシー (5)
【氏名又は名称原語表記】MOLYCORP MINERALS LLC
【Fターム(参考)】