説明

希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法及び回収装置

【課題】得られる希土類系磁石の酸素量を低減することにより、磁気特性の向上を図ることができ、また、水素粉砕粉の酸素含有量を調整することができることができる希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法及び回収装置を提供すること。
【解決手段】 回収室内を減圧した後に、処理容器内の希土類系磁石用原料合金を回収室内に排出し、希土類系磁石用原料合金を回収室内に排出した後に、回収室内に酸素含有ガスあるいは酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入し、回収室内を所定圧力及び所定酸素濃度とした後に、希土類系磁石用原料合金を回収容器に回収することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能な希土類系磁石としては、サマリウム・コバルト系磁石とネオジウム・鉄・ボロン系磁石の2種類が広く使われている。
特にネオジウム・鉄・ボロン系磁石(以下、「R−T−B系磁石」と称する。)は、種々の磁石の中で最も高い磁気エネルギー積を示し、価格も比較的安いため、各種電気機器に採用されている。
R−T−B系磁石は、主にR14Bの正方晶化合物からなる主相、Rリッチ相及びBリッチ相から構成されている。R−T−B系磁石では、基本的に、主相であるR14Bの正方晶化合物の存在比率を増加させれば、磁気特性が向上する。しかし、Rは雰囲気中の酸素と反応し易く、Rなどの酸化物を作る。従って、製造工程中にR−T−B系磁石用原料合金やその粉末が酸化すると、R14Bの存在比率が低下するとともに、Rリッチ相が少なくなり、磁気特性が急激に低下する。すなわち、製造工程中における酸化を防止し、R−T−B系磁石用の原料合金やその粉末の酸素含有量を低減させれば磁気特性が向上する。
上記のR−T−B系磁石等の希土類系磁石は、原料合金を粗粉砕及び微粉砕して形成した合金粉末をプレス成形した後、焼結工程及び熱処理工程を経て作製される。希土類系磁石を製造するにあたり、原料合金を粗粉砕する過程で、粉砕効率が高いことから水素粉砕が多用されている。
水素粉砕とは、原料合金に水素を吸蔵させ、脆化させることで原料合金を粉砕する手法であり、次の工程により行なわれる。
まず、原料である合金を水素炉内に挿入した後、水素炉内部を真空引きによって減圧する。その後、水素ガスを水素炉内に供給し、原料合金に水素を吸蔵させる(水素吸蔵工程)。所定時間経過後、水素炉内の真空引きを行ないながら原料合金を加熱し(加熱工程)、原料合金から水素を放出させた後、冷却して(冷却工程)水素粉砕は終了する。これにより原料合金は脆化し、粗粉砕粉となる。
水素粉砕後の粗粉砕粉は、次工程の微粉砕工程で、数μmの微粉砕粉に粉砕される。
希土類元素はそれ自体活性であり大気に触れると酸化するため、希土類元素を用いた磁石はそれぞれの製造工程における酸化防止がその磁気特性向上に有効であり、各工程で酸化防止の対策が採られている。
【0003】
例えば、微粉砕後の微粉砕粉を直接鉱物油等に投入し、その後成形することで、焼結体の低酸素化を行なう技術(特許文献1)、微粉砕後の微粉砕粉に液体潤滑剤を添加し、粒子の表面を被覆して微粉砕粉の酸化防止を行う技術(特許文献2)があり、これらの方法は、微粉砕粉の低酸素化を提案している。
希土類系磁石を製造する工程において、比較的粒の大きい希土類系磁石用原料合金の粗粉砕粉においても、途中工程で大気に接触させると、急激に酸化が進行し、酸素含有量が増えることで、最終的に得られる焼結磁石の磁気特性が低下することが知られている。
なお、希土類系磁石の粗粉砕前の原料合金を得る方法として、急冷法の一種であるストリップキャスト法は、最終的に高い磁気特性の焼結磁石を得ることができるため、現在多用されている。また他の急冷法として遠心鋳造法が提案されている。
【0004】
急冷法によって作製した希土類系磁石用原料合金の厚さは、一般に、0.03mm以上10mm以下の範囲にある。特にストリップキャスト法では1mm以下である。
急冷法で作製された原料合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された原料合金に比較して、相対的に短時間で冷却されているため、組織が微細化され、結晶粒径が小さい。また粒界の総面積が大きく、Rリッチ相の分散性にも優れる。
また、急冷法による原料合金は、水素粉砕法によれば粒界で破断しやすいため、得られた合金粉末の粒子表面にRリッチ相が表れやすくなる。Rリッチ相のRは酸素と反応しやすいため、急冷法による原料合金の粉末は極めて酸化しやすく、磁気特性の劣化も激しい。
そこで、水素粉砕後の粗粉砕粉(水素粉砕粉)の酸化を防止するために、水素粉砕粉を水素粉砕装置から排出するための回収室での工程を不活性ガス中で行う技術(特許文献3)が提案されている。
【0005】
特許文献3で提案されているように、水素粉砕粉は、不活性ガス中で管理されることで酸化を防止できる。
特許文献3では、水素粉砕粉を水素粉砕装置から排出するための回収室では、水素粉砕粉を収納した搬送容器毎に回収処理が行われる。すなわち、搬送容器内の水素粉砕粉を回収室内底部に落下させ、この回収室内底部の水素粉砕粉を回収容器に排出するという工程を、搬送容器単位で繰り返し行う。また、水素粉砕粉を排出した搬送容器は、回収室外へ搬出されるが、この搬送容器の搬出時には回収室は外気に開放する。外気と連通した回収室は、新たな搬送容器が搬入される前に、真空排出されるとともに不活性ガスが導入されるので酸素は存在しない。従って、新たに搬入された搬送容器内の水素粉砕粉が酸化することはない。
しかし、回収室内に水素粉砕粉が残留していると、残留した水素粉砕粉は外気との連通状態において酸化されてしまい、酸化された水素粉砕粉が新たな搬送容器内の水素粉砕粉に混入されてしまう。
特許文献3で開示されている方法は、搬送容器からの水素粉砕粉の排出を不活性ガス中で行うため、落下した水素粉砕粉が舞い上がり、回収室内部に堆積し、残存する可能性がある。
特許文献3には記載されていないが、堆積した水素粉砕粉を残存させず回収するためには、例えば箱状筒型容器下部の濾斗形状部に載置したエアーハンマー等により落とすことも考えられるが、大掛かりな装置が必要となるとともに、エアーハンマーのみでは前記濾斗形状部以外の場所、例えば搬送容器が出入りする搬入口、搬送装置、回収室上部などに残存した水素粉砕粉を全て排出することは困難である。
このように、回収室内に残存する水素粉砕粉は、徐々に酸化し、次回に処理される水素粉砕粉に混入し、結果として、得られる焼結磁石の酸素量を上昇させ磁気特性の低下を招く。
このため、特に回収室内における水素粉砕粉の残留を無くすことで、酸化された水素粉砕粉の混入を防止することが必要である。
上述の通り、R−T−B系磁石においては、その原料合金や粉末の酸素含有量を低減させれば磁気特性が向上する。従って、水素粉砕粉の残留を無くし、酸化された水素粉砕粉の混入を防止した水素粉砕粉を用いて、特許文献1や2に記載される方法によって微粉砕粉の酸化を防止すれば、酸素含有量が低減された優れた磁気特性を有するR−T−B系磁石を得ることができる。
しかし、水素粉砕以降の各工程、特に、粒径が小さく酸化しやすい微粉砕粉の酸化を防止するには、特許文献1や2に記載されるように新たな装置や工程を採用しなければならず、製造コストが増加するという問題がある。また、微粉砕粉は極めて活性であるため、急激な酸化により微粉砕粉が発火する可能性もあり、取扱いが危険であるという問題もある。
そこで、微粉砕粉の取扱いの安全性を向上させるため、特定量の酸素を含む不活性ガス中でジェットミル粉砕を行い、微粉砕粉表面に酸化被膜を形成して微粉砕粉を安定化する技術(特許文献4)が提案されている。この技術によれば、微粉砕粉の発火を防止でき、大気中でのプレス成形が可能となって、プレス成形の効率を向上させることができ、R−T−B系磁石を安価にして提供することができる。
このように、希土類系磁石、特にR−T−B系磁石においては、酸素含有量を低減させ磁気特性を向上させた磁石(以下「低酸素磁石」という)と、該磁石よりも酸素含有量が多く磁気特性は劣るものの比較的安価な磁石(以下「通常酸素磁石」という)が市場に提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2731337号公報
【特許文献2】特許第3418605号公報
【特許文献3】特開2005−118625号公報
【特許文献4】特公平6−6728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の低酸素磁石を製造するには、できるだけ酸素含有量が低減された水素粉砕粉(以下「低酸素水素粉砕粉」という)を準備する必要がある。一方、前記の通常酸素磁石を製造するに際して、低酸素水素粉砕粉を用いると、前記の通り特定量の酸素を含む不活性ガス中でジェットミル粉砕を行い、微粉砕粉表面に酸化被膜を形成して微粉砕粉を安定化する必要があるが、元々酸素含有量の低い水素粉砕粉を特定量の酸素を含む不活性ガス中でジェットミル粉砕を行っても微粉砕粉表面の酸化被膜の形成が十分ではなく、完全に安定化することができないという問題がある。そのため、低酸素磁石用の水素粉砕粉とは別に、予め特定量の酸素が含有された通常酸素磁石用の水素粉砕粉(以下「通常酸素水素粉砕粉」という)を準備する必要がある。
通常酸素水素粉砕粉を準備するために、低酸素水素粉砕粉を大気中に暴露して酸化させることも可能であるが、得られる水素粉砕粉の酸素含有量は、暴露した大気の状態(季節変化に伴う室温や湿度あるいはそれ以外の外部環境)の影響を受けるため安定せず、このような水素粉砕粉を用いて微粉砕粉の酸素含有量を制御し、安定化するのは困難である。
従って、従来はこれらの低酸素水素粉砕粉と通常酸素水素粉砕粉は異なる水素粉砕装置によって製造されていた。
しかし、複数の水素粉砕装置を稼働させることは、製造コストの増大を招くとともに、製造ラインが複雑化するという問題がある。また、一般的に、量産規模の製造工程においては、工程内で使用する設備の仕様を統一化し、設備のメンテナンスに要する費用を抑え、製品のコストを低減することが望ましい。
このように、低酸素水素粉砕粉と通常酸素水素粉砕粉は共通の水素粉砕装置を用いて製造することが望ましく、これには、水素粉砕粉の酸素含有量を調整することができる水素粉砕装置が必要であるが、従来、そのような水素粉砕装置は提案されていなかった。
【0008】
本発明は、水素粉砕した後の水素粉砕粉が回収室内に残留することを少なくし、得られる希土類系磁石の酸素量を低減することにより、磁気特性の向上を図ることができる希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法及び回収装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、水素粉砕粉の酸素含有量を調整することができる希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法及び回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法は、処理容器に収容された希土類系磁石用原料合金に水素を吸蔵させる水素吸蔵工程と、水素吸蔵により粉砕された前記希土類系磁石用原料合金を加熱して脱水素する加熱工程と、加熱された前記希土類系磁石用原料合金を冷却する冷却工程と、冷却された前記希土類系磁石用原料合金を回収容器に回収する回収工程と、を含む希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法であって、前記回収工程が、前記水素吸蔵工程、前記加熱工程、前記冷却工程を行う一つあるいは複数の処理室に連接する回収室にて行なわれ、前記回収室には、酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段と、不活性ガスを導入する第二のガス導入手段と、前記回収室内のガスを排出する真空排気手段と、前記処理容器を前記処理室から前記回収室内へ搬入するための搬入口と、前記回収室の下部に配置される排出口と、前記排出口に接続された前記回収容器とを有し、前記第二のガス導入手段によって前記回収室内に不活性ガスを導入した後に、前記処理容器を前記処理室から前記回収室内へ前記搬入口より搬入し、前記真空排気手段によって前記回収室内を減圧した後に、前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金を前記回収室内に排出し、前記希土類系磁石用原料合金を前記回収室内に排出した後に、前記回収室内に前記第一のガス導入手段によって酸素含有ガスを導入するか、あるいは前記第一のガス導入手段及び前記第二のガス導入手段によって酸素含有ガス及び不活性ガスを同時に導入し、前記回収室内を所定圧力及び所定酸素濃度とした後に、前記希土類系磁石用原料合金を前記回収容器に回収することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、前記回収室には、前記処理容器を上下反転させる反転手段を有し、前記処理容器は、上面に開口部を有し、前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金の排出を、前記反転手段による上下反転によって行うことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、前記反転手段による上下反転を行った後に、前記開口部を下方に向けた状態で前記反転手段によって揺動動作を行うことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の前記希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、前記処理容器は前記処理容器の前記開口部を覆う蓋体を有し、前記真空排気手段による減圧時には前記蓋体によって前記開口部を覆い、前記真空排気手段によって前記回収室内を減圧した後で、前記反転手段による上下反転を行う前に、前記蓋体を前記開口部から取り外すことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、前記処理容器の前記開口部を前記蓋体で覆った状態で、前記水素吸蔵工程、前記加熱工程、及び前記冷却工程を行うことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、前記処理容器からの前記希土類系磁石用原料合金の排出を、前記回収室内が1000Paから1Paの減圧下で行うことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、前記回収室内の前記所定圧力を、予め不活性ガスの導入によって酸素濃度が20ppm以下となした前記回収容器内の圧力と同圧にすることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、前記回収室内の前記所定圧力を、予め不活性ガス及び/又は酸素含有ガスの導入によって酸素濃度が20ppmを超える酸素濃度となした前記回収容器内の圧力と同圧にすることを特徴とする。
【0010】
請求項9記載の本発明の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置は、上面に開口部を有する処理容器に収容された希土類系磁石用原料合金を、水素吸蔵処理、加熱処理、冷却処理する一つあるいは複数の処理室と、前記処理室に連接する回収室とを有し、前記回収室には、酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段と、不活性ガスを導入する第二のガス導入手段と、前記回収室内のガスを排出する真空排気手段と、前記処理容器を前記処理室から前記回収室内へ搬入するための搬入口と、前記回収室の下部に配置される排出口とを有し、前記処理室から搬入した前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を前記回収室内へ排出し、前記排出口から回収容器に回収する希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置であって、 前記回収室に、前記処理容器を上下反転させる反転手段と、回収室内の圧力を測定する圧力測定手段を備え、前記真空排気手段を動作後、前記圧力測定手段により測定された圧力の情報に基づき前記反転手段を動作させ、前記処理容器を上下反転させて前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を前記回収室内に排出することを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項9に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記回収室内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段を備えていることを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項9又は請求項10に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記圧力測定手段により測定された圧力が1000Pa以下であることを特徴とする。
請求項12記載の本発明は、請求項9から請求項11のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記反転手段が、前記処理容器を上下反転させ前記処理容器の前記開口部を下方に向けた状態でさらに前記処理容器を揺動させることを特徴とする。
請求項13記載の本発明は、請求項9から請求項12のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記処理容器の前記開口部を覆う蓋体を取り外す蓋開閉手段を有し、前記蓋開閉手段が、前記蓋体に設けられた係合片と前記回収室内に設けられた前記係合片とを係合させ、前記回収室内に設けられた係合片の上方への移動によって前記蓋体を取り外すことを特徴とする。
請求項14記載の本発明は、請求項13に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記蓋体に設けられた前記係合片は前記蓋体の上部に、前記回収室内に設けられた前記係合片は前記回収室内の上部にそれぞれ配置されており、一方の前記係合片がT字状の断面形状をなし、他方の前記係合片が略C字状の断面形状をなしていることを特徴とする。
請求項15記載の本発明は、請求項9から請求項14のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記回収室に、前記処理容器を前記処理室から搬入するコンベア手段を有し、前記反転手段は、前記処理容器を前記コンベア手段とともに反転することを特徴とする。
請求項16記載の本発明は、請求項15に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記コンベア手段の前記処理容器搬送方向の両側に、反転時に前記処理容器の移動を阻止する移動阻止手段をそれぞれ設け、前記コンベア手段の前記処理容器搬入方向に直交する方向の両側に、反転時に前記処理容器の前記コンベア手段からの離脱を阻止する離脱阻止手段をそれぞれ設け、前記反転手段による反転時には、一対の前記移動阻止手段と一対の前記離脱阻止手段とによって前記コンベア手段に対して前記処理容器が所定の位置に保持されることを特徴とする。
請求項17記載の本発明は、請求項16に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記コンベア手段が複数本のローラで構成され、前記移動阻止手段が、前記ローラの間から前記処理容器側に出没可能に設けられていることを特徴とする。
請求項18記載の本発明は、請求項16又は請求項17に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記離脱阻止手段がL状の断面形状をなし、前記処理容器の前記開口部近傍の外周に設けられる鍔部の上部に位置するように配置されていることを特徴とする。
請求項19記載の本発明は、請求項9から請求項18のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、前記排出口にはバルブを有し、前記バルブが、筒状部材の内周面に配置される環状膨張部材と、前記筒状部材の径方向を回動軸とするディスク部材とから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回収方法によれば、処理容器内の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を回収室内に排出する際には、回収室内を減圧しているので、水素粉砕粉が回収室内で舞うことなく落下するため、回収室内壁面に付着することがない。従って、回収室内壁面に付着した水素粉砕粉が、処理容器の搬出などで回収室内を外気に開放した際に酸化されて、次回の水素粉砕処理における水素粉砕粉に混入することを少なくでき、連続操業においても安定して低酸素の水素粉砕粉を量産することができ、希土類系磁石の磁気特性を向上させることができる。また、排出口から回収容器に排出するときには、酸素含有ガスを導入するか、あるいは酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入して回収室内を不活性ガス及び/又は水分含有量が調整された気体にて所定圧力にしているのでスムーズな排出を行うことができる。従って、大掛かりな装置を必要としない。また、本発明の回収方法によれば、水素粉砕粉の歩留まりを大幅に向上することができる。
また、希土類系磁石用原料合金を前記回収容器に回収する前に、回収室内に酸素含有ガスを導入するか、あるいは酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入して所定酸素濃度としておくことにより、水素粉砕粉の酸素含有量を所望の範囲内に制御することができ、低酸素水素粉砕粉と通常酸素水素粉砕粉を共通の水素粉砕装置を用いて製造することができるため、製造コストの低減、製造ラインの簡素化、設備のメンテナンスに要する費用削減を図ることができる。
【0012】
本発明の回収装置によれば、上面に開口部を有する処理容器に収容された希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を、真空排気手段を動作後、圧力測定手段により測定された圧力の情報に基づき反転手段を動作させ、前記処理容器を上下反転させて回収室内に排出するので、水素粉砕粉が回収室内で舞うことなく落下するため、回収室内壁面に付着することがない。従って、回収室内壁面に付着した水素粉砕粉が、処理容器の搬出などで回収室内を外気に開放した際に酸化されて、次回の水素粉砕処理における水素粉砕粉に混入することを少なくでき、連続操業においても安定して低酸素の水素粉砕粉を量産することができ、希土類系磁石の磁気特性を向上させることができる。また、処理容器を反転手段によって上下反転させるため、一度に多量の水素粉砕粉を回収室内に排出することができるので、水素粉砕粉の回収に要する時間を大幅に短縮することができる。さらに、上下反転という比較的簡単な動作を採用しているため、大掛かりな装置が不要となり、回収装置全体の小型化を図ることができる。また、本発明の回収装置によれば、水素粉砕粉の歩留まりを大幅に向上することができる。
また、希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を前記回収室内へ排出後、回収容器に回収する前に、回収室内に第一のガス導入手段によって酸素含有ガスを導入するか、あるいは第一のガス導入手段及び第二のガス導入手段によって酸素含有ガス及び不活性ガスを同時に導入して所定酸素濃度としておくことにより、水素粉砕粉の酸素含有量を所望の範囲内に制御することができ、低酸素水素粉砕粉と通常酸素水素粉砕粉を共通の水素粉砕装置を用いて製造することができるため、製造コストの低減、製造ラインの簡素化、設備のメンテナンスに要する費用削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法及びその後の工程の模式図
【図2】本発明の実施例による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕装置の概略構成図
【図3】同水素粉砕装置における回収室(希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置)の要部正面図
【図4】同回収室の要部側面図
【図5】図4の要部拡大図
【図6】同回収室の要部上面図
【図7】同回収室の出口に設けるバルブの動作を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法は、回収工程が、水素吸蔵工程、加熱工程、冷却工程を行う一つあるいは複数の処理室に連接する回収室にて行なわれ、前記回収室には、酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段と、不活性ガスを導入する第二のガス導入手段と、前記回収室内のガスを排出する真空排気手段と、前記処理容器を前記処理室から前記回収室内へ搬入するための搬入口と、前記回収室の下部に配置される排出口と、前記排出口に接続された前記回収容器とを有し、前記第二のガス導入手段によって前記回収室内に不活性ガスを導入した後に、前記処理容器を前記処理室から前記回収室内へ前記搬入口より搬入し、前記真空排気手段によって前記回収室内を減圧した後に、前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金を前記回収室内に排出し、前記希土類系磁石用原料合金を前記回収室内に排出した後に、前記回収室内に前記第一のガス導入手段によって酸素含有ガスを導入するか、あるいは前記第一のガス導入手段及び前記第二のガス導入手段によって酸素含有ガス及び不活性ガスを同時に導入し、前記回収室内を所定圧力及び所定酸素濃度とした後に、前記希土類系磁石用原料合金を前記回収容器に回収するものである。
ここで、「酸素含有ガス」とは、例えば、空気または空気と不活性ガスとの混合ガス、あるいは酸素(100%酸素)または酸素と不活性ガスとの混合ガスのことをいう。また、「不活性ガス」とは、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスなどの反応性の低いガスのことをいう。
本実施の形態によれば、処理容器内の水素粉砕粉を回収室内に排出する際には、回収室内を減圧しているので、水素粉砕粉が回収室内で舞うことなく落下するため、回収室内壁面に付着することがない。このように、回収室内壁面に付着した水素粉砕粉が、処理容器の搬出などで回収室内を外気に開放した際に酸化されて、次回の水素粉砕処理における水素粉砕粉に混入することを少なくでき、連続操業においても安定して低酸素の水素粉砕粉を量産することができ、希土類系磁石の磁気特性を向上させることができる。また、排出口から回収容器に排出するときには、酸素含有ガスを導入するか、あるいは酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入して回収室内を水分含有量が調整された所定圧力にしているのでスムーズな排出を行うことができる。従って、大掛かりな装置を必要としない。
また、希土類系磁石用原料合金を前記回収容器に回収する前に、回収室内を所定酸素濃度とすることにより、水素粉砕粉の酸素含有量を所定の値に調整することができる。例えば、回収室内に酸素含有量を低く調整した酸素含有ガスまたは酸素含有ガスが空気の場合は少量の空気と多量の不活性ガス、あるいは不活性ガスのみを導入すれば酸素含有量の極めて少ない、低酸素磁石用としてとして好適な水素粉砕粉が得られる。また、例えば、回収室内に酸素含有量を高く調整した酸素含有ガスあるいは酸素含有量を高く調整した多量の酸素含有ガスと少量の不活性ガスを導入すれば、通常酸素磁石用として好適な酸素含有量の水素粉砕粉を得ることもできる。すなわち、低酸素水素粉砕粉と通常酸素水素粉砕粉を共通の水素粉砕装置を用いて製造することができるため、製造コストの低減、製造ラインの簡素化、設備のメンテナンスに要する費用削減を図ることができる。
なお、水素粉砕後の粗粉砕粉の段階において、上記のように酸素と接触させることにより水素粉砕粉の酸素含有量を調整する場合、酸素と接触させる前の段階で水素粉砕粉を十分に冷却しておくことが好ましい。水素粉砕粉を十分に冷却しておくことにより、水素粉砕粉と雰囲気中酸素との反応を厳密に制御することができ、水素粉砕粉の酸素含有量を所定の値により正確に調整することが可能となる。
また、酸素含有ガスとして、例えば、大気圧露点−10℃以下の乾燥した酸素含有ガスを用いることにより、ガス中に含まれる水分が起因となる水素粉砕粉の酸化に与える影響を制御することができ、水素粉砕粉の酸素含有量を所定の値により正確に調整することが可能となる。
【0015】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、回収室には、処理容器を上下反転させる反転手段を有し、処理容器は、上面に開口部を有し、処理容器内の希土類系磁石用原料合金の排出を、反転手段による上下反転によって行うものである。
本実施の形態によれば、処理容器の下部を開放して水素粉砕粉を落下させる場合に比較して、開口部周辺や蓋体周辺に水素粉砕粉が残留することが少なく、更に減圧した状態なので、反転動作による気流の発生による水素粉砕粉の舞い上がりの影響も生じない。
【0016】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、反転手段による上下反転を行った後に、開口部を下方に向けた状態で反転手段によって揺動動作を行うものである。
本実施の形態によれば、処理容器に残存する少量の水素粉砕粉も完全に落下せしめることができる。
【0017】
本発明の第4の実施の形態は、第2又は第3の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、処理容器は処理容器の開口部を覆う蓋体を有し、真空排気手段による減圧時には蓋体によって開口部を覆い、真空排気手段によって回収室内を減圧した後で、反転手段による上下反転を行う前に、蓋体を開口部から取り外すものである。
本実施の形態によれば、減圧動作時に水素粉砕粉をガスとともに排出してしまうことを防止でき、蓋体の開放時の気流の発生による水素粉砕粉の舞い上がりも生じることがない。
【0018】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、処理容器の開口部を蓋体で覆った状態で、水素吸蔵工程、加熱工程、及び冷却工程を行うものである。
本実施の形態によれば、蓋体で覆った状態で、水素吸蔵工程、加熱工程、及び冷却工程での各処理を行うことができ、更に回収室における減圧時にはガスとともに水素粉砕粉を排出してしまうことがない。
【0019】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、処理容器からの希土類系磁石用原料合金の排出を、回収室内が1000Paから1Paの減圧下で行うものである。本実施の形態によれば、回収室内での気流の発生を無くすことができ、水素粉砕粉が舞うことによる回収室内壁面などへの付着を防止できる。
【0020】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6のいずれかの実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、回収室内の圧力を、予め不活性ガスの導入によって酸素濃度が20ppm以下となした回収容器内の圧力と同圧にするものである。
本実施の形態によれば、回収容器内での酸化を抑制できるとともに、回収室から回収容器への水素粉砕粉の排出を容易に行うことができる。
【0021】
本発明の第8の実施の形態は、第1から第6のいずれかの実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法において、回収室内の圧力を、予め不活性ガス及び/又は酸素含有ガスの導入によって酸素濃度が20ppmを超える酸素濃度となした前記回収容器内の圧力と同圧にするものである。
本実施の形態によれば、回収容器内での酸化を制御できるとともに、回収室から回収容器への水素粉砕粉の排出を容易に行うことができる。
【0022】
本発明の第9の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の回収装置は、回収室に、酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段と、不活性ガスを導入する第二のガス導入手段を備えており、処理容器を上下反転させる反転手段と、回収室内の圧力を測定する圧力測定手段を備え、真空排気手段を動作後、圧力測定手段により測定された圧力の情報に基づき反転手段を動作させ、処理容器を上下反転させて処理容器内の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を回収室内に排出するものである。
本実施の形態によれば、処理容器の下部を開放して水素粉砕粉を落下させる場合に比較して、開口部周辺や蓋体周辺に水素粉砕粉が残留することが少なく、更に減圧した状態なので、反転動作による気流の発生による水素粉砕粉の舞い上がりの影響も生じない。
また、前記第一のガス導入手段によって酸素含有ガスを導入するか、あるいは前記第一のガス導入手段及び前記第二のガス導入手段によって酸素含有ガス及び不活性ガスを同時に導入することにより、回収室内の酸素を制御することができるから、回収される水素粉砕粉の酸素含有量を調整することができ、低酸素水素粉砕粉と通常酸素水素粉砕粉を共通の水素粉砕装置を用いて製造することができるため、製造コストの低減、製造ラインの簡素化、設備のメンテナンスに要する費用削減を図ることができる。
【0023】
本発明の第10の実施の形態は、第9の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、回収室内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段を備えているものである。
本実施の形態によれば、酸素濃度測定手段により測定された酸素濃度に基づいて、酸素含有ガスあるいは酸素含有ガスと不活性ガスの導入量を調整することにより、回収室内の酸素濃度を制御して、回収される水素粉砕粉の酸素含有量を所望の値に調整することが可能となる。
【0024】
本発明の第11の実施の形態は、第9又は第10の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、圧力測定手段により測定された圧力が1000Pa以下であるものである。
本実施の形態によれば、反転時に水素粉砕粉が回収室内で舞うことなく落下するため、回収室内壁面などへの付着を防止できる。
【0025】
本発明の第12の実施の形態は、第9から第11のいずれかの実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、反転手段が、処理容器を上下反転させ処理容器の開口部を下方に向けた状態でさらに処理容器を揺動させるものである。
本実施の形態によれば、処理容器に残存する少量の水素粉砕粉も完全に落下せしめることができる。
【0026】
本発明の第13の実施の形態は、第9から第12のいずれかの実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、処理容器の開口部を覆う蓋体を取り外す蓋開閉手段を有し、蓋開閉手段が、蓋体に設けられた係合片と回収室内に設けられた係合片とを係合させ、回収室内に設けられた係合片の上方への移動によって蓋体を取り外すものである。
本実施の形態によれば、回収室に搬入される移送動作を利用して係合片同士を係合させるため、蓋開閉手段は、係合片を上方へ移動させるだけで蓋体を開口部から取り外すことができる。
【0027】
本発明の第14の実施の形態は、第13の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、蓋体に設けられた係合片は蓋体の上部に、回収室内に設けられた係合片は回収室内の上部にそれぞれ配置されており、一方の係合片がT字状の断面形状をなし、他方の係合片が略C字状の断面形状をなしているものである。
本実施の形態によれば、係合片同士の係合を確実に行うことができる。
【0028】
本発明の第15の実施の形態は、第9から第14のいずれかの実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、回収室に、処理容器を処理室から搬入するコンベア手段を有し、反転手段は、処理容器をコンベア手段とともに反転するものである。
本実施の形態によれば、コンベア手段を処理容器とともに反転させることで、処理容器から排出する水素粉砕粉がコンベア手段に付着することがなく、水素粉砕粉を確実に回収室の下部に落下させることができる。
【0029】
本発明の第16の実施の形態は、第15の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、コンベア手段の処理容器搬送方向の両側に、反転時に処理容器の移動を阻止する移動阻止手段をそれぞれ設け、コンベア手段の処理容器搬入方向に直交する方向の両側に、反転時に処理容器のコンベア手段からの離脱を阻止する離脱阻止手段をそれぞれ設け、反転手段による反転時には、一対の移動阻止手段と一対の離脱阻止手段とによってコンベア手段に対して処理容器が所定の位置に保持されるものである。
本実施の形態によれば、一対の移動阻止手段と離脱阻止手段とによってコンベア手段に対して処理容器を所定の位置に保持することができ、狭い空間においても反転動作を確実に行わせることができる。
【0030】
本発明の第17の実施の形態は、第16の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、コンベア手段が複数本のローラで構成され、移動阻止手段が、ローラの間から処理容器側に出没可能に設けられているものである。
本実施の形態によれば、ローラ間の隙間を利用するために装置の小型化を図れるとともに、ローラとの位置関係を正確に維持しやすいため、処理容器の確実な保持を行える。
【0031】
本発明の第18の実施の形態は、第16又は第17の実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、離脱阻止手段がL状の断面形状をなし、処理容器の開口部近傍の外周に設けられる鍔部の上部に位置するように配置されているものである。
本実施の形態によれば、鍔部を形成することで、搬送動作によって鍔部と離脱阻止手段とを対応させることができ、処理容器を所定の位置に保持することができる。
【0032】
本発明の第19の実施の形態は、第9から第18のいずれかの実施の形態による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置において、排出口にはバルブを有し、バルブが、筒状部材の内周面に配置される環状膨張部材と、筒状部材の径方向を回動軸とするディスク部材とから構成されているものである。
本実施の形態によれば、水素粉砕粉の付着による影響を無くし、密閉性を維持することができる。
【実施例】
【0033】
実施例1
以下本発明の一実施例による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法について説明する。
図1は、本実施例による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法及びその後の工程を模式的に示した図である。同図に示すように、粗粉砕工程の後に回収された水素粉砕粉は、さらに微粉砕工程を経て微粉砕粉となる。
本実施例の回収方法は、回収工程において、回収室を減圧した後に希土類系磁石用原料合金を回収することにより、希土類系磁石用原料合金が回収室内壁面に付着することを防止して、低酸素の水素粉砕粉を量産することができる。しかし、磁気特性に優れた低酸素磁石を製造するには、水素粉砕以降の各工程、特に、粒径が小さく酸化しやすい微粉砕粉の酸化を防止するために、特許文献1や2に記載されるように新たな装置や工程を採用しなければならず、製造コストが増加する。このため、希土類系磁石の用途によっては、特許文献4に記載されるように、特定量の酸素を含む不活性ガス中でジェットミル粉砕を行い、微粉砕粉表面に酸化被膜を形成して微粉砕粉を安定化することにより、大気中でのプレス成形を可能となし、プレス成形の効率を向上させ、製造コストを低減した通常酸素磁石も要求される。しかし、通常酸素磁石の製造に際して低酸素磁石用の低酸素水素粉砕粉を用いると(図1の破線参照)、特定量の酸素を含む不活性ガス中でジェットミル粉砕を行っても、酸素含有量の増加には限界があり、微粉砕粉表面の酸化被膜の形成が十分ではなく、完全に安定化することができず、大気中でのプレス成形の際に急激な酸化により微粉砕粉が発火するなどの問題が発生する。すなわち、通常酸素磁石の製造に際しては、予め特定量の酸素が含有された通常酸素磁石用の通常酸素水素粉砕粉を準備する必要がある。そのため、水素粉砕粉の段階で酸素含有量を特定の範囲内に制御することが必要となる。
【0034】
なお、特定量の酸素を含む不活性ガス中でジェットミルにより微粉砕を行っても酸素含有量の増加に限界があるのは、主として、以下の理由が考えられる。ジェットミルによる微粉砕では、分級ロータやサイクロン分級機などの分級機によって粒子径の小さな超微粉を分級し取り除くのが一般的である。超微粉は比表面積が大きいため非常に酸化し易く、また、超微粉にはR−T−B系磁石のうちのRが多く含まれているためなおさら酸化の度合いが激しい。特にストリップキャスト法により作られた原料合金は組織が微細化され、微細なRリッチ相が均一に分散しているため、水素粉砕後の水素粉砕粉の粒子表面にRリッチ相が表れやすく、そのRリッチ相が酸化し、超微粉として分級機にて取り除かれる。このように超微粉が優先的に酸化して不活性ガス中の酸素を消費してしまうので、超微粉を分級して取り除いた後に得られる微粉砕粉の酸素含有量を大きく増加させるのは容易ではない。
【0035】
そこで、本実施例による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法では、水素吸蔵工程、加熱工程、冷却工程を経た希土類系磁石用原料合金を回収する回収工程において、減圧された回収室内に希土類系磁石用原料合金を排出した後に、回収室内に酸素含有ガスを導入するか、あるいは酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入し、前記回収室内を所定圧力及び所定酸素濃度として水素粉砕粉の酸素含有量を調整する。これにより、希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉として回収された水素粉砕粉の時点において、酸素含有量を所望の値に調整することができる。したがって、本実施例による回収方法によれば、低酸素磁石用として好適な低酸素水素粉砕粉のみならず、通常酸素磁石用として好適な通常酸素水素粉砕粉をも得ることができる。
以上のとおり、本実施例による回収方法によれば、回収工程において回収室内に酸素含有ガスあるいは酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入することにより、水素粉砕粉の酸素含有量を調整して、その用途に対応した酸素含有量のものとして回収することができる。したがって、低酸素水素粉砕粉と通常酸素水素粉砕粉を共通の水素粉砕装置を用いて製造することが可能となる。
【0036】
図2は本実施例による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕装置の概略構成図である。
図2に示すように、本実施例による希土類系磁石用原料合金の水素粉砕装置は、希土類系磁石用原料合金に水素を吸蔵させる水素吸蔵室10と、水素吸蔵により水素粉砕された希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を加熱により脱水素する加熱室20と、加熱された水素粉砕粉を冷却する冷却室30と、冷却された水素粉砕粉を回収容器1に回収する回収室40とを備えている。
水素吸蔵室10は、前室からの搬入口には遮断扉11を、加熱室20への搬出口には遮断扉21を有して、室内の密封を保てるように構成されている。水素吸蔵室10は、不活性ガスを導入する不活性ガス導入手段12と、室内のガスを排出する真空排気手段13と、水素ガスを導入する水素導入手段14と、処理容器50を搬送するコンベア手段15を備えている。
加熱室20は、水素吸蔵室10からの搬入口には遮断扉21を、冷却室30への搬出口には遮断扉31を有して、室内の密封を保てるように構成されている。加熱室20は、不活性ガスを導入する不活性ガス導入手段22と、室内のガスを排出する真空排気手段23と、室内を加熱する加熱手段24と、処理容器50を搬送するコンベア手段25を備えている。
冷却室30は、加熱室20からの搬入口には遮断扉31を、回収室40への搬出口には遮断扉41を有して室内の密封を保てるように構成されている。冷却室30は、不活性ガスを導入する不活性ガス導入手段32と、室内のガスを排出する真空排気手段33と、室内を冷却する冷却手段34と、処理容器50を搬送するコンベア手段35を備えている。
回収室40は、冷却室30からの搬入口には遮断扉41を、炉外への搬出口には遮断扉2を有して、室内の密封を保てるように構成されている。回収室40は、酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段42aと、不活性ガスを導入する第二のガス導入手段42bと、室内のガスを排出する真空排気手段43と、処理容器50を上下反転させる反転手段44と、処理容器50を搬送するコンベア手段45を備えている。また、回収室40の下部にはバルブ60を有しており、バルブ60を介して回収容器1が接続されている。なお、回収容器1には容器を密封するためのバルブ(図示せず)が設けられている。
処理容器50は、希土類系磁石用原料合金を収納した状態で、水素吸蔵室10、加熱室20、冷却室30、及び回収室40に移送される。
【0037】
なお、本発明においては、上記のように、水素吸蔵室、加熱室、冷却室がそれぞれ独立したいわゆる連続炉タイプの水素粉砕装置以外に、水素吸蔵工程、加熱工程、冷却工程を一室で行なういわゆるバッチ炉(独立炉)タイプの水素粉砕装置を用いることができる。また、水素吸蔵室兼加熱室と冷却室、水素吸蔵室と加熱室兼冷却室などの構成や、処理能力を向上させるために加熱室、冷却室を複数設け、水素吸蔵室、第一加熱室、第二加熱室、第一冷却室、第二冷却室とした構成の水素粉砕装置を用いることもできる。さらに、水素吸蔵室の前に準備室や予備室が設置された構成の水素粉砕装置でも構わない。すなわち、回収室以外の部分については、公知の水素粉砕装置を全て採用することができる。
また、酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段42aと不活性ガスを導入する第二のガス導入手段42bは、それぞれ別々に回収室40に接続される必要はなく、例えば、回収室40に接続される前に第一のガス導入手段42aと第二のガス導入手段42bを結合させて一つのガス導入手段として回収室40に接続させてもよい。この場合、酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入する場合は、回収室40にガスを導入する前に酸素含有ガスと不活性ガスを混合するための混合装置を設けてもよい。
また、酸素含有ガスとして空気を用いる場合は、第一のガス導入手段42aの前段部に、ドライエアー発生装置を設けることが好ましい。ドライエアー発生装置を設けることにより、空気中に含まれる水分が起因となる水素粉砕粉の酸化に与える影響を抑制することができ、水素粉砕粉の酸素含有量を所定の値により正確に調整することが可能となる。ドライエアー発生装置としては、冷凍式や吸着式など公知の発生装置を用いることができる。ドライエアー発生装置にて発生させるドライエアーは、大気圧露点−10℃以下であることが好ましい。
【0038】
本装置で処理対象とされる希土類系磁石用原料合金は、R−T−B系磁石用原料合金であることが好ましく、望ましくはR−Fe(Co)−B−M系である。
Rは、Nd、Pr、Dy、Tbのうち少なくとも一種から選択される。ただし、Rは、Nd又はPrのいずれか一方を必ず含むことが望ましい。更に好ましくは、Nd−Dy、Nd−Tb、Nd−Pr−Dy、又はNd−Pr−Tbで示される希土類元素の組合せを用いる。
Rのうち、DyやTbは、特に保磁力の向上に効果を発揮する。上記元素以外に少量のCeやLaなど他の希土類元素を含有してもよく、ミッシュメタルやジジムを用いることもできる。また、Rは純元素でなくてもよく、工業上入手可能な範囲で、製造上不可避な不純物を含有するものでも差し支えない。含有量は、従来から知られる含有量を採用することができ、例えば、25質量%以上35質量%以下が好ましい範囲である。25質量%未満では高磁気特性、特に高保磁力が得られず、35質量%を超えると残留磁束密度が低下するためである。
Tは、Feを必ず含み、その50%以下をCoで置換することができる。Coは温度特性の向上、耐食性の向上に有効であり、通常は10質量%以下のCo及び残部Feの組合せで用いる。Tの含有量は、RとBあるいはRとBとMとの残部を占める。
Bの含有量についても公知の含有量で差し支えなく、例えば、0.9質量%〜1.2質量%が好ましい範囲である。0.9質量%未満では高保磁力が得られず、1.2質量%を超えると残留磁束密度が低下するため好ましくない。なお、Bの一部はCで置換することができる。C置換は磁石の耐食性を向上させることができ有効である。B+Cとした場合の含有量は、Cの置換原子数をBの原子数で換算し、上記のBの濃度の範囲内に設定されることが好ましい。
上記元素に加え、保磁力向上のためにM元素を添加することができる。M元素は、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、Wのうち少なくとも一種である。添加量は2質量%以下が好ましい。5質量%を超えると残留磁束密度が低下するためである。
また、不可避的不純物も許容することができる。例えば、Feから混入するMn、Crや、Fe−B(フェロボロン)から混入するAl、Si、Cuなどである。
【0039】
本装置に搬入される希土類系磁石用原料合金は溶解法により製造される。最終的に必要な組成となるように事前に調整した金属を溶解し、鋳型にいれるインゴット鋳造法や、溶湯を単ロール、双ロール、回転ディスク、又は回転円筒鋳型等に接触させて急冷し、インゴット法で作られた合金よりも薄い凝固合金を作製するストリップキャスト法や遠心鋳造法に代表される急冷法により製造される。本実施例による希土類系磁石用原料合金は、インゴット法、急冷法どちらの方法により製造された材料にも適用できるが、急冷法により製造されるものがより望ましい。
急冷法によって作製した希土類系磁石用原料合金(急冷合金)の厚さは0.03mm以上10mm以下の範囲にあり、フレーク形状である。合金溶湯は冷却ロールの接触した面(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)に比較して、短時間に冷却されているため、組織が微細化され、結晶粒径が小さい。また粒界の面積が広く、Rリッチ相は粒界内に大きく広がっているため、Rリッチ相の分散性に優れる。このため水素粉砕法により粒界で破断し易い。急冷合金を水素粉砕することで、水素粉砕粉(粗粉砕粉)の平均サイズを例えば1.0mm以下とすることができる。
【0040】
本実施例による水素粉砕装置は、水素吸蔵室10、加熱室20、冷却室30、及び回収室40がそれぞれ1室連接した構成を示しているが、生産性の理由から、特に加熱室20や冷却室30を複数設ける場合もある。
処理容器50は、上面に開口部を有し、この開口部には蓋体51が設けられる。ここで、蓋体51は開口部を密閉するものではなく開口部との間に水素ガスや不活性ガスなどが出入りできる隙間を有している。つまり、処理容器50の開口部を蓋体で覆った状態になっている。処理容器50は、耐熱性があり加工も比較的簡単なステンレスが適している。容積や板厚は一回に処理する量や、水素粉砕装置の寸法に合わせて適宜決定すればよい。処理容器50は、上部が開放されていれば、形状にはこだわらないが、一般的には箱型としている。水素吸蔵、加熱、冷却の効率を向上させるため、一つの台座に複数の箱型容器を一定の間隔をもって配置することも好ましい構成の一つである。ちなみに、本実施例においては、一つの台座に箱型容器を4列×2列で所定の間隔を開けて配置した処理容器を用いている。また、処理容器50には、内部を貫通するパイプを備えていることが望ましい。原料合金は処理容器50に投入されて堆積しているため、処理容器50内部は加熱や冷却による温度変化が遅くなり、脱水素や脱水素後の冷却が十分ではなく、最終的に得られる磁石の磁気特性がばらつく原因となるため、内部を貫通するパイプの内部に加熱や冷却用の不活性ガスを通過させることで、処理容器50表面の原料合金と内部の原料合金の温度変化に差が少なくなり、品質が安定する。前記パイプは、直径が異なるものを組合せたり、配置場所や配置間隔を選定することで、さらに原料合金の温度変化を改善することができる。
処理容器50は、開口部を蓋体51で覆った状態で、水素吸蔵室10、加熱室20、及び冷却室30に移送される。
【0041】
以下に本実施例による水素粉砕装置の動作について図2を用いて説明する。
水素吸蔵室10に搬入される処理容器50には、例えば急冷法によって製造されたフレーク状の希土類系磁石用原料合金が収納されている。
水素吸蔵室10の遮断扉11を開放して水素吸蔵室10内に処理容器50を搬入する。搬入後に遮断扉11を閉塞し、真空排気手段13を動作させて水素吸蔵室10内を真空引きする。
水素吸蔵室10内を真空排気し、真空排気手段13の動作を終了した後に、水素導入手段14を動作させて水素吸蔵室10内に水素ガスを導入する。水素ガスの導入により水素吸蔵室10内を0.1〜0.18MPaの圧力とし、処理容器50内の希土類系磁石用原料合金に水素を吸蔵させ、水素吸蔵工程を実施する。
所定時間経過後(水素吸蔵終了後)に、水素導入手段14の動作を終了させて水素ガスの導入を停止し、水素吸蔵室10内の水素ガスを真空排気手段13を動作させることによって真空排気する。これによって水素吸蔵工程は終了し、次の加熱工程へ移る。このとき、希土類系磁石用原料合金は水素を吸蔵して脆化し粉砕され、水素粉砕粉(粗粉砕粉)となっている。
【0042】
なお、水素を吸蔵する水素化反応は発熱反応であるため、水素の吸蔵に伴って原料合金の温度が上昇する。通常は、この発熱反応が終了し原料合金の温度が低下して安定した段階で水素吸蔵が終了したものとみなし次の加熱工程に移る。しかし、温度が低下して安定するまでには長時間を要し、また、温度が低下した原料合金を加熱室に移すと、加熱室の温度が低下し、所定温度に到達するまで時間を要することとなる。
そこで、水素吸蔵室を加熱できるように構成しておき、水素吸蔵時の発熱反応による原料合金の温度上昇を利用して、その温度を低下させずに、高温保持状態で水素吸蔵を行なう方法を採用することは好ましい手段の一つである。高温保持状態で水素吸蔵を行なうことにより、主として粒界のRリッチ相で水素吸蔵を行うため、原料合金の脆化を十分に進行させながら、水素吸蔵工程の時間短縮、導入水素量を低減することができる。また、高温保持状態を維持しながら続く加熱工程へ移ると、加熱室の温度低下を防止することもできるので、加熱室における加熱工程の時間短縮、加熱に要する電力消費を低減することができる。
【0043】
次に、加熱工程に移るに際して、処理容器50は、水素吸蔵室10から加熱室20に移送されるが、移送にあたって加熱室20内は真空排気手段23によってあらかじめ真空排気されている。
処理容器50は、遮断扉21を開放し、コンベア手段15及びコンベア手段25の駆動により、水素吸蔵室10から加熱室20に搬入される。搬入後に遮断扉21を閉塞し、加熱室20内を真空排気手段23によって更に真空引きするとともに加熱手段24によって加熱する。加熱室20内は、加熱手段24によって500〜600℃の温度に維持され、真空排気手段23によって1Pa程度の圧力に維持される。これによって水素粉砕粉の脱水素が行われる。水素粉砕粉の加熱工程においては、上記のように加熱室20内を真空排気するが、真空排気と同時に不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を導入して、所定の圧力で流気状態にすることによって、原料合金の昇温速度を速くすることができ、加熱工程に要する時間短縮をはかることもできる。
【0044】
水素粉砕粉の脱水素が十分に行われた後に、加熱室20内は不活性ガス導入手段22を動作させることによって不活性ガス(例えば、アルゴンガス)が導入され、冷却室30内の雰囲気に近づけた後、不活性ガス導入手段22の動作を終了させる。
加熱室20内にある処理容器50は、遮断扉31を開放し、コンベア手段25及びコンベア手段35の駆動により、加熱室20から冷却室30に搬入される。搬入後に遮断扉31を閉塞し、冷却室30内を冷却手段34によって冷却する。
冷却は、ファンによる冷却又は冷却室内の冷却水循環による冷却あるいはそれらを併用することによって行なう。
冷却室30内にある処理容器50は、遮断扉41を開放し、コンベア手段35及びコンベア手段45の駆動により、冷却室30から回収室40に搬入される。
回収室40への搬入にあたって、回収室40内は第二のガス導入手段42bを動作させることによって不活性ガス(アルゴンガス)が導入され、冷却室30内の雰囲気に近づけた後、第二のガス導入手段42bの動作を終了させる。
なお、通常酸素水素粉砕粉を作製する場合は、前記の不活性ガスに代えて、第一のガス導入手段42aによって酸素含有ガスを導入したり、第一のガス導入手段42aと第二のガス導入手段42bによって酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入することもできる。ただし、この場合、冷却室30内にも酸素含有ガスが流れ込むこととなり、冷却室30内の酸素濃度の管理面においてはあまり好ましくない。従って、酸素含有ガスの導入は水素粉砕粉を回収室40内に排出した後に導入することが好ましく、ここでは、不活性ガスを用いることが好ましい。
回収室40内に処理容器50が搬入されると、遮断扉41を閉塞し、回収室40内は、真空排気手段43を動作させることによって真空排気される。回収室40内が真空排気され、1000Paから1Pa、好ましくは5Pa〜1Paの圧力にした状態で、蓋体51を取り外して反転手段44を動作させ、処理容器50内の水素粉砕粉を回収室40内底部に落下させて排出する。なお、前記反転手段44は、処理容器50内の水素粉砕粉を回収室40内に排出する手段として好ましい手段であるが、本発明の回収方法における主たる特徴の一つは、処理容器50内の水素粉砕粉を回収室40内に排出する際に回収室40内を減圧していることにある。従って、回収室40内が減圧されていれば、反転手段44以外の排出手段を用いても構わない。
【0045】
上記において、回収室40内の圧力は、1000Paから1Pa、好ましくは5Pa〜1Paとした理由は次の通りである。
回収室40内は、回収工程終了後、空になった処理容器50を遮断扉2から取り出した後、遮断扉2を閉じて真空排気され、冷却室から次の処理容器50が来るまで真空排気が継続されている。
そして、次の処理容器50が搬入される直前で冷却室の雰囲気に近づけるために不活性ガス(アルゴンガス)により復圧されるため、回収室40内の酸素量は十分低減されており(例えば20ppm以下)、水素粉砕粉の酸化防止の観点ではほとんど酸素量を考慮する必要はない。従って、1000Paから1Paという圧力は、水素粉砕粉が回収室内で舞わないという条件を規定したものである。一方、水素粉砕装置のサイクルスピードが速かったり、回収室40内の点検や整備などで、冷却室から次の処理容器50が来るまでに十分な真空排気ができていなかった場合などは、回収室40内の酸素量を十分に低減させ、好ましくは酸素量が20ppm以下とするために、回収室40内の圧力を5Pa〜1Paにすることが好ましい。すなわち、5Pa〜1Paという圧力は、回収室40内の酸素量を20ppm以下とするための条件を規定したものである。当然ながら、5Paは1000Paよりも高真空であるため、水素粉砕粉が回収室内で舞うことはない。このように、回収室40内の圧力は、通常は1000Pa以下で十分であり、5Pa以下であればより好ましい。
本発明は水素粉砕粉の酸化や水素粉砕粉の回収室40内での舞いを防ぐ意味では1Pa以下の真空度は必ずしも必要ではないが、たとえ1Pa以下であっても本発明を実施できる。
回収室40内に水素粉砕粉を落下させた後、真空排気手段43の動作を終了し、回収室40内に、第一のガス導入手段42aを動作させることによって酸素含有ガスを導入するか、あるいは第一のガス導入手段42a及び第二のガス導入手段42bを動作させることによって酸素含有ガス及び不活性ガスを同時に導入して所定圧力とした後、第一のガス導入手段42aあるいは第一のガス導入手段42a及び第二のガス導入手段42bの動作を終了する。
なお、回収容器1には、回収容器1に設けられたバルブ(図示せず)が開放されており、回収容器1内の空気を酸素濃度が20ppm以下となるように不活性ガスにてあらかじめ置換している。また、回収室40内への不活性ガス(アルゴンガス)の導入により、回収室40内の所定圧力は、回収容器1内の圧力と同圧としている。この状態で、バルブ60を開放して回収容器1内に水素粉砕粉を回収する。
回収容器1への水素粉砕粉の回収が終了すると、バルブ60及び回収容器1に設けられたバルブ(図示せず)をそれぞれ閉塞し、回収容器1を回収室40から離脱させる。その後遮断扉2を開放して処理容器50を回収室40外へ移送する。
この時、回収室40にて調整された水素粉砕粉の酸素濃度を、次工程となる微粉砕工程まで維持するには、上記のように、回収容器1内を予め不活性ガスを導入して酸素濃度が20ppm以下となるようしておくことが好ましい。一方、回収室40にて調整された水素粉砕粉の酸素濃度をさらに増加させたい場合は、回収容器1内に不活性ガス及び/又は酸素含有ガスを導入して酸素濃度が20ppmを超える酸素濃度に調整しておいてもよい。
【0046】
本実施例では、回収工程が、水素吸蔵工程、加熱工程、冷却工程を行う一つあるいは複数の処理室に連接する回収室40にて行なわれ、回収室40には、酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段42aと、不活性ガスを導入する第二のガス導入手段42bと、回収室40内のガスを排出する真空排気手段43と、処理容器50を処理室から回収室40内へ搬入するための搬入口と、回収室40の下部に配置される排出口40aと、排出口40aに接続された回収容器1とを有し、第二のガス導入手段42bによって回収室40内に不活性ガスを導入した後に、処理容器50を冷却室30から回収室40内へ搬入口より搬入し、真空排気手段43によって回収室40内を減圧した後に、処理容器50内の希土類系磁石用原料合金を回収室40内に排出し、希土類系磁石用原料合金を回収室40内に排出した後に、第一のガス導入手段42a、第二のガス導入手段42bによって回収室40内に酸素含有ガスあるいは酸素含有ガスと不活性ガスを同時に導入し、回収室40内を酸素含有ガスあるいは酸素含有ガスと不活性ガスにて所定圧力とした後に、排出口から希土類系磁石用原料合金を回収容器1に回収する。従って、処理容器50内の水素粉砕粉を回収室40内に排出する際には、回収室40内を減圧しているので、水素粉砕粉が回収室40内で舞うことなく落下するため、回収室40内壁面に付着することがない。このように、回収室40内壁面に付着した水素粉砕粉が、処理容器50の搬出などで回収室40内を外気に開放した際に酸化されて、次回の水素粉砕処理における水素粉砕粉に混入することを少なくでき、連続操業においても安定して低酸素の水素粉砕粉を量産することができ、希土類系磁石の磁気特性を向上させることができる。また、排出口40aから回収容器1に排出するときには、回収室40内を不活性ガスにて所定圧力にしているのでスムーズな排出を行うことができる。従って、大掛かりな装置を必要としない。
また本実施例では、回収室40には、処理容器50を上下反転させる反転手段44を有し、処理容器50は、上面に開口部を有し、処理容器50内の希土類系磁石用原料合金の排出を、反転手段による上下反転によって行う。従って、処理容器50の下部を開放して水素粉砕粉を落下させる場合に比較して、開口部周辺や蓋体周辺に水素粉砕粉が残留することが少なく、更に減圧した状態なので、反転動作による気流の発生による水素粉砕粉の舞い上がりの影響も生じない。
【0047】
また本実施例では、処理容器50は処理容器50の開口部を覆う蓋体51を有し、真空排気手段43による減圧時には蓋体51によって開口部を覆い、真空排気手段43によって回収室40内を減圧した後で、反転手段44による上下反転を行う前に、蓋体51を開口部から取り外す。従って、減圧動作時に水素粉砕粉をガスとともに排出してしまうことを防止でき、蓋体51の解放時の気流の発生による水素粉砕粉の舞い上がりも生じることがない。
また本実施例では、処理容器50の開口部を蓋体51で覆った状態で、水素吸蔵室10による水素吸蔵工程、加熱室20による加熱工程、及び冷却室30による冷却工程を行うことができ、更に回収室40における減圧時にはガスとともに水素粉砕粉を排出してしまうことがない。
また本実施例では、処理容器50からの希土類系磁石用原料合金の排出を、回収室40内が1000Paから1Paの減圧下で行うことで、回収室40内での気流の発生を無くすことができ、水素粉砕粉が舞うことによる回収室40内壁面などへの付着を防止できる。
また本実施例では、回収容器1内の空気を、酸素濃度を20ppm以下となるように不活性ガスにてあらかじめ置換し、回収室40内の所定圧力を回収容器1内の圧力と同圧とすることで、回収容器1内での酸化を防止できるとともに、回収室40から回収容器1への水素粉砕粉の排出を容易に行うことができる。
【0048】
次に、図2で説明した回収室の更に詳細な構成と動作について説明する。
図3は同水素粉砕装置における回収室(希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置)の要部正面図、図4は同回収室の要部側面図、図5は図4の要部拡大図、図6は同回収室の要部上面図である。
なお、図4から図6においては、遮断扉41、第一のガス導入手段42a、第二のガス導入手段42b、及び真空排気手段43については図示していない。
回収室40は、その下部がロート状になっており、堆積した希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉をロート状下部の排出口40aから回収容器1(図3から図6では図示せず)に排出できるようになっている。排出口40aには、バルブ60が設けられている。また、回収容器1にもバルブ(図示せず)が設けられている。なお、回収室40の下部にエアーハンマーを設けてもよい。
回収室40には、処理容器50を搬入搬出するコンベア手段45を有している。コンベア手段45は、複数本のローラで構成されている。また、回収室40には後述する反転手段44と、回収室40内の圧力を測定する圧力測定手段を有している。
回収室40内には、コンベア手段45の搬送方向への処理容器50の移動を阻止する移動阻止手段46a、46bを処理容器50の搬送方向の両側に有している。この移動阻止手段46a、46bは、コンベア手段45を構成するローラの間に配置され、ローラによる搬送面から処理容器50側に出没可能に設けられている。移動阻止手段46aは処理容器50の搬送方向の前側に設け、阻止手段46bは、処理容器50の搬送方向の後側に設けている。
【0049】
図5に移動阻止手段46aを示す。移動阻止手段46aは、摺動軸46cとカム板46dを有し、カム板46dは一端が摺動軸46cに軸支され他端が阻止部となり、回転軸46eを回動支点として変位する。従って、摺動軸46cの移動によって、カム板46dは回転軸46eを中心に回動することで、阻止部がコンベア手段45の搬送面に対して出没する。なお、移動阻止手段46bについても同一の構成となっている。移動阻止手段46a、46bの形状、大きさ、個数などは特に問わない。
また、回収室40内には、処理容器50のコンベア手段45からの離脱を阻止する離脱阻止手段47を処理容器50の搬入方向に直交する方向の両側に設けている。離脱阻止手段47は処理容器50の開口部側に設けている。処理容器50の開口部近傍の外周には鍔部52を有している。
離脱阻止手段47は、処理容器50が搬入された状態で鍔部52の上部に位置するように配置している。ここで、例えば離脱阻止手段47は、L字状の断面形状を有するもので構成される。また、本実施例では、処理容器50に設ける鍔部52を処理容器50の開口部近傍の外周に配置しているが、一対の鍔部52の長手方向が搬送方向となるように処理容器50の両側に配置する構成としてもよい。
【0050】
反転手段44は、コンベア手段45や移動阻止手段46a、46bを保持する基台44aと、基台44aを回動する回転軸44bと、回転軸44bを駆動するモータ44cを有する。
基台44aは、コンベア手段45のローラ軸に垂直な一対の対向する壁部によって構成され、回転軸44bはこの一対の対向する壁部に軸支されている。また、離脱阻止手段47も対向する壁面の対向面に設けている。なお、基台44aを回動する回転軸44bとコンベア手段45を構成する複数本のローラを回転させるための主回転軸は同軸配置されている。
回収室40内の上方には、係合片48aを備えた蓋開閉手段48を有している。この係合片48aは、蓋体51の上面に有する係合片53と係合する。処理容器50が冷却室30から回収室40に搬入される移送動作によって、回収室40内上方の係合片48aが蓋体51上面の係合片53と係合し、係合片48aを上方へ移動させることで蓋体51を開口部から取り外すことができる。
ここで、例えば係合片48aと係合片53は、一方の係合片がT字状の断面形状をなし、他方の係合片が略C字状の断面形状を有するもので構成される。本実施例では、係合片53が略C字状の断面形状を有するものであり、係合片48aが逆T字状の断面形状を有するものであり、係合片48a及び係合片53は、一方向に延びるレール状部材で形成される。なお本実施例では、断面が逆L字の一対の部材によってスリットを形成することで略C字状と称している。
【0051】
本実施例では、回収室40内の上方には蓋開閉手段48を有し、処理容器50が冷却室30から回収室40に搬入される移送動作によって、係合片48aが係合片53と係合し、係合片48aを上方へ移動させることで蓋体51を開口部から取り外す。このように、回収室40に搬入される移送動作を利用して係合片48aと係合片53とを係合させるため、蓋開閉手段48は、係合片48aを上方へ移動させるだけで蓋体51を開口部から取り外すことができる。
また本実施例では、反転手段44は、コンベア手段45に処理容器50を載置した状態で、処理容器50をコンベア手段45とともに反転する。このように、コンベア手段45を処理容器50とともに反転させることで、処理容器50から排出する水素粉砕粉がコンベア手段45に付着することがなく、水素粉砕粉を確実に回収室40の下部に落下させることができる。また、コンベア手段45を保持する基台44aを回動する回転軸44bとコンベア手段45を構成する複数本のローラを回転させるための主回転軸を同軸配置しているため、反転を容易に行なうことができる。
【0052】
なお、反転動作は、まず処理容器50を180度回転し、処理容器50の開口部を真下に向ける。その後に、一回又は複数回の揺動を加えるのが望ましい。例えば180度回転させ、処理容器50の開口部を真下に向けた後、さらに45度回転し、この45度回転した位置を基準として90度反転する。このように揺動動作させることで、処理容器50に貫通したパイプに堆積した少量の水素粉砕粉も完全に落下せしめることができる。
また、反転動作は、回収室40の真空排気手段43を動作後、回収室40内の圧力を測定する圧力測定手段により測定された圧力の情報に基づき動作が開始されるように制御されている。例えば、圧力1000Pa以下で反転動作を開始させるようにする。圧力測定手段としては、各種の圧力計や真空計を用いることができる。これによって、反転時に水素粉砕粉が回収室40内で舞うことなく落下するため、回収室40内壁面などへの付着を防止できる。
図3に示すように、回収室40には、回収室40内の圧力を測定する圧力測定手段49aとともに酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段49bが設けられている。圧力測定手段49aにより測定された圧力の情報に基づき、回収室40内の圧力を制御し、酸素濃度測定手段49bにより測定された酸素濃度の情報に基づき回収室40内の酸素濃度を制御することにより、回収される水素粉砕粉の酸素含有量を制御することができる。また、回収室40内の圧力の情報に基づいて、反転動作を制御させたり、場合によっては、酸素濃度測定手段のみを用いて反転動作を制御しても構わない。
【0053】
図3に示すように、バルブ60の回収容器1が配置される側に、回収容器1内に酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段42a、不活性ガスを導入する第二のガス導入手段42b、及び回収容器1内の酸素濃度を測定するための酸素濃度測定手段49bを備えている。上記の通り、通常酸素水素粉砕粉を作製する場合において、回収室40内での酸素含有量の調整に加え、さらに酸素含有量の調整が必要な場合、第一のガス導入手段42a及び第二のガス導入手段42bによって、酸素含有ガスあるいは酸素含有ガスと不活性ガスを導入し、回収容器1内の雰囲気が所定の酸素濃度となるように調整して、水素粉砕粉の酸素含有量を制御することができる。
また本実施例では、移動阻止手段46a、46bを、処理容器50の搬送方向の前側と後側にそれぞれ設け、処理容器50のコンベア手段45からの離脱を阻止する離脱阻止手段47を処理容器50の開口部側に設け、反転手段44による反転時には、一対の移動阻止手段46a、46bと離脱阻止手段47とによってコンベア手段45に対して処理容器50を所定の位置に保持することができ、狭い空間においても反転動作を確実に行わせることができる。
本実施例では、移動阻止手段46a、46bをコンベア手段45を構成するローラの間から処理容器50側に出没可能に設けることで、ローラ間の隙間を利用するために装置の小型化を図れるとともに、ローラとの位置関係を正確に維持しやすいため、処理容器50の確実な保持を行える。
本実施例では、離脱阻止手段47を、処理容器50が搬入された状態で鍔部52の上部に位置するように配置している。このように、鍔部52を形成することで、搬送動作によって鍔部52と離脱阻止手段47とを対応させることができ、処理容器50を所定の位置に保持することができる。
また、本実施例では、第一のガス導入手段42aの前段部にドライエアー発生装置(図示せず)を配置しており、第一のガス導入手段42aから供給される酸素含有ガスは出口空気の圧力下露点が10℃(大気圧露点−17℃)となっている。これによって、酸素含有ガスとして空気を用いる場合は、空気中に含まれる水分が起因となる水素粉砕粉の酸化に与える影響を抑制することができ、水素粉砕粉の酸素含有量を所定の値により正確に調整することが可能となる。
【0054】
次に、図2で説明したバルブの構成と動作について説明する。
図7は同回収室の出口に設けるバルブの動作を示す構成図である。
同図(a)はバルブ開の状態、同図(b)はバルブ閉動作途中の状態、同図(c)はバルブ閉の状態を示している。
バルブ60は、筒状部材61の内周面に配置される環状膨張部材62と、筒状部材61の径方向を回動軸63aとするディスク部材63とから構成される。
環状膨張部材62は、自身の材質や構造によって弾性変形可能な部材でもよいが、外部からのガス圧によって膨張可能であることが好ましい。
ディスク部材63は、回動軸63aによって回転し、同図(a)の状態において開放状態となる。また、同図(b)の状態によって筒状部材61を閉塞する位置に動作させた後に、環状膨張部材62を膨張変形させることで、ディスク部材63と環状膨張部材62との間は密閉される。
本実施例のバルブ60によれば、水素粉砕粉の付着による影響を無くし、密閉性を維持することができる。
バルブ60は、回収容器1内の酸素濃度が20ppm以下で、かつ回収室40の第二のガス導入手段42bによって回収室40内の圧力が回収容器1内の圧力と同圧になったとき、開閉動作を行なうことができるように制御されている。従って、回収容器1内での酸化を防止できるとともに、回収室40から回収容器1への水素粉砕粉の排出を容易に行うことができる。
【0055】
なお、上記実施例では、希土類系磁石用原料合金としてR−T−B系磁石用原料合金を用いた場合について述べたが、Sm−Co系磁石用原料合金の水素粉砕粉の低酸素化工程にも適用できる。
本実施例による水素粉砕装置で用いる希土類系磁石用原料合金として、最終的に得られる磁石組成にてNd23.24、Pr6.44、Dy0.55、B0.92、Al0.09、Ga0.08、Co2.00、Cu0.10(各mass%)となるように調整した組成物を用い、ストリップキャスト法により急冷合金を作製した。
そして、このストリップキャスト合金400kgを本装置に投入し、希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を回収容器1に回収した。
一方、同一材料、同一装置により比較実験を行った。上記実験例とは反転手段による上下反転時に、減圧を行うことなく水素粉砕粉を回収室内に落下させた。
なお、実施例1における反転時の内部圧力を5Paとし、反転後のアルゴンガス導入における圧力を大気圧と同圧とした。比較例1では、反転時の真空排気を行わず、反転時からアルゴンガス導入により圧力を大気圧と同圧とした。
実施例1では、その後回収室40内に残留する水素粉砕粉を集めたところ、水素粉砕粉は0.1g以下であった。比較実験では回収室40内から100gの水素粉砕粉が回収された。
【0056】
実施例2
本発明による水素粉砕装置によって、原料合金として酸素含有量200ppmのストリップキャスト合金を用い、水素吸蔵工程、加熱工程、冷却工程を行い、圧力が5Paの回収室内において処理容器を上下反転させて回収室内に水素粉砕粉を排出した。
次に、回収室内を回収容器と同じ圧力(大気圧)にするために、アルゴンガスを導入したのち、回収容器に水素粉砕粉を回収した。
回収した水素粉砕粉の酸素含有量を不活性ガス融解赤外線吸収法にて測定した結果、酸素含有量は500ppmであった。
【0057】
実施例3
アルゴンガスを導入する代わりに、大気圧露点−17℃の空気を導入する以外は実施例2と同様な方法で水素粉砕粉を回収した。
回収した水素粉砕粉の酸素含有量を実施例2と同様の方法で測定した結果、酸素含有量は1500ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、酸化しやすい状態にある希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法及び回収装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 回収容器
2 遮断扉
10 水素吸蔵室
11 遮断扉
12 不活性ガス導入手段
13 真空排気手段
14 水素導入手段
15 コンベア手段
20 加熱室
21 遮断扉
22 不活性ガス導入手段
23 真空排気手段
24 加熱手段
25 コンベア手段
30 冷却室
31 遮断扉
32 不活性ガス導入手段
33 真空排気手段
34 冷却手段
35 コンベア手段
40 回収室
41 遮断扉
42a 第一のガス導入手段
42b 第二のガス導入手段
43 真空排気手段
44 反転手段
45 コンベア手段
49a 圧力測定手段
49b 酸素濃度測定手段
50 処理容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器に収容された希土類系磁石用原料合金に水素を吸蔵させる水素吸蔵工程と、水素吸蔵により粉砕された前記希土類系磁石用原料合金を加熱して脱水素する加熱工程と、加熱された前記希土類系磁石用原料合金を冷却する冷却工程と、冷却された前記希土類系磁石用原料合金を回収容器に回収する回収工程と、を含む希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法であって、
前記回収工程が、前記水素吸蔵工程、前記加熱工程、前記冷却工程を行う一つあるいは複数の処理室に連接する回収室にて行なわれ、前記回収室には、
酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段と、
不活性ガスを導入する第二のガス導入手段と、
前記回収室内のガスを排出する真空排気手段と、
前記処理容器を前記処理室から前記回収室内へ搬入するための搬入口と、
前記回収室の下部に配置される排出口と、
前記排出口に接続された前記回収容器とを有し、
前記第二のガス導入手段によって前記回収室内に不活性ガスを導入した後に、
前記処理容器を前記処理室から前記回収室内へ前記搬入口より搬入し、
前記真空排気手段によって前記回収室内を減圧した後に、
前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金を前記回収室内に排出し、
前記希土類系磁石用原料合金を前記回収室内に排出した後に、
前記回収室内に前記第一のガス導入手段によって酸素含有ガスを導入するか、あるいは前記第一のガス導入手段及び前記第二のガス導入手段によって酸素含有ガス及び不活性ガスを同時に導入し、前記回収室内を所定圧力及び所定酸素濃度とした後に、前記希土類系磁石用原料合金を前記回収容器に回収することを特徴とする希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法。
【請求項2】
前記回収室には、前記処理容器を上下反転させる反転手段を有し、前記処理容器は、上面に開口部を有し、前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金の排出を、前記反転手段による上下反転によって行うことを特徴とする請求項1に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法。
【請求項3】
前記反転手段による上下反転を行った後に、前記開口部を下方に向けた状態で前記反転手段によって揺動動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法。
【請求項4】
前記処理容器は前記処理容器の前記開口部を覆う蓋体を有し、前記真空排気手段による減圧時には前記蓋体によって前記開口部を覆い、前記真空排気手段によって前記回収室内を減圧した後で、前記反転手段による上下反転を行う前に、前記蓋体を前記開口部から取り外すことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法。
【請求項5】
前記処理容器の前記開口部を前記蓋体で覆った状態で、前記水素吸蔵工程、前記加熱工程、及び前記冷却工程を行うことを特徴とする請求項4に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法。
【請求項6】
前記処理容器からの前記希土類系磁石用原料合金の排出を、前記回収室内が1000Paから1Paの減圧下で行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法。
【請求項7】
前記回収室内の前記所定圧力を、予め不活性ガスの導入によって酸素濃度が20ppm以下となした前記回収容器内の圧力と同圧にすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法。
【請求項8】
前記回収室内の前記所定圧力を、予め不活性ガス及び/又は酸素含有ガスの導入によって酸素濃度が20ppmを超える酸素濃度となした前記回収容器内の圧力と同圧にすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収方法。
【請求項9】
上面に開口部を有する処理容器に収容された希土類系磁石用原料合金を、水素吸蔵処理、加熱処理、冷却処理する一つあるいは複数の処理室と、前記処理室に連接する回収室とを有し、前記回収室には、酸素含有ガスを導入する第一のガス導入手段と、不活性ガスを導入する第二のガス導入手段と、前記回収室内のガスを排出する真空排気手段と、前記処理容器を前記処理室から前記回収室内へ搬入するための搬入口と、前記回収室の下部に配置される排出口とを有し、前記処理室から搬入した前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を前記回収室内へ排出し、前記排出口から回収容器に回収する希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置であって、
前記回収室に、前記処理容器を上下反転させる反転手段と、回収室内の圧力を測定する圧力測定手段を備え、前記真空排気手段を動作後、前記圧力測定手段により測定された圧力の情報に基づき前記反転手段を動作させ、前記処理容器を上下反転させて前記処理容器内の前記希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉を前記回収室内に排出することを特徴とする希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項10】
前記回収室内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定手段を備えていることを特徴とする請求項9に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項11】
前記圧力測定手段により測定された圧力が1000Pa以下であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項12】
前記反転手段が、前記処理容器を上下反転させ前記処理容器の前記開口部を下方に向けた状態でさらに前記処理容器を揺動させることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項13】
前記処理容器の前記開口部を覆う蓋体を取り外す蓋開閉手段を有し、前記蓋開閉手段が、前記蓋体に設けられた係合片と前記回収室内に設けられた前記係合片とを係合させ、前記回収室内に設けられた係合片の上方への移動によって前記蓋体を取り外すことを特徴とする請求項9から請求項12のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項14】
前記蓋体に設けられた前記係合片は前記蓋体の上部に、前記回収室内に設けられた前記係合片は前記回収室内の上部にそれぞれ配置されており、一方の前記係合片がT字状の断面形状をなし、他方の前記係合片が略C字状の断面形状をなしていることを特徴とする請求項13に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項15】
前記回収室に、前記処理容器を前記処理室から搬入するコンベア手段を有し、前記反転手段は、前記処理容器を前記コンベア手段とともに反転することを特徴とする請求項9から請求項14のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項16】
前記コンベア手段の前記処理容器搬送方向の両側に、反転時に前記処理容器の移動を阻止する移動阻止手段をそれぞれ設け、前記コンベア手段の前記処理容器搬入方向に直交する方向の両側に、反転時に前記処理容器の前記コンベア手段からの離脱を阻止する離脱阻止手段をそれぞれ設け、前記反転手段による反転時には、一対の前記移動阻止手段と一対の前記離脱阻止手段とによって前記コンベア手段に対して前記処理容器が所定の位置に保持されることを特徴とする請求項15に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項17】
前記コンベア手段が複数本のローラで構成され、前記移動阻止手段が、前記ローラの間から前記処理容器側に出没可能に設けられていることを特徴とする請求項16に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項18】
前記離脱阻止手段がL状の断面形状をなし、前記処理容器の前記開口部近傍の外周に設けられる鍔部の上部に位置するように配置されていることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。
【請求項19】
前記排出口にはバルブを有し、前記バルブが、筒状部材の内周面に配置される環状膨張部材と、前記筒状部材の径方向を回動軸とするディスク部材とから構成されていることを特徴とする請求項9から請求項18のいずれかに記載の希土類系磁石用原料合金の水素粉砕粉の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158792(P2012−158792A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18494(P2011−18494)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】