説明

希薄燃料吸入ガスタービン

【課題】エンジンの出力低下を来たす排気系の圧力損失がなく、かつガスタービンのコンパクト化を図ることができる希薄燃料吸入ガスタービンを提供することを目的とする。
【解決手段】燃料を含む可燃濃度限界以下の作動ガスG1を圧縮して圧縮ガスG2を生成する圧縮機1と、圧縮ガスG2を触媒反応により燃焼させる触媒燃焼器2と、触媒燃焼器2からの燃焼ガスG3により駆動されるタービン3と、圧縮機1から触媒燃焼器2に導入される圧縮ガスG2をタービン3からの排ガスG4によって加熱する再生器6と、タービン3から再生器6への排ガス通路25の外側に設けられて、圧縮機1より抽出された抽出ガスG20に燃料を混合して燃焼させた加温用ガスG5を排ガス通路25に供給する加温用バーナ7と、加温用バーナ7への抽出ガスG20の供給量を制御する抽気弁8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭鉱などで発生するCMM(Coal Mine Methane)や埋立地などで発生するランドフィルガスなどの低カロリーガスを燃料として利用する、希薄燃料吸入ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタン濃度が可燃限界よりも低いガスをエンジンに吸入し、ガス中に含まれているメタン成分を燃料として利用する希薄燃料吸入ガスタービンが知られている。このガスタービンは、低濃度のメタンガスを含む作動ガスを圧縮機で圧縮して圧縮ガスを生成し、これを触媒燃焼器で触媒反応により燃焼させ、得られる燃焼ガスによりタービンを駆動させる。タービンから排出される排ガスは再生器(熱交換器)に送り、これにより前記圧縮機から触媒燃焼器に導入される圧縮ガスを所定温度以上に加温する。前記タービン出口と再生器入口との間を接続する排ガス通路内にはダクトバーナを設け、排ガス温度の低いエンジンの始動時や低負荷運転時に、前記ダクトバーナに天然ガスのような燃料を投入してこれを燃焼させる。これにより、排ガス温度を上昇させることで、圧縮機から再生器に供給された圧縮ガスを十分加温して前記触媒燃焼器に導入し、触媒燃焼器を活性化することにより、タービンを効率的に駆動させている (特許文献1)。
【0003】
このガスタービンでは、メタン濃度の低い低カロリーガス、特に炭坑における通風の排気であるVAM(Ventilation Air Methane)を燃料として利用できる。このVAMは、メタン濃度が1%以下で通常の方法では燃焼しないため、大気中に放散されているのが現状であるが、このVAMを燃料とするガスタービンで発電することによりCO排出権を獲得することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−19247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ガスタービンの場合、タービン出口の排ガス通路内にダクトバーナを設置した構造であるため、定格運転時のようにダクトバーナを作動させない場合でもタービンからの排ガスが排ガス通路内を通過するので、排気系の圧力損失を来たし、エンジンの出力低下の原因となる。また、ダクトバーナへの燃焼用空気の流量調整ができないので、触媒燃焼器の触媒劣化時に必要なダクトバーナの再着火が困難になる。さらに、排ガス通路内にダクトバーナを設置して収容する構造であるため、排ガス通路自体を大寸法の容量の大きいものとせねばならず、ガスタービンが大型化する。
【0006】
本発明は、エンジンの出力低下を来たす排気系の圧力損失がなく、かつガスタービンのコンパクト化を図ることができる希薄燃料吸入ガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の希薄燃料吸入ガスタービンは、燃料を含む可燃濃度限界以下の作動ガスを圧縮して圧縮ガスを生成する圧縮機と、前記圧縮ガスを触媒反応により燃焼させる触媒燃焼器と、前記触媒燃焼器からの燃焼ガスにより駆動されるタービンと、前記圧縮機から触媒燃焼器に導入される圧縮ガスを前記タービンからの排ガスによって加熱する再生器と、前記タービンから再生器への排ガス通路の外側に設けられて、前記圧縮機より抽出された抽出ガスに燃料を混合して燃焼させた加温用ガスを前記排ガス通路に供給する加温用バーナと、前記加温用バーナへの抽出ガスの供給量を制御する抽気弁とを備えている。
【0008】
このガスタービンによれば、燃料と空気を混合した可燃限界濃度以下の作動ガスが圧縮機で圧縮され、その圧縮ガスが触媒燃焼器で触媒反応により燃焼され、ここで発生する高温の燃焼ガスによりタービンが駆動される。始動時や低負荷運転時など、触媒燃焼器の入口温度が触媒反応の開始温度に達しない場合、加温用バーナにより、圧縮機から抽出された抽出ガスに燃料を混合して燃焼させた加温用ガスが排ガス通路に供給されて排ガスが加熱される。こうして、加熱された排ガスが、再生器で、圧縮機から導入される圧縮ガスと熱交換され、昇温した圧縮ガスにより触媒燃焼器の入口温度が上昇して触媒燃焼を可能にする。これにより、高温の燃焼ガスをタービンに安定して供給できる。しかも、前記加温用バーナは排ガス通路内に存在しないので、排気系の圧力損失がなく、エンジンの出力低下を来たさない。さらに、CMM、VAM、ランドフィルガスのような燃料濃度(メタンガス濃度)の低いガスを燃料として用いてガスタービンを駆動でき、触媒反応を利用しているから、加湿用バーナを使用しない通常の定格運転時にはNOxを発生させることなく、多くの可燃限界濃度以下のガスを処理してメタンガス放出量を削減できるので、地球温暖化防止に役立たせることができる。
【0009】
また、従来のように、加温用バーナを排ガス通路内に設置する構造ではないから、排気系の圧力損失を来たさず、エンジンの出力低下がないので、効率的な運転が行える。さらに、加温用バーナが排ガス通路内に設置されていないことで、排ガス通路が比較的小サイズのもので足りて、ガスタービンをコンパクト化できる。また、加温用バーナへの抽出ガスの供給量を抽気弁により制御するので、再着火の際に抽出ガス量を適切に制御して、加温用バーナで必要な量の加温用ガスを生成できるので、再着火が容易になされる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、前記抽気弁は加温用バーナへの抽出ガスの供給量を連続的に増減制御する制御弁からなる。この構成によれば、加温用バーナへの抽気ガスの供給量が抽気弁により連続的に制御されるので、エンジン回転速度の変化に合わせて加温用バーナへの抽出ガスの供給量ならびに燃料制御弁により制御される加湿用バーナへの燃料供給量を適切に設定して、加温用バーナからの加温用ガスの流量および温度を適宜制御することにより、触媒燃焼器の入口温度を適切に制御できる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、前記加温用バーナはエンジン始動時に作動するように構成されている。エンジンの始動時には、タービンからの排ガスの温度が低いために、前記触媒燃焼器が十分活性化されないので、タービンに高圧・高温の圧縮ガスを供給できず、エンジンの回転を円滑に上昇させることができない。このようなエンジン始動時に加温用バーナを作動させるので、触媒燃焼器を効率的に活性化させて、円滑なエンジン始動が可能になる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、前記加温用バーナはエンジンの定格回転数よりも低い部分回転数において作動するように構成されている。エンジンが部分回転数の場合には、
ガスタービンを通過する作動ガスの総量が定格回転時よりも少ないので、それに伴い加温用バーナで必要とされる燃料量も少なくて済むから、加湿用バーナをコンパクト化できる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、前記加温用バーナはガスタービンの起動時以外にも前記触媒燃焼器での燃焼不良が生じたときに作動するように構成されている。触媒燃焼器において、触媒の劣化のような原因で燃焼不良が生じたとき、前記加温用バーナを再着火して作動させるので、触媒燃焼器が十分活性化され、エンジンの出力低下を回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料濃度(メタンガス濃度)の低いガスによりガスタービンを駆動できる。しかも、触媒反応を利用しているから、通常の定格運転時にはNOxを発生させることなく、多くのガスを処理してメタンガス放出量を削減できる。また、加温用バーナを排ガス通路内に設置する構造ではないから、排ガス通路が比較的小サイズのもので足りて、ガスタービンをコンパクト化できるとともに、排気系の圧力損失を来たさず、エンジンの出力低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる希薄燃料吸入ガスタービンを示す簡略構成図である。
【図2】同実施形態に用いるガスタービンの主要構成部分の配置構成図である。
【図3】同実施形態における始動停止タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる希薄燃料吸入ガスタービンを示す簡略構成図である。このガスタービンGTは、圧縮機1、白金やパラジウムなどの触媒を含む触媒燃焼器2、およびタービン3を有している。このガスタービンGTの出力により、発電機とスタータを兼ねる回転機4が駆動される。
【0017】
このガスタービンGTで用いる低カロリーガスとして、例えば、炭鉱で発生するVAM、これよりも可燃成分(メタン)濃度が高いCMMのような、空気と燃料(可燃成分)とが混合された作動ガスG1が、前記圧縮機1で圧縮され、その高圧の圧縮ガスG2が前記触媒燃焼器2に送られる。この圧縮ガスG2が触媒燃焼器2の白金やパラジウムなどの触媒による触媒反応によって燃焼され、これにより発生する高温・高圧の燃焼ガスG3がタービン3に供給されて、タービン3を駆動する。タービン3は圧縮機1に回転軸5を介して連結され、このタービン3により圧縮機1が駆動される。このようにして、ガスタービンGTおよび回転機4を含む発電装置50が構築されている。ここで、作動ガスG1中の燃料濃度(可燃成分濃度)は可燃濃度限界以下、すなわち、火炎燃焼が可能な最低温度以下であるから、圧縮機1での圧縮により昇温しても着火することはない。前記作動ガスG1には適宜、高濃度の可燃成分を加えて、燃料濃度を高めることができる。
【0018】
ガスタービンGTは、さらに、タービン3からの排ガスG4によって圧縮機1から触媒燃焼器2に導入される圧縮ガスG2を加熱する再生器(熱交換器)6と、加温用バーナ7とを備えている。この加温用バーナ7は、圧縮機1より抽出された抽出ガスG20に燃料を混合して火炎燃焼させた加温用ガスG5を、タービン3から再生器6に供給される排ガスG4に混入する。加温用バーナ7には、この加温用バーナ7への抽出ガスG20の供給量を制御する抽気弁8が接続されている。前記再生器6から流出した排ガスG4は、図示しないサイレンサを通って消音されたのち、外部に放出される。
【0019】
前記抽気弁8による加温用バーナ7への抽出ガスG20の供給量の制御は、後述するコントローラ20の始動制御手段21からの出力信号により行なわれる。
【0020】
前記加温用バーナ7への燃料供給は、炭坑の掘削部分のようなCMM源13から送給されるCMMを第1燃料流量制御弁9により流量を調整しながらなされる。この第1燃料流量制御弁9によるCMMの流量調整は装置全体をコントロールするコントローラ20に設けられた始動制御手段21からの制御信号によって行なわれる。圧縮機1への作動ガスG1の供給は、炭坑の換気のようなVAM源12からのVAMに必要に応じてCMM源13から抽出したCMMを第2燃料流量制御弁10によりその流量を調整しながら混入することによってなされる。CMMは10〜30%程度のメタンガスを含み、VAMは1%未満のメタンガスを含む。この第2燃料流量制御弁10によるCMMの流量調整は、コントローラ20に設けられた始動制御手段22からの制御信号によって行なわれる。また、VAM源12から圧縮機1への吸入通路には、後述する運転開始時のパージのために、開閉弁18を介して、周囲環境のような空気源19が接続されている。
【0021】
また、前記触媒燃焼器2の入口側には、その入口温度を検出する第1の温度センサ31が設けられ、触媒燃焼器2の出口側には、その出口温度を検出する第2の温度センサ32が設けられている。前記第1の温度センサ31で検出した触媒燃焼器2の入口温度は、コントローラ20の始動制御手段21に温度検出信号として入力され、第2の温度センサ32で検出した触媒燃焼器2の出口温度は、コントローラ20の始動制御手段21と負荷・停止制御手段22にそれぞれ温度検出信号として入力される。
【0022】
さらに、前記温度センサ31,32の他に、タービン3の出口側には、その出口温度を検出する第3の温度センサ33が設けられ、この第3の温度センサ33で検出した排ガスの温度検出信号がコントローラ20の負荷・停止制御手段22に入力される。再生器6の入口側には、その入口温度を検出する第4の温度センサ34が設けられ、入口温度の温度検出信号がコントローラ20の始動制御手段21に入力される。
【0023】
圧縮機1とタービン3とを連結する回転軸5は単一軸からなり、この回転軸5と回転機4とが減速機17を介して連結されている。回転軸5に回転センサ36が設けられ、この回転センサ36で検出した回転軸5の回転数の検出信号が、コントローラ20の負荷・停止制御手段22に入力される。
【0024】
タービン3の回転により駆動される回転機4により得られる電力は、コントローラ20の負荷・停止制御手段22に入力される。電力変換装置11は、負荷・停止制御手段22によって、始動時に回転機4をスタータモータとして駆動させる。
【0025】
図2に示すように、タービン3と再生器6とは、排気ダクトによって形成された排ガス通路25で連結されている。この排ガス通路25は、タービン寄りの円筒状部25aとこの円筒状部25aの下流端部に接続され、再生器6側に向かって末広がりとなった拡径筒状部25bとからなる。この排ガス通路25の拡径筒状部25bに対し、加温用ガスG5を排ガス通路25内に供給する加温用バーナ7が拡径筒状部25bの外側に設けられている。排ガス通路25の再生器6側に連結される拡径筒状部25bを末広がり状としたので、加温用ガスG5は大形の再生器6に対して均一に供給され、再生器6の全体を有効に利用して、圧縮ガスG2と熱交換できる。
【0026】
前記加温用バーナ7には、前述したように、CMM源13(図1)から燃料成分であるCMMが供給されるようになっており、圧縮機1から再生器6へ圧縮ガスG2を供給する圧縮ガス通路24から抽気ガス通路27が分岐しており、この抽気ガス通路27に、加温用バーナ7とその上流側に位置する抽気弁8とが設けられている。
【0027】
上記構成のガスタービンGTの基本動作である始動制御、負荷制御および停止制御について図3に示すガスタービンの始動停止タイミングチャートを参照しながら説明する。図3において、曲線aはガスタービンGTの回転軸5の回転数、bは発電電力、cは第1燃料流量制御弁9の開度、dは第2燃料流量制御弁10の開度、eは抽気弁8の開度を、それぞれ示す。
【0028】
はじめに、始動制御について説明する。始動制御では、外部から始動指令を受けた始動制御手段21が、まず、図1の電力変換装置11を作動させて、回転機4をスタータとして駆動し、かつ開閉弁18を開弁して、ガスタービンGTに空気を吸い込ませて、一定時間モータリングし、図3に示すように、ガスタービンGTを低い回転数(例えば定格の20〜30%)で回転させる(パージ)。つぎに、開閉弁18を閉弁し、ガスタービンGTにVAM源2からVAMを吸いこませて定格回転数(100%)よりも低い部分回転数(例えば定格の60%程度)まで回転数を上げてモータリングし、図1の加温用バーナ7の点火により再生器6の暖気を行なうとともに、触媒燃焼器2が触媒反応可能な所定温度になるまで昇温させる。このとき、図3に示すように、パージ終了後に抽気弁8を徐々に開放し、加湿用バーナ7の点火後は一定開度に維持する。続いて、図1の触媒燃焼器2で触媒燃焼を行っている間に負荷・停止制御手段22からの制御信号によって第2燃料流量制御弁10を開き、CMM源13から圧縮機1へのCMMの供給を開始する(吸気CMM投入)。これにより、触媒燃焼器2の入口温度が上昇しようとするので、この入口温度が適正な温度となるように、加温用バーナ7での燃焼を調整する。
【0029】
この燃焼調整は、図3に示すように、抽気弁8と第1燃料流量制御弁9の開度e,cを徐々に小さくすることにより、図1に示す加温用バーナ7への抽出ガスG20の供給と、燃料としてのCMM供給とを、それぞれ徐々に少なくすることにより行なう。触媒燃焼器2の入口温度は、温度センサ31で検出されて、その検出信号がコントローラ20の始動制御手段21に入力される。この検出信号を受けた始動制御手段21が抽気弁8および第1燃料流量制御弁9のそれぞれに制御信号を出力して、その開度e,cを制御する。図3に示す発電電力bが0kWを超えると、つまり発電が開始されると、抽気弁の開度eおよび第1燃料流量制御弁9の開度cをさらに小さくしながら全閉して、抽出ガスG20ならびに加温用バーナ7へのCMM供給を停止させ、加温用バーナ7を消火する。
【0030】
つぎに、負荷制御について説明する。図3で発電が開始されると、図1の負荷・停止制御手段22からの制御信号によって第2燃料流量制御弁10を制御して、その開度dをさらに大きくし、CMM源13から圧縮機1に供給されるCMM量を増加させ、前述のとおり、加温用バーナ7を消火したのち、触媒燃焼器2で触媒燃焼を継続する。図3で、エンジン回転数aが定格(100%)に達して発電電力bが定格値(定格負荷)に達するまで第2燃料流量制御弁10の開度dが徐々に大きくなって、圧縮機1に供給されるCMMの供給量を増大させる。続いて、定格負荷になると、設定した発電電力bを保持するように、図1の第2燃料流量制御弁10により圧縮機1に供給されるCMMの供給量を制御し、作動ガスG1中のCMM濃度を調整する。
【0031】
停止制御においては、外部から停止指令を受けたとき、始動制御手段21が作動し、図3に示すように、発電電力bの設定を徐々に下げ、この電力設定に応じて第2燃料流量制御弁10を制御して、その開度dを徐々に小さくし、触媒燃焼器2に供給されるCMMの量を少なくする。これに伴い、エンジン回転数aが低下して発電電力bがほぼ0kWの無負荷状態になる。この後、無負荷状態を一定時間保持して、エンジン全体をアフタークーリングする。このアフタークーリング後、第2燃料流量制御弁10を全閉して圧縮機1へのCMMの供給を停止することで、発電停止状態とし、ガスタービンGTをフリーラン停止させる。
【0032】
加温用バーナ7は、以上のエンジン始動時とは別に、触媒燃焼器2での燃焼不良が生じたときにも作動する。すなわち、第2の温度センサ32により検出された触媒燃焼器2の出口温度が予め定めた設定温度以下になったとき、触媒の劣化のような原因で触媒燃焼器2の燃焼不良が生じたと判断され、コントローラ20が作動して抽気弁8と第1燃料流量制御弁9を開き、加温用バーナ7を再着火する。これにより、再生器6に入る排ガスG4が昇温し、触媒燃焼器2に供給される圧縮ガスG2が昇温して、触媒燃焼器2が十分活性化され、エンジンの出力低下を防止できる。
【0033】
上記実施形態によれば、ガスタービンGTの始動を円滑に行うことができる。すなわち、 エンジンの始動時には、タービン3からの排ガスG4の温度が低いため、触媒燃焼器2が活性化されないので、タービン3に高圧・高温の圧縮ガスを供給できず、エンジンの回転を円滑に上昇させることができないが、上記実施形態における加温用バーナ7はエンジン始動時に作動して、再生器6に入る排ガスG4の温度を上昇させる。これにより再生器6での熱交換によって、触媒燃焼器2に供給される圧縮ガスG2の温度が上昇するので、触媒燃焼器2を効率的に活性化させて、円滑なエンジン始動が可能になる。
【0034】
また、図1の加温用バーナ7を排ガス通路25内ではなく、排ガス通路25の外側に設けた構造であるから、排気系の圧力損失を来たさず、エンジンの出力低下がないから効率的なガスタービンGTの運転が行える。さらに、加温用バーナ7が排ガス通路25内に設置されていないことで、排ガス通路25が比較的小サイズのもので足りて、ガスタービンGTをコンパクト化できる。
【0035】
また、前記加温用バーナ7の上流側に抽気弁8を設け、この抽気弁8により、加温用バーナ7への抽出ガスG20の供給量を連続的に増減制御するから、エンジン回転速度の変化に合わせ、加温用バーナ7への抽出ガスG20の供給量ならびに燃料制御弁9により制御される加湿用バーナ7への燃料供給量を適切に設定して、加温用バーナ7からの加温用ガスG5の流量および温度を適宜制御することにより、触媒燃焼器2の入口温度を適切に制御できる。
【0036】
さらに、エンジンが部分回転数の場合には、定格回転数と比較して、ガスタービンを通過する作動ガスの流量が少なくなるため、それにともない加湿用バーナ7で必要とされる燃料流量も少なくて済み、加湿用バーナ7をコンパクト化できる。
【0037】
なお、本発明は、作動ガスとして例示した前記CMM,VAM以外の可燃性ガスであっても可燃濃度限界以下の濃度のガスであれば、使用できる。
【0038】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 圧縮機
2 触媒燃焼器
3 タービン
4 発電機
6 再生器
7 加温用バーナ
8 抽気弁
25 排ガス通路
G1 作動ガス
G2 圧縮ガス
G3 燃焼ガス
G4 排ガス
G5 加温用ガス
G20 抽出ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を含む可燃濃度限界以下の作動ガスを圧縮して圧縮ガスを生成する圧縮機と、
前記圧縮ガスを触媒反応により燃焼させる触媒燃焼器と、
前記触媒燃焼器からの燃焼ガスにより駆動されるタービンと、
前記タービンからの排ガスによって前記圧縮機から触媒燃焼器に導入される圧縮ガスを加熱する再生器と、
前記タービンから再生器への排ガス通路の外側に設けられて、前記圧縮機より抽出された抽出ガスに燃料を混合して燃焼させた加温用ガスを前記排ガス通路に供給する加温用バーナと、
前記加温用バーナへの抽出ガスの供給量を制御する抽気弁とを備えた希薄燃料吸入ガスタービン。
【請求項2】
請求項1において、前記抽気弁は加温用バーナへの抽出ガスの供給量を連続的に増減制御する制御弁からなる希薄燃料吸入ガスタービン。
【請求項3】
請求項1または2において、前記加温用バーナはエンジン始動時に作動する希薄燃料吸入ガスタービン。
【請求項4】
請求項3において、前記加温用バーナはエンジンの定格回転数よりも低い部分回転数において作動する希薄燃料吸入ガスタービン。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項において、前記加温用バーナは前記触媒燃焼器での燃焼不良が生じたときに作動する希薄燃料吸入ガスタービン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−196355(P2011−196355A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67271(P2010−67271)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【特許番号】特許第4751950号(P4751950)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)