説明

帯板の形状矯正・制振方法及び溶融金属めっき鋼板の製造方法

【課題】帯板の板幅や蛇行が急激に変化しても、帯板の形状を矯正すると共に、その振動を抑制することができる帯板の形状矯正・制振方法及び溶融金属めっき鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】変位センサ23a〜23gにより検出した搬送されるストリップSまでの距離に応じて、電磁石24a〜24g,25a〜25gへの励磁電流を制御し、その電磁力によって、ストリップSの形状矯正及び制振を行う帯板の形状矯正・制振方法であって、その距離と当該距離に対応する目標位置とに基づいて電磁石24a〜24g,25a〜25gへの励磁電流を制御し、変位センサ23a〜23gの検出可能範囲内にストリップSが存在するときには、励磁電流を流す一方、変位センサ23a〜23gの検出可能範囲内にストリップSが存在しないときには、励磁電流を流さないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される帯板の形状を矯正すると共に、その振動を抑制する帯板の形状矯正・制振方法、及び、それを用いた溶融金属めっき鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛やアルミニウム等をはじめとする溶融金属のめっき方法は、古くから実用化されている。特に、これらの溶融金属でめっきした溶融金属めっき鋼板は、自動車用、家電用、建材用の防錆鋼板として、その需要が増加している。そして、自動車、家電、建材等の最終製品の品質向上に伴い、これらを構成する溶融金属めっき鋼板においても、そのめっき付着量の均一化や表面欠陥の抑制等、更に高品質な製品が求められている。
【0003】
現在、連続したストリップ(帯板)に対して溶融金属をめっきする方法としては、例えば、ガスワイピング法が一般的である。このガスワイピング法では、溶融金属のめっき浴中に連続的に浸漬させたストリップをめっき浴から上方に引き上げて、この上昇過程のストリップに対して、ワイピングノズルからワイピングガスを吹き付けるようにしている。これにより、ストリップの表面に余剰に付着した溶融金属が除去されて、ストリップは所定のめっき付着量に調整される。
【0004】
しかしながら、このようなガスワイピング法におけるストリップには、めっき浴からの引き上げ動作やその張力等により、幅方向の反りや振動が発生することがある。このように、ストリップに反りや振動が発生すると、ワイピングノズルとストリップとの間の間隔が変化することとなり、ストリップの表面に対するワイピングガスの吹き付け状態がその幅方向及び搬送方向において均一にならず、ストリップにおけるめっき付着量が不均一になるおそれがあった。
【0005】
そこで、この種の溶融金属めっき設備においては、搬送されるストリップに対して、形状(反り)を矯正すると共に、その振動を抑制する形状矯正・制振装置が設けられている。この形状矯正・制振装置は、ワイピングノズルに近接配置される変位センサ及び電磁石を、ストリップの幅方向に複数組有しており、各変位センサによりストリップの各部位までの距離を常時検出しながら、この検出された距離に応じて、それらに対応する各電磁石に励磁電流を流して、その電磁力によって、ストリップを反り状態からフラット状態に矯正すると共に、その振動を抑制するようになっている。このような、従来のストリップの形状矯正・制振方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−317259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記溶融金属めっき設備を含む溶融金属めっき鋼板製造ラインには、当該ライン全体を総合的に制御するライン制御装置が設けられている。このライン制御装置には、予め、搬送されるストリップの板厚、板幅、張力、搬送速度、鋼種等の鋼板情報が設定されている。そして、この鋼板情報がライン制御装置からラインを構成する各装置に入力されることにより、ライン全体が駆動制御されて、所望の溶融金属めっき鋼板が製造されるようになっている。また、溶融金属めっき設備の形状矯正・制振装置においては、ライン制御装置から入力される鋼板条件の板幅に応じて、ストリップが前方に存在する変位センサ及び電磁石の組を駆動すると共に、ストリップが前方に存在しない変位センサ及び電磁石の組を停止するようになっている。
【0008】
ところで、溶融金属めっき鋼板製造ラインにおいては、鋼板情報が異なる複数種類の鋼板を連続的に製造する場合がある。このような場合には、先行する先行材の後端と、これに後続するそれとは異なった鋼種の後行材の先端とを、溶接等によって繋ぐことにより、溶接繋ぎ部を形成して連続的なストリップとして処理するようにしている。
【0009】
しかしながら、ライン制御装置から入力される溶接繋ぎ部の通過タイミングが実際とは異なる通過タイミングとなることがある。また、搬送されるストリップはその搬送状態が常に一定ではなく、その幅方向に蛇行する場合がある。この結果、従来の形状矯正・制振方法では、搬送されるストリップにおいて、実際のエッジ部を的確に判断することができないため、使用するべき変位センサ及び電磁石の組の選択を誤ることがある。
【0010】
更に、ストリップにおいては、その溶接繋ぎ部を境にして、板幅が変わるだけでなく、その蛇行量も急激に変化する場合がある。これにより、ストリップまでの距離を検出する変位センサは、ストリップのエッジ部との位置関係によっては誤検出することがあり、従来の形状矯正・制振方法では、制御を行うと返ってストリップの形状を悪くしてしまう場合がある。
【0011】
そこで、特許文献1のように、ストリップの板幅変更や蛇行に対して、変位センサ及び電磁石をストリップの幅方向に移動させる方法もあるが、このような方法では、重量物を移動させることになり、応答性に問題が生じてしまう。これにより、ストリップのエッジ部においては、電磁石の電磁力が作用しない領域が発生するため、未矯正による反りの残留が生じるおそれがある。
【0012】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、帯板の板幅や蛇行が急激に変化しても、帯板の形状を矯正すると共に、その振動を抑制することができる帯板の形状矯正・制振方法及び溶融金属めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する第1の発明に係る帯板の形状矯正・制振方法は、
第1検出手段により検出した搬送される帯板までの距離に応じて、電磁石への励磁電流を制御し、その電磁力によって、帯板の形状矯正及び制振を行う帯板の形状矯正・制振方法であって、
前記第1距離と前記第1距離に対応する所定の第1目標位置とに基づいて、前記電磁石への励磁電流を制御し、
前記第1検出手段の検出可能範囲内に帯板が存在するときには、前記電磁石への励磁電流を流す一方、前記第1検出手段の検出可能範囲内に帯板が存在しないときには、前記電磁石への励磁電流を流さない
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第2の発明に係る帯板の形状矯正・制振方法は、
第1の発明に係る帯板の形状矯正・制振方法において、
前記第1検出手段よりも帯板の幅方向外側で、且つ、前記電磁石と対応しない位置に設けられた第2検出手段によって、帯板までの第2距離を検出し、
前記第2距離と前記第2距離に対応する所定の第2目標位置とに基づいて、前記第1目標位置の補正を行う
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第3の発明に係る帯板の形状矯正・制振方法は、
第2の発明に係る帯板の形状矯正・制振方法において、
前記第2検出手段の検出可能範囲内に帯板が存在するときには、前記第1目標位置の補正を行う一方、前記第2検出手段の検出可能範囲内に帯板が存在しないたときには、前記第1目標位置の補正を行わない
ことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第4の発明に係る帯板の形状矯正・制振方法は、
第2の発明に係る帯板の形状矯正・制振方法において、
前記第1目標位置に対する補正量は、当該第1目標位置よりも帯板の幅方向内側において求められた補正量に加味される
ことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第5の発明に係る溶融金属めっき鋼板の製造方法は、
溶融金属めっき浴から連続して引き上げられる帯板に対し、ワイピングガスを吹き付けることにより、帯板の表面に余剰に付着した溶融金属を除去して、帯板を所定のめっき付着量に制御する溶融金属めっき鋼板の製造方法であって、
第1乃至第4のいずれかの発明に係る帯板の形状矯正・制振方法を用いて溶融金属めっき鋼板を製造する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
従って、本発明に係る帯板の形状矯正・制振方法及び溶融金属めっき鋼板の製造方法によれば、帯板の板幅や蛇行が急激に変化しても、帯板の形状を精度良く矯正すると共に、その振動を抑制することができる。この結果、帯板における幅方向のめっき付着量を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る帯板の形状矯正・制振方法及び溶融金属めっき鋼板の製造方法を図面を用いて詳細に説明する。なお、各実施例において同様の構造及び機能を有する部材については、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明に係る形状矯正・制振装置を備えた溶融金属めっき設備の概略図、図2は本発明の第1実施例に係る形状矯正・制振装置の正面図である。
【0021】
図1に示す溶融金属めっき設備1は、溶融金属めっき鋼板を製造する図示しない溶融金属めっき鋼板製造ラインに設けられるものであって、連続的に搬送されるストリップ(帯板)Sに対して、例えば、亜鉛やアルミニウム等の溶融金属をめっきするものである。なお、溶融金属めっき鋼板を製造するためのストリップSは、図2に示すように、先行材S1と後行材S2とからなるものであって、先行材S1の後端と後行材S2の先端とを溶接により繋いだ溶接繋ぎ部Swを有している。
【0022】
図1に示すように、溶融金属めっき設備1の下方には、高温に保持された溶融金属が貯溜されるめっき浴11が配置されている。めっき浴11内には、浸漬したストリップSを巻き掛けて略鉛直上方に方向転換させるシンクロール12と、このシンクロール12から搬送されるストリップSを挟むように配置される一対のサポートロール13,14とが、回転可能に支持されている。
【0023】
めっき浴11の浴面上には、ストリップSに対してその板厚方向から挟むように対向配置される一対のワイピングノズル15が設けられている。このワイピングノズル15は、溶融金属が付着したストリップSに対して、ワイピングガスを吹き付けることにより、その表面に余剰に付着した溶融金属を除去して、ストリップSを所定のめっき付着量に調整するものである。そして、ワイピングノズル15の上方には、ストリップSの形状(反り)を矯正すると共に、その振動を抑制する形状矯正・制振装置16が設けられている。
【0024】
図1,2に示すように、形状矯正・制振装置16は、ストリップSに対してその板厚方向から挟むように対向配置される一対の取付台21を有している。更に、この対向する取付台21の内面には、ストリップSに対してその板厚方向から挟むように対向配置される変位センサ(第1検出手段)23a〜23g、電磁石24a〜24g、及び、電磁石25a〜25gが設けられている。
【0025】
変位センサ23a〜23g、及び、電磁石24a〜24g,25a〜25gは、ストリップSの幅方向において、所定間隔に配置されており、変位センサ23a〜23gは、電磁石24a〜24gと電磁石25a〜25gとの間におけるストリップSの搬送方向中間部に設けられている。即ち、変位センサ23a〜23gとこの上下に配置された電磁石24a〜24g,25a〜24gとが対応して1組をなしており、取付台21には、ストリップSの幅方向において、その1組が所定間隔に複数(図では7組)配置されている。
【0026】
変位センサ23a〜23gは、例えば、渦電流式のセンサであって、ストリップSの各部位までの距離(第1距離)を検出するものである。また、電磁石24a〜24g,25a〜25gは、その電磁力によって、ストリップSの形状(反り)を矯正すると共に、その振動を抑制するものである。そして、変位センサ23a〜23gにより対向するストリップSの各部位までの距離を常時検出しながら、この検出された距離に応じて、それらに対応する電磁石24a〜24g,25a〜25bに励磁電流を流して、その電磁力によって、ストリップSの形状及びワイピングノズル15間のパス位置を矯正すると共に、その振動を抑制するようになっている。
【0027】
また、取付台21の上部外側には、ストリップSに対してその板厚方向から挟むように対向配置されるストリップ検出センサ22a〜22gが設けられている。ストリップ検出センサ22a〜22gは、搬送されるストリップSのエッジ部に対向するように、ストリップSの幅方向において、所定間隔に配置されており、取付台21におけるストリップSの幅方向両外側に配置される3組の変位センサ23a〜23c,23e〜23g、電磁石24a〜24c,24e〜24g、及び、電磁石25a〜25c,25e〜25gにそれぞれ対応して、この対応する変位センサ23a〜23c,23e〜23gに対して、ストリップSの幅方向外側にオフセットされて配置されている。
【0028】
ストリップ検出センサ22a〜22gは、例えば、投受光式のセンサであって、搬送されるストリップSの有無を検出して、対応する変位センサ23a〜23gの検出可能範囲内にそのストリップSが存在するか否かを判定するものである。そして、ストリップ検出センサ22a〜22gによりストリップSが検出された場合には、それらに対応する変位センサ23a〜23g及び電磁石24a〜24g,25a〜25gを駆動させるようになっている。一方、ストリップ検出センサ22a〜22gによりストリップSが検出されなかった場合には、それらに対応する変位センサ23a〜23g及び電磁石24a〜24g,25a〜25gの駆動を停止するようになっている。
【0029】
なお、溶融金属めっき鋼板製造ラインには、当該ライン全体を総合的に制御するライン制御装置2が設けられている。そして、ライン制御装置2には、予め、搬送されるストリップSの先行材S1及び後行材S2の板厚、板幅、張力、搬送速度、鋼種等の鋼板情報が設定されており、この鋼板情報がラインを構成する各装置や、溶融金属めっき設備1の形状矯正・制振装置16に入力されることにより、ライン全体が駆動制御されて、所望の溶融金属めっき鋼板が製造されるようになっている。
【0030】
従って、上述した構成をなすことにより、めっき浴11内に連続的に浸漬されたストリップSは、シンクロール12により略鉛直上方に方向転換されて、サポートロール13,14を介して、めっき浴11の浴面上方に引き上げられる。そして、引き上げられたストリップSがワイピングノズル15間に搬送されると、このストリップSに対して、ワイピングノズル15からワイピングガスが吹き付けられる。これにより、ストリップSの表面に余剰に付着した溶融金属がそぎ落とされ、ストリップSの表面に所定量の膜厚のめっきが施される。
【0031】
次いで、めっきが施されたストリップSは、形状矯正・制振装置16に搬送される。このとき、図2に示すように、ストリップSに蛇行(図中左方向への蛇行)が発生した場合には、ストリップ検出センサ22a〜22fによってストリップSが検出されることにより、これらに対応する変位センサ23a〜23fの検出可能範囲内にストリップSが存在すると判定される一方、ストリップ検出センサ22gによってストリップSが検出されないことにより、これに対応する変位センサ23gの検出可能範囲内にストリップSが存在しないと判定される。また、ストリップ検出センサ22a〜22fに対応する電磁石24a〜24f,25a〜25fの制御が可とされる一方、ストリップ検出センサ22gに対応する電磁石24g,25gの制御が不可とされる。
【0032】
そして、変位センサ23a〜23fにより対向するストリップSの各部位までの距離が検出されて、この検出されたストリップSの各部位までの距離を、ライン制御装置2から入力される目標位置(第1目標位置)と比較する。次いで、その各距離が目標位置に達するように、電磁石24a〜24f,25a〜25fへの励磁電流が調整されることにより、その電磁力によって、ストリップSの形状及びワイピングノズル15間のパス位置が矯正されると共に、その振動が抑制される。
【0033】
従って、本発明に係る形状矯正・制振方法によれば、ストリップ検出センサ22a〜22gによって、搬送されるストリップSの有無を検出して、対応する変位センサ23a〜23gの検出可能範囲内にそのストリップSが存在するか否かを判定することにより、搬送されるストリップSに対して、使用するべき変位センサ23a〜23g及び電磁石24a〜24g,25a〜25gの組の最適な選択を行うことができる。これにより、ストリップSの溶接繋ぎ部Swが通過した際に、先行材S1の板幅から後行材S2の板幅に変わったり、急激に蛇行が変化したりしても、ストリップSの形状を精度良く矯正すると共に、その振動を抑制することができる。
【実施例2】
【0034】
図3は本発明の第2実施例に係る形状矯正・制振装置の正面図、図4は制御部の構成図、図5はストリップのエッジ部が形状矯正及び制振される様子を示した図である。
【0035】
図3に示すように、溶融金属めっき設備1には、形状矯正・制振装置17が設けられている。この形状矯正・制振装置17は、上述した取付台21、ストリップ検出センサ22a〜22g、変位センサ23a〜23g、電磁石24a〜24g,25a〜25gに加えて、ストリップ検出センサ26a〜26h及び変位センサ(第2検出手段)27a〜27hが追加されたものである。
【0036】
ストリップ検出センサ26a〜26h及び変位センサ27a〜27hは、ストリップ検出センサ22a〜22g及び変位センサ23a〜23gと同型のセンサであって、対向する取付台21の内面において、ストリップSに対してその板厚方向から挟むように対向配置されている。
【0037】
変位センサ27a〜27hは、ストリップSの幅方向において、変位センサ23a〜23gと交互に配置されており、隣接する変位センサ23a〜23g間におけるストリップSの幅方向中間部で、且つ、電磁石24a〜24gと電磁石25a〜25gとの間におけるストリップSの搬送方向中間部に設けられている。即ち、変位センサ27a〜27hは、ストリップSにおける電磁石24a〜24g,25a〜25gの電磁力が作用しない中間部及びエッジ部までの距離(第2距離)を検出するものである。また、ストリップ検出センサ26a〜26hは、取付台21の下部におけるストリップSの幅方向において、所定間隔に配置されており、対応する変位センサ27a〜27hに対して、ストリップSの幅方向外側にオフセットされて配置されている。
【0038】
そして、変位センサ27a〜27hにより対向するストリップSの中間部及びエッジ部までの距離を常時検出しながら、この検出された距離に応じて、そのストリップSの幅方向内側に配置される変位センサ23a〜23gが検出した距離に対応する目標位置を補正する。次いで、この補正された目標位置に応じて電磁石24a〜24g,25a〜25gに励磁電流を流して、その電磁力によって、ストリップSの形状及びワイピングノズル15間のパス位置を矯正すると共に、その振動を抑制するようになっている。
【0039】
更に、ストリップ検出センサ26a〜26hによりストリップSが検出された場合には、それらに対応する変位センサ27a〜27hを駆動させるようになっている。一方、ストリップ検出センサ26a〜26hによりストリップSが検出されなかった場合には、それらに対応する変位センサ27a〜27hの駆動を停止するようになっている。
【0040】
図4に示すように、形状矯正・制振装置17は制御部30を介してライン制御装置2に接続されている。この制御部30には、制御回路31、駆動回路32、制御入切判定回路33、補正入切判定回路34、目標補正量演算部35、加算器36、及び、減算器37,38が内蔵されている。なお、図4に示す制御部30は、ストリップSの幅方向外側に配置されるストリップ検出センサ22g,26h、変位センサ23g,27h、及び、電磁石24g,25gとの接続状態を代表して図示したものである。
【0041】
制御部30においては、変位センサ23a〜23gにより検出されたストリップSの各部位までの距離が減算器37に入力される。一方、ライン制御装置2から加算器36を介してストリップSの目標位置が減算器37に入力される。そして、この減算器37によって、変位センサ23a〜23gにより検出されたストリップSの各部位までの距離と、ライン制御装置2から入力された目標位置と、の差が算出され、この算出された差の値が減算器37から制御回路31を介して駆動回路32に入力される。次いで、駆動回路32から算出された差の値に応じた励磁電流が電磁石24a〜24g,25a〜25gに流されることにより、電磁石24a〜24g,25a〜25gはその励磁電流の大きさに応じて電磁力をストリップSに対して発生させる。
【0042】
このとき、ストリップ検出センサ22a〜22gによりストリップSが検出された場合には、その板有信号が制御入切判定回路33に入力される。これにより、制御入切判定回路33は制御回路31の制御を可にすると判定し、その制御可信号を制御回路31に出力する。この結果、制御回路31は、減算器37により算出された差の値を、駆動回路32に出力することができ、電磁石24a〜24g,25a〜25gが駆動可能となる。
【0043】
一方、ストリップ検出センサ22a〜22gによりストリップSが検出されない場合には、その板無信号が制御入切判定回路33に入力される。これにより、制御入切判定回路33は制御回路31の制御を不可にすると判定し、その制御不可信号を制御回路31に出力する。この結果、制御回路31の制御が不可となり、駆動回路32の駆動が停止され、電磁石24a〜24g,25a〜25gの駆動も停止される。
【0044】
また、変位センサ27a〜27hにより検出されたストリップSの中間部及びエッジ部までの距離が減算器38に入力される。一方、ライン制御装置2からストリップSの中間部目標位置及びエッジ部目標位置(第2目標位置)が減算器38に入力される。そして、この減算器38によって、変位センサ27a〜27hにより検出されたストリップSの中間部及びエッジ部までの距離と、ライン制御装置2から入力された中間部目標位置及びエッジ部目標位置と、の差が算出され、この算出された差の値が減算器38から目標補正量演算部35に入力される。目標補正量演算部35では、入力されたその算出された差の値に応じて、ストリップSのエッジ部がエッジ部目標位置に到達するような目標補正量が演算され、その目標補正量が目標補正量演算部35から加算器36に入力される。次いで、加算器36によって、ライン制御装置2から入力された目標位置と、目標補正量演算部35により演算された目標補正量と、の和が算出される。
【0045】
このとき、ストリップ検出センサ26a〜26hによりストリップSが検出された場合には、その板有信号が補正入切判定回路34に入力される。これにより、補正入切判定回路34は目標補正量演算部35の補正演算を可にすると判定し、その補正演算可信号を目標補正量演算部35に出力する。この結果、目標補正量演算部35は、演算した目標補正量を加算器36に出力することができ、電磁石24a〜24g,25a〜25gが駆動可能となる。
【0046】
なお、目標補正量演算部35により演算された目標補正量を、それよりもストリップSの幅方向内側に配置される目標補正量演算部35に入力して、その内側の目標補正量演算部35で演算した目標補正量に加算するようにしてもよい。
【0047】
一方、ストリップ検出センサ26a〜26hによりストリップSが検出されない場合には、その板無信号が補正入切判定回路34に入力される。これにより、補正入切判定回路34は目標補正量演算部35の補正演算を不可にすると判定し、その補正演算不可信号を目標補正量演算部35に出力する。この結果、目標補正量演算部35の補正演算が不可となり、加算器36に入力された目標位置はそのままの値となる。
【0048】
ここで、形状矯正・制振装置17にストリップSが搬送されたときの制御部30における処理動作を説明する。なお、下記に示す説明では、1組のストリップ検出センサ22g、変位センサ23g、及び、電磁石24g,25gと、これに対応するストリップ検出センサ26h及び変位センサ27hとの処理動作について代表して説明する。
【0049】
先ず、図4に示すように、搬送されたストリップSのエッジ部がE1の位置に配置される場合について説明する。
【0050】
ストリップ検出センサ22gによってストリップSが検出されることにより、これに対応する変位センサ23gの検出可能範囲内にストリップSが存在すると判定される一方、ストリップ検出センサ26hによってストリップSが検出されないことにより、これに対応する変位センサ27hの検出可能範囲内にストリップSが存在しないと判定される。これにより、ストリップSのエッジ部が、変位センサ23g,27h間のE1の位置に配置されることがわかる。
【0051】
そして、ストリップ検出センサ22gから板有信号が制御入切判定回路33に入力されることにより、制御入切判定回路33は制御回路31の制御を可にすると判定し、その制御可信号が制御回路31に入力される。また、変位センサ23gにより検出されたストリップSの部位までの距離が減算器37に入力される。更に、ライン制御装置2から加算器36を介してストリップSの目標位置が減算器37に入力される。このとき、ストリップ検出センサ26hによってストリップSが検出されないことにより、目標補正量演算部35の補正演算が不可とされているので、加算器36には目標補正量が入力されない。
【0052】
これにより、減算器37によって、変位センサ23gにより検出されたストリップSの部位までの距離と、ライン制御装置2から入力された目標位置と、の差が算出され、この算出された差の値が制御回路31に入力される。次いで、制御回路31が減算器37により算出された差の値を駆動回路32に入力して、駆動回路32がその算出された差の値に応じた励磁電流を電磁石24g,25gに流すことにより、電磁石24g,25gは所定の電磁力をストリップSに対して発生させる。
【0053】
次に、図4に示すように、搬送されたストリップSのエッジ部がE2の位置に配置される場合について説明する。
【0054】
ストリップ検出センサ22gによってストリップSが検出されることにより、これに対応する変位センサ23gの検出可能範囲内にストリップSが存在すると判定されると共に、ストリップ検出センサ26hによってストリップSが検出されることにより、これに対応する変位センサ27hの検出可能範囲内にストリップSが存在すると判定される。これにより、ストリップSのエッジ部が、変位センサ27hよりもストリップSの幅方向外側のE2の位置に配置されることがわかる。
【0055】
そして、ストリップ検出センサ22gから板有信号が制御入切判定回路33に入力されることにより、制御入切判定回路33は制御回路31の制御を可にすると判定し、その制御可信号が制御回路31に入力される。また、変位センサ23gにより検出されたストリップSの部位までの距離が減算器37に入力される。更に、ライン制御装置2からストリップSの目標位置が加算器36に入力される。
【0056】
一方、ストリップ検出センサ26gから板有信号が補正入切判定回路34に入力されることにより、補正入切判定回路34は目標補正量演算部35の補正演算を可にすると判定し、その補正演算可信号が目標補正量演算部35に入力される。このとき、減算器38によって、変位センサ27hにより検出されたストリップSのエッジ部までの距離と、ライン制御装置2から入力されたエッジ部目標位置と、の差が算出され、この算出された差の値が減算器38から目標補正量演算部35に入力される。次いで、目標補正量演算部35は、入力されたその差の値に応じて、ストリップSのエッジ部がエッジ部目標位置に到達するような目標補正量を演算して、その目標補正量を加算器36に出力する。
【0057】
これにより、加算器36によって、目標補正量演算部35により演算された目標補正量と、ライン制御装置2から入力された目標位置と、の和が算出されて補正された後、減算器37によって、その算出された和の値と、変位センサ23gにより検出されたストリップSの部位までの距離と、の差が算出されて、この算出された差の値が制御回路31に入力される。次いで、制御回路31が減算器37により算出された差の値を駆動回路32に入力して、駆動回路32がその算出された差の値に応じた励磁電流を電磁石24g,25gに流すことにより、電磁石24g,25gは所定の電磁力をストリップSに対して発生させる。
【0058】
この結果、図5に示すように、変位センサ27hによって検出したストリップSのエッジ部までの距離とエッジ部目標位置との偏差から目標補正量を求め、この目標補正量を、その内側で駆動する1組のストリップ検出センサ23g、変位センサ23g、及び、電磁石24g,25gに設定される目標位置に加味することにより、ストリップSのエッジ部が電磁石に対向しなくても、そのエッジ部を目標位置に矯正することができる。これにより、ストリップSの形状を全体として平均化、即ち、フラット状にすることができる。
【0059】
次に、図4に示すように、搬送されたストリップSのエッジ部がE3位置に配置される場合について説明する。
【0060】
ストリップ検出センサ22gによってストリップSが検出されないことにより、これに対応する変位センサ23gの検出可能範囲内にストリップSが存在しないと判定される。これにより、ストリップSのエッジ部が、変位センサ23gよりもストリップSの幅方向内側のE3の位置に配置されることがわかる。
【0061】
そして、ストリップ検出センサ22gから板無信号が制御入切判定回廊33に入力されることにより、制御入切判定回路33は制御回路31の制御を不可にすると判定し、その制御不可信号が制御回路31に入力される。これにより、電磁石24g,25gの駆動は停止される。
【0062】
なお、本実施形態においては、目標位置、中間部目標位置、及び、エッジ部目標位置をライン制御装置2から制御部30に出力するように構成したが、形状矯正・制振装置17に端末機を設け、この端末機から制御部30に対して目標位置、中間部目標位置、及び、エッジ部目標位置を出力するようにしても構わない。
【0063】
従って、本発明に係る形状矯正・制振方法によれば、変位センサ27a〜27によって、搬送されるストリップSにおける電磁石24a〜24g,25a〜25gの電磁力が作用しない中間部及びエッジ部までの距離を検出して、この検出した距離を用いて、その内側において設定される目標位置を補正することにより、搬送されるストリップSに対して、使用するべき変位センサ23a〜23g及び電磁石24a〜24g,25a〜25gの組の最適な選択を行うことができる。これにより、ストリップSの溶接繋ぎ部Swが通過した際に、先行材S1の板幅から後行材S2の板幅に変わったり、急激に蛇行が変化したりしても、その幅方向において細かく広範囲にストリップSの形状を精度良く矯正すると共、その振動を抑制することができる。この結果、ストリップSにおける幅方向のめっき付着量を均一にすることができるので、高品質な溶融金属めっき鋼板を製造することができる。
【0064】
また、ストリップSの溶接繋ぎ部Swの通過後における急激な板幅変更や蛇行の変化に対応することができるので、ストリップ検出センサ22a〜22g,26a〜26h、変位センサ23a〜23g,27a〜27h、及び、電磁石24a〜24g,25a〜25gを移動させるための移動機構等を設ける必要もなく、装置全体の小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、ストリップの高速化を図る溶融金属めっき鋼板の製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る形状矯正・制振装置を備えた溶融金属めっき設備の概略図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る形状矯正・制振装置の正面図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る形状矯正・制振装置の正面図である。
【図4】制御部の構成図である。
【図5】ストリップのエッジ部が形状矯正及び制振される様子を示した図である。
【符号の説明】
【0067】
1 溶融金属めっき設備
2 ライン制御装置
11 めっき浴
12 シンクロール
13,14 サポートロール
15 ワイピングノズル
16,17 形状矯正・制振装置
21 取付台
22a〜22g,26a〜26h ストリップ検出センサ
23a〜23g,27a〜27h 変位センサ
24a〜24g,25a〜25g 電磁石
30 制御部
31 制御回路
32 駆動回路
33 制御入切判定回路
34 補正入切判定回路
35 目標補正量演算部
36 加算器
37,38 減算器
S ストリップ
S1 先行材
S2 後行材
Sw 溶接繋ぎ部
E1,E2,E3 ストリップのエッジ部の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1検出手段により検出した搬送される帯板までの距離に応じて、電磁石への励磁電流を制御し、その電磁力によって、帯板の形状矯正及び制振を行う帯板の形状矯正・制振方法であって、
前記第1距離と前記第1距離に対応する所定の第1目標位置とに基づいて、前記電磁石への励磁電流を制御し、
前記第1検出手段の検出可能範囲内に帯板が存在するときには、前記電磁石への励磁電流を流す一方、前記第1検出手段の検出可能範囲内に帯板が存在しないときには、前記電磁石への励磁電流を流さない
ことを特徴とする帯板の形状矯正・制振方法。
【請求項2】
請求項1に記載の帯板の形状矯正・制振方法において、
前記第1検出手段よりも帯板の幅方向外側で、且つ、前記電磁石と対応しない位置に設けられた第2検出手段によって、帯板までの第2距離を検出し、
前記第2距離と前記第2距離に対応する所定の第2目標位置とに基づいて、前記第1目標位置の補正を行う
ことを特徴とする帯板の形状矯正・制振方法。
【請求項3】
請求項2に記載の帯板の形状矯正・制振方法において、
前記第2検出手段の検出可能範囲内に帯板が存在するときには、前記第1目標位置の補正を行う一方、前記第2検出手段の検出可能範囲内に帯板が存在しないたときには、前記第1目標位置の補正を行わない
ことを特徴とする帯板の形状矯正・制振方法。
【請求項4】
請求項2に記載の帯板の形状矯正・制振方法において、
前記第1目標位置に対する補正量は、当該第1目標位置よりも帯板の幅方向内側において求められた補正量に加味される
ことを特徴とする帯板の形状矯正・制振方法。
【請求項5】
溶融金属めっき浴から連続して引き上げられる帯板に対し、ワイピングガスを吹き付けることにより、帯板の表面に余剰に付着した溶融金属を除去して、帯板を所定のめっき付着量に制御する溶融金属めっき鋼板の製造方法であって、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の帯板の形状矯正・制振方法を用いて溶融金属めっき鋼板を製造する
ことを特徴とする溶融金属めっき鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−179834(P2009−179834A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18506(P2008−18506)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】