説明

帯状ゴム部材の変形矯正方法及び装置

【課題】生タイヤの成型精度等を十分に高めることができる帯状ゴム部材の変形矯正方法及び装置を提供する。
【解決手段】帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中心を示すインジケータを検知する位置検知センサ11と、検知した複数個所のセンタマーク位置から一箇所を基準センタマーク位置とし、帯状ゴム部材Wの変形に起因する基準センタマーク位置に対する他のセンタマーク位置のずれを算出するずれ算出部12と、算出結果に基づき、ずれ量が算出された他のセンタマーク位置をずれ方向とは逆方向にずれ量相当分だけその幅方向に変形させ、変形を矯正してゴム部材の直線性を確保する矯正部13とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押出し工程で押出成形された未加硫の連続ゴム素材を、生タイヤの成型に要する所定の長さ寸法の帯状ゴム部材に切断した状態で、該帯状ゴム部材に発生することのある変形を矯正して、長手方向の直線性を担保する、帯状ゴム部材の変形矯正方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生タイヤの成型工程の前段階では、搬送されるタイヤ構成部材としての未加硫の帯状ゴム部材を搬送路の幅中央部に位置させるように、所定長さの帯状ゴム部材の幅方向両側辺間の中心位置を搬送路の幅方向両側辺間の中央位置に合致させるためのセンタリングを行うことが広く行われている。
この帯状ゴム部材は、通常、未加硫ゴムの押出し工程で長尺部材を連続成形した後、該長尺部材をコンベア搬送しながら所定の長さに切断することにより形成される(特許文献1参照)ものであり、帯状ゴム部材のセンタリングは、例えば、搬送路上の帯状ゴム部材の長手方向に沿う一方の側辺を、搬送路上方に配設され搬送路の縁部に沿って搬送方向と略平行に延在する板体の側面に当接させることにより行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−256781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、帯状ゴム部材のこのようなセンタリングは、帯状ゴム部材の一側辺を板体の側面に当接させることによって行っているため、帯状ゴム部材の幅に寸法誤差がある場合、一方の側辺に折れ曲がり、欠け等が発生した場合等には、帯状ゴム部材の変形の若干の矯正が行われることもあるも、帯状ゴム部材の幅方向両側辺間の中心位置と搬送路の幅方向両側辺間の中央位置とを十分な精度を持って合致させることができないという問題が生じることになる。
【0005】
つまり、タイヤ構成部材としての未加硫の帯状ゴム部材は、センタリング後に、その姿勢を維持した状態で次工程に搬送され、以後、多くは、幅方向両側辺間の中心位置を基準として生タイヤの成型等に供されることになるため、センタリングに際し、帯状ゴム部材の幅方向両側辺間の中心位置が、搬送方向に対して傾斜等することなく搬送路の幅方向両側辺間の中央位置に正確に一致する高いセンタリング精度、変形の矯正精度等が、成型される生タイヤの寸法精度を確保する上で必要となるが、帯状ゴム部材の前記一側辺に幅方向両側辺間の中心位置に対する寸法誤差等が発生したときは、帯状ゴム部材の幅方向両側辺間の中心位置にもまた寸法誤差、変形等が必然的に発生することになるため、帯状ゴム部材の幅方向両側辺間の中心位置を基準とする生タイヤの成型精度の低下が否めなくなる。
【0006】
この発明の目的は、搬送路上の帯状ゴム部材を搬送方向に対し傾斜等させることなく搬送できることはもちろん、帯状ゴム部材の幅方向両側辺間の任意の位置の計測に基づき、帯状ゴム部材に生じている変形を高い精度で矯正することができ、幅方向両側辺間の任意の位置を基準とした生タイヤの成型精度等を十分に高めることができる帯状ゴム部材の変形矯正方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明に係る帯状ゴム部材の変形矯正方法は、帯状ゴム部材の変形を矯正する帯状ゴム部材の変形矯正方法であって、前記ゴム部材を搬送する搬送路上の前記ゴム部材の長手方向の複数個所で、前記ゴム部材に設けた前記ゴム部材の幅方向両側辺間の任意の位置を示すマークを検知する工程と、検知した複数個所のマーク位置から一箇所を選択して、他のマークの幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出するための基準マーク位置とし、前記ゴム部材の長手方向での変形に起因する、前記基準マーク位置に対する他のマーク位置の、前記ゴム部材の幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出する工程と、この算出結果に基づき、前記ずれ量が算出された前記他のマーク位置を、前記ずれ方向とは逆方向にずれ量相当分だけ、前記ゴム部材の幅方向に変形させるセンタリング工程とを有することを特徴とする。
ここで、他のセンタマークがずれているとは、基準センタマークを通る、帯状ゴム部材が搬送される搬送路の幅方向両側辺間の中心を結ぶ線と平行な線(或いは幅方向両側辺間の中心線)の上に、他のセンタマークが位置せず、この平行な線とは異なった位置に他のセンタマークがある場合をいい、センタマークではなく、幅方向両側辺間の任意の位置を知ることができるマークの場合も、同様である。
【0008】
また、この発明の他の態様に係る帯状ゴム部材の変形矯正方法は、前記センタリング工程において、搬送先に搬送方向と交差して設置された当接部材に前記ゴム部材の一側辺を当接させた後、前記ゴム部材は搬送を停止し、前記ゴム部材を幅方向に搬送する搬送路上に前記ゴム部材が位置決めされることを特徴とする。
【0009】
そして、この発明に係る帯状ゴム部材の変形矯正装置は、帯状ゴム部材の変形を矯正する帯状ゴム部材の変形矯正装置であって、前記ゴム部材を搬送する搬送路の下方の、搬送路長手方向の複数個所に間隔をおいて配設されて、前記搬送路の下方から前記ゴム部材に設けた前記ゴム部材の幅方向両側辺間の任意の位置を示すマークを検知する検知手段と、前記検知手段により検知した複数個所のマーク位置から一箇所を選択して基準マーク位置とし、前記ゴム部材の長さ方向での変形に起因する前記基準マーク位置に対する他のマーク位置の、前記ゴム部材の幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出するずれ算出手段と、前記ずれ算出手段による算出結果に基づき、前記ずれ量が算出された前記他のマーク位置を前記ずれ方向とは逆方向にずれ量相当分だけ、前記ゴム部材をその幅方向に変形させ、前記変形を矯正する矯正手段とを具えてなることを特徴とする。
【0010】
また、この発明の他の態様に係る帯状ゴム部材の変形矯正装置は、前記矯正手段が、前記複数の検知手段のそれぞれの検知範囲毎に区画された複数の区画部分からなり、各区画部分を、前記搬送路面に対する上下方向及び載置した前記ゴム部材の幅方向の、それぞれの方向に移動可能とした、前記搬送路に対して出没する部材載置手段と、前記ずれ算出手段による算出結果に基づき、前記ゴム部材を前記搬送路から持ち上げた状態で、前記部材載置手段を、前記ずれ量が算出された前記他のセンタマークの位置を前記ずれ方向とは逆方向に前記ずれ量相当分だけ、前記ゴム部材の幅方向に移動させる移動制御手段とを具えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る帯状ゴム部材の変形矯正方法によれば、帯状ゴム部材を搬送する搬送路上のゴム部材の長手方向の複数個所のそれぞれで、前記ゴム部材に設けた前記ゴム部材の幅方向両側辺間の任意の位置を示すマークを、例えばレーザ変位計をもって検知し、その一箇所を、他のマークの幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出するための基準マーク位置とし、この基準マーク位置に対する他のマーク位置の、前記ゴム部材の長手方向での変形に起因する、前記ゴム部材の幅方向でのずれ方向及びずれ量を算出して、このずれ量が算出された他のマーク位置を、ずれ方向とは逆方向にずれ量相当分だけ、前記ゴム部材の幅方向に変位させて、前記ゴム部材の直線性を確保するセンタリングを行うので、帯状ゴム部材の幅方向両側辺間の任意の位置(例えば、幅方向線上の中心位置)の計測に基づき、帯状ゴム部材に生じている変形を高い精度で矯正することができる。
【0012】
また、この発明の他の態様に係る帯状ゴム部材の変形矯正方法によれば、センタリングを行う際に、搬送先に搬送方向と交差して設置された当接部材に前記ゴム部材の一側辺を当接させた後、前記ゴム部材は搬送を停止し、前記当設部材に並んだ状態で前記ゴム部材を幅方向に搬送する搬送路上に前記ゴム部材が位置決めされるので、押出し工程で押出成形されて長手方向に搬送される未加硫成形部材を所定の長さに切断して形成された帯状ゴム部材の、当接部材に対する傾きを十分に取り除いて、帯状ゴム部材に生じている変形を高い精度で矯正することができる。
【0013】
そして、この発明に係る帯状ゴム部材の変形矯正装置によれば、上述した帯状ゴム部材の変形の矯正を、十分高精度に、しかも、簡易・迅速に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施の形態に係る帯状ゴム部材の変形矯正装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の帯状ゴム部材の変形矯正装置により位置決めされる帯状ゴム部材の幅中心のセンタマークを示す、部材幅方向の断面図である。
【図3】図1の帯状ゴム部材の変形矯正装置の具体的構成を概略的に示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この発明に係る帯状ゴム部材の変形矯正装置10は、タイヤ構成部材である未加硫の帯状ゴム部材Wのセンタマークを検出する複数個の位置検知センサ(検知手段)11(例えば三個のセンサ11a,11b,11c)と、位置検知センサ11の検知情報であるセンタマーク位置情報aに基づき、基準となる位置に対する帯状ゴム部材Wの位置ずれ情報bを算出するずれ算出部(ずれ算出手段)12と、ずれ算出部12の算出結果である位置ずれ情報bに基づき、帯状ゴム部材Wのずれを矯正する矯正部(矯正手段)13とを具えてなる。
なお、位置検知センサ11が検知するマークは、ここでは、帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中心位置を示すセンタマークとしているが、センタマークに限るものではなく、帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の任意の位置、即ち、一方の側辺から両側辺間距離の例えば1/3、1/4となる位置を知ることができるマークであればよい。
【0016】
この帯状ゴム部材の変形矯正装置10は、押出し工程で押出成形された未加硫の連続ゴム素材を、生タイヤの成型に要する所定の長さ寸法の帯状ゴム部材Wに切断した状態で、該帯状ゴム部材Wに発生することのある変形を矯正して、帯状ゴム部材Wの直線性を担保するものであり、帯状ゴム部材Wをその幅方向に搬送する搬送路に設置されている。
ここで、帯状ゴム部材Wに発生する変形とは、帯状ゴム部材Wを搬送する際に、搬送路の幅方向両側辺間の中心から、搬送路上の帯状ゴム部材の長手方向に沿う部材両側辺までの距離が、部材長手方向で異なる、例えば、部材両側辺の部材長手方向における曲がり等が生じた場合を言う。
【0017】
図2に示すように、未加硫の帯状ゴム部材Wは、例えば、トップトレッドとすることができ、押出し工程において押出成形機により長尺に押出し成形された後、長手方向にコンベア搬送されながらタイヤ一本分の所定の長さに切断することにより形成される。帯状ゴム部材Wの、図では下表面となる表面Wa、即ち、トップトレッドのトレッド面には、帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中心(センタマーク)を示すインジケータ14が設けられている。
なお、帯状ゴム部材Wの表面Waは、帯状ゴム部材Wの幅方向(部材幅方向)の断面形状で示される線分が直線となる平面或いは曲線となる曲面の何れでも良い。
【0018】
インジケータ14は、部材幅方向に並設された2本の突条14aの間の溝に、例えば、白色のマーカ14bを印して形成されている。2本の突条14aは、例えば、押出成形機の帯状ゴム部材Wを押し出す口金に溝を設けることで形成することができる。
この帯状ゴム部材Wは、表面Waのインジケータ14が下を向くように、即ち、裏面側を上に向けてコンベア搬送され、搬送路上で上向きとなる、帯状ゴム部材Wの裏面には、帯状ゴム部材Wを接着(例えば、トップトレッドを、ベーストレッド、クッションゴム等のトレッド基材に接着)するためのゴムセメントが塗布されている。
【0019】
コンベア搬送されながらタイヤ一本分の長さに切断されて形成されたこの帯状ゴム部材Wは、切断後、帯状ゴム部材Wを長手方向にコンベア搬送する図示しないローラコンベアに組み込まれたフリーローラ付チェーン15により、搬送方向を帯状ゴム部材Wの幅方向に変換され搬送される。
ここで、ローラコンベアは、回転自在に設置された複数の円筒状ローラを、ローラの回転中心を略等間隔に離間させて相互に平行に並べて形成されており、各円筒状ローラの回転面を搬送物載置面として、載置した搬送物を各円筒状ローラの回転に伴ってローラの回転方向に搬送する。このようなローラコンベアの搬送方向の、帯状ゴム部材Wの所要の長さ範囲をカバーする領域内に、例えば、相互に隣接する円筒状ローラの間に、各円筒状ローラと略平行に、一本ずつのフリーローラ付チェーン15を配設する。
【0020】
各フリーローラ付チェーン15は、チェーン15aと、チェーン15aの各駒の両側面に交互に、所謂千鳥配置された複数のフリーローラ15bとを具えてなり、その搬送面となる上面がローラコンベアの上方位置まで上昇できるように、ローラコンベアに対し上昇下降可能に設置されている。
なおここでは、フリーローラ付チェーン15を昇降変位させることに代えて、ローラコンベアをフリーローラ付チェーン15に対し上昇下降可能に設置して、ローラコンベアの下降変位に基づいてフリーローラ付チェーン15の搬送面となる上面がローラコンベアの上方に位置するようにしても良い。
【0021】
フリーローラ付チェーン15は、その移動方向となるチェーン15aの駒連結方向を帯状ゴム部材Wの幅方向とすると共に、それぞれの上面が同一高さの平坦面になるように配置されており、チェーン駆動用モータ17により駆動される駆動シャフト17aを介して一体的に同期作動させることで、載置された搬送物である帯状ゴム部材Wを、自身の幅方向である駒連結方向に搬送するよう作動する。
ここで、フリーローラ15bは、チェーン15aの各駒の側面に軸支されており、それぞれチェーン15aに対し個別に軸回転する。
【0022】
ローラコンベアにより長手方向にコンベア搬送された帯状ゴム部材Wは、各フリーローラ付チェーン15を、ローラコンベアに対する相対上昇によって上面をローラコンベアの上方に位置させることにより、フリーローラ付チェーン15上に載置された状態でローラコンベアの上方に離脱される。そして、それぞれのフリーローラ付チェーン15と一体的に搬送作動させることにより、帯状ゴム部材Wは、駒連結方向、即ち、自身の幅方向へ搬送される。なお、帯状ゴム部材Wの搬送先、即ち、搬送方向前方には、細長の板(当接手段)16が帯状ゴム部材Wの長手方向への延在姿勢で位置決め配置されている。
【0023】
即ち、板16は、各フリーローラ付チェーン15の上面からなる搬送物載置面の上方に接触することなく、板体平面が帯状ゴム部材Wの搬送方向に対し直交状態に交差するように配置されている。
フリーローラ付チェーン15により搬送された帯状ゴム部材Wは、その一側面が板16の側面に当接することで搬送が阻止される。
【0024】
この板16は、両端近傍の二箇所が、フリーローラ付チェーン15のチェーン延在方向に沿って突出するガイド部材16aに、ガイド部材16aに沿って移動可能に支持されると共に、両ガイド部材16aの内側近傍二個所に螺着するボールネジ18に連結されている。ボールネジ18は、ベルト19を介して、例えば、パルスモータ等の駆動用モータ20に連結されており、駆動用モータ20の作動によりベルト19を介してボールネジ18が軸回転することで、板16は、ガイド部材16aに案内され、ボールネジ18の回転方向に応じチェーン延在方向に沿って進出退避動作する。
【0025】
板16が、チェーン延在方向に沿って進出退避することにより、フリーローラ付チェーン15により搬送される帯状ゴム部材Wの様々な幅方向長さに合わせて、フリーローラ付チェーン15の上方に設置された板16の位置を調整することができる。これによって、板16に一側面を当接させて移動を停止した帯状ゴム部材Wのセンタラインを、帯状ゴム部材Wの幅方向長さが異なっていても、常に、搬送路の幅方向両側辺間の中央に位置させることができるので、例えば、搬送路上の帯状ゴム部材Wをロボットアームにより吊り上げる等の作業を行う場合に、アームの作業中心に帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中心が位置するように正確に位置決めすることができる。
【0026】
帯状ゴム部材Wの搬送先側の側面が板16に当接して、フリーローラ付チェーン15による帯状ゴム部材Wの搬送が停止されるが、停止した帯状ゴム部材Wの一側面全域が板16に当接していない場合、帯状ゴム部材Wの搬送移動時の慣性力によりフリーローラ15bが軸回転することで、未だ当接していない側面部分が板16に当接するように帯状ゴム部材Wの移動が継続され、帯状ゴム部材Wは、一側面全域が板16に当接した状態で移動を停止する。
【0027】
この板16に当接して移動を停止させた帯状ゴム部材Wは、板16に並んだ状態で帯状ゴム部材Wを幅方向に搬送する搬送路上に位置決めされる。これにより、帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中心を搬送路の幅方向両側辺間の中央に位置させるセンタリングが行われる。
センタリング後の帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中心を示すインジケータ14を、帯状ゴム部材Wの搬送路の下方から位置検知センサ11により検知する。
【0028】
位置検知センサ11は、例えば、レーザ変位センサからなり、隣接するフリーローラ付チェーン15の隣接空間下方に、レーザ光源の照射幅が検出対象であるインジケータ14の略全域を覆うように照射方向をフリーローラ付チェーン15に向けて複数個、一例として3個(11a〜11c)、それぞれセンタリングが行われた帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中心線に沿って位置するように、搬送路の長手方向複数個所に離間(例えば、等間隔離間)して配置されている。
【0029】
複数の位置検知センサ11の内、帯状ゴム部材Wの搬送方向後側に位置する位置検知センサは、更に搬送方向後方の複数個所(例えば、5箇所)へと移動可能に設置されている。これにより、長さが異なる帯状ゴム部材Wにも対応することができ、長さが長い帯状ゴム部材Wの場合、その長さに合わせて、搬送方向後側に位置する位置検知センサを更に搬送方向後方に位置させる。
レーザ変位センサからなる位置検知センサ11から出射されたレーザ光は、フリーローラ付チェーン15の下方から矯正部13の後述する載置板21の照射窓21aを通って、フリーローラ付チェーン15に載置されている帯状ゴム部材Wのインジケータ14を照射し、照射光は、インジケータ14からの反射光となって照射窓21aを通り位置検知センサ11に受光される。
【0030】
3個の位置検知センサ11a〜11cのそれぞれは、受光した反射光に基づき、搬送路上の帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中心を示すインジケータ14(図2参照)の位置に関する、各センタマーク位置情報a1〜a3を、ずれ算出部12へ出力する(図1参照)。
各センタマーク位置情報a1〜a3が入力したずれ算出部12は、各センタマーク位置情報a1〜a3に基づき、3個のセンタマーク位置から1つを選んで、他のセンタマーク位置の帯状ゴム部材Wの幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出するための基準センタマーク位置とし、この基準センタマーク位置、例えば、3箇所の検出位置の内の中央のセンタマーク位置に対する、残りの他のセンタマーク位置の帯状ゴム部材Wの幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出する。このずれ方向及びずれ量は、帯状ゴム部材Wの長さ方向での変形に起因するものである。
ここで、基準センタマークを通る、帯状ゴム部材Wが搬送される搬送路の幅方向両側辺間の中心を結ぶ線と平行な線(或いは幅方向両側辺間の中心を結ぶ線)の上に、他のセンタマークが位置せず、この平行な線とは異なった位置に他のセンタマークがある場合、他のセンタマークがずれていると判定する。このずれの判定は、センタマークではなく、幅方向両側辺間の任意の位置を知ることができるマークの場合も、同様である。
【0031】
算出の結果、帯状ゴム部材Wにおける、中央のセンタマーク位置に対する他のセンタマーク位置のずれ方向及びずれ量に関する位置ずれ情報b1,b3を矯正部13へ出力する。ここで、例えば、ずれ方向は、位置検知センサ11から板16へ向かう方向を+、それとは逆の方向を−とし、ずれ量は、板16と直交する方向の距離で表す。
矯正部13は、図1に示すように、帯状ゴム部材Wを載置する載置板(部材載置手段)21と、載置板21の作動を制御する制御部(移動制御手段)22を有しており、制御部22により、検出された帯状ゴム部材Wのずれ方向及びずれ量に対応して変位するように載置板21を制御して、帯状ゴム部材Wの長さ方向での変形に起因する位置ずれを修正し変形を矯正する。
【0032】
載置板21は、チェーン15aと略同じ長さで、隣接するフリーローラ付チェーン15の隣接空間に収納される細長の薄い板体からなり、複数のフリーローラ付チェーン15の各隣接空間に、隣接空間を埋めるように、フリーローラ付チェーン15の移動を妨げることなく配置されている。
この載置板21の内、3箇所に設置された位置検知センサ11a〜11cを覆って上方に位置する3箇所の載置板21のそれぞれには、位置検知センサ11a〜11cからの照射光を通す照射窓21aが開けられている。この照射窓21aは、帯状ゴム部材Wの搬送方向後側に位置する位置検知センサが、更に搬送方向後方へと移動した場合の位置に対応する、搬送方向後方に位置する複数個所(例えば、5箇所)の載置板21にも、開けられている。
【0033】
また、載置板21は、3箇所に設置された位置検知センサ11a〜11cに対応して照射窓21aが開けられたものを含む複数枚(一例として、7枚)が並置された状態で、連結部材21bを介し一体的に連結されている。即ち、連結部材21bにより連結された載置板21の連結体は、複数の位置検知センサ11のそれぞれの検知範囲毎に区画された複数の区画(例えば、3区画)部分からなり、各区画部分を、フリーローラ付チェーン15により形成される搬送路面に対する上下方向、及び載置した帯状ゴム部材Wの幅方向の、それぞれの方向に移動可能に設置されて、搬送路に対して出没する。
【0034】
制御部22は、ずれ算出部12による算出結果に基づいて、帯状ゴム部材Wを載置した載置板21の連結体毎に作動を制御して、帯状ゴム部材Wをフリーローラ付チェーン15により形成される搬送路から持ち上げた状態になるように、載置板21の連結体を上昇させ、上昇した載置板21の連結体の内、中央のセンタマーク位置に対する帯状ゴム部材Wの幅方向におけるずれ方向及びずれ量が算出された他のセンタマーク位置に相当する載置板21の連結体を、ずれ方向とは逆方向にずれ量相当分だけ変位するように、帯状ゴム部材Wの幅方向に変位させる。
【0035】
このように、帯状ゴム部材Wの、中央のセンタマーク位置に対する帯状ゴム部材Wの幅方向におけるずれ方向及びずれ量が算出された他のセンタマーク位置を、ずれ方向とは逆方向にずれ量相当分だけ帯状ゴム部材Wの幅方向に変位させることにより、帯状ゴム部材Wの長さ方向での変形に起因する位置ずれが修正されて、変形を矯正することができ、帯状ゴム部材Wの直線性を確保することができる。
この矯正部13による、未加硫の帯状ゴム部材Wのセンタラインの位置ずれの修正は、具体的には次のようにして行われる。
【0036】
帯状ゴム部材Wをフリーローラ付チェーン15により搬送し、帯状ゴム部材Wの一側辺を板16に当接させてセンタリングした後、3箇所の位置検知センサ11a〜11cにより、インジケータ14を検知する。
検知した結果、例えば、中央のセンタマーク位置情報a2と他のセンタマーク位置情報a1,a3から、中央のセンタマーク位置に対し、一方の側の他のセンタマーク位置が板16に接近する方向に0.7mm(+0.7)ずれており、他方の側の他のセンタマーク位置が板16から離反する方向に0.8mm(−0.8)ずれているとする。
【0037】
ずれ算出部12から、センタマーク位置情報a1〜a3に基づく位置ずれ情報b1,b3が矯正部13に入力すると、制御部22は、位置ずれ情報b1,b3に基づき位置ずれを修正する方向及び量を決定する。つまり、制御部22は、連結部材21bにより連結された載置板21の連結体の、位置検知センサ11aに対応する区画部分を板16から0.7mm離反(−0.7)させる方向に、位置検知センサ11cに対応する区画部分を板16に0.8mm接近(+0.8)させる方向に、それぞれ作動させる制御情報を生成する。
【0038】
そして、帯状ゴム部材Wから、駆動用モータ20を駆動し板16を離反させた後、制御部22は、制御情報に基づき、制御対象となる載置板21の連結体の区画部分をフリーローラ付チェーン15に対し上昇させて、帯状ゴム部材Wをフリーローラ付チェーン15から持ち上げた後、ずれ方向とは逆方向にずれ量相当分移動させる。制御対象となる載置板21の連結体の区画部分がずれ量分移動すると、制御対象となる載置板21の連結体の区画部分に載置された帯状ゴム部材Wは、摩擦力の作用により載置板21の区画部分と一体的に移動し、帯状ゴム部材Wの幅方向に変位させられることになる。
【0039】
この結果、センタリング後の帯状ゴム部材Wに、帯状ゴム部材Wの長さ方向での変形に起因する位置ずれが生じていたとしても、搬送路上の帯状ゴム部材Wを搬送路から持ち上げた状態で、複数個所のインジケータ14のそれぞれを含む区画部分毎に位置ずれが修正されて、変形を矯正することができ、帯状ゴム部材Wの直線性を確保することができる。
このとき、帯状ゴム部材Wの幅中央に形成した突条14aからなるインジケータ14を検出することにより位置ずれを修正するので、例えば、帯状ゴム部材Wに耳部の欠け等があって部材幅が一定でなく対向する側辺が平行でなかったとしても、そのようなばらつきに影響されることなく、帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の中央位置を確実に検出することができる。
【0040】
このように、この発明に係る帯状ゴム部材の変形矯正装置10により、搬送路上の帯状ゴム部材Wのセンタリングに際し、帯状ゴム部材Wが搬送方向に対し傾斜等することなく搬送できることはもちろん、帯状ゴム部材Wの幅方向両側辺間の任意の位置(例えば、中心位置)の計測に基づき、帯状ゴム部材Wに生じている変形を高い精度で矯正することができる。
従って、帯状ゴム部材Wのセンタリング後、センタリング時の姿勢のまま自動搬送されて、次工程で自動成型を行う場合に要求される、帯状ゴム部材W一個毎の高いセンタリング精度を、容易、且つ、確実に確保することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 帯状ゴム部材の変形矯正装置
11,11a〜11c 位置検知センサ
12 ずれ算出部
13 矯正部
14 インジケータ
14a 突条
14b マーカ
15 フリーローラ付チェーン
15a チェーン
15b フリーローラ
16 板
16a ガイド部材
17 チェーン駆動用モータ
17a 駆動シャフト
18 ボールネジ
19 ベルト
20 駆動用モータ
21 載置板
21a 照射窓
21b 連結部材
22 制御部
W 帯状ゴム部材
Wa 表面
a,a1〜a3 センタマーク位置情報
b,b1,b3 位置ずれ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状ゴム部材の変形を矯正する帯状ゴム部材の変形矯正方法であって、
前記ゴム部材を搬送する搬送路上の前記ゴム部材の長手方向の複数個所で、前記ゴム部材に設けた前記ゴム部材の幅方向両側辺間の任意の位置を示すマークを検知する工程と、
検知した複数個所のマーク位置から一箇所を選択して、他のマークの幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出するための基準マーク位置とし、前記ゴム部材の長手方向での変形に起因する、前記基準マーク位置に対する他のマーク位置の、前記ゴム部材の幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出する工程と、
この算出結果に基づき、前記ずれ量が算出された前記他のマーク位置を、前記ずれ方向とは逆方向にずれ量相当分だけ、前記ゴム部材の幅方向に変形させるセンタリング工程と
を有することを特徴とする帯状ゴム部材の変形矯正方法。
【請求項2】
前記センタリング工程において、
搬送先に搬送方向と交差して設置された当接部材に前記ゴム部材の一側辺を当接させた後、前記ゴム部材は搬送を停止し、前記ゴム部材を幅方向に搬送する搬送路上に前記ゴム部材が位置決めされる
ことを特徴とする請求項1に記載の帯状ゴム部材の変形矯正方法。
【請求項3】
帯状ゴム部材の変形を矯正する帯状ゴム部材の変形矯正装置であって、
前記ゴム部材を搬送する搬送路の下方の、搬送路長手方向の複数個所に間隔をおいて配設されて、前記搬送路の下方から前記ゴム部材に設けた前記ゴム部材の幅方向両側辺間の任意の位置を示すマークを検知する検知手段と、
前記検知手段により検知した複数個所のマーク位置から一箇所を選択して基準マーク位置とし、前記ゴム部材の長さ方向での変形に起因する前記基準マーク位置に対する他のマーク位置の、前記ゴム部材の幅方向におけるずれ方向及びずれ量を算出するずれ算出手段と、
前記ずれ算出手段による算出結果に基づき、前記ずれ量が算出された前記他のマーク位置を前記ずれ方向とは逆方向にずれ量相当分だけ、前記ゴム部材をその幅方向に変形させ、前記変形を矯正する矯正手段と
を具えてなることを特徴とする帯状ゴム部材の変形矯正装置。
【請求項4】
前記矯正手段は、
前記複数の検知手段のそれぞれの検知範囲毎に区画された複数の区画部分からなり、各区画部分を、前記搬送路面に対する上下方向及び載置した前記ゴム部材の幅方向の、それぞれの方向に移動可能とした、前記搬送路に対して出没する部材載置手段と、
前記ずれ算出手段による算出結果に基づき、前記ゴム部材を前記搬送路から持ち上げた状態で、前記部材載置手段を、前記ずれ量が算出された前記他のセンタマークの位置を前記ずれ方向とは逆方向に前記ずれ量相当分だけ、前記ゴム部材の幅方向に移動させる移動制御手段と
を具えてなることを特徴とする請求項3に記載の帯状ゴム部材の変形矯正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71256(P2013−71256A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209646(P2011−209646)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】