説明

帯電ローラ及び電子写真装置

【課題】アモルファスシリコン感光体や薄膜有機感光体を使用した電子写真プロセスにおいてローラ帯電方式を採用すると、帯電するのに大きな電流が必要となる。帯電ローラに大きな電流が流れると、帯電ローラの高抵抗化(通電劣化)が進行しやすくなり、長寿命化が達成できない。したがって、大電流を通電しても通電劣化が生じない帯電ローラを提供する。
【解決手段】帯電ローラは、導電性支持体の上に導電性粒子を含有する導電層を有し、該導電層の23℃における水素核スピン−スピン緩和時間T2(μs)が20<T2<300であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にレーザープリンター、複写機等の電子写真装置に用いられる帯電ローラ及び、該帯電ローラを有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置内部には画像形成部が設置されており、記録画像はクリーニング、帯電、潜像、現像、転写、定着プロセスを経て形成される。画像形成部は、電子写真感光体である感光ドラムを備えており、クリーニング部、帯電部、潜像形成部、現像部及び転写部を備えている。この画像形成部で形成された感光ドラム上の画像は転写部で記録材に転写され、定着部に搬送された後に定着部にて加熱及び加圧され、記録材に定着された記録画像として出力される。
【0003】
次に、帯電、潜像形成、現像、転写プロセスについて説明する。
【0004】
帯電部では、帯電ローラにより感光体の表面に、所定の極性で、電位が一様になるように一次帯電を行う。次に、目的画像情報の露光を受けることで、感光体表面に目的画像に対応した静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像部にて現像部材よりトナー画像として可視化される。可視化されたトナー画像は、転写部において転写部材よって感光体表面から記録材に転写される。転写された未定着のトナー画像は、定着部に搬送されて、定着部で定着されて記録画像として出力される。
【0005】
電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に用いられる帯電方式として、コロナ帯電方式とローラ帯電方式がある。コロナ帯電方式はコロナワイヤーなどに電圧を印加して、帯電生成物を形成し、感光体表面を帯電生成物によって帯電させる帯電方法である。一方、ローラ帯電方式は、帯電ローラを感光体に接触もしくは近接(帯電ローラと感光体間距離が数十μm)させて、感光体表面を放電によって帯電させる帯電方法である。
【0006】
ローラ帯電方式は、コロナ帯電方式に比べて発生するオゾンや放電生成物の量が圧倒的に少ない。よって、ローラ帯電方式を用いることで、オゾンフィルターをつけるスペースを削減することや、放電生成物による画像ボケ等を軽減させることが可能である。
【0007】
ローラ帯電方式は、直流電流(DC)に交流電流(AC)を重畳したAC+DC帯電と、DCのみのDC帯電に分別される。DC帯電は小型化、ローコストを達成するには好適な技術であるが、感光体のドラム電位を一定にする帯電バイアス域が狭く、ローラ抵抗の周ムラや汚れによる微小な抵抗ムラ、ローラの不均一性による帯電不均一性など、画質安定性を達成するのが技術的に難しい。これが印刷速度50枚機以上、メンテナンス間隔が25万枚以上の高速長寿命なオフィス用複写機になると、DC帯電方式では画質の維持がさらに困難となるため、AC+DC帯電方式が好適である。
【0008】
しかし、AC+DC帯電方式によるローラ帯電における課題としては、帯電ローラの通電劣化が挙げられる。通電劣化とは、帯電ローラに電流を流すことにより、ローラ抵抗が変化してしまうことをいう。ローラ抵抗が変化してしまうと、帯電ローラが感光体に所望のドラム電位を与えることができなくなる。一般的には、通電劣化が生じるとローラ抵抗は上昇してしまうため、ドラム電位が低下してしまうことになる。通電劣化を解決するための検討として、特許文献1〜3に関連技術が報告されている。
【0009】
近年、電子写真装置には高画質、長寿命化が要求されつつある。
【0010】
高画質化を満たすための電子写真感光体からのアプローチとしては、例えば以下の2つを挙げることができる。(1)電子写真感光体の薄膜化により電子写真感光体の静電容量を増加させて潜像のコントラストをより鮮明にする方法。(2)短波長のレーザー(特に380〜500nm)対応の電子写真感光体を採用する方法。
【0011】
また、長寿命化を満たすための電子写真感光体からのアプローチとしては、例えば以下の2つの方法が挙げられる。(1)珪素原子を母体とする非結晶材料で構成された感光体、例えばアモルファスシリコン感光体を用いる方法。(2)感光層を保護する表面保護層を設ける方法。
【特許文献1】特登録03018906
【特許文献2】特登録03638008
【特許文献3】特開2000−003086
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、アモルファスシリコン感光体や薄膜有機感光体を使用した電子写真プロセスにおいてローラ帯電方式を採用すると、感光体の静電容量が大きいため、帯電するのに大電流が必要となる。帯電ローラに大電流が流れると、帯電ローラの高抵抗化(通電劣化)が進行しやすくなり、長寿命化が達成できない。したがって、帯電ローラの大電流通電条件(例えば、直流電流0.2mA以上かつ交流電流2mA以上)における通電劣化対策が重要な課題となっている。
【0013】
特許文献1〜3には、通電前後の抵抗変化が小さい帯電ローラに関する発明が記載されているが、これらの特許文献に記載される通電条件は低電流であるため、本発明の課題を解決する手段にはならない。
【0014】
したがって、本発明は、大電流を通電しても通電劣化が生じない帯電ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、通電劣化が生じる原因は、大電流を流したときに発生するジュール熱によって導電層を形成するベースポリマーや導電性粒子等の分子運動が活性化され、この分子運動によって導電層中における導電性粒子の分散状態が変化するためであることを発見した。そこで、分子運動の指標である水素核スピン−スピン緩和時間T2を特定の範囲とすることで、通電劣化を抑制できることが判明した。
【0016】
すなわち、本発明に係る帯電ローラは、導電性支持体の上に導電性粒子を含有する導電層を有する帯電ローラであって、該導電層の23℃における水素核スピン−スピン緩和時間T2が20μs<T2<300μsであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る電子写真装置は、前記帯電ローラを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る帯電ローラは、大電流を流してもローラ抵抗が変化せず、通電劣化を生じない。したがって本発明に係る帯電ローラは、大電流通電条件が必要なアモルファスシリコン感光体や薄膜有機感光体等を搭載する電子写真装置において、通電劣化という問題を生ずることなく使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らは鋭意検討したところ、以下に述べるように、大電流通電条件における通電劣化を解決する手段として、導電性粒子を含有し低分子運動性の導電層を有する帯電ローラが必須であることが明らかになった。
【0020】
通電劣化メカニズムを検討した結果、大電流通電条件における通電劣化の原因は、導電性粒子の分散状態の変化にあることが判明した。すなわち、大電流を帯電ローラに通電することにより発生するジュール熱によって導電層を形成するベースポリマー(高分子、ゴム等)の分子運動が活性化され、この分子運動によって導電層中に分散する導電性粒子の分散状態が通電前後において変化する。そのために、ローラ抵抗が変化してしまうことが判った。このメカニズムから、通電劣化を抑制する材料的対策として、以下の二つが非常に効果的であることが判明した。
(1)低分子運動性の材料からなる導電層とすること。
(2)導電性粒子としては分子の熱運動の影響を受け難い比較的大きな粒径のものを使用すること。
【0021】
まず(1)の条件について検討した。
【0022】
ここで、低分子運動性の材料とは、熱運動の小さい分子からなる材料(高分子、樹脂またはゴム)を意味する。なお、導電層の抵抗値としては、例えば104Ω〜107Ωを選択することができる。
【0023】
ここで、分子運動性はパルスNMRの水素核スピン−スピン緩和時間(T2)によってあらわすことができる。これはプロトンの核磁気共鳴法で分析して得られるFID(Free Induction Decay:自由誘導減衰)強度曲線あるいはエコー強度の減衰曲線から得られる水素核スピン−スピン緩和時間(T2)の平均値である。導電層のT2を測定すると、ベースポリマーに由来するT2成分だけでなく、導電層中に含有される成分(カーボンブラック等の添加剤)に由来するT2成分も観測される。それら観測された成分を平均したものを導電層のT2として分子運動性の指標として用いた。T2が小さいと導電層の分子運動性が小さく、T2が大きいと分子運動性が大きいことを示す。
【0024】
そこで、本発明者らは分子運動性を示すT2と導電層の関係について検討したところ、導電層のT2が所定の範囲にある場合、大電流を流しても、ローラ抵抗値の変化がなく、通電劣化が生じないことを見出した。
【0025】
したがって、本発明に係る帯電ローラは、導電性支持体上に導電性粒子を含有する導電層を有する帯電ローラであって、該導電層の23℃における水素核スピン−スピン緩和時間T2が20μs<T2<300μsであることを特徴とする帯電ローラである。
【0026】
前記導電層は、23℃におけるT2(μs)が20超300未満の範囲にあることを特徴とする。20以下では、導電層が硬くなりすぎて、帯電ローラとして適さない。また、T2が300以上では、導電層に大電流が流れた時に生じるジュール熱で起こる分子の動きにより、導電層内部に存在する導電性粒子の分散状態が変化してしまう。このような導電性粒子の分散状態の変化が大電流通電条件における通電劣化の原因である。すなわち、23℃におけるT2(μs)が20超300未満である導電層は、大電流が流れても導電性粒子の分散状態を維持でき、大電流通電によりローラ抵抗が変化しにくい。
【0027】
なお、T2(μs)の測定温度に関しては、温度が変化するとT2(μs)の値も変化するため、23℃と規定した。この温度は標準的な室温であり、この温度において帯電ローラ、帯電ローラを搭載したカートリッジ又は電子写真装置が最も使用されると考えられる。また、T2(μs)の大小関係は、別の温度でも変わらないことを確認している。
【0028】
前記導電層を構成するベースポリマーとしては、23℃における導電層のT2(μs)が20超300未満の範囲とすることができる材料であれば特に限定されない。通常、ブタジエンゴム、スチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリン系ゴム等を使用することが可能である。これらのうち、本発明では、特にアクリロニトリル含有率が25%超49%未満のアクリルニトリル−ブタジエンゴム(以下、NBRと略す)が好ましく挙げられる。ニトリル基は分子運動性を下げる効果があり、NBR中のアクリロニトリル含有率が増えると、導電層のT2(μs)が下がる。この現象について確認したところ、NBR中のアクリロニトリル含有率が49%以上になると、導電層のT2(μs)が20以下になってしまう場合があり、導電層が硬くなりやすい。導電層が硬くなると、加硫時、研磨時又はUV処理等の工程において導電層に亀裂等の不良が発生しやすくなる。亀裂が発生する原因は不明であるが、導電層が硬くなりすぎると、外部応力や導電層の収縮等の内部応力によって、導電層にひび割れが入ってしまうものと考えられる。一方、NBRのアクリロニトリル含有率が25%以下であると、T2(μs)が300以上になってしまい、導電層に大電流が流れた時に起こる分子の動きにより、導電層内部に存在する導電性粒子の分散状態が変化してしまう。なお、NBR中のアクリロニトリル含有率(%)とは、アクリロニトリルとブタジエンを重合してNBRを合成する場合におけるアクリロニトリルの質量%を指す。例えば、アクリロニトリルの含有率が25%のNBRとは、アクリロニトリル25質量%とブタジエン75質量%を重合したものをいう。
【0029】
次に、上記(2)の条件について検討した。
【0030】
導電性粒子は、本発明の導電層が好適な導電性を発現するために用いられるもので、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料、アルミニウム、マグネシウム等の金属粉、金属繊維等の金属材料、表面処理された金属酸化物粉等が挙げられる。これらのうち、材料コストや分散性を考慮すると、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックとして、材料コストや分散性の観点から、MTカーボンが特に好ましい。また、本発明では、異なる種類の導電性粒子を併用することができる。
【0031】
前記導電性粒子の平均粒径(電子顕微鏡による算術平均粒子径)(以下、平均粒径と略す)は、特に制限されるものではないが、通電劣化を防止するという観点から、75nm超300nm未満であることが好ましく、80nm以上230nm以下であることがより好ましい。比較的大きい粒径の導電性粒子は、ベースポリマーの分子運動の影響によって分散状態が変化し難い。そのため、比較的大きい平均粒径(75nm超)の導電性粒子を導電性付与剤として用いることで、大電流通電条件での導電層の分子運動で起こる導電性粒子の分散状態の変化を抑制することができ、帯電ローラの通電劣化を防止することができる。一方、平均粒径が75nm以下の導電性粒子の場合、ベースポリマーの分子運動の影響を受けやすく、分散状態の変化によって導電性の高い粒子による導電パスを補強する効果が低減する可能性がある。さらに、平均粒径が300nm以上の導電性粒子の場合、導電層の表面近傍にこのような大粒径の導電性粒子が存在すると、感光体ドラムの微小な傷に対してリークしやすくなるという弊害が生じる場合がある。したがって、平均粒径が75nm超300nm未満の導電性粒子は、分散状態の変化を起こしにくく、導電パスを補強する効果を示し、かつ、感光体ドラムリークを起こしくいため、導電性を付与する材料として好適である。
【0032】
前記導電性粒子の配合量としては、ベースポリマー100質量部に対して、20質量部以上100質量部以下が好ましく、40質量部以上60質量部以下がより好ましい。20質量部未満では導電パスを補強する効果が低減する場合がある。100質量部超では、導電パスを補強する効果は得られるが、導電層が硬くなりすぎて亀裂発生等の不良が発生しやすくなる場合がある。
【0033】
また、導電性粒子としては導電性の高いものが好ましく、特に好適に使用されるカーボンブラックとしては、例えば、窒素吸着比表面積(N2SA)やDBP(ジブチルフタレイト)吸油量の大きなカーボンブラック等が挙げられる。さらに、平均粒径が75nm超300nm未満の粒径を有するカーボンブラックとしては、例えば、MTカーボンやFTカーボンが挙げられる。
【0034】
また、本発明の帯電ローラには、上記のベースポリマー、導電性粒子の他に、充填剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等を、任意に添加することができる。
【0035】
本発明の帯電ローラの製造方法について説明する。
【0036】
帯電ローラの製造工程は、混練工程、成形工程及び研磨工程に分けられる。
【0037】
混練工程では、例えば、前記ベースポリマー、前記導電性粒子、加硫助剤、可塑剤、充填剤等を加圧ニーダーで混練し、その後、ロール混練機で加硫剤、加硫促進剤等を混練する。
【0038】
成形工程では、混錬工程で製造された混合物を一軸スクリュー押出し機でロール状に押出し、加硫缶で加硫し、接着剤を塗布した導電性支持体(芯金)に圧入する。または、押出物を芯金に直接コートし、熱風炉で加硫することもできる。ここで、導電層の熱処理は、140℃〜170℃、50分〜130分が好ましい。
【0039】
研磨工程では、成形工程で得られた未研磨の導電層の表面を研磨し、本発明に係る帯電ローラを製造する。研磨方法としては、以下の方法を挙げることができる。(1)帯電ローラの長さ(長手幅)と同サイズの砥石を用いて長手方向を一度に研磨する方法。(2)薄型の砥石を長手方向にトラバースさせながら研磨する方法。
【0040】
本発明の帯電ローラは、発明の効果を損なわない範囲で、表面層を設けることができる。例えば、紫外光や電子線で硬化する樹脂を表面に塗布し光硬化させることで、表面の摩擦係数や撥水性、撥油性等を制御することができ、帯電ローラを汚染から防ぐことができる。また、紫外光照射、電子線照射等により表面改質を行うことも可能である。ここで、紫外光照射による表面処理(UV処理)としては、例えば、200〜450nmの波長の光を導電層表面に均一に照射することができる。UV処理時間は1〜30分程度行えばよい。紫外光照射は導電層表面に均一に照射させることが好ましく、例えば、紫外光の光源に対して導電層を回転させるか、導電層をコンベアーで送りながら上下方向から紫外光を照射するなどの方法を用いることができる。この時、UV処理により導電層の表面部分のT2値が変わることがある。この場合、本発明に係るT2としては、UV処理の影響を受けていない導電層内部のT2を測定することになる。
【0041】
次に、本発明の帯電ローラを用いた電子写真装置の例について説明する。また、図5に、本発明に係る帯電ローラ1を組み込んだ電子写真装置の一例になる概略構成を示す。
【0042】
図5において、符号6は電子写真感光体であり、所定の周速度で回転駆動される。感光体6は、回転過程において、帯電ローラ1により、その周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いでスリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段8からの画像露光光を受ける。こうして感光体6の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0043】
形成された静電潜像は、次いで現像手段9によりトナー現像され、現像されたトナー像は、不図示の給紙部から、感光体6と転写手段10との間に感光体6の回転と同期取りされて給紙された転写材Pに、転写手段10により順次転写されていく。
【0044】
像転写を受けた転写材Pは、感光体面から分離されて定着手段12へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0045】
像転写後の感光体6の表面は、クリーニング手段11によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0046】
上述の感光体6、帯電ローラ1、現像手段9およびクリーニング手段11などの構成要素のうち、複数のものを一体に結合して構成し、複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジとしてもよい。たとえば、現像手段9およびクリーニング手段11を感光体6および帯電ローラ1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレールなどの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジとすることができる。
【0047】
また、画像露光光は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、以下のようなものである。(1)原稿からの反射光や透過光。(2)センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光。
【0048】
本発明に係る電子写真装置は、上述のように、以下の構成要素を具備する。
(1)電子写真感光体。(2)電子写真感光体の表面を本発明に係る帯電ローラにより帯電する帯電手段。(3)電子写真感光体を露光して潜像を形成する潜像形成手段。(4)トナーを感光体上に供給する現像手段。(5)感光体上のトナー像を被転写体に転写する転写手段。(6)感光体上の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段。(7)トナー像が形成された被転写体を定着する手段。
【0049】
電子写真感光体としては、以下の二種類の感光体を採用するのが望ましい。
(1)珪素原子を主成分とする非晶質材料で形成した光導電層有する電子写真感光体
(2)表面保護層と感光層の合計の層厚が20μm以下の有機感光体
上記(1)としては、例えばアルミニウム(Al)、ステンレスなどの導電性材料からなる基体上に、光導電層および表面保護層を順次積層したものである。なお、これら層の他に、阻止層、反射防止層ないし界面層などの種々の機能層を必要に応じて設けてもよい。例えば、阻止層、界面層などを設けそのドーパントをIII族元素、V族元素など選択することにより、正帯電、負帯電といった帯電極性の制御も可能となる。本発明に係る電子写真装置においては、帯電性生成物による画像ボケ等の画像不良の観点から、正帯電性のシリコンドラムが望ましい。
【0050】
基体形状は電子写真感光体の駆動方式などに応じた所望のものとしてよい。基体材質としては上記Alやステンレスのような導電性材料が一般的であるが、例えば各種のプラスチックやセラミックスなど、特には導電性を有しないものにこれら導電性材料を蒸着するなどして導電性を付与したものも用いることができる。
【0051】
光導電層としては、シリコン原子が水素原子およびハロゲン原子を含む非晶質材料(「a―Si(H,X)」と略記する)が挙げられる。また、光導電層の層厚としては特に限定はないが、製造コストなどを考慮すると、15〜50μm程度が適当である。さらに、特性を向上させるために下部光導電層と上部光導電層のように複数の層構成にしてもよい。特に、半導体レーザーのように、比較的長い波長であって且つ波長バラツキのほとんどない光源に対しては、こうした層構成の工夫によって画期的な効果が現れる。
【0052】
表面保護層は、一般的にa―SiC(H,X)で形成されるが、a―C(H,X)としてもよい。また、光導電層と表面保護層の界面組成を連続的に変化させ、当該部分の界面反射を抑制させるように制御することが好ましい。
【0053】
上記(2)としては、例えばAl、ステンレスなどの導電性材料からなる基体上に導電性層、中間層、感光層、表面保護層をこの順に設けてなる電子写真感光体である。
【0054】
導電性層の結着樹脂としては、熱硬化性フェノール樹脂が好ましい。
【0055】
中間層としては、導電性層から感光層への電荷注入を阻止するために、中間層の体積抵抗率を1×109〜1×1013Ω・cmに設定することが好ましい。非結晶性の共重合性ナイロンなどが好ましい。中間層の膜厚は0.1〜2μmであることが好ましい。
【0056】
感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型感光層であってもよい。電子写真特性の観点から積層型感光層の方が好ましい。また、積層型感光層には支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層と、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層があるが、電子写真特性の観点から順層型感光層が好ましい。感光層の膜厚は、15μm以下であることが望ましい。
【0057】
表面保護層としては、不飽和二重結合を有する連鎖重合性化合物を、感光層上に塗布後硬化することで形成される。連鎖重合性化合物は熱でも硬化反応を行うこともできるが、紫外線あるいは電子線などを使用して硬化することも可能である。保護層の膜厚は1〜5μmであること望ましい。
【0058】
潜像形成手段としては、半導体レーザーを用いたレーザー露光装置を採用するのが好ましい。また、潜像形成方式については、例えば、アモルファスシリコン感光体を用いる場合にはバックスキャン方式を、薄膜有機感光体を用いる場合にはイメージスキャン方式を採用するのが好ましい。
【0059】
現像手段としては、アモルファスシリコン感光体の場合は、現像キャリアを用いた2成分現像方式を用いるのが好ましい。
【0060】
トナーはスチレン共重合体、エステルワックスを含有する粉砕トナーで負帯電性である。また、外添剤としては酸化チタン、シリカ、チタン酸ストロンチウムを用いるのが好ましい。
【0061】
キャリアとしては、磁性分散型キャリア粒子を用いるのが望ましい。現像方式に関しては、アモルファスシリコン感光体を用いた電子写真装置の場合は、正帯電感光体と負帯電性トナーを用いた正規現像方式を、薄膜有機感光体の電子写真装置の場合は、現像キャリアを用いた2成分現像方式を採用するのが好ましい。
【0062】
トナーは、結着樹脂、着色剤、そして、必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子と、コロイダルシリカ微粉末のような外添剤が外添されている着色粒子とを有している。そして、トナーは、負帯電性のポリエテスル系樹脂であり、重量平均粒子径(D4)は5μm以上かつ8μm以下が好ましい。
【0063】
キャリアは、例えば表面酸化或は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金、或は酸化物フェライトなどが好適に使用可能であり、これらの磁性粒子の製造法は特に制限されない。そして、キャリアは、重量平均粒子径(D4)が20〜50μm、好ましくは30〜40μmであり、抵抗率が107Ωcm以上、好ましくは108Ωcm以上である。
【0064】
本発明における薄膜有機感光体を用いた電子写真装置の現像方式は、負帯電感光体と負帯電性トナーを用いた正規現像方式である。転写手段としては、転写ローラを用いて被転写体(紙・OHP等のメディア)に直接転写する転写手段か、または転写ベルト等の中間転写体に一次転写する転写手段を用いるのが好ましい。
【0065】
クリーニング手段としては、ブレード状の部材によるブレードクリーニングや、ブラシ状の部材によるブラシクリーニング、その両方を用いる方法を用いるのが好ましい。
【0066】
帯電ローラとしては、導電層を形成するベースポリマーが少なくともアクリルニトリル−ブタジエンゴムで構成され、かつ、そのアクリロニトリル含有率が34%超49%未満である電子ローラが好ましい。電子写真装置の使用環境が高温高湿環境となった場合、通常の環境に比べて帯電ローラの通電劣化はより厳しくなる。したがって、帯電ローラの導電層の分子運動性はより低い方が好ましく、アクリロニトリル含有率が34%超49%未満であることが望ましい。
【実施例】
【0067】
以下に本発明を製造例と実施例に沿って説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0068】
「実施例1」
(帯電ローラの作製)
下記の各材料を混合し、加圧ニーダーで30分混練した(表1参照)。
・アクリルニトリル−ブタジエンゴム(JSR社製:商品名「N215SL」、結合アクリロニトリル48%)(以下、NBR1と略す):100質量部。
・亜鉛華:5質量部。
・ステアリン酸亜鉛:1質量部。
・可塑剤:10質量部。
・炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製:商品名「ナノックス#30」):20質量部。
・カーボンブラック1(ケッチェンブラックインターナショナル社製:商品名「ケッチェンブラックEC600JD」、平均粒径40nm):4質量部。
・カーボンブラック2(旭カーボン株式会社製:商品名「アサヒサーマル」、平均粒径80nm):40質量部。
【0069】
その後、硫黄2質量部と加硫促進剤TMTM(大内新興化学工業株式会社製、テトラチウラムモノスルフィド)2質量部を加え、更に15分間オープンロールで混練した。このゴム混合物をゴム押し出し機で、円筒形に押し出し、長さ400mmに裁断し、加硫缶を使用して160℃で40分間一次加硫し、導電層の一次加硫チューブを得た。
【0070】
次に、SUS製導電性支持体(図1(A))の表面に熱硬化性接着剤を塗布し、それを得られた一次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンを用いて160℃で1時間、二次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨の導電層を導電性支持体上に形成した。この未研磨の導電層の長さが320mmとなるようにその両端部を切断した後、導電層表面を回転砥石で研磨した。次いで、研磨後の導電層の表面に、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング製)を用いて紫外線を5分間照射して、UV処理(紫外線積算光量:約6000mJ/cm2)した。なお、この低圧水銀ランプは主に254nmの波長の紫外線を発するものである。以上のようにして実施例1の帯電ローラを得た(図1(B))。なお、図1には、実施形態の一例として寸法を記載したが、特に限定されるものではない。
【0071】
完成した帯電ローラの表面を目視で、亀裂の有無を評価した。亀裂を目視で確認できない場合は○、亀裂を目視で確認できる場合は×とした。亀裂の評価において×となった帯電ローラに関しては、その後の評価を行わなかった。実施例1の帯電ローラにおける亀裂の評価は○であった。
【0072】
「実施例2」
カーボンブラック処方をカーボンブラック1とカーボンブラック3(Cancarb社製、N990、平均粒径230nm)の混合系に変えて、配合量をそれぞれ3.4質量部、40質量部に変えた(表1参照)。それ以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0073】
「実施例3」
カーボンブラック処方をカーボンブラック1のみとし、その配合量を4.5質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0074】
「実施例4」
NBR1をアクリルニトリル−ブタジエンゴム(JSR社製:商品名「N232S」、結合アクリロニトリル35%)(以下、NBR2と略す)に変えて、カーボンブラック配合量をそれぞれ2.8質量部、60質量部に変えた(表1参照)。それ以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0075】
「実施例5」
NBR1をNBR2に、カーボンブラック処方をカーボンブラック1とカーボンブラック3の混合系に変えて、カーボンブラック配合量をそれぞれ2.2質量部、60質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0076】
「実施例6」
NBR1をNBR2に、カーボンブラック処方をカーボンブラック1のみとし、その配合量を4.6質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0077】
「実施例7」
NBR1をアクリルニトリル−ブタジエンゴム(JSR社製:商品名「N240S」、結合アクリロニトリル26%)(以下、NBR3と略す)に変えて、カーボンブラックの配合量をそれぞれ3.8質量部、40質量部に変えた(表1参照)。それ以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0078】
「実施例8」
NBR1をNBR3に、カーボンブラック処方をカーボンブラック1とカーボンブラック3の混合系に変えて、カーボンブラック配合量をそれぞれ3.2質量部、40質量部に変えた(表1参照)。それ以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0079】
「実施例9」
NBR1をNBR3に、カーボンブラック処方をカーボンブラック1のみとし、その配合量を4.6質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0080】
「比較例1」
NBR1をアクリルニトリル−ブタジエンゴム(JSR社製:商品名「N640」、結合アクリロニトリル25%)(以下、NBR5と略す)に変えて、カーボンブラックの配合量をそれぞれ3.4質量部、40質量部に変えた(表1参照)。それ以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0081】
「比較例2」
NBR1をNBR5に、カーボンブラック処方をカーボンブラック1とカーボンブラック3の混合系に変えて、カーボンブラック配合量をそれぞれ3.6質量部、40質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0082】
「比較例3」
NBR1をNBR5に、カーボンブラック処方をカーボンブラック1のみとし、その配合量を4.3質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0083】
「比較例4」
NBR1をヒドリン(ダイソー社製:商品名「エピクロマーCG102」)に変えて、カーボンブラック配合量をそれぞれ1.4質量部、40質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0084】
「比較例5」
NBR1をヒドリンに、カーボンブラック処方をカーボンブラック1とカーボンブラック3の混合系に変えて、カーボンブラック配合量をそれぞれ0.9質量部、40質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0085】
「比較例6」
NBR1をヒドリンに、カーボンブラック処方をカーボンブラック1のみとし、その配合量を2.5質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は○であった。
【0086】
「比較例7」
NBR1をアクリルニトリル−ブタジエンゴム(日本ゼオン社製:商品名「NipolDN003」、結合アクリロニトリル50%)(以下、NBR4と略す)に変えて、カーボンブラックの配合量をそれぞれ3.5質量部、40質量部に変えた(表1参照)。それ以外は、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は×であった。
【0087】
「比較例8」
NBR1をNBR4に、カーボンブラック処方をカーボンブラック1とカーボンブラック3の混合系に変えて、カーボンブラック配合量をそれぞれ3.8質量部、40質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は×であった。
【0088】
「比較例9」
NBR1をNBR4に、カーボンブラック処方をカーボンブラック1のみとし、その配合量を4.1質量部に変えた以外は(表1参照)、実施例1と同様の方法で、帯電ローラを作製した。亀裂の評価は×であった。
【0089】
【表1】

NBR1:JSR社製N215SL(結合アクリロニトリル48%)、
NBR2:JSR社製N232S(結合アクリロニトリル35%)、
NBR3:JSR社製N240S(結合アクリロニトリル26%)、
NBR4:日本ゼオン社製NipolDN003(結合アクリロニトリル50%)、
NBR5:JSR社製N640(結合アクリロニトリル25%)、
ヒドリン:ダイソー社製エピクロマーCG102、
カーボンブラック1:ケッチェンブラックEC600JD(平均粒径40nm)、
カーボンブラック2:アサヒサーマル(平均粒径80nm)、
カーボンブラック3:MTカーボンN990(平均粒径230nm)。
【0090】
(T2の測定)
2の測定には、実施例1乃至9、比較例1乃至6で作製した帯電ローラの導電層を削り取ったもの(UV処理した表面を除く)を試料として供した。測定装置は日本電子株式会社製(商品名:MU25A)パルスNMR装置を用いた。T2の値は、パルスNMR測定により水素核を測定核とし、ソリッドエコー法を用いて得られたエコー強度Sから求める。測定条件は、測定周波数20MHz、90°パルス幅(Pw1)2.0μsec、パルス間隔(Pi1)=12μsec、温度23℃とし、ソリッドエコー法(90°xτ90°y)を用いた。観測されたエコー強度Sから最小2乗法によりT2を求める。観測されるエコー強度Sは次式(1)で与えられる。
【0091】
S(t)= Σ S0iexp(−t/T2i) (1)
ここで、tは時間(τ)、S0iは各i成分のt=0におけるエコー強度、またT2iは各i成分のT2を表し、Σはiについての合計を表す。例えば、i成分の数が3であった場合、エコー強度Sは次式(2)で与えられる。
【0092】
S(t)= S0Sexp(−t/T2S)+S0Mexp(−t/T2M)+S0Lexp(−t/T2L) (2)
各成分S、M、Lの関係は、T2S<T2M<T2Lであり、また、導電層中における各成分の分率がS0S、S0M、S0Lの比で与えられる。従って、導電層のT2の平均値は、次式(3)で与えられる。
【0093】
2= (S0S×T2S+S0M×T2M+S0L×T2L)/ ΣS0 (3)
(ΣS0=S0S+S0M+S0L
成分iの数については、導電層に含有されるベースポリマーや添加物(カーボンブラック等)の種類や添加量によって異なる。本実施例においては、成分iの数は、2または3であった。
【0094】
実施例1乃至9、比較例1乃至6で作製した帯電ローラの導電層についてT2を測定した結果を表2に示す。
【0095】
(通電劣化指数の測定)
図2に示す装置に、実施例1乃至9、比較例1乃至6で作製した帯電ローラを取り付け、室温低湿環境(N/L:23℃/5%RH)において通電劣化加速試験を行い、通電劣化指数を求めた。図2に示す装置は、帯電ローラ1をアルミドラム2に当接し、帯電バイアス電源3から直流+交流電流を供給しながら、ドラム駆動モーター4でアルミドラムを駆動させて、バネ加圧5で固定した帯電ローラを回転させる装置である。
【0096】
通電条件としては、直流電流290μA、交流総電流3.3mA、8時間/1日で3日間通電させた。
【0097】
帯電ローラの電気抵抗値を、以下の7回測定し、時間毎にプロットした電気抵抗値を図3に示した。
(1)1日目通電前、(2)1日目8時間通電後(8時間後)、(3)2日目通電前(8時間朝)、(4)2日目8時間通電後(16時間後)、(5)3日目通電前(16時間朝)、(6)3日目8時間通電後(24時間後)、(7)4日目朝(24時間朝)。尚、8時間後と8時間朝、16時間後と16時間朝、24時間後と24時間朝に関しては、それぞれ8、16、24の同時間にプロットした。また、次式(4)を用いてフィッティングした(図3)。
【0098】
R(電気抵抗値:Ω)=R0×exp(0.0001×A×T) (4)
〔R(電気抵抗測定値:Ω)、R0(初期電気抵抗値:Ω)、A(通電劣化指数)、T(時間)〕
通電劣化の指標として、通電劣化指数(A)の値を用いた。Aの評価としては、
◎:0<|A|(Aの絶対値)<100:通電劣化が非常に良好である。
○:100≦|A|≦220:通電劣化が実用に耐えることのできるレベルである。
×:220<|A|:通電劣化が悪化して、実用に耐えることのできるレベルでない。
とした。
【0099】
実施例1乃至9、比較例1乃至6で作製した帯電ローラについて通電劣化指数を評価した結果を表2に示す。
【0100】
なお、電気抵抗値(Ω)は、以下の方法により求めた。
アルミドラム2と帯電ローラ1の接触面積が均一になるように導電性支持体5の両端部に300gの加重をかけつつ、アルミドラム2を回転させて帯電ローラを従動回転させながら、300Vの直流電圧をアルミドラムと導電性支持体との間に印加し、その間に流れる電流を測定することにより求めた(図4)。
【0101】
(通紙耐久試験によるドラム電位の安定性評価)
(1)アモルファスシリコン感光体(a−Si)を用いた通紙耐久試験
キヤノン社製複写機GP405を改造し、実施例1乃至9、比較例1乃至6で作製した帯電ローラを取り付けた。また、複写機のプロセス速度を400mm/sに設定し、帯電バイアスは外部電源から供給した。帯電条件はDC電圧+600V、AC電圧1.5kV、AC周波数3.5kHzとした。露光方式は、バックスキャン方式に変更した。現像手段は、感光体ドラム(アモルファスシリコン感光体)にあわせて下記に示したものを用いた。
【0102】
実施例1乃至9、比較例1乃至6で作製した帯電ローラとアモルファスシリコン感光体を搭載して、室温低湿環境(N/L:23℃/5%RH)において、上記条件にて、通紙耐久試験(25万枚印刷)を行い、試験前後のドラム電位の低下について評価した。結果を表2に示す。また、ドラム電位の評価方法を以下に示す。
○:通紙耐久試験前後のドラム電位を測定し、ドラム電位の低下が認められない。
×:通紙耐久試験中にドラム電位の低下が発生した。
【0103】
アモルファスシリコン感光体については、正帯電のa−Si系感光体として、Alからなる導電性支持体の表面に順次積層させたもので、負電荷阻止層、光導電層、表面保護層から構成される感光体ドラムを用いた。
【0104】
トナーとしては、スチレン共重合体にエステルワックス、着色剤を分散させた負帯電性の粉砕トナーを用い、外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムを用いた。トナーの重量平均粒子径(D4)は6.8μmであった。
【0105】
キャリアとしては、フェノール樹脂にマグネタイトを分散させた磁性粒子分散型キャリア粒子を用いた。キャリアの重量平均粒子径(D4)は35μm、抵抗率は109Ωcmであった。
【0106】
現像手段は、現像キャリアを用いた2成分現像方式を用いた。
【0107】
(2)薄膜有機感光体(薄膜OPC)を用いた通紙耐久試験
帯電条件をDC電圧−750V、AC電圧2.0kV、AC周波数3.2kHzに、露光方式をイメージスキャン方式に変更し、薄膜有機感光体を搭載した以外は、上記アモルファスシリコン感光体を用いた通紙耐久試験と同様の方法で通紙耐久試験を行った。結果を表2に示す。
【0108】
ここで、薄膜有機感光体は、アルミシリンダー上に、電子輸送性有機化合物を含有する層厚1μmの中間層、層厚0.15μmのフタロシアニン系電荷発生層と層厚10μmのトリアリールアミン系電荷輸送層で構成される感光層、層厚5μmの光重合性保護層を有する感光体である。
【0109】
トナーはシリカと酸化チタンを外添した負帯電性のポリエテスル系樹脂に着色剤としてカーボンブラックを分散させた粉砕トナーを用いた。トナーの重量平均粒子径(D4)は7.0μmであった。
【0110】
キャリアは、酸化物フェライトを使用した。キャリアの重量平均粒子径(D4)は30μmであり、抵抗率は108Ωcmであった。現像手段は、現像キャリアを用いた2成分現像方式を用いた。
【0111】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】(A)導電性支持体の形状の概略図である。(B)帯電ローラの形状の概略図である。
【図2】通電空回転機の概略図である。
【図3】実施例1及び8ならびに比較例3で製造した帯電ローラの電気抵抗値と通電時間のグラフである。
【図4】帯電ローラの電気抵抗測定装置の概略図である。
【図5】本発明の電子写真装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0113】
1 帯電ローラ
2 アルミドラム
3 帯電バイアス電源(AC+DC)
4 ドラム駆動モーター
5 バネ加圧
6 電子写真感光体
7 軸
8 露光手段
9 現像手段
10 転写手段
11 クリーニング手段
12 定着手段
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体の上に導電性粒子を含有する導電層を有する帯電ローラであって、該導電層の23℃における水素核スピン−スピン緩和時間T2が20μs<T2<300μsであることを特徴とする帯電ローラ。
【請求項2】
前記導電層を形成するベースポリマーが少なくともアクリルニトリル−ブタジエンゴムから構成され、
前記アクリルニトリル−ブタジエンゴムのアクリロニトリル含有率が25%超49%未満であることを特徴とする請求項1に記載の帯電ローラ。
【請求項3】
前記導電性粒子の平均粒径(電子顕微鏡による算術平均粒子径)が75nm超300nm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電ローラ。
【請求項4】
前記導電性粒子がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項に記載の帯電ローラ。
【請求項5】
前記導電層の表面がUV処理されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの請求項に記載の帯電ローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの請求項に記載の帯電ローラを具備することを特徴とする電子写真装置。
【請求項7】
前記電子写真装置が、
少なくとも、珪素原子を母体とする非結晶材料で構成された光導電層を有する感光体と、
該感光体に近接または接触して該感光体の表面を帯電する帯電手段と、
画像を露光して潜像を形成する潜像形成手段と、
トナー像を感光体に形成する現像手段と、
トナー像を被転写体に転写する転写手段とを有し、
前記帯電手段が、請求項1乃至5のいずれかの請求項に記載の帯電ローラを有している請求項6に記載の電子写真装置。
【請求項8】
前記電子写真装置が、
少なくとも、表面保護層と感光層の合計の層厚が20μm以下の薄膜有機感光体と、
該薄膜有機感光体に近接または接触して該薄膜有機感光体の表面を帯電する帯電手段と、
画像を露光して潜像を形成する潜像形成手段と、
トナー像を感光体に形成する現像手段と、
トナー像を被転写体に転写する転写手段とを有し、
前記帯電手段が、請求項1乃至5のいずれかの請求項に記載の帯電ローラを有している請求項6に記載の電子写真装置。
【請求項9】
前記帯電ローラの導電層を形成するベースポリマーが少なくともアクリルニトリル−ブタジエンゴムから構成され、かつ、該アクリルニトリル−ブタジエンゴムのアクリロニトリル含有率が34%超49%未満である請求項6乃至8の何れかに記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−3082(P2009−3082A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162431(P2007−162431)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】