説明

帯電ローラ

【課題】抵抗ムラの問題を生ずることなく高帯電性能を実現することで、良好な画像が得られる帯電ローラを提供する。
【解決手段】被帯電体に当接させて、被帯電体との間に電圧を印加することにより被帯電体を帯電させる帯電ローラであって、軸1の外周に、ウレタンフォーム層2と、少なくとも1層の塗膜層と、を順次備える帯電ローラである。塗膜層のうち最外層をなす表層4が、ポリウレタンまたはナイロンからなる粉体を含有し、かつ、直流電圧−1060Vを印加した際の被帯電体の帯電電位が、−515V以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電ローラ(以下、単に「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、画像性の改良に係る帯電ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置では、まず、感光体の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成する静電潜像プロセスにより静電潜像を得、次いで、トナーの付着によるトナー像の形成、紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法が採られている。
【0003】
この場合、最初の感光体を帯電させる操作としては、従来、コロナ放電方式が一般に採用されていた。しかし、このコロナ放電方式は6〜10kVもの高電圧印加が必要とされるために、機械の安全保守の観点から好ましくなく、また、コロナ放電中にオゾン、NOx等の有害物質が発生するために、環境上の問題もあった。
【0004】
このため、コロナ放電に比べて低い印加電圧で帯電を行うことができ、かつ、オゾン等の有害物質の発生を抑制することができる帯電方式への取り組みがなされており、新たな帯電方式として、電圧を印加した帯電用部材を感光体等の被帯電体に所定の圧力で接触させることにより被帯電体を帯電させる、接触方式による帯電方法が提案されている。
【0005】
この接触帯電方式で使用される帯電部材としては、例えば、芯金(シャフト)の外周にゴムやウレタンフォーム等からなる導電性弾性層(基層)を形成し、さらに、表面の平滑性確保やトナーの付着防止のために、ウレタン、ナイロン等の樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液や水に溶解もしくは分散させた樹脂溶液をディッピング法やスプレー法などにより塗布してなる塗膜層を設けた多層構造の帯電ローラが知られている。また、基層と塗膜層との間の接着性の改良のために、これらの層の間に接着層を設ける技術もよく知られている。
【0006】
さらに、例えば、特許文献1には、回転軸の周囲に設けられた導電性弾性体層の外周面に、JIS A硬度10〜99および平均粒径2〜30μmの粒子を含む樹脂被覆層を設けた導電性ローラが開示されている。
【特許文献1】特開2003−302827号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
帯電ローラにおいて良好な帯電性能を得るためには抵抗値の調整が重要であり、ローラ抵抗を高抵抗にすることで高帯電が得られることが知られている。しかし、ローラ抵抗を高抵抗にすると抵抗ムラが発生しやすく、不均一な画像で不良となるという問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記の問題を解消して、抵抗ムラの問題を生ずることなく高帯電性能を実現することで、良好な画像が得られる帯電ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記構成とすることで、抵抗ムラの問題を生ずることなく高帯電性能を有する帯電ローラを実現することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の帯電ローラは、被帯電体に当接させて、該被帯電体との間に電圧を印加することにより該被帯電体を帯電させる帯電ローラであって、軸の外周に、ウレタンフォーム層と、少なくとも1層の塗膜層と、を順次備える帯電ローラにおいて、
前記塗膜層のうち最外層をなす表層が、ポリウレタンまたはナイロンからなる粉体を含有し、かつ、直流電圧−1060Vを印加した際の前記被帯電体の帯電電位が、−515V以下であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、前記表層の厚みは、好適には0.1〜30μmであり、この場合、前記粉体の平均粒径は、好適には6〜10μmの範囲内である。また、前記粉体の配合量は、前記表層を構成する樹脂成分100重量部に対し10〜50重量部の範囲内とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことで、抵抗ムラの問題を生ずることなく高帯電性能を実現することができ、これにより良好な画像が得られる帯電ローラを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1に、本発明の一好適例の帯電ローラの概略断面図を示す。本発明の帯電ローラ10は、被帯電体に当接させて、被帯電体との間に電圧を印加することにより被帯電体を帯電させるものであり、図示するように、軸1の外周に、ウレタンフォーム層2と、下層3と、表層4と、を順次備えている。
【0014】
本発明のローラ10においては、表層4が、ポリウレタンまたはナイロンからなる粉体を含有するとともに、直流電圧−1060Vを印加した際の被帯電体の帯電電位が−515V以下、好適には−515〜−600Vの範囲内である点が重要である。帯電ローラの表面をなす表層4に、かかる特定の粉体を含有させたことで、被帯電体に対する帯電能力、具体的には、感光体(OPC)等の被帯電体の帯電電位を向上することができ、かつ、従来のような抵抗ムラの問題を生ずることもない帯電ローラを得ることが可能となった。上記帯電電位が−515Vを超えると、十分な帯電性能が得られず、本発明の所期の効果が得られない。
【0015】
表層4は、上記条件を満足するものであれば、いかなる樹脂を用いて形成してもよく、かかる樹脂としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ウレタン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。特には、トナー付着防止や表面平滑性確保等の目的に応じた材料構成とすることが好ましく、上記の中でも、帯電ローラの表面平滑性や感光体等との低密着性などの観点から、フッ素樹脂が好適に用いられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等が挙げられ、これらを溶液中で重合させたものや重合後の樹脂を有機溶剤に溶解させた溶剤系フッ素樹脂等が用いられる。
【0016】
また、表層4には、上記粉体の他、導電剤として、後述するイオン導電剤や電子導電剤を適宜含有させることで、所望の導電性を付与することができる。表層4の厚みは、特に制限されるものではないが、通常0.1〜30μm、特には3〜20μmの範囲内である。
【0017】
表層4に含有させる粉体としては、ポリウレタンまたはナイロンからなるものを用いる。また、その粒径は、具体的には例えば、平均粒径6〜10μmの範囲内が好適である。また、その配合量は、表層4を構成する樹脂成分100重量部に対し、10〜50重量部の範囲内とすることが好ましく、配合量が多すぎると塗膜割れが発生し、少なすぎると所望の帯電電位が得られず、いずれも好ましくない。
【0018】
なお、帯電ローラの表面に凹凸があると、この凹部内にトナーが詰まって画像不良の原因となることがあるため、部材表面はできるだけ平滑であることが好ましい。したがって好適には、表層4の表面粗さは、JIS十点平均粗さRzで、通常9μm以下、特には6μm以下とする。
【0019】
また、軸1としては、良好な導電性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、硫黄快削鋼などの鋼材にニッケルや亜鉛のめっきを施したものや、鉄、ステンレススチール、アルミニウムなどの金属製の中実体、またはその内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフトを好適に用いることができる。
【0020】
ウレタンフォーム層2を形成するためのポリウレタン原料としては、樹脂中にウレタン結合を含むものであれば、特に制限はない。ポリウレタン原料を構成するポリイソシアネートとしては、芳香族イソシアネートまたはその誘導体、脂肪族イソシアネートまたはその誘導体、脂環族イソシアネートまたはその誘導体が用いられる。これらの中でも芳香族イソシアネートまたはその誘導体が好ましく、特に、トリレンジイソシアネートまたはその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体が好適に用いられる。トリレンジイソシアネートまたはその誘導体としては、粗製トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、これらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボジイミド変性物、ポリオール等で変性したウレタン変性物等が用いられる。ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンまたはその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体が用いられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体などがあり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートなどを用いることができる。ポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートの官能基数については、通常、純ジフェニルメタンジイソシアネートと様々な官能基数のポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物が用いられ、平均官能基数が好ましくは2.05〜4.00、より好ましくは2.50〜3.50のものが用いられる。また、これらのジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体を変性して得られた誘導体、例えば、ポリオール等で変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド/ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物なども用いることができる。また、数種類のジフェニルメタンジイソシアネートやその誘導体をブレンドして用いることもできる。
【0021】
ポリウレタン原料を構成するポリオール成分としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールは、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質とし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したものを挙げることができるが、特に、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好適である。付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドトの比率やミクロ構造については、エチレンオキサイドの比率が2〜95重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜90重量%である。特に、末端にエチレンオサイドが付加しているものが好ましく用いられる。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの配列は、ランダムであることが好ましい。このポリエーテルポリオールの分子量は、水、プロピレングリコール、エチレングリコールを出発物質とする場合は2官能となり、重量平均分子量で300〜6000の範囲のものが好ましく、特には400〜3000の範囲のものが好ましい。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質とする場合は3官能となり、重量平均分子量で900〜9000の範囲のものが好ましく、特に1500〜6000の範囲のものが好ましい。また、2官能のポリオールと3官能のポリオールを適宜ブレンドして用いることもできる。
【0022】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合によって得られ、重量平均分子量が400〜4000のもの、特に650〜3000の範囲にあるものが好ましく用いられる。また、分子量の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールをブレンドすることも好ましい。更に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを共重合して得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることもできる。ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとをブレンドして用いることも好ましく、この場合、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとの比率が重量比で95:5〜20:80の範囲になるように用いることが好ましく、特に90:10〜50:50の範囲になるように用いることが好ましい。また、上記ポリオール成分とともに、ポリオールをアクリロニトリル変性したポリマーポリオール、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのポリオール類やそれらの誘導体を併用することができる。
【0023】
また、ポリオールをポリイソシアネートによりあらかじめプレポリマー化してもよく、その方法としては、ポリオールとポリイソシアネートを適当な容器に入れ、充分に攪拌し、30〜90℃、より好ましくは40〜70℃に、6〜240時間、より好ましくは24〜72時間保温する方法が挙げられる。この場合、ポリオールとポリイシソシアネートとの分量の比率は、得られるプレポリマーのイソシアネート含有率が4〜30重量%となるように調節することが好ましく、より好ましくは6〜15重量%である。イソシアネートの含有率が4重量%未満であると、プレポリマーの安定性が損なわれ、貯蔵中にプレポリマーが硬化してしまい、使用に供することができなくなるおそれがある。また、イソシアネートの含有率が30重量%を超えると、プレポリマー化されていないポリイソシアネートの含有量が増加し、このポリイソシアネートは、後のポリウレタン硬化反応において用いるポリオール成分と、プレポリマー化反応を経ないワンショット製法に類似の反応機構により硬化するため、プレポリマー法を用いる効果が薄れる。ポリオールをあらかじめポリイソシアネートによりプレポリマー化したイソシアネート成分を用いる場合のポリオール成分としては、上記ポリオール成分に加えて、エチレングリコールやブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンやソルビトール等のポリオール類やそれらの誘導体を用いることもできる。
【0024】
ポリウレタン原料には、イオン導電剤や電子導電剤等の導電剤、カーボンブラックや無機炭酸塩等の充填材、フェノールやフェニルアミン等の酸化防止剤、低摩擦化剤、電荷調整剤などを添加することができる。イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などが挙げられる。また、電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などを挙げることができる。これらの導電剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。その配合量には特に制限はなく、所望に応じ適宜選定可能であるが、通常は、ポリウレタン原料100重量部に対し、0.1〜40重量部、好ましくは0.3〜20重量部の割合である。
【0025】
ポリウレタン原料の硬化反応に用いる触媒としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物などが挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明においては、ポリウレタン原料にシリコーン整泡剤や各種界面活性剤を配合することが、フォーム材のセルを安定させるために好ましい。シリコーン整泡剤としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合物等が好適に用いられ、分子量350〜15000のジメチルポリシロキサン部分と分子量200〜4000のポリオキシアルキレン部分とからなるものが特に好ましい。ポリオキシアルキレン部分の分子構造は、エチレンオキサイドの付加重合物やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加重合物が好ましく、その分子末端をエチレンオキサイドとすることも好ましい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性等のイオン系界面活性剤や各種ポリエーテル、各種ポリエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。シリコーン整泡剤や各種界面活性剤の配合量は、ポリウレタン原料100重量部に対して0.1〜10重量部とすることが好ましく、0.5〜5重量部とすることが更に好ましい。
【0027】
本発明で用いるウレタンフォームは、密度が0.2〜0.8g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.6g/cmである。また、ウレタンフォームのアスカーC硬度は20〜65°が好ましく、より好ましくは25〜45°である。本発明において、ポリウレタン原料をあらかじめ発泡させるための方法としては、従来から用いられているメカニカルフロス法、水発泡法、発泡剤フロス法等の方法を用いることができるが、密度0.2〜0.8g/cm、アスカーC硬度20〜65°の独立気泡構造を有するポリウレタンフォームを得る点から、不活性ガスを混入しながら機械的攪拌により発泡させるメカニカルフロス法を用いることが好ましい。ここで、メカニカルフロス法において用いる不活性ガスは、ポリウレタン反応において不活性なガスであればよく、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ラドン、クリプトン等の狭義の不活性ガスの他、窒素、二酸化炭素、乾燥空気等のポリウレタン原料と反応しない気体が挙げられる。発泡させたポリウレタン原料を金属モールド等に注型し、硬化させることにより、金属モールドに接した部分に自己スキン層(薄い層状の皮膜)が形成されたポリウレタンフォームを得ることができる。その際、金属モールドの内面をフッ素樹脂等でコーティングする等の方法により、金属モールドに離型性を付与することができる。
【0028】
また、ウレタンフォーム層2の成形条件については特に制限はなく、通常の条件に従うことができ、例えば、15〜80℃、好ましくは20〜65℃の範囲の温度においてポリウレタン原料の発泡を開始させ、軸1を配置した金属モールド内に注入完了後、70〜120℃程度の温度でキュアを行い、次いで、脱型することにより、ウレタンフォーム層2を得ることができる。
【0029】
本発明のローラ10においては、ウレタンフォーム層2の外周に、少なくとも1層の塗膜層を表層4として設けることが必要であるが、図示するように、これら層間に下層3を設けることが好適である。
【0030】
下層3は、表層4と同様の樹脂を適宜用いて形成することができ、特には、ウレタン樹脂を用いて形成することが好ましい。下層3についても、導電剤として、前述したイオン導電剤や電子導電剤を適宜含有させることで、所望の導電性を付与することができる。また、下層3の厚さとしては、特に制限されないが、通常10〜300μm、特には40〜200μmの範囲内とすることができる。
【0031】
また、本発明のローラ10においては、図示するように、ウレタンフォーム層2と下層3との間に、接着層5を設けることができる。接着層5は、本発明においては必須ではなく、ウレタンフォーム層2と表層3との間の密着性を向上する機能を果たさせるために、必要に応じて適宜設けるものであり、その形成材料としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ウレタン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂等を挙げることができ、これに上記導電剤を適宜添加することにより、下層3および表層4の場合と同様に抵抗値を調整することができる。
【0032】
接着層5の厚みは、ウレタンフォーム層2と下層3との間の接着性確保のために、好ましくは1〜100μm、より好ましくは10〜30μm程度とする。
【0033】
本発明において、下層3および表面層4には、増粘剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の適宜添加剤を所望に応じて適量添加することができ、この場合添加剤は無機系、有機系のいずれであってもよい。
【0034】
また、下層3、表層4および接着層5の総厚みは、特に制限されるものではないが、ウレタンフォーム層2の柔軟性を損なわないために薄層とすることが好ましく、具体的には、50〜450μm程度とする。
【0035】
なお、接着層5、下層3および表層4の各層の形成方法としては、特に制限はないが、これら各層を形成する各成分を含む塗料を調製し、この塗料をディッピング法やスプレー法により塗布する方法を好ましく用いることができる。
【0036】
本発明の帯電ローラ10は、前述したように、転写体等の被帯電体に当接した状態にて配設され、被帯電体と本発明の帯電ローラとの間に電圧を印加することにより被帯電体を帯電させるものである。この場合、帯電ローラと被帯電体との間に印加する電圧は、直流電圧であっても交流電圧であってもよく、特に制限されないが、特には、本発明は、直流電圧印加方式の帯電装置に好適に適用される。また、本発明の帯電ローラと被帯電体との間の接触圧力は、50〜2000g、特には100〜1000gとすることが好ましく、これにより良好な帯電を確実に得ることができる。
【0037】
本発明の帯電ローラ10を用いた帯電装置については、例えば、図2に示すように、本発明の帯電ローラ10をOPC等の被帯電体11に当接させ、電圧印加手段12から被帯電体11との間に電圧を印加するように構成した帯電装置を例示することができるが、これに限定されるものではなく、被帯電体11、帯電ローラ10の形態や電圧印加手段12による電圧印加方式等は適宜変更することが可能である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
まず、芯金1(φ8mm、長さ260mm、材質:硫黄快削鋼)の外周に、メカニカルフロス法によりポリウレタンフォームを担持させて、ウレタンフォーム層2を形成した。
【0039】
具体的には、プレポリマー化イソシアネート(TDI+ポリオール)100重量部と、ポリエーテルポリオール20重量部と、アセチレンブラック2重量部と、イオン導電剤(過塩素酸ナトリウム)0.2重量部とからなるポリウレタン原料を調製し、このポリウレタン原料をミキサーにより機械的に攪拌して乾燥空気を混入して、発泡させた。この発泡ポリウレタン原料を、端部にシャフトを貫通させるための穴が設けられ、かつ、シャフトを支持するための金属製キャップが設置されている金属製円筒状割りモールドに注型した。このモールドの内部には、前記芯金1を、外周に接着剤を塗布した状態で配置した。次いで、発泡ポリウレタン原料が注型されたモールドを90℃に調整した熱風オーブン中に4時間放置し、発泡ポリウレタン原料を硬化させた。
【0040】
次いで、硬化したポリウレタンフォームをモールドから取り外して、下記表1に示す配合の塗料をディップ塗布することにより、その外周に、膜厚100μmの下層3を形成した。さらに、その外周に、下記表1,2に示す配合に従い、同様にして、膜厚10μmの表層4を形成して、ローラ本体部がφ16mm、長さ240mmである帯電ローラを作製した。
【0041】
【表1】

【0042】
<帯電電位の測定>
各供試ローラにDC−1060Vを印加した際のOPCの帯電電位を測定して、比較を行った。帯電電位が−600Vに近いほど低電位であり、高性能の帯電ローラであるといえる。
【0043】
<画像性の評価>
各供試ローラを市販のプリンタに組み込んで、帯電ムラに起因する画像不良につき評価し、帯電ムラの発生が全くない場合を「◎」、帯電ムラの発生はないが画像濃度が濃い場合を「○」、帯電ムラがまれに発生する場合を「△」、帯電ムラが画像全面に発生している場合を「×」とした。
【0044】
<塗膜割れの有無>
各供試ローラの表面をマイクロスコープにより1000倍に拡大して、塗膜割れの有無を観察した。その結果を、塗膜割れがない場合を「○」、塗膜割れが見られた場合を「×」として評価した。
【0045】
上記の結果を、JIS十点平均粗さRzの測定値とともに、下記の表2中に併せて示す。
【0046】
【表2】

*1)総研化学(株)製 MR−7G
*2)大日本インキ化学工業(株)製 CFB101−40
*3)根上工業(株)製 C800
*4)根上工業(株)製 U600T
*5)根上工業(株)製 MM120T
*6)総研化学(株)製 SX−500H
*7)東レ(株)製 SP−500
*8)東ソー・シリカ(株)製 BY001
【0047】
上記表2に示すように、本発明に係る条件を満足する特定の粉体を表層中に含有させた実施例の供試ローラにおいては、画像不良や塗膜割れの問題を生ずることなく、良好な画像が得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一好適実施形態に係る帯電ローラを示す断面図である。
【図2】帯電装置の構成を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 軸
2 ウレタンフォーム層
3 下層
4 表層
5 接着層
10 帯電ローラ
11 被帯電体
12 電圧印加手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電体に当接させて、該被帯電体との間に電圧を印加することにより該被帯電体を帯電させる帯電ローラであって、軸の外周に、ウレタンフォーム層と、少なくとも1層の塗膜層と、を順次備える帯電ローラにおいて、
前記塗膜層のうち最外層をなす表層が、ポリウレタンまたはナイロンからなる粉体を含有し、かつ、直流電圧−1060Vを印加した際の前記被帯電体の帯電電位が、−515V以下であることを特徴とする帯電ローラ。
【請求項2】
前記表層の厚みが0.1〜30μmである請求項1記載の帯電ローラ。
【請求項3】
前記粉体の平均粒径が6〜10μmの範囲内である請求項2記載の帯電ローラ。
【請求項4】
前記粉体の配合量が、前記表層を構成する樹脂成分100重量部に対し10〜50重量部の範囲内である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の帯電ローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−275682(P2008−275682A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115946(P2007−115946)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】