帯電ロール、帯電ロールの製造方法、及びこの帯電ロールを備えた画像形成装置
【課題】帯電ロールの両端部と中央側の抵抗比が大きくなるのを抑えることにより、帯電不良を防止することができる帯電ロール、この帯電ロールの製造方法、及びこの帯電ロールを備えた画像形成装置を得る。
【解決手段】表面層44の放電領域の端部より表面層44の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの領域Aの表面層44の平均層厚が中央側の平均層厚より厚くされている。これにより、画像形成装置の長期の使用により、帯電ロール13の表面層44の中央側と比較して両端部の抵抗が早く上昇することによる両端部と中央側の抵抗比が大きくなることを防止することができる。そして、帯電ロールの帯電不良を防止することができ、さらに、出力画像の端部に発生する濃度ムラを防止することができる。
【解決手段】表面層44の放電領域の端部より表面層44の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの領域Aの表面層44の平均層厚が中央側の平均層厚より厚くされている。これにより、画像形成装置の長期の使用により、帯電ロール13の表面層44の中央側と比較して両端部の抵抗が早く上昇することによる両端部と中央側の抵抗比が大きくなることを防止することができる。そして、帯電ロールの帯電不良を防止することができ、さらに、出力画像の端部に発生する濃度ムラを防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体の表面を帯電させる帯電ロール、この帯電ロールの製造方法、及びこの帯電ロールを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、被帯電体としての感光体表面を均一に帯電させる部材として、帯電ロールが多用されている。帯電ロールは、電圧を印加された状態で感光体に接触または近接し、感光体との間の微少な間隙にて放電し感光体表面を帯電させる。上記帯電ロールは、感光体を均一に帯電させるために、抵抗、形状が厳密に制御されている(特許文献1)。
【0003】
近年、帯電ロール、及び、帯電ロールを用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置の耐久性の向上に対する要求が強い。直流に交流を重畳した電圧を印加した帯電ロールの場合、交流電流量が多いと感光体の表面層の磨耗を促進するため、交流電流はできるだけ少ない方が好ましい。一方、交流電流が少ないと帯電ロールの抵抗不均一、形状の異常などに起因する濃度ムラが発生しやすくなり、帯電ロール、及び帯電ロールを用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置の耐久性は低下する。これらに対しては、感光体への保護層の付与、クリーニング工程の最適化などにより感光体の磨耗を減らす技術が提案されており改善が進んでいる。
【特許文献1】特開2004−19680
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、感光体の磨耗の問題が改善されることで、帯電ロールの耐久性が課題となってきた。帯電ロールを用いた画像形成装置の長期の使用において、ハーフトーン画像の用紙中央部が薄く、用紙端部に行くに従い濃くなる濃度ムラという問題が発生する。これは、帯電ロールの両端部で帯電不良を起こし感光体の帯電電位が低くなったことが原因であった。
【0005】
帯電ロールの両端部の帯電不良は、中央側と比較して両端部の抵抗の上昇が早く、両端部と中央側の抵抗比が大きくなることが原因である。中央側の抵抗上昇速度が両端部と同じであれば帯電ロールへの印加電圧が上昇するものの、帯電不良を発生することは無く、また、濃度ムラは発生せず、帯電ロールの耐久性は向上する。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、帯電ロールの両端部と中央側の抵抗比が大きくなるのを抑えることにより、帯電ロールの帯電不良を防止することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る帯電ロールは、導電性支持体の回りに2層以上の導電層が形成され、電圧が印加されると被帯電体を帯電させる帯電ロールであって、前記導電層のうち表面層の放電領域の端部より前記表面層の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの前記表面層の平均層厚を、中央側の平均層厚より厚くしたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、放電領域の端部より表面層の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの表面層の平均層厚が、中央側の平均層厚より厚くなっている。
【0009】
この構成により、この帯電ロールを用いた画像形成装置の長期の使用において、帯電ロールの表面層の中央側と比較して両端部の抵抗の上昇がほぼ等しくなり、両端部と中央側の抵抗比が大きくなることが抑えられる。これにより、帯電ロールの帯電不良を防止することができる。
【0010】
本発明の請求項2に係る帯電ロールの製造方法は、導電性支持体の回りに2層以上の導電層が形成され、電圧が印加されると被帯電体を帯電させる帯電ロールの製造方法であって、前記導電性支持体の回りに形成された導電層を導電性の塗布液が貯留された塗布槽へ浸漬する工程と、前記導電性支持体を前記塗布槽から軸方向に引き上げるとき、前記導電層の上端部側及び下端部側を引き上げる速度を、前記導電層の中央側を引き上げる速度より速くして、表面層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、導電性支持体を塗布槽から引き上げて表面層を形成させるとき、導電層の上端部側及び下端部側を引き上げる速度が、中央側を引き上げる速度より速く設けられている。
【0012】
これにより、表面層の上端部及び下端部の平均層厚が中央側の平均層厚より厚くなる帯電ロールを容易に製造することができる。また、この帯電ロールを使用することで、帯電ロールの帯電不良を防止することができる。
【0013】
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、請求項1に記載の帯電ロールを備えたことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、画像形成装置に請求項1記載の帯電ロールが備えられているため、帯電ロールの帯電不良を防止することができる。従って、出力画像の端部に発生する濃度ムラを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、帯電ロールの帯電不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の帯電ロール13が採用された画像形成装置100の実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0017】
図11に示されるように、この画像形成装置100は、図示しないパーソナルコンピュータ等の画像データ入力装置から送られてくるカラー画像情報に基づいて画像処理を行い、電子写真方式によって記録媒体としての記録用紙Pにカラー画像を形成するものである。
【0018】
画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kを備えている。なお、以降、YMCKを区別する必要がある場合は、符号の後にY、M、C、Kの何れかを付して説明し、YMCKを区別する必要が無い場合は、Y、M、C、Kを省略する。
【0019】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、バックアップロール34と複数の張架ロール32によって張架された無端状の中間転写ベルト30の進行方向に対して、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの順番で直列に配列されている。また、中間転写ベルト30は、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの像担持体としての感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kと、それぞれ対向して配設される一次転写ロール16Y、16M,16C,16Kとの間を挿通している。
【0020】
次に、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの構成と画像形成の動作とを、代表してイエロートナー画像を形成する画像形成ユニット10Yについて説明する。
【0021】
感光体ドラム12Yの表面は、帯電ロール13Yにより一様に帯電される。帯電ロール13Yの表面は、帯電ロール13Yと従動回転する中空体の帯電ロールクリーナー38Yによって清掃される。なお、帯電ロール13に関しては、詳細を後述する。
【0022】
次に、露光装置14Yによりイエロー画像に対応する像露光がなされ、感光体ドラム12Yの表面にイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。
【0023】
イエロー画像に対応する静電潜像は、現像装置15Yの現像ロール18Yに担持されたトナーによって現像され、イエロートナー画像となる。イエロートナー画像は、一次転写ロール16Yの圧接力と、一次転写ロール16Yに印加された転写バイアスによる静電吸引力によって、中間転写ベルト30上に一次転写される。
【0024】
この一次転写では、イエロートナー画像は全て中間転写ベルト30に転写されず、一部が転写残留イエロートナーとして、感光体ドラム12Yに残留する。また、感光体ドラム12Yの表面には、トナーの外添剤なども付着している。一次転写後の感光体ドラム12Yは、感光体クリーナー20Yとの対向位置を通過し、感光体ドラム12Yの表面の転写残留トナーなどが除去される。その後、感光体ドラム12Yの表面は、つぎの画像形成サイクルの為、帯電ロール13Yで再び帯電される。
【0025】
また、画像形成装置100では、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、上記と同様の画像形成工程が各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにおいて行われ、中間転写ベルト30上に、順次、Y,M,C,Kの各色トナー像が重ねられ、多重トナー像が形成される。
【0026】
そして、所定のタイミングで二次転写位置Aへと搬送されてきた記録用紙Pに、転写バイアスが印加された二次転写ロール36の静電吸引力によって、中間転写ベルト30から多重トナー像が一括して、記録用紙Pに転写される。
【0027】
多重トナー像が転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト30から分離された後、定着装置31へと搬送され、熱と圧力とにより記録用紙Pに定着されてフルカラー画像が形成される。
【0028】
記録用紙Pに転写されなかった中間転写ベルト30上の転写残留トナーは、中間転写ベルト用クリーナー33で回収される。
【0029】
次に帯電ロール13の構成について詳細に説明する。
【0030】
図2に示されるように、帯電ロール13は、ロール状の導電性支持体40と、この導電性支持体40上に設けられ、ゴム、エラストマー、樹脂等から形成される導電層としての弾性層42と、この弾性層42上に設けられ、樹脂溶液の塗布により形成される導電層としての表面層44と、を備えている。
【0031】
なお、弾性層42が複数の層から構成されても良く、さらに、弾性層42と表面層44の間に一つ以上の導電層が設けられていても良く、また、導電性支持体40と弾性層42を接着させるために、プライマー層を導電性支持体40と弾性層42の間に設けても良い。
【0032】
導電性支持体40は、帯電ロール13の電極及び支持部材として機能するもので、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロム又はニッケル等でメッキ処理を施した鉄、導電性の樹脂、などの導電性の材質で構成される。
【0033】
さらに、弾性層42は、例えばゴム材中に導電剤を分散させることによって形成される。ゴム材としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、及びこれらのブレンドゴムが挙げられる。中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムおよびこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。また、これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0034】
また、弾性層42に電子伝導性を付与する導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物、絶縁物質の表面を導電化処理したもの、などの微粉末を挙げることができる。さらに、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩を挙げることができる。
【0035】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、電子導電剤の場合は、ゴム材100重量部に対して、1〜30重量部の範囲であることが好ましく、15〜25重量部の範囲であることがより好ましい。一方、イオン導電剤の場合は、ゴム材100重量部に対して、0.1〜5.0重量部の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0重量部の範囲であることがより好ましい。
【0036】
表面層44は、帯電ロール13表面汚れの蓄積を防止する保護層として機能するもので、高分子材料中に導電剤を分散させることによって形成される。例えば、高分子材料としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0037】
また、表面層44に電子伝導性を付与する導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物、絶縁物質の表面を導電化処理したもの、などの微粉末を挙げることができる。
【0038】
次に表面層44の層厚について図1に従って説明する。
【0039】
図1に示されるように、表面層44の放電領域の端部より表面層44の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの領域Aの表面層44の平均層厚が中央側の平均層厚より厚くされている。
【0040】
これにより、画像形成装置100(図11参照)の長期の使用により、帯電ロール13の表面層44の中央側と比較して両端部の抵抗が早く上昇することによる、両端部と中央側の抵抗比が大きくなることを防止することができる。このため、帯電ロールの帯電不良を防止することができ、さらに、出力画像の端部に発生する濃度ムラを防止することができる。
【0041】
なお、帯電ロール13に印加する電圧は直流成分のみであっても、直流に交流が重畳されていても良い。直流に交流が重畳されている場合は、交流電流が少ない方が感光体の磨耗を少なくすることができるため好ましく、交流の電流値が、交流の放電開始電圧時の電流の1.0倍以上、1.3倍以下であることが好ましい。
【0042】
次に表面層44を帯電ロール13に塗布する塗布方法について説明する。
【0043】
表面層44の塗布方法としては、ロールコーティング法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬塗布法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ロールコーティング法は端部ダレを生じないため、端部付近を中央部付近より厚くする本発明に好ましく適用できる。また、浸漬塗布法は端部ダレが生じるものの、欠陥の少ない膜を効率的に形成できるため好ましく適用できる。
【0044】
本実施形態の表面層44の塗布方法について、図3〜5に従って詳細に説明する。
【0045】
図3(A)に示されるように、導電性支持体40と弾性層42から形成されるロール部材46の長手方向を塗布液50の液面に対して垂直となるように、ロール部材46を浸漬塗布装置52のチャッキング装置54に取り付ける。このチャッキング装置54を図示しない駆動力にて下方に移動させることにより、図3(B)に示されるように、ロール部材46を塗布液50が貯留された塗布槽56に浸漬させる。
【0046】
次工程では、図4(A)に示されるように、チャッキング装置54を上方に速度V1で移動させることにより、ロール部材46の上端部を塗布液50から引き上げる。
【0047】
さらに、図4(B)に示されるように、チャッキング装置54を上方に速度V2で移動させることにより、ロール部材46の中央側を塗布液50から引き上げる。
【0048】
また、図5(A)に示されるように、チャッキング装置54を上方に速度V3で移動させることにより、ロール部材46の下端部を塗布液50から引き上げ、図5(B)に示すように、ロール部材46を完全に塗布槽56から引上げることで表面層44を形成させる。
【0049】
ここで、ロール部材46の上端部及び下端部を引上げる速度V1、V3が、中央側を引上げる速度V2より速く設定されている。これにより、表面層44の上端部及び下端部の領域A(図1参照)の平均層厚を中央側の平均層厚より容易に厚くすることができる。
【0050】
なお、塗布速度をVXとするとVX=V0-atで表される負の等加速度運動を塗布速度の変化に加えることで、さらに容易に好ましい層厚分布を獲得できる。(V0:初速度、a:加速度、t:時間)
次に、この構成において、以下の試験方法により、出力画像の濃度ムラを確認した。
<試験方法>
帯電ロール13をカラー複写機DocuCentre Color450a:富士ゼロックス社製に装着し、10℃、15%RH環境下でA4用紙100,000枚を印字する。なお、帯電ロール13以外の帯電ロールクリーナー38、感光体ドラム12、感光体クリーナー20を含むプロセスカートリッジは、50,000枚で交換した。また、帯電ロール13への交流電流は、放電開始電圧時の電流の1.1倍に設定した。
<評価方法>
中間的な濃度であるハーフトーン画像での濃度ムラの確認を試験中及び試験終了後に行った。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
弾性層42を形成させるため、下記混合物をオープンロールで混練りし、SUS416からなる直径8mmの導電性支持体40表面に、厚さ3mmとなるように円筒状に被覆し、内径14.0mmの円筒型の金型に入れ、170℃で30分間加硫させ、金型から取り出した後、研磨し、中央部の層厚が端部の層厚より薄い円筒状の弾性層42を得た。中央部と端部の外径の差は85μmであった。
・ゴム材 ・・・・・・・・・100重量部
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム)Gechron3106:日本ゼオン社製)
・導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製)
・・・25重量部
・導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製) ・・・・8重量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム) ・・・・1重量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製 ・・・・1重量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製) ・・2.0重量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT:大内新興化学工業社製) ・・0.5重量部
次に表面層44を形成させるため、下記混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液を、メタノールで希釈し、表面層の塗布液を得た。弾性層42の表面に、図6に示した塗布速度にて塗布液50から引き上げた。その後、150℃で15分間加熱乾燥し、表面層44を形成し、帯電ロール13を得た。
・高分子材料 ・・・100重量部
(共重合ナイロン)アラミンCM8000:東レ社製
・導電剤 ・・・20重量部
(カーボンブラック)MONARCH1000:キャボット社製 pH2.0
・溶剤(メタノール) ・・・500重量部
・溶剤(ブタノール) ・・・240重量部
以上の工程によって形成された帯電ロール13の断面を顕微鏡像により測定した結果、端部平均層厚14.3μm、中央側平均層厚10μmであった。表面層の層厚は図7のようであった。なお、図7に示す領域Aは、図1に示す領域Aと同じ位置であり、表面層44の端部を示す。
【0052】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、試験終了まで濃度ムラは発生しなかった。
(実施例2)
実施例1と同様の方法にて弾性層42を形成させた。
【0053】
表面層44を形成させるため、下記混合物をビーズミルにて分散し、得られた分散液を、MEKで希釈し、弾性層42の表面に塗布速度を便宜調整し浸漬塗布した後、170℃で30分間加熱乾燥し、表面層を形成し、帯電ロール13を得た。
・高分子材料 ・・・・100重量部
(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液)バイロン30SS:東洋紡績社製
・硬化剤 ・・・26.3重量部
(アミノ樹脂溶液)スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業社製)
・導電剤 ・・・24重量部
(カーボンブラック)MONARCH1000:キャボット社製 pH2.0
以上の工程によって形成された帯電ロール13の断面を顕微鏡像により測定した結果、端部平均層厚9.7μm、中央側平均層厚8μmであった。表面層の層厚は図8のようであった。なお、図8に示す領域Aは、図1に示す領域Aと同じ位置であり、表面層44の端部を示す。
【0054】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、試験終了まで濃度ムラは発生しなかった。
(実施例3)
実施例1と同様の方法にて弾性層42を形成させた。
【0055】
表面層44を形成させるため、下記混合物をビーズミルにて分散し、得られた分散液を、MEKで希釈し、弾性層42の表面に塗布初速度及び加速度を便宜調整し浸漬塗布した後、170℃で30分間加熱乾燥し、厚さ10μmの表面層44を形成し、帯電ロール13を得た。
・高分子材料 ・・・・100重量部
(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液)バイロン30SS:東洋紡績社製
・硬化剤 ・・・26.3重量部
(アミノ樹脂溶液)スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業社製)
・導電剤 ・・・・35重量部
(アンチモンドープ酸化スズ)SN−100P:石原産業社製
以上の工程によって形成された帯電ロール13の断面を顕微鏡像により測定した結果、端部平均層厚9.3μm、中央側平均層厚5μmであった。表面層の層厚は図9のようであった。なお、図9に示す領域Aは、図1に示す領域Aと同じ位置であり、表面層44の端部を示す。
【0056】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、試験終了まで濃度ムラは発生しなかった。
(比較例1)
実施例1と同様の方法にて弾性層を形成させた。
【0057】
表面層を形成させるため、実施例1と同様にして作製した分散液を、メタノールで希釈し、弾性層の表面に塗布初速度及び加速度を便宜調整し浸漬塗布後、150℃で15分間加熱乾燥し、軸方向にほぼ均等な厚さ12μmの表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0058】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、70,000枚印字したところで濃度ムラが発生した。
(比較例2)
実施例1と同様の方法にて弾性層を形成させた。
【0059】
表面層を形成させるため、実施例2と同様にして作製した分散液を、MEKで希釈し、弾性層の表面に塗布初速度及び加速度を便宜調整し浸漬塗布後、170℃で30分間加熱乾燥し、軸方向にほぼ均等な厚さ9μmの表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0060】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、80,000枚印字したところで濃度ムラが発生した。
(比較例3)
実施例1と同様の方法にて弾性層を形成させた。
【0061】
表面層を形成させるため、実施例3と同様にして作製した分散液を、MEKで希釈し、弾性層の表面に塗布初速度及び加速度を便宜調整し浸漬塗布後、170℃で30分間加熱乾燥し、軸方向にほぼ均等な厚さ7μmの表面層を形成し、帯電ロール13を得た。
【0062】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、50,000枚印字したところで濃度ムラが発生した。
【0063】
図10は、上記試験結果を示し、表面層44の端部の平均層厚が中央側の平均層厚より厚くなっている実施例では、濃度ムラが発生しないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電ロールの回転軸に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る帯電ロールの軸直角方向に沿った断面図である。
【図3】(A)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールを浸漬させる前の図面である。(B)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールを浸漬させた状態の図面である。
【図4】(A)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールの上端を引上げる状態の図面である。(B)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールの中央部を引上げる状態の図面である。
【図5】(A)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールの下端を引上げる状態の図面である。(B)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールを引上げた状態の図面である。
【図6】本発明の実施例1に係る帯電ロールの表面層を塗布する塗布速度を示した図面である。
【図7】本発明の実施例1に係る帯電ロールの表面層の層厚を示した図面である。
【図8】本発明の実施例2に係る帯電ロールの表面層の層厚を示した図面である。
【図9】本発明の実施例3に係る帯電ロールの表面層の層厚を示した図面である。
【図10】本発明の実施例の試験結果を示した図面である。
【図11】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0065】
12 感光体ドラム(被帯電体)
13 帯電ロール
40 導電性支持体
42 弾性層(導電層)
44 表面層
50 塗布液
56 塗布槽
100 画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体の表面を帯電させる帯電ロール、この帯電ロールの製造方法、及びこの帯電ロールを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、被帯電体としての感光体表面を均一に帯電させる部材として、帯電ロールが多用されている。帯電ロールは、電圧を印加された状態で感光体に接触または近接し、感光体との間の微少な間隙にて放電し感光体表面を帯電させる。上記帯電ロールは、感光体を均一に帯電させるために、抵抗、形状が厳密に制御されている(特許文献1)。
【0003】
近年、帯電ロール、及び、帯電ロールを用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置の耐久性の向上に対する要求が強い。直流に交流を重畳した電圧を印加した帯電ロールの場合、交流電流量が多いと感光体の表面層の磨耗を促進するため、交流電流はできるだけ少ない方が好ましい。一方、交流電流が少ないと帯電ロールの抵抗不均一、形状の異常などに起因する濃度ムラが発生しやすくなり、帯電ロール、及び帯電ロールを用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置の耐久性は低下する。これらに対しては、感光体への保護層の付与、クリーニング工程の最適化などにより感光体の磨耗を減らす技術が提案されており改善が進んでいる。
【特許文献1】特開2004−19680
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、感光体の磨耗の問題が改善されることで、帯電ロールの耐久性が課題となってきた。帯電ロールを用いた画像形成装置の長期の使用において、ハーフトーン画像の用紙中央部が薄く、用紙端部に行くに従い濃くなる濃度ムラという問題が発生する。これは、帯電ロールの両端部で帯電不良を起こし感光体の帯電電位が低くなったことが原因であった。
【0005】
帯電ロールの両端部の帯電不良は、中央側と比較して両端部の抵抗の上昇が早く、両端部と中央側の抵抗比が大きくなることが原因である。中央側の抵抗上昇速度が両端部と同じであれば帯電ロールへの印加電圧が上昇するものの、帯電不良を発生することは無く、また、濃度ムラは発生せず、帯電ロールの耐久性は向上する。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、帯電ロールの両端部と中央側の抵抗比が大きくなるのを抑えることにより、帯電ロールの帯電不良を防止することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る帯電ロールは、導電性支持体の回りに2層以上の導電層が形成され、電圧が印加されると被帯電体を帯電させる帯電ロールであって、前記導電層のうち表面層の放電領域の端部より前記表面層の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの前記表面層の平均層厚を、中央側の平均層厚より厚くしたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、放電領域の端部より表面層の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの表面層の平均層厚が、中央側の平均層厚より厚くなっている。
【0009】
この構成により、この帯電ロールを用いた画像形成装置の長期の使用において、帯電ロールの表面層の中央側と比較して両端部の抵抗の上昇がほぼ等しくなり、両端部と中央側の抵抗比が大きくなることが抑えられる。これにより、帯電ロールの帯電不良を防止することができる。
【0010】
本発明の請求項2に係る帯電ロールの製造方法は、導電性支持体の回りに2層以上の導電層が形成され、電圧が印加されると被帯電体を帯電させる帯電ロールの製造方法であって、前記導電性支持体の回りに形成された導電層を導電性の塗布液が貯留された塗布槽へ浸漬する工程と、前記導電性支持体を前記塗布槽から軸方向に引き上げるとき、前記導電層の上端部側及び下端部側を引き上げる速度を、前記導電層の中央側を引き上げる速度より速くして、表面層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、導電性支持体を塗布槽から引き上げて表面層を形成させるとき、導電層の上端部側及び下端部側を引き上げる速度が、中央側を引き上げる速度より速く設けられている。
【0012】
これにより、表面層の上端部及び下端部の平均層厚が中央側の平均層厚より厚くなる帯電ロールを容易に製造することができる。また、この帯電ロールを使用することで、帯電ロールの帯電不良を防止することができる。
【0013】
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、請求項1に記載の帯電ロールを備えたことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、画像形成装置に請求項1記載の帯電ロールが備えられているため、帯電ロールの帯電不良を防止することができる。従って、出力画像の端部に発生する濃度ムラを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、帯電ロールの帯電不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の帯電ロール13が採用された画像形成装置100の実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0017】
図11に示されるように、この画像形成装置100は、図示しないパーソナルコンピュータ等の画像データ入力装置から送られてくるカラー画像情報に基づいて画像処理を行い、電子写真方式によって記録媒体としての記録用紙Pにカラー画像を形成するものである。
【0018】
画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kを備えている。なお、以降、YMCKを区別する必要がある場合は、符号の後にY、M、C、Kの何れかを付して説明し、YMCKを区別する必要が無い場合は、Y、M、C、Kを省略する。
【0019】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、バックアップロール34と複数の張架ロール32によって張架された無端状の中間転写ベルト30の進行方向に対して、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの順番で直列に配列されている。また、中間転写ベルト30は、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの像担持体としての感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kと、それぞれ対向して配設される一次転写ロール16Y、16M,16C,16Kとの間を挿通している。
【0020】
次に、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの構成と画像形成の動作とを、代表してイエロートナー画像を形成する画像形成ユニット10Yについて説明する。
【0021】
感光体ドラム12Yの表面は、帯電ロール13Yにより一様に帯電される。帯電ロール13Yの表面は、帯電ロール13Yと従動回転する中空体の帯電ロールクリーナー38Yによって清掃される。なお、帯電ロール13に関しては、詳細を後述する。
【0022】
次に、露光装置14Yによりイエロー画像に対応する像露光がなされ、感光体ドラム12Yの表面にイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。
【0023】
イエロー画像に対応する静電潜像は、現像装置15Yの現像ロール18Yに担持されたトナーによって現像され、イエロートナー画像となる。イエロートナー画像は、一次転写ロール16Yの圧接力と、一次転写ロール16Yに印加された転写バイアスによる静電吸引力によって、中間転写ベルト30上に一次転写される。
【0024】
この一次転写では、イエロートナー画像は全て中間転写ベルト30に転写されず、一部が転写残留イエロートナーとして、感光体ドラム12Yに残留する。また、感光体ドラム12Yの表面には、トナーの外添剤なども付着している。一次転写後の感光体ドラム12Yは、感光体クリーナー20Yとの対向位置を通過し、感光体ドラム12Yの表面の転写残留トナーなどが除去される。その後、感光体ドラム12Yの表面は、つぎの画像形成サイクルの為、帯電ロール13Yで再び帯電される。
【0025】
また、画像形成装置100では、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、上記と同様の画像形成工程が各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにおいて行われ、中間転写ベルト30上に、順次、Y,M,C,Kの各色トナー像が重ねられ、多重トナー像が形成される。
【0026】
そして、所定のタイミングで二次転写位置Aへと搬送されてきた記録用紙Pに、転写バイアスが印加された二次転写ロール36の静電吸引力によって、中間転写ベルト30から多重トナー像が一括して、記録用紙Pに転写される。
【0027】
多重トナー像が転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト30から分離された後、定着装置31へと搬送され、熱と圧力とにより記録用紙Pに定着されてフルカラー画像が形成される。
【0028】
記録用紙Pに転写されなかった中間転写ベルト30上の転写残留トナーは、中間転写ベルト用クリーナー33で回収される。
【0029】
次に帯電ロール13の構成について詳細に説明する。
【0030】
図2に示されるように、帯電ロール13は、ロール状の導電性支持体40と、この導電性支持体40上に設けられ、ゴム、エラストマー、樹脂等から形成される導電層としての弾性層42と、この弾性層42上に設けられ、樹脂溶液の塗布により形成される導電層としての表面層44と、を備えている。
【0031】
なお、弾性層42が複数の層から構成されても良く、さらに、弾性層42と表面層44の間に一つ以上の導電層が設けられていても良く、また、導電性支持体40と弾性層42を接着させるために、プライマー層を導電性支持体40と弾性層42の間に設けても良い。
【0032】
導電性支持体40は、帯電ロール13の電極及び支持部材として機能するもので、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロム又はニッケル等でメッキ処理を施した鉄、導電性の樹脂、などの導電性の材質で構成される。
【0033】
さらに、弾性層42は、例えばゴム材中に導電剤を分散させることによって形成される。ゴム材としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、及びこれらのブレンドゴムが挙げられる。中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムおよびこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。また、これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0034】
また、弾性層42に電子伝導性を付与する導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物、絶縁物質の表面を導電化処理したもの、などの微粉末を挙げることができる。さらに、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩を挙げることができる。
【0035】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、電子導電剤の場合は、ゴム材100重量部に対して、1〜30重量部の範囲であることが好ましく、15〜25重量部の範囲であることがより好ましい。一方、イオン導電剤の場合は、ゴム材100重量部に対して、0.1〜5.0重量部の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0重量部の範囲であることがより好ましい。
【0036】
表面層44は、帯電ロール13表面汚れの蓄積を防止する保護層として機能するもので、高分子材料中に導電剤を分散させることによって形成される。例えば、高分子材料としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0037】
また、表面層44に電子伝導性を付与する導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物、絶縁物質の表面を導電化処理したもの、などの微粉末を挙げることができる。
【0038】
次に表面層44の層厚について図1に従って説明する。
【0039】
図1に示されるように、表面層44の放電領域の端部より表面層44の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの領域Aの表面層44の平均層厚が中央側の平均層厚より厚くされている。
【0040】
これにより、画像形成装置100(図11参照)の長期の使用により、帯電ロール13の表面層44の中央側と比較して両端部の抵抗が早く上昇することによる、両端部と中央側の抵抗比が大きくなることを防止することができる。このため、帯電ロールの帯電不良を防止することができ、さらに、出力画像の端部に発生する濃度ムラを防止することができる。
【0041】
なお、帯電ロール13に印加する電圧は直流成分のみであっても、直流に交流が重畳されていても良い。直流に交流が重畳されている場合は、交流電流が少ない方が感光体の磨耗を少なくすることができるため好ましく、交流の電流値が、交流の放電開始電圧時の電流の1.0倍以上、1.3倍以下であることが好ましい。
【0042】
次に表面層44を帯電ロール13に塗布する塗布方法について説明する。
【0043】
表面層44の塗布方法としては、ロールコーティング法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬塗布法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ロールコーティング法は端部ダレを生じないため、端部付近を中央部付近より厚くする本発明に好ましく適用できる。また、浸漬塗布法は端部ダレが生じるものの、欠陥の少ない膜を効率的に形成できるため好ましく適用できる。
【0044】
本実施形態の表面層44の塗布方法について、図3〜5に従って詳細に説明する。
【0045】
図3(A)に示されるように、導電性支持体40と弾性層42から形成されるロール部材46の長手方向を塗布液50の液面に対して垂直となるように、ロール部材46を浸漬塗布装置52のチャッキング装置54に取り付ける。このチャッキング装置54を図示しない駆動力にて下方に移動させることにより、図3(B)に示されるように、ロール部材46を塗布液50が貯留された塗布槽56に浸漬させる。
【0046】
次工程では、図4(A)に示されるように、チャッキング装置54を上方に速度V1で移動させることにより、ロール部材46の上端部を塗布液50から引き上げる。
【0047】
さらに、図4(B)に示されるように、チャッキング装置54を上方に速度V2で移動させることにより、ロール部材46の中央側を塗布液50から引き上げる。
【0048】
また、図5(A)に示されるように、チャッキング装置54を上方に速度V3で移動させることにより、ロール部材46の下端部を塗布液50から引き上げ、図5(B)に示すように、ロール部材46を完全に塗布槽56から引上げることで表面層44を形成させる。
【0049】
ここで、ロール部材46の上端部及び下端部を引上げる速度V1、V3が、中央側を引上げる速度V2より速く設定されている。これにより、表面層44の上端部及び下端部の領域A(図1参照)の平均層厚を中央側の平均層厚より容易に厚くすることができる。
【0050】
なお、塗布速度をVXとするとVX=V0-atで表される負の等加速度運動を塗布速度の変化に加えることで、さらに容易に好ましい層厚分布を獲得できる。(V0:初速度、a:加速度、t:時間)
次に、この構成において、以下の試験方法により、出力画像の濃度ムラを確認した。
<試験方法>
帯電ロール13をカラー複写機DocuCentre Color450a:富士ゼロックス社製に装着し、10℃、15%RH環境下でA4用紙100,000枚を印字する。なお、帯電ロール13以外の帯電ロールクリーナー38、感光体ドラム12、感光体クリーナー20を含むプロセスカートリッジは、50,000枚で交換した。また、帯電ロール13への交流電流は、放電開始電圧時の電流の1.1倍に設定した。
<評価方法>
中間的な濃度であるハーフトーン画像での濃度ムラの確認を試験中及び試験終了後に行った。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
弾性層42を形成させるため、下記混合物をオープンロールで混練りし、SUS416からなる直径8mmの導電性支持体40表面に、厚さ3mmとなるように円筒状に被覆し、内径14.0mmの円筒型の金型に入れ、170℃で30分間加硫させ、金型から取り出した後、研磨し、中央部の層厚が端部の層厚より薄い円筒状の弾性層42を得た。中央部と端部の外径の差は85μmであった。
・ゴム材 ・・・・・・・・・100重量部
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム)Gechron3106:日本ゼオン社製)
・導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製)
・・・25重量部
・導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製) ・・・・8重量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム) ・・・・1重量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製 ・・・・1重量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製) ・・2.0重量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT:大内新興化学工業社製) ・・0.5重量部
次に表面層44を形成させるため、下記混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液を、メタノールで希釈し、表面層の塗布液を得た。弾性層42の表面に、図6に示した塗布速度にて塗布液50から引き上げた。その後、150℃で15分間加熱乾燥し、表面層44を形成し、帯電ロール13を得た。
・高分子材料 ・・・100重量部
(共重合ナイロン)アラミンCM8000:東レ社製
・導電剤 ・・・20重量部
(カーボンブラック)MONARCH1000:キャボット社製 pH2.0
・溶剤(メタノール) ・・・500重量部
・溶剤(ブタノール) ・・・240重量部
以上の工程によって形成された帯電ロール13の断面を顕微鏡像により測定した結果、端部平均層厚14.3μm、中央側平均層厚10μmであった。表面層の層厚は図7のようであった。なお、図7に示す領域Aは、図1に示す領域Aと同じ位置であり、表面層44の端部を示す。
【0052】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、試験終了まで濃度ムラは発生しなかった。
(実施例2)
実施例1と同様の方法にて弾性層42を形成させた。
【0053】
表面層44を形成させるため、下記混合物をビーズミルにて分散し、得られた分散液を、MEKで希釈し、弾性層42の表面に塗布速度を便宜調整し浸漬塗布した後、170℃で30分間加熱乾燥し、表面層を形成し、帯電ロール13を得た。
・高分子材料 ・・・・100重量部
(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液)バイロン30SS:東洋紡績社製
・硬化剤 ・・・26.3重量部
(アミノ樹脂溶液)スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業社製)
・導電剤 ・・・24重量部
(カーボンブラック)MONARCH1000:キャボット社製 pH2.0
以上の工程によって形成された帯電ロール13の断面を顕微鏡像により測定した結果、端部平均層厚9.7μm、中央側平均層厚8μmであった。表面層の層厚は図8のようであった。なお、図8に示す領域Aは、図1に示す領域Aと同じ位置であり、表面層44の端部を示す。
【0054】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、試験終了まで濃度ムラは発生しなかった。
(実施例3)
実施例1と同様の方法にて弾性層42を形成させた。
【0055】
表面層44を形成させるため、下記混合物をビーズミルにて分散し、得られた分散液を、MEKで希釈し、弾性層42の表面に塗布初速度及び加速度を便宜調整し浸漬塗布した後、170℃で30分間加熱乾燥し、厚さ10μmの表面層44を形成し、帯電ロール13を得た。
・高分子材料 ・・・・100重量部
(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液)バイロン30SS:東洋紡績社製
・硬化剤 ・・・26.3重量部
(アミノ樹脂溶液)スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業社製)
・導電剤 ・・・・35重量部
(アンチモンドープ酸化スズ)SN−100P:石原産業社製
以上の工程によって形成された帯電ロール13の断面を顕微鏡像により測定した結果、端部平均層厚9.3μm、中央側平均層厚5μmであった。表面層の層厚は図9のようであった。なお、図9に示す領域Aは、図1に示す領域Aと同じ位置であり、表面層44の端部を示す。
【0056】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、試験終了まで濃度ムラは発生しなかった。
(比較例1)
実施例1と同様の方法にて弾性層を形成させた。
【0057】
表面層を形成させるため、実施例1と同様にして作製した分散液を、メタノールで希釈し、弾性層の表面に塗布初速度及び加速度を便宜調整し浸漬塗布後、150℃で15分間加熱乾燥し、軸方向にほぼ均等な厚さ12μmの表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0058】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、70,000枚印字したところで濃度ムラが発生した。
(比較例2)
実施例1と同様の方法にて弾性層を形成させた。
【0059】
表面層を形成させるため、実施例2と同様にして作製した分散液を、MEKで希釈し、弾性層の表面に塗布初速度及び加速度を便宜調整し浸漬塗布後、170℃で30分間加熱乾燥し、軸方向にほぼ均等な厚さ9μmの表面層を形成し、帯電ロールを得た。
【0060】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、80,000枚印字したところで濃度ムラが発生した。
(比較例3)
実施例1と同様の方法にて弾性層を形成させた。
【0061】
表面層を形成させるため、実施例3と同様にして作製した分散液を、MEKで希釈し、弾性層の表面に塗布初速度及び加速度を便宜調整し浸漬塗布後、170℃で30分間加熱乾燥し、軸方向にほぼ均等な厚さ7μmの表面層を形成し、帯電ロール13を得た。
【0062】
この場合に、ハーフトーン画像での濃度ムラの確認をした結果、50,000枚印字したところで濃度ムラが発生した。
【0063】
図10は、上記試験結果を示し、表面層44の端部の平均層厚が中央側の平均層厚より厚くなっている実施例では、濃度ムラが発生しないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電ロールの回転軸に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る帯電ロールの軸直角方向に沿った断面図である。
【図3】(A)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールを浸漬させる前の図面である。(B)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールを浸漬させた状態の図面である。
【図4】(A)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールの上端を引上げる状態の図面である。(B)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールの中央部を引上げる状態の図面である。
【図5】(A)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールの下端を引上げる状態の図面である。(B)本発明の実施形態に係る帯電ロールの表面層を形成させる浸漬塗布装置を示し、帯電ロールを引上げた状態の図面である。
【図6】本発明の実施例1に係る帯電ロールの表面層を塗布する塗布速度を示した図面である。
【図7】本発明の実施例1に係る帯電ロールの表面層の層厚を示した図面である。
【図8】本発明の実施例2に係る帯電ロールの表面層の層厚を示した図面である。
【図9】本発明の実施例3に係る帯電ロールの表面層の層厚を示した図面である。
【図10】本発明の実施例の試験結果を示した図面である。
【図11】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0065】
12 感光体ドラム(被帯電体)
13 帯電ロール
40 導電性支持体
42 弾性層(導電層)
44 表面層
50 塗布液
56 塗布槽
100 画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体の回りに2層以上の導電層が形成され、電圧が印加されると被帯電体を帯電させる帯電ロールであって、
前記導電層のうち表面層の放電領域の端部より前記表面層の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの前記表面層の平均層厚を、中央側の平均層厚より厚くしたことを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
導電性支持体の回りに2層以上の導電層が形成され、電圧が印加されると被帯電体を帯電させる帯電ロールの製造方法であって、
前記導電性支持体の回りに形成された導電層を導電性の塗布液が貯留された塗布槽へ浸漬する工程と、
前記導電性支持体を前記塗布槽から軸方向に引き上げるとき、前記導電層の上端部側及び下端部側を引き上げる速度を、前記導電層の中央側を引き上げる速度より速くして、表面層を形成する工程と、
を有することを特徴とする帯電ロールの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の帯電ロールを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
導電性支持体の回りに2層以上の導電層が形成され、電圧が印加されると被帯電体を帯電させる帯電ロールであって、
前記導電層のうち表面層の放電領域の端部より前記表面層の軸方向の長さの3%の位置から10%の位置までの前記表面層の平均層厚を、中央側の平均層厚より厚くしたことを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
導電性支持体の回りに2層以上の導電層が形成され、電圧が印加されると被帯電体を帯電させる帯電ロールの製造方法であって、
前記導電性支持体の回りに形成された導電層を導電性の塗布液が貯留された塗布槽へ浸漬する工程と、
前記導電性支持体を前記塗布槽から軸方向に引き上げるとき、前記導電層の上端部側及び下端部側を引き上げる速度を、前記導電層の中央側を引き上げる速度より速くして、表面層を形成する工程と、
を有することを特徴とする帯電ロールの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の帯電ロールを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−286247(P2007−286247A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112170(P2006−112170)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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