説明

帯電ロール

【課題】2成分系トナーを用いた電子写真装置に用いられる帯電ロールであって、ロール全体の硬度が適度に設定され、しかも表層へのキャリアの食い込みや突き刺さりを生じることのない帯電ロールを提供する。
【解決手段】軸体1と、上記軸体1の外周に形成されるベースゴム層2と、上記ベースゴム層2の外周に直接もしくは他の層を介して形成される表層5とを備え、上記ベースゴム層2が、JIS−A硬度が15°以下のゴム成分を主成分とするベースゴム層形成材料によって形成されており、上記表層5が、JIS K6251に基づく伸び(Eb)が5〜90%、引っ張り強さ(TS)が35MPa以上の表層形成材料によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、プリンター等の電子写真装置のなかでも、特に、2成分系トナーを用いた電子写真装置に用いられる帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真複写機による複写は、つぎのようにして行われている。すなわち、まず、感光ドラムを帯電させ、その感光ドラム表面に原稿像を、光学系を介して投射し、光が投射された部分の帯電を打ち消すことにより、静電潜像を形成する。つぎに、上記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成した後、このトナー像を、複写紙に転写して、複写画像を得る。そして、感光ドラム表面に残留するトナーは、クリーニングブレード等で掻き取られ、感光ドラム表面にトナーが残留しない状態で、つぎの帯電に供される。
【0003】
上記静電潜像の形成に先立って感光ドラム表面を帯電させる方式としては、近年、帯電ロールによる帯電方式が多く採用されており、上記帯電ロールとしては、軸体の外周に、ゴム弾性体からなるベースゴム層が形成され、さらにその外周に、必要に応じて軟化剤移行防止層、抵抗調整層が形成され、最外層として、樹脂塗膜からなる表層が形成されたものが一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。なお、上記帯電ロールのベースゴム層はロール形状を形作り、軟化剤移行防止層はベースゴム層からの軟化剤・加硫剤等のブルームを防止する等の機能を有し、全体として、耐久性、トナー離型性、感光ドラムへの追従性等の特性が最適化されるよう調整されている。
【特許文献1】特開2000−291634公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような帯電ロールにおいて、最近、トナーや感光ドラムへのストレスの低減化、安定したニップ性確保による高画質化、耐久画像性能の向上による長寿命化等を目的として、ベースゴム層を低硬度化してロール全体を低硬度化することが、強く求められている。
【0005】
しかしながら、現像剤としてトナーとキャリア(磁性粉)とを組み合わせた2成分系トナーを用いた電子写真装置において、上記低硬度化された帯電ロールを用いると、ロール表面の変形が大きいため、帯電ロール表面にキャリアやトナーが食い込み、その部分が帯電不良となり画像不良を引き起こしやすいという問題がある。
【0006】
すなわち、現像後、感光ドラム表面に残留するキャリアやトナーは、すでに述べたように、クリーニングブレード等で掻き取られ、感光ドラム表面にトナーが残留しない状態でつぎの帯電に供されるようになっているが、現実には、キャリアやトナーが上記クリーニングブレード等をすり抜けたり、クリーニングブレード等に欠けを生じてその部分における掻き取りが不充分になったりして、帯電時にも感光ドラム表面にキャリアやトナーが残留しやすい。特に、最近は、高画質化のために、従来の粉砕トナーに代えて略球状の重合トナーが多用されており、クリーニング不良が発生しやすいため、トナー等が残留した状態で帯電ロールによる帯電がなされることとなり、これが帯電ロールに悪影響を及ぼすのである。
【0007】
そこで、前記ロール表面の変形を抑え、残留トナー等の食い込みを解消するために、表層を高硬度化することが考えられるが、表層を高硬度化すると、ベースゴム層の変形量に対する表層の変形量が不足して、感光ドラムやトナーへのストレスが大きくなり、ベースゴム層を低硬度化した意味が失われる。また、硬い表層と硬いキャリアとの接触によって表層に割れや亀裂が発生し、その開口にキャリアやトナーが突き刺さって画像不良やリークを招きやすいという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、2成分系トナーを用いた電子写真装置に用いられる帯電ロールであって、ロール全体の硬度が適度に設定され、しかも表層へのキャリアの食い込みや突き刺さりを生じることのない、優れた帯電ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の帯電ロールは、2成分系トナーを用いた電子写真装置に用いられる帯電ロールであって、軸体と、上記軸体の外周に形成されるベースゴム層と、上記ベースゴム層の外周に直接もしくは他の層を介して形成される表層とを備え、上記ベースゴム層が、JIS−A硬度が15度以下のゴム成分を主成分とするベースゴム層形成材料によって形成されており、上記表層が、JIS K6251に基づく伸び(Eb)が5〜90%、引っ張り強さ(TS)が35MPa以上の表層形成材料によって形成されているという構成をとる。
【0010】
すなわち、本発明者は、前記課題を解決するために、2成分系トナーを用いた電子写真装置に用いられる帯電ロールにおいて、その表層を中心に研究を重ねた。そして、その過程で、表層形成材料の伸びが大きいと、図1(a)に示すように、硬いキャリア10が表層5に圧接されると表層5が凹み、その凹部にキャリア10やトナー11が食い込んで、その部分の帯電不良を引き起こすことが判明した。また、表層形成材料の引っ張り強さが不充分だと、図1(b)に示すように、硬いキャリア10の圧接によって表層5が破れ、その開口にキャリア10が突き刺さり、やはり帯電不良を引き起こすことが判明した。そこで、適度な伸びと引っ張り強さを兼ね備えた表層形成材料を用いると、図1(c)に示すように、キャリア10およびトナー11の食い込みや突き刺さりが抑制され、高品質の帯電ロールを得ることができるのではないか、との観点から、さらに研究を重ねた結果、ベースゴム層の形成材料として、その主成分であるゴム成分がJIS−A硬度15°以下のものを用い、表層5の形成材料として、JIS K6251に基づく伸び(Eb)が5〜90%、引っ張り強さ(TS)が35MPa以上のものを用いると、ロール全体が好ましい低硬度となり、しかも表層5へのキャリア10の食い込みや突き刺さりが抑制されることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の帯電ロールは、そのベースゴム層が、JIS−A硬度が15°以下のゴム成分を主成分とするベースゴム層形成材料によって形成されており、上記表層が、JIS K6251に基づく伸び(Eb)が5〜90%、引っ張り強さ(TS)が35MPa以上の表層形成材料によって形成されている。そのため、本発明の帯電ロールは、ロール全体が好ましい低硬度となり、しかも表層へのキャリアの食い込みや突き刺さりが抑制されるようになっている。したがって、本発明の帯電ロールを、2成分系トナーを用いた電子写真装置に組み込むことにより、長期にわたって高品質の複写画像、印刷画像を得ることができる。
【0012】
特に、上記ベースゴム層形成材料として、シリコーンゴムを主成分とするものを用いると、ベースゴム層の特性がより好ましいものとなり、長期にわたって、より優れた品質の複写画像、印刷画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0014】
本発明の帯電ロールは、例えば、図2に示すように、軸体1の外周面に沿って形成されたベースゴム層2と、その外周面に沿って形成された軟化剤移行防止層3と、その外周面に沿って形成された抵抗調整層4と、さらにその外周面に沿って形成された表層5とで構成される、4層構造のロールである。
【0015】
上記軸体1としては、特に限定されるものではなく、例えば、図示のような中実体以外にも、中空円筒体からなる芯金であってもよい。そして、その形成材料についても、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属材料等があげられる。なお、必要に応じ、軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布してもよく、これらの接着剤、プライマー等には、導電性を付与することができる。
【0016】
上記軸体1の外周面に形成されるベースゴム層2の形成材料としては、特に限定されるものではないが、JIS−A硬度が15°以下のゴム成分を主成分とするものでなければならない。すなわち、上記ゴム成分のJIS−A硬度が15°を超えると、ロール全体の硬度が高くなりすぎて、トナーや感光ドラムへのストレスの低減化、安定したニップ性確保による高画質化、耐久画像性能の向上による長寿命化を達成することができない。
【0017】
上記ゴム成分としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等があげられ、単独であるいは2種以上併せて用いられる。なかでも、シリコーンゴムを用いることが、ベースゴム層2の特性がより好ましいものとなり、好適である。
【0018】
また、上記ベースゴム層2の形成材料には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の従来公知の導電剤が、適宜添加される。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等を適宜添加してもよい。
【0019】
上記ベースゴム層2の外周面に形成される軟化剤移行防止層3の形成材料としては、例えば、N−メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂やポリエステル等に、カーボンブラック等の導電剤を配合したものがあげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
【0020】
上記軟化剤移行防止層3の外周面に形成される抵抗調整層4の形成材料としては、例えば、ヒドリンゴム、EPDM、SBR、NBR、H−NBR、ポリウレタン系エラストマー等に、カーボンブラック、金属酸化物、四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸リチウム等の導電剤を配合したものがあげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
【0021】
上記ベースゴム層2、軟化剤移行防止層3および抵抗調整層4の各層形成材料の調製方法の一例をあげると、まず、ベースゴム層2の形成材料(コンパウンド状)は、上記各成分をニーダー等の混練機により混練して調製することができる。また、軟化剤移行防止層3および抵抗調整層4の形成材料(コーティング液)は、上記各成分を、ボールミルやロール等で混練し、この混合物に溶剤を加えて混合攪拌することにより調製することができる。
【0022】
上記抵抗調整層4の外周面に形成される表層5の形成材料は、JIS K6251に基づく伸び(Eb)が5〜90%、引っ張り強さ(TS)が35MPa以上の特性を備えたものでなければならない。すなわち、上記伸びが5%未満では、JIS−A硬度が10°以下、という低硬度に設定されたベースゴム層2に由来する柔軟性に追従することができず、ロール全体に対する低硬度化への要求に応えることができない。逆に、伸びが90%を超えると、キャリアやトナーが表層5に食い込んでトラブルが発生しやすい。また、上記引っ張り強さが35MPa未満では、表層5に割れや亀裂が生じ、キャリアが突き刺さって、やはりトラブルが発生しやすいからである。
【0023】
なお、上記伸び(Eb)および引っ張り強さ(TS)は、例えば、表層形成材料を用いて樹脂シート(ダンベル試験片2号)を作製し、これに対し、JIS K6251に準じて測定を行うことにより得られる値である。
【0024】
このような特性を備えた表層5の形成材料の材質は、特に限定するものではないが、例えば、N−メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、導電性付与のため、カーボンブラック等の従来公知の導電剤が、上記材料中に適宜添加される。そして、この表層5の電気抵抗は1×106 〜1×1010Ω・cmの範囲に設定することが好適である。
【0025】
なお、上記表層5の形成材料のなかでも、下記の式(1)に示す繰り返し単位を有するN−メトキシメチル化ナイロンを用い、その硬化剤として、N−メトキシメチル化ナイロン100重量部(以下、「部」と略す)に対しメラミン系樹脂を10〜120部、なかでも30〜100部の割合で配合してなる樹脂組成物を用いることが、目的とする特性のものを得る上で、特に好適である。そして、そのなかでも、下記の式(1)におけるmが5である「8−ナイロン」が、とりわけ好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
また、上記メラミン系樹脂としては、メラミンをはじめ、尿素,チオ尿素,グアニジン,グアナミン等の多官能のアミノ基を有する材料と、ホルムアルデヒドとを反応させることにより得られる、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ジメチロール尿素ジメチロールグアニジンや、一価アルコールでエーテル化したりメトキシメチル化をしたメラミン樹脂等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。そして、上記メラミン系樹脂の分子量は、通常、100〜4000であり、好ましくは分子量100〜500の範囲である。
【0028】
上記表層5の形成材料は、通常、溶剤に溶解し、コーティング液として使用に供される。上記溶剤としては、メタノール、水、トルエン、エタノール、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。特に、上記表層5の形成材料に対する溶解性の点で、メタノール/水混合溶液を溶剤として用いることが好ましい。そして、このようにして得られるコーティング液は、粘度を0.005〜6Pa・sにすることが、塗工性等の点で好ましい。
【0029】
なお、上記調製のコーティング液には、カーボンブラック等の導電剤を加えてもよい。また、上記各成分とともに、必要に応じて、充填剤(粗面形成用の粒子等)、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤等を適宜に配合してもよい。
【0030】
本発明の帯電ロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0031】
すなわち、まず、前記のようにして調製されたベースゴム層2の形成材料を用い、金型成形法を用いて、軸体1の外周面に沿ってベースゴム層2を一体的に形成する。つぎに、上記ベースゴム層2の外周面に、前記軟化剤移行防止層3の形成材料(コーティング液)を、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の適宜の方法によって塗工し、乾燥・加熱することにより、軟化剤移行防止層3を形成する。そして、上記軟化剤移行防止層3の外周面に、前記抵抗調整層4の形成材料(コーティング液)を、上記と同様、適宜の方法によって塗工し、乾燥・加熱することにより、抵抗調整層4を形成する。このようにして、ベースゴム層2と、軟化剤移行防止層3と、抵抗調製層4とが、この順で積層形成されたロール基体を作製する。
【0032】
一方、前記表層5用の各成分を溶剤に溶解し、サンドミル等で分散し、溶解することにより、表層5形成材料(コーティング液)を調製し、上記ロール基体の抵抗調整層4の外周面に、上記コーティング液を塗工する。この塗工法も、特に制限するものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の適宜の方法を用いる。そして、塗工後、乾燥および加熱処理(条件:60〜170℃)を行うことにより、コーティング液中の溶剤を蒸発除去させ、さらに架橋反応させる。このようにして、図2に示すような4層構造の帯電ロールを作製することができる。
【0033】
なお、本発明の帯電ロールにおいては、各層の厚みは、ロールの使用用途により適宜決定されるが、例えば、ベースゴム層2の厚みは1〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは厚み2〜6mmである。また、軟化剤移行防止層3の厚みは、3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは厚み5〜10μmである。また、抵抗調整層4の厚みは、10〜800μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは厚み100〜300μmである。
【0034】
そして、表層5の厚みは、1〜30μmに設定することが好ましく、特に好ましくは厚み3〜20μmの範囲である。すなわち、表層5の厚みが1μm未満であると、表層の厚みが薄すぎてブルームしやすくなる傾向がみられるからであり、逆に、表層5の厚みが30μmを超えると、コーティング性等の加工性に劣るようになる傾向がみられるからである。
【0035】
また、表層5の電気抵抗は、1×105 〜1×1011Ω・cmの範囲に設定することが好ましく、より好ましくは1×108 〜1×1010Ω・cmである。
【0036】
なお、本発明の帯電ロールの例として、図2に示すような4層構造のものをあげたが、本発明はこれに限定されるものでなく、ベースゴム層2と表層5との2層構造であってもよい。また、必要に応じ、ベースゴム層2と表層5との間の抵抗調整層4を複数層形成する等、適宜の構成にすることができる。
【0037】
そして、本発明の帯電ロールは、一般的な電子写真装置にも適用することが可能であるが、特に、キャリアとトナーを組み合わせた2成分系トナーを用いて現像を行う電子写真装置用の帯電ロールとして用いることが最適である。そして、本発明の帯電ロールを、上記2成分系トナーを用いた電子写真装置に組み込むことにより、長期にわたり良好な複写画像を得ることができる。
【0038】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例】
【0039】
〔実施例1〜10、比較例1〜5〕
(1)ベースゴム層の形成
まず、軸体となる芯金〔直径6mm、ステンレス(SUS304)製〕と、ベースゴム層形成材料として、硬さの異なる3種類のSBR(JIS−A硬度10°、15°、25°)100部にカーボンブラック10部を添加したものとを準備した。そして、後記の表1〜表3に従って3種類のSBRのいずれかを選択し、金型成形により、上記芯金外周面に、厚み3mmのベースゴム層が形成されたベースロールを作製した。
【0040】
(2)軟化剤移行防止層、抵抗調整層の形成
つぎに、N−メトキシメチル化ナイロン(ナガセケムテックス社製、EF30T−C)100部と、導電剤(ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラック・インターナショナル社製)20部とを、MEK400部と混合することにより、軟化剤移行防止層用形成材料(コーティング液A)を調製した。また、NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN401)100部と、四級アンモニウム塩(和光純薬社製、TBAHS)1部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)30部と、ステアリン酸(花王社製、ルナックS30)0.5部と、亜鉛華(堺化学工業社製)5部と、加硫助剤(三新化学社製、サンセラーCZ−G)1.07部と、加硫助剤(大内新興化学社製、ノクセラーBZ−P)0.49部と、硫黄(鶴見化学工業社製、サルファックスPTC)1部とを混合・攪拌し、抵抗調整層用形成材料(コーティング液B)を調製した。そして、上記ベースロールの外周面に、まず、上記コーティング液Aを、ロールコート法により塗工して、乾燥・加熱することにより、厚み5μmの軟化剤移行防止層を形成した。つぎに、上記コーティング液Bを、ロールコート法により塗工して、乾燥・加熱することにより、厚み150μmの抵抗調整層を形成した。このようにして、芯金の周囲に、ベースゴム層と、軟化剤移行防止層と、抵抗調整層とが、この順で積層形成されたロール基体を作製した。
【0041】
(3)表層の形成
つぎに、後記の表1〜表3に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これを、メタノール−トルエン混合溶液(メタノール:トルエン=7:3)500部に溶解して表層用形成材料(コーティング液)を調製した。そして、上記作製のロール基体の外周面に、表層形成材料であるコーティング液を、ロールコート法を用いて塗工した。そして、コーティング液を乾燥および加熱架橋させることにより、目的とする帯電ロールを作製した。なお、各帯電ロールにおける表層の厚みを、後記の表1〜表3に併せて示す。
【0042】
このようにして得られた各帯電ロールについて、前述の方法に従って、伸びと引っ張り強さを測定するとともに、下記の基準に従って評価を行った。これらの結果を後記の表1〜表3に併せて示した。
【0043】
〔トナー食い込み性〕
得られた各帯電ロールを、2成分系トナーを用いたレーザプリンタ(富士ゼロックス社製、DocuPrint C1616)に組み込んで、1万枚の画像出しを行った後、ロール表面の状態を光学顕微鏡(×1000倍)で観察した。そして、1万枚の画像出し後であっても、ロール表面にトナーの食い込みが全くないものを○、ロール表面に1個でもトナーの食い込みが発生しているものを×として評価した。
【0044】
〔キャリア突き刺さり性〕
上記と同様の観察により、1万枚の画像出し後であっても、ロール表面にキャリアの突き刺さりが全くないものを○、ロール表面に1個でもキャリアの突き刺さりが発生しているものを×として評価した。
【0045】
〔画像評価〕
上記と同様の1万枚の画像出しを行った後、プリント画像の状態を目視により評価した。すなわち、1万枚の画像出し後であってもプリント画像に問題がなく、細線にいたるまで鮮明にプリントされ、かつ、ロール表面の汚染も殆どないものを○、プリント画像に濃度むらがみられたものを×として評価した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
これらの結果から、実施例品は、いずれも、トナーの食い込みやキャリアの突き刺さりが抑制され、優れた画像が得られることがわかる。これに対し、比較例品は、いずれかの評価項目に問題があり、優れた画像を得ることができない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)、(b)、(c)はいずれも、本発明の課題を説明する模式的な説明図である。
【図2】本発明の帯電ロールの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 軸体
2 ベースゴム層
5 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分系トナーを用いた電子写真装置に用いられる帯電ロールであって、軸体と、上記軸体の外周に形成されるベースゴム層と、上記ベースゴム層の外周に直接もしくは他の層を介して形成される表層とを備え、上記ベースゴム層が、JIS−A硬度が15°以下のゴム成分を主成分とするベースゴム層形成材料によって形成されており、上記表層が、JIS K6251に基づく伸び(Eb)が5〜90%、引っ張り強さ(TS)が35MPa以上の表層形成材料によって形成されていることを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
上記ベースゴム層形成材料のゴム成分が、シリコーンゴムである請求項1記載の帯電ロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−271731(P2007−271731A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94641(P2006−94641)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】