説明

帯電ロール

【課題】高電圧・高周波の交流電圧印加時における耐振性および遮音・吸音効果に優れた帯電ロールの提供をその目的とする。
【解決手段】軸体21と、その外周に形成される導電性弾性層22および抵抗調整層23と、その外周の形成される表層24とを備え、上記表層24に、平均粒子径30μm以下の中空球状非弾性粒子25が分散含有されているに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター,ファクシミリ等の電子写真装置に用いられる帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンター等の電子写真複写機による複写は、軸中心に回転する感光ドラムに原稿像を静電潜像として形成し、これにトナーを付着させてトナー像を形成して複写紙に転写することにより行われている。そして、上記感光ドラム表面への静電潜像の形成は、予め感光ドラム表面を帯電させ、この帯電部分に対して原稿像を光学系を介して投射し、光の当たった部分の帯電を打ち消すことにより静電潜像をつくることによって行われ、上記感光ドラム表面の帯電方式としては、導電性ロールの一種である帯電ロールを、感光ドラム表面に直接接触させる方式(接触帯電方式)が、近年、多く採用されている。
【0003】
この方式を採用した電子写真複写機の一例を、図5に示す。この構成における複写動作を簡単に説明すると、まず、軸1aを中心に矢印X方向に回転する感光ドラム1の外周面に、上記感光ドラム1とは逆方向または順方向に回転する帯電ロール2を、交流電圧を印加した状態で、その外周面を部分的に弾性変形させながら従動して、感光ドラム1の外周面を帯電させる。3は露光機構部で、ここを介して原稿光像のスリツト露光8が感光ドラム1表面に到達し、原稿像に対応した静電潜像が感光ドラム1表面に形成される。4は現像装置で、上記静電潜像に対しトナーを付着させてトナー像を形成する。6は給紙機構ロールで、複写紙11を感光ドラム1表面に供給し、転写装置5を介してトナー像を複写紙11上に転写する。7はトナー像が形成された複写紙11を通過させて定着する定着ロールである。このようにして、複写体(コピー)が得られる。なお、感光ドラム1表面はクリーナー9により転写残像や残存トナーが除去され、さらにイレーサーランプ10によって全面光照射を受けて零電位化され、つぎの帯電に備える。12は電源である。
【0004】
しかし、この方式によれば、交流電圧印加時に、帯電ロール2と感光ドラム1が、互いの表面に生じる電荷によって引き合う状態と、それが打ち消される状態とを交互に繰り返すため、この引き合う力によって、帯電ロール2が感光ドラム1側に断続的に押し付けられ、微振動が発生しやすい。そして、この微振動によって帯電ロール2と感光ドラム1との間で空気が移動して異音が発生し、使用者およびその周囲の人間に不快感を与えるおそれがあるという問題を有する。
【0005】
そこで、上記帯電ロール2の微振動および異音を抑制するために、帯電ロール2の表層に、微細な弾性体を分散含有させて表層表面を粗面にして、帯電ロール2の帯電性能を維持しつつ、帯電ロール2と感光ドラム1の接触面積を小さくする技術(特許文献1参照)や、同じく帯電ロール2の表層に、熱膨張性マイクロカプセルに由来する中空球状弾性粒子を分散含有させて振動を吸収する技術(特許文献2参照)等が提案されている。
【特許文献1】特許第3024248号公報
【特許文献2】特開2004−240357公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記電子写真複写機等における印刷速度は年々上がっており、それに伴い帯電ロール2の回転速度も速くなっている。このため、感光ドラム1と帯電ロール2との接触時間が短くなって、感光ドラム1に充分な電荷付与を行うことができないことから、それを補うために、電圧印加条件が、より高電圧(例えば2kVpp以上)・高周波(例えば2500Hz以上)に設定されるようになってきている。このような高電圧・高周波条件下では、上記のように弾性粒子が含有された帯電ロールを用いても、その弾性粒子の変形と回復の周期が交流電圧のサイクルから遅れるため、弾性変形に基づく振動吸収作用がうまく機能せず、微振動・異音の低減効果があまり得られないことが判明した。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高電圧・高周波の交流電圧印加時における耐振性および遮音・吸音効果に優れた帯電ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の帯電ロールは、軸体と、その外周に形成される導電性弾性層と、上記導電性弾性層の外周に直接もしくは他の層を介して形成される表層とを備え、上記表層に、平均粒子径30μm以下の中空球状非弾性粒子が分散含有されているという構成をとる。
【0009】
すなわち、本発明者らは、高電圧・高周波の交流電圧印加時に発生する微振動・異音の低減を目的として、鋭意研究を重ねた。その結果、上記高電圧・高周波の交流電圧印加時における微振動・異音を低減するには、従来から用いられている弾性粒子ではなく、非弾性体からなる非弾性粒子を用いて表層の動きを制限する方が好ましく、しかも、各粒子が中空で吸音効果を備えたものであることが好ましいことを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の帯電ロールは、上記のように、軸体と、その外周に形成される導電性弾性層と、上記導電性弾性層の外周に直接もしくは他の層を介して形成される表層とを備え、上記表層に、平均粒子径30μm以下の中空球状非弾性粒子を分散含有させたものである。したがって、上記帯電ロールを用い、高電圧・高周波の交流電圧下で感光ドラムを帯電すると、上記中空球状非弾性粒子が、従来の弾性粒子のように弾性変形することがなく、中空状態を保つため、優れた吸音・遮音効果を奏する。そして、中空球状非弾性粒子が表層表面を適度に粗面化して感光ドラムとの接触面積を小さくし、しかもその中空球状非弾性粒子の突出した部分が、感光ドラム表面に接して帯電ロール表層の微振動を制限するとともに、その突出した中空球状非弾性粒子同士の隙間から効果的に空気を逃がすため、優れた微振動抑制効果・消音効果を奏する。このことから、本発明の帯電ロールは、高電圧・高周波印加条件で使用される各種の高速プリンターや、DC/AC重畳帯電システムを備えた小型軽量プリンター等の電子写真複写機等に、広く適用することができる。
【0011】
そして、本発明のなかでも、特に、上記中空球状非弾性粒子の殻壁厚みが、粒子径の7.5〜42.5%に設定されているものを用いた場合には、とりわけ優れた吸音効果を得ることができ、好適である。
【0012】
また、本発明のなかでも、特に、上記中空球状非弾性粒子の粒度分布が、下記の式を満たすよう設定されている場合には、とりわけ優れた吸音効果および微振動抑制効果を得ることができ、好適である。
【0013】
【数1】

【0014】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記表層の表面粗度(JIS B0601−1994によるRz、以下「Rz」と略す)が、2〜30μmに設定されている場合にも、とりわけ優れた吸音効果および微振動抑制効果を得ることができ、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
本発明の帯電ロールは、例えば、図1に示すように、軸体21の外周面に導電性弾性層22が形成され、上記導電性弾性層22の外周面に抵抗調整層23が形成され、さらにその外周面に表層24が形成された構成になっている。そして、上記表層24には、中空球状非弾性粒子25が分散含有されており、これが、本発明の最大の特徴である。
【0017】
上記軸体1としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体等が用いられる。そして、その金属材料としては、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等があげられる。なお、必要に応じ、上記軸体21の外周面に接着剤、プライマー等を塗布してもよい。そして、上記接着剤、プライマー等は、必要に応じて導電性を付与してもよい。
【0018】
また、上記軸体1の外周面に形成される導電性弾性層22の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ヒドリンゴム(ECO、CO)、シリコーンゴム等があげられる。これらの材料は、単独あるいは2種以上を併用することができる。
【0019】
そして、上記導電性弾性層22用材料には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の従来公知の導電剤が適宜添加され、さらには、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、加硫促進剤、オイル等が、適宜添加される。
【0020】
上記発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤、有機系発泡剤のいずれを用いてもよく、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、上記架橋剤としては、例えば硫黄、過酸化物等の従来公知のものがあげられる。
【0021】
なお、上記導電性弾性層22用材料は、それにより形成される導電性弾性層22の体積抵抗率が、およそ101 〜106 Ω・cmの範囲内となるよう調製することが好適である。
【0022】
上記導電性弾性層2の外周面に形成される抵抗調整層23の形成材料も、特に限定されるものではなく、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン単独重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリルゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0023】
また、上記抵抗調整層23用材料には、無機フィラー(カーボンブラック、シリカ、ガラス繊維等)、導電剤としてのカーボンブラック(FEF,SRF,ケッチェンブラック,アセチレンブラック等)、四級アンモニウム塩等のイオン導電剤、加硫剤、加硫促進剤、帯電防止剤、亜鉛華,ステアリン酸といった各種助剤等を、必要に応じて添加することができる。
【0024】
そして、上記抵抗調整層23用材料は、それにより形成される抵抗調整層23の体積抵抗率が、通常、105 〜1011Ω・cmの半導電領域内となるよう調製することが好適である。
【0025】
さらに、上記抵抗調整層23の外周面に形成される表層24の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、N−メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、導電性付与のため、通常、カーボンブラック等の従来公知の導電剤が、上記材料中に添加される。
【0026】
そして、上記表層24用材料には、以下に述べる中空球状非弾性粒子25が、適宜の割合で配合される。
【0027】
上記中空球状非弾性粒子25は、弾性変形しない殻壁の内側に空隙部を有する球状粒子で、上記殻壁が、非弾性の樹脂もしくはセラミックで形成されている。より具体的には、例えば、シリカ、ウレタン樹脂、アミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、尿素樹脂、スチレン樹脂等があげられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
なお、上記中空球状非弾性粒子25の「球状」の程度は、一見して扁平であったり角部のあるものではなく、全体として丸いものであれば、特に限定するものではない。ただし、真球に近ければ近いほど、粒子の強度を高く保ちながら内部に比較的大きな空隙を設けることができ、好適である。
【0029】
そして、上記中空球状非弾性粒子25は、平均粒子径30μm以下のものが用いられ、なかでも、5〜30μmのものが、好適に用いられる。すなわち、平均粒子径が30μmを超えるものを用いると、表層24の表面が粗くなりすぎて帯電不均一を招きやすく、不適である。また、平均粒子径が5μm未満のものを用いると、中空球状非弾性粒子25の空隙部分が小さくなって吸音効果が乏しくなるとともに、表層24の表面が滑らかになり、感光ドラムとの接触時に空気の逃げ場がなくなって異音が発生しやすいため、好ましくない。
【0030】
さらに、上記中空球状非弾性粒子25は、その殻壁厚みが、粒子径の7.5〜42.5%に設定されているものが、好適に用いられる。すなわち、殻壁厚みが、粒子径に対して薄すぎると、形状保持が困難になるおそれがあり、逆に、厚すぎると、内側の空隙部分が小さくなりすぎて吸音効果・遮音効果が乏しくなるおそれがあるからである。
【0031】
同様に、中空球状非弾性粒子25の粒度分布が、下記の式を満たすよう設定されているものを用いると、粒径にばらつきのない、大きさの揃った粒子が分散含有されることになるため、全体として優れた吸音効果および微振動抑制効果を得ることができ、好適である。
【0032】
【数2】

【0033】
なお、上記中空球状非弾性粒子25の「平均粒子径」および「粒度分布」は、レーザー散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−750)を用い、溶剤であるメチルエチルケトン(MEK)100gに粒子1gの割合で混合した溶液を、予めMEKを注入した測定セル内に数滴滴下することにより測定することができる。ただし、測定された粒子径のデータから、メジアン径(D50)を「平均粒子径」とする。
【0034】
また、上記表層24用材料は、それにより形成される表層24の体積抵抗率が、通常、108 〜1013Ω・cmの範囲内となるよう調製することが好適である。
【0035】
本発明の、図1に示す帯電ロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、前記導電性弾性層22用の各成分をニーダーやロール等の混練機を用いて混練して導電性弾性層22用材料を調製する。また、前記抵抗調整層23用の各成分を、バンバリーミキサーまたはニーダーにより混練した後、ロールを用いて混練し、抵抗調整層23用材料(コンパウンド)を調製する。さらに、前記表層24用材料をMEK等の有機溶剤に溶解し、中空球状非弾性粒子25を添加して均一に分散することにより、表層24用材料のコーティング液を作製する。
【0036】
ついで、軸体21の外周面に接着剤を塗布し、この表面に、上記導電性弾性層22用材料および抵抗調整層23用材料を、押出機を用いて共押出成形する。そして、これを、金型内で同時架橋させることにより、軸体21の外周面に、導電性弾性層22、抵抗調整層23が、この順で積層形成された二層構造のロールを作製する。
【0037】
そして、上記抵抗調整層23の外周面に、上記表層24用材料であるコーティング液(中空球状非弾性粒子25が分散含有されている)を、ロールコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法等により塗布し、その後、乾燥(必要に応じ所定の条件で加熱架橋)を行い、表層24を形成する。このようにして、目的とする三層構造の帯電ロール(図1参照)を作製することができる。
【0038】
なお、上記導電性弾性層22および抵抗調整層23の作製方法は、上記のような共押出成形に限定されるものではなく、例えば、各層22、23を順次押出成形してもよい。また、各層22、23を予めチューブ状に形成し、後から軸体21を挿入して一体化してもよい。
【0039】
このようにして得られる帯電ロールは、表層24に中空球状非弾性粒子25が分散含有された、特殊な構成を備えているため、図2に模式的に示すように、高電圧・高周波の交流電圧下で感光ドラム1に従動させて、感光ドラム1の帯電に供すると、上記中空球状非弾性粒子25が、従来の弾性粒子のように弾性変形することなく中空状態を保ち、優れた吸音・遮音効果を奏する。そして、上記中空球状非弾性粒子25が、表層24表面を適度に粗面化して感光ドラム1との接触面積を小さくし、しかもその中空球状非弾性粒子25の突出した部分が、感光ドラム1の表面に接して帯電ロール表層の微振動を制限するため、優れた振動低減効果を奏する。さらに、上記突出した中空球状非弾性粒子25同士の隙間から効果的に空気が逃げることによっても、優れた微振動抑制効果・消音効果を奏する。なお、中空球状非弾性粒子25が、図2に示す状態よりも深く表層24に埋没して、空気の逃げる隙間が小さくなった場合、空気の移動に伴う消音効果は小さくなるが、中空球状非弾性粒子25自体の、中空部分への吸音効果は損なわれることがないため、一定の消音効果を得ることができる。
【0040】
上記帯電ロールの製法において、表層24用材料に分散含有させる中空球状非弾性粒子25の配合割合は、上記表層24用材料100重量部(以下「部」と略す)に対し、5〜50部に設定することが好適である。すなわち、上記範囲よりも中空球状非弾性粒子25が少ないと、上記中空球状非弾性粒子25による微振動抑制効果・消音効果が不充分になるおそれがあり、逆に、上記範囲より多いと、表層24における中空球状非弾性粒子25の密度が高くなりすぎて、帯電特性が損なわれるおそれがあるからである。
【0041】
また、各層22〜24の厚みは、特に限定するものではないが、上記導電性弾性層22の厚みは、通常、1〜10mmの範囲内に設定され、好ましくは2〜4mmの範囲内である。
【0042】
そして、上記抵抗調整層23の厚みは、通常、200〜800μmの範囲に設定されることが好ましく、より好ましくは200〜500μmの範囲内である。すなわち、その厚みが200μm未満であると、感光ドラムと連れ回りする際に、ロールが潰れ、上記連れ回りしにくいからであり、逆に、その厚みが800μmを超えると、導電性発泡弾性層2成形時の発泡を阻害しやすく、ロール成形性に劣るようになるからである。
【0043】
さらに、上記表層24の厚みは、1〜50μmの範囲内に設定するのが好ましく、特に好ましくは3〜30μmの範囲内である。
【0044】
また、上記表層24の表面粗度(Rz)は、2〜30μm、なかでも、4〜15μmに設定することが、帯電性能および吸音・遮音効果を得る上で、好適である。ただし、上記表面粗度(Rz)が小さい値であっても、表層24にある程度の厚みがあり、表層24内に比較的大きな粒子径の中空球状非弾性粒子25が殆ど埋没している場合は、この中空球状非弾性粒子25の中空部分の吸音効果によって、ある程度の消音効果を得ることができる。
【0045】
なお、上記表面粗度(Rz)は、東京精密社製の表面粗度計Surfcom−550Aを用い、ピックアップ:0.2、触針:0.8、カットオフ:0.8、測定距離:4mm、測定スピード:0.3mm/秒、に設定して測定することにより得ることができる。
【0046】
なお、本発明の帯電ロールの例として、図1に示すような三層構造に限定されるものではなく、例えば、図3に示すような、導電性弾性層22と表層24の二層からなるものであってもよい。あるいは、上記導電性弾性層22と抵抗調整層23との間に、軟化剤移行防止層や接着剤層等を、必要に応じ設けて、四層以上の構造としても差し支えない。
【0047】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1〕
〔導電性弾性層用材料の調製〕
EPDM(三井化学社製、EPT4045)100部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックインターナショナル社製)25部と、酸化亜鉛5部と、ステアリン酸1部と、プロセスオイル(出光石油化学社製、ダイアナプロセスPW380)30部と、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(発泡剤)15部と、硫黄1部と、ジベンゾチアゾールジスルフィド(架橋促進剤)2部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(架橋促進剤)1部とを配合し、ロールを用いて混練することにより、導電性弾性層用材料を調製した。
【0049】
〔抵抗調整層用材料の調製〕
NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN3335)100部と、磁性酸化鉄粉末(戸田工業社製のマグネタイト粉末)30部と、電子導電剤であるFEFカーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)45部と、イオン導電剤である第四級アンモニウム塩(アルキルトリメチルアンモニウムパークロライド)1部と、絶縁性充填剤であるシリカ(日本シリカ社製、ニプシールER)50部と、酸化亜鉛5部と、ステアリン酸1部と、ジベンゾチアゾールジスルフィド(架橋促進剤)1部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(架橋促進剤)1部と、硫黄1部とを、ニーダーにより混練したあと、さらに、ロールを用いて混練し、抵抗調整層用材料(コンパウンド)を調製した。
【0050】
〔表層用材料の調製〕
フッ素変性アクリレート樹脂(大日本インキ社製、ディフェンサTR230K)50部と、フッ素化オレフィン系樹脂(アトフィナジャパン社製、カイナーSL)50部と、導電性酸化チタン(石原テクノ社製、タイペークET−300W)100部を、MEK200部に溶解し、これに、アクリル系中空球状非弾性粒子A(積水化学工業社製、アドバンセルHB、平均粒子径20μm)10部を添加して均一に分散させて、表層用材料を調製した。
【0051】
〔導電性ロールの作製〕
まず、直径6mmの金属製シャフトからなる芯金を用意し、この外周面に接着剤を塗布した後、この表面に、上記導電性弾性層用材料および抵抗調整層用材料を、押出機を用いて共押出成形した。そして、これを金型内で同時架橋および発泡を行い(170℃×30分)、芯金の外周面に、導電性発泡弾性層(厚み3mm)が形成され、その外周面に抵抗調整層(厚み500μm)が形成されてなるロールを作製した。
【0052】
そして、上記抵抗調整層の外周面に、上記中空球状非弾性粒子Aが分散含有された表層用材料を、ディッピング法により塗布し、その後、乾燥して、表層(厚み5μm)を形成した。これにより、目的とする三層構造の帯電ロールを得た。
【0053】
〔実施例2〕
アクリル系中空球状非弾性粒子Aに代えて、ポリスチレン/ポリメタクリル酸エステル系中空球状非弾性粒子B(ガンツ化成社製、ガンツパールGMH0850、平均粒子径8μm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、目的とする三層構造の帯電ロールを得た。
【0054】
〔比較例1〕
アクリル系中空球状非弾性粒子Aに代えて、内部に空隙のない、ポリメタクリル酸メチル系球状非弾性粒子C(積水化成品工業社製、テクポリマーMBX−20、平均粒子径20μm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、目的とする三層構造の帯電ロールを得た。
【0055】
〔比較例2〕
アクリル系中空球状非弾性粒子Aに代えて、内部に空隙のない、ポリウレタン系球状弾性粒子D(根上工業社製、アートパールC−300、平均粒子径20μm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、目的とする三層構造の帯電ロールを得た。
【0056】
〔比較例3〕
アクリル系中空球状非弾性粒子Aに代えて、内部に空隙のない、ポリスチレン/ポリメタクリル酸エステル系球状非弾性粒子E(ガンツ化成社製、ガンツパールGMP0810、平均粒子径8μm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、目的とする三層構造の帯電ロールを得た。
【0057】
このようにして得られた各帯電ロールについて、下記の方法に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1に併せて示す。
【0058】
〔帯電音の測定〕
得られた帯電ロールを、レーザビームプリンタ(ヒューレットパッカード社製、レーザージェット4プラス)のカートリッジ容器に組み込み、図4に示すような測定系を用いて、上記帯電ロール30によって感光ドラム31を帯電させる際の帯電音の測定(音圧測定)を行った。すなわち、まず、図示のように、感光ドラム(直径30mm)31を、50rpmの割合で回転させ(図示の矢印a方向)、それと連れ回るよう帯電ロール30を回転させた(図示の矢印b方向)。同時に、上記帯電ロール30に、電源32により、下記の表1に示す所定の周波数で、2kVpp,DC600Vの電圧を印加した。そして、帯電ロール30と感光ドラム31との接触部から30cm離れた地点にて、騒音計33(小野測器社製の高感度精密騒音計)を用いて帯電音測定を行った。
【0059】
〔帯電ロール表層の表面粗度(Rz)〕
東京精密社製の表面粗度計Surfcom−550Aを用い、前述の設定により測定した。
【0060】
【表1】

【0061】
上記の結果から、表層に中空球状非弾性粒子を分散含有させた実施例品は、2kVpp、2500Hz以上という高電圧、高周波の交流電圧印加条件下で、優れた消音効果を奏することがわかる。
【0062】
これに対して、比較例品は消音効果に乏しく、本発明で要求されるレベルを満たしていないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】上記実施例における作用効果の説明図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【図4】帯電音の測定方法を示す説明図である。
【図5】帯電ロールが組み込まれた電子写真複写機の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
21 軸体
22 導電性弾性層
23 抵抗調整層
24 表層
25 中空球状非弾性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、その外周に形成される導電性弾性層と、上記導電性弾性層の外周に直接もしくは他の層を介して形成される表層とを備え、上記表層に、平均粒子径30μm以下の中空球状非弾性粒子が分散含有されていることを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
上記中空球状非弾性粒子の殻壁厚みが、粒子径の7.5〜42.5%に設定されている請求項1記載の帯電ロール。
【請求項3】
上記中空球状非弾性粒子の粒度分布が、下記の式を満たすよう設定されている請求項1または2記載の帯電ロール。
【数1】

【請求項4】
上記表層の表面粗度(JIS B0601−1994によるRz)が、2〜30μmに設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の帯電ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−158437(P2008−158437A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349868(P2006−349868)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】