説明

帯電器

【課題】クリーニング条件を変えることで、対向電極を良好に清掃することができる帯電器を提供することを目的とする。
【解決手段】帯電器54は、所定方向に沿って延設される放電ワイヤ110と、放電ワイヤ110の延設方向に沿って延び、放電ワイヤ110と対向する対向電極120と、放電ワイヤ110と対向電極120とを支持するフレーム(上側フレーム100)と、対向電極120と摺接しながら延設方向に移動することで、対向電極120を清掃する清掃部材200とを備える。そして、清掃部材200は、対向電極120と接触する撓み変形可能なシート状部材220を有し、シート状部材220は、表裏面の粗さが異なり、清掃部材200の移動方向を切り替える際に対向電極120と接触する部位が表裏反転されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ワイヤに対向した対向電極を清掃するための清掃部材を備えた帯電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯電器として、感光ドラムの軸方向に延びる放電ワイヤと、放電ワイヤと感光ドラムとの間に配置されるグリッド電極(対向電極)と、放電ワイヤとグリッド電極の両方に摺接して清掃する清掃部材とを備えるものが知られている(特許文献1,2参照)。このような技術では、通常、清掃部材のうちグリッド電極と摺接する部分にはスポンジ状のものが使われており、このスポンジ状のものが常にグリッド電極に摺接するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−369663号公報
【特許文献2】特開平7−301978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した技術では、スポンジ状のものを常にグリッド電極に摺接させるので、クリーニング条件が変わらず、グリッド電極に付着する様々な異物を良好に清掃することができないという問題があった。具体的には、例えばグリッド電極上にトナーが固着してしまうと、柔らかいスポンジでは、固着したトナーを十分に除去することが困難になるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、クリーニング条件を変えることで、対向電極を良好に清掃することができる帯電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、所定方向に沿って延設される放電ワイヤと、前記放電ワイヤの延設方向に沿って延び、前記放電ワイヤと対向する対向電極と、前記放電ワイヤと前記対向電極とを支持するフレームと、を有する帯電器であって、前記対向電極と摺接しながら前記延設方向に移動することで、前記対向電極を清掃する清掃部材を備え、前記清掃部材の移動方向は、前記延設方向に沿う第1方向と前記第1方向とは反対の第2方向とに選択的に切り替え可能であり、前記清掃部材は、前記対向電極と接触する撓み変形可能なシート状部材を有し、前記シート状部材は、表裏面の粗さが異なり、前記清掃部材の移動方向を切り替える際に前記対向電極と接触する部位が表裏反転されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、表裏面の粗さが異なるシート状部材を、清掃部材の移動方向を切り替える際に表裏反転させるので、清掃部材の往路と復路とでクリーニング条件を変えることができる。そのため、例えば、往路では粗い面で固着したトナーを削り、復路では細かい面で削ったトナーを拭き取ることなどを行うことができ、対向電極を良好に清掃することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表裏面の粗さが異なるシート状部材を表裏反転させることで、クリーニング条件を変えることができるので、対向電極を良好に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】カラープリンタの全体構成を示す断面図である。
【図2】プロセスカートリッジの構造を示す拡大断面図である。
【図3】清掃部材が装着された上側フレームを示す斜視図である。
【図4】清掃部材を示す斜視図である。
【図5】清掃部材を分解して示す分解斜視図である。
【図6】支持部材を第1突起の先端側から見た正面図(a)と、シート状部材を示す平面図(b)である。
【図7】清掃部材を一方向に移動させている状態を示す断面図(a)と、シート状部材が係合部を乗り越えた状態を示す断面図(b)と、係合部によりシート状部材が表裏反転された状態を示す断面図(c)である。
【図8】清掃部材を上側フレームに取り付けていく状態を示す分解斜視図である。
【図9】放電ワイヤ、対向電極および清掃部材を外した状態の上側フレームを下側から見た下面図(a)と、放電ワイヤ、対向電極および清掃部材を取り付けた状態の上側フレームを図9(a)のX−X線で切ったX−X断面図(b)である。
【図10】研磨部材として金属ヤスリを採用した形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、カラープリンタの全体構成を簡単に説明した後、本発明の特徴部分を説明することとする。
【0011】
<カラープリンタの全体構成>
図1に示すように、カラープリンタ1は、本体筐体10内に、用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90とを備えている。
【0012】
本体筐体10の上部には、開閉自在なアッパーカバー12が設けられている。アッパーカバー12の上面は、本体筐体10から排出された用紙Pを蓄積する排紙トレイ13となっており、下面には後述する複数のLEDユニット40を保持する複数の保持部材14が設けられている。
【0013】
給紙部20は、本体筐体10内の下部に設けられ、本体筐体10に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を主に備えている。
【0014】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、定着ユニット80とから主に構成されている。
【0015】
プロセスカートリッジ50は、アッパーカバー12と給紙部20との間で前後方向に並んで配置され、図2に示すように、感光体カートリッジ51と、感光体カートリッジ51に対して着脱可能な現像カートリッジ61とを備えている。なお、各プロセスカートリッジ50は、現像カートリッジ61のトナー収容室66に収容されるトナーの色が相違するのみであり、構成は同一である。
【0016】
感光体カートリッジ51は、ドラムケース52と、このドラムケース52内に収容される感光体の一例としての感光ドラム53および帯電器54とを主に備えている。
【0017】
現像カートリッジ61は、現像ケース62と、現像ケース62内に収容される現像ローラ63、供給ローラ64およびブレード組立体65と、現像ケース62内に形成されるトナー収容室66とを有している。
【0018】
図1に示すように、転写ユニット70は、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写ローラ74を主に備えている。
【0019】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50および転写ユニット70の後側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0020】
このように構成される画像形成部30では、まず、図2に示すように、感光ドラム53の表面が、帯電器54により一様に帯電された後、各LEDユニット40から照射される光により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、感光ドラム53の表面に画像データに基づく静電潜像が形成(担持)される。
【0021】
また、トナー収容室66内のトナーが、供給ローラ64の回転により現像ローラ63に供給され、現像ローラ63の回転により現像ローラ63とブレード組立体65との間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ63上に担持される。
【0022】
現像ローラ63上に担持されたトナーは、現像ローラ63が感光ドラム53に対向して接触するときに、感光ドラム53上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム53上でトナーが選択的に担持されて静電潜像が可視像化され、反転現像によりトナー像が形成される。
【0023】
そして、図1に示すように、搬送ベルト73上に供給された用紙Pが各感光ドラム53と搬送ベルト73の内側に配置される各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム53上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過すると、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0024】
排紙部90は、定着ユニット80の出口から上方に向かって延び、手前側に反転するように形成された排紙側搬送経路91と、用紙Pを搬送する複数対の搬送ローラ92を備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Pは、搬送ローラ92によって排紙側搬送経路91を搬送され、本体筐体10の外部に排出されて排紙トレイ13に蓄積される。
【0025】
<帯電器の構造>
次に、帯電器54の構造について詳細に説明する。
図2に示すように、帯電器54は、前述したドラムケース52の上側部分を構成するフレームの一例としての樹脂製(絶縁性)の上側フレーム100と、上側フレーム100に支持される放電ワイヤ110および対向電極120と、図3に示す清掃部材200とを備えている。
【0026】
放電ワイヤ110は、感光ドラム53の軸方向(所定方向)に沿って延設されるワイヤであり、上側フレーム100に形成される長溝101(図3参照)内に配置され、その両端が上側フレーム100で支持されている。
【0027】
対向電極120は、感光ドラム53の軸方向に沿って延びて放電ワイヤ110と対向するように断面視コ字状に折り曲げられた板状の電極であり、主に、グリッド電極121と、一対のシールド電極122とを備えている。
【0028】
グリッド電極121は、放電ワイヤ110と感光ドラム53との間に配置される電極であり、コ字状の対向電極120の底部に複数のスリットを形成することで複数のワイヤ状に形成されている。
【0029】
各シールド電極122は、感光ドラム53の表面の移動方向で放電ワイヤ110を挟むように対向(位置)するように配置されている。ここで、「感光ドラム53の表面の移動方向」とは、感光ドラム53のうちグリッド電極121に対向する部位の移動方向(図2では、前斜め上方)をいう。
【0030】
図3に示すように、清掃部材200は、上側フレーム100の長溝101に移動可能に装着されており、その移動方向が、放電ワイヤ110の延設方向に沿う第1方向と第1方向とは反対の第2方向とに選択的に切り替え可能となっている。そして、この清掃部材200は、放電ワイヤ110と対向電極120(図2参照)とに摺接しながら移動することで、放電ワイヤ110と対向電極120を清掃する。具体的には、図4に示すように、清掃部材200は、支持部材210と、シート状部材220と、摺接部材の一例としての板状スポンジ230とを備えている。
【0031】
支持部材210は、図5に示すように、長方形の略平板状に形成される操作部211と、操作部211の下面から下方に延びる撓み変形可能な2つのアーム部212とを主に備えている。各アーム部212には、シート状部材220や板状スポンジ230を支持するための第1突起213および第2突起214が形成されている。
【0032】
各第1突起213は、略三角柱状に形成されており、シート状部材220に形成される係合孔227を貫通した状態でシート状部材220を支持する。より具体的には、各第1突起213は、スリット226で分離されたシート状部材220の一方と他方をそれぞれ支持する。また、この第1突起213は、略U字状に折り曲げられた板状スポンジ230の両端部が互いに離れる方向に広がるのを抑えることにも寄与している。
【0033】
各第2突起214は、四角柱状に形成されており、略U字状の板状スポンジ230の屈曲部分を挟み込むようにして支持している。
【0034】
図5に示すように、シート状部材220は、対向電極120と接触する撓み変形可能な部材であり、その表裏面の粗さが異なるように構成されている。そして、シート状部材220は、清掃部材200の移動方向を切り替える際に、対向電極120との摩擦や後述する係合部108(図7参照)との係合により、対向電極120と接触する部位が表裏反転されるように構成されている。
【0035】
具体的に、シート状部材220は、撓み変形可能なPET製のフィルム240と、第1部材の一例としての研磨部材250と、第1部材とは材質が異なる第2部材(拭取部材)の一例としてのフェルト部材260とを積層させて構成されている。そして、シート状部材220は、支持部材210によってグリッド電極121およびシールド電極122に対して略垂直となるように支持されている。
【0036】
フィルム240には、その表面に研磨部材250が固着され、その裏面にフェルト部材260が固着されている。そして、このような撓み変形可能なフィルム240を用いることで、両面に固着した研磨部材250やフェルト部材260を所望の圧力で対向電極120に押し当てることが可能となっている。
【0037】
なお、本実施形態では、研磨部材250やフェルト部材260を対向電極120に面接触(図7参照)させることとするが、本発明はこれに限定されず、研磨部材250やフェルト部材260の角が対向電極120に接触するように構成されていてもよい。
【0038】
研磨部材250は、シート状部材220の表面を構成する部材であり、シート状の金属ヤスリや紙ヤスリなど、研磨力がある表面を有する研磨系の材料(対向電極上の付着物を研磨する材料)で構成されている。これにより、グリッド電極121に固着したトナーを、研磨部材250によって削ることが可能となっている。
【0039】
フェルト部材260は、シート状部材220の裏面を構成する部材であり、研磨部材250よりも表面粗さが細かく、かつ、柔らかい多孔質性の材料で構成されている。これにより、研磨部材250で削ることによって生じた異物や電極上の付着物等を、フェルト部材260で良好に拭き取ることが可能となっている。
【0040】
そして、フィルム240、研磨部材250およびフェルト部材260は、それぞれ同一形状となっている。すなわち、3つの部材を貼り合わせたシート状の部材を所定の型で打ち抜くことで、図のような形状のシート状部材220を簡単に製造することが可能となっている。
【0041】
このように3層で構成されるシート状部材220は、グリッド電極121(図2参照)と接触する第1端部としての先端部221と、先端部221に対して反対側に位置する基端部222と、先端部221の両側において先端部221と交差するように構成され、一対のシールド電極122(図2参照)と接触する第2端部としての一対の側端部223とを有している。
【0042】
シート状部材220の先端部221と両側端部223との間には、切欠部224が形成されている。これにより、シート状部材220の先端部221と両側端部223とが互いの撓みの影響を受けないので、シート状部材220の先端部221と両側端部223とを精度よく、グリッド電極121および各シールド電極122に接触させることができる。
【0043】
また、シート状部材220には、放電ワイヤ110(図2参照)を通すための孔225が形成されるとともに、当該孔225から先端部221に抜けるスリット226が形成されている。孔225は、スリット226を基準にして線対称にならない形状に形成されている。これにより、例えば目視によって、シート状部材220の表裏を間違えるといった誤組を防止して、孔225等の縁に形成されるバリによって良好に組み付けなくなることを防止することが可能となっている。
【0044】
なお、誤組防止としては、孔225の形状を工夫することに代えて、左側の第1突起213と右側の第1突起213の形状が異なるように形成するとともに、これらの形状に合わせるように後述する各係合孔227の形状を異なるように形成してもよい。また、別途、誤組防止のための構成(たとえば、支持部材210において、スリット226に対して左右の一方側のみに突起を設け、この突起が入り込む孔をシート状部材220に形成する等)を設けてもよい。
【0045】
さらに、シート状部材220には、スリット226を挟むようにスリット226を基準にして線対称に形成される係合孔227が形成されている。係合孔227は、図6(a),(b)に示すように、支持部材210の第1突起213の3つの角部213A,213B,213Cに係合する3つの隅部227A,227B,227Cを有している。
【0046】
3つの隅部227A,227B,227Cは、3つの角部213A,213B,213Cの位置から僅かな角度だけ回転した位置に形成されている。具体的には、この回転の方向は、スリット226が開く方向(シート状部材220の基端部222を中心にしてスリット226で分離された一方と他方とが互いに離れるように円弧状に移動する方向)とは逆方向である。
【0047】
より具体的には、図示左側の3つの隅部227A,227B,227Cは、図示左側の3つの角部213A,213B,213Cの位置から図示反時計回りに回転した位置に形成されている。また、図示右側の3つの隅部227A,227B,227Cは、図示右側の3つの角部213A,213B,213Cの位置から図示時計回りに回転した位置に形成されている。
【0048】
これにより、シート状部材220の各係合孔227を支持部材210の第1突起213に取り付けた際には、各隅部227A,227B,227Cが各角部213A,213B,213Cの位置に移動して合致することで、スリット226が僅かに開くようになっている(図4参照)。すなわち、アーム部212とシート状部材220との取付部分(各第1突起213および各係合孔227)の形状の違いによってスリット226が開くように構成されている。
【0049】
図5に示すように、板状スポンジ230は、放電ワイヤ110(図2参照)に対してその延設方向に摺接する部材であり、略U字状に折り曲げられた状態で支持部材210の各第2突起214で挟持されている。そして、このように各第2突起214で挟持されることで、板状スポンジ230と支持部材210との間でシート状部材220が挟持されるようになっている。
【0050】
そして、図7(a)に示すように、対向電極120の両端側、詳しくは上側フレーム100に形成される長溝101の両端側の底面106および両側面107(一方の側面のみ図示)には、内側に突出する係合部108が設けられている。これにより、図7(b),(c)に示すように、シート状部材220が係合部108を乗り越えた後、清掃部材200の移動方向を切り替えると、シート状部材220の先端部221および両側端部223が係合部108と係合することで、先端部221および両側端部223がそれぞれ確実に表裏反転されるようになっている。
【0051】
ここで、図7(b),(c)では、両側端部223と係合部108との関係が分かり易いように、図7(a)に示す第1突起213、第2突起214および板状スポンジ230の図示を省略している。
【0052】
また、図8に示すように、上側フレーム100の長溝101の一端側には、長溝101を形成する一対の側壁から突出するように形成される一対の係合壁102が形成されている。そして、この係合壁102は、清掃部材200を長溝101に取り付ける際にシート状部材220の各切欠部224(両側端側)と当接するようになっており、これにより、シート状部材220のスリット226がさらに開いて、孔225に放電ワイヤ110をスムーズに入り込ませることが可能となっている。
【0053】
また、図9(a),(b)に示すように、上側フレーム100の長溝101内には、支持部材210の各アーム部212(各第2突起214)を互いに近付く方向に押す一対のテーパ面103が形成されている。これにより、清掃部材200を長溝101の一端側(係合壁102側)から挿入した後、他端側にスライドさせることで、図9(b)に示すように、支持部材210の各アーム部212が近付いて、シート状部材220のスリット226が閉じるようになっている。
【0054】
詳しくは、一対のテーパ面103が各アーム部212(各第2突起214)を近付く方向に押して、各アーム部212に一体的に設けられる各第1突起213の2つの角部213A,213D(図6参照)がシート状部材220の各係合孔227の2つの隅部227A,227Dを内側に押すことで、シート状部材220のスリット226が閉じるようになっている。これにより、清掃部材200が、グリッド電極121を清掃するための清掃位置に位置したときには、スリット226が閉じられて、グリッド電極121の全体と摺接するので、グリッド電極121が良好に清掃されるようになっている。また、このように支持部材210の各アーム部212が近付くことで、板状スポンジ230(図4参照)が押し縮められるので、この板状スポンジ230で放電ワイヤ110を強く擦って、清掃を良好に行うことが可能となっている。
【0055】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
表裏面の粗さが異なるシート状部材220を、清掃部材200の移動方向を切り替える際に表裏反転させるので、清掃部材200の往路と復路とでクリーニング条件を変えることができる。特に、本実施形態では、往路では粗い面を構成する研磨部材250で対向電極120に固着したトナー等を削り、復路では細かい面を構成するフェルト部材260で削ったトナー等を拭き取ることができ、対向電極120を良好に清掃することができる。
【0056】
シート状部材220が材質の異なる部材を積層させるだけで構成されるので、シート状部材220の製造作業を容易にすることができる。
【0057】
シート状部材220が、研磨部材250と、研磨部材250よりも柔らかい多孔質性のフェルト部材260を備えるので、削る効果や拭き取る効果を良好に発揮することができる。
【0058】
対向電極120の両端側に、シート状部材220の端部と係合することでシート状部材220を表裏反転させる係合部108が設けられているので、シート状部材220を確実に表裏反転させることができる。
【0059】
シート状部材220は、先端部221がグリッド電極121に接触し、両側端部223がシールド電極122に接触するように構成されているので、グリッド電極121とシールド電極122の両方を良好にクリーニングすることができる。
【0060】
シート状部材220の先端部221と両側端部223との間に切欠部224を形成することで、シート状部材220の先端部221と両側端部223とが互いの撓みの影響を受けないので、シート状部材220の先端部221と両側端部223とを精度よく、グリッド電極121および各シールド電極122に接触させることができる。さらに、シート状部材220の先端部221と両側端部223のそれぞれを、確実に表裏反転させることができる。
【0061】
清掃部材200が、放電ワイヤ110を清掃する板状スポンジ230と、対向電極120を清掃するシート状部材220とを備えるので、清掃部材200を移動させるだけで、放電ワイヤ110と対向電極120とを同時に清掃することができる。また、シート状部材220が支持部材210と板状スポンジ230との間で挟持されることにより、放電ワイヤ110を清掃する板状スポンジ230が支持部材210からのシート状部材220の離脱防止を図る部材を兼ねるので、部品点数の削減を図ることができる。
【0062】
シート状部材220を支持部材210に取り付ける際に、アーム部212とシート状部材220との取付部分の形状の違いによってスリット226が開くように構成されているので、開いたスリット226内を通して放電ワイヤ110を孔225にスムーズにセットすることができる。そのため、清掃部材200の上側フレーム100への装着を容易にすることができる。
【0063】
清掃部材200を上側フレーム100に取り付ける際に、シート状部材220の切欠部224(両側端側)が上側フレーム100と当接してスリット226がさらに大きく開くことにより、大きく開いたスリット226内を通して放電ワイヤ110を孔225にさらにスムーズにセットすることができる。そのため、清掃部材200の装着をさらに容易にすることができる。
【0064】
上側フレーム100の一対のテーパ面103で支持部材210の各アーム部212を互いに近付く方向に押すことで、開いたスリット226を閉じることができるので、シート状部材220の先端部221を良好にグリッド電極121に摺接させることができる。
【0065】
シート状部材220がグリッド電極121およびシールド電極122に対して略垂直となるように支持部材210で支持されているので、清掃部材200の移動方向をどちらの方向に切り替えた場合でも、表裏反転の切替を良好に行うことができる。
【0066】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、シールド電極122にも研磨部材250を摺接させたが、本発明はこれに限定されず、例えば前記実施形態における研磨部材250のうちシールド電極122に接触する範囲を切り取ることで、フィルム240をシールド電極122に摺接させてもよい。これによれば、研磨部材250が小さくなって、その分コストダウンを図ることができる。なお、このように研磨部材250のうちシールド電極122に接触する範囲を切り取った場合であっても、グリッド電極121に比べて感光体から遠く離れているシールド電極122にはトナーが固着し難いので、シールド電極122を十分清掃することができる。
【0067】
また、研磨部材250をシート状の金属ヤスリとする場合には、図10に示すように、シート状部材220の先端部221のみに金属ヤスリ251を設けて、放電ワイヤ110と金属ヤスリ251との間に、絶縁性の板状スポンジ230を介在させるのが望ましい。これによれば、絶縁性の板状スポンジ230によって、放電ワイヤ110から金属ヤスリ251への放電が確実に防止されるようになっている。
【0068】
なお、この金属ヤスリ251の大きさは、板状スポンジ230とフィルム240とで挟持されない大きさ、すなわち板状スポンジ230のフィルム240側の面に達しない大きさで形成するのが望ましい。これによれば、板状スポンジ230をフィルム240に密着させて、良好にフィルム240を支持部材210に固定させることができる。
【0069】
また、図10に示す待機位置では、金属ヤスリ251がグリッド電極121から離れて上側フレーム100に接する(乗り上げる)ことで、グリッド電極121と金属ヤスリ251との間に、樹脂製(絶縁性)の上側フレーム100が介在するように構成するのが望ましい。ここで、「待機位置」とは、放電ワイヤ110の一端側の位置であって、印字動作が行われるときに放電ワイヤ110から感光ドラム53への放電を邪魔しないように清掃部材200が待機する位置をいう。これによれば、グリッド電極121から金属ヤスリ251への漏電を確実に防止することができる。
【0070】
前記実施形態では、対向電極120との摩擦によってもシート状部材220の表裏反転を可能とすることで、対向電極120のどの位置でもシート状部材220が表裏反転できるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、シート状部材は、少なくとも放電ワイヤの両端側において表裏反転されればよく、放電ワイヤの両端側以外の場所では対向電極とシート状部材とが滑って表裏反転されなくてもよい。
【0071】
前記実施形態では、3つの部材を積層させることでシート状部材220の表裏面の粗さを異なるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの部材(材料)の表裏面の粗さを異なるように形成してもよいし、2つの部材または4つ以上の部材を積層させてシート状部材の表裏面の粗さを異なるように構成してもよい。
【0072】
前記実施形態では、多孔質性の材料で構成される第2部材(拭取部材)としてフェルト部材260を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばスポンジ等を採用してもよい。また、第2部材としては、多孔質性の材料でなくても、第1部材と材質が異なればよく、例えば、PETフィルムなどを採用してもよい。この場合でも、例えば第1部材で削った異物を第2部材で掻き集めることができるので、良好に清掃することができる。
【0073】
前記実施形態では、グリッド電極121および各シールド電極122にシート状部材220を摺接させるようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えばグリッド電極のみやシールド電極のみにシート状部材を摺接させてもよい。
【0074】
前記実施形態では、シート状部材220の先端部221と係合する係合部108を上方に突出する突起状に形成したが、本発明はこれに限定されず、例えばシート状部材220の先端部221が入り込むように斜め上方に向けて突出させてもよいし、凹状に形成してもよい。また、係合部108を上側フレーム100に形成するのではなく、対向電極の一部を切り起こしたり、段差形状に形成することなどによって係合部を対向電極に設けてもよい。
【0075】
前記実施形態では、上側フレーム100の係合壁102にシート状部材220の切欠部224が当接するように構成したが、本発明はこれに限定されず、当接しないように構成してもよい。この場合であっても、支持部材210の第1突起213にシート状部材220の係合孔227を取り付けたときに、スリット226を開くことができるので、この開いたスリット226を通して孔225に放電ワイヤ110を入り込ませることができる。
【0076】
前記実施形態では、シート状部材220を撓み変形可能に構成するために、PET製のフィルム240をベースにしたが、本発明はこれに限定されず、その他の樹脂製のフィルムでもよいし、紙などであってもよい。
【0077】
前記実施形態では、切欠部224をV字状の凹部として形成したが、本発明はこれに限定されず、例えばスリット状などに形成してもよい。
前記実施形態では、摺接部材として板状スポンジ230を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば板状のフェルトなどを採用してもよい。
【0078】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
前記実施形態では、感光体として感光ドラム53を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の感光体を採用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
54 帯電器
100 上側フレーム
102 係合壁
103 テーパ面
108 係合部
110 放電ワイヤ
120 対向電極
121 グリッド電極
122 シールド電極
200 清掃部材
210 支持部材
212 アーム部
220 シート状部材
221 先端部
223 側端部
224 切欠部
226 スリット
230 板状スポンジ
240 フィルム
250 研磨部材
260 フェルト部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って延設される放電ワイヤと、
前記放電ワイヤの延設方向に沿って延び、前記放電ワイヤと対向する対向電極と、
前記放電ワイヤと前記対向電極とを支持するフレームと、
を有する帯電器であって、
前記対向電極と摺接しながら前記延設方向に移動することで、前記対向電極を清掃する清掃部材を備え、
前記清掃部材の移動方向は、前記延設方向に沿う第1方向と前記第1方向とは反対の第2方向とに選択的に切り替え可能であり、
前記清掃部材は、
前記対向電極と接触する撓み変形可能なシート状部材を有し、
前記シート状部材は、表裏面の粗さが異なり、前記清掃部材の移動方向を切り替える際に前記対向電極と接触する部位が表裏反転されるように構成されていることを特徴とする帯電器。
【請求項2】
前記シート状部材は、
表裏面の一方の面を構成する第1部材と、
表裏面の他方の面を構成し、かつ、前記第1部材とは材質が異なる第2部材とを積層させて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の帯電器。
【請求項3】
前記第1部材は、前記対向電極上の付着物を研磨する研磨部材であり、
前記第2部材は、前記第1部材よりも柔軟に構成され、前記対向電極上の付着物を拭き取る拭取部材であることを特徴とする請求項2に記載の帯電器。
【請求項4】
前記対向電極の両端側には、前記シート状部材と係合することで当該シート状部材を表裏反転させる係合部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の帯電器。
【請求項5】
前記対向電極は、
前記放電ワイヤと、表面が移動可能に構成され、該表面に静電潜像を担持可能な感光体と、の間に配置されるグリッド電極と、
前記感光体の表面の移動方向において前記放電ワイヤを挟むように位置する一対のシールド電極とから構成され、
前記シート状部材は、前記グリッド電極に接触する第1端部と、前記第1端部の両側において前記第1端部と交差するように構成され、前記シールド電極に接触するように構成される第2端部とを有していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の帯電器。
【請求項6】
前記シート状部材の第1端部と第2端部との間には、切欠部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の帯電器。
【請求項7】
前記清掃部材は、
前記シート状部材を支持する支持部材と、
前記支持部材に支持されて、前記放電ワイヤに対して前記延設方向に摺接する摺接部材とを備え、
前記シート状部材は、前記摺接部材と前記支持部材とによって挟持されていることを特徴とする請求項6に記載の帯電器。
【請求項8】
前記シート状部材には、前記放電ワイヤを通すための孔が形成されるとともに、当該孔から前記シート状部材の第1端部に抜けるスリットが形成され、
前記支持部材には、前記スリットで分離された前記シート状部材の一方と他方をそれぞれ支持する撓み変形可能な2つのアーム部が設けられ、
前記シート状部材を前記支持部材に取り付ける際に、前記アーム部と前記シート状部材との取付部分の形状の違いによって前記スリットが開くように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の帯電器。
【請求項9】
前記清掃部材を前記フレームに取り付ける際に、前記シート状部材の第2端部側が前記フレームと当接することで、前記スリットがさらに大きく開くように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の帯電器。
【請求項10】
前記フレームには、前記各アーム部を互いに近付く方向に押すテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の帯電器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−59618(P2011−59618A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212299(P2009−212299)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】