説明

帯電強化添加剤を含むエレクトレットウェブ

熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤の配合物を含む、エレクトレットウェブが提示された。帯電強化添加剤は、フッ素化された基を含まない複素環式イミド材料を含む。この配合物から調製されるウェブは、フィルム又は不織繊維ウェブの形態であってよい。不織超極細繊維ウェブは、濾材として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、帯電強化添加剤を含有する不織熱可塑性超極細繊維ウェブなどの不織繊維ウェブを含む、エレクトレットウェブ及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットは、準永久帯電を示す誘電材料である。エレクトレットは、例えば、食品包装用フィルム、エアフィルタ、濾過用面体及び呼吸用マスクなどのさまざまなデバイスにおいて、並びにマイクロフォン、ヘッドフォン及び静電記録装置などの電気音響的装置内の静電的要素として有用である。
【0003】
エアゾール濾過に使用されるマイクロファイバーウェブの性能は、繊維に電荷を付与し、エレクトレット材料を形成することによって改善することができる。特に、エレクトレットはエアゾールフィルタにおける粒子捕捉を向上させるのに有効である。マイクロファイバーウェブ内にエレクトレット材料を形成するために、多くの方法が知られている。このような方法としては、例えば、ダイ開口部から出て繊維が形成された時点で、メルトブローン繊維に電子又はイオンなどの帯電粒子を衝突させる工程が挙げられる。他の方法としては、例えば、ウェブが形成された後で、DCコロナ放電によって繊維を帯電させる工程、又はカーディング及び/又はニードルタッキング(摩擦帯電)によって繊維マットへ電荷を付与する工程が挙げられる。近年、ウォータージェット又は水滴流が、濾過促進エレクトレット電荷を用意するのに十分な圧力で、不織ウェブに衝突する方法(ハイドロチャージング)が述べられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特性の改善されたエレクトレットウェブに対する要求が、依然として存在している。本開示において、帯電強化添加剤を含有するエレクトレットウェブが開示される。これらの帯電強化添加剤は、摩擦帯電、DCコロナ放電、ハイドロチャージング又はこれらの組み合わせなどの、さまざまな異なる帯電メカニズムにより、容易に帯電するエレクトレットウェブを用意する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
幾つかの実施形態においては、開示は熱可塑性樹脂、及びフッ素化された基を含まない複素環式イミド材料を含有する、帯電強化添加剤を含むエレクトレットウェブを含む。エレクトレットウェブは、不織繊維ウェブ又は実に不織超極細繊維ウェブの形態であってよい。
【0006】
他の実施形態においては、開示は、熱可塑性樹脂、及びフッ素化された基を含まない複素環式イミド材料を含有する、帯電強化添加剤の配合物を含む、不織超極細繊維ウェブを含むエレクトレット濾材を含む。エレクトレット濾材は、人工呼吸器フィルタ、室内換気システムフィルタ、車両換気システムフィルタ、空調フィルタ、炉用フィルタ、室内空気清浄機フィルタ、真空掃除機フィルタ、又はコンピュータディスクドライブフィルタを構成してよい。
【0007】
また、熱可塑性材料の用意、フッ素化された基を含まない複素環式イミド材料を含有するホットメルト加工可能な帯電強化添加剤の用意、配合物形成のための熱可塑性材料及び帯電強化添加剤のホットメルト混合、ホットメルト配合物からのウェブの形成、及びウェブの静電気的帯電を含む、エレクトレットウェブの調製方法が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において有用なエレクトレットウェブは、熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤の配合物を含む。このような配合物から調製されるウェブは、熱可塑性樹脂のみから調製されるウェブを超える改善された性質を示すことができる。有用な帯電強化添加剤は、フッ素化された基を含まない複素環式イミド材料を含む。
【0009】
エレクトレットウェブは、さまざまな形態であってよい。例えば、ウェブは連続又は不連続フィルムであってよく、あるいは繊維ウェブであってよい。繊維ウェブは、濾過材料の形成に特に有用である。幾つかの実施形態では、ウェブは不織マイクロファイバーウェブである。典型的には、マイクロファイバーは有効直径(又は走査型電子顕微鏡などの方法で測定される場合の平均直径)が1〜100マイクロメートル、又はより典型的には2〜30マイクロメートルであり、マイクロファイバーは円形の横断面を有する必要はない。
【0010】
用語「a」、「an」及び「the」は、「少なくとも1つの」と同じ意味で用いられ、記載された要素の1つ以上を意味する。
【0011】
用語エレクトレットは、準永久帯電を示す材料を意味する。電荷は、実施例の項目に記述されるように、X線放電試験により特徴付けることができる。
【0012】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を意味する。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には1〜20個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、アルキル基は、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個又は1〜4個の炭素原子を含む。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第三級ブチル(t−ブチル)、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル及びエチルヘキシルが挙げられる。
【0013】
用語「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素であるアルケンのラジカルである一価の基を意味する。アルケニルは、直鎖、分枝状、環状又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には、2〜20個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルケニルは、2〜18個、2〜12個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個又は2〜4個の炭素原子を含む。代表的なアルケニル基としては、エテニル、n−プロペニル及びn−ブテニルが挙げられる。
【0014】
用語「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素3重結合を有する炭化水素であるアルキンのラジカルである一価の基を意味する。アルキニルは、直鎖、分枝状、環状又はこれらの組み合わせであってよく、典型的には、2〜20個の炭素原子を含む。幾つかの実施形態では、アルキニルは、2〜18個、2〜12個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個又は2〜4個の炭素原子を含む。代表的アルキニル基としては、エチニル、n−プロピニル及びn−ブチニルが挙げられる。
【0015】
用語「ヘテロアルキル」は、ヘテロ原子を含有するアルキル基を意味する。これらヘテロ原子は側枝原子、例えばフッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素のようなハロゲンであるか、又は窒素、酸素若しくはイオウのような鎖状原子であってよい。ヘテロアルキル基の一例は、−CHCH(OCHCHOCHCHなどのポリオキシアルキル基である。
【0016】
用語「置換アルキル」は、炭化水素主鎖に沿って置換基を有するアルキル基を意味する。これらの置換基は、アルキル基、ヘテロアルキル基又はアリール基であり得る。置換アルキル基の一例は、ベンジル基である。
【0017】
用語「アリール」は、1〜5個の環(連結又は縮合していてもよい)を有するラジカルである芳香族炭素環基を意味する。アリール基は、アルキル基又はヘテロアルキル基によって置換されてよい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフタレン基及びアントラセン基が挙げられる。
【0018】
用語「アルキレン」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである二価の基を意味する。アルキレンは、直鎖状、分枝状、環状又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には1〜20個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、アルキレン基は1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する。アルキレン基の例として、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)などが挙げられるが、これらに限定されない。アルキレン基はまた、アルキル基によって置換されてもよい。
【0019】
用語「アリーレン」は、連結又は縮合していてもよい1〜5個の環を含むラジカルである、二価芳香族炭素環基を意味する。アリーレン基は、アルキル基又はヘテロアルキル基によって置換されてよい。アリーレン基の例として、フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基を挙げることができる。
【0020】
用語「アラルキレン」は、式−R−Ar−の二価の基を意味し、ここでRはアルキレン、及びArはアリーレンである(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している)。
【0021】
用語「複素環式イミド」は、複素環基、つまり、環状構造がヘテロ原子並びに炭素及び水素原子を含み、すなわち、1〜5個の連結又は縮合していてもよい環を含むラジカルであり、少なくとも1個のイミド基で置換されている、環基を意味する。イミド基は、構造−C(O)−NR−C(O)−を有するものであり、ここでC(O)はカルボニル基(C=O)を意味し、ここで基Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、又は置換アルキルである。複素環式イミドの例として、マレイミド、フタルイミド、スクシンイミド等が挙げられる。「複素環式イミド材料」は、少なくとも1個の複素環式イミドを含む材料である。
【0022】
用語「ヒンダードアミン」は、置換基による立体障害のあるアミン基を意味する。ヒンダードアミンの例は、例えば、米国特許第3,925,376号(Chalmersら)に記述されている。
【0023】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」は、1つのモノマーから調製した材料、例えばホモポリマー、又は2つ若しくはそれ以上のモノマーから調製した材料、例えばコポリマー、ターポリマーなど、の両方を意味する。同様に、用語「重合させる」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであり得るポリマー材料の作製プロセスを意味する。用語「コポリマー」及び「コポリマー材料」は、少なくとも2つのモノマーから調製されたポリマー材料を意味する。
【0024】
用語「室温」及び「周囲温度」は同じ意味で用いられ、20℃〜25℃の範囲の温度を意味する。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「ホットメルト加工可能」とは、例えば、熱及び圧力によって固体から粘稠な流体へと変化することができる組成物を意味する。組成物は、実質的に化学的に変化したり、分解したり、又は目的とした用途に使用不能になったりすることなく、ホットメルト加工が可能でなければならない。
【0026】
特に指示がない限り、明細書及び請求項に使用される外観の寸法、量及び物理的特性を表すすべての数字は、用語「約」によりすべての事例において修正されると理解される。したがって、反対の指示がない限り、本明細書の数字は、本明細書で開示される教示を使用する所望の特性によって変化し得る近似値である。
【0027】
本開示において有用な熱可塑性樹脂としては、ウェブに形成し帯電させた際に、多量の捕捉された静電荷を保持することが可能な、任意の熱可塑性非導電性ポリマーが挙げられる。典型的には、このような樹脂は、使用目的における温度で、1014オームセンチメートルより大きいDC(直流)固有抵抗を有する。捕捉電荷を得ることができるポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリラクチドを含むポリエステル;並びに過フッ化ポリマー及びにコポリマーが挙げられる。特に有用な材料としては、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、これらの配合物、又はプロピレン及び4−メチル−1−ペンテンの少なくとも1つから形成されるコポリマーが挙げられる。
【0028】
一般に、有用な熱可塑性ポリマーは、「メルトフローインデックス」の記述により特性を示すことができる。メルトフローインデックス(MFI)は、熱可塑性ポリマーの溶融物の流れ易さの尺度である。これは、選択可能な規定の重力加重により加えられる圧力により、選択可能な規定の温度において、特定の直径及び長さのキャピラリーを通して10分間に流れるポリマーの、グラムで表示される質量として定義される。この方法はASTM D1238及びISO 1133に示されている。一般的に、ポリプロピレンのメルトフローインデックスは230℃において測定される。
【0029】
好適な熱可塑性樹脂の例として、例えば、ポリプロピレン樹脂である、Exxon−Mobil Corporation,Irving,TXから市販されているESCORENE PP 3746G、Total Petrochemicals USA Inc.,Houston TXから市販されているTOTAL PP3960、TOTAL PP3860及びTOTAL PP3868、LyondellBasell Industries,Inc.,Rotterdam,Netherlandsから市販されているMETOCENE MF 650W、及びMitsui Chemicals,Inc.,Tokyo,Japanから市販されているポリ−4−メチル−1−ペンテン樹脂TPX−MX002が挙げられる。
【0030】
帯電強化添加剤は、フッ素化された基を含まない複素環式イミド材料である。フッ素化された基を含有する多数の帯電強化添加剤が使用されているが、フッ素化された基の使用は好ましくないことがある。フッ素化された基、特に過フッ素化された基、の使用では、高価で容易には入手できないフッ素含有試薬が必要であり、複雑な反応の順序及び工程を伴うことがある。
【0031】
複素環式イミド材料は、下記の3つの一般式、式1、式2及び式3により記述できる。
【化1】


式1において、基Rは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、又は置換アルキル若しくは置換アリールである。更に、Rは、追加の複素環式イミド基に結合していてもよい。基R及びRは、独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、又は置換アルキル若しくは置換アリールであるか、又は他の複素環式イミドに連結していてもよい。式2において、基Rは上述の説明と同じである。基R、R、R及びRは、独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、又は置換アルキル若しくは置換アリールであるか、又は他の複素環式イミドに連結していてもよい。式3において、基Rは上述の説明と同じであり;Arはフェニル、ナフタリル、アントラセニル、又は他の芳香族縮合環構造などの芳香環であり;構造Z及びZは、芳香環の任意の位置に位置していてよい芳香環上の置換基であり、独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、若しくは置換アルキル、二トロ、置換アリールでよく、又は他の複素環式イミドに連結していてもよい。更に、芳香環は他の複素環式イミドに連結していてもよい。
【0032】
幾つかの実施形態においては、帯電強化添加剤は式1の添加剤である。式1で記述されるさまざまな異なる材料が、帯電強化添加剤として有用である。式1のR、R及びRが水素原子の場合、この分子はマレイミドとして知られているので、これらの添加剤類は時々「マレイミド類」と称される。典型的には、基R及びRは水素原子である。好適なマレイミドとして、例えば、他のマレイミド基に連結したマレイミドが挙げられる。このようなマレイミドには、式1のRが他のマレイミド基に結合した連結基である例が挙げられる。連結基の例には、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基などが挙げられる。幾つかの実施形態においては、連結基は芳香族連結基を含み、これは連結基が少なくとも1個の芳香環を含むことを意味する。芳香族連結基の例としては、例えば、アリーレン基(−Ar−)、並びに、R及びRがアルキレン基でありかつArがアリーレン基を表す、例えば、−Ar−R−Ar−及び−R−Ar−R−などの、アリール基又はアルキル基のいずれかを通して連結することのできる、さまざまなアラルキレン基が挙げられる。幾つかの実施形態においては、帯電強化添加剤は式4又は式5(下記)の構造を含む。
【化2】

【0033】
幾つかの実施形態においては、帯電強化添加剤は式2の添加剤である。式2で記述されるさまざまな異なる材料が、帯電強化添加剤として有用である。式2のR、R、R、R及びRが水素原子である場合、この分子はスクシンイミドとして知られているので、これらの添加剤は時々「スクシンイミド類」と称される。好適なスクシンイミド類には、例えば、Rがアルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル又は置換アリールを含む、式2のスクシンイミド類が挙げられる。R、R、R及びR基は、アルキル若しくはアリール基であり得、又はこれらはスクシンイミド基を他のスクシンイミド基に連結する連結基であることがある。幾つかの望ましい実施形態においては、帯電強化添加剤は、Rがヒンダードアミン基を含み、R及びR基がスクシンイミド基を他のスクシンイミド基に連結する連結基であり、かつR及びR基が水素である、式2のスクシンイミドである。特に好適な実施形態においては、帯電強化添加剤はBASF,Ludwigshafen,Germanyの「UVINUL 5050H」として市販されており、これはヒンダードアミンN−置換スクシンイミドオリゴマーと記述することができる。この添加剤の構造は式6(下記)で示され、分子量が3,000〜4,000グラム/モルと報告されており、したがってnの値は約5〜7である。
【化3】

【0034】
幾つかの実施形態においては、帯電強化添加剤は式3の添加剤である。式3で記述されるさまざまな異なる材料が、帯電強化添加剤として有用である。式3の添加剤は、アリール基に縮合したマレイミドと見ることができる。式3のR、Z及びZが水素原子であり、かつAr基がフェニル環である場合には、分子はフタルイミドとして知られているので、このような材料の1つの好適な種類は、時々の「フタルイミド類」と称される。好適なフタルイミド類には、例えば、Rがアルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル又は置換アリールを含む、式3のフタルイミドが挙げられる。Z及びZ基は、独立して、水素、アルキル、アリール又は二トロ基であり得る。幾つかの望ましい実施形態においては、帯電強化添加剤は、Rがフェニル基のようなアリール基を含み、かつZ及びZ基の1個が水素原子であり、かつ他が二トロ基である、式3のフタルイミドである。好適なフタルイミドの例を式7(下記)に示す。
【化4】

【0035】
典型的には、帯電強化添加剤は熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤配合物中に、配合物の全重量に基づき約10重量%までの量、より典型的には0.1〜5重量%の範囲の量で存在する。幾つかの実施形態では、帯電強化添加剤は、0.1〜3重量%、又は0.25〜2重量%の範囲の量で存在する。
【0036】
熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤の配合物は、よく知られた方法で調製することができる。典型的には、配合物は溶融押出技術を使用して処理されるので、当該配合物をバッチプロセスで事前に配合しペレットに成形したり、又は熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤を連続プロセスにて押出成形機内で混合したりしてよい。連続プロセスを使用する場合、熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤を予め固体状態で混合して、又は個別に押出成形機に加えたりして、溶融状態で混ぜ合わせてよい。
【0037】
事前配合ペレットを形成するために使用してよい溶融混合機の例としては、分散混合、分配混合、又は分散混合及び分配混合の組み合わせを用意するようなものが挙げられる。バッチ法の例としては、BRABENDER(例えばC.W.Brabender Instruments,Inc.;South Hackensack,NJから市販されているBRABENDER PREP CENTER)、又はBANBURY内部混合及びロールミリング装置(例えば、Farrel Co.;Ansonia,CTから入手できる装置)を使用するようなものが挙げられる。バッチ混合後、生成した混合物を直ちにクエンチし、後で加工するために、混合物の溶融温度未満で保管してよい。
【0038】
連続法の例として、一軸スクリュー押出成形、二軸スクリュー押出成形、ディスク押出成形、往復式一軸スクリュー押出成形、及びピンバレル一軸押出成形が挙げられる。連続法としては、キャビティトランスファーミキサー(例えば、Shrewsbury,EnglandのRAPRA Technology,Ltd.から市販されているCTM)及びピン混合要素などの両分配要素、静的混合要素、又は分散混合要素(例えば、MADDOCK混合要素又はSAXTON混合要素として市販されている)を利用するものが挙げられる。
【0039】
バッチプロセスにより調製された、事前配合ペレットを押し出すために使用してよい押出機の例としては、前述した連続加工用の装置と同じ型が挙げられる。有用な押し出し条件は、一般的に添加剤のない樹脂の押し出しに好適な条件である。
【0040】
熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤の押し出された配合物を、既知の技術を使用して、フィルム又はシートにキャスト又はコーティングしてよく、あるいは不織繊維ウェブにメルトブローしてよい。メルトブローン不織マイクロファイバーウェブは、濾材として特に有用である。
【0041】
メルトブローン不織マイクロファイバーのエレクトレットフィルタは、濾過用接顔部などの呼吸用マスクのエアフィルタ要素として、あるいは家庭用及び工業用空調機、空気清浄機、真空掃除機、医療用エアラインフィルタ、乗り物用空調システム、並びにコンピュータ、コンピュータディスクドライブ及び電子機器などの一般装置用空調システムなどの目的のために、特に有用である。幾つかの実施形態においては、エレクトレットフィルタは人工呼吸器アセンブリと組み合わされ、ヒトが使用するよう設計された人工呼吸器デバイスを形成する。人工呼吸器の用途においては、エレクトレットフィルタは、成形された、ひだのある又は折り畳まれた半面の呼吸用マスク、取り換え可能なカートリッジ若しくはキャニスター又は前置フィルタの形態であってよい。
【0042】
本開示において有用なメルトブローンマイクロファイバーは、Van A.Wente、「Superfine Thermoplastic Fibers」、Industrial Engineering Chemistry,vol.48,pp.1342〜1346及びReport No.4364 of the Naval Research Laboratories,published May 25,1954,entitled「Manufacture of Super Fine Organic Fibers」by Van A.Wenteらに記載されているようにして調製することができる。
【0043】
繊維エレクトレットフィルタのための有用なメルトブローンマイクロファイバーは、典型的には、約1〜100マイクロメートル、より典型的には2〜30マイクロメートル、ある実施形態においては約7〜15マイクロメートルの有効繊維直径を有する。この有効繊維直径は、Davies,C.N.,「The Separation of Airborne Dust and Particles,」Institution of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に記載の方法に従って計算される。
【0044】
ステープルファイバーもまた、ウェブ内に存在してよい。一般的に、ステープルファイバーが存在することで、ブローンマイクロファイバーのみからなるウェブよりも、より嵩高で、より密度の小さいウェブとなる。一般的に約90重量%以下のステープルファイバーが存在し、より典型的には、約70重量%以下である。ステープルファイバーを含むウェブの例は、米国特許第4,118,531号(Hauser)に開示されている。
【0045】
活性炭又はアルミナなどの吸着粒子材料もまたウェブ内に含まれてよい。このような粒子は、ウェブ内容物の約80容積パーセントまで存在してよい。粒子充填ウェブの例は、例えば米国特許第3,971,373号(Braun)、同第4,100,324号(Anderson)及び同第4,429,001号(Kolpinら)に記載されている。
【0046】
例えば、顔料、光安定剤、主及び二次酸化防止剤、金属不活性剤、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、脂肪酸金属塩、トリエステル亜リン酸塩、リン酸塩、フッ素含有化合物及びこれらの組み合わせを含む、種々の任意の添加剤を熱可塑性組成物に配合することができる。これに加えて、他の帯電強化添加剤を熱可塑性組成物に組み合わせてよい。可能な帯電添加剤としては、トリアジン環の窒素原子に加えて少なくとも1つの窒素原子を含有する、熱的に安定な有機トリアジン化合物又はオリゴマーが挙げられ、例えば、Rousseauらの米国特許第6,268,495号、同第5,976,208号、同第5,968,635号、同第5,919,847号及び同第5,908,598号を参照。エレクトレットを強化することが知られている他の添加剤は、「CHIMASSORB 944 LF」(ポリ[[6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)イミの]])であり、Ciba Specialty Chemicals,Inc.から入手できる。帯電強化添加剤はN−置換アミノ芳香族化合物、特に「UVINUL T−150」としてBASF,Ludwigshafen,Germanyから市販されている、2,4,6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチルへキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジンなどの、トリアミノ置換化合物であってよい。他の帯電添加剤は、2,4,6−トリス−(オクタデシルアミノ)−トリアジンであり、トリステアリルメラミン(「TSM」)としても知られている。帯電強化添加剤の更なる例は、米国特許出願第61/058,029号、同第61/058,041号、米国特許第7,390,351号(Leirら)、同第5,057,710号(Nishiuraら)並びに米国特許第4,652,282号及び同第4,789,504号(Ohmoriら)に載せられている。
【0047】
更に、ウェブをその表面を化学的に修正するために処理してもよい。表面のフッ素化は、ポリマー物品をフッ素含有化学種及び不活性ガスを含む雰囲気中に置き、次に電気的に放電し、ポリマー物品の表面化学を変えることにより達成することができる。電気放電は、ACコロナ放電等のプラズマの形態であってよい。このプラズマフッ素化工程によって、フッ素原子がポリマー物品の表面上に存在するようになる。プラズマフッ素化工程は、Jones/Lyonsらの多くの米国特許第6,397,458号、第6,398,847号、第6,409,806号、第6,432,175号、第6,562,112号、第6,660,210号及び第6,808,551号に記載されている。高フッ素飽和比を有するエレクトレット物品はSpartzらの米国特許第7,244,291号に記載されており、ヘテロ原子とともに低フッ素飽和比を有するエレクトレット物品はKirkらの米国特許第7,244,292号に記載されている。フッ素化技術を開示する他の公報としては、米国特許第6,419,871号、第6,238,466号、第6,214,094号、第6,213,122号、第5,908,598号、第4,557,945号、第4,508,781号及び第4,264,750号;米国特許公報US 2003/0134515 A1号及びUS 2002/0174869 A1号;並びに国際特許公報WO 01/07144号が挙げられる。
【0048】
本開示に従って製造されたエレクトレット濾材は一般に、約10〜500g/cmの範囲の坪量(単位面積当たりの質量)を有し、幾つかの実施形態では、約10〜100g/cmの範囲の坪量を有する。メルトブローンマイクロファイバーウェブの作製において、坪量は、例えばコレクター速度又はダイの処理能力のいずれかを変化させることによりコントロールすることができる。濾材の厚さは、典型的には約0.25〜20ミリメートルであり、幾つかの実施形態では約0.5〜2ミリメートルである。通常、多層繊維エレクトレットウェブは、フィルタ要素に使用される。繊維エレクトレットウェブの固体性は、典型的には、約1%〜25%、より典型的には約3%〜10%である。固体性は、ウェブの固体部分を画定する単位のないパラメーターである。一般に本開示の方法は、濾材の坪量、厚さ又は固体性に関わりなく、エレクトレットウェブに概して均一な電荷分布をウェブ全域にわたって用意する。エレクトレット濾材及びそれを製造する樹脂には、その電気伝導率を増大させる可能性のあるあらゆる不必要な処理、例えば、電離放射線、ガンマ線、紫外線照射、熱分解、酸化等への曝露を施してはならない。
【0049】
エレクトレットウェブは、それが形成された時点で帯電されてよく、あるいはウェブはウェブ形成後に帯電されてもよい。エレクトレット濾材では、濾材は一般的に、ウェブが形成された後で帯電される。一般的に、当該技術分野において既知の任意の標準的な帯電方法を使用してよい。例えば、帯電は、摩擦帯電、DCコロナ放電及びハイドロチャージングを含むさまざまな方法で実施してよい。種々の方法の組み合わせも使用できる。
【0050】
好適なDCコロナ放電プロセスの例は、米国特許参照番号第30,782号(van Turnhout)、同第31,285号(van Turnhout)、同第32,171号(van Turnhout)、米国特許第4,215,682号(Davisら)、同第4,375,718号(Wadsworthら)、同第5,401,446号(Wadsworthら)、同第4,588,537号(Klaaseら)、同第4,592,815号(Nakao)、及び同第6,365,088号(Knightら)に記述されている。
【0051】
ウェブのハイドロチャージングは、ウェブに濾過促進エレクトレット帯電を用意するのに十分な圧力で、水の噴流又は水滴流をウェブ上へと衝突させることによって実施される。最適な結果を達成するために必要となる圧力は、使用する噴霧器の種類、ウェブを形成するポリマーの種類、ポリマーへの添加剤の種類及び濃度、ウェブの厚さ及び密度、並びにハイドロチャージングに先立って行われるDCコロナ表面処理などの前処理の実施の有無によって変化する。一般に、約10〜500psi(69〜3450kPa)の範囲の水圧が好適である。望むならば、DCコロナ表面処理もポストハイドロチャージング処理として使用できるが、このような後処理は典型的ではない。
【0052】
水の噴流又は水滴流は、いずれかの好適な噴霧手段により用意され得る。一般的に、繊維の水流による交絡に有用な装置が、本開示の方法において有用であるが、ハイドロチャージングでは、操作は一般的に水流交絡にて使用される場合よりも低圧で実施される。ハイドロチャージングは、米国特許第5,496,507号(Angadjivand)に記載された方法、並びに流体ウエッティング及びディウェッティングプロセスを使用して、エレクトレット電荷を付与するための、その他の各種の派生的方法、例えば、日本特許出願第2002161467号(Horiguchi)、同第2002173866号(Takeda)、同第2002115177号(Takeda)、同第2002339232号(Takeda)、同第2002161471号(Takeda)、日本特許第3,780,916号(Takeda)、日本特許出願第2002115178号(Takeda)、同第2003013359号(Horiguchi)、米国特許第6,969,484号(Horiguchi)、同第6,454,986号(Eitzman)、日本特許出願第2004060110号(Masumori)、同第2005131485号(Kodama)、及び同第2005131484号(Kodama)に記載されている方法を包含すると理解されている。
【0053】
ウェブのハイドロチャージングはまた「ゼータ電位に基づくエレクトレット物品の作製方法(Method of Making Electret Articles Based On Zeta Potential)」という名称の2008年6月2日に出願された米国特許出願(米国特許出願番号第12/131770号)に開示された新しい方法によっても行うことができる。この方法は、(a)帯電されるポリマー物品を用意する工程と、(b)帯電されたポリマー物品を以下のpHと伝導度とを有する水性液と接触させる工程であって、(i)物品が−7.5ミリボルト(mV)未満のゼータ電位を有する場合、接触水はセンチメートル当り約5〜9,000マイクロシーメンス(μS/cm)の伝導度と7を超えるpHとを有し、(ii)物品が−7.5ミリボルト(mV)を超えるゼータ電位を有する場合、接触水はセンチメートル当り約5〜5,500マイクロシーメンス(μS/cm)の伝導度と7以下のpHとを有する工程と、を含む。物品は、積極的に(真空又は熱で)若しくは受動的に(吊るし乾燥)又はそれらの組み合わせで乾燥させてもよい。
【0054】
濾過性能を評価するために、さまざまな試験プロトコルが開発されてきた。これらの試験は、ジオクチルフタレート(DOP)などの標準暴露用エアゾールを使用したフィルタウェブのエアゾール透過の測定を含み、これは通常、フィルタウェブを抜けるエアゾール透過のパーセント(% Pen)及びフィルタウェブを横断する圧力低下(ΔP)で表される。これら2つの測定値から、品質係数(QF)として知られている量が、次の式
QF=−ln(% Pen/100)/ΔP
(式中、lnは自然対数を表す)によって計算することができる。より大きいQF値はよりよい濾過性能を示し、低下したQF値は、濾過性能の低下と有効な相関関係がある。これらの値の測定についての詳細は、実施例の項目で示す。典型的には、本開示の濾材は、毎秒6.9cmの面速度にて0.3(mmHO)−1又はこれを超える測定QF値を有する。
【0055】
特定の濾材が自然に静電気を帯びていることを証明するために、その性能をイオン化X線照射の前後に調べることができる。例えば、文献、R.C.BrownによるAir Filtration(Pergamon Press,1993)及び「Application of Cavity Theory to the Discharge of Electrostatic Dust Filters by X−Rays」、A.J.WAKER及びR.C.BROWN、Applied Radiation and Isotopes,Vol.39,No.7,pp.677〜684,1988に記載されているように、もし静電気を帯びたフィルタがX線に暴露すると、X線により繊維間のガスの空洞に生成するイオンが電荷を幾らか中和してしまうので、フィルタを通過するエアゾールの透過は、暴露前に比較して暴露後が大きくなる。したがって、累積X線暴露において、透過が一定のレベルまでの着実な増加を示し、その後は照射を続けても変化は起きない、累積X線暴露に対する透過のプロットが得られる。この時点で、すべての電荷がフィルタから除去されてしまっている。
【0056】
これらの観察により、濾過性能評価のもう一つの試験プロトコル、X線放電試験、の採用に到達した。この試験プロトコルでは、選択した濾材片をX線照射に暴露し、エレクトレットウェブを放電させる。この試験の一つの特性は、試験はウェブがエレクトレットであることを確認することである。X線がエレクトレットの電荷を消すことが知られているので、濾材をX線に暴露し、この暴露前後におけるフィルタ性能の測定及びフィルタ性能の比較は、濾材がエレクトレットであるかどうかを示す。フィルタの性能がX線照射後に変化しなければ、これは電荷が消されなかったこと及び材料がエレクトレットではないことを示す。しかし、もしフィルタ性能がX線暴露後に低下すれば、これは濾材がエレクトレットであることを示す。
【0057】
試験を行うとき、典型的には、濾材のX線照射の前後において濾過性能を測定する。下記実施例の項目に記載した濾過性能試験方法により試験した場合、%透過比は次の式により計算できる。%透過比=(ln(初期% DOP透過/100)/(ln(X線暴露後60minの% DOP透過)))×100。ウェブがフィルタとしての使用に十分な電荷を有するためには、%透過比は、典型的には、少なくとも300%である。%透過比が増加するに従い、ウェブの濾過性能もまた増加する。幾つかの実施形態においては、%透過比は少なくとも、400%、500%又は600%である。好ましい実施形態においては、%透過比は少なくとも、750%又は800%である。幾つかの実施形態においては、ウェブは少なくとも1000%又は少なくとも1250%の透過比を示す。
【0058】
下記の実施例の項に記した濾過性能試験方法により試験した場合、面速度6.9cm/sの初期品質係数(X線への暴露前)は、典型的には、少なくとも0.3(mmHO)−1、より典型的には少なくとも0.4、又は実に0.5(mmHO)−1である。幾つかの実施形態においては、初期品質係数は少なくとも0.6又は0.7(mmHO)−1である。他の実施形態においては、初期品質係数は少なくとも0.8、少なくとも0.90、少なくとも1.0、又は実に1.0(mmHO)−1を超える。X線への60分の暴露後の品質係数は、典型的には、初期品質係数の50%未満である。幾つかの実施形態においては、初期品質係数は、少なくとも0.5(mmHO)−1又はこれを超え、X線への60分の暴露後の品質係数は0.15(mmHO)−1未満である。
【0059】
エレクトレットフィルタ繊維の有効電荷密度(q)は、フィルタ透過試験測定により計算することができる。計算は、Brown,R.C.(1981)Capture of Dust Particles in Filters by Line−Dipole Charged Fibers,J.Aerosol Sci.12:349〜356、及びOtani,Y.、Emi,H.及びMori,J.(1993)、Initial Collection Efficiency of Electret Filter and Its Durability for Solid and Liquid Particles,J.Chem.Eng.Japan 11:207〜214に記載されている。
【0060】
エレクトレット濾材を通るフィルタ透過の式は、機械的、双極子及びクーロン粒子捕捉メカニズムに関する3つの粒子係数に関係している。
【数1】


式中、
η=単繊維効率、機械的捕捉(非帯電繊維、非帯電粒子)
ηIn=単繊維効率、誘起双極子捕捉(帯電繊維、非帯電粒子)
η=単繊維効率、クーロン捕捉(帯電繊維、帯電粒子)=0(非帯電粒子)
【0061】
誘起力単繊維効率(ηIn)は、フィルタ構造並びに帯電繊維(Pch)及び非帯電繊維(Punch)の透過率を与えるエレクトレット濾材についての、非帯電粒子(η=0)を使用する、フィルタ試験の結果から計算し得る。
【数2】

【0062】
誘起力無次元パラメーター(KIn)は、帯電エレクトレット繊維による非帯電粒子の捕捉に関係している。
【数3】

【0063】
Otani(1993)及びBrown(1993)の2つの領域に関するコンピュータ解析(下記)からの相関関係は、繊維周辺の流れ場の修正(h)を伴うηInからの誘起力パラメーター、KIn、の計算のために、反転させ得る。この試験の場合は、KIn<1及び第1の式を使用した。
【数4】

【0064】
ηInからのKInの計算からの値を代入し、上記のKInの式を反転させると、エレクトレットフィルタ中の繊維の有効電荷密度(q)が得られる。
【数5】


ここで、
ηIn=誘起双極子単繊維効率(−)
=繊維直径(m)=0.5×(空気流試験からの有効繊維直径)
L=フィルタの厚さ(m)
α=固体性(−)
ch=透過−帯電繊維(−)
unch=透過−非帯電繊維(−)
=粒子直径(m)=0.2マイクロメートル
=粒子Cunningham補正係数(−)
=桑原水力学係数(−)
=有効繊維電荷密度(C/m
ε=誘電定数−粒子(−)=ジオクチルフタレートに対しては5.1
ε=自由空間誘電定数=8.8542E−12(C/Nm
ε=誘電定数−繊維(−)=ポリプロピレンについては2.2
μ=空気粘度Pas=1.81E−05(Ns/m
=面速度(m/s)=6.9cm/s
In=誘起双極子力パラメーター(−)
【0065】
TSI AFT Model 8130エアゾール発生装置(下記)からの、使用した投入DOPの粒度分布は、1.6の幾何標準偏差を伴う、0.2マイクロメートルの幾何計数平均直径を有する。TSI AFT Model 8130は、エアゾール中和装置を切って操作した。TSI AFT Model 8130 DOPエアゾール発生装置は大きな空容量を有する。空容積中においてその結果生ずる、この液体エアゾールの上における物理的及び静電的アグロメレーションは、非常に低い双極静電荷のエアゾールを生成する。非帯電粒子については双極電荷はほぼゼロであり、中和装置を働かせた場合(ボルツマン電荷分布)より非常に低い。
【0066】
繊維電荷の計算には、計数繊維中央径を使用した。これは有効繊維直径の半分として計算される。有効繊維直径(EFD)は表面積繊維直径であり、繊維計数直径とHatch−Choate式により関係付けることができる。
【数6】


式中、d=計数幾何平均直径=算術平均直径
=面積幾何平均直径=EFD
σ=幾何標準偏差
【0067】
計算手法の詳細は、下記実施例の項目に含まれている。幾つかの実施形態においては、計算有効電荷密度は少なくとも20マイクロクーロン/平方メートルである。他の実施形態においては、計算有効電荷密度は少なくとも30、40又は更に50マイクロクーロン/平方メートルでさえある。
【実施例】
【0068】
これらの実施例は、単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した請求項の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書の実施例及びその他の部分におけるすべての部、百分率、比などは、特に注記がない限り重量による。使用した溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company;Milwaukee,Wisconsinから入手した。
【0069】
【表1】

【0070】
試験方法
濾過試験
試料を、% DOPエアゾール透過(% Pen)及び圧力低下(ΔP)について試験し、品質係数(QF)を計算した。不織マイクロファイバーウェブの濾過性能(% PEN及びQF)は、自動フィルタ試験機(AFT)型式8130(TSI,Inc.,St.Paul,MNから入手可能)を使用し、標準暴露用エアゾールとしてジオクチルフタレート(DOP)を使用して評価した。DOPエアゾールは、70〜120mg/mの上流側濃度を有する、名目単分散の、0.3マイクロメートル質量中央径である。エアゾールを、エアゾールTSI AFT Model 8130エアゾール中和装置を停止させ、濾材試料を通して、42.5リットル/分の較正流量(6.9cm/秒の面速度)にて押し出した。総試験時間は23秒であった(立ち上がり時間15秒、サンプル時間4秒及びパージ時間4秒)。装置により、% Penと同時に、フィルタを通した圧力低下(ΔP mm水柱)を測定した。DOPエアゾールの濃度は、濾材の上流側と下流側の両方にて、較正した光度計を使用して、光散乱により測定した。DOPの% Penは、次のように定義される、% Pen=100×(DOP下流側濃度/DOP上流側濃度)。各材料について、BMFウェブ上の異なる箇所で6個の別個測定を行い、結果を平均した。
【0071】
% Pen及びΔPを使用して、次式
QF=−ln(% Pen/100)/ΔP
(式中、lnは自然対数を表す)によりQFを計算した。より大きいQF値は濾過性能がより高いことを示し、低下したQF値は濾過性能の低下と有効な相関関係があることを示す。
【0072】
X線放電試験
X線照射への暴露に先だち、上述の試験方法を使用して、試験されるウェブの品質係数及び%透過を測定した。初期品質係数を「QF」と称する。試料ウェブは、それぞれの面を下記に記載のシステムを使用して、確実に試料全体が均一にX線放射に暴露するよう、X線に暴露した。X線暴露後、再度そのフィルタ性能(QF及び% Pen)を測定するために、濾材試料を試験した。この手順を、試料の静電荷がすべて中和されたことを示す、フィルタ性能が平坦となるまで繰り返した。%透過比(% Pen比)も報告した。% Pen比は、0分及び60分における% Penから式を使用して計算した。式でlnは自然対数である。
【数7】

【0073】
X線暴露は、Baltograph 100/15 CP(Balteau Electric Corp.,Stamford,CT)の、定電圧端末接地発生装置、100KV、10mA定格、ベリリウム窓(0.75mm固有濾過)、1.5mm×1.5mmの焦点位置から50cmの位置において960レントゲン/minまでの出力、からなるX線暴露システムを使用して行った。電圧は80KVに設定し、対応する電流は8mAであった。試料ホルダーを、焦点の位置から約57.2センチメートル(22.5インチ)の距離にセットし、約580レントゲン/minの暴露を与えた。
【0074】
有効電荷密度の計算:
エレクトレットフィルタ繊維の有効電荷密度(q)を、フィルタ透過試験測定から計算した。エレクトレット濾材を通るフィルタ透過の式は、機械的、双極子及びクーロン粒子捕捉メカニズムに関する3つの粒子係数に関係している。
【数8】


式中、
η=単繊維効率、機械的捕捉(非帯電繊維、非帯電粒子)
ηIn=単繊維効率、誘起双極子捕捉(帯電繊維、非帯電粒子)
η=単繊維効率、クーロン捕捉(帯電繊維、帯電粒子)=0(非帯電粒子)
【0075】
誘起力単繊維効率(ηIn)は、フィルタ構造並びに帯電繊維(Pch)及び非帯電繊維(Punch)の透過率を与えるエレクトレット濾材についての、非帯電粒子(η=0)を使用するフィルタ試験の結果、から計算し得る。
【数9】

【0076】
誘起力無次元パラメーター(KIn)は、帯電エレクトレット繊維による非帯電粒子の捕捉に関係している。
【数10】

【0077】
Otani(1993)及びBrown(1993)の2つの領域に関するコンピュータ解析(下記)からの相関関係は、繊維周辺の流れ場の修正(h)を伴うηInからの誘起力パラメーター、KIn、の計算のために、反転させ得る。この試験の場合は、KIn<1及び第1の式を使用した。
【数11】

【0078】
ηInからのKInの計算からの値を代入し、上記のKInの式を反転させると、エレクトレットフィルタ中の繊維の有効電荷密度(q)が得られる。
【数12】


式中、
ηIn=誘起双極子単繊維効率(−)
=繊維直径(m)=0.5×(空気流試験からの有効繊維直径)
L=フィルタの厚さ(m)
α=固体性(−)
ch=透過−帯電繊維(−)
unch=透過−非帯電繊維(−)
=粒子直径(m)=0.2マイクロメートル
=粒子Cunningham補正係数(−)
=桑原水力学係数(−)
=有効繊維電荷密度(C/m
ε=誘電定数−粒子(−)=ジオクチルフタレートに対しては5.1
ε=自由空間誘電定数=8.8542E−12(C/Nm
ε=誘電定数−繊維(−)=ポリプロピレンについては2.2
μ=空気粘度Pas=1.81E−05(Ns/m
=面速度(m/s)=6.9cm/s
In=誘起双極子力パラメーター(−)
【0079】
TSI AFT Model 8130エアゾール発生装置からの、使用した投入粒子の粒度分布は、1.6の幾何標準偏差を伴う0.2マイクロメートルの幾何計数平均直径を有していた。
【0080】
繊維電荷の計算には、計数繊維中央径を使用した。これは有効繊維直径の半分として計算される。有効繊維直径(EFD)は表面積繊維直径であり、繊維計数直径とHatch−Choate式により関係付けることができる。
【数13】


式中、d=計数幾何平均直径=算術平均直径
=面積幾何平均直径=EFD
σ=幾何標準偏差
【0081】
熱安定性分析
各帯電添加剤の熱安定性は、TA Instruments,New Castle,Delawareから入手可能な熱重量分析器(TGA)型式2950を使用して測定した。約5〜10ミリグラムの材料をTGA内に配置し、空気雰囲気下で、室温から500℃まで、10℃/分の速度で加熱しながら、重量減を測定した。表1は、2%の重量減が検出された温度、及び5%の重量減が検出された温度を載せている。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例1〜85及び比較実施例C1〜C83
実施例及び比較実施例の各々について、下記の手順を続けた。これらの実施例のデータは、表2、3及び表4に示されている。
【0084】
サンプルの調製
工程A−マイクロファイバーウェブの調製:
各実施例のウェブ1〜20について、上述(添加剤1、2、3、又は4)の帯電添加剤の1つを選んで、ポリプロピレン又はポリ−4−メチル−1−ペンテンのグレードの1つと、表2に示す濃度で乾式配合し、配合物をVan A.Wente,「Superfine Thermoplastic Fibers,」Industrial Engineering Chemistry,48,pp.1342〜1346に記述されるように、押し出した。押出温度は約250℃〜300℃の範囲であり、押出成形機はBRABENDERの円錘2軸スクリュー押出成形機(Brabender Instruments,Inc.から市販されている)であり、約2.5〜3kg/hr(5〜7lb/hr)の速度で操作した。ダイは、1センチメートル当たり、10ホール(インチ当たり25ホール)で、25.4センチメートル(10インチ)の幅であった。約57g/mの坪量、約8.0マイクロメートルの有効繊維直径、及び約1ミリメートルの厚さを有するメルトブローン超極細繊維(BMF)ウェブが形成された。同じように、各比較実施例C1〜C8に関して、BMFウェブを、対応の実施例のウェブと同じポリプロピレンのグレードを使用して、帯電添加剤を添加しないか又は帯電添加剤5を添加して調製した。表2に、実施例及び比較実施例のそれぞれについて、詳しいウェブの特性をまとめる。
【0085】
工程B−エレクトレットの調製:
上述の工程Aで調製されたBMFウェブのそれぞれを、エレクトレット帯電の4つの方法:コロナ予備処理及び50PPMのNaCOを含む水によるハイドロチャージング、コロナ予備処理及びDI水によるハイドロチャージング、50PPMのNaCOを含む水によるハイドロチャージング、又はDI水によるハイドロチャージング、の1つにより帯電させた。表3に各試料に適用した詳細な帯電方法を要約する。
【0086】
帯電方法1:
上述の工程Aで調製し、選択したBMFウェブを、DCコロナ放電とそれに続く50PPMのNaCOを含む水によるハイドロチャージにより、帯電させた。放電源の長さ毎センチメートル当たり約0.01ミリアンペアのコロナ電流のブラシコロナ源の下の接地した表面を、毎秒約3センチメートルの速度でウェブを通し、コロナ帯電を達成した。コロナ源は、ウェブが運ばれる接地した表面から約3.5センチメートルの高さにあった。コロナ源は、DC正電圧により駆動した。コロナ帯電後、896キロパスカル(130psig)で約1.4リットル/分の流速で作動しているノズルから発生する、50PPMのNaCOをその中に溶解した水の微細スプレーを使用して、BMFウェブをハイドロチャージした。工程Aにて調製し選択したBMFウェブを、多孔質ベルトによって、約10cm/秒の速度で水噴霧を通過させて搬送しながら、同時にウェブを通して水を下方から減圧吸引した。各BMFウェブを、噴霧しながらハイドロチャージャに2回通し(各面を続けて)、次いで噴霧せず吸引のみですべての過剰の水を除去するために2回通した。フィルタの試験に先だち、ウェブを空気中で一晩完全に乾燥させた。
【0087】
帯電方法2:
上述の工程Aで調製し選択したBMFウェブを、DCコロナナ放電とそれに続くDI水によるハイドロチャージにより、帯電させた。50PPMのNaCOをその中に溶解した水を使用する代わりにDI水を使用すること以外は、帯電方法1と同じ方法を使用した。
【0088】
帯電方法3:
上述の工程Aで調製し選択したBMFウェブを、50PPMのNaCOを含む水を使用するハイドロチャージにより帯電させた。896キロパスカル(130psig)で約1.4リットル/分の流速で作動しているノズルから発生する、50PPMのNaCOをその中に溶解した水の微細スプレーを使用して、BMFウェブをハイドロチャージした。工程Aにて調製し選択したBMFウェブを、多孔質ベルトによって、約10cm/秒の速度で水噴霧を通過させて搬送しながら、同時にウェブを通して水を下方から減圧吸引した。各BMFウェブを、噴霧しながらハイドロチャージャに2回通し(各面を続けて)、次いで噴霧せず吸引のみですべての過剰の水を除去するために2回通した。フィルタの試験に先だち、ウェブを空気中で一晩完全に乾燥させた。
【0089】
帯電方法4:
上記の工程Aにおいて調製し、選択したBMFを、脱イオン水を使用するハイドロチャージングにより帯電させた。BMFウェブを、896キロパスカル(130psig)の圧力及び約1.4リットル/分の流速で操作しているノズルから発生する脱イオン水の微細噴霧を使用して、ハイドロチャージした。工程Aにて調製し選択したBMFウェブを、多孔質ベルトによって、約10cm/秒の速度で水噴霧を通過させて搬送しながら、同時にウェブを通して水を下方から減圧吸引した。各BMFウェブを、噴霧しながらハイドロチャージャに2回通し(各面を続けて)、次いで噴霧せず吸引のみですべての過剰の水を除去するために2回通した。フィルタの試験に先だち、ウェブを空気中で一晩完全に乾燥させた。
【0090】
フィルタ試験手順:
初期濾過性能:
上述の工程Bで調製した各帯電試料を1メートル切片に切断し、この切片を初期状態で% DOPエアゾール透過(% DOP Pen)及び圧力低下(ΔP)について試験し、品質係数(QF)を上述の試験方法で述べた方法により計算した。下記の表3に、% DOP Pen、圧力低下及びQFの結果を報告する。
【0091】
【表3】

【0092】
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】

【0093】
エレクトレット濾材のX線放電:
上述の試験方法で述べた手順を使用して、選択した濾材の試料をイオンを発生するX線に暴露した。表4は、各試料のX線暴露前(時間=0分)、全X線暴露の30分後、全X線暴露の40分後、全X線暴露の60分後の濾過性能を報告している。
【0094】
【表5】

【0095】
有効電荷密度の計算:
上記表4に示された60分X線暴露データ、及び上記の試験方法で説明した手順を使用して、有効電荷密度を濾材の選択した試料について計算した。これらのデータを表5に示す。
【0096】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトレットウェブであって、
熱可塑性樹脂と、
フッ素化された基を含まない複素環式イミド材料を含む帯電強化添加剤と、を含むエレクトレットウェブ。
【請求項2】
前記ウェブが、不織繊維ウェブを含む、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項3】
前記ウェブが、不織超極細繊維ウェブを含む、請求項2に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項4】
フッ素化された基を含まない前記複素環式イミド材料が、少なくとも構造(a)、(b)若しくは(c)の1つの材料、又はこれらの任意の組み合わせを含む
【化1】


(式中、前記基Rは、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
前記基R及びRは、独立して、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
前記基R、R、R及びRは、独立して、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
Arは芳香環を含み、
及びZはそれぞれ、独立して、前記環の任意の位置に位置する前記芳香環上の置換基であり、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、二トロ基、又は複素環式イミドを含む基である)、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項5】
フッ素化された基を含まない前記複素環式イミド材料が、少なくとも構造(d)、(e)、(f)若しくは(g)の1つの材料、又はこれらの任意の組み合わせを含む
【化2】


(式中、nが約5〜7の数である)、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項6】
フッ素化された基を含まない前記複素環式イミド材料が、ヒンダードアミンN−置換スクシンイミドオリゴマーを含む、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項7】
前記不織超極細繊維ウェブが、
ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート又はポリエステルを含む、請求項3に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項8】
前記不織超極細繊維ウェブが、
ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、プロピレン及び4−メチル−1−ペンテンのコポリマー、又はこれらの混合を含む、請求項3に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項9】
前記フッ素化された基を含まない複素環式イミド材料が、前記ウェブの0.1〜5.0重量%を構成する、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項10】
前記ウェブが、静電荷を含み、前記電荷が摩擦帯電、ハイドロチャージング、DCコロナ処理又はこれらの組み合わせによって付与される、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項11】
エレクトレット櫨材であって、
熱可塑性樹脂と、フッ素化された基を含まない複素環式イミド材料を含む帯電強化添加剤と、の配合物を含む不織超極細繊維ウェブ
を含む、エレクトレット濾材。
【請求項12】
フッ素化された基を含まない前記複素環式イミド基が、構造(a)、(b)若しくは(c)の少なくとも1つの材料、又はこれらの任意の組み合わせを含む
【化3】


(式中、前記基Rは、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
前記基R及びRは、独立して、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
前記基R、R、R及びRは、独立して、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
Arは芳香環を含み、
及びZはそれぞれ、独立して、前記環の任意の位置に位置する前記芳香環上の置換基であり、かつ水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、二トロ基、又は複素環式イミドを含む基である)、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項13】
フッ素化された基を含まない前記複素環式イミド基が、少なくとも構造(d)、(e)、(f)若しくは(g)の1つの材料、又はこれらの任意の組み合わせを含む、
【化4】


(式中、nが約5〜7の数である)、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項14】
前記不織超極細繊維ウェブが、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート又はポリエステルを含む、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項15】
前記不織超極細繊維ウェブが、
ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、プロピレンと4−メチル−1−ペンテンとのコポリマー又はこれらの混合を含む、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項16】
フッ素化された基を含まない前記複素環式イミド材料が、前記ウェブの0.1〜5.0重量%を構成する、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項17】
前記ウェブが電荷を含み、前記電荷が摩擦帯電、ハイドロチャージング、DCコロナ処理又はこれらの組み合わせによって付与される、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項18】
前記ウェブが、毎秒6.9センチメートルの面速度において、QFによって評価される、0.3(mmHO)−1以上のフィルタ性能を示すのに十分な静電荷を有する、請求項17に記載のエレクトレット濾材。
【請求項19】
前記濾材が、呼吸用マスクフィルタ、室内換気システムフィルタ、車両換気システムフィルタ、空調装置フィルタ、炉フィルタ、室内空気清浄機フィルタ、真空掃除機フィルタ又はコンピュータディスクドライブフィルタを構成する、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項20】
人工呼吸器アセンブリと組み合わされた前記濾材が、ヒトが使用するように設計された人工呼吸器デバイスの構成要素である、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項21】
前記濾材が、前記X線放電試験により試験される場合、度毎秒6.9センチメートルの面速度において、少なくとも300%の%透過比を有する、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項22】
前記濾材が、前記X線放電試験により試験される場合、毎秒6.9センチメートルの面速度において、少なくとも0.3(mmHO)−1の初期品質係数を有し、60分のX線暴露後において前記初期品質係数の50%未満の品質係数を有する、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項23】
前記濾材が、少なくとも毎平方メートル当たり20マイクロクーロンの計算有効電荷密度を有する、請求項11に記載のエレクトレット濾材。
【請求項24】
エレクトレットウェブの調製方法であって、
熱可塑性材料を用意する工程と、
フッ素化された基を含まない複素環式イミド材料を含む帯電強化添加剤を用意する工程と、
前記熱可塑性材料及び前記帯電強化添加剤をホットメルト混合して熱可塑性配合物を生産する工程と、
ウェブを形成する工程と、
前記ウェブを静電気的に帯電させる工程と、を含む、エレクトレットウェブの調製方法。
【請求項25】
ウェブの形成が不織繊維ウェブの形成を含む、請求項24に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項26】
ウェブの形成が、前記ホットメルト配合物をメルトブローし、不織超極細繊維ウェブを形成する工程を含む、請求項24に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項27】
フッ素化された基を含まない前記複素環式イミド材料が、少なくとも構造(a)、(b)若しくは(c)の1つの材料、又はこれらの任意の組み合わせを含む
【化5】


(式中、前記基Rは、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
前記基R及びRは、独立して、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
前記基R、R、R及びRは、独立して、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、又は複素環式イミド基を含む基を含み、
Arは芳香環を含み、
及びZはそれぞれ、独立して、前記環の任意の位置に位置する前記芳香環上の置換基であり、水素原子、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、置換アルキル、置換アリール、二トロ基、又は複素環式イミドを含む基である)、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記熱可塑性材料が、
ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、プロピレンと4−メチル−1−ペンテンのコポリマー、及びこれらの混合を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
ホットメルト加工可能な帯電強化添加剤が、形成された前記超極細繊維ウェブの0.1〜5.0重量%を構成する、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2012−522908(P2012−522908A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503501(P2012−503501)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/028290
【国際公開番号】WO2010/114742
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】