説明

帯電装置および画像形成装置

【課題】 プロセス速度に関係なく、長期間安定して感光体を帯電できるとともに、感光体表面を傷つけることがない接触帯電方式の帯電装置を提供する。
【解決手段】 帯電器20は、回転する感光体1に接触しながら当該感光体1を帯電する帯電ローラ2を有する帯電器20であって、上記帯電ローラ2の表面には、上記感光体1を帯電するための突起が存在しており、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度が50度以下であり、上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内であることを構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機・レーザープリンター・ファクシミリなどに用いられる電子写真方式の画像形成装置に関するものであり、特に回動する感光体に接触させながら当該感光体の表面を帯電させる帯電装置を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザープリンター、ファクシミリ等に用いられる電子写真方式の画像形成装置の帯電器には、ワイヤーとケースを用いたコロトロン帯電器や、ワイヤーとケースさらにグリッド電極を用いたスコロトロン帯電器が多く用いられている。特に、上記スコロトロン帯電器は、ワイヤーと感光体表面との間に配置されたグリッドを用いることによって、感光体の表面電位を安定して制御できるという利点があり、帯電器として幅広く用いられている。
【0003】
しかし、これらの帯電器には、5〜8kVの高電圧を印加する必要があり、オゾン発生量が多いという欠点がある。このような欠点を解消すべく、帯電部材を感光体に接触または近接させる帯電器が開発されてきた。その結果、具体的には、例えば、接触ローラ帯電器、非接触ローラ帯電器、ブラシ帯電器、磁気ブラシ帯電器等の帯電器が開発されている。
【0004】
これらの帯電器は、一部の注入帯電方式のものを除いて、微小空隙放電による帯電方式を利用している。そして、これらの帯電器は、スコロトロン帯電器の欠点であった高圧電源の問題、オゾンの問題を解決可能な帯電器として現在の主流の帯電器となってきている。
【0005】
ところが、上記の帯電器は、従来のスコロトロン帯電器と比較すると、帯電の均一性についてやや劣り、また、感光体リークが起こりやすいという欠点がある。
【0006】
そこで、接触帯電の帯電均一性を向上させるために、感光体の所望の表面電位に相当する直流電圧に帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を持つ交流電圧成分を重畳した電圧を接触帯電部材に印加する交流帯電方式を用いた接触帯電方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、上記交流電圧を重畳するタイプの帯電器では、交流電流を多量に消費することにより、感光体の膜減りが多く、感光体リークを起こし易くなる。さらに、直流電圧印加時における帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧である高圧の交流電圧を重畳させるため、直流電源とは別に交流電源が必要となり、装置自体のコストアップを招く等の多くの問題点がある。また、マシンを高速化しようとした際、AC周波数を上げていかなければならず、帯電音という問題が無視できない。
【0008】
さらには、この接触帯電方式では、帯電部材と被帯電部材が常に接触しているので、従来のワイヤーなどからの放電によって非接触で被帯電部材を帯電させるコロナ方式などと比較して、帯電部材の耐久性が問題となりやすい。この接触帯電方式における帯電部材の耐久性には、残留トナー及びトナーに付着している外添剤等が大きく影響する。
【0009】
即ち、上記接触帯電方式では、転写不良、クリーニング不良により感光ドラム表面に残留したわずかなトナー及びトナーに付着している外添剤等が次第に上記帯電部材に付着してしまう。その結果、上記帯電部材表面に上記トナーおよび外添材が物理的に埋め込まれて固着し、これが帯電不良の原因となる。本来、このような問題に対しては、転写効率、クリーニング効率を向上させて、残留トナーが帯電部材の帯電部分に到達しないようにすることが根本的な対策であるが、現状の技術では残留トナー及び外添剤等を100%排除することは困難である。
【0010】
そこで、帯電部材の表面に上記残留トナー及び外添剤等が付着することを防止するために、化学的に防汚性に優れたフッ素系の材料を帯電部材表面にコーティングすることが提案されているが、効果はあるものの必ずしも十分な耐久性が得られていない。
【0011】
上記残留トナーは、帯電部材表面に少々付着した程度ではさほど画像にも悪影響を及ぼさないため、初期画像では問題がない。しかし、画像形成を繰り返すうちに、残留トナーが、帯電部材表面に単に付着した状態から帯電部材表面に埋め込まれていく。そして、帯電部材に上記残留トナーが一度埋め込まれてしまうと、この残留トナーを核として、加速度的に残留トナーが堆積しはじめ、像不良が現れ始めることになる。
【0012】
そこで、この問題を解決するために、帯電部材の表面へのトナーの食い込み特性を改善するために、帯電部材のユニバーサル硬度(HU)を所定値に設定することが提案されている。具体的には、例えば、特許文献2には、帯電部材のユニバーサル硬度を10〔N/mm〕以下とし、帯電部材の表面硬度をアスカーC硬度で65度以下とすることで、帯電部材への残留トナーの埋め込みを防止することが提案されている。
【0013】
また、例えば、特許文献3には、中間転写部材のトナーの平均粒子径に相当する深さにおけるユニバーサル硬度を80〔N/mm〕以下とすることで、トナーの食い込みによるトナーの固着を防止できることが提案されている。
【0014】
また、例えば、特許文献4には、帯電部材のユニバーサル硬度を100<HU<200〔N/mm〕とすることで、上記残留トナー及び外添剤等の帯電部材表面への物理的な埋め込みを防止し、また、アスカーC硬度を70度以上とすることで、帯電部材自身の変形量および圧縮永久変形性を小さくして、画像上に帯電部材の永久変形による横スジを防止することが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報(公開日:1988年6月22日)
【特許文献2】特開平11−295962号公報(公開日:1999年10月29日)
【特許文献3】特開2000−47496号公報(公開日:2000年2月18日)
【特許文献4】特開2003−207989号公報(公開日:2003年7月25日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、例えば、特許文献2に開示されているような、帯電部材の表面硬度をユニバーサル硬度10〔N/mm〕以下とし、帯電部材の表面硬度をアスカーC硬度で65度以下として、実際に追試を行った結果、表面硬度がユニバーサル硬度で10〔N/mm〕以下のものでは、上記残留トナー及び外添剤等の帯電部材表面への物理的な埋め込みが軽減出来ず、汚れが大きくなった。さらに、上記構成では、直流電圧印加方式の帯電において、感光体を帯電するために必要となる帯電部材表面上の突起が、画像形成回数が増加するにつれて上記帯電部材内部に埋没してしまい、帯電不良を起こす原因となっていた。
【0016】
また、特許文献4に開示されているように帯電部材のユニバーサル硬度を100<HU<200〔N/mm〕とし、アスカーC硬度を70度以上として、追試を行ったところ、ユニバーサル硬度100<HU<150〔N/mm〕でかつ、中速のプロセススピード(122〔mm/sec〕)までは良好な結果が得られたが、225〔mm/sec〕の高速のプロセススピードで検討(試験)を行ったところ、直流電圧印加の帯電で必要となる帯電ポイントの突起が、感光体ドラムの表面を、当該感光体ドラムの円周方向に傷付けてしまい、この結果、画像欠陥が顕著に現れ、感光体の寿命を短縮させてしまうという問題があった。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プロセス速度に関係なく、長期間安定して感光体を帯電できるとともに、感光体表面を傷つけることがない接触帯電方式の帯電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかる帯電装置は、上記課題を解決するために、回転する感光体に接触しながら当該感光体を帯電する帯電部材を有する帯電装置であって、上記帯電部材の表面には、上記感光体を帯電するための突起が存在しており、上記帯電部材のアスカーC硬度が50度以下であり、上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内であることを特徴としている。
【0019】
上記帯電装置の帯電部材は回転する感光体に接触しながら当該感光体に電圧を印加する。
【0020】
また、上記帯電部材の表面に存在する突起は、上記回転する感光体を帯電させるものである。この突起は、例えば、帯電部材の表面粗さによって当該帯電部材の表面に生じる凸部である。従って、上記突起のユニバーサル硬度を測定するためには、例えば、上記帯電部材の表面のユニバーサル硬度を測定すればよい。
【0021】
つまり、上記アスカーC硬度は帯電部材全体の硬度であり、上記ユニバーサル硬度は帯電部材の表面の硬度である。
【0022】
上記の構成によれば、上記帯電部材のアスカーC硬度が50度以下であり、かつ、上記帯電部材の表面に存在している上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内である。
【0023】
これにより、上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内であるため、上記突起が回転している感光体と長期間接触した場合であっても、上記突起の形状(状態)を長期間維持することができる。これにより、感光体を長期間に渡って安定して帯電させることができる。
【0024】
また、上記帯電部材のアスカーC硬度を50度以下とすることで、当該帯電部材全体の硬度を従来と比べて低くしているので、上記突起が上記感光体と長期間接触した場合であてもこの感光体表面を傷つけることを防止できる。
【0025】
また、帯電安定性および感光体表面の傷付けやすさは、感光体の回転速度(プロセス速度(感光体の表面の周速))にも起因することとなるが、上記構成とすることで、プロセス速度を低速および高速にした場合でも、感光体を傷つけることなく、かつ、安定した帯電を行なうことができる。
【0026】
すなわち、上記帯電部材全体のアスカーC硬度と上記突起のユニバーサル硬度とを上記範囲とすることで感光体を傷つけることなく、かつ、プロセス速度に関係なく、感光体を長期間安定して帯電させることができる。
【0027】
本発明にかかる帯電装置において、上記感光体の表面の周速が225mm/sec以上であってもよい。
【0028】
上記の構成とすることで、上記感光体の表面の周速、すなわち、プロセス速度を225mm/sec以上に設定した場合でも、上記感光体の表面を傷つけることなく、かつ、帯電安定性を維持することができる。
【0029】
なお、上記帯電部材としては、例えば、帯電ローラおよび帯電ベルト等が挙げられる。
【0030】
本発明にかかる帯電装置において、上記突起の高さが、0.2μm〜10μmの範囲内である構成であってもよい。
【0031】
上記の構成によれば、上記突起の高さが0.2μm〜10μmの範囲内であるために、当該帯電部材が感光体に長期間接触させた場合であっても、当該感光体を傷つけることがない。また、上記突起の高さを上記範囲内とすることで、上記感光体と接触する面積が大きくなりすぎることを防止できるので、上記感光体に対する過放電を防止できる。
【0032】
なお、上記突起が、上記帯電部材の表面粗さによって生じたものである場合、上記突起の高さが0.2μm〜10μmの範囲内であることは、上記帯電部材の表面の表面粗さ(Rz)が0.2μm≦Rz≦10μmであることと同じである。
【0033】
本発明にかかる帯電装置において、上記帯電部材に対して直流電圧を印加する電圧印加手段を備える構成であってもよい。
【0034】
上記の構成によれば、上記帯電部材に直流電圧を印加している。これにより、上記帯電部材から感光体に流れ込む電流量を下げることができる。
【0035】
本発明にかかる画像形成装置は、上記課題を解決するために、上記帯電装置を備えている。
【0036】
上記の構成によれば、画像形成装置が有する帯電部材のアスカーC硬度が50度以下であり、かつ、上記帯電部材の表面に存在する上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内である。
【0037】
この突起のユニバーサル硬度(HU)を50<HU<150N/mmの範囲内とすることで、上記帯電部材を回転している感光体に長期間接触させた場合であっても、上記突起の形状(状態)を長期間維持することができる。これにより、感光体を長期間に渡って安定して帯電させることができる。
【0038】
また、上記帯電部材のアスカーC硬度を50度以下とすることで、当該帯電部材全体の硬度を従来と比べて低くしているので、上記帯電部材の表面に存在する突起が感光体表面を傷つけることを防止できる。すなわち、上記帯電部材全体のアスカーC硬度と上記突起のユニバーサル硬度とを上記範囲とすることで、感光体を傷つけることなく、長期間安定して感光体を帯電させることができる。従って、上記の構成とすることで、感光体の寿命を従来と比べて伸ばすことができる。
【0039】
これにより、長期間に渡り、好適な画像形成を行なうことができる画像形成装置を提供することができる。
【0040】
また、上記の構成とすることで、プロセス速度を従来と比べて高速にした場合であって、感光体表面を傷つけることがないので、長期間高速で画像形成動作を行なうことが可能になる。
【0041】
本発明にかかる画像形成装置において、上記感光体の表面の周速が225mm/sec以上である構成であってもよい。
【0042】
上記の構成とすることで、上記感光体の表面の周速、すなわち、プロセス速度を225mm/sec以上に設定した場合でも、上記感光体の表面を傷つけることなく、かつ、帯電安定性を維持することができる。
【0043】
これにより、上記プロセス速度が225mm/sec以上の場合のような高速で画像形成を行なうことができる。
【0044】
そして、上記突起の高さを、0.2μm〜10μmの範囲内とすることで、当該帯電部材が感光体に長期間接触させた場合であっても、当該感光体を傷つけることがない。また、上記突起の高さを上記範囲内とすることで、上記感光体と接触する面積が大きくなりすぎることを防止できるので、上記感光体に対する過放電を防止できる。
【0045】
また、本発明にかかる画像形成装置において、画像形成時に上記帯電部材に対して上記電圧印加手段が印加する放電開始電圧値以下の最大値を有する交流電圧を、非画像形成時の上記帯電部材に対して印加する交流電圧印加手段を備える構成であってもよい。
【0046】
上記の構成によれば、非画像形成時に、上記放電開始電圧以下の電圧値(最大値)である交流電圧を上記帯電部材に対して印加している。これにより、帯電部材をクリーニングすることができる。従って、従来のように上記帯電部材に対して機械的なクリーニングを行なう構成と比べて、帯電部材にかかる機械的ストレスを無くすことができる。
【0047】
また、上記帯電部材に対して放電開始電圧値以下の最大値を有する交流電圧を印加しているためこの交流電圧が感光体に対して悪影響を及ぼすことがない。従って、上記帯電部材に対して上記交流電圧を印加した場合であっても、上記感光体の膜減りが起こることがない。
【発明の効果】
【0048】
本発明にかかる帯電装置は、回転する感光体に接触しながら当該感光体を帯電する帯電部材を有する帯電装置であって、上記帯電部材の表面には、上記感光体を帯電するための突起が存在しており、上記帯電部材のアスカーC硬度が50度以下であり、上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内である構成である。
【0049】
これより、上記帯電部材全体のアスカーC硬度と上記突起のユニバーサル硬度とを上記範囲とすることで感光体を傷つけることなく、かつ、プロセス速度に関係なく、感光体を長期間安定して帯電させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。すなわち、本発明にかかる帯電装置は、表面の周速度が225mm/sec以上で回転する感光体に接触しながら、当該感光体を帯電させる帯電部材であって、アスカーC硬度が50度以下であり、表面におけるユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内であり、上記表面に上記感光体を帯電する突起を有している構成である。
【0051】
なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0052】
本発明の帯電装置を備える画像形成装置の一例としては、デジタル方式の画像形成装置が挙げられる。上記デジタル方式の画像形成装置は、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、定着、および除電の各工程を有する電子写真プロセスによって、感光体上にトナー像を形成して記録紙(シート)に転写する機能を有している。
【0053】
また、上記帯電装置は、例えば、複写機、レーザープリンター、ファクシミリ等の電子写真装置に適用される。また、上記帯電装置は、モノクロ機にもカラー機にも適用可能である。
【0054】
まず、本発明の帯電装置を備えたモノクロ印字方式の画像形成装置について、図1を参照して説明する。モノクロ印字方式の画像形成装置(以下、モノクロ機と称する)10は、外部から入力される画像データに応じて、所定の記録紙に対して単色の画像を形成するものである。そして、図1に示すように、上記モノクロ機10は、感光体1、帯電器20、露光部30、現像部40、転写部50、定着部60、およびクリーニング部70を備えている。
【0055】
上記感光体1と帯電器20とは、互いに接触して配置されている。そして、帯電器20は、電源から供給される電力により感光体1の表面を均一に帯電させる。感光体1および帯電器20については後述する。
【0056】
上記露光部30には、発光素子をアレイ状に並べた、例えば、ELやLED書込みヘッドや、レーザー照射部および反射ミラーを備えたレーザースキャニングユニット(LSU)が用いられる。そして、上記露光部30は、帯電器20により帯電された感光体1を、外部から入力される画像データに応じて露光することによって、感光体1の表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。
【0057】
上記現像部40は、感光体1にトナーを供給するための現像ローラ4を備え、トナーにより感光体1に形成された静電潜像を現像する。これにより、感光体1の表面に画像データに応じたトナー像が形成される。本実施の形態では、現像に用いる現像剤として、非磁性トナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を用いている。なお、現像剤としては、二成分現像剤に限らず、一成分現像剤を用いてもよい。
【0058】
上記転写部50は、図示しない給紙装置から供給され図中のY方向(用紙搬送方向)に搬送される記録紙Pに対して上記感光体1上に形成されているトナー像を転写させる。このときの転写方式としては、例えば、チャージャー方式やローラ方式等が挙げられる。トナー像の転写後、定着部60にて記録紙P上のトナー像を熱融解によって定着させる。
【0059】
上記クリーニング部70は、転写部50によるトナー像の転写後、感光体1に残留したトナーを掻きとって回収する。
【0060】
図2は、感光体1の概略の構成を説明する断面図である。ここで、図2を参照して上記感光体1について説明する。上記感光体1は、導電性支持体1a(例えば、アルミニウム等の金属ドラム)を基体としてその外周面上に下引き層1bが形成され、この下引き層1b上に感光受容層1eが塗布されて形成されている。上記感光受容層1eは、電荷発生層1cと電荷輸送層1dとにより形成されている。このように、感光体1は、導電性支持体1a上に、下引き層1b、電荷発生層1c、および電荷輸送層1dがこの順で形成されている。
【0061】
上記導電性支持体1aは、感光体1の電極としての役目と同時に、下引き層1bおよび感光受容層1eの支持体としての役目を果たしており、その形状は、円筒状、板状、フィルム状、ベルト状のいずれでもよい。導電性支持体1aの材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料、あるいは表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、フェノール樹脂パイプ、紙管等の絶縁性物質等が挙げられる。そして、上記導電性支持体1aとしては、体積抵抗が1010Ωcm以下の導電性を示すものが好ましく、体積抵抗を調整するために表面に酸化処理を施してもよい。
【0062】
上記下引き層(コート層)1bは、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アルミニウム陽極酸化被膜、ゼラチン、でんぷん、カゼイン、および、N−メトキシメチル化ナイロン等の少なくとも1つから形成される。さらに、これらに酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウムの粒子を分散させてもよい。この下引き層1bは、膜厚が約0.1〜10μmであり、上記導電性支持体1aと感光受容層1eとの接着層としての役割を果たす。加えて、上記下引き層1bは、上記導電性支持体1aから感光受容層1eへ、電荷が流れ込むのを抑制するバリア層としての役割をも果たしている。このようにして下引き層1bは、感光体1の帯電特性を維持するので、感光体1自身の寿命を延ばすことができる。
【0063】
上記電荷発生層1cは、公知の電荷発生物質を含んで形成される。電荷発生層1cの電荷発生物質としては、可視光を吸収してフリー電荷を発生するものであれば、無機顔料、有機顔料、有機染料のいずれをも用いることができる。上記無機顔料としては、例えば、セレンおよびその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン、その他の無機光導電体が挙げられる。上記有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、多環キノン系化合物、ペリレン系化合物等が挙げられる。上記有機染料としては、チアピリリウム塩、スクアリリウム塩等が挙げられる。中でも好適な物質は、フタロシアニン系化合物であり、特に、チタニルフタロシアニン化合物を用いることが好ましい。上記のような電荷発生物質を用いることで、特に良好な感度特性、帯電特性、および繰返し特性が得られる。
【0064】
また、上記電荷発生層1cは、有機顔料、有機染料等の、上記有機光導電性化合物を用いることが好ましい。また、列挙した上述の顔料および染料の他に、化学増感剤または光学増感剤を、電荷発生層1cに添加してもよい。上記化学増感剤としては、例えば、テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、アントラキノン、p−ベンゾキノン等のキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン等のニトロ化合物等の電子受容性物質が挙げられる。また、光学増感剤としては、例えば、キサンテン系色素、チアジン色素トリフェニルメタン系色素等の色素が挙げられる。
【0065】
そして、電荷発生層1cの製造方法としては、まず、電荷発生物質をバインダ樹脂とともに適当な溶剤中に分散させ、塗工液を作成する。このとき、上記塗工液をフィルタを用いて濾過する、もしくは遠心分離などにより、粒子径を制御する。そして、その塗工液を導電性支持体1aに塗布して、乾燥あるいは硬化させて成膜することにより製造できる。具体的な上記電荷発生層1cの形成方法としては、一般に、真空蒸着法、スパッタリング、CVD等の気相堆積法、あるいは電荷発生物質をボールミル、サンドグラインダ、ペイントシェーカー、超音波分散機等により粉砕し、溶剤中に分散させ、必要に応じてバインダ樹脂を加え、導電性支持体1aがシートの場合にはベーカアプリケータ、バーコータ、キャスティング、スピンコート等、導電性支持体1aが円筒体の場合にはスプレー法、垂直型リング法、浸漬塗布法等によって形成する方法が知られている。
【0066】
上記の電荷発生層1cに用いられるバインダ樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フェノキシ、エポキシ、シリコーン、ポリアクリレート等の樹脂が挙げられる。また、上記溶剤(溶媒)としては、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロルベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。なお、ここで挙げたもの以外でもよく、アルコール系、ケトン系、アミド系、エステル系、エーテル系、炭化水素系、塩素化炭化水素系または芳香族系溶媒の単独あるいはブレンドしたものであってもよい。ただし、電荷発生物質の粉砕およびミリング時の結晶転移に基づく感度低下、ポットライフによる特性低下を考慮した場合、上記例示の溶剤のうち、上記のような結晶転移を起こしにくいシクロヘキサノン、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルケトン、テトラヒドロキノンのいずれかを用いることが好ましい。
【0067】
また、上記電荷発生層1cの膜厚としては、約0.05〜5μmの範囲内、好ましくは約0.1〜1μmの範囲内である。
【0068】
上記電荷輸送層1dは、公知の電荷輸送物質を含んで形成される。この電荷輸送物質としては、電荷発生層1cで発生した電荷を輸送できる有機光導電性化合物であればよい。具体的には、上記電荷輸送物質としては、例えば、ヒドラゾン誘導体、ピレン誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、アントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ポリシラン化合物、ポリゲルマン化合物等が挙げられるが、電荷輸送物質はこれらに限定されるものではない。
【0069】
また、電荷輸送層1dは、さらに電子輸送物質を含有していてもよい。上記電子輸送物質としては、具体的には、例えば、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、ジフェニル誘導体、ベンゾキノン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、電荷輸送層1dには、必要に応じて酸化防止剤等の安定剤、レベリング剤、可塑剤を添加することもできる。上記酸化防止剤としては、一般に、樹脂等に添加して利用される酸化防止剤をそのまま使用することができる。具体的には、上記酸化防止剤として、例えば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等を配合して用いてもよい。上記レベリング剤としては、シリコンオイル類や側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用でき、使用量はバインダ樹脂100重量部に対して、1重量部またはそれ以下が適当である。
【0070】
上記電荷輸送層1dは、上述した電荷発生層1cと同様の手法および装置を用いて形成される。電荷輸送層1dは、電荷輸送物質をバインダ樹脂とともに、適当な溶媒中に溶解あるいは分散させ、電荷発生層1cが形成された導電性支持体1aに塗布し、乾燥あるいは硬化させて成膜して形成する。電荷輸送層1d用の塗布液は、1種または数種の電荷輸送物質、バインダ樹脂および添加剤を計量し、所定量の有機溶媒に溶解させる。この際、同時に溶解させて作製する方法でもよいが、好ましくは、まず、バインダ樹脂を溶媒中に溶解させた後に電荷輸送物質を投入、溶解させて作製する方法がよい。この方法によれば、バインダ樹脂への電荷輸送物質の分子分散性が向上され、膜中での潜在的かつ局所的な電荷輸送物質の結晶化が抑制されることにより、初期感度の向上、繰返し使用時の電位安定性、良好な画像特性等が付与される。そして、上記電荷輸送層1dの形成方法としては、導電性支持体1aがシート状の場合にはベーカアプリケータ、バーコータ、キャスティング、スピンコート等、導電性支持体1aがドラム状の場合にはスプレー法、垂直型リング法、浸漬塗布法等が用いられる。特に、生産性やコストの観点からは、浸漬塗布法が好ましい。
【0071】
上記の電荷輸送層1dに用いられるバインダ樹脂としては、例えば、上述した電荷発生層1cに用いられるバインダ樹脂と同様のものが挙げられ、特に制限はない。例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂あるいはこれらの部分的架橋硬化物等の公知のバインダ樹脂が使用される。
【0072】
上記電荷輸送物質とバインダ樹脂との配合割合について両者の重量比(電荷輸送物質/バインダ樹脂)を、10/15〜10/24の範囲内にすることが好適である。この配合割合とすることにより、感光体1の解像度と実用特性が顕著に向上する。すなわち、電荷輸送物質とバインダ樹脂との重量比が、10/15を超えると、低露光エネルギー感度が高くなり解像度が低下する傾向がある。一方、重量比が、10/24以下になると、トータル感度が低下し、低露光エネルギー感度が低下することによる見かけ上の解像度は向上するものの、絶対感度の低下が反映されて画像濃度が不十分になる。
【0073】
上記電荷輸送層1dの初期膜厚は、12〜40μmの範囲内に設定することが好ましい。上記初期膜厚が12μm未満の場合には、上記電荷輸送層1d中の走行電荷の拡散が少なくなることにより高解像度が得られるものの、感光受容層1eに高電界がかかることにより絶縁破壊が起こり、画像欠陥が多発しやすくなる傾向がある。さらに、初期膜厚が12μm未満の場合には、画像形成処理のクリーニング工程における膜削れに対するマージンが少ないため、設計上、感光体寿命が比較的短いものになってしまう。また、一般的に接触帯電器に使用する感光体は、スコロトロン帯電に用いる感光体よりも、膜厚が厚く形成される。一方、上記初期膜厚が40μmを超える場合には、感光体寿命を長くできるものの、電荷発生層1cから注入された電荷が電荷輸送層1d中を走行する過程において、電界方向から逸脱する電荷拡散の関与が大きくなり解像度が低下する傾向がある。なお、電荷輸送層1dには、成膜性、可とう性、塗布性等を向上させるために、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0074】
次に、帯電器20について説明する。帯電器20は、電源から供給される電力により感光体1の表面を均一に帯電させるために設けられる。帯電器20としては、ローラ形状、ベルト形状、ブレード形状等の接触帯電器を利用できる。なお、帯電ローラ等の帯電部材への電圧の印加は、電源のコスト、感光体、帯電部材の寿命等の観点から、直流電圧のみとするのが最適である。
【0075】
以下では、帯電器20としてローラ状の接触帯電器を用いた例について説明する。帯電器20の少なくとも一部である帯電ローラ2は、図3に示すように、導電性支持体2aを基体としてその外周面上に弾性層2bが形成され、この弾性層2b上に抵抗層2cが形成されている。このように、帯電ローラ2は、弾性層2bおよび抵抗層2cを含む被覆層を導電性支持体2a上に有している。
【0076】
上記導電性支持体2aは、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、およびニッケルの少なくとも1つ等の金属材料の丸棒を用いることができる。さらに、防錆や耐傷性付与のために、これらの金属表面にメッキ処理を施してもよい。ただし、導電性を損なわないことが必要である。
【0077】
上記弾性層2bは、被帯電体としての感光体1に対する給電や、帯電ローラ2の感光体1に対する良好な均一密着性を確保するために、適当な導電性と弾性とを有している。帯電ローラ2と感光体1との均一密着性を確保するためには、上記弾性層2bを研磨して、その中央部が一番太く、中央部から両端部に行くにつれて細くなる形状(いわゆるクラウン形状)に形成することが好ましい。一般的に、帯電ローラ2は、導電性支持体2aの両端部に所定の押圧力を与えることによって感光体1と当接される。このため、押圧力が中央部では小さく、両端部ほど大きくなっている。したがって、帯電ローラ2の真直度が十分である場合には問題ないが、十分ではない場合には中央部と両端部に対応する画像に濃度ムラが生じてしまうという問題がある。また、A3ノビ対応機種の増加やカラー機の増加により帯電領域が拡大してきているため、導電性支持体2aの両端部のみへの押圧力によって帯電ローラ2自体がたわみ易くなっており、中央部にギャップができるといった問題が起きている。このような理由により弾性層2bをクラウン形状とすることが好ましい。
【0078】
上記弾性層2bは、ゴム等の弾性材料中に、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物等の電子電導機構を有する導電剤、ならびにアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン電導機構を有する導電剤を適宜添加することによって形成される。そして、体積抵抗が1010Ωcm未満の導電性を示すように調整されるのが好ましい。
【0079】
上記弾性層2bを構成している弾性材料としては、例えば、天然ゴムや、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)およびクロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、さらには、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0080】
上記抵抗層2cは、弾性層2bに接して形成され、弾性層2b中に含有される軟化油や可塑剤等の帯電ローラ2表面へのブリードアウトを防止するとともに、帯電ローラ2全体の電気抵抗を調整するために設けられる。
【0081】
上記抵抗層2cを形成する材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの材料は、単独で用いても、2種類以上の混合であっても、あるいは共重合体であってもよい。
【0082】
上記抵抗層2cは、導電性または半導電性を有している。このため、上述した材料に、電子電導機構を有する導電剤(例えば、導電性カーボン、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)、または、イオン電導機構を有する導電剤(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等)を適宜添加することによって形成される。この場合、所望の電気抵抗を得るために、上記各種導電剤を2種以上併用してもよい。ただし、環境変動や感光体1の汚染を考慮すると、電子電導機構を有する導電剤を用いることが好ましい。
【0083】
上記帯電ローラ2表面の表面粗さRz(十点平均粗さ)としては、10μm以下であることが好ましい。上記表面粗さRzが10μm以下とした具体例を、後述する実施例4〜6に示している。そして、帯電ローラ2の表面粗さRzを10μm以下とすることによって、常に安定した帯電電位を確保することができ、また、問題のないレベルのトナークリーニング性を確保することができる。これにより、初期画質が良好な画像を得ることができる。特に帯電ローラ2に直流電圧のみを印加する場合には、帯電ローラ2表面の凸部(突起)が適度な放電ポイントとなり、常に安定した帯電電位を確保することができる。
【0084】
つまり、上記帯電ローラ2の表面粗さRzによって当該帯電ローラ2の表面には凸部と凹部とが形成されることになり、当該凸部が上記感光体1を帯電することになる。
【0085】
上記表面粗さRzの調整は、表面層の研磨条件の変更により可能ではあるが、より帯電を安定させるためにフィラーの種類、粒径を変更することにより、帯電ローラ表面の突起の分散状態を良くすることが望ましい。
【0086】
上記フィラーとしては、発明の効果を著しく損なわない限り、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリナイト、アスベスト、中空ガラス球、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、アルミニウム繊維、ステンレススチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩等を用いることができる。
【0087】
図4は、カラー印字方式(カラータンデム方式)の画像形成装置の概略構成を示す側面図である。ここで、本発明の帯電装置を適用したカラー印字方式の画像形成装置について図4を参照して説明する。カラー印字方式の画像形成装置(以下、カラー機と称する)100は、外部から入力される画像データに応じて、所定の記録紙(シート)に対して多色および単色の画像を形成するものである。そして、図4に示すように、上記カラー機100は、感光体101、帯電器120、露光部130、現像部140、定着部160、クリーニング部170、転写搬送ベルト部150等を備えている。上記カラー機は、また、給紙トレイ180、排紙トレイ190・191等を備えており、給紙トレイ180と排紙トレイ190との間には、略Sの字形状の用紙搬送路Sが設けられている。
【0088】
なお、上記カラー機100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。したがって、感光体101(101a,101b,101c,101d)、帯電器120(120a,120b,120c,120d)、露光部130(130a,130b,130c,130d)、現像部140(140a,140b,140c,140d)、クリーニング部170(170a,170b,170c,170d)は、各色に応じた4種類の潜像を形成するように、それぞれ4個ずつ設けられ、それぞれaがブラックに、bがシアンに、cがマゼンタに、dがイエローに設定され、4つの画像ステーション(画像形成部)が用紙搬送路Sに沿って並べて配置されている。
【0089】
そして、それぞれの感光体101a〜101dは、カラー機100の略中心部に略水平に並べて配置されている。感光体101a〜101dは、上述したモノクロ機10の感光体1と同様にして形成される。
【0090】
それぞれの帯電器120a〜120dは、当該帯電器120a〜120dと接触して配置される感光体101a〜101dの表面を均一に帯電させる帯電部材として設けられている。それぞれの帯電器120a〜120dの帯電部材(帯電ローラ102a〜102d)は、上述したモノクロ機10の帯電器20の帯電部材(帯電ローラ2)と同様にして形成される。なお、帯電器120a〜120dとしては、図4に示すように帯電部材として帯電ローラ102a〜102dを備えたローラ形状の接触帯電器の他、ベルト形状、ブレード形状等の帯電器を利用できる。
【0091】
それぞれの露光部130a〜130dには、発光素子をアレイ状に並べた、例えば、ELやLED書込みヘッドや、レーザー照射部および反射ミラーを備えたレーザースキャニングユニット(LSU)が用いられる。そして、帯電部材により帯電された感光体101a〜101dを入力される画像データに応じて露光することによって、感光体101a〜101dの表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する。
【0092】
それぞれの現像部140a〜140dは、感光体101a〜101dにトナーを供給するための現像ローラを備え、感光体101a〜101dに形成された静電潜像を(K,C,M,Y)のトナーにより現像して顕像化する。これにより、感光体101a〜101dの表面に画像データに応じたトナー像が形成される。
【0093】
ここで、感光体101a〜101dの下方に配置される転写搬送ベルト部150について説明する。転写搬送ベルト部150は、転写ベルト155、転写ベルト駆動ローラ151、転写ベルトテンションローラ153、転写ベルト従動ローラ152・154、転写ローラ105(105a,105b,105c,105d)、転写ベルトクリーニング部157等を備えている。
【0094】
上記転写ベルト駆動ローラ151、転写ベルトテンションローラ153、転写ローラ105a〜105d、転写ベルト従動ローラ152・154等は、転写ベルト155を張架し、この転写ベルト155を図中矢印B方向に回転駆動させるものである。
【0095】
それぞれの転写ローラ105a〜105dは、転写搬送ベルト部150のハウジングの転写ローラ取付部(感光体101a〜101dと対向する位置)に回転可能に支持されている。そして、上記転写搬送ベルト部150は、それぞれの感光体101a〜101dに形成されたトナー像を、転写ベルト155上に吸着されて搬送される記録紙に転写するための転写バイアスを与える。
【0096】
上記転写ベルト155は、それぞれの感光体101a〜101dに接触するように設けられている。つまり、転写ベルト155を挟んで、感光体101a〜101dと転写ローラ105a〜105dとが対向して配置されている。そして、感光体101a〜101dに形成された各色のトナー像を記録紙に順次重ねて転写することによって、カラーのトナー像(多色トナー像)を形成する。上記転写ベルト155は、厚さ100〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0097】
それぞれの感光体101a〜101dから記録紙へのトナー像の転写は、無端状の転写ベルト155の内側に接触している転写ローラ105a〜105dによって行われる。この転写ローラ105a〜105dには、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。転写ローラ105a〜105dは、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面は、導電性の弾性材(例えばEPDM、発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、記録紙に対して均一に高電圧を印加することができる。なお、転写電極として転写ローラ105a〜105dを用いているが、ブラシ等であってもよい。
【0098】
また、感光体101a〜101dとの接触により転写ベルト155に付着したトナーは、記録紙の裏面を汚す原因となる。このため、転写ベルトクリーニング部157によって除去・回収するようにしている。この転写ベルトクリーニング部157には、転写ベルト155に接触するクリーニング部材として、例えばクリーニングブレード157aが設けられており、このクリーニングブレード157aは、転写ベルト155を挟んで転写ベルト従動ローラ154と対向する位置に配置されている。
【0099】
上記定着部160は、ヒートローラ161、加圧ローラ162等を備えており、ヒートローラ161および加圧ローラ162は、記録紙を挟んで回転するようになっている。また、ヒートローラ161は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部110により所定の定着温度となるように制御されており、加圧ローラ162とともに記録紙を熱圧着することにより、記録紙に転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、記録紙に対して熱定着させる機能を有している。なお、多色トナー像の定着後、記録紙は、搬送ローラ185によって用紙搬送路Sの反転排紙経路に搬送され、反転された状態で(多色トナー像を下側に向けて)、排紙トレイ190上にフェイスダウンで排出されるようになっている。
【0100】
上記給紙トレイ180は、画像形成に使用する記録紙を蓄積しておくためのトレイであり、カラー機100の4つの画像ステーションの下方に設けられている。排紙トレイ190は、画像形成済みの記録紙をフェイスダウンで載置するためのトレイであり、カラー機100の上部に設けられている。これに対し、排紙トレイ191は、画像形成済みの記録紙をフェイスアップで載置するためのトレイであり、カラー機100の側部に設けられている。
【0101】
略Sの字形状の用紙搬送路Sは、記録紙を、給紙トレイ180から転写搬送ベルト部150や定着部160を経由させて排紙トレイ190に送るために設けられている。この用紙搬送路Sに沿って、ピックアップローラ181、レジストローラ182、定着部160、搬送方向切換えガイド184、搬送ローラ185等が配されている。
【0102】
搬送ローラ185は、記録紙の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。ピックアップローラ181は、給紙トレイ180の端部に備えられ、給紙トレイ180から、記録紙を1枚毎に用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。
【0103】
また、レジストローラ182は、用紙搬送路Sを搬送されている記録紙を一旦保持するために設けられている。そして、感光体101a〜101d上のトナー像を記録紙に良好に多重転写できるように、感光体101a〜101dの回転にあわせて、記録紙をタイミングよく搬送する機能を有している。具体的には、レジストローラ182は、図示しないレジスト前検知スイッチの出力した検知信号に基づいて、それぞれの感光体101a〜101d上のトナー像の先端を、記録紙における画像形成範囲の先端に合わせるように、記録紙を搬送するように設定されている。
【0104】
搬送方向切換えガイド184は、側面カバー186に回動可能に設けられている。この搬送方向切換えガイド184を回動させて実線で示す状態から破線で示す状態にすることによって、用紙搬送路Sの途中から記録紙を分離し、排紙トレイ191に記録紙を排出できるようになっている。実線で示す状態の場合には、記録紙は、定着部160と側面カバー186、搬送方向切換えガイド184の間に形成される搬送部S´(用紙搬送路Sの一部)を通り、上部の排紙トレイ190に排出される。
【0105】
ここで、本実施の形態における帯電器20の構成について詳述する。本実施の形態において、上記帯電器(帯電装置)20が有する帯電ローラ(帯電部材)2は、そのアスカーC硬度が50度以下である。そして、上記帯電ローラ2表面には感光体1を帯電させるための突起が備えられており、当該帯電ローラ2の表面におけるユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内である。
【0106】
換言すると、上記帯電ローラ2は、当該帯電ローラの表面に、ユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内である突起を有し、当該帯電ローラ2のアスカーC硬度は50度以下である構成である。
【0107】
上記突起とは、上記帯電ローラ2の表面粗さRzによって生じるものであり、その突起の高さとしては、0.2μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。上記突起の高さが0.2μmよりも小さい場合には、上記帯電器20が、感光体1に対して安定した帯電を行なうことができない場合がある。一方、上記突起の高さが10μmよりも大きい場合には、当該突起が感光体1表面を傷つける場合がある。
【0108】
そして、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度を50度以下とすることにより、帯電ローラ全体の硬さを柔らかくすることができるので、プロセス速度を例えば、225mm/sec以上と速くした場合であっても、上記帯電ローラ2の表面に存在する突起が感光体1表面を傷つけることを防止できる。また、上記帯電ローラ2の表面に存在する突起または帯電ローラ2の表面のユニバーサル硬度を50<HU<150N/mmの範囲内とすることにより、長期間帯電器20を動作させた場合、すなわち、長期間上記突起を感光体1と接触させた場合であっても、上記帯電ローラ2の表面に存在する突起を長期間維持することができる。これにより、長期間帯電器20を動作させた場合であっても、当該帯電器20は、感光体1を安定して帯電させることができる。
【0109】
そして、本実施の形態にかかる帯電器20には、上記帯電ローラ2に対して直流電圧を印加する電圧印加手段が備えられており。つまり、上記電圧印加手段を備えることで、上記帯電器20は、直流電圧印加方式で感光体1を帯電することができる。
【0110】
さらに、本実施の形態にかかる帯電器20には、上記画像形成時に上記帯電部材に対して上記電圧印加手段が印加する放電開始電圧以下の最大値を有する交流電圧を、非画像形成時の上記帯電部材に対して印加する交流電圧印加手段(図示せず)が備えられていることがより好ましい。
【0111】
上記の構成によれば、非画像形成時に、上記放電開始電圧以下の電圧値である交流電圧を上記帯電ローラ2に対して印加している。これにより、非画像形成時に帯電ローラ2をクリーニングすることができる。従って、従来のように上記帯電ローラ2に対して機械的なクリーニングを行なう構成と比べて、帯電ローラ2にかかる機械的ストレスを無くすことができる。
【0112】
また、上記帯電ローラ2に対して放電開始電圧値以下の最大値を有する交流電圧を印加しているためこの交流電圧が感光体1に対して悪影響を及ぼすことがない。従って、上記帯電ローラ2に対して上記交流電圧を印加した場合であっても、上記感光体1の膜減りが起こることがない。
【0113】
なお、上記交流電圧印加手段は、帯電器20に備えられていてもよく、画像形成装置に設けられていてもよい。
【0114】
また、上記感光体1を帯電させるために帯電ローラ2の表面に存在している突起は、例えば、上記帯電ローラ2を製造する際に、当該帯電ローラ2の表面粗さによって形成された凸部であってもよく、また、例えば、上記帯電ローラ2の表面に上記突起を設けてもよい。
【0115】
また、本実施の形態にかかる帯電ローラ2は、上記アスカーC硬度およびユニバーサル硬度が上記範囲内であればよく、当該帯電ローラ2を構成している材料、具体的には、帯電ローラ2を構成している弾性層および表面層を構成する材料については、何ら限定されるものではない。つまり、どのような材料を用いて帯電ローラ2を作成した場合であっても、当該帯電ローラ2のアスカーC硬度およびユニバーサル硬度が上記範囲内であるものが、本実施の形態にかかる帯電ローラ2に該当する。
【0116】
また、本実施の形態にかかる帯電器20(帯電ローラ2)の構成とすることにより、プロセス速度を早くした場合であっても、感光体1の表面を傷つけることがない。このとき、プロセス速度の上限については、帯電安定性の観点では、気中放電を考慮した帯電領域通過時間をTc(帯電ローラ接触ニップ幅の約1.5倍程度)、感光体1と帯電ローラ2の時定数τとするとTc=2.5τとなる速度が上限である。
【0117】
以上のように、本実施の形態にかかる帯電器20は、回転する感光体1に接触しながら当該感光体1を帯電する帯電ローラ2を有する帯電器20であって、上記帯電ローラ2の表面には、上記感光体1を帯電するための突起が存在しており、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度が50度以下であり、上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内であることを構成である。
【0118】
また、上記帯電ローラ2の表面に存在する突起は、上記回転する感光体1を帯電させるものである。この突起は、例えば、帯電ローラ2の表面粗さによって当該帯電ローラ2の表面に生じる凸部である。従って、上記突起のユニバーサル硬度を測定するためには、例えば、上記帯電ローラ2の表面のユニバーサル硬度を測定すればよい。
【0119】
つまり、上記アスカーC硬度は帯電ローラ2全体の硬度であり、上記ユニバーサル硬度は帯電ローラ2の表面の硬度である。
【0120】
上記の構成によれば、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度が50度以下であり、かつ、上記帯電ローラ2の表面に存在している上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内である。
【0121】
これにより、上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内であるため、上記突起が回転している感光体1と長期間接触した場合であっても、上記突起の形状(状態)を長期間維持することができる。これにより、感光体1を長期間に渡って安定して帯電させることができる。
【0122】
また、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度を50度以下とすることで、当該帯電ローラ2全体の硬度を従来と比べて低くしているので、上記突起が上記感光体1と長期間接触した場合であてもこの感光体1表面を傷つけることを防止できる。
【0123】
また、帯電安定性および感光体1表面の傷付けやすさは、感光体1の回転速度(プロセス速度(感光体1の表面の周速))にも起因することとなるが、上記構成とすることで、プロセス速度を低速および高速にした場合でも、感光体1を傷つけることなく、かつ、安定した帯電を行なうことができる。
【0124】
すなわち、上記帯電ローラ2全体のアスカーC硬度と上記突起のユニバーサル硬度とを上記範囲とすることで感光体1を傷つけることなく、かつ、プロセス速度に関係なく、感光体1を長期間安定して帯電させることができる。
【0125】
つまり、上記の構成とすることで、例えば、複写機、プリンター等の静電潜像プロセスに用いた場合に、接触帯電での放電ポイントとなる帯電部材上の突起が埋没することによる画像劣化を生じることなく、かつ、長期に亘って安定した性能を発揮することができる帯電器20、及び該帯電器20を備えた画像形成装置を提供することができる。また、上記の構成とすることで、例えば高速のプロセス速度においても、感光体1ドラムの損傷を防止し、当該感光体1ドラムの長寿命化を可能にする帯電器20、及び該帯電器20を備えた画像形成装置を提供することができる。
【0126】
本実施の形態にかかる帯電器20において、上記感光体1の表面の周速が225mm/sec以上であってもよい。
【0127】
上記の構成とすることで、上記感光体1の表面の周速、すなわち、プロセス速度を225mm/sec以上に設定した場合でも、上記感光体1の表面を傷つけることなく、かつ、帯電安定性を維持することができる。
【0128】
本実施の形態にかかる帯電器20において、上記突起の高さが、0.2μm〜10μmの範囲内である構成であってもよい。
【0129】
上記の構成によれば、上記突起の高さが0.2μm〜10μmの範囲内であるために、当該帯電ローラ2が感光体1に長期間接触させた場合であっても、当該感光体1を傷つけることがない。また、上記突起の高さを上記範囲内とすることで、上記感光体1と接触する面積が大きくなりすぎることを防止できるので、上記感光体1に対する過放電を防止できる。
【0130】
なお、上記突起が、上記帯電ローラ2の表面粗さによって生じたものである場合、上記突起の高さが0.2μm〜10μmの範囲内であることは、上記帯電ローラ2の表面の表面粗さ(Rz)が0.2μm≦Rz≦10μmであることと同じである。
【0131】
本実施の形態にかかる帯電器20において、上記帯電ローラ2に対して直流電圧を印加する電圧印加手段を備える構成であってもよい。
【0132】
上記の構成によれば、上記帯電ローラ2に直流電圧を印加している。これにより、上記帯電ローラ2から感光体1に流れ込む電流量を下げることができる。
【0133】
本実施の形態にかかる画像形成装置は、回転する感光体1と、上記感光体1に接触しながら当該感光体1を帯電する帯電ローラ2を有する帯電器20とを備えた画像形成装置であって、上記帯電ローラ2の表面には、上記感光体1を帯電するための突起が存在しており、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度が50度以下であり、上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内である構成であってもよい。
【0134】
上記の構成によれば、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度が50度以下であり、かつ、上記帯電ローラ2の表面に存在する上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内である。
【0135】
この突起のユニバーサル硬度(HU)を50<HU<150N/mmの範囲内とすることで、上記帯電ローラ2を回転している感光体1に長期間接触させた場合であっても、上記突起の形状(状態)を長期間維持することができる。これにより、感光体1を長期間に渡って安定して帯電させることができる。
【0136】
また、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度を50度以下とすることで、当該帯電ローラ2全体の硬度を従来と比べて低くしているので、上記帯電ローラ2の表面に存在する突起が感光体1表面を傷つけることを防止できる。すなわち、上記帯電ローラ2全体のアスカーC硬度と上記突起のユニバーサル硬度とを上記範囲とすることで、感光体1を傷つけることなく、長期間安定して感光体1を帯電させることができる。従って、上記の構成とすることで、感光体1の寿命を従来と比べて伸ばすことができる。
【0137】
これにより、長期間に渡り、好適な画像形成を行なうことができる画像形成装置を提供することができる。
【0138】
また、上記の構成とすることで、プロセス速度を従来と比べて高速にした場合であって、感光体1表面を傷つけることがないので、長期間高速で画像形成動作を行なうことが可能になる。
【0139】
本実施の形態にかかる画像形成装置において、上記感光体1の表面の周速が225mm/sec以上である構成であってもよい。
【0140】
上記の構成とすることで、上記感光体1の表面の周速、すなわち、プロセス速度を225mm/sec以上に設定した場合でも、上記感光体1の表面を傷つけることなく、かつ、帯電安定性を維持することができる。
【0141】
これにより、上記プロセス速度が225mm/sec以上の場合のような高速で画像形成を行なうことができる。
【0142】
本実施の形態にかかる画像形成装置は、上記突起の高さが、0.2μm〜10μmの範囲内である構成であってもよい。
【0143】
上記の構成によれば、上記突起の高さが0.2μm〜10μmの範囲内であるために、当該帯電ローラ2が感光体1に長期間接触させた場合であっても、当該感光体1を傷つけることがない。また、上記突起の高さを上記範囲内とすることで、上記感光体1と接触する面積が大きくなりすぎることを防止できるので、上記感光体1に対する過放電を防止できる。
【0144】
本実施の形態にかかる画像形成装置において、上記帯電ローラ2に対して直流電圧を印加する電圧印加手段を備える構成であってもよい。
【0145】
上記の構成によれば、上記帯電ローラ2に直流電圧を印加している。これにより、上記帯電ローラ2から感光体1に流れ込む電流量を下げることができる。
【0146】
本実施の形態にかかる画像形成装置において、画像形成時に上記帯電ローラ2に対して上記電圧印加手段が印加する放電開始電圧以下の最大値を有する交流電圧を、非画像形成時の上記帯電ローラ2に対して印加する交流電圧印加手段を備える構成であってもよい。
【0147】
上記の構成によれば、非画像形成時に、上記放電開始電圧以下の電圧値である交流電圧を上記帯電ローラ2に対して印加している。これにより、帯電ローラ2をクリーニングすることができる。従って、従来のように上記帯電ローラ2に対して機械的なクリーニングを行なう構成と比べて、帯電ローラ2にかかる機械的ストレスを無くすことができる。
【0148】
また、上記帯電ローラ2に対して放電開始電圧以下の最大値を有する交流電圧を印加しているためこの交流電圧が感光体1に対して悪影響を及ぼすことがない。従って、上記帯電ローラ2に対して上記交流電圧を印加した場合であっても、上記感光体1の膜減りが起こることがない。
【0149】
また、本実施の形態にかかる帯電器20は、プロセススピードが225〔mm/sec〕以上の画像形成装置に使用される帯電器20であって、帯電ローラ2の表面のユニバーサル硬度が50〜150〔N/mm〕である構成であってもよい。上記プロセススピードが225〔mm/sec〕以上の画像形成装置において接触帯電方式の帯電器20は、感光体1と接触した状態で動作するためその摩擦によって当該帯電器20が備える帯電ローラ2の表面が削れ易くなる。そこで、ユニバーサル硬度が50〜150〔N/mm〕の範囲内である帯電ローラ2を使用することで、当該帯電ローラ2の表面に備えられた放電ポイントである突起を長期間維持することができ、かつ、感光体1を傷つけることがない。
【0150】
具体的には、プロセススピードが225〔mm/sec〕以上の画像形成装置に用いられる帯電器20において、当該帯電器20が備える帯電ローラ2の表面に存在している突起のユニバーサル硬度が高過ぎると、上記突起が当該帯電器20と接触している感光体1に傷を付け易くなる。そのため、帯電ローラ2(帯電ローラ)全体(もしくは帯電ローラの基層)の硬度を下げることにより、上記突起が感光体1を傷つけることを防止できる。
【0151】
すなわち、帯電ローラ2の表面に存在する突起を長時間維持するために、当該帯電ローラ2の表面のユニバーサル硬度を上げ、かつ、帯電ローラ2全体の硬度を上げてしまった場合には、上記感光体1を傷つけ易くなってしまう。そのため、上記構成とすることで、突起を硬くしつつ、基層部分(帯電ローラ2全体)の硬度を下げることで、帯電ニップ部(帯電器20の表面)の突起による、感光体1に与えるストレスを低減することができる。
【0152】
また、本実施の形態にかかる帯電器20は、さらに、帯電ローラ2の全体のアスカーC硬度が50度以下である構成であってもよい。プロセススピードが225〔mm/sec〕以上の画像形成装置において、上記突起のユニバーサル硬度が高くなることにより感光体1に傷を付け易くなる。そのため、帯電ローラ2全体の硬度を下げることにより、感光体1を傷つけることを防止する。
【0153】
また、本実施の形態にかかる帯電器20は、帯電ローラ2の表面粗さ(Rz)が0.2μm≦Rz≦10μmの範囲内である構成であってもよい。上記表面粗さ(Rz)を0.2μm≦Rz≦10μmの範囲内とすることで、適度な放電ポイントを与え、過放電を起こすことがない。なお、帯電ローラ2の表面粗さによって生じた凸部が、放電ポイントである上記突起に相当する。
【0154】
本実施の形態にかかる帯電器20は、さらに、帯電ローラ2に印加する電圧を直流電圧とする構成であってもよい。上記の構成によれば、帯電ローラ2に印加する電圧を直流電圧とすることで、感光体1に流れ込む電流量を下げることができる。
【0155】
本実施の形態にかかる画像形成装置は、プロセススピードが225〔mm/sec〕以上の画像形成装置において、帯電部材のユニバーサル硬度が50〜150〔N/mm〕である構成であってもよい。上記の構成によれば、プロセススピードが225〔mm/sec〕以上の画像形成装置においては、帯電部材が削れ易くなる。そのため、ユニバーサル硬度が50〜150〔N/mm〕である帯電部材を使用することで、放電ポイントである帯電部材の突起を長期間維持することができ、感光体1を傷つけることがない。
【0156】
本実施の形態にかかる画像形成装置は、帯電部材のアスカーC硬度を50度以下とする構成であってもよい。上記の構成によれば、プロセススピードが225〔mm/sec〕以上の画像形成装置において、突起のユニバーサル硬度が高くなることにより感光体1に傷を付け易くなる。そのため、帯電部材の硬度を下げることにより、感光体1を傷つけることを防止する。
【0157】
本実施の形態にかかる画像形成装置は、帯電部材の表面粗さを0.2μm≦Rz≦10μmとする構成であってもよい。上記の構成によれば、表面粗さを0.2μm≦Rz≦10μmとすることで適度な放電ポイントを与え、過放電を起こさない。
【0158】
本実施の形態にかかる画像形成装置は、上記帯電部材に印加する電圧を直流電圧とする構成であってもよい。これにより、直流電圧とすることで流れ込む電流量を下げることが可能となる。
【0159】
本実施の形態にかかる画像形成装置は、非画像形成時に帯電部材に放電開始電圧以下の最大値を有する交流電圧を印加することによって帯電部材のクリーニングを行う構成であってもよい。これにより、帯電部材の機械的なクリーニングをなしにする、もしくは、機械的ストレスを減少させることが可能となる。
【0160】
なお、非画像形成時でも、帯電部材および感光体1は回転駆動している。本実施の形態で、非画像形成時に印加している交流電圧は、放電開始電圧以下の電圧であるので、感光体1に悪影響を及ぼすことはない。そのため、感光体1の膜減りについても、問題がない。
【0161】
また、本実施の形態にかかる帯電器20は、上記モノクロ機10およびカラー機100に好適に適用できる。つまり、上記帯電器20は、モノクロ印刷の場合であってもカラー印刷の場合であっても、上記感光体1の表面を傷つけることなく、長期間安定して上記感光体1を帯電させることができる。
【0162】
また、本実施の形態にかかる帯電器20は、回転する感光体1に接触しながら当該感光体1を帯電する帯電ローラ2を有する帯電器20であって、上記帯電ローラ2のアスカーC硬度が50度以下であり、かつ、上記帯電ローラ2の表面におけるユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内であり、上記帯電ローラ2の表面には上記感光体1を帯電するための突起が存在している構成であってもよい。
【0163】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0164】
以下、実施例1〜実施例6、および比較例1〜比較例6を示し、帯電部材の作製、感光体の作製、帯電部材の表面粗さ測定、画質確認の試験等についての結果を説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例に限定されるものではない。
【0165】
〔実施例1〕
<帯電部材(以下帯電ローラと称する)の作製>
帯電ローラ(帯電ローラ2)の作製に使用した材料の配合を下記に記す。
−弾性層−
・EPDM(100部)
・カーボンブラック(10部)
・発泡剤(10部)
−表面層−
・ナイロン12(100部)
・カーボンブラック(20部)
上記弾性層を構成する材料を混練し、得られたゴムをΦ9の導電性支持体が予めセットされた金型に流し込み、電気炉内部温度160℃で30分間加熱し、加硫、発泡を行った。
【0166】
次に上記表面層を構成する材料を混練し、その後環状ダイスを用いて溶融押し出しし、シームレスチューブを作製した。作製したシームレスチューブの一端からエアーを吹き込み、チューブを膨らましながら、チューブ内に上記Φ9の導電性支持体上に弾性層が形成されたローラを挿入することでΦ14の帯電ローラを作製した。
【0167】
<ユニバーサル硬度測定>
表面皮膜物性試験機(フィッシャーインストルメンツ製:フィッシャースコープ H−100)を用いて、上記作成した帯電ローラの表面のユニバーサル硬度を測定した。具体的には、上記帯電ローラを上記測定装置にセットし、押込み荷重:50mN、押込み速度:7μm/20secの条件で測定を行った。その結果、上記帯電ローラのユニバーサル硬度は、116.7〔N/mm〕であった。
【0168】
<表面粗さ測定>
表面粗さ計(小坂研:SE−30H)を用いて、上記帯電ローラの10点平均粗さ(Rz)を測定した。その結果、上記帯電ローラの表面粗さRzは、5.6μmであった。
【0169】
<帯電部材の硬度測定>
ASKER C型のデュロメータ(スプリング式硬度計)を用いて、上記帯電ローラの硬度測定を行った。具体的には、図5のように帯電ローラに硬度計を設置し、1kgの重りを載せることで硬度の測定を行った。その結果、上記帯電ローラのアスカーC硬度は、35度であった。
【0170】
〔実施例2〕
帯電部材の表層の材料配合、作製方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして、本実施例である帯電ローラを作成した。
−表面層−
ポリウレタン樹脂(100部)
カーボンブラック(5部)
酸化チタン(10部)
2−ブタノン(100部)
実施例1のΦ9の導電性支持体上に弾性層が形成されたローラを上記表面層を構成している材料を混合し、融解したコーティング塗料内にディッピングし、その後80℃で20分乾燥することでΦ14の帯電ローラを作製した。そして、得られた帯電ローラの物性を実施例1と同様の方法で測定した。
【0171】
<ユニバーサル硬度測定>
実施例2にかかる帯電ローラのユニバーサル硬度は、51.5〔N/mm〕であった。
【0172】
<表面粗さ測定>
実施例2にかかる帯電ローラの表面粗さRzは、2.5μmであった。
【0173】
<帯電部材の硬度測定>
実施例2にかかる帯電ローラのアスカーC硬度(ASKER−C硬度)は、23度であった。
【0174】
〔実施例3〕
弾性層を構成する材料として以下に示すものを使用した。
−弾性層−
シリコンゴム(100部)
カーボンブラック(7部)
加硫剤(2部)
Φ9の導電性支持体上に上記弾性層を構成している材料を分散させて半導電性としたシリコンゴム層(弾性層)を形成し、その上を実施例2に示すコーティング液の中にディッピングし、その後130℃で20分間乾燥させることでΦ14の帯電ローラを作製した。そして、得られた帯電ローラの物性を実施例1と同様の方法で測定した。
【0175】
<ユニバーサル硬度測定>
上記実施例3にかかる帯電ローラのユニバーサル硬度は、147.1〔N/mm〕であった。
【0176】
<表面粗さ測定>
上記実施例3にかかる帯電ローラの表面粗さRzは、6.1μmであった。
【0177】
<帯電部材の硬度測定>
上記実施例3にかかる帯電ローラのアスカーC硬度は、47度であった。
【0178】
〔比較例1〕
Φ9の導電性支持体上に以下に示す弾性層の材料を混練したものを分散させて半導電性としたシリコンゴム層(弾性層)を形成し、その上に以下に示す表面層を構成している材料を分散させて半導電性としたフッ化ビニリデンのチューブを被せることでΦ14の帯電ローラを作製した。そして、得られた帯電ローラの物性を実施例1と同様の方法で測定した。つまり、本比較例における弾性層、および、表面層の組成は以下の通りである。
−弾性層−
シリコンゴム(100部)
カーボンブラック(7部)
加硫剤(2部)
−表面層−
フッ化ビニリデン樹脂(100部)
ポリウレタン樹脂(5部)
カーボンブラック(10部)
【0179】
<ユニバーサル硬度測定>
上記帯電ローラのユニバーサル硬度は、5.8〔N/mm〕であった。
【0180】
<表面粗さ測定>
上記帯電ローラの表面粗さRzは、1.7μmであった。
【0181】
<帯電部材の硬度測定>
上記帯電ローラのアスカーC硬度は、55度であった。
【0182】
〔比較例2〕
Φ9の導電性支持体上に以下に示す弾性層の材料を混練したものを分散させて半導電性としたNBR層(弾性層)を形成し、その上に以下に示す表面層を構成している材料を分散させて半導電性としたNBR層(表面層)を形成することでΦ14の帯電ローラを作製した。そして、得られた帯電ローラの物性を実施例1と同様の方法で測定した。つまり、本比較例における弾性層、および、表面層の組成は以下の通りである。
−弾性層−
NBR(100部)
エステル系可塑剤(25部)
カーボンブラック(45部)
第4級アンモニウム塩(1部)
炭酸カルシウム(25部)
酸化亜鉛(1部)
ステアリン酸(1部)
ジベンゾチアゾールジスルフィド(1部)
テトラメチルチウラムモノサルファイド(1部)
硫黄(1部)
−表面層−
NBRラテックス(50部)
SBRラテックス(50部)
イオウ系加硫剤(5部)
カーボンブラック(5部)
【0183】
<ユニバーサル硬度測定>
上記帯電ローラのユニバーサル硬度は、88.3〔N/mm〕であった。
【0184】
<表面粗さ測定>
上記帯電ローラの表面粗さRzは、4.5〔μm〕であった。
【0185】
<帯電部材の硬度測定>
上記帯電ローラのアスカーC硬度は、62度であった。
【0186】
〔比較例3〕
Φ9の導電性支持体上に以下に示す弾性層の材料を混練したものを半導電性としたエピクロルヒドリン層(弾性層)を形成し、その上に以下に示す表面層を構成している材料を分散させて半導電性としたフッ素ゴム層(表面層)を形成することでΦ14の帯電ローラを作製した。そして、得られた帯電ローラの物性を実施例1と同様の方法で測定した。つまり、本比較例における弾性層、および、表面層の組成は以下の通りである。
−弾性層−
エピクロルヒドリンゴム(100部)
エーテルエステル系可塑剤(15部)
カーボンブラック(10部)
第4級アンモニウム塩(1部)
炭酸カルシウム(30部)
酸化亜鉛(5部)
脂肪酸(2部)
ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(1部)
テトラメチルチウラムモノスルフィド(0.5部)
硫黄(1部)
−表面層−
フッ素ゴム(100部)
フッ化カーボン(20部)
アミン系硬化剤(2.5部)
【0187】
<ユニバーサル硬度測定>
上記帯電ローラのユニバーサル硬度は、20.1〔N/mm〕であった。
【0188】
<表面粗さ測定>
上記帯電ローラの表面粗さRzは、2.1〔μm〕であった。
【0189】
<帯電部材の硬度測定>
上記帯電ローラのアスカーC硬度は、65度であった。
【0190】
〔比較例4〕
帯電ローラの乾燥条件を150℃、40分間とした以外は、実施例2と同様の製法で帯電ローラを作製した。そして、得られた帯電ローラの物性を実施例1と同様の方法で測定した。
【0191】
<ユニバーサル硬度測定>
上記帯電ローラのユニバーサル硬度は、190.6〔N/mm〕であった。
【0192】
<表面粗さ測定>
上記帯電ローラの表面粗さRzは、3.0μmであった。
【0193】
<帯電部材の硬度測定>
上記帯電ローラのアスカーC硬度は、26度であった。
【0194】
<感光体の作製>
感光体は、直径30mm、全長362mm、表面粗さ(Rmax)1.0μmに調整したアルミニウム製の円筒状の導電性支持体(プロセス速度;117mm/sec用、225mm/sec用)及び、直径80mm、全長350mm、表面粗さ(Rmax)1.0μmに調整したアルミニウム製の円筒状の導電性支持体(プロセス速度;394mm/sec用)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成することによって作製した。
【0195】
具体的には、まず、酸化チタン(石原産業(株)製:TT055A)7重量部と、共重合ナイロン(東レ(株)製:CM8000)13重量部とを、メチルアルコール159重量部と、1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカーにて8時間分散処理し下引き層用塗液を調整した。この下引き層用塗液を塗布槽に満たし、この塗布槽に、上記導電性支持体を浸漬し引き上げ、自然乾燥させることにより膜厚1μmの下引き層を形成した。
【0196】
そして、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)が27.3°に回折ピークを示す結晶型オキソチタニルフタロシアニン1重量部と、ブチラール樹脂(電気化学工業(株)製:#6000−C)1重量部とを、メチルエチルケトン98重量部に混合しペイントシェーカーにて分散処理し電荷発生層用塗液を調整した。この電荷発生層用塗液を各種フィルタにて濾過し、感光体中の最大粒子径を制御した。その後、上記下引き層上に塗布、自然乾燥させることで膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0197】
続いて、ブタジエン化合物((株)高砂ケミカル製:T405)100重量部と、ポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学(株)製:Z300)150重量部と、添加剤として2,6−ビス−tert−ブチル−4−メチルフェノール(住友化学工業(株)製:スミライザーBHT)5重量部とを混合し、テトラヒドロフランを溶剤として固形分21重量%の電荷輸送層用塗液を調整した。この電荷輸送層用塗液を上記電荷発生層上に塗布し、110℃にて1時間乾燥して膜厚21μmの電荷輸送層を形成した。
【0198】
〔帯電安定性の確認および感光体傷評価〕
ここで、上記実施例または比較例の帯電ローラを用いた画像形成装置を使用して、帯電安定性および画像形成動作による感光体表面の傷の評価について説明する。
【0199】
図4に示す感光体101および帯電ローラ102を用いたカラー機100として、上述のように作製した実施例1〜3、比較例1〜4の帯電ローラと感光体とが装着された画像形成装置(シャープ(株)製:AR−C260改造機(117〔mm/sec〕)、AR−450改造機(225〔mm/sec〕)、AR−705改造機(394〔mm/sec〕))を使用して、プロセススピード(プロセス速度;感光体表面の周速)を変化させた時の帯電安定性の確認および感光体傷評価を行った。
【0200】
そして、次に示すバイアス等のプロセス条件を除いては、それぞれのマシンの基本条件で試験を行った。帯電ローラ102の感光体101への押圧力を、線圧10.3gf/cmとし、帯電ローラ102を感光体101に連れ周りで回転させた。帯電ローラ102のシャフト部に外部より高圧電源を用いて、−1220Vの直流電圧を印加し、感光体101表面電位を−620Vとした。
【0201】
また、このような画像形成装置において、A3サイズ原稿を30000枚コピーした後のハーフトーン画質の評価を行った。
【0202】
そして、評価については目視およびハーフトーンの濃度を濃度計によって評価した。
【0203】
具体的には、目視にて評価する場合、白点、黒点、白筋、黒筋が目視にて確認されない場合を「○」、よく見ると白点、黒点、白筋、黒筋が見える場合を「△」、白点、黒点、白筋、黒筋がはっきりわかる場合を「×」として評価した。
【0204】
一方、濃度計を用いて評価する場合には、ハーフトーンの濃度ムラが0.3以上の場合を「×」、濃度ムラが0.3〜0.1の場合を「△」、濃度ムラが0.1未満の場合を「○」として評価した。
【0205】
なお、30000枚コピーした後の画像を評価する理由としては、画像形成装置の保守点検周期に基づいている。
【0206】
そして、評価結果を表1に示す。
【0207】
【表1】

【0208】
なお、表1中、感光体傷の評価については、プロセススピードが394mm/secであるAR−705改造機における結果を示している。
【0209】
<ユニバーサル硬度による影響>
実施例1〜3、比較例1〜4の全ての帯電ローラでの初期の画像においては、問題が見られなかった。しかし、30000枚コピーした後の画像において、ユニバーサル硬度が50〔N/mm〕以下の比較例1、3で帯電不良と思われる画像欠陥が見られた。また、上記比較例1、3の帯電ローラを観察したところ、トナー汚れが顕著に見られた。
【0210】
一方、ユニバーサル硬度が150〔N/mm〕以上の比較例4の場合、プロセススピードを225〔mm/sec〕以上にしたところ、30000枚コピーした後の画像において、帯電不良と思われる画像欠陥が見られた。
【0211】
<Asker−C硬度による影響>
実施例1〜3(Asker−C:50度以下)については、30000枚コピーした後の画像に問題は見られなかった。しかし、比較例1〜4については、感光体ドラム円周方向の筋状の画像欠陥が見られた。そのときの感光体を直接観察したところ、感光体上にも筋状の傷が見られた。
【0212】
〔実施例4〕
AR−705改造機(プロセススピード;394mm/sec)に実施例1の帯電ローラ(ユニバーサル硬度:116.7、表面粗さ:5.6μm、アスカーC硬度:35度)を装着した後、この帯電ローラのブラシクリーニングを除去し、非画像形成時に、上記帯電ローラに対して、DC:0V、Vpp:1〔kV〕、周波数:250Hzの交流電圧を印加してエージングテストを行った。なお、このときの電圧値は、画像形成時に上記帯電ローラに印加する直流電圧の電圧値よりも小さい。
【0213】
その結果、上記交流電圧を印加すると、50000枚コピーした後の画像においても画像劣化が見られなかった。
【0214】
一方、帯電ローラのブラシクリーニングを除去し、上記交流電圧を印加しなかった場合には、20000枚コピーを印字した辺りで、帯電不良が原因と見られる画像欠陥が見られた。
【0215】
すなわち、非画像形成時に、上記交流電圧(直流電圧値よりも小さい電圧)を印加することにより、上記帯電ローラを良好にクリーニングすることができる。
【0216】
〔参考実施例1〜3及び参考比較例1、2〕
以下に、実施例1と同じ弾性層および表面層を有し、かつ、ユニバーサル硬度およびアスカーC硬度が上記実施例1と同じである帯電ローラの表面粗さにおける帯電安定性および感光体傷の評価を行なった結果について説明する。
【0217】
なお、上記参考実施例および参考比較例は、表面粗さが0.2μm〜10μmの範囲内にあるものを参考実施例、それ以外のものを参考比較例として説明する。すなわち、上記参考比較例は、表面粗さに対する比較例であり、本発明における比較例とは異なる。
【0218】
<帯電部材の作製>
基層については、実施例1と同様のもの、表面層については、実施例1のチューブ作製時にフィラーを挿入、混練することで、表面粗さを振った5種類の帯電ローラを作製した。そして、得られた帯電ローラのユニバーサル硬度およびアスカーC硬度は、実施例1と同じである。
【0219】
そして、上記プロセススピードがそれぞれ違う3種類の改造機(AR−C260改造機、AR−450改造機、AR−705改造機)に、上記帯電ローラをそれぞれセットして、上記<帯電安定性の確認および感光体傷評価>と同様の評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0220】
【表2】

【0221】
なお、表2中、画質および感光体傷の評価については、プロセススピードが394mm/secであるAR−705改造機における結果を示している。
【0222】
<表面粗さによる影響>
30000枚コピーした後の画像において、参考比較例1、2の場合、帯電不良が原因と思われる画像欠陥が見られ、感光体ドラム円周方向の筋状の画像欠陥が見られた。そのときの感光体を直接観察したところ、感光体上にも筋状の傷が見られた。
【0223】
これにより、上記帯電ローラの表面に存在する突起の高さが、0.2μm〜10μmの範囲内が好ましいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明の帯電装置は、特に高速で画像形成を行なう画像形成装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】本発明の帯電装置を備えたモノクロ印字方式の画像形成装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】感光体の概略の構成を説明する断面図である。
【図3】帯電ローラの概略構成を示す側面図である。
【図4】カラー印字方式(カラータンデム方式)の画像形成装置の概略構成を示す側面図である。
【図5】ASKER C型のデュロメータ(スプリング式硬度計)を用いて、上記帯電ローラの硬度測定を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0226】
1 感光体
1a 導電性支持体
1c 電荷発生層
1d 電荷輸送層
1e 感光受容層
2 帯電ローラ(帯電部材)
2a 導電性支持体
2b 弾性層
2c 抵抗層
4 現像ローラ
10 モノクロ機(画像形成装置)
20 帯電器(帯電装置)
30 露光部
40 現像部
50 転写部
60 定着部
70 クリーニング部
100 カラー機(画像形成装置)
101 感光体
102 帯電ローラ(帯電部材)
105 転写ローラ
110 制御部
120 帯電器(帯電装置)
130 露光部
140 現像部
150 転写搬送ベルト部
157 転写ベルトクリーニング部
160 定着部
170 クリーニング部
180 給紙トレイ
185 搬送ローラ
190・191 排紙トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する感光体に接触しながら回転し、当該感光体を帯電する帯電部材を有する帯電装置であって、
上記帯電部材の表面には、上記感光体を帯電するための突起が存在しており、
上記帯電部材のアスカーC硬度が50度以下であり、
上記突起のユニバーサル硬度(HU)が50<HU<150N/mmの範囲内であることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
上記感光体の表面の周速が225mm/sec以上であることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
【請求項3】
上記突起の高さが、0.2μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項4】
上記帯電部材に対して直流電圧を印加する電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項5】
上記帯電部材は、帯電ローラであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電装置を備えた画像形成装置。
【請求項7】
画像形成時に帯電部材に対して電圧印加手段が印加する放電開始電圧以下の最大値を有する交流電圧を、非画像形成時の上記帯電部材に対して印加する交流電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−52070(P2007−52070A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235440(P2005−235440)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】