説明

帯電装置及び画像形成装置

【課題】 オゾンの発生が全くなく、かつ、被帯電部材の摩耗を最小にすべく、液体部分以外の部分が被帯電部材の表面に接触しない帯電装置を提供する。
【解決手段】 導電性液体を貯留する貯留部及び前記導電性液体を被帯電部材に案内するガイド部を有する導電性液体保持容器を備え、前記ガイド部を介して前記導電性液体を前記被帯電部材に接触させるとともに、前記導電性液体に電圧を印加することによって前記被帯電部材に帯電を行う帯電装置において、前記被帯電部材と前記導電性液体との接触角を100度以上とし、且つ、前記ガイド部を前記被帯電部材に接触させない状態で前記被帯電部材に帯電を行う位置に配置することを特徴とする帯電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被帯電部材を帯電する帯電装置、及びこの帯電装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置等の画像形成装置において、電子写真感光体等の被帯電部材を帯電する手段として、コロナ放電を利用したコロナ帯電器が主に用いられてきた。コロナ帯電器は、被帯電部材と非接触に配置し、例えばワイヤ電極や針電極等に高電圧を印加してコロナ放電を起こして、その放電電流の一部を被帯電部材に流すことで被帯電部材を所定の電位に帯電させるものである。しかしながら、このコロナ帯電器はコロナ放電を利用するため、オゾン発生による人体への影響が懸念される。また、コロナ放電による放電生成物が電子写真感光体表面に付着し、高湿度下で像流れ現象を防止するため、電子写真感光体表面をクリーナブレードで一定量削る必要があり、電子写真感光体の寿命を短くしていた。更に高電圧電源が必要であり、電源コストが高いという欠点もあった。さらに、放電器の形状も、安定した放電を行うには、それほど小さくできないという問題もあった。
【0003】
近年、コロナ帯電器と比べて低オゾン、低電力などの利点があることから接触帯電器が多数提案、実用化されている。接触帯電器は、被帯電部材に接触させた導電性の帯電部材に所定の電圧を印加して、被帯電面を所定の表面電位に帯電させるものである。帯電部材としては、例えば帯電ローラ、ファーブラシ、磁気ブラシ、ブレード等が用いられる。
【0004】
しかし、これらの接触帯電器では、コロナ帯電器に比べ、低電圧で帯電できるものの、放電現象を利用した帯電方式であるため、オゾンの発生と放電生成物による被帯電部材表面の汚染はさけられない。
【0005】
そこで、これらの問題点を解決するため、放電現象を利用しない帯電方法として導電性液体による注入帯電方式が考案されている。これは、被帯電体表面に導電性液体を接触させ、帯電電位とほぼ等しい電圧を印加することで、導電性液体から被帯電体表面に電荷を移動させ、表面を帯電させるものである。例えば吸水性のスポンジローラに水を含浸させたもの(特許文献1参照)やイオン伝導液で湿らされたドナーブレード(特許文献2参照)を被帯電体表面に接触させ、帯電する方法がある。
【0006】
また、液体状のイオン性導電性媒体を貯蔵する液体貯蔵部と、被帯電部材の移動方向に対して液体状のイオン性導電性媒体の供給位置よりも上流側に位置し、上流側への液漏れを防止するための被帯電部材に接触するように配置された液体規制部材と、被帯電部材の移動方向に対して液体状のイオン性導電性媒体の供給位置よりも下流側に位置し、下流側への液漏れを防止するための被帯電部材に非接触状態となるように配置された液体保持部材とを備えるように構成した帯電装置(特許文献3)などが提案されている。
【特許文献1】特開平8−62934号公報
【特許文献2】特開平9−22160号公報
【特許文献3】特開2000−267385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら前記特許文献1及び2における注入帯電方式では、帯電部材が被帯電部材に接触しているため、接触帯電方式と同様に、被帯電部材の表面を傷付けたり摩耗させたりする。そのため、被帯電部材の寿命を短くするという問題点がある。また、特許文献3においては、帯電を液体の接触で行うが、液漏れ防止のために上流側で液体規制部材を被帯電部材に接触させている。そのため、特許文献1、2と同様に、やはり傷、摩耗により被帯電部材の寿命を短くしているという問題がある。
【0008】
また、帯電装置以外の現像装置やクリーニング装置も被帯電部材の削れや傷の要因となっており、その対策が必要である。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、オゾンの発生が全くなく、かつ、被帯電部材の摩耗を最小にすべく、帯電時は導電性液体だけが被帯電部材に接触するだけで、帯電装置の電性液体を貯留する貯留部及び前記導電性液体を被帯電部材に案内するガイド部を含むあらゆる固体部分は被帯電部材の表面に接触しない帯電装置を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は上記のように構成した帯電装置を備えた、画像欠陥の生じない、長期の使用に耐えうる画像形成装置を提供することにある。
【0011】
さらにその他の目的は、上記のように構成した帯電装置に加え、特定のトナーを使用することによりクリーニング装置を不要とし、被帯電部材の摩耗を最小にするようにした、画像欠陥の生じない、長期の使用に耐えうる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意研究を重ねたところ、以下の記載のいずれかの構成により、前記課題を解決することができた。
【0013】
請求項1に係る帯電装置は、導電性液体を貯留する貯留部及び前記導電性液体を被帯電部材に案内するガイド部を有する導電性液体保持容器を備え、前記ガイド部を介して前記導電性液体を前記被帯電部材に接触させるとともに、前記導電性液体に電圧を印加することによって前記被帯電部材に帯電を行う帯電装置において、前記被帯電部材と前記導電性液体との接触角を100度以上とし、且つ、前記ガイド部を前記被帯電部材に接触させない状態で前記被帯電部材に帯電を行う位置に配置することを特徴とするものである。
【0014】
請求項2に係る画像形成装置は、トナー画像を担持する像担持体、現像装置、及び帯電装置を備えてなる画像形成装置において、前記帯電装置は、導電性液体を貯留する貯留部及び前記導電性液体を前記像担持体に案内するガイド部を有する導電性液体保持容器を備え、前記ガイド部を介して前記導電性液体を前記像担持体に接触させるとともに、前記導電性液体に電圧を印加することによって前記像担持体に帯電を行う帯電装置であって、前記帯電装置は前記像担持体と前記導電性液体との接触角を100度以上とし、且つ、前記ガイド部を前記像担持体に接触させない状態で前記像担持体に帯電を行う位置に配置することを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に係る画像形成装置は、請求項2に記載の画像形成装置において、前記像担持体は前記帯電装置に対し100cm/秒以下の相対速度で回転運動する回転体として構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に係る画像形成装置は、請求項2又は3に記載の画像形成装置において、前記像担持体はその表面の十点平均表面粗さRzが、前記トナー画像のトナーの体積平均粒径をD50としたとき、0.05μm〜D50/3の範囲であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に係る画像形成装置は、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前記トナー画像のトナーの円形度が、0.96以上であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6に係る画像形成装置は、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、さらに前記像担持体に形成されたトナー画像を転写媒体に転写する転写装置及び、前記転写媒体に転写されたトナー画像を定着する定着装置を備え、前記像担持体に形成されたトナー画像を転写媒体に転写した後の前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材を備えていないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コロナ放電現象を用いずに、導電性液体に電圧を印加することで、感光体などのトナー画像を担持する像担持体である被帯電部材に電荷を注入する注入帯電方式を用いるために、オゾンの発生が全くなく、放電生成物による被帯電部材の表面の汚染もない。このことから、被帯電部材の表面をクリーニング部材などで削る必要がない。また、被帯電部材の表面を適度に荒すことにより、表面の接触角が大きくなり、導電性液体の漏れもなく安定した帯電を行うことができる。さらに、トナーの円形度をある値より大きくすることにより、被帯電部材へのトナー成分の付着(フィルミング)がなく、被帯電部材との接触角を安定して維持できる。これらのことによって、健康面への被害の心配がなく、被帯電部材の表面をクリーニングするクリーニング部材を省くことが可能であり、また、高圧電源の必要もないので、非常に小型で、低コストな帯電装置を提供することができ、もって本発明に係る帯電装置を装備した、長期にわたって良好な画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態である帯電装置2により、被帯電部材1の表面を帯電している様子を模式的に表している。帯電装置2は、導電性液体21とその貯留部23及びガイド部22を有する導電性液体保持容器24を備えている。ガイド部22は導電性液体21を被帯電部材に案内する機能を有し、導電性液体保持容器24の上部開口端を指す。電源3は帯電装置2に接続され、帯電に必要な電圧が印加される。
【0022】
被帯電部材1は、導体基板11に光導電層12が積層された構成のものである。導体基板11は接地されている(図示せず。)。
【0023】
導電性液体保持容器24を構成する材料としては、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエチレンなどの樹脂及びその表面への金属蒸着などが、挙げられるが、好ましくはステンレスである。
【0024】
なお、図1では、帯電装置が被帯電部材1の下側に配置されているが、これに限定するものではない。さらに、図1では図示していないが、被帯電部材1の移動方向に対して帯電装置2の導電性液体が被帯電部材1に接触する位置よりも上流側又は下流側に、被帯電部材と非接触な状態で、液漏れを防止する部材を設けても良い。
【0025】
図2は、貯留部23とガイド部22を備えた導電性液体保持容器24の3つの代表的な形態(a)、(b)、(c)の斜視図の概略を示す図である。
【0026】
形態(a)は、スリット状の開口部を有し、その開口部より導電性液体21が表面張力により開口部から被帯電部材1の方向に凸状になり、被帯電部材1と接触する。
【0027】
また、形態(b)、形態(c)についても同様に開口部から凸状になることで被帯電部材1と接触する。このようにスリット状や複数の穴空き形状とすることで、導電性液体1を保持するのに好ましい形態となっている。
【0028】
形態(a)、(b)においては、スリット状の開口部の開口面積は、使用する導電性液体21の種類及び被帯電部材1の表面状態、導電性液体保持容器24の上部開口端から被帯電部材1表面までの距離(ギャップ)、及び、開口部の開口向き等によっても異なるが、帯電に必要な最低限の幅に若干の余裕をとって、0.5〜10mm×0.5〜1000mmであり、好ましくは1〜5mm×10〜300mmである。
【0029】
形態(c)においては、穴の径は、使用する導電性液体21の種類及び被帯電部材1の表面状態、及び導電性液体保持容器24の上部開口端から被帯電部材1表面までの距離(ギャップ)、及び、開口部の開口向き等によっても異なるが、0.5〜10mmφであり、好ましくは1〜5mmφである。
【0030】
導電性液体保持容器24の上部開口端から被帯電部材1表面までの距離(ギャップ)は、5〜300μmであり、好ましくは10〜200μmである。
【0031】
図3は、本発明の実施形態である画像形成装置の概略図である。被帯電部材1を帯電装置2により、所定の表面電位に一様に帯電し、その後像露光装置4により像露光を行い、被帯電部材1の表面に静電潜像を形成する。現像装置5は、前記静電潜像を現像することにより、トナー画像を被帯電部材1に形成し、その後、転写装置7により転写媒体である転写紙6上にトナー画像を転写する。トナー画像を転写された転写紙は、定着装置により、トナー定着される。※図面に定着ローラ対を図示して下さい。
【0032】
(導電性液体)
導電性液体21について、さらに詳しく説明する。
【0033】
導電性液体21としては、主にイオン交換水として用いられる純水や蒸留水、水道水などの水が用いられる。また、水のイオン濃度を上げるために、電解質を添加しても良く、例えば、炭酸カリウムや炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等を用いることができる。水以外では、電解質を溶解させたアルコールや有機溶剤を用いることができる。導電性液体は、これらに限定されるものではなく、被帯電部材の表面に接し、電圧を印加することで被帯電部材に電荷を注入できる程度の導電率を持つ液体であれば、いずれでも用いることができる。
【0034】
(被帯電部材)
被帯電部材1としては、公知の有機感光体または無機感光体を用いることができる。また、被帯電部材1の表面は、導電性液体21との接触角を大きくするための表面処理を行うのが好ましい。接触角が小さいと被帯電部材1の回転にともない導電性液体21が引っ張られ、導電性液体21は導電性液体保持容器24のガイド部22から分離する。分離された導電性液体21は、次の工程である露光部、現像部、転写部で悪影響を与え、画像欠陥の原因となる。このため、導電性液体21と被帯電部材1との接触角は重要な因子となり、100度以上とすることが必須である。
【0035】
導電性液体21と被帯電部材1との接触角を100度以上とするための被帯電部材1の表面処理方法として、被帯電部材1の光導電層12の表面に含フッ素樹脂粒子を露出する方法が用いられる。
【0036】
好ましい含フッ素樹脂粒子は、含フッ素重合性モノマーの重合体からなる粒子、または含フッ素重合性モノマーとフッ素フリー重合性モノマーとの共重合体からなる粒子である。代表的な含フッ素重合性モノマーは一般式;
【0037】
【化1】

【0038】
(式中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基又はトリフルオロメチル基である。ただし、R3、R4、R5及びR6の少なくとも一つはフッ素原子である。)で表される。好ましい含フッ素重合性モノマーとして、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレンである。
【0039】
前記の一般式で表される以外の含フッ素重合性モノマーとしては、フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、二フッ化二塩化エチレン等が挙げられる。含フッ素重合性モノマーとして、2種類以上のモノマーが使用されてもよい。
【0040】
フッ素フリー重合性モノマーとして、例えば、塩化ビニル等が挙げられる。フッ素フリー重合性モノマーとして、2種類以上のモノマーが使用されてもよい。
【0041】
含フッ素樹脂粒子の好ましい具体例として、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)が挙げられる。
【0042】
含フッ素樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は、分散性及び耐摩耗性のさらなる向上の観点から、100000〜5000000、好ましくは100000〜1000000が好適である。含フッ素樹脂粒子の平均粒径は、表面層の透明性確保の観点から、0.4μm以下、好ましくは0.01μm以上0.4μm以下、より好ましくは0.05μm以上0.3μm以下が好適である。
【0043】
これらの含フッ素樹脂粒子は、バインダー樹脂とともに光導電層12に分散させることができる。
【0044】
分散の方法としては、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ホモジナイザー、ナノマイザー、ペイントシェイカー、超音波等が使用される。分散時には、補助的にフッ素系の界面活性剤、グラフトポリマー、カップリング剤等を用いてもよい。
【0045】
分散に用いるバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリアリルエーテル、ポリアセタール、ナイロン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。更に、反応性のエポキシ、アクリルモノマーやオリゴマーも混合後硬化して用いることが可能である。
【0046】
次にこのようなフッ素樹脂粉体を用い、導電性液体21と被帯電部材1との接触角を100度以上とした光導電層12の作製方法について説明する。
【0047】
光導電層12は、単層または積層構造を有する。単層構造の場合、光キャリアの生成及び移動は同一層中で行われ、前記含フッ素樹脂粒子はこの層に含有される。積層構造の場合、光キャリアを生成する電荷発生層と、キャリアが移動する電荷輸送層とが積層される。表面層を形成するのは電荷発生層または、電荷輸送層どちらの場合もある。いずれの場合であっても、前記含フッ素樹脂粒子は最表面層を形成する層に含有される。光導電層12は5〜100μmの厚さが可能であり、より好ましくは10〜60μmである。単層構造の場合は、電荷発生材料や電荷輸送材料は20〜80質量%含有し、より好ましくは30〜70質量%である。積層構造の場合は、電荷発生層の膜厚は0.001〜6μm、より好ましくは0.01〜2μmである。電荷発生材料の量は10〜100質量%、より好ましくは40〜100質量%である。電荷輸送層の膜厚は5〜100μm、より好ましくは10〜60μmである。電荷輸送材料の量は20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
【0048】
電荷発生材料としては、フタロシアニン顔料、多環キノン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、アズレニウム塩染料、スクアリリウム染料、シアニン染料、ピリリウム染料、チオピリリウム染料、キサンテン色素、キノンイミン色素、トリフェニルメタン色素、スチリル色素、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等が挙げられる。
【0049】
電荷輸送材料としては、ピレン化合物、カルバゾール化合物、ヒドラゾン化合物、N,N−ジアルキルアニリン化合物、ジフェニルアミン化合物、トリフェニルアミン化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物等が挙げられる。
【0050】
被帯電部材1は、光導電層12の上に保護層を積層してもよい。保護層の膜厚は0.01〜20μmが可能であり、より好ましくは0.1〜10μmである。保護層には前述した電荷発生材料または電荷輸送材料や、金属及びその酸化物、窒化物、塩、合金、さらにはカーボン等の導電材料等を含有してもよい。この場合、前記フッ素系樹脂粉体は最表面層である保護層にも含まれる。保護層に用いるバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリアリルエーテル、ポリアセタール、ナイロン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。更に、反応性のエポキシ、(メタ)アクリルモノマーやオリゴマーも混合後硬化して用いることが可能である。
【0051】
被帯電部材1に用いられる導体基板11は、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、スズ、アンチモン、インジウム、鉛、亜鉛、金、銀等の金属や合金、あるいはそれらの酸化物やカーボン、導電性樹脂などが使用可能である。形状は円筒形、ベルト状やシート状のものがある。また前記導電性材料は、成型加工される場合もあるが、塗料として塗布したり、蒸着してもよい。
【0052】
導体基板11と感光層との間に下引層を設けてもよい。下引層は主にバインダー樹脂からなるが、前記導電性材料やアクセプターを含有してもよい。下引層を形成するバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリアリルエーテル、ポリアセタール、ナイロン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。
【0053】
電子写真感光体の製造法は、蒸着、塗布などの方法が用いられる。塗布にはバーコーター、ナイフコーター、ロールコーター、アトライター、スプレー、浸漬塗布、静電塗布、粉体塗布等が用いられる。
【0054】
また、被帯電部材1に表面粗さを付与することによっても、導電性液体21と被帯電部材1との接触角を100度以上とすることができる。具体的には、表面粗さが、10点平均粗さが、トナー画像のトナーの体積平均粒径をD50としたとき、0.05μm〜D50/3の範囲にあることが良い。表面粗さと接触角の関係は、明確ではないが、適度な表面粗さを持たせることで、微少な空気層が表面に形成され、そのために接触角が大きくなると考えられる。接触角がトナーの体積平均粒径のD50/3以上になるとトナーが被帯電部材1の表面に残りやすくなり、画像ノイズの原因となる。
【0055】
ここでトナーの体積平均粒径はシスメックス株式会社製のFPIA2100で測定した値である。
【0056】
被帯電部材1の表面を粗す方法としては、ラッピングフィルムによる機械研磨方法がある。ラッピングフィルムに用いられる研磨粒子の粒径を種々用いることにより、十点平均表面粗さを0.05μmからトナー体積平均粒径D50の1/3にすることができる。その他の方法として、フッ素系樹脂粉体の粒径を代えたり、または大粒径のものと混合することで、表面を粗すこともできるが、これに限るものではない。
【0057】
十点平均表面粗さはJIS B 0601−1994による。
【0058】
(現像装置)
次に現像装置5について説明する。現像装置5における現像方式としては、1成分現像方式でも2成分現像方式でも良いが、現像ローラと被帯電部材1とは、非接触の方が良い。これは被帯電部材1へのトナー成分の付着(フィルミング)が、接触現像よりも非接触現像の方が少なく、被帯電部材1の表面の接触角変化が少なくなり、長期にわたって、良好な画像を形成できる。また、現像に使用するトナーは、円形度が0.96以上であることが好ましい。これは、円形度を0.96以上にすることで、被帯電部材1の表面へのトナーのフィルミングが少なくなり、被帯電部材1の表面が長期にわたって、安定した表面を維持できる。その結果、耐久後、帯電装置2から導電性液体21が漏れにくくなり、良好な画像を維持できる。
【0059】
ここで、トナーの円形度はシスメックス株式会社製のFPIA2100で測定した値である。
【0060】
(トナー作製方法)
トナーの作製方法について説明する。トナーの作製方法は、公知の手段である粉砕法や重合法を用いることができる。
【0061】
非磁性1成分用の粉砕法トナーの作製について説明する。粉砕法トナーとしては、樹脂バインダーに顔料、離型剤、荷電制御剤をヘンシェルミキサーで均一混合した後、2軸押し出し機で熔融・混練され、冷却後、粗粉砕−微粉砕工程を経て、分級処理されて得られたトナー母粒子に、さらに、流動性改良剤が外添されて粉砕法トナーとされる。
【0062】
バインダー樹脂としては、公知のトナー用樹脂が使用可能であり、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等が単独又は混合して使用できる。特に、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0063】
着色剤としては、公知のトナー用着色剤が使用可能である。例えば、カーボンブラック、ランプブラック、マグネタイト、チタンブラック、クロムイエロー、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6G、カルコオイルブルー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、マラカイトグリーンレーキ、キノリンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・ブルー5:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の染料および顔料を単独あるいは混合して使用できる。
【0064】
離型剤としては、公知のトナー用離型剤が使用可能である。例えば、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、キャデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等が挙げられる。中でもポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナウバワックス、エステルワックス等を使用することが好ましい。
【0065】
荷電調整剤としては、公知のトナー用荷電調整剤が使用可能である。例えば、オイルブラック、オイルブラックBY、ボントロンS−22(オリエント化学工業(株)製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業(株)製)、サリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土ヶ谷化学工業(株)製)、カリックスアレン系化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物、モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシルカルボン酸系金属錯体、芳香族ジカルボン酸系金属錯体、多糖類等が挙げられる。粉砕法トナーにおける成分比として、バインダー樹脂100質量部に対し、着色剤0.5〜15質量部、好ましくは1〜10質量部、離型剤1〜10質量部、好ましくは2.5〜8質量部、荷電制御剤0.1〜7質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0066】
このようにして得られる粉砕法トナーとしては、体積基準の50%径である体積平均粒径(D50)が5μm〜10μmの範囲であり、好ましくは6μm〜9μmの範囲がよい。
【0067】
この粉砕法トナーは、球形化処理により円形度をアップさせることができる。粉砕したトナーを市販の熱風球形化装置サーフュージングシステムSFS−3型(日本ニューマチック工業(株)製)を使用することで円形度は1.00まで可能である。
【0068】
次に、重合法によるトナーの作製について説明する。重合法トナーとしては、懸濁重合法、乳化重合法等がある。懸濁重合法においては、重合性単量体、着色顔料、離型剤とを、必要により更に、染料、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を添加した混合物を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤(水溶性高分子、難水溶性無機物質)を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒し、重合させて所望の粒子サイズを有する着色重合トナー粒子を形成することができる。また、乳化重合法においては、単量体と離型剤を必要により更に重合開始剤、乳化剤(界面活性剤)などを水中に分散させて重合を行い、次いで凝集過程で着色剤、荷電制御剤と凝集剤(電解質)等を添加することによって所望の粒子サイズを有する着色トナー粒子を形成することができる。重合法トナー作製に用いられる材料において、着色剤、離型剤、荷電制御剤に関しては、前述の粉砕法トナーと同様の材料が使用できる。
【0069】
重合性単量体(モノマー)としては、公知のビニル系モノマーが使用可能であり、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、無水マレイン酸、無水フタル酸、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピレン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルナフタレン等が挙げられる。なお、フッ素含有モノマーとしては、例えば2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン、四フッ化エチレン、トリフルオロプロピレンなどはフッ素原子が負荷電制御に有効であるので使用が可能である。
【0070】
乳化剤(界面活性剤)としては公知のものが使用可能である。例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル等がある。
【0071】
重合開始剤としては、公知のものが使用可能である。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル等がある。
【0072】
凝集剤(電解質)としては、公知のものが使用可能である。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸鉄等が挙げられる。
【0073】
乳化重合法トナーにおける成分比は、重合性モノマー100質量部に対して、重合開始剤は0.03〜2、好ましくは0.1〜1質量部であり、また、界面活性剤0.01〜0.1質量部であり、更に、離型剤は1〜40質量部、好ましくは2〜35質量部であり、更に、荷電制御剤は0.1〜7質量部、好ましくは0.5〜5質量部であり、着色剤は1〜20質量部、好ましくは3〜10質量部であり、更に、凝集剤(電解質)は0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜2質量部である。
【0074】
この重合法トナーにあっても、球形化処理により円形度をアップさせることができる。重合法トナーの円形度の調節法として、乳化重合法は2次粒子の凝集過程で温度と時間を制御することで、円形度を自由に変えることができ、懸濁重合法では、真球のトナーが可能であるため、円形度は0.98〜1.00の範囲となる。
【0075】
このようにして得られる重合法トナーは、体積基準の50%径である体積平均粒径(D50)が4〜9μmの範囲であり、好ましくは4.5〜8μmの範囲がよい。
【0076】
非磁性一成分用トナーは、粉砕法トナーおよび重合法トナーのいずれであっても望ましい円形度は0.96以上、好ましくは0.97以上である。このようにトナーの円形度を0.96以上とすることで、被帯電部材1の表面状態が、長期にわたり安定する。
【0077】
なお、外添剤である流動性改良剤としては、公知の無機および有機のトナー用流動性改良剤が使用可能である。公知の無機および有機のトナー用流動性改良剤としては、例えば、シリカ、二酸化チタン、アルミナ、フッ化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、マグネタイト、二硫化モリブデン、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、チタン酸金属塩、ケイ素金属塩の各微粒子を使用することができる。これらの微粒子はシランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等で疎水化処理して使用することが好ましい。
【0078】
本実施形態においては、図3に示すように被帯電部材1の表面を転写後にクリーニングする装置を有していない。従来のコロナ帯電やローラ帯電等の放電現象を伴う帯電方法では、放電による被帯電部材表面の劣化や放電生成物の付着があるため、クリーニング装置により、表面を研磨する必要があった。しかし、本実施形態では、放電現象を用いていないため表面を研磨する必要がなく、また、トナーに円形度0.96以上のものを使用しているため、転写効率が99%以上あり、実質的に転写残トナーは非常に少ない。さらに、クリーニングブレードやクリーニングローラなどを設けた場合は、被帯電部材1の表面を荒らしすぎるため、帯電装置2の導電性液体21との付着力が働き、液漏れが発生し、画像欠陥が生じる。しかし、本実施形態では、クリーニングブレードなどのクリーニング部材を有しておらず他に被帯電部材1の表面を削るような部材も設けられていないため、このような問題が生じない。
【実施例】
【0079】
以下に本発明のより具体的な実施例について説明する。
【0080】
(実施例1)
図4に本発明の実施例1に用いた、耐久試験装置の概略図を示す。被帯電部材1は、積層構造の有機感光体からなり、導電性支持体の上に、下引き層、電荷発生層、第1電荷輸送層、第2電荷輸送層の順に膜を形成し、第2電荷輸送層に含フッ素樹脂粒子を含有させている。導体基板11には、外径30mm、長さ350mmの円筒状のアルミニウム管を用いた。メタノール90質量部に対して、ポリアミド樹脂(東レ社製:CM8000)5質量部、酸化チタン(石原産業社製:CR−90)5質量部を加え、サンドミルで2時間分散させて下引層用塗液を調製し、この塗液を導電性支持体に浸漬塗布して膜厚2μmの下引層を形成した。
【0081】
次に、テトラヒドロフラン(THF)100質量部に対して、ブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックBX−1)を1質量部、m型チタニルフタロシアニン(東洋インキ製造社製:am−TiOPc)を1質量部加え、これらをサンドミルで5時間分散させて電荷発生層用塗液を調製し、この電荷発生層用塗液を上記の下引層上に浸漬塗布して膜厚が0.2μmになった電荷発生層を形成した。
【0082】
さらに、THF100質量部に対して、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製:K−1300)を10質量部、下記一般式(i);
【0083】
【化2】

【0084】
で表される電荷輸送材料を8質量部、下記一般式(ii);
【0085】
【化3】

【0086】
で表される酸化防止剤0.5質量部、下記一般式(iii);
【0087】
【化4】

【0088】
で表される電子受容物質0.3質量部、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製:KF96、粘度0.01Pa・s)を0.001質量部の割合で溶解させて第1電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを60℃で20分間乾燥させて膜厚が20μmになった第1電荷輸送層を形成した。
【0089】
さらに、THF150質量部に対して、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製:C−1400)を10質量部、上記一般式(i)で表される電荷輸送材料を12質量部、上記一般式(ii)で表される酸化防止剤1質量部、上記一般式(iii)で表される電子受容物質0.1質量部、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製:KF96、粘度0.01Pa・s)を0.001質量部の割合で溶解させた後、PTFEトルエン分散液(喜多村社製:KD600AS、平均粒径0.3μm、PTFE含有量40質量%)40質量部を加え、超音波で30分分散させて第2電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を上記の第1電荷輸送層上にリング塗布方法で塗布し、これを120℃で40分間乾燥させて膜厚が8μmになった第2電荷輸送層を形成した。
【0090】
このようにして作製した有機感光体を帯電装置2により、表面電位500Vになるように帯電した。このときの導電性液体21には、イオン交換機を通した純水を用いた。導電性液体保持容器としてはSUS板で出来た図2(a)のタイプの容器を用いた。導電性液体保持容器に導電性液体を溢れる寸前まで入れた。また、導電性液体保持容器24の上部開口端から有機感光体までのギャップを0.05mmとした。
【0091】
帯電した有機感光体は、表面を一様に露光するイレース部材8により、有機感光体の表面電位をほぼ0Vに減衰させ、再度、帯電装置2により帯電した。有機感光体の周速度を5cm/s、20cm/s、40cm/s、100cm/s、150cm/sの5水準に設定し、初期の帯電装置2からの導電性液体21の液漏れ状態を目視により観察した。
【0092】
液漏れのなかったものを○、液漏れのあるものを×とした。また、作製した有機感光体表面と導電性液体21との接触角は、協和界面科学株式会社製のDropMaster300を用いて測定した。
【0093】
(実施例2)
実施例1において、PTFEトルエン分散液(喜多村社製:KD600AS、平均粒径0.3μm、PTFE含有量40質量%)40質量部の代わりに100質量部加えた以外は、実施例1と同様にして有機感光体を作製し、評価を行った。
【0094】
(比較例1)
実施例1において、PTFEトルエン分散液(喜多村社製:KD600AS、平均粒径0.3μm、PTFE含有量40質量%)を加えなかった以外は、実施例1と同様にして、有機感光体を作製し評価を行った。
【0095】
(比較例2)
実施例1において、PTFEトルエン分散液(喜多村社製:KD600AS、平均粒径0.3μm、PTFE含有量40質量%)40質量部の代わりに20質量部加えた以外は、実施例1と同様にして有機感光体を作製し、評価を行った。
【0096】
これらの結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表1の結果から明らかなように、被帯電部材1と導電性液体21との接触角を100度以上とすることで、システム速度の速い高速領域でも、長期にわたり液漏れの少ない安定した液体帯電を行えることが分る。
【0099】
次に実施例1及び比較例1の有機感光体を用い、有機感光体の周速度を5cm/s、50cm/s、100cm/s、150cm/sの4水準とし、図4に示す耐久試験器により、耐久時間を初期、100時間後、200時間後で帯電装置2からの導電性液体21の液漏れ状態を目視により観察した。200時間後でも液漏れのなかったものを○、初期より液漏れのあるものを××、100時間後液漏れの観察されたものを×、200時間後液漏れを観察されたものを△とした。
【0100】
このときの結果を表2に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
表2の結果から明らかなように、被帯電部材1の周速度を150cm/sにまで上げると耐久時間がやや低下する傾向を示し、被帯電部材1の周速度を100cm/s以下とすることで、長期にわたって、液漏れのない安定した帯電を行うことができる。
【0103】
(実施例3〜6)
実施例1における有機感光体の十点平均表面粗さRzが0.03μm以上、3.0μm以下の範囲に入るように、あらかじめ、ラッピングフィルム(住友スリーエム(株)製、研磨粒子材質は酸化アルミニウム)で、有機感光体の表面を機械研磨した。その結果、Rz=0.03μmの実施例3の感光体、Rz=0.05μmの実施例4の感光体、Rz=2.0μmの実施例5の感光体、Rz=2.5μmの実施例6の4つの感光体を作製した。
【0104】
これらの感光体を図3に示す画像形成装置により、実施例1と同じ帯電装置2を用いて、耐久テストを行った。現像装置としては、非磁性一成分非接触現像方法を用いた。このとき用いたトナーは、粉砕法により作製し、その後熱処理により、球形化処理を行ったもので、体積平均粒径D50が6.0μm、円形度0.97のものを用いた。
【0105】
耐久テスト用の画像としては、A4縦方向の通紙方向で、システム速度30cm/sとし、白黒比5%の網点状の画像を用い、100枚後、10,000枚後、100,000枚後の画像評価を行った。画像評価は、網点画像に像流れが認められるかどうかで判断した。これは、耐久テストにより感光体表面が劣化(トナーのフィルミングや表面粗さ変化等)することで、帯電装置2から導電性液体が漏れ、網点状に潜像が形成されないことから見られる現象である。この潜像を現像後に可視化され、像流れが目視観察された場合を×とした。この結果を表3に示す。
【0106】
【表3】

【0107】
表3の結果から明らかなように、被帯電部材1の表面粗さが0.05μmを下回った場合やトナーの体積平均粒径D50の1/3を超えた場合は、耐冊枚数がやや少なくなる傾向が見られ、被帯電部材1の表面粗さは、0.05μm以上が良く、トナーの体積平均粒径D50の1/3以下が良いことが分る。表面粗さが、トナーの体積平均粒径D50の1/3以上の場合は、トナーが被帯電部材1の表面に捕捉されやすく、そのため液漏れが発生しやすくなっていると考えられる。
【0108】
(実施例7〜9)
実施例4において、粉砕トナーの熱処理条件を代えることで、円形度0.95の実施例7のトナー、円形度0.96の実施例8のトナー、円形度0.98の実施例9のトナーの3つのトナーを作製し、実施例4と同様な耐久テストを行った。
【0109】
この結果を表4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
この表4の結果から、トナーの円形度が0.96を下回ると耐冊枚数が少なくなる傾向が見られ、トナーの円形度は、0.96以上が好ましいと言える。これは、トナーの円形度が低いと、耐久テストともにトナーの一部が被帯電部材1の表面に、よりフィルミングしやすくなるためと考えられる。
【0112】
以上の結果から、本実施形態の帯電装置及び画像形成装置によれば、コロナ放電現象を用いずに、導電性液体に電圧を印加することで、被帯電部材の表面に電荷を注入する注入帯電方式を用いるために、オゾンの発生が全くなく、放電生成物による被帯電部材の表面の汚染もない。このことから、被帯電部材の表面をクリーニング部材などで削る必要がない。また、被帯電部材の表面を適度に荒すことにより、表面の接触角が大きくなり、導電性液体の漏れもなく安定した帯電を行うことができる。さらに、トナーの円形度をある値より大きくすることにより被帯電部材へのトナー成分の付着(フィルミング)がなく、被帯電部材の表面の接触角を安定して維持できる。これらのことによって、健康面への被害の心配がなく、被帯電部材の表面をクリーニングするクリーニング部材を省くことが可能であり、また、高圧電源の必要もないので、非常に小型で、低コストな帯電装置を提供することができ、もって本帯電装置を装備した、長期にわたって良好な画像を形成できる画像形成装置を提供することができると言える。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は本発明に係る帯電装置の実施の形態1を示す模式図である。
【図2】図2は本発明に係る貯留部とガイド部からなる導電性液体の保持部材の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明に係る帯電装置を適用した画像形成装置を示す概略図である。
【図4】図4は帯電装置の耐久試験装置の概略図である。
【符号の説明】
【0114】
1 被帯電部材
11 導体基板
12 光導電層
2 帯電装置
21 導電性液体
22 貯留部
23 ガイド部
3 電源
4 像露光装置
5 現像装置
6 転写紙
7 転写装置
8 イレース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性液体を貯留する貯留部及び前記導電性液体を被帯電部材に案内するガイド部を有する導電性液体保持容器を備え、前記ガイド部を介して前記導電性液体を前記被帯電部材に接触させるとともに、前記導電性液体に電圧を印加することによって前記被帯電部材に帯電を行う帯電装置において、前記被帯電部材と前記導電性液体との接触角を100度以上とし、且つ、前記ガイド部を前記被帯電部材に接触させない状態で前記被帯電部材に帯電を行う位置に配置することを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
トナー画像を担持する像担持体、現像装置、及び帯電装置を備えてなる画像形成装置において、前記帯電装置は、導電性液体を貯留する貯留部及び前記導電性液体を前記像担持体に案内するガイド部を有する導電性液体保持容器を備え、前記ガイド部を介して前記導電性液体を前記像担持体に接触させるとともに、前記導電性液体に電圧を印加することによって前記像担持体に帯電を行う帯電装置であって、前記帯電装置は前記像担持体と前記導電性液体との接触角を100度以上とし、且つ、前記ガイド部を前記像担持体に接触させない状態で前記像担持体に帯電を行う位置に配置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体は前記帯電装置に対し100cm/秒以下の相対速度で回転運動する回転体として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体はその表面の十点平均表面粗さRzが、前記トナー画像のトナーの体積平均粒径をD50としたとき、0.05μm〜D50/3の範囲であることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー画像のトナーの円形度が、0.96以上であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体に形成されたトナー画像を転写媒体に転写する転写装置及び、前記転写媒体に転写されたトナー画像を定着する定着装置を備え、前記像担持体に形成されたトナー画像を転写媒体に転写した後の前記像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材を備えていないことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−91639(P2006−91639A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279135(P2004−279135)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】