説明

帯電装置

【課題】 駆動源を共通化する構成において、立ち上げ時間を短縮しつつもグリッド清掃不良を抑制すること。
【解決手段】 画像形成装置へ電源投入されてから画像形成までに前記清掃部材と前記シャッタを前記コロナ帯電器の開口を開く方向へ第二速度で移動させるように制御すると共に、前記清掃部材と前記シャッタを前記コロナ帯電器の開口を閉じる方向へ前記第二速度よりも遅い第一速度で移動させるように制御する制御手段。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グリッドを清掃する清掃部材と開口を遮蔽するシャッタを備える帯電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置の帯電工程において、コロナ帯電器を用いる構成が知られている。とりわけ感光体の電位を安定させるため、コロナ帯電器のシールドの開口部にグリッド電極が設けられる構成が知られている。
【0003】
ここで、グリッド電極の放電電極側の面には、浮遊したトナーなどの異物(汚れ物質)が蓄積しやすい。このような異物がグリッド電極の内面に局所的に堆積してしまうと、異物が堆積した部位に対応する個所において帯電不良が生じる。
【0004】
そこで、特許文献1には、グリッド電極の内面(放電ワイヤ側)を清掃する清掃装置を設けてグリッド電極に異物が局所的に堆積するのを抑制する構成が開示されている。具体的には、グリッド電極の内面に清掃部材としての清掃ブラシを接触させつつ、清掃ブラシをグリッド電極の長手方向に移動させることで、グリッド電極の内面の清掃を行う構成が開示されている。
【0005】
他方、コロナ帯電器は感光体を帯電するに際して、オゾンOや窒素酸化物NO等の放電生成物を生成することが知られている。
【0006】
放電生成物が感光体に付着し、付着した放電生成物が吸湿すると、放電生成物が付着した部位の表面抵抗が低下する。このように吸湿した放電生成物が感光体に付着した状態では、画像情報に応じた静電潜像を忠実に形成できない「画像流れ」と呼ばれる画像不良が発生する。
【0007】
そこで、特許文献2には、コロナ帯電器の開口をシャッタで遮蔽することにより画像流れの発生を抑制する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−338797号公報
【特許文献2】特開2007−072212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シャッタは画像形成を行わない夜間や本体電源がOFFの状態において、コロナ帯電器の開口を遮蔽している。画像形成を行うに際しては閉じたシャッタを開く必要がある。当然、ユーザは画像形成装置の立ち上げ時間の短縮を望んでおり、そのためにシャッタを開く速度を速めることが望まれている。
【0010】
他方、シャッタとグリッド清掃部材を共にコロナ帯電器の長手方向へ移動させる構成においては、一つの駆動源(モータ)を用いてシャッタとグリッド清掃部材を移動させることがコスト低減のために好ましい。
【0011】
しかしながら、駆動源を共通化する構成において立ち上げ時間を短縮するためにシャッタを常に素早く開く動作を行うと、清掃部材によるグリッドの清掃が不十分となってしまう。つまり、常にシャッタと清掃部材を画像形成装置の立ち上げ時間の短縮するために速く移動させると、グリッド清掃不良に伴う帯電ムラが生じ、画像不良を招いてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の帯電装置は「グリッドを備えるコロナ帯電器と、前記グリッドを清掃する清掃部材と、前記コロナ帯電器の開口を開閉するシート状のシャッタと、前記清掃部材と前記シャッタを前記コロナ帯電器の長手方向へ共通の駆動源から駆動力により移動させる移動機構と、画像形成装置へ電源投入されてから画像形成までに前記清掃部材と前記シャッタを前記コロナ帯電器の開口を開く方向へ第二速度で移動させるように制御すると共に、前記清掃部材と前記シャッタを前記コロナ帯電器の開口を閉じる方向へ前記第二速度よりも遅い第一速度で移動させるように制御する制御手段と、」を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
駆動源を共通化する構成において、立ち上げ時間を短縮しつつもグリッド清掃不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の概略断面図である。
【図2】コロナ帯電器を説明するための図である。
【図3】コロナ帯電器を説明するための斜視図である。
【図4】画像形成装置に関する制御ブロック図である。
【図5】帯電器シャッタを閉動作に関するフローチャートである。
【図6】帯電器シャッタを開動作に関するフローチャートである。
【図7】グリッド清掃動作に関するフローチャートである。
【図8】帯電器シャッタの開閉動作について説明するための図である。
【図9】清掃ブラシの揺動機構を説明するための図である。
【図10】斜毛処理された清掃ブラシについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施例に係る帯電装置について図を用いて説明する。なお、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、その思想が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、その範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0016】
画像形成装置に概略を説明した後、コロナ帯電器の構成について詳しく説明する。
【0017】
§1.{画像形成装置の概略構成に関する説明}
図1は本実施例の画像形成装置の概略構成を説明するための図である。本例の像担持体として感光ドラム1は、円筒状(ドラム型)の電子写真感光体である。感光ドラム1は、直径が84mmであり、中心軸(不図示)を中心に500mm/secのプロセススピード(周速度)で回転駆動される。
【0018】
本実施例の帯電装置はコロナ帯電器2あり、放電電極として放電ワイヤと電位調整精度を高くするグリッド電極を備える。また、放電ワイヤ及びグリッド電極はそれぞれ、付着する物質を清掃する清掃部材を備える。また、コロナ帯電器はシールドの開口を覆うシャッタを備える。帯電装置の詳細な構成については後に詳述する。
【0019】
コロナ帯電器で帯電された感光ドラム1は露光手段としてのレーザースキャナにより露光され静電像が形成される。そして、トナーを収容する現像手段4としての現像器よって静電像はトナー像に現像される。感光体上に現像されたトナー像は転写手段としての転写ローラ5と感光ドラムのニップ部(転写部)において記録材P上へ転写される。転写されずに像担持体上に残留した転写残トナーは感光体回転方向において転写部の下流側に配置されたクリーニングブレード6により除去される。
【0020】
記録材上にされたトナー像は搬送ローラによって挟持搬送され、不図示の定着装置で加熱定着される。そして、定着処理を受けた記録材Pは機外へと排出される。
【0021】
§2.{コロナ帯電器の詳細な説明}
続いて、本実施例に係る帯電装置の構成について図2を用いて詳しく説明する。図2の(a)、(b)、(c)はそれぞれコロナ帯電器の側面図、俯瞰図、断面図である。また、図3の(a)はコロナ帯電器の斜視図である。
【0022】
■(コロナ帯電器の基本構成について)
図2の(c)に示すように、コロナ帯電器2は、放電ワイヤ2hと、これを囲むように設けられたコの字状のシールド2bと、シールドの開口部に設置されたグリッド電極2aと、を備える(スコロトロンタイプ)。本実施例において、グリッド電極2aは、平板状のエッジンググリッドを用いた。
【0023】
また、コロナ帯電器の放電ワイヤ2hには高圧電源S1から高圧電圧が印加される。同様に、グリッド電極には高圧電源S2から高圧電圧が印加される。
【0024】
なお、図2の(a)側面図からも明らかなように、コロナ帯電器2は感光体1の母線に沿って対向配置され、コロナ帯電器2の長手方向は感光体1の軸線方向と略平行な関係となっている。
【0025】
■(清掃部材及びシャッタについて)
続いて、清掃部材について説明する。図2の(a)、(b)に示すように、本実施例のコロナ帯電器は、放電ワイヤ2hを清掃する清掃パット11aを備える。また、グリッド電極2aを清掃する清掃部材としての清掃ブラシ14を備える。
【0026】
清掃パット11aと清掃ブラシ14は駆動モータMの駆動を受けて回転する駆動スクリュ12bによって、コロナ帯電器の長手方向に移動する。図3の(b)に示すように、グリッド2aを清掃する清掃ブラシ14はグリッド電極2aの放電ワイヤ側の面と接触してグリッド電極を清掃する。
【0027】
本実施例において、ワイヤ清掃部材としての清掃パッド11aはスポンジを用い、ワイヤ2hを両側から挟むように配置した。また、グリッド清掃部材としての清掃ブラシ14は、アクリル系ブラシを難燃化処理し、基布に織り込んだものを使用した。なお、これ以外にも、清掃ブラシの材料として、ナイロン、PVC(ポリ塩化ビニル)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等を用いてもよい。また、植毛系に限らず、フェルト、スポンジのようなパット(弾性体)や、アルミナ、炭化珪素などの研磨剤を塗布したシートを使用しても良い。
【0028】
また、本実施例の帯電装置はコロナ帯電器の開口を遮蔽(開閉)するシート状のシャッタとしての帯電器シャッタ10を備える。なお、帯電器シャッタの短手方向の幅はコロナ帯電器の短手方向の幅よりも広い。また、本実施例の帯電器シャッタ10はレーヨン製の厚み30μmの不織布を用いた。なお、帯電器シャッタはシート状であれば、ナイロン繊維を編んだものや、ウレタンやポリエステルを用いたフィルムを用いてもよい。この帯電器シャッタは清掃ブラシ14と同じく、シャッタの先端を支持するキャリッジ駆動スクリュ12bが回転することによりコロナ帯電器の長手方向へ移動する。
【0029】
■(移動機構について)
図2の(a)に示すように、清掃パット11a、清掃ブラシ14、帯電器シャッタ10は駆動モータMの駆動を受けて一体にコロナ帯電器長手方向に移動する。また、帯電器シャッタ10の先端を保持して移動する移動部材(キャリッジ)12aは、清掃ブラシ14及び清掃パット11aが感光体と直接対向しないように帯電器シャッタにより遮蔽するように構成されている。また、帯電器シャッタ10と清掃パッド11aと清掃ブラシ14の移動を、共通のモータから駆動力を与えることにより駆動源(モータ)の数を減らしている。なお、シャッタ等の移動方向は駆動モータMを正回転と逆回転を切り替えることで開方向と閉方向の両方を取り得る。また、駆動モータMへの電力を変更することによりキャリッジの移動速度を可変にしている。
【0030】
本実施例において帯電器シャッタ10は開口開方向に移動するように巻取り部材としての巻取りローラで巻き取られるように付勢されている。具体的には、巻取りローラ内部にある付勢手段としての不図示のゼンマイバネにより図2の(a)の時計周り方向(シャッタ閉方向)に力が常に働くように構成されている。
【0031】
また、一定以上の力(張力)が帯電器シャッタ10に付与さないように不図示のトルクリミッターを備える。これにより、帯電器シャッタ10でコロナ帯電器の開口を閉じる際に、帯電器シャッタ10が下方に垂れ下がることを抑制しながら、帯電器シャッタ10を巻取りローラで巻き取ることができる。
【0032】
同様に、帯電器シャッタ10によって開口を遮蔽した状態(閉状態)において、帯電器シャッタ10が移動しない程度の力が加わることで、帯電器シャッタが垂れ下がることを抑制する。このように、帯電器シャッタにコロナ帯電器長手方向のテンション(張力)を加えることで、帯電器シャッタ10とコロナ帯電器2との隙間からコロナ生成物が外側に漏れにくい状態を維持することができる。
【0033】
§3.{シャッタの開閉動作に関する説明}
帯電器シャッタ10の開閉やワイヤ及びグリッドの清掃シーケンスについて図5、図6、図7に記載のフローチャートを用いて説明する。まず、画像形成装置の各部を制御するブロック図について図4を用いて説明し、続いて制御手順についてフローチャートを用いて説明する。
【0034】
■(ブロック図について)
図4は本実施例の制御装置300を説明するための制御ブロック図である。制御装置300は高圧制御部301、モータ制御部302、カウンタ303、メモリ304、タイマ305を備える。そして、制御装置300は画像形成部が備える各部を制御する。具体的には、高圧制御部301で高圧電源S1、S2を制御して、印加する電圧やON/OFF等を制御する。同様に、モータ制御部302により駆動モータMが回転駆動を制御し、駆動スクリュ12bを回転駆動させる。
【0035】
また、制御装置は記憶部としてのメモリ304を備え、各制御部はメモリ304に記録されたプログラムに従い各部を制御する。さらに、制御装置300は画像形成枚数をカウントするカウンタ303を備え、カウント値を参照して条件に応じた動作を実行する。また、時間をカウントするタイマ305の出力に基づきシャッタの開閉を予測する。
【0036】
さらに、タイマ305を用いる場合よりも正確にシャッタの開閉を検知するためにコロナ帯電器の開口両端部に、位置センサS3を設けてもよい。位置センサS3を備える構成では、制御装置300は位置センサS3からの出力に基づきシャッタの開閉や清掃ブラシの位置等を把握することができる。
【0037】
■(帯電器シャッタの開閉動作について)
続いて、帯電器シャッタによるコロナ帯電器の開口の開閉動作シーケンスについてフローチャートを用いて説明する。図5及び図6は帯電器シャッタの開閉動作シーケンスを説明するためのフローチャートである。図5は帯電器シャッタを閉じる際の、図6は帯電器シャッタを開く際の動作を説明するためのフローチャートである。
【0038】
近年、画像流れの原因となる放電生成物が感光体へ付着することを防止するために、画像形成装置が休止(OFF)状態において、コロナ帯電器の開口をシャッタで遮蔽する構成が採用されている。シャッタが閉じた状態であれば、画像形成を行うことも各種画像形成条件を調整するための調整動作のために感光ドラムを回転させることも出来ない。
【0039】
一方、ユーザは電源投入から印刷物が出力されるまでの待ち時間が短くなることを望んでいる。そのため、シャッタを素早く開くことが要求されている。以下に、シャッタの開閉についてフローチャートを用いて説明する。
【0040】
■(帯電器シャッタ閉動作について)
帯電器シャッタ10を閉める場合の動作を図5の(a)に示すフローチャートを用いて説明する。画像形成終了後にコロナ帯電器の開口が長期間開放状態であると放電生成物が感光体に付着する。付着した放電生成物は環境中の水分により画像流れという画像不良を引き起こす。このような画像不良を抑制するために、コロナ帯電器の開口を帯電器シャッタ10で閉める制御を行う。
【0041】
具体的には、制御装置300は画像形成が終了の信号が制御装置300に入ったかを判断する(S101)。なお、画像形成終了から所定時間にタイマ305でカウントした後に帯電器シャッタを閉める動作を採用してもよい。つまり、制御手段は画像形成終了から所定時間(0秒後を含む)経過した際に、帯電器シャッタ10を閉じる(S102)に移行する。
【0042】
制御装置300が画像形成終了信号を受信した場合、モータ制御部302は駆動モータを駆動させて帯電器シャッタ10とグリッド清掃部材14をコロナ帯電器の開口閉方向に移動させる(S102)。そして、帯電器シャッタ10とグリッド清掃部材14が待機場所とは逆側の位置(図2の(a)の左端:シャッタ閉位置)になるまで、グリッド清掃部材14と帯電器シャッタ10を第一速度で移動させる(S103)。記憶部304にある駆動モータを駆動させる時間(本実施例では、所定時間は5秒である。)になると、モータ制御部302が、駆動モータMを停止させ、帯電器シャッタの閉動作を終了する(S104)。
なお、帯電器シャッタの閉動作完了の検知は、帯電器シャッタの待機場所(シャッタ開位置)とは逆側の位置(シャッタ閉位置)に端部位置センサS3を設けていってもよい。これにより、確実にシャッタが閉まっていることが検知でき、さらに時間の短縮にもなる。図5の(b)に示すフローチャートを用いて説明する。
【0043】
具体的には、帯電器シャッタ10とグリッド清掃部材14が待機場所とは逆側の位置(図2の(a)の左端:シャッタ閉位置)になるまで、グリッド清掃部材14と帯電器シャッタ10を第一速度で移動させる(S103)。帯電器シャッタとグリッド清掃部材が待機場所とは逆側の位置に受光部と発光部を有する光学センサである端部位置センサS3を設ける。また、この受光部と発光部の間に入る突起部材を、帯電器シャッタ10の先端を保持して移動する移動部材12aに設ける。この突起部材が光学センサの受光部と発光部の間に入ると、帯電器シャッタとグリッド清掃部材が待機場所とは逆側の位置に到達したことを検知することができる。また、待機場所とは逆側の位置に到達したことを検知すると、モータ制御部302は駆動モータMに対して停止信号を送り、帯電器シャッタの閉動作を終了する(S114)。
【0044】
■(帯電器シャッタ開き動作について)
次に、帯電器シャッタ10を開ける動作を図6の(a)に示すフローチャートを用いて説明する。帯電装置2と感光体1との間に帯電器シャッタ10が存在すると、コロナ帯電器から感光体1へ電荷を与えることができない。そのため、感光体に帯電する(画像形成を行う)に際して、制御装置300は帯電器シャッタを開くように制御する。
【0045】
具体的には、帯電動作が始まる信号(画像形成開始信号)を制御装置300が受けると(S201)、以下のシーケンスを実行する。つまり、帯電動作が始まる信号を受けモータ制御部302は、駆動モータMを駆動させて帯電器シャッタ10とグリッド清掃部材14をコロナ帯電器の開口開方向に移動させる(S202)。帯電器シャッタとグリッド清掃部材が待機場所(図2の(a)の右端:シャッタ開位置)になるまで、グリッド清掃部材と帯電器シャッタを第一速度よりも速い第二速度で移動させる(S203)。記憶部304にある駆動モータを駆動させる時間(本実施例では、所定時間は4秒である。)になるになると、モータ制御部302から駆動モータMに停止信号が入り、駆動モータを停止させ、帯電器シャッタの開動作を終了する(S204)。
【0046】
なお本実施例において、帯電が始まる前に帯電器シャッタを開ける動作について説明したが、感光体1が回る前に帯電器シャッタ10を開けた方が良い。これは、帯電器シャッタ10が閉まっている状態で感光体1を回転させると、帯電器シャッタ10が感光体に巻き込まれてしまい、感光体を傷つける可能性があるためである。
【0047】
また、本実施例では、駆動モータを駆動させる時間を設定して、駆動モータMに停止信号を入れて、駆動モータを停止させていた。しかし、光学センサを用いて制御することで、確実にシャッタが開いたことが検知でき、さらに時間の短縮にもなる。図6の(b)に示すフローチャートを用いて説明する。
【0048】
具体的には、帯電器シャッタとグリッド清掃部材が待機場所(図2の(a)の右端:シャッタ開位置)になるまで、グリッド清掃部材と帯電器シャッタを第一速度よりも速い第二速度で移動させる(S203)。帯電器シャッタとグリッド清掃部材が待機場所に受光部と発光部を有する光学センサが設けられている。また、この受光部と発光部の間に入る突起部材を、帯電器シャッタ10の先端を保持して移動する移動部材12aに設ける。この突起部材が光学センサの受光部と発光部の間に入ると、帯電器シャッタとグリッド清掃部材が待機場所に到達したことを検知することができる。また、待機場所に到達したことを検知すると、モータ制御部302は駆動モータMへ停止信号を送信し、帯電器シャッタの開動作を終了する(S214)。
【0049】
■(清掃動作について)
続いて、グリッド清掃時の動作を図7に示すフローチャートを用いて説明する。なお、本実施例においてグリッド清掃部材と帯電シャッタは共通の駆動モータMによって移動する構成を採用している。そのため、上述の帯電シャッタの開閉動作に連動してグリッド清掃部材も移動する。
【0050】
本実施例では、グリッドの清掃を所定の画像形成枚数毎に実行する。具体的には、画像形成の枚数を制御装置300にあるカウンタ303でカウントし(S301)、記憶部304に記憶されている所定枚数(本例では、1000枚)に設定された枚数に到達したかどうかを判断する(S302)。所定枚数に到達していれば、モータ制御302から帯電器シャッタ10とグリッド清掃部材14の駆動モータMを駆動させる(S303)。帯電器シャッタとグリッド清掃部材が待機場所とは逆側の位置(図2の(a)の左端:シャッタ閉位置)になるまで、グリッド清掃部材と帯電器シャッタを第一速度で移動させる(S304)。
【0051】
なお、グリッドを清掃する場合には、グリッド清掃に適した速度であればよく第二速度よりも遅い速度であれば第一速度に限るものではない。
【0052】
その後、記憶部304にある駆動モータを駆動させる時間(本実施例では、所定時間は5秒である。)になると、モータ制御部302から駆動モータMに停止信号が入る。停止信号を受け駆動モータは停止し、帯電器シャッタの閉動作を終了する(S305)。
【0053】
その後、モータ制御部302から駆動モータMに逆方向に回転させる信号が入り、モータ制御302から帯電器シャッタ10とグリッド清掃部材14の駆動モータMを逆回転に駆動させる(S306)。帯電器シャッタとグリッド清掃部材が待機場所(シャッタ開位置)になるまで、グリッド清掃部材と帯電器シャッタを第一速度で移動させる(S307)。記憶部304にある駆動モータを駆動させる時間(本実施例では、所定時間は4秒である。)になるになると、モータ制御部302から駆動モータMに停止信号が入り、駆動モータを停止させ、帯電器シャッタの開動作を終了する(S308)。なお、本実施例では時間で説明したが、時間のかわりに端部位置センサS3の出力に基づき制御を行ってもよい。制御部300のカウンタ303にある画像形成の枚数を数えていたカウントデータがリセットされ(S309)、再度、カウントが加算されていく。
【0054】
上記の動作シーケンスより、作像中などで付着するグリッドの汚れによる帯電不良の発生を抑え、長期間に渡って高品質な画像を得ることができる。また、グリッド清掃について記載したが、放電ワイヤの清掃部材も同時に動くことから、ワイヤ清掃も行われており、ワイヤ汚れによる帯電不良の発生も抑えられる。
【0055】
また、本実施例では、駆動モータを駆動させる時間を設定して、駆動モータMに停止信号を入れて、駆動モータを停止させていた。しかし、光学センサを用いて制御するのも良く、これにより、確実にシャッタが開いたことが検知でき、さらに時間の短縮にもなる。
【0056】
■(シャッタ開時の高速化について)
図2に示すように、帯電器シャッタ10と感光体1とは非常に近接している。そのために、帯電器シャッタ10が閉じた状態で感光体1を回転させようとすると、その回転に伴って帯電器シャッタ10が引きずられ破損の恐れがある。そのため、帯電器シャッタ10が完全に開きるまでは感光体1の回転を開始することはできない。
【0057】
一方、本体電源切時、又は本体が長期停止した状況においては、画像流れ対策により帯電器シャッタ10は閉じられている。そして、本体電源投入、若しくは使用再開により本体が稼働した時は、まず帯電器シャッタ10を開ける作業に移り、その後に画像制御などを実施する。その際、帯電器シャッタ10が完全に開いてから感光体1は回転を開始する。
このような条件においては、帯電器シャッタを開けるまではその他の制御を実施できずその結果、出力準備OKの状態になるまでの時間が長くなる。
【0058】
そこで、帯電器シャッタ10が閉じている状態から開く時(S203)には、駆動モータMの単位時間当たりの回転数を増やし、回転部材13の回転数を増やすことで移動部材12を第一速度よりも速い第二速度で移動させる。具体的には、駆動モータMがDCモータである場合には、ワイヤ清掃時(第一速度)にはDCモータに12Vを印加し、シャッタを開く時(第二速度)のみ24VをDCモータに印加する。これにより、シャッタの開く時間が10秒から5秒に短縮することが可能となった。
【0059】
なお、開口を閉める方向と開く方向の両方向とも清掃ブラシを移動させる速度を5秒にすることが考えられる。しかし、ブラシを高速で動かすとブラシが摩耗しやすくなったり、グリッドを十分に清掃できなかったりする恐れがある。そのため本実施例では、画像形成装置の電源が投入されてから画像形成可能な状態にするためにシャッタを開方向へと移動させるときにのみ第二速度で移動させた。
【0060】
■(グリッド清掃部材の揺動機構について)
上述のように、清掃ブラシの移動速度を速くした場合、図3に示すような切れ目のあるグリッドの切れ目に清掃ブラシの毛体14が引っ掛かり、毛抜けや毛切れが発生する。この切れた毛体がグリッドに残ることで発生する帯電不良、この切れた毛体が現像器内に入り込んで発生する現像剤のコート不良などの画像不良が発生する恐れがある。
【0061】
そこで、本発明は、図9の(a)に示すように、グリッド清掃部材の進行方向に対して垂直な方向に揺動軸を持ち、グリッド清掃部材としての清掃ブラシを進行方向に揺動可能に支持した。具体的には、図9の(b)のように進行方向に揺動することで、グリッド清掃部材の毛体が傾き、グリッドの切れ目に引っ掛からないようにすることができる。このため、毛抜けや毛切れによる画像不良を抑制することができる。
【0062】
ここで、揺動機構について図9の(c)を用いて詳しく説明する。清掃ブラシは軸12cを中心に回動可能である。ここで、軸12cには軸の回転を規制するためのピン12zが設けられている。ピン12zは軸12cの回転角度が所定角度を超えないように規制する規制ブロック12x、12yと当接することにより、清掃ブラシが過剰に移動しないように清掃ブラシの揺動を規制する。ここで、前述のように休止状態の画像形成装置を画像形成に清掃ブラシは第一速度よりも速い第二速度で移動する。そのため、シャッタを閉じる方向へ移動させる際にはブラシの毛体保護よりもグリッドを清掃させたい。そのため、清掃ブラシがシャッタを閉じる方向へ移動するときに揺動可能な角度(図9中のα)は清掃ブラシがシャッタを開く方向へ移動するときに揺動可能な角度
(図9中のβ)よりも大きくなるように規制ブロックは配置される。
【0063】
シャッタ開時のみの高速化について記述したが、シャッタを閉じる方向へ移動させる場合においてもブラシは揺動可能であるためシャッタ閉じ時にもブラシを高速に移動させることが可能である。ここで、揺動可能に清掃ブラシを支持すると、ブラシの毛体が切れる可能性が低減できる半面、グリッドとブラシの当接関係が清掃に好ましい位置関係を保てない。そのため、帯電器シャッタが閉→開方向へ移動する場合に揺動可能に清掃部材を支持し、開→閉方向へ移動する場合には揺動しないよう規制ブロック12yを配置してもよい。
【0064】
グリッドを清掃する清掃ブラシを揺動可能にする機構を備えることで、閉方向へグリッドと接触したブラシを等速度(所定速度)で移動させ続けるために要する力と、開方向へグリッドと接触したブラシを等速度(閉方向と同一の所定速度)で移動させ続けるために要する力は異なる。具体的には、開方向へグリッドと接触したブラシを等速度で移動させ続ける際には、ブラシは大きく揺動するため、ブラシが揺動しない場合と比べてブラシを移動させやすくなる。言い換えれば、大きく揺動することによりグリッドの隙間にブラシの毛体が挟まりにくくなるため、ブラシの移動速度を高めてもブラシの摩耗を抑制することが出来る。
【0065】
■(比較実験の結果)
グリッド清掃部材の進行方向に対して垂直な方向に揺動軸を持ち、グリッド清掃部材の進行方向に揺動させる構成の有無による画像不良の発生状況を確認した。実験条件としては、グリッド清掃部材の移動を往復し、その後、画像で画像不良の有無を確認した。この作業を繰り返し行い、画像上に画像不良が発生するまで評価をいった。その結果、従来の揺動をしないグリッド清掃部材を用いた場合に比べ、本発明である揺動するグリッド清掃部材を用いた場合の方が、2倍以上の繰り返し動作に耐えうる結果となった。
【0066】
これにより、シャッタの移動速度を速くしても、グリッド清掃部材の毛体による毛抜けや毛切れによって起こる画像不良を抑制することが可能となった。
【0067】
当然、開閉両方向へ揺動可能に清掃部材を支持する機構を採用すれば、シャッタを開ける速度だけではなく、シャッタを閉める速度も速くなり、ユーザの利便性が向上させることができる。
【実施例2】
【0068】
以下に本実施例について説明する。なお、同一の構成については同一符号を付すことにより重複する説明は適宜省略する。
【0069】
実施例1で述べたように、グリッド清掃部材の進行方向に揺動させることで、グリッド清掃部材の毛体が傾き、毛抜けや毛切れを抑制している。しかし、実施例1では、グリッド清掃部材の構成が複雑になる。
【0070】
そこで、本実施例では図10の(a)のように、グリッドと接触していない状態で、グリッド清掃部材の毛体が傾いているブラシを用いた。このグリッド清掃部材を取り付ける際は、グリッド清掃部材の毛体の先端を、図10の(b)のように、シャッタが開く方向とは逆方向に向いている構成を採用した。
【0071】
これにより、シャッタを閉める速度は従来通りだが、シャッタを開ける速度を速くしつつ、毛抜けや毛切れによる画像不良を抑制することが可能となった。
【0072】
図10の(c)は斜毛処理したブラシをシャッタ閉方向へと移動させたときのブラシの状態を説明するための図である。ブラシに斜毛処理を施していたとしても、シャッタを閉める方向へ移動させる場合にはブラシの毛体はグリッドにより斜毛処理を施した方向と逆方向へ傾く。このとき、ブラシとグリッドの間の圧力は高くなり、グリッドへの摺擦力が増し、グリッドへの清掃能力が上がる。また、毛抜けや毛切れに関しては、グリッド清掃部材の移動速度が遅い分、グリッドの切れ目に引っ掛かった際の負荷が小さいために、画像不良が発生しない。
【0073】
これにより、シャッタが開く方向の移動速度を速くしても、グリッド清掃部材の毛体による毛抜けや毛切れによって起こる画像不良を抑制することが可能となった。また、シャッタを開ける速度だけでも早くなり、ユーザの利便性が向上する。
【0074】
このように清掃ブラシを斜毛処理することにより、シャッタを開く方向へグリッドと接触したブラシを等速度(所定速度)で移動させ続けるために要する力は、シャッタを閉じる方向へグリッドと接触したブラシを等速度(閉方向と同一の所定速度)で移動させ続けるために要する力よりも小さくすることが出来た。
【0075】
■(グリッド清掃ブラシの斜毛処理方法について)
本実施例のグリッド清掃部材は、ナイロン等の毛体を熱処理により斜毛処理を施した。当然、ブラシの斜毛処理方法はブラシに用いる毛体の材質に応じて適切に選択すればよく熱処理に限るものではない。
【0076】
■(他の清掃部材について)
ユーザの利便性を向上するために閉じた帯電器シャッタを開くような構成において、グリッドとグリッドを清掃する部材の摺擦が強くなることで清掃部材から脱落するケバ等が帯電不良を引き起こすことを課題としている。そのため、帯電器シャッタを閉じた状態から開く際に第二速度で移動させる際にグリッドと清掃部材を離間、付勢力低減等により摺動抵抗を低くすればよい。
【0077】
当然、清掃部材は清掃ブラシを例に挙げたが、グリッドをパットで清掃する場合に適応してもよい。グリッドの清掃にパッドを用いる場合には、摺動抵抗が移動方向に応じて大小関係を持つように表面処理を行ったものを用いる。
【符号の説明】
【0078】
1 感光ドラム (像担持体)
2 コロナ帯電器
2b シールド
2a グリッド電極 (調整電極)
2h 放電ワイヤ (放電電極)
14 清掃ブラシ (清掃部材)
10 帯電器シャッタ(シャッタ)
11 巻取り装置(巻取り機構)
300 制御装置(制御手段)
M 駆動モータ(駆動源)
12b スクリュ(共通軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッドを備えるコロナ帯電器と、
前記グリッドを清掃する清掃部材と、
前記コロナ帯電器の開口を開閉するシート状のシャッタと、
前記清掃部材と前記シャッタを前記コロナ帯電器の長手方向へ共通の駆動源から駆動力により移動させる移動機構と、
画像形成装置へ電源投入されてから画像形成までに前記清掃部材と前記シャッタを前記コロナ帯電器の開口を開く方向へ第二速度で移動させるように制御すると共に、
前記清掃部材と前記シャッタを前記コロナ帯電器の開口を閉じる方向へ前記第二速度よりも遅い第一速度で移動させるように制御する制御手段と、を有することを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記清掃部材を前記コロナ帯電器の開口を開く方向へ所定速度で移動させ続けるために要する力は、前記清掃部材を前記コロナ帯電器の開口を閉じる方向へ前記所定速度で移動させ続けるために要する力よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記コロナ帯電器の開口を閉じる方向へ前記清掃部材と前記シャッタを常に第一速度で移動させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−83874(P2013−83874A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224937(P2011−224937)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】