説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】帯電部材の高速での使用や長期の使用において発生するスジ状画像の発生を抑制した帯電部材、プロセスカートリッジ、電子写真装置を提供する。
【解決手段】導電性基体と表面層とを有する帯電部材であって、該表面層はバインダーと該バインダー中に分散されている複合粒子とを含有し、該複合粒子は金属酸化物粒子の表面が樹脂層で被覆された複合粒子であり、該樹脂層は、特定のシリコーン化合物を側鎖に有する樹脂を含むことを特徴とする帯電部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。詳しくは、電圧を印加して像坦持体である電子写真感光体表面を所定の電位に帯電処理するための帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した電子写真装置は、電子写真感光体、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置及び定着装置からなる。帯電装置は、電子写真感光体の表面に接触又は近接配置された帯電部材に電圧(直流電圧のみの電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧)を印加することによって、帯電部材が放電し、電子写真感光体の表面を帯電する方式が多く採用されている。しかしながら、接触式の帯電方式は、帯電均一性に関しては、コロナ放電方式と比較してやや不利であった。
【0003】
帯電均一性を改善する方法として、帯電部材の被覆層に金属酸化物粒子を添加することにより、帯電の不均一による画像欠陥を抑制するという技術が開示されている(特許文献1)。また、電源装置の低コスト化、小型化という観点から、帯電部材への印加電圧は直流電圧のみのDC帯電方式が好んで用いられている。DC帯電方式を採用した電子写真装置においては、帯電部材の微小な放電ムラに起因した微小なスジ状の画像が特に発生し易い傾向がある。これに対して、シランカップリング剤、シリコーンオイルによる疎水化処理を行い、表面層中での分散性を向上させた金属酸化物粒子を帯電部材の表面層に添加することにより、帯電均一性を向上させるという技術が開示されている(特許文献2)。
【0004】
また、水酸基を有する金属酸化物粒子をシランカップリング剤で疎水化処理し、さらに分散性を向上させた金属酸化物粒子を帯電部材の表面層に添加することにより、帯電均一性を向上させるという技術が開示されている(特許文献3)。
【0005】
しかしながら、近年、電子写真装置である複写機やプリンターの高速化、高耐久化に伴い、帯電部材においても、高速使用時や長期使用時の放電特性を更に安定化することが求められている。高速で使用した場合や長期に使用した場合、従来の金属酸化物粒子を添加した帯電部材において、スジ状の画像が発生することがあり、近年の更なる高速化、長寿命化の要求に対してレベルアップが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3284626号公報
【特許文献2】特開2004−4146号公報
【特許文献3】特開2006−293004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、帯電部材の高速での使用や長期の使用において発生するスジ状画像の発生を抑制した帯電部材を提供することである。また、本発明の課題は、高速での使用や長期の使用においても、帯電性能を維持できる高速、長寿命の電子写真装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導電性基体と表面層とを有する帯電部材であって、該表面層はバインダーと該バインダー中に分散されている複合粒子とを含有し、該複合粒子は金属酸化物粒子の表面が樹脂層で被覆された複合粒子であり、該樹脂層は下記式(1)で表わされる構成単位を有する樹脂を含むことを特徴とする帯電部材である。
【0009】
【化1】

【0010】
式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは下記式(2)で表わされる構造を有する基である。
【0011】
【化2】

【0012】
式(2)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基である。aは0または1である。E1、E2およびE3は、各々独立に下記式(3)で表わされる基である。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
式(6)〜式(8)中、R8、R9およびR11は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。
【0017】
【化6】

【0018】
式(3)中、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。Z1は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。
【0019】
R3、R4、R6およびR7は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0020】
Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
式(15)〜式(17)中、R15、R16およびR17は各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは0以上3以下の整数である。
【0025】
【化10】

【0026】
式(18)中、R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【0027】
【化11】

【0028】
式(19)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。Z2は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および上記式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。R19、R20、R22およびR23は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R21は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0029】
X2は水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、式(18)で表わされる基および式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0030】
式(3)においてXが式(19)で表わされる基である場合における式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または式(18)で示す基である。
【0031】
【化12】

【0032】
式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【0033】
【化13】

【0034】
式(21)中、R25、R26およびR27は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【0035】
また本発明は、前記の帯電部材と該帯電部材に接触して配置されている電子写真感光体とが一体化され、電子写真装置本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジである。更に本発明は、前記の帯電部材と、該帯電部材に接触して配置されている電子写真感光体とを有することを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の帯電部材は、高速での使用や長期の使用においても放電ムラに起因したスジ状画像の発生を抑制することができる。これにより、高速での使用や長期の使用においても、帯電性能を維持できる高速、長寿命のプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る帯電部材(帯電ローラ)の断面図である。
【図2】本発明に係るプロセスカートリッジの一実施形態の断面を表す概略図である。
【図3】本発明に係る電子写真装置の一実施形態の断面を表す概略図である。
【図4】帯電ローラの電気抵抗値測定器の概略図であり、図4(a)は測定前の状態、図4(b)は測定時の状態である。
【図5】本発明に係る帯電部材(帯電ローラ)と電子写真感光体との当接状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明者等は、鋭意検討した結果、帯電部材の表面層に、金属酸化物粒子を特定の構造を有する樹脂で被覆した複合粒子を使用することにより、高速で長期に使用しても、放電ムラに起因するスジ状の画像を抑制した帯電部材が得られることを見出した。
【0039】
スジ状画像の発生を抑制できる帯電部材が得られることについて、以下のように推察している。例えば、ローラ状の接触帯電部材(以下、「帯電ローラ」という)は、回転しながら電子写真感光体とニップ部で当接している。帯電ローラの表面は、ニップ部の当接により変形し、ニップ部の通過によって変形が回復し、回転する帯電ローラの表面は変形と回復を繰り返す。式(1)で示される繰り返し単位を有するポリマーは、ビニル重合体の側鎖に、シロキサンデンドリマー構造(ポリシロキサン構造を核とし、シロキサン結合とシルアルキレン結合が交互に配列した高分岐構造)を有し、非常にバルキーな構造を有している。この特異的な構造を有する樹脂により被覆された金属酸化物粒子は、バインダー樹脂との絡み合いが強くなり、高速、長期間の繰り返しの変形によっても、金属酸化物粒子の分散状態の変化が抑制され、帯電部材の帯電性能が維持されるものと考察している。また、本構造を有する樹脂は吸湿性が低く、この樹脂で金属酸化物粒子を被覆することにより、金属酸化物粒子の表面近傍の吸水による可塑化を抑制し、繰り返しの変形による金属酸化物粒子の分散状態の変化を抑制できるものと考察している。
【0040】
<帯電部材の構成>
本発明に係る帯電部材は導電性基体と該導電性基体の上に設けられた表面層とを少なくとも有する。図1に本発明の帯電部材の一例としての概略断面図である。図1(a)は導電性基体1の上に弾性層2を設け、更にその上に表面層3を設けたローラ形状の帯電部材(帯電ローラ)である。図1(b)は弾性層2と表面層1の間に、中間層21を有する帯電ローラである。
【0041】
<表面層の構成>
本発明に係る帯電部材に用いられる表面層はバインダーと該バインダー中に分散されている複合粒子とを含有し、該複合粒子は金属酸化物粒子の表面が樹脂層で被覆された複合粒子であり、該樹脂層は下記式(1)で表わされる構成単位を有する樹脂(以下、適宜「被覆用樹脂」という)を含むことを特徴とする。
【0042】
[被覆用樹脂]
表面層は式(1)で表わされる構成単位を有する樹脂を含んでいる。
【0043】
【化14】

【0044】
式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは式(2)で表わされる構造を有する基である。式(1)で表わされる構成単位を有する樹脂は、ビニル基またはビニル重合体の側鎖に、シロキサンデンドリマー構造を有する。式(1)で示すR1としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基等が例示される。
【0045】
【化15】

【0046】
式(2)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基である。この中でも、下記式(6)、(7)または(8)で示される構造のうちの少なくとも1つであることが更に好ましい。aは0または1である。
【0047】
【化16】

【0048】
【化17】

【0049】
【化18】

【0050】
式(6)〜式(8)中、R8、R9、R11は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基、またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。これらの構造とすることにより、金属酸化物粒子を被覆した際の金属酸化物粒子の安定性を更に高めることが可能になる。
【0051】
R8及びR9としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示され、この中でも、メチレン基、プロピレン基がより好ましい。R10としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が例示され、これらの中でもメチル基がより好ましい。R11としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が例示され、これらの中でもエチレン基がより好ましい。
【0052】
式(2)中、E1、E2およびE3は各々独立に下記式(3)で表わされる基である。
【0053】
【化19】

【0054】
式(3)中、kは0または1である。また、hは0以上3以下の整数である。Z1は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基、および式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。この中でも、炭素原子数2以上6以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基、式(15)〜式(17)で示される基がより好ましい。エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基が例示される。これらの中でも、エチレン基、メチルエチレン基、ヘキシレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基が更に好ましい。
【0055】
【化20】

【0056】
【化21】

【0057】
【化22】

【0058】
式(15)〜式(17)中、R15、R16、およびR17は各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、または、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは0以上3以下の整数である。
【0059】
式(3)においてR3、R4、R6及びR7は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。これらの中でもメチル基が更に好ましい。R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
【0060】
【化23】

【0061】
【化24】

【0062】
式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。式(21)中、R25、R26およびR27は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。
【0063】
式(3)中、Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0064】
【化25】

【0065】
式(18)中、R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。具体例としては、以下のものが挙げられる。メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、シクロブチル、n−ペンチル、tert−アミル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシルのようなアルキル基、フェニル基、ベンジル、メチルベンジルのようなアリールアルキル基、o−トルイル、m−トルイル、p−トルイル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、o−エチルフェニル、m−エチルフェニル、p−エチルフェニルのようなアルキルアリール基。また以下のものが挙げられる。エテニル、1−プロペニル、1−ブテニル、1,3−ブタジニエル、1−ペンテニル、1−シクロペンテニル、2−シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、1−シクロヘキセニル、2,4−シクロヘキサジエニル、2,5−シクロヘキサジエニル、2,4,6−シクロヘプタトリエニル、5−ノルボルネン−2−イルのようなビニル基、アリル基。
【0066】
【化26】

【0067】
式(19)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。Z2は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。R19、R20、R22およびR23は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R21は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、式(20)または式(21)で示される基である。
【0068】
X2は水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、式(18)で表わされる基および式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【0069】
式(3)においてXが式(19)で表わされる基である場合における式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または式(18)で示す基である。
【0070】
ここで、式(3)において、k=0であって、Xが式(19)であり、かつ、式(19)で表わされる基の繰り返しの数が1であるときの式(3)の構造を下記式(22)
に示す。また、当該繰り返しの数が3であるときの式(3)の構造を下記式(23)に示す。
【0071】
【化27】

【0072】
【化28】

【0073】
前記式(3)、式(15)〜式(21)中の各々の基は、E1、E2およびE3において、前記定義を満たしていれば各々異なる基であってもよい。例えば、E1を構成する式(3)中のZ1と、E2を構成する式(3)中のZ1は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および式(15)から式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基であれば、異なっていてもよい。
【0074】
式(3)において、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。kおよびhは0であることが更に好ましい。また、hが0であり、Xが前記式(19)で表わされる基であって、式(19)中、rは0であり、式(19)で表わされる基の繰り返しの数が1以上3以下であることが更に好ましい。これらにより、被覆用樹脂の撥水性を更に向上させることができ、金属酸化物粒子の吸湿を更に抑制できる。
【0075】
被覆用樹脂は、式(1)で示される構成単位を有すると共に、下記式(4)で示される構成単位を有していることがより好ましい。
【0076】
【化29】

【0077】
被覆用樹脂が、式(4)に示されるようなビニル系単量体単位との共重合体の構造を有することにより、金属酸化物粒子の表面を被覆させやすく、また、一旦被覆したものが剥離しにくくなり、金属酸化物粒子の吸湿を抑制する効果が更に強くなる。また、表面層のバインダーとの絡み合いをより強固にし、表面層に応力が加わった際の金属酸化物粒子の僅かな移動が抑制され、結果的に長時間使用し続けても帯電性能の変化が非常に少ない帯電部材を得ることが可能となる。
【0078】
式(4)においてR2は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。R2としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基等が例示される。Jは、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、下記式(9)、(10)、または(11)で示される基である。この中でも、式(9)、(10)または(11)で示される構造であることがより好ましい。
【0079】
【化30】

【0080】
【化31】

【0081】
【化32】

【0082】
式(9)および(10)中、R12及びR13は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、または前記式(11)で示される基である。式(11)中、R14は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。tは1以上3以下の整数である。
【0083】
被覆用樹脂の分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量で10000以上のものが好ましく、より好ましくは20000〜2000000の範囲である。分子量が10000以上の場合、金属酸化物粒子を十分に被覆することができ、好ましい。
【0084】
[被覆用樹脂の製造方法]
被覆用樹脂は、下記式(12)で示される化合物を重合することにより得ることができる。
【0085】
【化33】

【0086】
式(12)中、R1、A、a、E1、E2及びE3は、前記式(1)および式(2)において示したものと同じである。式(12)で示される構造の一例を、式(13)及び式(14)に示す。
【0087】
【化34】

【0088】
【化35】

【0089】
更に、被覆用樹脂は、式(12)で示される化合物と、下記のビニル基を有する化合物を重合反応させることにより得ることができる。ビニル基を有する化合物としては、ラジカル重合性のビニル基を有しており、以下のものが挙げられる。(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの低級アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の芳香族ビニル型単量体、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル型単量体。好ましくは、(メタ)アクリレートであり、その具体例として以下のものが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類である。
【0090】
また、式(12)で示される化合物と、上記ビニル基を有する化合物との混合比率を調整することにより、被覆用樹脂における式(1)で示される繰り返し単位の含有量を調整することができる。
【0091】
被覆用樹脂を得るための重合法としては、ラジカル重合法やイオン重合法が使用される。この中でも、ラジカル重合法がより好ましく、ラジカル重合法の中でも、溶液重合法が更に好ましい。溶液重合は、溶媒中で、式(12)で示される化合物のみ、あるいは、式(12)で示される化合物とビニル基を有する化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下、50℃から150℃の温度条件下で反応させることにより行われる。
【0092】
溶媒としては以下のものが用いられる。ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のオルガノシロキサンオリゴマー等。
【0093】
ラジカル重合開始剤としては、一般にラジカル重合法に使用される従来公知の化合物が用いられ、具体的には以下のものが挙げられる。2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾビス系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等。このラジカル重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体の合計を100質量部とした時、0.1から5質量部の範囲であることが好ましい。
【0094】
また、重合に際しては連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤として具体的には以下のものが挙げられる。2−メルカプトエタノール、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピル基を有するポリジメチルシロキサン等のメルカプト化合物、塩化メチレン、クロロホルム、臭化ブチル、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン化物等。好ましくは、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。このような連鎖移動剤の配合量は、単量体の合計を100質量部とした時、好ましくは、0.001〜15質量部、さらに好ましくは、0.01〜10質量部である。なお、被覆用樹脂を製造する場合、重合後、加熱下、減圧処理して、残存する未反応のビニル系化合物を除去することが好ましい。
【0095】
本発明において、金属酸化物粒子を被覆する物質は、少なくとも式(1)で示すユニットを有する樹脂を含有していればよい。この被覆物質は前記樹脂を50質量%以上含有していることが好ましく、80質量%以上含有していることがより好ましい。
【0096】
[金属酸化物粒子]
本発明の金属酸化物粒子は、絶縁性の金属酸化物からなり、以下のものを挙げることができる。シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等からなる粒子。また、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複合金属酸化物からなる粒子。本発明の金属酸化物粒子は、感光体への放電電荷量を増加させるために、誘電率が高い金属酸化物粒子であることが好ましい。具体的には、誘電率が50以上であることが好ましい。誘電率が50以上である金属酸化物としては、ルチル型酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等を例示することができる。
【0097】
本発明の金属酸化物粒子の平均粒径は10μm未満であることが更に好ましい。10μm未満であれば、被覆層の厚さや表面層の膜厚が変化しても、帯電部材の表面に大きな凸部を形成するおそれがなく、ポチ画像を発生させるおそれもない。
【0098】
[複合粒子]
本発明の複合粒子を構成する金属酸化物粒子と被覆用樹脂との比率は特に制限はないが、被覆用樹脂の含有量は金属酸化物粒子全体を被覆するのに最低限の量以上であればよい。
【0099】
金属酸化物粒子の被覆方法としては、湿式法と乾式法が挙げられる。湿式法としては、被覆用樹脂を可溶な溶剤に溶解して、溶液とした後、この溶液を金属酸化物粒子表面に塗布した後、溶剤を乾燥することによって得る方法が挙げられる。より具体的には、金属酸化物粒子を浮遊流動させながら、樹脂を含有した溶液をスプレーし、金属酸化物粒子表面に樹脂を含有する被覆層を形成させる方法が挙げられる。このような装置として、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー、マルチパーパスミキサー等が挙げられる。
【0100】
乾式法としては、被覆用樹脂を含有する粒子と金属酸化物粒子とを機械的に混合して被覆する方法、機械的衝撃力を利用して金属酸化物粒子を樹脂含有粒子により被覆する方法、被覆用樹脂を含有する粒子と金属酸化物粒子とを機械的に混合した後、加熱することで金属酸化物粒子を被覆する方法等が挙げられる。
【0101】
被覆用樹脂を含有する粒子と金属酸化物粒子とを機械的に混合して被覆する装置としては、例えばメカノミル(岡田精工社製)、メカノフュ−ジョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)等を使用することができる。機械的衝撃力を利用して金属酸化物粒子を被覆用樹脂含有粒子により被覆する装置としては、例えばハイブリダイザ−(奈良機械製作所社製)等を使用することができる。また、加熱処理する装置としては、スピラコ−タ−(岡田精工社製)、サフュ−ジングシステム(日本ニュ−マチック社製)等を使用することができる。
【0102】
[バインダー樹脂]
表面層に用いられるバインダーとしては、公知のバインダーを採用することができる。例えば、樹脂、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムなどのゴム等を挙げることができる。バインダーとしては、感光体やその他の部材を汚染せず離型性が高いという観点から、樹脂製のものが用いられる。樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が使用できる。中でも、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂等がより好ましい。
【0103】
[表面層中のその他の成分]
表面層には、本発明の効果を損なわない範囲で他の粒子を含有させることができる。例えば、帯電部材の電気抵抗値を調整するために、公知の導電剤を含有することができる。
【0104】
電子導電系の導電剤としては、以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀の如き金属系の微粒子や繊維、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛の如き金属酸化物及びこれらに異種金属、異種金属酸化物等をドープした金属酸化物。前記記載の金属系微粒子、繊維及び金属酸化物表面に、電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面処理した複合粒子。ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボンの如きカーボン粉。
【0105】
イオン導電系の導電剤としては以下のものが挙げられる。過塩素酸リチウムの如き無機イオン物質、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドの如き陽イオン性界面活性剤、ラウリルベタインの如き両性イオン界面活性剤、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムの如き第四級アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の有機酸リチウム塩。
【0106】
また、本発明の複合粒子とは別に、絶縁性微粒子を含有させることができる。絶縁性粒子として、以下の高分子化合物からなる粒子を添加することができる。ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、これらの共重合体や変性物、誘導体等の樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーなど。特に、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
【0107】
<表面層>
表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。なお、表面層の膜厚は、ローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0108】
表面層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
【0109】
本発明の帯電部材は、表面の十点平均粗さRzjis(μm)が3≦Rzjis≦30であり、表面の凹凸平均間隔Rsm(μm)が15≦Rsm≦150であることがより好ましい。帯電部材の表面粗さRzjisと表面の凹凸平均間隔Rsmをこの範囲とすることにより、帯電部材と電子写真感光体との接触状態をより安定にすることができる。これにより、感光体を均一に帯電することが容易になるため、より好ましい。
【0110】
表面の十点平均粗さRzjis及び表面の凹凸平均間隔Rsmの測定法を以下に示す。JIS B0601−2001表面粗さの規格に準じて測定し、表面粗さ測定器「SE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて行う。Rzjisは、無作為に帯電部材の6箇所測定し、その平均値で表示する。また、Rsmは、無作為に帯電部材の6箇所選び、各箇所において凹凸間隔を10点測定しその平均値を測定箇所のRsmとし、6箇所の全体の平均値で表示する。
【0111】
[表面層の形成]
表面層は、静電スプレー塗布やディッピング塗布等の塗布法により形成することができる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状又はチューブ形状の層を接着又は被覆することにより形成することもできる。あるいは、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法も用いることができる。この中でも、塗布法によって塗料を塗工し、塗膜を形成することが好ましい。
【0112】
塗布法によって層を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解することができる溶剤であればよい。具体的には以下のものが挙げられる。メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、キシレン等の芳香族化合物など。また、水系の塗料も使用することができる。塗布液に、バインダー樹脂、粒子等を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等の公知の溶液分散手段を用いることができる。
【0113】
<導電性基体>
本発明の帯電部材に用いられる導電性基体は、導電性を有し、その上に設けられる表面層等を支持する機能を有する。材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属やその合金を挙げることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理等を施してもよい。さらに、導電性基体として、樹脂製の基材の表面を金属等で被覆して表面を導電性としたものや導電性樹脂組成物から製造されたものも使用可能である。
【0114】
<弾性層>
弾性層に用いる材料としては、表面層のバインダー樹脂として例示したゴムや樹脂を用いることができる。好ましくは、以下のものが挙げられる。エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、あるいはSBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等の熱可塑性エラストマー。この中でも、電気抵抗値の調整が容易であることから、極性ゴムを用いるのがより好ましい。中でも、エピクロルヒドリンゴム及びNBRを挙げることができる。特にエピクロルヒドリンゴムは、ポリマー自体が中抵抗値領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することができる。また、位置による電気抵抗値のバラツキも小さくすることができるので、高分子弾性体として好適に用いられる。
【0115】
弾性層の体積抵抗率は、23℃、50%RH環境下で、10Ω・cm以上1010Ω・cm以下であることが好ましい。弾性層の体積抵抗率を測定するためには、先ず、弾性層に使用するすべての材料を厚さ1mmのシートに成型し、その両面に金属を蒸着して電極とガード電極を形成した体積抵抗率測定試料を作製する。この試料を用いて、上記表面層の体積抵抗率測定方法と同様にして測定できる。体積抵抗率を調整するため、導電剤を適宜添加することができる。弾性層には、導電性粒子の他に、絶縁性粒子を含有させても良い。
【0116】
また、弾性層には、硬度等を調整するために、軟化油、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。更に、弾性層には、種々な機能を付与する材料を適宜含有させてもよい。これらの例として、老化防止剤、充填剤等を挙げることができる。
【0117】
弾性層の硬度は、マイクロ硬度(MD−1型)で70°以下が好ましく、より好ましくは60°以下である。この範囲とすることによりニップ幅が大きく、帯電均一性の向上に有利である。なお、「マイクロ硬度(MD−1型)」とは、アスカー マイクロゴム硬度計MD−1型(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した帯電部材の硬度である。具体的には、常温常湿(23℃、55%RH)の環境中に12時間以上放置した帯電部材に対して該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
【0118】
弾性層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。弾性層の形成は、予め所定の膜厚に形成されたシート形状又はチューブ形状の層を導電性基体に接着又は被覆することによって行うことができる。また、クロスヘッドを備えた押出し機を用いて、導電性基体と弾性層用の材料を一体的に押出して作製することもできる。
【0119】
弾性層用の材料に導電性粒子、絶縁性粒子及び充填剤等を分散する方法としては、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、オープンロール等で混合するなど、公知の方法を用いることができる。
【0120】
本発明に係る帯電部材は、感光体に対して、長手方向のニップ幅を均一にするという観点から、長手方向の中央部が一番太く、長手方向の両端部に近い程細くなる形状、いわゆるクラウン形状が好ましい。
【0121】
<中間層>
本発明に係る帯電部材の弾性層と表面層との間には、1層以上の中間層を設けてもよい。中間層の体積抵抗率は10Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることが好ましい。中間層には、表面層に含有される各種物質の他、弾性層で例示する材料を適宜含有させることができる。また、弾性層と同様に、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び又は含浸させる表面改質処理を施してもよい。
【0122】
<プロセスカートリッジ>
本発明に係る帯電部材は、感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を一体化し、電子写真装置に着脱可能に設計したプロセスカートリッジ(図2)に用いることもできる。
【0123】
本発明に係るプロセスカートリッジは、帯電部材と該帯電部材に接触して配置されている電子写真感光体とが一体化され、電子写真装置本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、該帯電部材が上記の帯電部材である。
【0124】
<電子写真装置>
本発明に係る電子写真装置は、帯電部材と、該帯電部材に接触して配置されている電子写真感光体とを有することを特徴とする電子写真装置であって、該帯電部材が上記の帯電部材である。
【0125】
本発明の帯電部材を備える電子写真装置の1例の概略構成を図3に示す。この電子写真装置は、感光体、感光体を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置等から構成されている。
【0126】
感光体4は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置は、感光体4に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ5を有する。帯電ローラ5は、感光体の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源19から所定の直流電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。
【0127】
感光体4に静電潜像を形成する潜像形成装置11は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置は、感光体4に近接又は接触して配設される現像ローラ6を有する。感光体帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
【0128】
転写装置は、接触式の転写ローラ8を有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写材7に転写する。転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材10、回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
【0129】
ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。定着装置9は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を転写材7に定着し、機外に排出する。
【実施例】
【0130】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。尚、樹脂の分子量および金属酸化物粒子の平均粒径の測定方法は以下の通りである。
【0131】
<1.本発明の樹脂の分子量の測定方法>
本発明の樹脂の分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)装置を使用し測定した。測定値はポリスチレン換算の数平均分子量で表示した。
【0132】
<2.金属酸化物粒子の平均粒径の測定方法>
表面層に含有させる前の工程における金属酸化物粒子の粒径は、コールター等の公知の方法により測定した。表面層に含有された状態での金属酸化物粒子の粒径の測定方法は、まず、表面層の断面をTEMにて観察した。得られた金属酸化物粒子の断面画像データから、金属酸化物粒子の投影面積を求め、次に、この面積と等しい面積を持つ円の直径を金属酸化物粒子の粒径とした。同様に別の金属酸化物粒子の断面投影面積から、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求め、これらの円の直径の算術平均を平均粒径とした。
【0133】
<3.樹脂の製造例>
<製造例P1>[樹脂1の作製]
攪拌機、冷却器および温度計を備えたガラス製の1リットルフラスコに、溶媒として、イソプロピルアルコール300質量部を投入した。攪拌下、温度を80℃に保ち、窒素ガスを通しながら、以下の4成分の混合物を室温で10分撹拌した後、1時間かけて滴下した。
・平均分子式が式(A)で示される化合物90質量部、
・ブチルアクリレート78質量部、
・メチルメタクリレート132質量部、
・ラジカル重合開始剤(α,α‘−アゾビスイソブチロニトリル)0.3質量部。
【0134】
次いで温度80℃で6時間重合反応を行った。イソプロピルアルコールの一部を減圧除去した後、残った溶液を多量のメタノール中に投入して、攪拌、静置し、沈殿物を得た。更に沈殿物を減圧乾燥し、樹脂1を得た。
【0135】
樹脂1を、29Si−NMR、13C−NMR及びFT−IRにより分析したところ、樹脂1は、下記式(A−1)で示されるαユニット、βユニット及びγユニットを有していた。また式(1)で示される繰り返し単位の数nは7、式(4)で示される繰り返し単位の数mは192であった。また、樹脂1のゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量は約30000であった。
【0136】
【化36】

【0137】
【化37】

【0138】
<製造例P2〜P17>[樹脂2〜樹脂17の作製]
溶剤の種類と使用量、単量体の種類と使用量、ラジカル重合開始剤の使用量、反応時間を表1に示す条件に変更した。製造例P6、P7およびP12では溶剤と単量体成分を室温で6時間撹拌した後にラジカル重合開始剤を添加して、滴下用の混合物を調製した。また製造例P9およびP10では溶剤と単量体成分を室温で12時間撹拌した後にラジカル重合開始剤を添加して、滴下用の混合物を調製した。これら以外の条件は製造例P1と同様にして重合反応を行った。反応後、製造例P1と同様にして後処理を行い、樹脂2〜樹脂17を得た。得られた各樹脂を、製造例P1と同様に分析したところ、式(1)で示される繰り返し単位の数n、式(4)で示される繰り返し単位の数m、および重量平均分子量は表1に示す値であった。
【0139】
【表1】

【0140】
【化38】

【0141】
【化39】

【0142】
【化40】

【0143】
【化41】

【0144】
【化42】

【0145】
【化43】

【0146】
【化44】

【0147】
【化45】

【0148】
【化46】

【0149】
【化47】

【0150】
【化48】

【0151】
【化49】

【0152】
<4.複合粒子の製造例>
<製造例F1>[複合粒子1の作製]
樹脂1をシクロペンタシロキサンに溶解させ、樹脂1の40質量%シクロペンタシロキサン溶液を作製した。金属酸化物粒子として、ルチル型酸化チタン粒子(一次粒径25nm)を100質量部、マルチパーパスミキサー(商品名、三井鉱山(株)製)に仕込み、2000rpmで回転させながら、前記溶液200質量部(樹脂1は80質量部)を滴下した。これを80℃で30分間乾燥させ、金属酸化物粒子の表面が、樹脂1で被覆された複合粒子1を得た。
【0153】
<製造例F2〜F20>[複合粒子2〜複合粒子20の作製]
被覆用の樹脂と金属酸化物粒子を表2に示す条件とした以外は製造例F1と同様にして複合粒子2〜複合粒子20を得た。
【0154】
<製造例F21>[複合粒子21の作製]
樹脂10を機械粉砕により、樹脂10の微粉体とした。ルチル型酸化チタン粒子(一次粒径25nm)100質量部と樹脂10の微粉体80質量部を混合し、この混合体をメカノミルに仕込み、金属酸化物粒子の表面に樹脂10の微粉体を機械的に付着処理した。このようにして、金属酸化物粒子の表面が、樹脂10で被覆された複合粒子7を得た。
【0155】
<製造例F22〜36>[複合粒子8〜複合粒子36の作製]
被覆する樹脂及び金属酸化物粒子、その添加量を表2に示す条件に変更した以外は製造例F1と同様にして複合粒子8〜複合粒子36を得た。
<製造例F37>[複合粒子37の作製]
アクリル樹脂(アクリディック54−172−60(商品名)、DIC(株)製):40質量部、メチルエチルケトン:60質量部、を混合し、アクリル樹脂の40質量%メチルエチルケトン溶液を作製した。この混合溶液を用いてルチル型酸化チタン(一次粒径25nm):100質量部を製造例P36と同様に処理し、金属酸化物粒子の表面が、アクリル樹脂で被覆された複合粒子37を得た。
【0156】
【表2】

【0157】
<5.導電性粒子の製造例>
シリカ粒子(体積抵抗率1.8×1012Ω・cm)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。この時の攪拌速度は22rpmであった。このようにしてメチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆されたシリカ粒子を得た。次いで、カーボンブラック粒子(体積抵抗率2.0×10Ω・cm、pH6.5)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cm(60kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行った。このようにしてメチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆されたシリカ粒子の表面にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、導電性粒子1を得た。この時の攪拌速度は22rpmであった。導電性粒子1の体積抵抗率は1.0×10Ω・cmであった。
【0158】
なお、導電性粒子の体積抵抗率は、23℃、55%RH常圧の環境で、内径1cmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の円筒の上下にステンレス(SUS316製)の円柱状の電極を配置した電極で測定した。測定サンプルと電極は、上記環境中で12時間以上放置して環境に馴染ませた後に測定を行った。PTFE製円筒の下部にSUS製の下部電極を配置し、約2gの導電性粒子を片寄らないように入れ、上からSUS製円柱状電極を載せ、PTFE円筒と上下の電極によって挟んだ。10MPaの圧力を加えた状態で、1分間以上放置した。その後、微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加した。そして、30秒後の電流を測定し、電極面の間隔と電極面積とから計算して求めた。
【0159】
<6.弾性ローラの製造例>
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製丸棒に、熱硬化性接着剤「メタロックU−20」(商品名、株式会社東洋化学研究所製)を塗布、乾燥したものを導電性基体として使用した。エピクロルヒドリンゴム100質量部に対して、下記の6成分を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーにて15分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
・炭酸カルシウム:65質量部、
・脂肪族ポリエステル系可塑剤:8質量部、
・ステアリン酸亜鉛:1質量部、
・酸化亜鉛:5質量部、
・四級アンモニウム塩:2質量部、
・着色用カーボンブラック:5質量部。
【0160】
これに、加硫剤として硫黄:1.0質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィト(DM):1.0質量部とテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS):1.0質量部を、20℃に冷却した二本ロール機にて15分間混練して、弾性層用コンパウンドを得た。
【0161】
上記導電性基体とともに、弾性層用コンパウンドをクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約9.5mmのローラ形状になるように成型した。次いで、電気オーブンにて160℃で1時間、加硫及び接着剤の硬化を行った。その後ゴムの両端部を突っ切り、ゴム長さを232mmとした。更に、ローラ中央部における外径が8.5mmのローラ形状になるように表面の研磨加工を行って、導電性基体上に弾性層を形成し、弾性ローラ1を作製した。なお、クラウン量(ローラ長手方向の中央位置と中央部から90mm離れた位置の外径差)は115μmとした。
【0162】
<実施例1>
[1.表面層用塗布液の調製]
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が15質量%となるように調整した。この溶液666.6質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記の4成分を加え、混合溶液を調製した。
・複合粒子1:35質量部、
・導電性粒子1:45質量部、
・変性ジメチルシリコーンオイル(「SH28PA」、商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製):0.08質量部、
・ブロックイソシアネート混合物(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物):80.14質量部。
【0163】
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
【0164】
次いで、内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液200gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。分散後、平均粒子径が6μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子4.48gを添加した。アクリルポリオール固形分100質量部に対してポリメチルメタクリレート樹脂粒子20質量部相当量である。その後、1時間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液1を得た。
【0165】
[2.帯電ローラの作製]
弾性ローラ1に対して表面層用塗布溶液1を1回ディッピング塗布した。常温で30分間以上風乾した後、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、弾性ローラ1の弾性層上に表面層を形成して、帯電ローラ1を得た。尚、ディッピング塗布条件は以下の通りである。浸漬時間9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は時間に対して直線的に速度を変化させた。
【0166】
[3.帯電ローラの表面層中の複合粒子の存在状態の確認]
帯電ローラ1の表面層を鋭利な刃物(カミソリ)によって切り出し、表面層の断面の切片を作製した。更に、この切片を樹脂にて包埋し、ミクロトームにて切り出すことで観察用サンプルとし、TEMにて観察したところ、表面層中に存在する金属酸化物粒子が、樹脂1によって被覆されていることが観察された。
【0167】
[4.帯電ローラの電気抵抗値の測定]
図4に示す電気抵抗値測定用の機器を用いて、帯電ローラの電気抵抗値を測定した。まず、帯電ローラを軸受け33aと33bにより、円柱形金属32(直径30mm)に対して帯電ローラが平行になるように当接させた(図4(a))。ここで、当接圧はバネによる押し圧力により一端が4.9N、両端で合計9.8Nに調整した。次に、図示しないモータにより周速45mm/secで駆動回転される円柱形金属32に従い帯電ローラが従動回転した。従動回転中、図4(b)の様に、安定化電源34から直流電圧−200Vを印加し、帯電ローラに流れる電流値を電流計35で測定した。印加電圧、電流値から、帯電ローラの電気抵抗値を算出した。
【0168】
帯電ローラは、NN(常温常湿:23℃、55%RH)環境に24時間以上放置した後に電気抵抗値を測定した。帯電ローラ1の電気抵抗値は、1.1×10Ωであった。
【0169】
[5.スジ状画像の評価]
[5−1.放電空回転加速試験]
図3に示す構成を有する電子写真装置であるキヤノン株式会社社製カラーレーザープリンタ(LBP5400(商品名))を使用した。なお、図3に示す構成を有するプロセスカートリッジとして、上記プリンター用のプロセスカートリッジ(ブラック用)を用いた。上記プロセスカートリッジから付属の帯電ローラを取り外し、帯電ローラ1を取り付けた。また、帯電ローラ1は、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた(図5)。ここで帯電ローラに直流電圧−1000Vを印加した状態で、感光体を24時間連続で回転駆動させた。
【0170】
その後、図3に示す電子写真装置として、電子写真装置(LBP5400(商品名)、キヤノン株式会社製)をプロセススピード210mm/sで画像を出力できるように改造した。この電子写真装置を用い、1枚画像を出力して電子写真装置の回転を停止させた後、また画像形成動作を再開するという動作を繰り返し(印字率1%で間欠耐久)、5000枚の画像を出力する耐久評価を行った。
【0171】
上記の評価を、15℃、10%RH環境(L/L環境)、23℃、50%RH環境(N/N環境)、30℃、80%RH環境(H/H環境)の3環境でそれぞれ行った。耐久試験中、1000枚目、3000枚目及び5000枚目の時点でハーフトーン画像(感光体の回転方向と長手方向に幅1ドット、間隔2ドットの直線を描いた画像)を出力し、その画像を評価した。画像の評価は、感光体への放電ムラ起因による微細なスジ状画像を目視にて、下記評価基準に従い評価した。
【0172】
[5−2.スジ状画像の評価基準]
ランク1:スジ状画像は発生しない。
ランク2:ごく軽微なスジ状画像の発生は認められるが、帯電ローラ周期のピッチ性は確認できないレベルである。
ランク3:画像の一部にスジ状画像が帯電ローラ周期で認められるが、実用上問題ないレベルである。
ランク4:スジ状画像が全体に発生し、画質の低下が認められる。
【0173】
評価結果を表3に示す。帯電ローラ1は、スジ状画像が発生せず、良好な画像を維持することができた。
【0174】
<実施例2>
水系ウレタン樹脂であるタケラックWS−6010(商品名、三井化学ポリウレタン(株)製)333.3質量部(ウレタン樹脂固形分100質量部)に対して、下記成分を加え、混合溶液を調製した。
・複合粒子2:30質量部、
・導電性粒子1:45質量部。
【0175】
次いで、内容積450mLのガラス瓶の中に、この混合溶液200gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて2時間分散した。分散後、実施例1と同様にしてポリメチルメタクリレート樹脂粒子4.90gを添加し、その後、1時間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液2を得た。
【0176】
弾性ローラ1に対して表面層用塗布溶液2を用いて、実施例1と同様の条件で、1回ディッピング塗布した。熱風循環乾燥機にて110℃で1時間乾燥し、弾性ローラ1の弾性層上に表面層を形成し、帯電ローラ2を得た。帯電ローラ2を実施例1と同様にして評価し、表3の結果を得た。帯電ローラ2はスジ状画像が発生せず、良好な画像を維持することができた。
【0177】
<実施例3>
水系ウレタン樹脂であるタケラックWS−5100(商品名、三井化学ポリウレタン(株)製)333.3質量部(ウレタン樹脂固形分100質量部)に対して、下記成分を加え、混合溶液を調製した。
・複合粒子3:20質量部、
・導電性粒子1:45質量部。
【0178】
次いで実施例2と同様にして表面層用塗布溶液3を得た。
【0179】
弾性ローラ1に対して表面層用塗布溶液3を用いて、実施例1と同様の条件で、1回ディッピング塗布した後、熱風循環乾燥機にて80℃で5分間硬化させ、弾性ローラ1の弾性層上に表面層を形成し、帯電ローラ3を得た。帯電ローラ3を実施例1と同様にして評価し、表3の結果を得た。帯電ローラ3は、スジ状画像が発生せず、良好な画像を維持することができた。
【0180】
<実施例4〜34>
複合粒子の種類、添加量を表3に示す条件に変更した以外は、実施例3と同様にして帯電ローラ4〜帯電ローラ34を作製した。実施例1と同様にして評価し、表3の結果を得た。
【0181】
実施例4〜7および実施例10〜14の帯電ローラは、スジ状画像が発生せず、良好な画像を維持することができた。実施例8および9の帯電ローラは、L/L環境にてランク2の画像レベルが発生した。実施例15〜17の帯電ローラは、L/L環境、N/N環境にて、ランク2の画像レベルが発生した。
【0182】
実施例18〜25の帯電ローラは、L/L環境、N/N環境、H/H環境にて、それぞれランク2の画像レベルが発生した。実施例27および29の帯電ローラは、L/L環境にて、ランク3の画像レベルが発生したが、実用上問題のないレベルであった。
【0183】
実施例26、28および30〜32の帯電ローラは、L/L環境、N/N環境にて、ランク3の画像レベルが発生したが、実用上問題のないレベルであった。実施例33および34の帯電ローラは、L/L環境、N/N環境、H/H環境にて、ランク3の画像レベルが発生したが、実用上問題のないレベルであった。
【0184】
<比較例1〜3>
複合粒子の種類、添加量を表3に示す条件に変更した以外は、実施例3と同様にして帯電ローラ35〜帯電ローラ37を作製した。各帯電ローラを実施例1と同様にして評価し、表3の結果を得た。ランク4の画像レベルが発生し、画質の低下が認められた。
【0185】
<比較例4>
複合粒子を添加せず、金属酸化物粒子として、ルチル型酸化チタン粒子(1次粒径25nm)を添加した以外は、実施例3と同様にして帯電ローラ38を作製した。帯電ローラを実施例1と同様に評価し、表3の結果を得た。ランク4の画像レベルが発生し、画質の低下が認められた。
【0186】
【表3】

【符号の説明】
【0187】
1 導電性基体
2 弾性層
3 表面層
4 電子写真感光体
5 帯電部材(帯電ローラ)
6 現像ローラ
7 印刷メディア
8 転写ローラ
9 定着部
10 クリーニングブレード
11 露光
12 帯電前露光装置
13 弾性規制ブレード
14 トナー供給ローラ
18、19、20 電源
21 中間層
30 トナーシール
32 円柱形金属
33 軸受け
34 安定化電源
35 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と表面層とを有する帯電部材であって、該表面層はバインダーと該バインダー中に分散されている複合粒子とを含有し、該複合粒子は金属酸化物粒子の表面が樹脂層で被覆された複合粒子であり、該樹脂層は下記式(1)で表わされる構成単位を有する樹脂を含むことを特徴とする帯電部材:
【化1】

[式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Gは下記式(2)で表わされる構造を有する基である。
【化2】

式(2)中、Aは炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(6)〜式(8)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる基である。aは0または1である。E1、E2およびE3は、各々独立に下記式(3)で表わされる基である。
【化3】

【化4】

【化5】

式(6)〜式(8)中、R8、R9およびR11は各々独立に、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。式(8)中、R10は炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、アリル基またはハロゲン原子である。dは0以上4以下の整数である。eは0または1である。
【化6】

式(3)中、kは0または1である。hは0以上3以下の整数である。Z1は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および下記式(15)〜(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。
R3、R4、R6およびR7は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R5は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
Xは、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、下記式(18)で表わされる基および下記式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
【化7】

【化8】

【化9】

式(15)〜式(17)中、R15、R16およびR17は各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基である。pは0以上3以下の整数である。
【化10】

式(18)中、R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【化11】

式(19)中、rは0または1であり、sは0以上3以下の整数である。Z2は炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニレン基および上記式(15)〜式(17)で表わされる2価の基からなる群から選ばれる2価の基である。R19、R20、R22およびR23は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。R21は炭素原子数1以上10以下のアルコキシル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェノキシ基、下記式(20)または下記式(21)で示される基である。
X2は水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基、式(18)で表わされる基および式(19)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。
式(3)においてXが式(19)で表わされる基である場合における式(19)で表わされる基の繰り返しの数は1以上10以下であり、かつ、最末端を構成している式(19)中のX2は、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、アリル基、ビニル基または式(18)で示す基である。
【化12】

式(20)中、R24は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。
【化13】

式(21)中、R25、R26およびR27は各々独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基またはメチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。]。
【請求項2】
前記樹脂が、前記式(3)中のhが0であり、Xが前記式(19)で表わされる基であって、式(19)中のrが0であり、式(19)で表わされる基の繰り返しの数が1以上3以下であるものである請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記樹脂が、更に下記式(4)で示される構成単位を有する請求項1または2に記載の帯電部材:
【化14】

[式(4)中、R2は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Jは水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、下記式(9)、下記式(10)、または下記式(11)で示される基である。
【化15】

【化16】

【化17】

式(9)〜式(10)中、R12およびR13は各々独立に炭素原子数1以上6以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基、および前記式(11)で表わされる基からなる群から選ばれる基である。式(11)中、R14は炭素原子数1以上4以下のアルキル基、メチル基およびエチル基から選ばれる少なくとも一方で置換されていてもよいフェニル基である。tは1以上3以下の整数である。]。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子の粒径が10μm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子は少なくとも、ルチル型酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムから選ばれた金属酸化物粒子であること特徴とする請求項1〜4のいずれかの一項に記載の帯電部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの一項に記載の帯電部材と該帯電部材に接触して配置されている電子写真感光体とが一体化され、電子写真装置本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかの一項に記載の帯電部材と、該帯電部材に接触して配置されている電子写真感光体とを有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−103337(P2012−103337A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249789(P2010−249789)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】