説明

帯電部材、帯電部材の製造方法及び接触帯電装置

【課題】高耐久化、高速化、高画質化を図った電子写真装置に適用しても、帯電不良による画像不良や、トナー等の付着による異常画像の発生を抑制し、長期に亘り安定して均一な被帯電体の帯電を行うことができる帯電部材を提供する。
【解決手段】被帯電体に接触して回転することにより該被帯電体を一様に帯電するローラー状の帯電部材において、表面の凹凸が、周方向の平均間隔(Smp)と軸方向の平均間隔(Sma)との比の値が、
1.2<周方向の平均間隔(Smp)/軸方向の平均間隔(Sma)<2.0
を満たすように形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる帯電部材、これを用いた接触帯電装置及び帯電部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機や光プリンタ等の電子写真装置、静電記録装置等の画像形成装置において、感光体や誘電体等の像担持体面を帯電処理する手段として、放電により帯電する方法(特許文献1)が利用されてきた。しかしながら、放電帯電方式は感光体等の被帯電体の表面を所定の電位に均一に帯電する方法として有効であるものの、高価、装置が大型になる、オゾン等のコロナ生成物の発生などから、これに代替して、接触帯電方式が用いられている。接触帯電方式においては、金属製芯金等の導電性基体上に半導電性の弾性体の被覆層等が形成されたローラー状等の帯電部材等に電圧を印加し、これを被帯電体表面に近接又は接触させて、被帯電体面の帯電処理を行なっている。接触帯電方式においては、オゾン等の放電生成物や異常放電による被帯電体面の破壊が少ない、構造が簡単で小型、低価格等の利点があるが、帯電部材自体の導電性やこれを印加する電圧の一定化が困難であり、被帯電体面を均一に帯電することがむずかしい。
【0003】
上記接触帯電方式における帯電部材を印加する方法としては、帯電部材に直流電圧のみを印加する方法や、交流電圧(AC)と直流電圧(DC)を同時に印加する方法がある。交流電圧(AC)と直流電圧(DC)を印加する方法は、交流の電圧源を使用するため画像形成装置のコストが高くなるが、電圧の変動を相殺し帯電部材を一定電圧に印加することができるため、被帯電体の帯電を均一に行うことができる。
【0004】
被帯電体の表面を均一に帯電する帯電部材として、DC帯電方式について改良した帯電部材(特許文献2)が報告されている。また、粒径7〜30μmのシリコーンパウダー等の粒子をナイロン等の結着樹脂に分散させ、表面粗さを有する帯電部材(特許文献3)が報告されている。しかし、この帯電部材においては、使用に伴ないトナーや紙粉が感光体を介して帯電部材表面に移行し、凹部の堆積物を核としてトナーの堆積が進行し、帯電不良による黒点の発生等の画像不良が広範囲に亘って発生することもある。
【0005】
また、帯電部材表面を摺動する撓み変形自在なフィルム状の清掃部材を設け、帯電部材表面に付着したトナーを除去するもの(特許文献4)が報告されている。しかし、これらの帯電部材では帯電部材と清掃部材との接触部分にトナーが堆積することがあり、堆積トナーにより清掃部材の接触不良が生じ周方向のスジ状の画像不良が発生し、堆積トナーによる帯電不良が生じ軸方向のスジ状の画像不良が発生する場合がある。
【0006】
更に、フッ素樹脂等の高離型材料で表面を形成した帯電部材(特許文献5)が報告されているが、トナー等の堆積を抑制するには不十分である。被帯電体との摩擦抵抗を低減しクリーニング不良を抑制するため、深さ0.1〜30μm、幅0.1〜50μmの周方向の凹溝を設けたもの(特許文献6)などが報告されている。しかし、これらの帯電部材では初期段階に溝の部分に帯電不良が生じ、長期使用後に溝部にトナーの堆積が生じ却って帯電不良を誘発することになる。
【特許文献1】特開昭57−178257号公報
【特許文献2】特開平05−341627号公報
【特許文献3】特許第3024248号公報
【特許文献4】特開平06−003930号公報
【特許文献5】特開平11−249383号公報
【特許文献6】特開平08−044149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子写真装置においては、高耐久化が進み、高速化、高画質化の要請に応じて電子写真製品の高精細化が進展しており、これに伴ないトナーが小径化し微粉トナーによる帯電部材表面の汚染が起こりやすく、画像不良が発生しやすい状況下にある。
【0008】
本発明の課題は、高耐久化、高速化、高画質化を図った電子写真装置に適用しても、帯電不良による画像不良や、トナー等の付着による異常画像の発生を抑制し、長期に亘り安定して均一な被帯電体の帯電を行うことができる帯電部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、電子写真装置における画像形成プロセスに対するより一層の高速化、高画質化への要求の下で、感光体を安定して均一に帯電させることができる帯電部材について検討した。その結果、感光体を均一に帯電するためには、帯電部材の表面粗さとして十点平均粗さや算術平均粗さのみでなく、周方向の凹凸平均間隔と軸方向の凹凸平均間隔の比率や、周方向の凹凸平均間隔が大きく関与していることの知見を得た。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、被帯電体に接触し回転することにより該被帯電体を一様に帯電するローラー状の帯電部材において、表面の凹凸が、周方向の平均間隔(Smp)と軸方向の平均間隔(Sma)との比の値が、
1.2<周方向の平均間隔(Smp)/軸方向の平均間隔(Sma)<2.0
を満たすように形成されたことを特徴とする帯電部材に関する。
【0011】
また、本発明は、体積粒度分布における10%、50%、90%体積の粒子の粒子径をそれぞれD10、D50、D90、粒度分散係数ε=(D90−D10)/D50とするとき、
0.5<ε<1.3
を満たす粒度分散係数εを有する非導電性粒子を含有する浸漬液中へ、弾性抵抗層を形成した円柱状または円筒状の導電性基体を、軸方向に移動して浸漬し、上端の引上げ速度(Va)と下端の引上げ速度(Vb)の比(Va/Vb)が2以上20以下となる速度で浸漬方向と逆方向に浸漬液から引上げて表面抵抗層を成形することを特徴とする帯電部材の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、上記帯電部材と、該帯電部材の表面に一端が接触し他端が固定された可撓性を有するフィルム状の清掃部材とを有することを特徴とする接触帯電装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の帯電部材は、高耐久化、高速化、高画質化を図った電子写真装置に適用しても、帯電不良による画像不良や、トナー等の付着による異常画像の発生を抑制し、長期に亘り安定して均一な被帯電体の帯電を行うことができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の帯電部材は、被帯電体に接触して回転することにより該被帯電体を一様に帯電するローラー状の帯電部材において、表面の凹凸が、周方向の平均間隔(Smp)と軸方向の平均間隔(Sma)との比の値が以下の範囲に形成されたことを特徴とする。
【0015】
1.2<周方向の平均間隔(Smp)/軸方向の平均間隔(Sma)<2.0
本発明の帯電部材としては、その表面に、周方向の平均間隔(Smp)と軸方向の平均間隔(Sma)との比の値が1.2より大きく2.0より小さい範囲にある凹凸を有するものであれば特に制限されるものではない。その構成として、円柱状または円筒状の導電性基体上に一層以上の弾性抵抗層と、表面に非導電性粒子を含有する表面抵抗層とを有するものが好ましい。このような帯電部材の一例として、例えば、図1に示す、円柱状の導電性基体5上に、弾性抵抗層6、非導電性粒子100を含有する表面抵抗層7が順次積層された帯電部材を例示することができる。
【0016】
上記円柱状又は円筒状の導電性基体としては、基体としての強度があり、導電性を示すものであればいずれのものでもよいが、その材質としては鉄、ステンレス、アルミニウム、導電性プラスチック等を挙げることができる。
【0017】
上記導電性基体上に設けられる弾性抵抗層は、帯電部材が被帯電体に密着し帯電を可能とするため適当な導電性と弾性を有するものが好ましい。弾性抵抗層は一層からなる単層構造でも、または二層以上の複数層で構成されていてもよく、これらは固体状であっても発泡体であってもよい。
【0018】
弾性抵抗層の導電性としては、帯電部材の電気抵抗値が被帯電体の過剰帯電を抑制し適度に帯電できるように1×104Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下の範囲であることが好ましい。特に、低温低湿環境下において電気抵抗値が上昇した帯電部材による被帯電体の帯電を適切に維持するために、帯電部材に高電圧を印加することを回避できるように、帯電部材が1010Ω・cm以下の電気抵抗値となる導電性を有することが好ましい。帯電部材が上記電気抵抗値を有するものとするための弾性抵抗層の電気抵抗値としては、例えば、1×102Ω・cm以上、1×1013Ω・cm以下とすることができる。
【0019】
上記弾性抵抗層の材質としては、後述する表面抵抗層と同様の樹脂であってもよいが、エピクロルヒドリンゴム、NBR、CR及びウレタンゴム等の中抵抗の極性ゴムや、ポリウレタン樹脂を好ましいものとして挙げることができる。これらの極性ゴムやポリウレタン樹脂は、帯電部材に適度な弾性を付与することができ、更に、その内に含有する水分や不純物がキャリアとなり、僅かではあるがイオン導電機構による導電性を有すると考えられる。これらの極性ゴムやポリウレタン樹脂は低温低湿環境下で電気抵抗値が上昇する傾向にあるため、低温低湿環境下においても帯電部材が上記電気抵抗値を有するように、これらのゴムや樹脂にその導電性を調整するため、導電剤を添加することが好ましい。導電剤は電子導電機構、イオン導電機構いずれによるものであってもよいが、局所的な低抵抗となることを抑制し、大量添加による強度の低下等を抑制するため、1×10−2Ω・cm以上1×105Ω・cm以下の電気抵抗値を有するものが好ましい。
【0020】
上記導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックの導電性カーボンブラックやグラファイト、金属粉や酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物や、複合粒子等の電子導電剤を挙げることができる。複合粒子としては、適当な粒子の表面に酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、鉄、銅、クロム、コバルト、鉛、白金、ロジウム等を電解処理、スプレー塗工、混合振とう等により付着させたものが好ましい。また、イオン性導電剤として、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムスルホネイトなどの4級アルキルアンモニウム塩やそのポリエチレンオキシド変性体、過塩素酸リチウム、臭素酸ナトリウム等の金属塩、またはエステル系可塑剤や界面活性剤などを挙げることができる。
【0021】
また、弾性抵抗層が発泡体の場合、これらのゴムや樹脂を発泡剤により発泡させたものであってもよい。発泡剤としては、具体的には、アゾジカルボナミド(A.D.C.A)系、ジ−ニトロソペンタメチレンテトラミン(D.P.T)系、4.4′−オキシビス−ベンゼンサルフオニル−ヒドラジド(O.B.S.H)系、P−トリエンサルフオニルヒドラジド(T.S.H)系、アゾビスイソブチロニトリル(A.I.B.N)系などを使用することができる。特にA.D.C.A.系、O.B.S.H.系のブレンド系を用いた場合、緻密な発泡体でかつ架橋密度が高い発泡体が得られる。
【0022】
また、弾性抵抗層には、必要に応じて加硫剤が含有されていてもよい。加硫剤としては、使用するゴムの種類により、硫黄系加硫剤、有機過酸化物、キノイド系加硫剤、樹脂架橋剤、金属酸化物架橋剤、アミン架橋剤、トリアジン系架橋剤、マレイミド系架橋剤等を適宜選択することができる。これらの加硫剤の配合量は所望の硬度や膜特性が得られるように適宜選択することができる。
【0023】
上記弾性抵抗層には、この他に、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0024】
このような弾性抵抗層はその表面に凹凸を有していてもよい。弾性抵抗層の表面粗さとしては、上層に積層される表面抵抗層の表面粗さの形成を容易にするため、周方向の凹凸の平均間隔(Smp)が、軸方向の凹凸の平均間隔(Sma)より大きいことが好ましい。弾性抵抗層の表面に凹凸を形成する方法としては、金型内面を弾性抵抗層の表面粗さに粗面化しこれを転写する方法や、研磨砥石により研磨する方法等を使用することができる。
【0025】
上記弾性抵抗層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、1mm以上10mm以下等とすることができる。
【0026】
このような弾性抵抗層上に設けられ、帯電部材の表面に備えられる表面抵抗層は、本発明の帯電部材の表面に凹凸を付与するために設けられ、表面の凹凸を形成する非導電性粒子を含有することが好ましい。
【0027】
表面抵抗層の表面に有する凹凸は、周方向の平均間隔(Smp)と軸方向の平均間隔(Sma)との比として、
1.2<周方向の平均間隔(Smp)/軸方向の平均間隔(Sma)<2.0
を満たす。周方向の平均間隔(Smp)が軸方向の平均間隔(Sma)の1.2倍より大きいことにより、表面にトナー等の付着を抑制し、被帯電体の帯電を均一に行うことができる。更に、清掃部材を備えた帯電装置においては、清掃部材の摺動摩擦により、トナー等の堆積物の剥離効果を向上させることができる。また、周方向の平均間隔(Smp)が軸方向の平均間隔(Sma)の2.0倍より小さいことにより、被帯電体の帯電不良を抑制することができる。
【0028】
また、表面の凹凸の軸方向の平均間隔(Sma)が比較的大きい場合、被帯電体を均一に帯電するためには、十点平均粗さや算術平均粗さで表される厚さ方向の粗さ、即ち、凹凸の深さを深くすることが好ましい。
【0029】
このような表面の凹凸の周方向の平均間隔(Sma)としては、具体的には、10μmより大きいことが好ましく、より好ましくは15μmより大きいことである。また、表面の凹凸の周方向の平均間隔(Sma)が100μmより小さいことが好ましく、より好ましくは80μmより小さいことである。表面の凹凸の周方向の平均間隔(Sma)が10μmより大きいと、清掃部材による表面に付着したトナー等のクリーニング効果を高めることができる。また、表面の凹凸の周方向の平均間隔(Sma)が100μmより狭ければ、凹凸間隔が大きくなることによる被帯電体の帯電不足、帯電不均一を抑制することができる。
【0030】
上記表面凹凸の間隔は平均間隔であり、この平均間隔を有している限り凹凸はランダムに形成されることが、清掃部材の特定部分にトナーの堆積を抑制することができるため、好ましい。
【0031】
ここで表面凹凸は、軸方向の平均間隔の値は、表面粗さ測定器(サーフコーダーSE−3300H、小坂研究所製等)を使用し、条件としてカットオフ0.8mm、測定距離8mm、送り速度0.2mm/sにて、帯電部材の軸方向の両端部からそれぞれ15mmの位置と中央の3箇所について、軸方向に沿って計測した値を採用することができる。また、表面凹凸の周方向の平均間隔の値は、軸方向の両端部からそれぞれ15mmの位置と中央の3箇所について、測定端子を接触、停止させた状態で、帯電部材を周方向に回転させる回転台に帯電部材を置き、測定端子に対して帯電部材を90°の位置で回転させて、帯電部材表面の移動速度を0.2mm/s、測定距離を8mmで、周方向に4箇所を測定した平均値を採用することができる。
【0032】
このような表面凹凸を形成するには以下の非導電性粒子によることが好ましい。
【0033】
非導電性粒子としては、体積粒度分布における10%、50%、90%体積の粒子の粒子径をそれぞれD10、D50、D90で表すとき、粒度分散係数ε=(D90−D10)/D50として、
0.5<ε<1.3
の範囲の粒度分散係数を有するものが好ましい。
【0034】
粒度分散係数εは、体積粒度分布における50%体積に相当する粒子(平均粒子)の粒子径(D50)に対する、体積粒度分布における体積10%から90%に相当する実質的に帯電部材の表面形状に影響を及ぼす粒子の粒子径の広がり(D90−D10)の割合を示すものである。
【0035】
表面抵抗層中での非導電性粒子の中心粒径(D50)に対する粒度分布の広がりが大きいと、非導電性粒子間の凝集が増し、非導電性粒子の分布が疎の部分と密の部分ができる。粒度分布の中心粒径と分布の広がりとの関係が上記範囲を有する非導電性粒子は、凝集して、表面に上記平均間隔を有する凹凸を容易に形成することができる。粒度分散係数εが0.5より大きい値を有する非導電性粒子は容易に凝集し、少量の添加で表面凹凸を形成することができ、表面抵抗層の強度の低下を回避することができる。また、粒度分散係数εが1.3より小さい値を有する非導電性粒子は、過度の凝集が抑制され凸部が大きくなることによる厚さ方向の表面化度の過大に起因する帯電部材に生じる抵抗ムラを抑制し被帯電体の均一な帯電を行うことができる。
【0036】
上記非導電性粒子はその粒子径として、体積粒度分布における50%体積の粒子の粒子径D50が2.0μm以上10μm以下であることが好ましい。非導電性粒子の体積粒度分布における50%体積の粒子の粒子径D50が2.0μm以上であれば、表面抵抗層を塗布、浸漬等により作製する場合、塗布液、浸漬液の長期安定性を図り、表面の凹凸の成形を安定して作製することができる。非導電性粒子の体積粒度分布における50%体積の粒子の粒子径D50が10μm以下であれば、表面に適切な凹凸形状を形成し、トナー等の付着を抑制することができる。
【0037】
粒度分散係数εが上記範囲にある非導電性粒子は、分級機等により分級した非導電性粒子を、所望の比率で混ぜ合わせる等の方法により得ることができる。
【0038】
ここで粒子径の値は、測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型(コールター社製)を用い、個数分布と体積分布を出力するインターフェイス(日科機製等)及びコンピューターを接続して測定した値を採用することができる。具体的には、1%NaCl水溶液中にアルキルベンゼンスルホン酸塩などの分散剤を0.1〜5ml加えた電解液に測定試料を加え、超音波分散器で分散処理を行い、コールターカウンターのマルチサイザーII型により、アパーチャーを用いることができる。非導電性粒子の体積、個数を測定して、体積分布と、個数分布とを算出することができる。
【0039】
このような非導電性粒子の材質としては、表面抵抗層のマトリックスを形成する結着樹脂組成物の溶媒等により溶解されないものが好ましい。例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、及びこれらの共重合体等の有機粒子を挙げることができる。特に平均粒径の制御や分散性の制御が比較的容易であることから、ポリウレタン、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の高分子重合体を好ましいものとして挙げることができる。
【0040】
上記非導電性粒子は、上記樹脂を構成するモノマーの乳化重合、懸濁重合、シーズ重合等重合方法を使用し、反応容器の容積、形状や反応時の攪拌速度、またはラジカル重合時の開始剤種を選択することにより、所望の粒度を有するものとして得ることができる。また、市販の粒子などと適宜混合して上記粒子径を有する粒子を調製することができる。
【0041】
また、市販の粒子を適宜混合し上記粒子径を有するものを調製することもできる。
【0042】
非導電性粒子の表面抵抗層中の含有量としては、例えば、結着樹脂100質量部に対して、4質量部以上60質量部以下などとすることができ、8質量部以上35質量部以下であることが好ましい。非導電性粒子の含有量がこの範囲であると帯電部材の表面凹凸を上記範囲に容易に形成することができる。
【0043】
上記非導電性粒子を含有する表面抵抗層の材質としてはいずれの樹脂やゴムであってもよい。例えば、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂等を挙げることができる。また、ゴム材としては、例えば、EPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、SBR(スチレンブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴムや、RB(ブタジエン樹脂)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンエラストマー)等のポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、アクリル系樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等の樹脂材料を用いることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
表面抵抗層には、上記機能を損なわない範囲で、適宜、充填剤、軟化剤、加工助剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、粘着付与剤、分散剤、発泡剤等を含有していてもよい。また、導電性の付与のため上記イオン性導電剤や電子導電剤等を含有させてもよい。
【0045】
表面抵抗層の厚さとしては、機械的強度の観点から、例えば0.1μm以上が好ましく、軸方向の厚さムラを抑制する観点から50μm以下とすることが好ましい。
【0046】
本発明の帯電部材は、導電性基体上に弾性抵抗層、表面抵抗層の他、これらの機能を損なわない範囲で、他の機能を有する、例えば、ブリード防止層等を有していてもよい。
【0047】
本発明の帯電部材の作製方法としては、まず、上記導電性基体上に弾性抵抗層を作製する。弾性抵抗層の作製方法としては、例えば、導電性基体上に弾性抵抗層を構成する上記ゴムや樹脂に上記導電剤、加硫剤等を添加した弾性抵抗層組成物を押出成形し、これを加熱等により硬化する方法を挙げることができる。また、弾性抵抗層組成物を金型内に注入するインジェクションやトランスファー等により作製することもできる。
【0048】
上記ゴムや樹脂組成物の硬化後、得られた弾性抵抗層の表面を研磨し、例えば、中央部を太く、両端部が細いクラウン形状等に成形することができる。弾性抵抗層がクラウン形状を有することにより、帯電部材の導電性基体の両端部を押圧して被帯電体と密着させる場合、中央部と両端部との押圧力の差が生じるのを抑制し、帯電部材を軸方向全長に亘って均等な押圧力をもって被帯電体に密着させることができる。このため、画像に濃度ムラが生じるのを抑制することができる。
【0049】
弾性抵抗層上に表面抵抗層を作製する方法としては、上記非導電性粒子と結着樹脂を含む塗布液、浸漬液等に用いる塗工液を調製する。塗工液としては非導電性粒子を上記含有量となるように結着樹脂と混合し、適宜溶媒を添加して粘度を調整して調製することができる。上記結着樹脂に非導電性粒子を混合、分散する手段としては、ロールニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ペイントシェーカー等を適宜利用し、必要に応じて加熱、加圧をする手段を挙げることができる。
【0050】
このような塗工液を用いて表面抵抗層を作製する方法としては、塗布法、スプレー塗布法等によることもできるが、浸漬法が、表面の凹凸を周方向の平均間隔と軸方向の平均間隔の比が上記範囲となるように形成することが容易であるため好ましい。塗工液(浸漬液)に弾性抵抗層を成形した基体を浸漬するには、上記導電性基体を軸方向に移動して塗工液中へ浸漬し、上端の引上げ速度(Va)と下端の引上げ速度(Vb)の比(Va/Vb)が2以上20以下となる速度で浸漬方向と逆方向に浸漬液から引上げることが好ましい。塗工液により表面抵抗層を形成する場合、塗工液から引上げる際に導電性基体上の弾性抵抗層表面に非導電性粒子が付着する。上記非導電性粒子を含有した塗工液において、液面付近で滞留や導電性基体の引き上げ時のダレによって、非導電性粒子の凝集を生じさせ得る。このため、導電性基体を塗工液から軸方向に引き上げることにより、軸方向より周方向において非導電性粒子の間隔を広く付着させることができ、周方向の平均間隔と軸方向の平均間隔が上記関係となる範囲に付着させ、表面凹凸を形成することができる。塗工液からの上記導電性基体の引上げを、上端の引上げ速度(Va)と下端の引上げ速度(Vb)の比(Va/Vb)が2以上となる速度で行うと、下端が塗料中に長時間浸漬されることによる軸方向の膜厚ムラを抑制することができる。また、下端側でのダレの低下によって非導電性粒子の凝集が希薄となり周方向の粒子の平均間隔が狭くなることを抑制することができる。また導電性基体の上端と下端の引上げ速度の比が20以下であれば、上端引上げ時と下端引上げ時に生じる非導電性粒子の凝集率の不均一を相殺し軸方向に均一な表面凹凸を形成することができる。
【0051】
更に、塗工液への浸漬、引き上げは数回反復して行うこともできるが、1回で行うことが好ましい。
【0052】
本発明の接触帯電装置は、上記本発明の帯電部材と、該帯電部材の表面に一端が接触し他端が固定された可撓性を有するフィルム状の清掃部材とを有することを特徴とする。本発明の接触帯電装置の一例として、図2の概略構成図に示すものを挙げることができる。
【0053】
図2に示す接触帯電装置には、帯電部材2と、これを所望の電圧に印加する例えばDC電源3と、帯電部材表面のクリーニングを行う清掃部材120とが設けられる。清掃部材120には、帯電部材2の軸方向に平行に配置された支持部材121と、この支持部材に一端が固定され、自由端を形成する他端が帯電部材2と接触するフィルム122とが設けられる。フィルム122は可撓性を有し、帯電部材2の回転に伴いその表面を摺動し帯電部材2表面の付着物をフィルム122上に移動させクリーニング可能となっている。
【0054】
このようなフィルムの厚さは、10〜1000μmが好ましいが、帯電の寿命や使用するトナーの特性、感光ドラムを清掃する手段の性能などにより、適宜最適値を選択することができる。
【0055】
フィルムの材質としては、可撓性を有するものであればいずれのものであってもよいが、具体的には、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの樹脂、PTFE、PVDFなどのフッ素樹脂などが好ましい。この中でもポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルが摩擦係数が低く、機械的強度に優れており、摩擦帯電特性などの点から好ましく、例えば、厚さ50μmのポリイミドフィルムを使用することができる。
【0056】
このような接触帯電装置により帯電を行う被帯電体として、例えば、基体11と基体上に設けられる感光体12とを有する感光ドラム10を挙げることができる。感光ドラムの基体としては、導電性を有するものが好ましく、その材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ニッケル等の金属を挙げることができる。その他、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化錫合金等を真空蒸着したプラスチック、導電性粒子(例えばカーボンブラック、酸化錫粒子等)を適当なバインダーと共に金属やプラスチックに塗布した支持体、導電性バインダーを有するプラスチック等を用いることができる。
【0057】
基体と感光体の中間に、バリヤー機能と接着機能をもつ下引層を設けることもできる。下引層は、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン等)、ポリウレタン、ゼラチン、酸化アルミニウム等によって形成できる。下引層の膜厚は5μm以下、好ましくは0.5μm〜3μmが適当である。下引層はその機能を発揮するためには、107 Ω・cm以上であることが好ましい。
【0058】
感光体12は、有機又は無機の光導電体を必要に応じてバインダー樹脂と共に塗工することで形成でき、また蒸着によっても形成することができる。感光体の形態としては、電荷発生層と電荷輸送層の機能分離型積層感光層が好ましい。電荷発生層は、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キノン顔料、ペリレン顔料等の電荷発生物質を蒸着あるいは、適当なバインダー樹脂と共に(バインダーがなくても可)塗工することによって形成できる。電荷発生層の膜厚としては、0.01μm〜5μmを挙げることができ、0.05μm〜2μmが好ましい。電荷輸送層は、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、オシサゾール化合物、トリアリールアミン化合物等の電荷輸送物質を成膜性のあるバインダー樹脂に溶解させて形成することができる。電荷輸送層の膜厚5μm〜50μmを挙げることができ、10μm〜30μmが好ましい。なお、紫外線等による劣化防止のために感光体上に保護層を設けてもよい。感光体12はドラム状に限らずベルト状若しくは、シート状であってもよい。
【0059】
このような接触帯電装置が適用される電子写真装置としては、例えば、図3に示すものを挙げることができる。図3に示す電子写真装置には、周速度150mm/sec等で回転するOPC感光ドラム等の接地した感光ドラム10と、感光ドラム10の周囲に設けられる接触帯電装置1、露光手段20、現像装置24、転写装置25、クリーニング装置27等が設けられる。接触帯電装置1には、押圧手段(図示せず)で感光ドラム10に押圧され感光ドラムのR方向の回転駆動に伴い従動回転する帯電部材2が設けられる。帯電部材は電源3により、所定の直流(DC)バイアス、例えば、−1200Vが印加され、この帯電部材に接触回転する感光体12の周面が所定の電位、例えば、−500Vに帯電される。帯電部材で均一に帯電された感光体12面は次いで露光手段20により目的画像情報の露光(レーザービーム走査露光、原稿画像のスリット露光等)を受け、その周面に目的の画像情報に対した静電潜像が形成される。
【0060】
感光体に形成された静電潜像には現像手段24において供給されるトナーが付着してトナー像として可視像化される。使用するトナーとしては、例えば、ワックスを中心に電荷制御剤と色素等を含有するスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、さらに表面にポリエステル薄層を重合させたシリカ微粒子を外添したものを挙げることができる。トナーのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径6μmを挙げることができる。
【0061】
転写手段25にはトナーと逆極性の電圧が印加された転写ローラーが設けられ、適正なタイミングをもって給紙手段(図示せず)から搬送された転写材26の裏面に転写ローラーが接触することにより感光体10上のトナー像が転写材26上に転写される。トナー像が転写された転写材26は感光体10面から分離され像定着手段(図示せず)へ搬送され、加熱等によりトナー像が定着され、画像形成物として出力される。転写材の裏面にも像形成する場合は再搬送手段により転写部へ搬送される。
【0062】
像転写後の感光体10面はクリーニング手段27で転写残りトナー等の付着汚染物の除去を受けて洗浄面化されて繰り返し作像に供される。クリーニング手段27により除去されず感光体上に残留するトナー等の付着汚染物は帯電部材2の表面に付着する場合もあるが、清掃手段120により清掃され、帯電部材2表面は清浄に維持される。
【実施例】
【0063】
[実施例1]
本発明の帯電部材を具体的に説明するが、本発明の帯電部材の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0064】
エピクロルヒドリンゴム(商品名:エピクロマーCG102、ダイソー(株)製)100質量部、充填剤としての炭酸カルシウム30質量部、カーボンブラック(商品名:シーストSO、東海カーボン社製)5質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸2質量部、可塑剤としてのDOP(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル))5質量部、4級アンモニウム塩2重量部、老化防止剤としての2−メルカプトベンズイミダゾール1質量部を60℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練し、原料コンパウンドを調整した。このコンパウンドにチアゾール系加硫促進剤(ノクセラーDM 大内新興化学工業株式会社)1質量部、チウラム系加硫促進剤(ノクセラーTS 大内新興化学工業株式会社製)1質量部、加硫剤としての硫黄1質量部を加えて更に15分間オープンロールで混練した。
【0065】
得られたコンパウンドをゴム押し出し機を使用して、熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20)を塗布した直径6mm、長さ250mmの円柱形の導電性支持体(鋼製、表面はニッケルメッキ)の周囲にローラー状になるように成形し、電気オーブンの中で160℃で2時間、加硫および接着剤の硬化を行い、弾性抵抗層素材を得た。得られた弾性抵抗層素材のゴム部分の両端部を突っ切り、さらに帯電部材の軸方向となる、導電性支持体と同軸に回転砥石を回転させ、かつ弾性抵抗層素材を周方向に回転させて、軸方向のSmが22μm、周方向のSmが50μm、端部直径12.00mm、中央部直径12.10mmのクラウン形状の弾性抵抗層を得た。
【0066】
表面凹凸の平均間隔は、表面粗さ測定器(商品名:サーフコーダーSE−3300H、小坂研究所製)を使用して測定した。測定条件としてカットオフ0.8mm、測定距離8mm、送り速度0.2mm/sにて、帯電部材の軸方向の両端部からそれぞれ15mmの位置と中央の3箇所について、軸方向に沿って計測した。また周方向の表面粗さは、軸方向の両端部からそれぞれ15mmの位置と中央の3箇所について、測定端子を接触、停止させた状態で、帯電部材を周方向に回転させる回転台に帯電部材を置き、測定端子に対して帯電部材を90°の位置で回転させて、帯電部材表面の移動速度を0.2mm/s、測定距離を8mmで、周方向に4箇所を測定し平均値を求めた。
【0067】
イオン交換水700重量部に、0.1M−Na3PO4水溶液450重量部を投入し、60℃に加温した後、クレアミックス CLS−30S(エム・テクニック社製)を用いて、4500rpmにて撹拌した。これに10M−CaCl2水溶液68重量部を徐々に添加し、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体に、スチレンモノマー170質量部、n−ブチルアクリレート30質量部を60℃に加温し、均一に溶解、分散した。その後、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8重量部を溶解した重合性単量体組成物を、60℃、N2雰囲気下において、クレアミックスにて6500rpmで15分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ、70℃に昇温し、6時間反応させた。冷却後、塩酸を加えリン酸カルシウム塩を溶解させた後、ろ過して粒子を得た。得られた粒子を分級機を用いて分級し、粒度分散係数ε0.63、中心粒径D50が2.0μmの非導電性粒子を得た。
【0068】
非導電性粒子の粒度分布は、測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII型(コールター社製)に、個数分布と体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びCX−1パーソナルコンピューター(キヤノン製)を接続したものを用いた。測定法としては、電解液、特級塩化ナトリウムの1%NaCl水溶液100〜150ml中に分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加えた試料を、超音波分散器で約1分間分散処理を行った。その後、コールターカウンターのマルチサイザーII型により、アパーチャーとして、100μmアパーチャーを用いて測定した。非導電性粒子の体積、個数を測定して、体積分布と、個数分布とを算出した。体積粒子分布の10%、50%、90%の粒子径をそれぞれD10、D50、D90とし、ε=(D90−D10)/D50として粒径分散係数を算出した。
【0069】
表面抵抗層用塗料として、ポリエステルポリオール(ニッポラン131 日本ポリウレタン工業株式会社)100質量部に対して、導電性材料として導電性のアセチレンブラック(4500 東海カーボン株式会社製)15質量部、溶媒として酢酸エチル 200質量部、上記非導電性粒子50質量部を添加し、ペイントシェイカーで10時間分散処理を行った。ついで固形分75%のイソシアネート樹脂(コロネートL 日本ポリウレタン工業株式会社)90質量部を添加して、粘度10mPa・sの表面抵抗層組成物とした。
【0070】
表面抵抗層組成物を弾性抵抗層に、表面抵抗層用塗料をディッピングにより塗工し、150℃で1時間加熱することで架橋反応を行い、帯電部材を作製した。ディッピングは、引き上げ速度(表面抵抗層組成物に対して弾性抵抗層の移動速度)として、上端部で20mm/s、その後直線的に減速して下端部2mm/sになるように制御した。帯電部材1の抵抗値は5x107Ω・cmであった。
【0071】
帯電部材の抵抗値としては、発泡体を円柱状の金属ドラムに当接させ、回転させた状態で、導電性基体と金属ドラム間に直流100Vの電圧を印加し、金属ドラムと直列に接続した抵抗体にかかる電圧を測定して求めた。
【0072】
帯電部材1の表面凹凸平均間隔は上記弾性抵抗層と同様に行った。帯電部材1の凹凸の平均間隔(Sm)について、周方向で測定したときのSmと軸方向で測定したときのSmの比は1.3、周方向のSmは30μm、十点平均粗さRzは2.8μmであった。
【0073】
十点平均粗さRzは、表面粗さ測定器(サーフコーダーSE−3300H、小坂研究所製等)を使用し、条件としてカットオフ0.8mm、測定距離8mm、送り速度0.2mm/sにて、帯電部材の軸方向の両端部からそれぞれ15mmの位置と中央の3箇所について、軸方向に沿って計測した。
【0074】
表面抵抗層の厚さは、電子顕微鏡で観察し、隣り合う凹と凸の平均高さを結んで表面抵抗層の厚さとした。また軸方向の厚さムラは、塗工時に上側になる端部から10mmの位置と下側になる端部から10mmの位置での厚さの差として求めた。帯電部材1は軸方向中央の表面抵抗層の厚さが10μm、軸方向の厚さムラが1μmであった。
【0075】
得られた帯電部材1をその外観を目視で観察し、評価を行った。
【0076】
外観浮流のないものを○、軽微に発生しているが実使用上問題ないものを△、著しい外観不良のものを×とした。結果を表1に示す。
【0077】
得られた帯電部材を電子写真装置に取り付け、気温15℃湿度10%の使用環境において、使用初期での帯電不良による異常画像の発生の有無を観察した。
【0078】
帯電ムラの全くないものを◎、軽微に発生しているが実使用上問題ないものを○、中程度に発生したものを△、非常に帯電ムラの大きいものを×とした。結果を表1に示す。
【0079】
20,000枚、40,000枚通紙し画像形成後の帯電部材の汚れ状況を目視で観察し、画像評価を行った。
【0080】
耐久試験後の帯電部材表面でほとんど付着物が観察されないものを○、軽微に発生しているが実使用上問題ないものを△、著しく付着しているものを×とした。結果を表1に示す。
【0081】
結果から、帯電部材は、画像評価では初期の帯電不良および20000枚、40000枚の耐久後の帯電不良は観察されず、軸方向での画像不良の差は発生しなかった。またトナー等の付着も非常に軽微であり、粗大粒子による汚れの発生ものなかった。さらに帯電部材の外観は、スジ状の塗工不良が発生していなかった。
【0082】
[実施例2]
イオン交換水700重量部に、0.1M−Na3PO4水溶液450重量部を投入し、60℃に加温した後、クレアミックス CLS−30S(エム・テクニック社製)を用いて、4500rpmにて撹拌した。これに10M−CaCl2水溶液68重量部を徐々に添加し、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体に、スチレンモノマー170質量部、n−ブチルアクリレート30質量部を60℃に加温し、均一に溶解、分散した後、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8重量部を溶解した重合性単量体組成物を、60℃、N2雰囲気下において、クレアミックスにて2500rpmで15分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ、70℃に昇温し、20時間反応させた。冷却後、塩酸を加えリン酸カルシウム塩を溶解させた後、ろ過して粒子を得た。得られた粒子を分級機を用いて分級し、粒度分散係数εが0.92、D50が10μmの非導電性粒子を得た。
【0083】
表面抵抗層用塗料として、上述の非導電性粒子15質量部を添加し、溶媒として酢酸エチルを160質量部添加した以外は実施例1と同様に塗料を調製し、実施例1と同様に帯電部材を作製した。
【0084】
得られた帯電部材について、実施例1と同様にして測定を行い、電子写真装置に取り付け、画像形成を行い、得られた画像について評価を行った。
【0085】
帯電部材の抵抗値は8x107Ω・cmであった。帯電部材の凹凸の平均間隔(Sm)について、周方向で測定したときのSmと軸方向で測定したときのSmの比は1.8、周方向のSmは60μm、十点平均粗さRzは5.2μmであった。帯電部材の軸方向中央での表面抵抗層の厚さが20μm、軸方向の厚さムラが3μmであった。画像評価では初期の帯電不良および20,000枚、40,000枚画像形成後の帯電不良が観察されず、軸方向での画像不良の差は発生しなかった。またトナー等の付着も非常に軽微であり、粗大粒子による汚れの発生もなかった。さらに帯電部材の外観は、スジ状の塗工不良が発生していなかった。
【0086】
[実施例3]
表面抵抗層用塗料に添加する非導電性粒子として、実施例1で作製した粒子を分級して得た、粒度分散係数εが0.59、中心粒径D50が1.5μmの非導電性粒子を80質量部添加し、溶媒として酢酸エチル220質量部添加した。その他は実施例1と同様にして塗料を調製し、実施例1と同様に帯電部材を作製した。
【0087】
得られた帯電部材について、実施例1と同様にして測定を行い、電子写真装置に取り付け、画像形成を行い、得られた画像について評価を行った。
【0088】
帯電部材の抵抗値は5x106Ω・cmであった。帯電部材の凹凸の平均間隔(Sm)について、周方向で測定したときのSmと軸方向で測定したときのSmの比は1.25、軸方向のSmは15μm、十点平均粗さRzは2.7μmであった。帯電部材の軸方向中央での表面抵抗層の厚さが8μm、軸方向の厚さムラが1μmであった。画像評価では初期および20,000枚、40,000枚画像形成後、非常に軽微の帯電不良が観察されたが実使用上問題ないレベルであった。また軸方向での画像不良の差は発生しなかった。また画像形成耐久試験後の帯電部材表面はトナー等の付着が非常に軽微であり、粗大粒子による汚れの発生もなかった。さらに帯電部材の外観は、スジ状の塗工不良が軽微に観察されたが実使用上問題ないレベルであった。
【0089】
[実施例4]
表面抵抗層用塗料に添加する非導電性粒子として、実施例2で作製した粒子を分級して得た、粒度分散係数εが0.9、中心粒径D50が13μmの非導電性粒子10質量部を添加し、溶媒として酢酸エチル190質量部を添加した。その他は実施例1と同様に塗料を調製し、実施例1と同様に帯電部材を作製した。
【0090】
得られた帯電部材について、実施例1と同様にして測定を行い、電子写真装置に取り付け、画像形成を行い、得られた画像について評価を行った。
【0091】
帯電部材の抵抗値は9x106Ωであった。帯電部材3の凹凸の平均間隔(Sm)について、周方向で測定したときのSmと軸方向で測定したときのSmの比は1.9、軸方向のSmは80μm、十点平均粗さRzは11μmであった。帯電部材の軸方向中央での表面抵抗層の厚さが15μm、軸方向の厚さムラが3μmであった。画像評価では初期の帯電不良は観察されず、20,000枚、40,000枚画像形成後、軽微の帯電不良が観察されたが実使用上問題ないレベルであった。また軸方向での画像不良は発生しなかった。また粗大粒子による汚れが微量観察されたが、その他の表面では軽微であり実使用上問題ないレベルであった。さらに帯電部材の外観は、スジ状の塗工不良が観察されなかった。
【0092】
[実施例5]
表面抵抗層用塗料に添加する非導電性粒子として、実施例1で作製した粒子を分級して得た、粒度分散係数εが0.58、中心粒径D50が1.5μmの非導電性粒子100質量部を添加し、溶媒として酢酸エチル220質量部を添加した。その他は実施例1と同様に塗料を調製した。実施例1と同様に作製した弾性抵抗層に、表面抵抗層用塗料を引き上げ速度(表面抵抗層組成物に対して弾性抵抗層の移動速度)を上端部で10mm/s、その後直線的に減速して下端部で5mm/sに制御してディッピング塗工し、帯電部材を作製した。
【0093】
得られた帯電部材について、実施例1と同様にして測定を行い、電子写真装置に取り付け、画像形成を行い、得られた画像について評価を行った。
【0094】
帯電部材の抵抗値は9x107Ω・cmであった。帯電部材の凹凸の平均間隔(Sm)について、周方向で測定したときのSmと軸方向で測定したときのSmの比は1.2、周方向のSmは10μm、十点平均粗さRzは3.1μmであった。帯電部材の軸方向中央での表面抵抗層の厚さが8μm、軸方向の厚さムラが1μmであった。画像評価では初期および20,000枚、40,000枚画像形成後で非常に軽微の帯電不良が観察されたが実使用上問題ないレベルであった。また軸方向での画像不良の差は発生しなかった。40,000枚画像形成後では、帯電部材の表面にはトナー等の付着物が観察されたが、実使用上問題ないレベルであった。また軸方向では塗工時に下側となる片側で画像不良の程度が悪かった。一方粗大粒子による汚れの発生はなかった。さらに帯電部材の外観は、スジ状の塗工不良が軽微に発生していたが実用上問題ないレベルであった。
【0095】
[実施例6]
表面抵抗層用塗料に添加する非導電性粒子として、実施例2で作製した粒子を分級して得た、粒度分散係数εが1.24、中心粒径D50が18μmの非導電性粒子8質量部を添加し、溶媒として酢酸エチル150質量部を添加した。その他は実施例1と同様に塗料を調製した。実施例1と同様に作製した弾性抵抗層に、表面抵抗層用塗料を引き上げ速度(抵抗層組成物に対して弾性体の移動速度)を上端部で20mm/s、その後直線的に減速して下端部で1mm/sに制御してディッピング塗工し、帯電部材を作製した。
【0096】
得られた帯電部材について、実施例1と同様にして測定を行い、電子写真装置に取り付け、画像形成を行い、得られた画像について評価を行った。
【0097】
帯電部材の抵抗値は5x106Ω・cmであった。帯電部材の凹凸の平均間隔(Sm)について、周方向で測定したときのSmと軸方向で測定したときのSmの比は2、周方向のSmは95μm、十点平均粗さRzは10μmであった。帯電部材の軸方向中央での表面抵抗層の厚さが28μm、軸方向の厚さムラが4μmであった。画像評価では初期では帯電不良が観察されず、20,000枚、40,000枚画像形成後では軽微な帯電不良が観察され、帯電部材の表面にはトナー等の付着物が観察されたが、実使用上問題ないレベルであった。また軸方向では塗工時に上側となる片側で画像不良の程度が悪かった。また粗大粒子による汚れが軽微に発生していたが実用上問題ないレベルであった。一方帯電部材の外観は、スジ状の塗工不良が発生していなかった。
【0098】
[比較例1]
表面抵抗層用塗料に添加する非導電性粒子として、実施例1で作製した粒子を分級し、粒度分散係数ε0.16、D50が1.5μmの非導電性粒子100質量部を添加し、溶媒として酢酸エチル240質量部添加した。その他は実施例1と同様に塗料を調製した。実施例1と同様に作製した弾性抵抗層に、表面抵抗層用塗料を引き上げ速度(表面抵抗層組成物に対して弾性抵抗層の移動速度)を上端部で3mm/s、その後直線的に減速して下端部で2mm/sに制御してディッピング塗工し、帯電部材を作製した。
【0099】
得られた帯電部材について、実施例1と同様にして測定を行い、電子写真装置に取り付け、画像形成を行い、得られた画像について評価を行った。
【0100】
帯電部材の抵抗値は3x107Ω・cmであった。帯電部材の凹凸の平均間隔(Sm)について、周方向で測定したときのSmと軸方向で測定したときのSmの比は1.1、軸方向のSmは8μm、十点平均粗さRzは3.1μmであった。帯電部材の軸方向中央での表面抵抗層の厚さが6μm、軸方向の厚さムラが3μmであった。画像評価では初期では帯電不良が観察されなかったが、20,000枚画像形成後では帯電不良が中程度観察され、40,000枚画像形成後では著しい帯電不良が観察された。また帯電部材の表面にはトナー等の付着物が多量観察された。また軸方向では塗工時に下側となる片側で画像不良の程度が悪かった。一方粗大粒子による汚れの発生はなかった。さらに帯電部材の外観は、スジ状の塗工不良が軽微に発生していた。
【0101】
[比較例2]
表面抵抗層用塗料に添加する非導電性粒子として、実施例2で作製した粒子を分級して得た、粒度分散係数εが1.35、D50が20μmの非導電性粒子3質量部を添加し、溶媒として酢酸エチル150質量部添加した。その他は実施例1と同様に塗料を調製した。実施例1と同様に作製した弾性抵抗層に、表面抵抗層用塗料を引き上げ速度(抵抗層組成物に対して弾性体の移動速度)を上端部で30mm/s、その後直線的に減速して下端部で1mm/sに制御してディッピング塗工し、帯電部材を作製した。
【0102】
得られた帯電部材について、実施例1と同様にして測定を行い、電子写真装置に取り付け、画像形成を行い、得られた画像について評価を行った。
【0103】
帯電部材の抵抗値は7x106Ω・cmであった。帯電部材の凹凸の平均間隔(Sm)について、周方向で測定したときのSmと軸方向で測定したときのSmの比は2.1、軸方向のSmは260μm、十点平均粗さRzは15μmであった。帯電部材の軸方向中央での表面抵抗層の厚さが18μm、軸方向の厚さムラが6μmであった。画像評価では初期では帯電不良が観察されなかったが、20,000枚画像形成後は中程度の帯電不良が発生しており、40,000枚画像形成後では帯電不良による画像不良が著しく発生した。帯電部材の表面には多量のトナー等の付着物が観察された。また軸方向では塗工時に上側となる片側で画像不良の程度が悪かった。また粗大粒子による汚れが発生していた。一方帯電部材の外観は、スジ状の塗工不良が発生していなかった。
【0104】
【表1】

【0105】
結果から、本発明の帯電部材においては、使用初期、画像形成耐久後においても、均一な帯電を行うことができ、良好な画像を得ることができることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の帯電部材の一例を示す模式的側面図である。
【図2】本発明の接触帯電装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の接触帯電装置を用いた電子写真装置を示す模式的構成図である。
【符号の説明】
【0107】
1 接触帯電装置
2 帯電部材
3 電源
5 導電性基体
6 弾性抵抗層
7 表面抵抗層
10 感光ドラム
11 基体
12 感光体
100 非導電性粒子
120 清掃部材
121 支持部材
122 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電体に接触して回転することにより該被帯電体を一様に帯電するローラー状の帯電部材において、表面の凹凸が、周方向の平均間隔(Smp)と軸方向の平均間隔(Sma)との比の値が、
1.2<周方向の平均間隔(Smp)/軸方向の平均間隔(Sma)<2.0
を満たすように形成されたことを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
表面の凹凸が、周方向の平均間隔(Smp)が、
15μm<周方向の平均間隔(Smp)<80μm
を満たすように形成されたことを特徴とする請求項1記載の帯電部材。
【請求項3】
円柱状または円筒状の導電性基体上に一層以上の弾性抵抗層と、表面に表面抵抗層とを有し、表面抵抗層が非導電性粒子を含有し、該非導電性粒子が、体積粒度分布における10%、50%、90%体積に対応する粒子径をそれぞれD10、D50、D90、粒度分散係数ε=(D90−D10)/D50とするとき、
0.5<ε<1.3
を満たす粒度分散係数εを有することを特徴とする請求項1または2記載の帯電部材。
【請求項4】
非導電性粒子が、体積粒度分布における50%体積の粒子の粒子径D50が2.0μm以上10μm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の帯電部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の帯電部材の製造方法であって、体積粒度分布における10%、50%、90%体積の粒子の粒子径をそれぞれD10、D50、D90、粒度分散係数ε=(D90−D10)/D50とするとき、
0.5 <ε< 1.3
を満たす粒度分散係数εを有する非導電性粒子を含有する浸漬液中へ、弾性抵抗層を形成した円柱状または円筒状の導電性基体を、軸方向に移動して浸漬し、上端の引上げ速度(Va)と下端の引上げ速度(Vb)の比(Va/Vb)が2以上20以下となる速度で浸漬方向と逆方向に浸漬液から引上げて表面抵抗層を成形することを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか記載の帯電部材と、該帯電部材の表面に一端が接触し他端が固定された可撓性を有するフィルム状の清掃部材とを有することを特徴とする接触帯電装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−199598(P2007−199598A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20678(P2006−20678)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】