説明

帯電部材の製造方法及び電子写真画像形成装置

【課題】 高導電性と、形状変化の環境依存性との双方をより高いレベルで両立させることのできる帯電部材の製法を提供する。
【解決手段】 (1)ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとを混合してゴム混合物を調製する工程と、
(2)該ゴム混合物を含む層を導電性芯軸の外側に形成する工程と、
(3)該ゴム混合物を含む層中のポリエーテル共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴムを架橋して弾性層を形成する工程とを含み、
該ポリエーテル共重合体は、エチレンオキサイド由来のユニットと、エチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイド由来のユニットと、アリルグリシジルエーテル由来のユニットとを有し、
該工程(1)において、該アクリロニトリルブタジエンゴムはアクリロニトリル由来のユニットが25〜40モル%であり、かつムーニー粘度が70〜90である帯電部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる、感光体と当接し、該感光体を帯電させる帯電部材の製造方法及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置において、感光体に帯電部材を接触させて帯電する接触帯電方式が多く利用されている。接触帯電方式に用いられる帯電部材は、被帯電部材とのニップ幅を確保するために、芯金の周囲に弾性層を設けた構成が一般的である。また、かかる帯電部材は、一般に体積抵抗が10乃至10Ωcmの範囲内となるように構成されている。被帯電部材を効率良く、かつ均一に帯電させるためである。
【0003】
上記したような体積抵抗を有する導電性の弾性層として、本来的に導電性を備えているエピクロルヒドリンゴムからなる弾性層が提案されている。
【0004】
一方、エピクロルヒドリンゴムよりも安価なアクリロニトリルブタジエンゴムからなる弾性層も提案されている。しかし、アクリロニトリルブタジエンゴム自体は導電性が低い。そこで、アクリロニトリルブタジエンゴムにポリエーテル共重合体を加えることでアクリロニトリルブタジエンゴムの架橋物に導電性を付与することができる。このような構成のゴムローラは特許文献1に記載されている。
【0005】
しかし、ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの混合物を架橋させて得られる弾性体を帯電部材に適用しようとした場合、様々な課題が存在する。即ち、引用文献1の段落番号[0027]には、ポリエーテル共重合体とエチレン性不飽和ニトリルブタジエンゴムとの好ましい使用量が記載されている。そして、同段落には、ポリエーテル共重合体の配合量が多過ぎると架橋物が水分吸収により膨張しやすくなることが記載されている。これはポリエーテル共重合体の吸湿性が高いことに起因している。
【特許文献1】特開2001−115005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、帯電部材の低コスト化を図るために、特許文献1に係るゴムローラについて詳細に検討した。その結果、弾性層の導電性向上と、弾性層の高温高湿下での膨潤の抑制との双方を高いレベルで満足させることが困難であるとの知見を得た。そこで、本発明者等は、ポリエーテル共重合体の配合量に対するエチレン性不飽和ニトリルブタジエンゴム架橋物の導電性をより向上させる方法について検討を重ねた。その結果、ポリエーテル共重合体を混合するエチレン不飽和ニトリルブタジエンゴムのムーニー粘度を従来よりも高めたところポリエーテル共重合体の配合量に対して架橋物の導電性をより向上させることができることを見出した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、弾性層の導電性の向上と、弾性層の形状変化の環境依存性の軽減との双方をより高いレベルで両立させることのできる帯電部材の製造方法を提供する点にある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、環境に因らず、安定して高品位な電子写真画像を与える電子写真画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る帯電部材の製造方法は、
導電性芯軸と導電性の弾性層とをこの順に有する帯電部材の製造方法であって、
(1)ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとを混合してゴム混合物を調製する工程と、
(2)該ゴム混合物を含む層を導電性芯軸の外側に形成する工程と、
(3)該ゴム混合物を含む層中のポリエーテル共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムを架橋して弾性層を形成する工程とを含み、
該ポリエーテル共重合体は、エチレンオキサイド由来のユニットと、エチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイド由来のユニットと、アリルグリシジルエーテル由来のユニットとを有し、
該工程(1)において、該アクリロニトリルブタジエンゴムはアクリロニトリル由来のユニットが25モル%以上、40モル%以下であり、かつムーニー粘度が70以上、90以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電子写真画像形成装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体に当接して配置されている帯電部材と、帯電バイアス印加電源とを具備し、該帯電部材が上記方法によって製造された帯電部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多様な環境の下でも良好な帯電性能を安定して維持することができる帯電部材及び電子写真画像形成装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る帯電部材の製造方法についてより詳細に説明する。
【0013】
第1の工程;
本発明に係る帯電部材の製造方法の第1の工程においては、ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとを混合してゴム混合物を調製する。
【0014】
ここで用いられるポリエーテル共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムについて説明する。
【0015】
<ポリエーテル共重合体>
ポリエーテル共重合体は、エチレンオキサイド由来のユニット、エチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイド由来のユニット、及びアリルグリシジルエーテル由来のユニットからなる。これにより、弾性層に良好なイオン導電性を付与することができる。
【0016】
ポリエーテル共重合体において、エチレンオキサイド由来のユニットの組成比は80モル%以上、90モル%以下が好ましい範囲である。この範囲内とすることで、良好な導電性が得られる。また結晶性のために、導電性が低下することも抑えられる。
【0017】
アルキレンオキサイド由来のユニットとしては、特に制限はないが、導電性を効果的に発現させるために、ポリエーテル共重合体は適度な分子運動性を有することが望ましい。プロピレンオキサイドのように開環重合した後、側鎖にアルキル基を有するアルキレンオキサイドであることが好ましい。アリルグリシジルエーテル由来のユニットは、1モル%以上、19モル%以下が好ましい範囲である。この範囲内とすることで、架橋点が少なくなりすぎることによる圧縮永久歪み性が悪化を抑えられる。また、エチレンオキサイド由来のユニット量が少ないことによる導電性が低下も抑えられる。
【0018】
<アクリロニトリルブタジエンゴム>
アクリロニトリルブタジエンゴムとしては、アクリロニトリル由来のユニットが25モル%以上、40モル%以下である。これにより、アクリロニトリルブタジエンゴム自身の体積抵抗を1010Ω・cm程度にすることができる。また、アクリロニトリルブタジエンゴムに対するポリエーテル共重合体の相溶性が高くなることを抑えられる。
【0019】
また、ムーニー粘度を70以上、90以下の範囲とする。
【0020】
ここで、本発明に係るムーニー粘度は、以下の方法で測定した値とする。
【0021】
測定装置としては、ムーニービスコメーター(商品名:SMV−300:株式会社 島津製作所製)を用い、JIS K6300−1:2001に従って測定する。上記ムーニービスコメーターのダイはV型溝タイプ、ローターはL形ローターを使用する。測定用試料は、原料ゴム、即ちアクリロニトリルブタジエンゴムから、厚さ約6mm、直径50mmのものを2個切り出したものを用いる。更に、測定は、試料を100℃で1分間予熱した後、100℃で4分間、ローター回転数を2回転/分にて回転させて測定し、ムーニー粘度の値を得る。
【0022】
ムーニー粘度を上記範囲内とすることで、ポリエーテル共重合体の分散を抑え、且つゴム組成物の粘度が高くなり過ぎることによる加工性の低下を抑制できる。即ち、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリエーテル共重合体との相溶性が低下し、アクリロニトリルブタジエンゴム中におけるポリエーテル共重合体の分散が抑制される。その結果、ポリエーテル共重合体が凝集した状態で分散するためか、ポリエーテル共重合体の配合量に対する弾性層の導電性を向上させることができる。
【0023】
これにより、低吸湿性、すなわち高温多湿環境下における圧縮永久歪み性を有し、かつ電気抵抗の低い帯電部材の弾性層を提供することが可能となった。
【0024】
(混合方法)
ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの混合方法としては、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した混合方法や、オープンロールの様な開放型の混合機を使用した混合方法等を例示することができる。ここで、本発明者らの検討によれば、ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの混練条件が弾性層の電気抵抗に与える影響は殆ど認められなかった。そして本発明に係る効果は、アクリロニトリルブタジエンゴムのムーニー粘度により支配される。そして、ムーニー粘度が70以上、90以下の範囲内において、高いほど、電気抵抗の低下を見込める。
【0025】
ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムの配合比としては、ポリエーテル共重合体の量を(A)、アクリロニトリルブタジエンゴム(B)とすると、(A)/(B)=50/50乃至10/90が好ましい。より好ましくは、(A)/(B)=40/60乃至25/75である。
【0026】
(ゴム組成物)
ここで調製されるゴム組成物は、上記した2つの材料を含むことを基本として、他の材料を含んでもよい。
【0027】
(イオン導電材)
イオン導電材としては、カチオンが4級アンモニウム構造、アニオンが過塩素酸構造であることが好ましい。本発明において、ポリエーテル共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム両方の抵抗をより均一に低下させることは重要である。我々が種々検討した結果、アクリロニトリルブタジエンゴムの抵抗を効果的に低下させるためには、イオン導電材のカチオンの構造が4級アンモニウム構造であることが好ましいことを見出した。また、ポリエーテル共重合体の抵抗を効果的に低下させるためには、アニオンの構造が、過塩素酸構造であることが好ましいことを見出した。よって、ポリエーテル共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム両方の抵抗をより均一に低下させるイオン導電材として、過塩素酸4級アンモニウム塩が好適なイオン導電材であることを見出した。過塩素酸4級アンモニウム塩の添加量としては、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上、4質量部以下の範囲が好ましい。この範囲とすることで、過塩素酸4級アンモニウム塩により抵抗を確実に低下させることができる。また、4級アンモニウム塩の官能基としては、アルキル基及びヒドロキシエチル基を含有することで特に良好な導電性が得られる。下記構造式(1)に示すヒドロキシエチル基を含有することで、ポリエーテル共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴムの両方に対して相溶性が向上するためであると考えられる。
【0028】
【化1】

【0029】
(エピクロルヒドリンゴム)
当該ゴム組成物は、エピクロルヒドリンゴムを含有していてもよい。エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリン由来のユニット、エチレンオキサイド由来のユニットからなる2元共重合体でもよい。また、エピクロルヒドリン由来のユニット、エチレンオキサイド由来のユニット、アリルグリシジルエーテル由来のユニットからなる3元共重合体でもよい。
【0030】
ポリエーテル共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム、過塩素酸4級アンモニウム塩、エピクロルヒドリンゴムを含むゴム組成物を架橋した弾性層とすることにより、高温多湿環境下、低温低湿環境下における電気抵抗の変動を小さくすることが可能となる。
【0031】
また、以下の3つのユニットからなる3元共重合体からなるエピクロルヒドリンゴムを用いる場合、エピクロルヒドリン由来のユニットとエチレンオキサイド由来のユニットのモル比率により、電気抵抗及び温湿度環境による抵抗変動を調整可能である。(1)エピクロルヒドリン由来のユニット、(2)エチレンオキサイド由来のユニット及び(3)アリルグリシジルエーテル由来のユニット。
【0032】
また、以下の組成のエピクロルヒドリンゴムとすることにより、低抵抗かつ温湿度環境による抵抗変動を抑制することができる。
・上記(1)のユニットが20モル%以上、25モル%以下、上記(2)のユニットが70モル%以上、79モル%以下及び上記(3)のユニットが1モル%以上、10モル%以下であるエピクロルヒドリンゴム。
【0033】
更に、当該ゴム組成物には、補強材、増量材、可塑材、加硫剤等を添加することができる。
【0034】
(補強材)
補強材としては、例えば補強性を付与する目的でカーボンブラックを添加する場合、MT、FT、GPF、SRFカーボンブラック等の導電性が低いカーボンブラックとすることが好ましい。前記カーボンブラックは、ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、15質量部以下を添加することができる。また、高比表面積、高ストラクチャーといった特性を有する導電性のカーボンブラックも本発明のゴム組成物に対して抵抗の均一性を損なわない程度の量を添加することができる。
【0035】
(増量材)
増量材としては、各種炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ等の無機充填材を添加しても構わない。また、研磨性を向上させる目的で、補強性の低い炭酸カルシウムを添加することが好ましく、ゴム100質量部に対して30質量部以上、100質量部以下を添加することができる。炭酸カルシウムの平均粒子径としては、0.8μm以上、2.0μm以下が好ましい範囲である。
【0036】
また、エピクロルヒドリンゴムを含む場合は、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の受酸材を添加してもよく、ゴム100質量部に対して、1質量部以上、10質量部以下添加することができる。
【0037】
(可塑材)
可塑材としては、公知のオイル等を適宜添加することができる。本発明のゴム組成物は、極性ゴムを主成分とするため、各種エステル系可塑材を用いることが好ましく、具体的には、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。尚、感光体と接触して使用する導電性ローラの場合には、前記エステル化合物をプロピレングリコール等との重合により高分子量化したエステル化合物を用いることが好ましい。感光体への可塑材の移行をより有効に抑制できるからである。
【0038】
(加硫剤)
加硫剤としては、イオウやイオウ含有有機化合物やパーオキサイドをはじめとする各種加硫剤が使用できる。パーオキサイドを使用した場合には圧縮永久歪み性は良好なものが得られる。また、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンを加硫剤として使用した場合には、圧縮永久歪み性が優れた物が得られる。また、イオウやイオウ含有有機化合物は、上述の加硫剤と比較して、スコーチ性、圧縮永久ひずみの調整が容易であるため、より好ましく用いられる。
【0039】
その他にも、老化防止剤や加硫遅延剤、加工助剤等適宜添加してもよい。
【0040】
第2の工程;
次に、前記第1の工程で調製したゴム混合物を含む層を導電性芯軸の外側に形成する。
【0041】
導電性芯軸の周囲にゴム組成物の層を形成する方法としては、押出し成形を用いることができる。
【0042】
押出し成形に関して、詳細に説明する。まず、ゴム混合物を、芯金とともに押し出すことで導電性芯軸の周面をゴム組成物で被覆する。図3は本工程を模式的に示した説明図である。押出し機18は、クロスヘッド19を備える。クロスヘッド19には、矢印方向に回転している送りローラ20によって送られた導電性軸芯1aを後ろから挿入し、導電性軸心1aと円筒状の未加硫のゴム混合物とを一体的に押出す。これによって周面が未加硫のゴム混合物で被覆された導電性軸心が得られる。
【0043】
押出し成形温度は70℃以上、100℃以下の範囲が好ましい。この範囲内では、ポリエーテル共重合体等を含む極性ゴムの吸水による加硫時のボイドの形成が抑えられる。また、長時間連続で押出した場合のゴムのスコーチも抑えられる。
【0044】
ここでは、得られた導電性軸心の周囲の未加硫のゴム混合物の層の端部を定尺で切り取ったものを、未加硫ローラ21とした(図3参照)。
【0045】
第3の工程;
最後に、該ゴム混合物を含む層中のポリエーテル共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムを架橋して弾性層を形成する。架橋の為の加熱は、熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱などいずれの手法を採用しても良い。
【0046】
加熱温度は130℃以上、250℃以下、加熱時間は5分以上120分以下が好ましい。より好ましくは加熱温度が140℃以上、200℃以下、加熱時間は10分以上、40分以下である。この後、必要に応じて2次加硫することもできる。
【0047】
また、加硫後のローラを研磨用砥石によって、所望の形状、もしくはローラの表面粗さを整えてもよい。
【0048】
こうして得られた本発明に係る弾性層は、ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムの非相溶ブレンドゴム組成物である。ポリエーテル共重合体は、アクリロニトリルブタジエンゴム中に分散した、いわゆる海島構造を有する。
【0049】
上記第3の工程により得られた弾性層は、研磨用砥石を用いて、所望の形状に研磨してもよい。また、所望の表面粗さに整えることもできる。
【0050】
(表面層)
当該弾性層の表面には、更に、必要に応じて表面層を設けることができる。
【0051】
表面層を設けることにより、感光体上にピンホール等が生じた場合において、ピンホールへの帯電電流の集中を緩和し、画像に与える影響を軽微に抑える効果がある。
【0052】
表面層の電気抵抗値としては1×10Ω・cm以上、1×1012Ω・cm以下が好ましい。
【0053】
表面層のバインダーとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。
【0054】
(表面層のバインダー)
本発明の表面層のバインダーとしては、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。ラクトン変性アクリルポリオールをイソシアネートで架橋したウレタン樹脂が特に好適に用いられる。
【0055】
(表面層の導電剤)
表面層に導電性を付与する導電剤の具体例は、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化錫の導電性金属酸化物等の導電性粒子、または前記導電性粒子を他の粒子と複合化した導電性複合粒子を含む。これらを適宜量分散させることにより、所望の電気抵抗値とすることができる。
【0056】
(表面層の粗さ)
帯電ローラの表面に微小な凹凸を形成することで、帯電均一性の向上を図ることができる。特に、DC帯電方式において帯電均一性を向上することができる。
【0057】
凹凸の形成は、例えば表面粗し材としての微粒子を含有してもよい。表面層に含有する粗し材としては、ウレタン系微粒子やシリコーン系微粒子、アクリル系微粒子などの高分子化合物からなる微粒子を用いることが好ましい。
【0058】
また、導電性粒子、粗し材の他に、絶縁性の無機粒子を添加してもよい。無機粒子としては、シリカや酸化チタンや酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの無機微粉体を用いることが好ましい。
【0059】
(形成方法)
表面層の形成方法の具体例は、以下の方法を含む。
・上記の様なバインダー高分子を溶剤に溶解または分散し、これに導電性粒子、粗し材、無機粒子を分散させた液を、ディッピング、ビーム塗工、ロールコーター等の塗工法によって、弾性体層表面にコーティングする方法。
・バインダー高分子中に導電フィラーを練り込み、それを押出機などによって円筒形状に成形したものを弾性層に被覆する方法。
【0060】
(他の層)
なお、本発明にかかる帯電部材には、必要に応じて、弾性層や表面層以外に、接着層、拡散防止層、下地層、プライマー層等の機能層を設けることもできる。
【0061】
本発明に係る帯電部材の電子写真画像形成装置における、実施の形態を詳細に述べる。
【0062】
(電子写真画像形成装置)
図4は本発明にかかる電子写真画像形成装置の概略構成図である。該装置の概略は、感光体の帯電手段として帯電ローラを備え、現像手段として感光体上の現像剤と感光体が接触であって接触現像方法を採用した現像器を備え、転写手段として転写ローラを備え、ブレードクリーニング手段、帯電前露光手段、定着手段を備えた。
【0063】
像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体4は、矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0064】
電子写真感光体の帯電手段としての帯電ローラ2は、電子写真感光体4に所定の押圧力で接触させてあり、本例では帯電ローラを駆動し、電子写真感光体4と等速回転する。この帯電ローラ2に対して帯電バイアス印加電源S1から所定の直流電圧(この場合−1000Vとした)のみが印加されることで回転電子写真感光体4の面が所定の極性電位(暗部電位−400Vとした)に一様に接触帯電方式・DC帯電方式で帯電処理される。10は露光装置であり、例えばレーザービームスキャナーである。回転電子写真感光体4の一様帯電処理面に該露光装置10により目的の画像情報に対応した露光がなされることにより、電子写真感光体帯電面の露光明部の電位(明部電位−120Vとした)が選択的に低下(減衰)して静電潜像が形成される。
【0065】
現像装置11は、電子写真感光体面の静電潜像の露光明部に、電子写真感光体の帯電極性と同極性に帯電(現像バイアス−350V)しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー画像として可視化する。
【0066】
転写装置としての転写ローラ12は、電子写真感光体4に所定の押圧力で接触させて転写ニップ部を形成させてあり、電子写真感光体の回転と順方向に電子写真感光体の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S2からトナーの帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加される。転写ニップ部に対して不図示の給紙機構部から転写材14が所定の制御タイミングで給紙される。その給紙された転写材14の裏面が転写電圧を印加した転写ローラ12によりトナーの帯電極性とは逆極性に帯電されることにより、転写ニップ部において電子写真感光体4面側のトナー画像が転写材14の表面側に静電転写される。
【0067】
転写ニップ部でトナー画像の転写を受けた転写材は、回転電子写真感光体面から分離されて、不図示のトナー画像定着手段へ導入されてトナー画像の定着処理を受けて画像形成物として出力される。
【0068】
定着装置は、熱定着方式を用いており、不図示の定着ローラと加圧ローラ間の定着ニップにてトナー像を転写材14に加熱、加圧して熱定着した後に外部に排出する。
【0069】
両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機構に導入されて転写ニップ部へ再導入される。
【0070】
本発明に係る電子写真画像形成装置は、転写されず電子写真感光体上に残存したトナーを回収するクリーナー装置13を有する。
【0071】
転写バイアスにより生じた電子写真感光体上の電荷を除電するための前露光手段としての光照射部材7は、前記転写工程後かつ帯電工程前の領域に照射されるように配置される。前記光照射部材からの除電光は、現像工程後かつ転写工程前の領域に照射されるように前記光照射部材を配置されてもよい。また、光照射部材からの除電光は、クリーニング工程後かつ帯電工程前の領域に照射されるように前記光照射部材を配置されてもよい。前記光照射部材からの除電光は前記カートリッジに設けることも可能であり、更に、前記電子写真画像形成装置本体に設けることも可能である。
【0072】
本発明に係る帯電部材の弾性層は、ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムの非相溶ブレンドゴム組成物である。ポリエーテル共重合体は、アクリロニトリルブタジエンゴム中に分散した、いわゆる海島構造を有するゴム組成物となる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明のゴム組成物を用いて下記の要領で帯電ローラを作成し、帯電ローラの評価を行った。実施例及び比較例により詳細に説明する。
【0074】
(実施例1)
<ゴム組成物の調製>
下記(1−1)乃至(1−9)を、100℃に温度調節した加圧式ニーダーにて10分間混練して原料コンパウンドを調製した。
(1−1)ポリエーテル共重合体(エチレンオキサイド:プロピレンオキサイド:アリルグリシジルエーテル=90モル%:4モル%:6モル%:ポリエーテル共重合体):35質量部、
(1−2)アクリロニトリルブタジエンゴム(アクリロニトリル:ブタジエン=35モル%:65モル% ムーニー粘度 85:アクリロニトリルブタジエンゴムA):65質量部、
(1−3)イオン導電材[過塩素酸第4級アンモニウム塩(メチル−ジヒドロキシエチル−ドデシルアンモニウムパークロレート:イオン導電材A)]:2質量部、
(1−4)充填剤[重質炭酸カルシウム(商品名:ナノックス#30、丸尾カルシウム(株)製)]:60質量部、
(1−5)補強剤[カーボンブラック(MTサーマル)]:5質量部、
(1−6)酸化亜鉛:5質量部、
(1−7)ステアリン酸亜鉛:1質量部、
(1−8)老化防止剤[2−メルカプトベンツイミダゾール]:0.5質量部、
(1−9)可塑材[セバシン酸ポリエステル(商品名:ポリサイザーP202、大日本インキ工業(株)製)]:5質量部。
【0075】
得られた原料コンパウンドに下記(1−10)乃至(1−11)を加えて、25℃に温度調節したオープンロールで更に10分間混練してゴム組成物を調製した。
(1−10)加硫促進剤[テトラメチルチウラムモノスルフィド]:1質量部、
(1−11)加硫剤[硫黄]:2質量部。
【0076】
<評価用弾性体の調製>
前記ゴム組成物を用いて形成した弾性体の体積抵抗率を以下に述べる方法で測定した。
【0077】
先ず、前記ゴム組成物を、熱プレスにて10MPaの圧力下、160℃、30分間加硫を行って、100mm×150mm、厚さ約2mmの弾性体を2つ作成した。
【0078】
<体積抵抗率の測定>
上記で作成した弾性体の内の1つを用いて体積抵抗率測定用のサンプルを作製した。即ち、当該弾性体の両面に蒸着により、電極となる白金層を形成して抵抗測定用のサンプルを作製した。
【0079】
このサンプルを、温度23℃、湿度50%の環境に24時間放置した。
【0080】
その後、当該環境において、微小電流計を用いて当該サンプルの両電極間に200Vの直流電圧を印加して30秒後の電流を測定し、弾性体の厚さと電極面積とから弾性体の体積抵抗率を求めた。
【0081】
なお、測定には、微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER;(株)アドバンテスト社製)を用いた。結果を表1に示す。
【0082】
<弾性体の吸水性の評価>
前記で作製した弾性体の他の1つを用いて、当該弾性体の吸水性を以下に述べる方法で評価した。
【0083】
JIS K6258に基づき、室温25℃の環境下で蒸留水に72時間当該弾性体を浸漬放置した。そして、放置前の体積(V1)と、放置後の体積(V2)の値から、下記式(2)により膨潤率を算出した。
膨潤率(%)=(V2/V1−1)×100 ・・・(2)
結果を表1に示す。
【0084】
<導電性ローラの調製>
直径6mm、長さ250mmの円柱形を有する、表面にニッケルメッキを施した鋼製の軸芯体を用意した。この軸芯体の周面には、熱硬化性接着剤(商品名:メタロックN33)を塗布しておいた。
【0085】
図3に示した装置を用いて、上記軸芯体の周面に前記ゴム組成物を押し出して、当該ゴム組成物の層を形成した。
【0086】
前記ゴム組成物の、ゴム押出機18(内径50mm、L/D 20;Lはゴム押出機18の長さ、Dはゴム押出機18の直径)からの押し出しは、スクリュー回転数15rpm、シリンダ温度、ヘッド温度を70℃に調節して行った。
【0087】
周面にゴム組成物の層を形成した軸芯体を、電気オーブンの中で160℃で2時間加熱して、該ゴム組成物中のゴムの加硫および熱硬化性接着剤を硬化させて弾性層を形成した。
【0088】
その後、弾性層の両端部を除去した。また、弾性層の表面をプランジ研磨機(砥石 GC120、砥石径 直径300mm、砥石回転数 2500rpm、ワーク回転数 333rpm)を用いて研磨した。
そして、端部直径8.3mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の弾性層を有する導電性ローラを得た。
【0089】
この導電性ローラの弾性層の表面粗さの値を表1に示す。当該表面粗さの測定には、接触式表面粗さ計(SE−3300H:小坂研究所製)を用いた。また、当該表面粗さの値は、導電性ローラの周方向の任意の3個所(任意の場所を起点に120°刻み)における、当該導電性ローラの長手方向の任意の3個所の計9箇所の十点平均粗さ(RzJIS82)の測定値の平均値である。なお十点平均粗さの測定方法は、JIS B0601 1982に従った。測定条件は、カットオフ値0.8mm、測定距離8mm、送り速度0.1mm/sとした。
【0090】
<帯電ローラの作製>
(複合粒子の作製)
下記(1−12)に、下記(1−13)をエッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
(1−12)シリカ粒子(平均粒子径17nm、体積抵抗率1.8×1012Ω・cm):7.0kg、
(1−13)メチルハイドロジェンポリシロキサン:140g。
【0091】
上記混合物に、下記(1−14)をエッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行った。
(1−14)カーボンブラック粒子(粒子径15nm、体積抵抗率2.0×10Ω・cm)7.0kg。
【0092】
こうして、カーボンブラックを付着させたメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆シリカを調製した。
【0093】
その後、乾燥機を用いて以下の条件にて乾燥し、複合粒子を得た。
温度:80℃。
時間:60分間。
攪拌速度:22rpm。
得られた複合粒子は、平均粒径が15nm、体積抵抗率は1.8×10Ω・cmであった。
【0094】
なお、上記の平均粒径の測定は以下のようにして行った。
・透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率100万倍に拡大した複合粒子像を10個無作為にサンプリングする。
・その画像情報をもとに投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して体積平均粒径を求める。
【0095】
また、体積抵抗率は、Loresta−GP MCP−T600(三菱化学株式会社製)を用いて測定した抵抗より算出した。このときの印加電圧は、100V、印加圧力は10MPaとした。
【0096】
(金属酸化物粒子の作製)
下記(1−15)乃至(1−17)を混合してスラリーを調製した。
(1−15)ルチル型酸化チタン粒子(平均粒径15nm、体積抵抗率5.2×1010Ω・cm):1000g、
(1−16)表面処理剤[イソブチルトリメトキシシラン]:110g、
(1−17)溶媒[トルエン]:3000g。
このスラリーを、攪拌機で30分間混合した。
その後、有効内容積の80%が平均粒子径0.8mmのガラスビーズで充填されたビスコミルに供給し、温度35±5℃で湿式解砕処理を行った。
【0097】
上記の湿式解砕処理したものを、ニーダーを用いて減圧蒸留によりトルエンを除去した。減圧蒸留の条件は以下の通りとした。
・バス温度:110℃。
・製品温度:30〜60℃。
・減圧度:約100Torr。
【0098】
次いで、120℃で2時間表面処理剤の焼付け処理を行った。焼付け処理後の粒子は、室温まで冷却した後、ピンミルを用いて粉砕し、金属酸化物粒子を得た。
【0099】
(表層形成用塗料の調製)
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液(商品名:プラクセルDC2016、ダイセル化学工業(株)製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が20質量%となるように調整した。
【0100】
この溶液500質量部に対して、下記(1−18)乃至(1−22)を入れ、混合溶液を調製した。
(1−18)前記複合粒子:30質量部、
(1−19)前記金属酸化物粒子: 25質量部、
(1−20)架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(商品名;MBX−8、積水化学工業(株)製):30質量部、
(1−21) 変性ジメチルシリコーンオイル (商品名;SH28PA、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製):0.08質量部、
(1−22)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の1:1の混合物:98.84質量部。
【0101】
このとき、HDIとIPDIの混合物は、「NCO/OH=1.0」となるように添加した。HDIは、デュラネートTPA−B80E、商品名;旭化成工業製、IPDIは、ベスタナートB1370、商品名;デグサ・ヒュルス社製を使用した。
【0102】
450mLのガラス瓶に上記混合溶液280gと、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gとを混合した。そして、ペイントシェーカー分散機を用いて12時間分散し、表層形成用の塗料を得た。
【0103】
(帯電ローラの調製)
上記で得た塗料中に、前記で調製した導電性ローラを1回浸漬し、弾性層表面に当該塗料を塗布した。そして、常温で30分間以上風乾した。
【0104】
次いで80℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間、160℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥して、弾性層上に表層を形成し帯電ローラを得た。
【0105】
なお、ディッピングの条件は以下の通りとした。
・塗布浸漬時間:9秒。
・ディッピング塗布引き上げ速度:
・・初期速度:20mm/s。
・・最終速度:2mm/s。
・・20mm/sから2mm/sの間:時間に対して直線的に速度を変化させた。
【0106】
<帯電ローラの電気抵抗>
帯電ローラの電気抵抗を図2に示すような方法で測定した。図2中、1は導電性ローラ、15はステンレス製の円筒電極、16は抵抗、17はレコーダーを示す。
【0107】
帯電ローラと円筒電極との間の押圧力は片側4.9N、総荷重を9.8Nとした。そして、円筒電極を30rpmにて回転させながら外部直流電源S3から−200Vを10秒間印加した際の抵抗値を測定した。
【0108】
電気抵抗値は10秒間印加した際の平均値とした。
【0109】
結果を表1に示す。
【0110】
<Cセット画像評価>
作製した帯電ローラを、ドラム直径が24mmの電子写真感光体ドラムに一端で0.5kg重、両端で合計1kg重のバネによる押し圧力で当接させた。そして、この状態で、温度40℃、湿度95%の環境に1ヶ月間放置した。
【0111】
その後、前記環境から感光体ドラムと当接した状態で、帯電部材を取り出し、温度23℃、湿度50%RH環境に6時間放置した。
【0112】
その後、当接させた帯電部材を、図4に示す構成の電子写真装置(帯電部材には直流電圧のみの電圧を印加)に装着し、温度23℃、湿度50%RH環境下において、ハーフトーン画像を出力し、その出力画像を評価した。
【0113】
前記電子写真装置に用いた電子写真感光体ドラムは、アルミニウムシリンダー(直径24mm)に膜厚18μmのOPC層をコートしたものである。最外層には、変性ポリカーボネートをバインダ樹脂とする電荷輸送層を有する。反転現像方式の感光ドラムである。
【0114】
トナーは、ワックスを中心に荷電制御剤と色素等を含むスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、更にポリエステル薄層を重合させシリカ微粒子等を外添した、ガラス転移点63℃、質量平均粒径6μmの重合トナーである。
【0115】
なお、帯電ローラによる帯電後の電子写真感光体の表面電位(暗部電位)VDは−400Vとなるように調節した。また、プロセススピードは94mm/sとした。
【0116】
出力画像の評価結果を表1に示す。表1中、評価基準は下記のとおりである。
ランク1:ハーフトーン画像上にスジ等が確認されない
ランク2:ハーフトーン画像上に部分的に薄いスジが確認されるが、実用上問題にならない画像
ランク3:ハーフトーン画像に明瞭なスジがある
ランク4:画像上にスジが目立つ
このCセット画像評価において、帯電ローラの放置環境(温度40℃、湿度95%)は、通常の電子写真装置の使用環境より、温度・湿度ともに高く、帯電部材の変形量が大きくなり易い過酷な環境である。従って、このような条件下に放置された帯電ローラであっても、Cセット画像が発生しなければ、実用上、帯電ローラに由来するCセットに関する問題は生じない蓋然性が高いといえる。
【0117】
<Cセット変形量の測定>
前記画像出力を行うとともに、帯電ローラのCセット変形量を測定した。
【0118】
帯電ローラの導電性芯軸を軸として、ローラの半径を測定し、当接部でもっとも変形している部分と当接していない部分の半径の差をもって、Cセット変形量とする。測定は、東京光電子工業(株)の全自動ローラ測定装置を用い、帯電ローラを1°ずつ回転させ360°測定を行う。当接部の半径でもっとも小さい値と、当接していない部分の半径との差をもってCセット変形量とした。本測定をローラ長手中央部と中央部から90mmの位置の3点で測定し、最も大きな変形量を、帯電ローラの変形量とした。
【0119】
(実施例2)
表1に示すように、アクリロニトリルブタジエンゴム(アクリロニトリル:ブタジエン=33.5モル%:66.5モル% ムーニー粘度 77.5:アクリロニトリルブタジエンゴムB)に変更した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製した。
【0120】
作製した帯電ローラにおいて、弾性層の表面粗さ、弾性層体積抵抗率及び吸水性の評価、ローラ抵抗、Cセット変形量測定及びCセット画像評価を実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0121】
(実施例3〜5)
表1に示すように、ポリエーテル共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴムの添加量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製した。
【0122】
作製した帯電ローラにおいて、弾性層の表面粗さ、弾性層体積抵抗率及び吸水性の評価、ローラ抵抗、Cセット変形量測定及びCセット画像評価を実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0123】
実施例1〜5の結果において、弾性層の抵抗が低く、かつ高温多湿環境下における感光体への当接放置によるCセット量を低減したことにより、過酷な当接放置を行った場合においても、良好な画像が得られる。
【0124】
(比較例1)
表2に示すように、組成を変更した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製した。
【0125】
作製した帯電ローラにおいて、弾性層の表面粗さ、弾性層体積抵抗率及び吸水性の評価、ローラ抵抗、Cセット変形量測定及びCセット画像評価を実施例1と同様の方法で行った。結果を表2に示す。
【0126】
比較例1はアクリロニトリルブタジエンゴムのムーニー粘度が低い。実施例1と同程度の体積抵抗を有する弾性層とするためには、ポリエーテル共重合体が50質量部と多くなる。そのため、弾性層の吸水性が大きくなり、その結果Cセット量が増加し、その結果として、Cセット画像のランクが低かった。
【0127】
(比較例2)
表2に示すように組成を変更した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製した。
【0128】
作製した帯電ローラにおいて、弾性層の表面粗さ、弾性層体積抵抗率及び吸水性の評価、ローラ抵抗、Cセット変形量測定及びCセット画像評価を実施例1と同様の方法で行った。結果を表2に示す。
【0129】
比較例2はアクリロニトリルブタジエンゴムのムーニー粘度が比較例1と比べてさらに低い。実施例1と同程度の体積抵抗を有する弾性層とするためには、ポリエーテル共重合体が60質量部と多くなる。そのため、弾性層の吸水性が大きくなり、その結果Cセット量が増加し、その結果としてCセット画像のランクが低かった。
【0130】
(比較例3)
表2に示すように組成を変更した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製した。
【0131】
作製した帯電ローラにおいて、弾性層の表面粗さ、弾性層体積抵抗率及び吸水性の評価、ローラ抵抗、Cセット変形量測定及びCセット画像評価を実施例1と同様の方法で行った。結果を表2に示す。
【0132】
比較例3はアクリロニトリルブタジエンゴムのムーニー粘度が比較例1と比べてさらに低い。実施例1と同程度の体積抵抗を有する弾性層とするためには、ポリエーテル共重合体が60質量部と多くなる。そのため、弾性層の吸水性が大きくなり、その結果Cセット量が増加し、その結果としてCセット画像のランクが低かった。
【0133】
(比較例4)
表2に示すように組成を変更した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製した。
【0134】
作製した帯電ローラにおいて、弾性層の表面粗さ、弾性層体積抵抗率及び吸水性の評価、ローラ抵抗、Cセット変形量測定及びCセット画像評価を実施例1と同様の方法で行った。結果を表2に示す。
【0135】
比較例4はアクリロニトリルブタジエンゴムのムーニー粘度が実施例1と比べて低い。実施例1と同程度の体積抵抗を有する弾性層とするためには、ポリエーテル共重合体が55質量部と多くなる。そのため、弾性層の吸水性が大きくなり、その結果Cセット量が増加し、その結果としてCセット画像のランクが低かった。
【0136】
(実施例6)
実施例1に記載のゴム組成物の混練条件として、100℃に温度調節した加圧式ニーダーにて40分間混練して原料コンパウンドを調製した以外は、実施例1と同様に帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラにおいて、弾性層の表面粗さ、弾性層体積抵抗率及び吸水性の評価、ローラ抵抗、Cセット変形量測定及びCセット画像評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0137】
結果を表1に示す。
【0138】
(比較例5)
比較例1に記載のゴム組成物の混練条件として、100℃に温度調節した加圧式ニーダーにて40分間混練して原料コンパウンドを調製した以外は、比較例1と同様に帯電ローラを作製した。作製した帯電ローラにおいて、弾性層の表面粗さ、弾性層体積抵抗率及び吸水性の評価、ローラ抵抗、Cセット変形量測定及びCセット画像評価を実施例1と同様の方法で行った。その結果を表2に示す。
【0139】
上記実施例6及び比較例5の結果は各々、下記表1及び表2に示した通り、実施例1及び比較例1の結果とほぼ同様であった。これらの結果から、本発明の効果が、原料コンパウンドの混練時間の長さに依拠せず、アクリロニトリルブタジエンゴムのムーニー粘度により支配されていることが分る。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
上記表1、表2中の組成の詳細は以下の通りである。
【0143】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明に係る帯電部材の概略断面図
【図2】帯電部材の抵抗測定方法の概略説明図
【図3】帯電部材の製造方法の概略説明図
【図4】電子写真画像形成装置の概略断面図
【符号の説明】
【0145】
1 導電性ローラ
1a 芯金
1b 弾性抵抗層
2 帯電ローラ
4 感光ドラム
10 レーザービームスキャナー
11 現像器
12 転写ローラ
13 クリーニングブレード
14 転写材
15 ステンレス製の円筒電極
16 抵抗
17 レコーダー
18 押出し機
19 クロスヘッド
20 芯金送りローラ
21 未加硫ローラ
22 突っ切り冶具
S1 帯電バイアス印加電源
S2 転写バイアス印加電源
S3 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯軸と導電性の弾性層とをこの順に有する帯電部材の製造方法であって、
(1)ポリエーテル共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとを混合してゴム混合物を調製する工程と、
(2)該ゴム混合物を含む層を導電性芯軸の外側に形成する工程と、
(3)該ゴム混合物を含む層中のポリエーテル共重合体及びアクリロニトリルブタジエンゴムを架橋して弾性層を形成する工程とを含み、
該ポリエーテル共重合体は、エチレンオキサイド由来のユニットと、エチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイド由来のユニットと、アリルグリシジルエーテル由来のユニットとを有し、
該工程(1)において、該アクリロニトリルブタジエンゴムはアクリロニトリル由来のユニットが25モル%以上、40モル%以下であり、かつムーニー粘度が70以上、90以下であることを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項2】
電子写真感光体と、該電子写真感光体に当接して配置されている帯電部材と、帯電バイアス印加電源とを具備し、該帯電部材が請求項1に記載の方法で製造された帯電部材であることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−9066(P2009−9066A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172731(P2007−172731)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】