説明

帯電防止剥離層を形成するための塗料及び帯電防止剥離フィルム

【課題】帯電防止剥離層を形成するための塗料及び帯電防止剥離フィルムの提供
【解決手段】有機溶媒に分散した導電性高分子、ケイ素原子に1以上のイソシアナト基が直接結合したケイ素化合物、末端にヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサン、水酸基価が20mgKOH/g以下及び/又は酸価が20mgKOH/g以下のアクリル樹脂、アミノ樹脂を含む、帯電防止剥離層を形成するための塗料であって、前記ポリオルガノシロキサンと前記アクリル樹脂は、固形分質量比で10:90ないし60:40である塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性に優れ、高い剥離性及び低いハジキ性を示す剥離フィルムを製造するための帯電防止剥離層の形成用塗料及び帯電防止剥離フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化が進むに伴い、セラミックグリーンシートの厚みが益々薄膜化する傾向にある。
一方、セラミックグリーンシートが薄膜化するに伴って、セラミックスラリーの塗工速度が速くなり、これにより発生する静電気量が増加することとなるが、この除電が不十分になると、大気中の塵埃等の異物が吸着してしまうという問題が発生していた。
また、薄膜化に伴って、従来使用されている剥離フィルムでは剥離面のセラミックスラリーに対するぬれ性が不十分な場合があり、それにより、セラミックスラリー塗工時にスラリーのハジキが発生しやすくなるという問題があった。そのため、剥離フィルムの剥離面は、セラミックスラリーに対する良好なぬれ性を有することが必要となるが、一方、ハジキ性の低い剥離層が設けられた剥離フィルムを用いれば、セラミックスラリーを塗布した際のハジキや形状変形を小さくすることは可能であるものの、その後のグリーンシートの剥離が困難となるという問題があった。
従って、剥離フィルムは、上記のような問題を解決し得る、即ち、帯電防止性に優れ且つ高い剥離性及び低いハジキ性を有する剥離フィルムとすることが要求される。
【0003】
特開2005−88389号公報には、チオフェン及び/又はチオフェン誘導体を重合して得られる導電性重合体を含有する帯電防止層の上にアルキッド変性シリコーン樹脂及び/又はアクリル変性シリコーン樹脂からなる剥離層、並びに、帯電防止層の反対の面に汚れ防止層が形成されていることを特徴とした剥離フィルムが開示されている。該剥離フィルムは帯電防止層を形成させることにより、低湿度下においても静電気の発生を防止し得るという点では優れた方法といえる。
しかし、アクリル変性シリコーン樹脂では、スラリーのハジキを抑えることはできるものの、剥離力が重くなる傾向にあるため、グリーンシートを剥離することが困難になる可能性があり、また、溶剤系のセラミックスラリーを塗布すると、剥離層が溶解してグリーンシートが剥れなくなるため、水系セラミックスラリーしか使用できない。
【0004】
国際公開第98/51490号パンフレットには、二軸延伸ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムの少なくとも片面に、ぬれ性のよい剥離層を有し、セラミックシート等の何れに対しても適度の力で剥離が可能であり、かつキャリアフィルムとして用いた際に、加熱下での荷重による寸法変化が極めて小さいことを特徴とした離型フィルムが開示されている。
しかし、この離型フィルムは、帯電防止性能を備えていないため、セラミックシートのキャリアシートとして使用すると、セラミックシートの剥離時やセラミックスラリーの塗布時に発生する静電気によりシートに欠陥が発生する可能性がある。
また、この離型層は、アクリル樹脂及びメラミン架橋剤からなる樹脂混合物とシリコーン樹脂とを配合して得られる樹脂組成物を主成分としており、この樹脂組成物のうち、アクリル樹脂は剥離層表面のぬれ性を良好なものとし、剥離層の靭性を高め、更には適度な剥離性を得るために配合されているが、ハジキを抑えるためにアクリル樹脂の添加量を増やすと、十分な剥離性が得られなくなる可能性がある。
【0005】
特開平11−300895号公報には、基材フィルムの少なくとも一方の表面にπ電子共役系導電性高分子を含有する導電層が形成されると共に、導電層の表面又は基材フィル
ムの他方の表面に剥離層が形成されていることを特徴とした剥離フィルムが開示されている。この剥離フィルムは、π共役系導電性高分子を含有する導電層を設けることにより、低湿度下においても静電気の発生を防止し得るという点で優れているといえる。
しかし、剥離層の剥離性が高いために表面のハジキ性が強くなり、剥離層によってセラミックスラリー等がはじかれてしまい、塗布液の均一な層形成が困難になるという問題が生じる。
【特許文献1】特開2005−88389号公報
【特許文献2】国際公開第98/51490号パンフレット
【特許文献3】特開平11−300895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、帯電防止性に優れ、高い剥離性及び低いハジキ性を示す剥離フィルムを製造するための帯電防止剥離層の形成用塗料及び帯電防止剥離フィルムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、導電性高分子と特定の成分を特定の割合で含有してなる塗料を用いて層を形成すると、得られた層は、帯電防止性に優れ且つ高い剥離性及び低いハジキ性を有する帯電防止剥離層になり得ること、及び該帯電防止剥離層は、単層で上記の効果を奏することを見い出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)有機溶媒に分散した導電性高分子、ケイ素原子に1以上のイソシアナト基が直接結合したケイ素化合物、末端にヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサン、水酸基価が20mgKOH/g以下及び/又は酸価が20mgKOH/g以下のアクリル樹脂、アミノ樹脂を含む、帯電防止剥離層を形成するための塗料であって、前記ポリオルガノシロキサンと前記アクリル樹脂は、固形分質量比で10:90ないし60:40である塗料、(2)基材の少なくとも片面に、前記(1)記載の塗料を用いて形成した帯電防止剥離層を有してなる帯電防止剥離フィルム、
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の帯電防止剥離層を形成するための塗料を使用することにより、帯電防止性に優れ、高い剥離性及び低いハジキ性を示す剥離フィルムを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の帯電防止剥離層を形成するための塗料は、有機溶媒に分散した導電性高分子、ケイ素原子に1以上のイソシアナト基が直接結合したケイ素化合物、末端にヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサン、水酸基価が20mgKOH/g以下及び/又は酸価が20mgKOH/g以下のアクリル樹脂、アミノ樹脂を含む、帯電防止剥離層を形成するための塗料であって、前記ポリオルガノシロキサンと前記アクリル樹脂は、固形分質量比で10:90ないし60:40である塗料である。
【0011】
本発明の塗料に使用する有機溶媒に分散した導電性高分子における導電性高分子としては、π−共役二重結合を有するモノマーを重合させた導電性の高分子微粒子を使用する事ができる。
π−共役二重結合を有するモノマーとしては、導電性高分子を製造するために使用されるモノマーであれば特に限定されないが、例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N
−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール及び3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン及びp−メチルアニリン等のアニリン誘導体、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
導電性高分子微粒子は、上記に挙げたπ−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性高分子微粒子を使用することもできる。
【0012】
導電性高分子微粒子を分散させる有機溶媒としては、導電性高分子に損傷を与えずに分散させうるものであれば特に限定はしない。前記有機溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類等の高揮発性有機溶媒、並びに、例えば、ミネラルスピリット、イソパラフィン、テレピン油、オレンジ油のリモネン、P−メンタン、α−ピネン、β−ピネン、ターピノーレン、イソボルニルアセテート、ターピニルアセテート、ターピネオール、α−ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のターペンティン系溶媒等の低揮発性有機溶媒が挙げられる。
尚、分散液中の導電性高分子の固形分濃度は、0.2ないし10.0%、好ましくは、0.5ないし6.0%、より好ましくは1.0ないし4.0%の範囲である。
【0013】
ケイ素原子に1以上のイソシアナト基が直接結合したケイ素化合物としては
、例えば、テトライソシアナトシラン、モノメチルトリイソシアナトシラン、モノエチルトリイソシアナトシラン、モノブチルトリイソシアナトシラン、モノメトキシトリイソシアナトシラン、モノエトキシトリイソシアナトシラン、モノn−プロポキシトリイソシアナトシラン、モノイソプロポキシトリイソシアナトシラン、モノブトキシトリイソシアナトシラン、モノ2−ブトキシトリイソシアナトシラン、モノt−ブトキシトリイソシアナトシラン等のシリルイソシアナト化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらケイ素化合物は単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0014】
末端にヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサンは、分子中に1個またはそれ以上のヒドロキシル基を有するケイ素化合物であるが、例えばα、ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン等が例示される。無論ここに例示したものに限らないが、この化合物としては、室温で10〜1000000mm2/sの範囲のケイ素化合物、好ましくは50
〜100000mm2/sの範囲の粘度を有する化合物を用いる。
【0015】
水酸基価が20mgKOH/g以下及び/又は酸価が20mgKOH/g以下のアクリル樹脂としては、水酸基価及び酸価が前述の範囲にあるアクリル樹脂であれば特に限定し
ないが、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のポリメタクリル酸エステル、更にはアクリル酸高級アルキル、メタクリル酸高級アルキル等のアクリル酸エステル類が挙げられる。また、2種類以上のアクリル樹脂モノマーを共重合させた共重合体、或いはアクリル樹脂モノマーと他の樹脂モノマーとを共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0016】
アミノ樹脂としては、例えばモノメトキシメチル化メラミン樹脂、ジメトキシメチル化メラミン樹脂、トリメトキシメチル化メラミン樹脂、テトラメトキシメチル化メラミン樹脂、ペンタメトキシメチル化メラミン樹脂、ヘキサメトキシメチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、モノメチロールメラミン樹脂、ジメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂、テトラメチロールメラミン樹脂、ペンタメチロールメラミン樹脂、ヘキサメチロールメラミン樹脂、イミノ基含有メトキシメチル化メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、ブチル化尿素樹脂、メチル化メチロール尿素樹脂等が例示される。無論ここに例示したものに限らないが、これら樹脂を単独または2種類以上混合して用いる事ができる。また、2種類以上のアミノ樹脂モノマーを共重合させた共重合体、或いはアミノ樹脂モノマーと他の樹脂モノマーとを共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0017】
ケイ素原子に1以上のイソシアナト基が直接結合したケイ素化合物の使用量は、塗料中の固形分濃度が0.01〜1%の範囲で使用される。
末端にヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサンの使用量は、塗料中の固形分濃度が0.05〜5%の範囲で使用される。
水酸基価が20mgKOH/g以下及び/又は酸価が20mgKOH/g以下のアクリル樹脂の使用量は、塗料中の固形分濃度が0.1〜5%の範囲で使用される。
アミノ樹脂の使用量は、塗料中の固形分濃度が0.1〜5%の範囲で使用される。
また、前記ポリオルガノシロキサンと前記アクリル樹脂の固形分質量比(ポリオルガノシロキサン:アクリル樹脂)は10:90ないし60:40の範囲であり、好ましくは、30:70ないし45:55の範囲である。
【0018】
本発明の塗料には、上記の成分に加えて、アミノ樹脂の架橋を促進するために用いる触媒、界面活性剤、溶剤等を添加することができる。
アミノ樹脂の架橋を促進するために用いる触媒としては、塩化アンモニウム、芳香族スルホン酸、酸性リン酸エステル及び/またはそれら化合物の塩類が例示できる。無論ここに例示したものに限らないが、この化合物を単独または2種類以上混合して用いる事もできる。
【0019】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を用いることができる。
記界面活性剤を使用する際の量は、導電性高分子1質量部に対して0.2ないし2.0質量部の範囲である。
【0020】
溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエ
チルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等を単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
また、希釈溶剤として、例えばエステル類、エーテル類、炭化水素類、ケトン類、アミド類、アルコール類等を用いることができる。例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等を単独または、数種組み合わせて用いることもできる。
溶媒・希釈溶剤の使用量は、塗料中の固形分濃度が、0.5ないし6.0%となる範囲で使用され、好ましくは、固形分濃度が、1.0ないし4.0%となる範囲である。
【0022】
また、本発明の塗料には、さらに用途や塗布対象物等の必要に応じて、分散安定剤、増粘剤、バインダー等の樹脂を加えることも可能である。
バインダーを使用する際のバインダーとしては、例えば、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニールカルバゾール)、炭化水素樹
脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニール、ABS
樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
バインダーを使用する際の量は、導電性高分子1質量部に対して0.1質量部ないし10質量部である。
【0023】
次に、本発明に使用する導電性高分子の製造方法の例として、ポリピロールの製造方法に付いて説明する。ポリピロールは、例えば以下に示す製造方法(1)、製造方法(2)により製造することができる。
(1)有機溶媒と、水と、アニオン系界面活性剤とを混合攪拌してなるO/W型の乳化液中に、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することによる製造方法。
(2)水性媒体中に可溶化できる量のピロールおよび/またはピロール誘導体、アニオン界面活性剤および/またはノニオン界面活性剤、および酸化剤を含む水性媒体において重合を開始し、そして、ポリピロールの重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒を該重合系に添加し更に重合を進行させることによる製造方法。
上記製造方法(1)及び(2)の製造条件及び操作に付き以下に説明する。
【0024】
製造方法(1)
製造方法(1)で使用可能なピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーとしては、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等が挙げられる。特に好ましいのはピ
ロールである。
【0025】
製造方法(1)に用いるアニオン系界面活性剤としては、種々のものが使用できるが、疎水性末端を複数有するもの(例えば、疎水基に分岐構造を有するものや、疎水基を複数有するもの)が好ましい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成させることができる。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
【0026】
反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、ピロールおよび/ピロール誘導体のモノマー1molに対し0.2mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.05mol〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では得られた導電性微粒子に導電性の湿度依存性が生じてしまう場合がある。
【0027】
製造方法(1)において乳化液の有機相を形成する有機溶媒は、水への溶解度が1%以下であり、且つ、酢酸ブチルの揮発速度を100とした場合の揮発速度が10より大きくなる高揮発性有機溶媒である。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒であるが、前記高揮発性有機溶媒は、単独で、又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0028】
乳化液における有機相と水相との割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではピロールモノマーの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなる。
【0029】
製造方法(1)で使用する酸化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が使用できる。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。塩化第二鉄等のルイス酸でもポリピロールを重合できるが、生成した粒子が凝集し、ポリピロールを微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
【0030】
反応系中での酸化剤の量は、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、導電性微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上ではポリピロールが凝集して導電性微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
【0031】
製造方法(1)は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを乳化液中に分散させる工程、(c)モノマーを酸化重合しアニオン系界面活性剤にポリピロールを接触吸着させる工程、
(d)有機相を分液し導電性微粒子を回収する工程。
【0032】
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、乳化液の調製時に行う混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機
、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
【0033】
製造方法(2)
製造方法(2)で使用可能なピロールおよび/またはピロール誘導体としては、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等が挙げられる。特に好ましいのはピロールである。
【0034】
水性媒体中に可溶化できるピロールおよび/またはピロール誘導体の量としては、水に対して80g/L以下であり、特に好ましくは、20g/Lないし1g/Lである。
水性媒体中に可溶化できない量のピロールおよび/またはピロール誘導体(飽和濃度以上のピロールおよび/またはピロール誘導体)が添加されると、重合開始直後から塊状のポリピロールが生成され、目的とする微粒子は得られない。また、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーが1g/L以下では、重合反応が極めて遅くなり、所望する微粒子を得るまでの時間が長時間となることからあまり好ましくない。
【0035】
製造方法(2)に使用することができるアニオン界面活性剤としては、通常使用されるアニオン界面活性剤が使用でき、特に限定されるものではないが、疎水性末端を複数有するもの(例えば、疎水基に分岐構造を有するものや、疎水基を複数有するもの)が好ましい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成させることができ、重合後において水相と有機溶媒相との分離が容易であり、有機溶媒相に分散した導電性微粒子が入手し易い。疎水性末端を複数有するアニオン界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−オクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
また、上記のアニオン界面活性剤は単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0036】
製造方法(2)に使用することができるノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルグルコシド類、脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が挙げられる。
上記のノニオン界面活性剤は単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0037】
アニオン界面活性剤および/またはノニオン界面活性剤の使用量は、ピロールおよび/ピロール誘導体のモノマー1molに対し0.2mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.05mol〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では得られた導電性微粒子に導電性の湿度依存性が生じてしまう場合がある。
【0038】
製造方法(2)で使用する酸化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が使用できる。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。塩化第二鉄等のルイス酸でもポリピロールを重合できるが、生成した粒子が凝集し、ポリピロールを微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
【0039】
使用する酸化剤の量は、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、導電性微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上ではポリピロールが凝集して導電性微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
【0040】
製造方法(2)で使用する水性媒体は、基本的に水であり、所望により、形成されるポリピロール微粒子の導電率の向上と導電率の経時変化を減少させる目的でドーパント等を加えることができる。
使用する水性媒体の量は、使用するピロールおよび/またはピロール誘導体が可溶化できる量、即ち、前記で定義されたように、ピロールおよび/またはピロール誘導体の濃度が80g/L以下となる量であって、特に好ましくは、20g/Lないし1g/Lとなる量である。
【0041】
上記のように製造方法(2)においては、ドーパントを加えることができる。
製造方法(2)では、水性媒体中に所定のドーパントを添加することで、導電率の向上と経時変化を減少させることを可能とし得る。
製造方法(2)でドーパントを使用する場合のドーパントの種類としては、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーに可溶であれば特に制限はなく、一般的にピロールおよび/またはピロール誘導体の重合体を含んでなる導電性微粒子に好適に用いられるアクセプター性ドーパントを適宜使用できるが、代表的なものとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸類、過塩素酸、塩素、臭素等のハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸等がある。これらは、酸形態であってよいし、塩形態にあることもできる。モノマーに対する溶解性の観点から好ましいものは、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロスルホンイミドテトラブチルアンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等である。
【0042】
ドーパントを使用する場合のドーパントの使用量は、生成するピロール重合体単位ユニット当たりドーパント0.01〜0.3分子となる量が好ましい。0.01分子以下では、十分な導電性パスを形成するに必要なドーパント量としては不十分であり、高い導電性を得ることが難しい。一方、0.3分子以上加えてもドープ率は向上しないから、0.3分子以上のドーパントの添加は経済上好ましくない。ここでピロール重合体単位ユニットとは、ピロールモノマーが重合して得られるピロール重合体のモノマー1分子に対応する繰返し部分のことを指す。
【0043】
製造方法(2)において、水性媒体中に可溶化できる量のピロールおよび/またはピロール誘導体、アニオン界面活性剤および/またはノニオン界面活性剤、および酸化剤をを含む水性媒体において重合を開始した後、ポリピロールの重合率が10〜60%となる時
点で有機溶媒が添加される。ポリピロールの重合率が20〜50%となる時点で有機溶媒が添加されるのがより好ましい。重合率が10%未満の時点で有機溶媒が添加された場合、ポリピロールの共役二重結合が充分に成長していないため、所定の導電性が得られなくなる。また、その後の重合が極めて遅くなる他、水と有機溶媒の分離も極めて悪くなる。逆に重合率が60%を越えた時点で有機溶媒が添加された場合、有機溶媒へ移行するポリピロール粒子の大きさは数百nm以上の大きな粒子となり、分散安定性も悪いものとなる。
尚、重合率は、ガスクロマトグラフィーを用いて残存モノマーを測定し、当初の添加モノマー量と残存モノマー量の比から容易に算出することができる。
【0044】
ポリピロールの粒径をあまり大きくせず、また、ポリピロール粒子の凝集を起こさないためには、反応系中に、ある程度の量の残存モノマー(未反応のモノマー)の存在が重要であると考えられ、そのため、重合率が向上して残存モノマーの量が減少すると急激にポリピロールの粒径の増大及びポリピロール粒子の凝集が起こるものと考えられる。
即ち、ポリピロールの粒径をあまり大きくせず、また、ポリピロール粒子の凝集を起こさないためには、反応系中の残存モノマー(未反応のモノマー)量が、当初に添加したモノマー量の40〜90%が残存する時点で有機溶媒を添加することが重要であるといえる。
【0045】
また、同様に、有機溶媒を添加する時点において水性媒体中に分散している微粒子の大きさも極めて重要である。水性媒体中におけるポリピロールの重合率(%)とその際得られるポリピロールの平均粒子径(nm)の関係において、ポリピロールの重合率が、ある一定値を超えるとポリピロールの平均粒子径が急激に大きくなる。そのため、例えば、ポリピロールの平均粒子径が100nmを超えた時点で有機溶媒を添加しても、有機溶媒へ移行するポリピロール粒子の大きさは結果的に数百nm以上の大きな粒子となりやすく、また、分散安定性も悪いものとなりやすい。
従って、有機溶媒の添加は、ポリピロールの粒子径が100nm以下の時点で行うのが好ましい。
尚、ポリピロールの平均粒子径は、レーザードップラー法により容易に測定することができる。
【0046】
添加する有機溶媒としては、高揮発性有機溶媒、低揮発性有機溶媒又は高揮発性有機溶媒及び低揮発性有機溶媒の混合物を使用することができ、前記高揮発性有機溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類等が挙げられ、前記低揮発性有機溶媒としては、例えば、ミネラルスピリット、イソパラフィン、テレピン油、オレンジ油のリモネン、P−メンタン、α−ピネン、β−ピネン、ターピノーレン、イソボルニルアセテート、ターピニルアセテート、ターピネオール、α−ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のターペンティン系溶媒が挙げられ、ターペンティン系溶媒が好ましい。
また、自然由来で環境的にも配慮されている点では、リモネンが好ましい。
有機溶媒の使用量は、重合反応に使用する水の量に対して体積比で5ないし40%(v/v)が好ましく、特に好ましくは、10ないし25%(v/v)である。
5%(v/v)未満では、粒子密度が高くなるため分散性が悪くなり、結果として凝集が起こる。40%(v/v)を超える場合は相対的に粒子密度が低くなるため、粒子間の反発力が小さくなり、分散を保てなくなる。
【0047】
前記ポリピロール微粒子の製造方法は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン界面活性剤および/またはノニオン界面活性剤、ピロールおよび/または
ピロール誘導体のモノマー及び所望によりドーパントを水に加えて混合攪拌する工程、
(b)酸化剤を加えて酸化重合を開始する工程、
(c)重合率が10〜60%となる時点で有機溶媒を添加する工程、
(d)混合攪拌して更に重合反応を進行させる工程、
(e)有機相を分液し有機溶媒層にナノ分散したポリピロール微粒子を回収する工程。
【0048】
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
【0049】
上記製造方法(1)により得られた有機溶媒層にナノ分散したポリピロール微粒子又は上記製造方法(2)により得られた有機溶媒層にナノ分散したポリピロール微粒子は、そのままポリピロール分散液として使用することができる。また、必要に応じて濃縮し、層分離を起こさない他の溶媒で必要な程度まで希釈した後にポリピロール分散液として使用することもできる。
【0050】
本発明は、基材の少なくとも片面に、前記帯電防止剥離層を形成するための塗料を用いて形成した帯電防止剥離層を有してなる帯電防止剥離フィルムに関する。
帯電防止剥離フィルムは、上述の帯電防止剥離層を形成するための塗料を基材上に塗布し、必要に応じて、乾燥、熱処理することにより容易に製造することができる。
【0051】
本発明の帯電防止剥離フィルムに使用される基材としては、グリーンシート用として通常使用される基材であれば特に限定はしないが、例えば、ポリエステルフィルム等が挙げられ、ポリエステルとしては、通常のポリエステルフィルムに使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0052】
帯電防止剥離層を形成するための塗料の基材への塗布方法も特に限定されず、例えばスクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、オフセット印刷機、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター等を用いて、印刷またはコーティングすることができる。
形成される帯電防止剥離層の厚さは、50nmないし200nmの範囲である。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
製造例1
スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム1.5mmolをトルエン50mLに溶解し、さらにイオン交換水100mLを加え20℃に保持しつつ乳化するまで攪拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、30分攪拌し、次いで0.12M過硫酸アンモニウム水溶液50mL(6mmol相当)を少量ずつ滴下し、4時間反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエン中に黒色のポリピロールが分散したポリピロール分散液(固形分濃度1.3%)を得た。
【0054】
実施例1
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリ
スト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0055】
実施例2
ポリアニリン有機溶媒分散液「ORMECON NX−B001X」(日産化学工業(株)製)33質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル、キシレン及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0056】
実施例3
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、モノメチルトリイソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0057】
実施例4
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「XF3905」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)0.3質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0058】
実施例5
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「サーモラックEF−36」(綜研化学(株)製:水酸基価8mgKOH/g、酸価4mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添
加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0059】
実施例6
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ハイパールM−5002HO」(根上工業(株)製:水酸基価20mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0060】
実施例7
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ダイヤナールBR−73」(三菱レイヨン(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価3mgKOH/g)4.5質量部とアクリル樹脂「アクトフローCB−3060」(綜研化学(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)2.2質量部との混合物(水酸基価0mgKOH/g、酸価20mgKOH/gのアクリル樹脂として用いた。)、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0061】
実施例8
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)8.3質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.6%の塗料を調製した。
【0062】
実施例9
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)1.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサ
ーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度1.6%の塗料を調製した。
【0063】
実施例10
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、メチロール基型メチル化メラミン樹脂「サイメル370」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト602」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、トルエン及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0064】
実施例11
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.4%の塗料を調製した。
【0065】
実施例12
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−18」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.3%の塗料を調製した。
【0066】
比較例1
ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部を酢酸エチルで希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度0.7%の塗料を調製した。
【0067】
比較例2
ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花
王(株)製)10質量部を酢酸エチルで希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度1.6%の塗料を調製した。
【0068】
比較例3
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、硬化型シリコーン「KS−779H」(信越化学工業(株)製)26.7質量部、白金触媒「CAT−PL−50T」(信越化学工業(株)製)0.27質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部を添加し、トルエンで希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度5.7%の塗料を調製した。
【0069】
比較例4
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、硬化型シリコーン「KS−719」(信越化学工業(株)製)27.1質量部、スズ触媒「CAT−PS−8S」(信越化学工業(株)製)1.4質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部を添加し、トルエンで希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度5.3%の塗料を調製した。
【0070】
比較例5
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部及び芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度1.4%の塗料を調製した。
【0071】
比較例6
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「サーモラックEF−42」(綜研化学(株)製:水酸基価21mgKOH/g、酸価4mgKOH/g)6.7質量部、界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.6%の塗料を調製した。
【0072】
比較例7
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ダイヤナールBR−73」(三菱レイヨン(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価3mgKOH/g)3.3質量部とアクリル樹脂「アクトフローCB−3060」(綜研化学(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価60mgKOH/g)3.3質量部との混合物(水酸基価0mgKOH/g、酸価30mgKOH/gのアクリル樹脂として用いた。)、界面活
性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)10質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度2.6%の塗料を調製した。
【0073】
比較例8
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)20質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度4.5%の塗料を調製した。
【0074】
比較例9
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)1.9質量部、芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)0.01質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)0.7質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度1.5%の塗料を調製した。
【0075】
比較例10
製造例1で調製したポリピロール分散液100質量部に、ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.6質量部、テトライソシアナトシラン0.1質量部、アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)6.7質量部を添加し、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒で希釈した後、ディスパーミキサーにて攪拌速度100rpmで30分間攪拌し、固形分濃度1.3%の塗料を調製した。
【0076】
実施例1ないし12及び比較例1ないし10で調製した塗料を表1に纏めた。
尚、表中、「水酸基価」及び「酸価」の数値は、mgKOH/gを示し、「固形分質量比」の数値は、ポリオルガノシロキサンとアクリル樹脂の固形分質量比(ポリオルガノシロキサン:アクリル樹脂)を示し、「固形分濃度」は、調製した塗料中の固形分濃度(%)を示し、各成分の量の数値は質量部を示し、各成分の種類は以下に列挙したものを示す。
<導電性高分子分散液>
A1:製造例1で調製したポリピロール分散液
A2:ポリアニリン有機溶媒分散液「ORMECON NX−B001X」(日産化学工業(株)製)
<ケイ素化合物>
B1:テトライソシアナトシラン
B2:モノメチルトリイソシアナトシラン
<ポリオルガノシロキサン>
C1:ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「PRX−413」(東レダウコーニングシリコーン(株)製)
C2:ヒドロキシル基含有シリコーンオイル「XF3905」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)
C3:硬化型シリコーン「KS−779H」(信越化学工業(株)製)
C4:硬化型シリコーン「KS−719」(信越化学工業(株)製)
<アミノ樹脂>
E1:完全アルキルメチル化メラミン樹脂「サイメル300」(三井サイテック(株)製)
E2:メチロール基型メチル化メラミン樹脂「サイメル370」(三井サイテック(株)製)
<アクリル樹脂>
D1:アクリル樹脂「ポリナール500」(大橋化学工業(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)
D2:アクリル樹脂「サーモラックEF−36」(綜研化学(株)製:水酸基価8mgKOH/g、酸価4mgKOH/g)
D3:アクリル樹脂「ハイパールM−5002HO」(根上工業(株)製:水酸基価20mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)
D4:アクリル樹脂「ダイヤナールBR−73」(三菱レイヨン(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価3mgKOH/g)
D5:アクリル樹脂「アクトフローCB−3060」(綜研化学(株)製:水酸基価0mgKOH/g、酸価60mgKOH/g)
D6:アクリル樹脂「サーモラックEF−42」(綜研化学(株)製:水酸基価21mgKOH/g、酸価4mgKOH/g)
<触媒>
F1:芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト600」(三井サイテック(株)製)
F2:芳香族スルホン酸系触媒「キャタリスト602」(三井サイテック(株)製)
F3:白金触媒「CAT−PL−50T」(信越化学工業(株)製)
F4:スズ触媒「CAT−PS−8S」(信越化学工業(株)製)
<界面活性剤>
G1:界面活性剤「ホモゲノールL−100」(花王(株)製)
G2:界面活性剤「ホモゲノールL−18」(花王(株)製)
<有機溶媒>
H1:酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶媒
H2:酢酸エチル、キシレン及びイソプロピルアルコールの混合溶媒
H3:トルエン及びイソプロピルアルコールの混合溶媒
H4:酢酸エチル
H5:トルエン
表1
【表1】

【0077】
実施例13:剥離フィルムの作製
実施例1ないし12及び比較例1ないし10で調製した塗料を基材(PETフィルム)の片面に、150メッシュのグラビアロールを用い、キスリバース法にて塗布した後、速度10m/min、温度110℃で乾燥して、塗膜厚みが250nmである剥離フィルムを得た。
【0078】
試験例1:剥離フィルムの物性・性能評価
実施例において作成した剥離フィルム(実施例1ないし12及び比較例1ないし10で調製した塗料を用いて作成した剥離フィルム)の物性・性能評価を行った。
尚、測定方法及び評価方法は下記の通りである。
得られた結果は表2に纏めた。
(1)表面抵抗値
表面抵抗値は、室温25℃、湿度40%雰囲気下にて、低効率計((株)ダイアインスツルメンツ製、ハイレスタ UP MCP−HT450)を用いて測定した。また、測定は二端子法にて行い、UA プローブ(MCP−HTP111)を用いた。なお、表面抵抗値1010Ω以下が帯電防止性として適正範囲である。
(2)剥離強度
形成された塗膜に粘着テープ(ニットー31B、幅250mm、長さ500mm)を貼り合わせ、5kgの圧着ローラーで圧着し、室温25℃、20時間の条件で維持した後、剥離層と粘着テープとの剥離力を引張り試験機にて測定した。なお、平均荷重1.0N以下が剥離性としての適正範囲である。
(3)剥離帯電性
上記(2)と同様の方法で貼り合わせた剥離層と粘着テープを、剥離角度180度で剥離した直後の剥離フィルム側の帯電量をトレック・ジャパン(株)製 ELECTROSTATIC VOLTMETER MODEL 520を用いて測定した。なお、測定は室温25℃、湿度50%雰囲気下にて行い、10回の測定を行った平均値を帯電量とし、帯電量が1.0kV未満であるとき○、1.0kV以上であるとき×として評価した。
(4)静電圧減衰時間
10cm×20cmのフィルムに5kV印加し、0kV(0%)に減衰するまでの時間を測定した。
(5)セラミックスラリーのぬれ性
チタン酸バリウム100質量部に、バインダーとしてのポリメタクリル酸イソブチル6.5質量部、溶媒としてのメチルエチルケトン40質量部及びトルエン30質量部を加え、混合、分散しセラミックスラリーを得た。このセラミックスラリーを、実施例13で作成した各剥離フィルムの剥離面に乾燥後の厚みが1μmとなるように塗工し、乾燥処理してグリーンシートを作製した。この際のセラミックスラリーのぬれ性(ハジキ、塗工のムラの有無)を目視で観察し、下記の判定基準に従い評価した。
○:ハジキ、塗工ムラはなく良好
△:端部にハジキあり
×:全体的にハジキあり
(6)セラミックシートの剥離性
グリーンシートの剥離性に関しては、(5)の方法にて作製したグリーンシートを粘着テープ(ニットー31B)にて剥離した際の剥離性を、下記の判定基準に従い評価した。○:容易に剥離できる
△:剥離強度が大きく剥れにくい
×:剥れない
(7)残存接着率
ポリエステル粘着テープ(ニットー31B)をJIS・G4305に規定する冷間圧延ステンレス板(SUS板304)に貼り付けた後の剥離力を測定し、基礎接着力(f0
とする。また、前記ポリエステル粘着テープをフィルムサンプルの塗工面に2kgの圧着ローラーで圧着し、30秒間放置した後、テープを剥がす。そして剥がした粘着テープを上記のステンレス板に貼り、該貼り合わせ部の剥離力を測定し、残存接着力(f)とする。得られた基礎接着力(f0)と残存接着力(f)より下式を用いて残存接着率を算出し
評価した。
残存接着率(%)=(f/f0)×100
尚、残存接着率の好ましい範囲は、85%以上である。残存接着率が85%未満であると、例えば、剥離フィルムをロール状に巻いて保管する際に、剥離層を構成する成分が隣接するフィルムの表面に転写(いわゆる背面転写)し、剥離層のぬれ性や剥離性等の特性が不良となることがあるため好ましくない。
表2
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒に分散した導電性高分子、ケイ素原子に1以上のイソシアナト基が直接結合したケイ素化合物、末端にヒドロキシル基を有するポリオルガノシロキサン、水酸基価が20mgKOH/g以下及び/又は酸価が20mgKOH/g以下のアクリル樹脂、アミノ樹脂を含む、帯電防止剥離層を形成するための塗料であって、前記ポリオルガノシロキサンと前記アクリル樹脂は、固形分質量比で10:90ないし60:40である塗料。
【請求項2】
基材の少なくとも片面に、請求項1記載の塗料を用いて形成した帯電防止剥離層を有してなる帯電防止剥離フィルム。

【公開番号】特開2009−138101(P2009−138101A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315935(P2007−315935)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】