説明

帯電防止性ハードコート塗料、これを用いてなる帯電防止性ハードコート膜および成形体

【課題】 本発明は、レベリング性が良好で、塗膜化した際の塗膜は優れた透明性、耐擦傷性、および帯電防止性を有する帯電防止性ハードコート塗料を提供する。また、優れた透明性、耐擦傷性、および帯電防止性を有する帯電防止性ハードコート膜を提供する。また、樹脂成形体の表面に透明性、耐擦傷性、および帯電防止性に優れたハードコート塗膜を有する成形体を提供する。
【解決手段】 本発明の帯電防止性ハードコート塗料は、電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物、及びポリエーテル変性化合物を含むものである。また、本発明の帯電防止性ハードコート膜は、上記帯電防止性ハードコート塗料を塗布、硬化させることにより形成されてなるものである。また、本発明の成形体は、上記帯電防止性ハードコート膜を樹脂成形体の表面に有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜化した際の塗膜は優れた耐擦傷性と帯電防止性を有する帯電防止性ハードコート塗料に関し、また、該塗料を用いてなる帯電防止性ハードコート膜および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ画面などの画像表示用透明材料や、工業用無塵室(クリーンルーム)等の粉塵を嫌う室内で使用する、壁面や床面の構造材、室内に設置される機械の窓材、機械の電子部品、またはそれらの保存、運搬もしくは製造工程において用いられる樹脂成形体は、帯電防止性に加えて透明性や、美観またはその性能を保持するため耐擦傷性が求められている。
【0003】
また、従来よりプラスチック製品に帯電防止性を付与する方法としては、第四級アンモウニウム塩等の界面活性剤タイプの帯電防止剤や、金属粉、カーボン粉末等の導電性微粒子を、プラスチック製品の表面に塗布したり、内部に混入させたりする方法が取られてきた。
【0004】
しかし、上述のような樹脂成形体に界面活性剤タイプの帯電防止剤を用いる場合には、周辺湿度に依存するため安定した帯電防止性が得られず、また持続性に欠け、樹脂を硬化させる際の硬化阻害の要因になりやすく耐擦傷性の低下を招きやすいという問題を有している。
【0005】
また、導電性微粒子を用いる場合には、湿度に依存することなく帯電防止性とその持続性に優れているが、樹脂成形体が不透明または着色してしまい、樹脂成形体を通して透視しにくくなるという欠点を有している。また、帯電防止性ハードコート膜における導電性微粒子の含有率が高く樹脂の硬化の際の妨げとなってしまうため、耐擦傷性が低下してしまうという欠点も有している。また、このような樹脂成形体を曲げ加工等の加熱成形をした後は、導電性微粒子間に隙間が生じるため、帯電防止性が低下してしまうという問題も生じている。また、帯電防止性ハードコート塗料とした際に、導電性微粒子が沈降しやすく再凝集するため、安定した帯電防止性、および耐擦傷性を有する塗膜が得られないという欠点も有している。
【0006】
このような問題を解決するため、ハードコート塗料にリチウム塩化合物を添加することにより、帯電防止性を付与するという技術が提案されている(特許文献1参照)。しかし、このようなハードコート塗料にリチウム塩化合物を添加したのみの塗料を塗布すると、レベリング性があまり良くないため、ムラが出やすく、均一で美しい塗膜を得ることができないという問題が生じた。またこのような塗料から形成された塗膜は、帯電防止性が必ずしも十分なものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−41194号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、レベリング性が良好で、塗膜化した際の塗膜は優れた透明性、耐擦傷性、および帯電防止性を有する帯電防止性ハードコート塗料を提供することを目的とする。また、本発明は、優れた透明性、耐擦傷性、および帯電防止性を有する帯電防止性ハードコート膜を提供することを目的とする。また、本発明は、樹脂成形体の表面に透明性、耐擦傷性、および帯電防止性に優れたハードコート塗膜を有する成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
均一で美しい塗膜を得るため、本発明者らは種々のレベリング剤を検討したところ、特定のレベリング剤を用いることにより、飛躍的に帯電防止性が向上し、しかも耐擦傷性を低下させることのない塗膜が得られることを見出した。
【0010】
即ち、本発明の帯電防止性ハードコート塗料は、電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物、及びポリエーテル変性化合物を含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の帯電防止性ハードコート膜は、上記本発明の帯電防止性ハードコート塗料を塗布、硬化させることにより形成されてなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の成形体は、上記本発明の帯電防止性ハードコート膜を樹脂成形体の表面に有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物、及びポリエーテル変性化合物を含む帯電防止性ハードコート塗料としたことにより、塗膜化した際にムラが生じ難く、透明性、耐擦傷性、帯電防止性に優れた塗膜を得ることができる。
【0014】
また、本発明の帯電防止性ハードコート膜は、上記帯電防止性ハードコート塗料から形成されてなるため、樹脂成形体等の被塗布部材を、その色味を変えることなく傷や埃から守ることができる。
【0015】
また、本発明の成形体は、樹脂成形体の表面に上記帯電防止性ハードコート膜を有するため、当該樹脂成形体の色味を変えることなく、耐擦傷性と帯電防止性に優れた成形体とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0017】
まず、本発明の帯電防止性ハードコート塗料について説明する。本発明の帯電防止性ハードコート塗料は、電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物、及びポリエーテル変性化合物を含むものである。
【0018】
電離放射線硬化型樹脂組成物は、塗膜化した際に、塗膜に耐擦傷性を付与するための樹脂成分として用いられる。このような電離放射線硬化型樹脂組成物としては、電離放射線(紫外線または電子線)の照射によって架橋硬化することができる光重合性プレポリマーを用いることができ、この光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が使用でき、被塗布部材の種類や用途等に応じて適宜選択することができる。また、これらのアクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性の向上や、硬化収縮の調整等、種々の性能を付与するために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
【0019】
光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能アクリルモノマー等の1種若しくは2種以上が使用される。
【0020】
また、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの他、紫外線照射によって硬化させて使用する場合には、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を用いることが好ましい。
【0021】
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等があげられる。
【0022】
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどがあげられる。
【0023】
また、樹脂成分としては、以上のような電離放射線硬化型樹脂組成物の他、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、熱可塑性樹脂や熱硬化型樹脂等の他の樹脂を用いてもよい。
【0024】
次に、リチウム塩化合物は、塗膜化した際に、塗膜に帯電防止性を付与するための成分として用いられる。このように本発明においては、塗膜に帯電防止性を付与するための成分として導電性微粒子を用いていないため、塗膜化した際の塗膜は透明性に優れたものとすることができる。また例えば、樹脂成形体の表面に用いて、加熱による曲げ加工を施した場合にも、帯電防止性を低下させることがない。また第四級アンモウニウム塩等の界面活性剤タイプの帯電防止剤を用いた場合とは異なり、周辺湿度に依存することがなく持続性に優れたものとすることができる。また、樹脂成分を硬化させる際に硬化阻害の要因となることはなく、耐擦傷性の低下を招くこともない。
【0025】
このようなリチウム塩化合物としては、塩化リチウム、水酸化リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、およびトリフルオロメタンスルホン酸リチウムやこれらを含む化合物等があげられる。
【0026】
このようなリチウム塩化合物におけるリチウムの含有量は、塗膜化した際の塗膜の厚み等によって異なってくるので一概にいえないが、塗膜化した際の塗膜中に下限としては0.01重量%以上、さらには0.02重量%以上とするのが好ましく、上限としては0.5重量%以下、さらには0.1重量%以下とするのが好ましい。0.01重量%以上とすることにより、塗膜化した際の塗膜に十分な帯電防止性を付与することができ、0.5重量%以下とすることにより、塗膜の表面硬度を維持することができる。
【0027】
次に、ポリエーテル変性化合物は、帯電防止性を向上させるための成分、またレベリング性を向上させ、塗膜化した際にムラを生じさせ難くするための成分として用いられる。ポリエーテル変性化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等があげられ、なかでも取り扱い性が良くレベリング性に優れるという観点からポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましい。このようなポリエーテル変性化合物を用いることにより、用いなかった場合、あるいは他のレベリング剤を用いた場合と比べて、飛躍的に帯電防止効果が向上した理由は必ずしも明らかではないが、ポリエーテルに含まれる酸素原子によりリチウムイオンの配位場が安定してリチウムの物質移動が速やかに行なわれるためではないかと考えられる。
【0028】
このようなポリエーテル変性化合物の含有量は、塗膜化した際の塗膜中に、下限としては0.01重量%以上、さらには0.05重量%以上とするのが好ましく、上限としては1重量%以下、さらには0.5重量%以下とするのが好ましい。0.01重量%以上とすることにより、塗膜化した際の塗膜に十分な帯電防止性を付与することができ、またレベリング性も向上させることができる。1重量%以下とすることにより、良好な塗膜外観とし、また、表面硬度等の物性の低下を防止することができる。
【0029】
以上のような本発明の帯電防止性ハードコート塗料は、上記光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーに溶解させて無溶剤塗料としたり、有機溶剤等の希釈溶媒で希釈して有機溶剤塗料としてもよい。またこのような本発明の帯電防止性ハードコート塗料は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、必要に応じて、滑剤、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤等の添加剤を添加してもよい。
【0030】
このような本発明の帯電防止性ハードコート塗料は、上述の電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物、及びポリエーテル変性化合物、及び必要に応じて添加した希釈溶媒、その他の樹脂成分、添加剤等を混合し溶解または分散して帯電防止性ハードコート塗料とすることができる。
【0031】
このような本発明の帯電防止性ハードコート塗料は、樹脂成形体などの被塗布部材に塗布し、電離放射線を照射し硬化させることにより、被塗布部材の表面に透明性、耐擦傷性、帯電防止性に優れた塗膜を形成することができる。
【0032】
次に、本発明の帯電防止性ハードコート膜について説明する。本発明の帯電防止性ハードコート膜は、被塗布部材に上述の本発明の帯電防止性ハードコート塗料を塗布、硬化させることにより形成されてなるものである。
【0033】
また、上記帯電防止性ハードコート塗料から形成される本発明の帯電防止性ハードコート膜は、上記帯電防止性ハードコート塗料を従来公知のコーティング方法、例えば、バーコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、ディップコーター、スプレー、スクリーン印刷、刷毛などによって、被塗布部材、例えば樹脂成形体、ガラス板などの耐擦傷性と帯電防止性を付与したいものに直接塗布し必要に応じて乾燥させ、電離放射線を照射し硬化させることにより作製することができる。
【0034】
電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100nm〜400nm、好ましくは200nm〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0035】
帯電防止性ハードコート膜の厚みは、特に限定されないが1μm〜50μm、好ましくは2μm〜30μm、更に好ましくは3μm〜15μm程度である。帯電防止性ハードコート膜の厚みを1μm以上とすることにより、耐擦傷性に優れた膜とすることができ、50μm以下とすることにより、硬化収縮による樹脂成形体の反りの強さを緩和し、また樹脂成分の未硬化による表面硬度の低下を防止することができる。
【0036】
次に、本発明の成形体について説明する。本発明の成形体は、上述の本発明の帯電防止性ハードコート膜を樹脂成形体の表面に有するものである。
【0037】
樹脂成形体の形状としては、「フィルム」、「シート」、「プレート」等のいかなる厚みのものであっても良く、また例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであっても良い。
【0038】
樹脂成形体の樹脂の種類は、特に限定されないが、フィルムやシートの場合は、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アセチルセルロース、シクロオレフィン等の樹脂からなるものがあげられ、プレート等の場合は、アクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなるものがあげられる。樹脂成形体の表面には、本発明の帯電防止性ハードコート塗料との接着性を向上させるため、プラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理、下引き易接着層の形成等の易接着処理を施してもよい。
【0039】
本発明の成形体は、このような樹脂成形体上に、上記本発明の帯電防止性ハードコート塗料を、上述と同様にして本発明の帯電防止性ハードコート膜を形成することにより作製することができる。
【0040】
本発明の成形体は、樹脂成形体の表面に上述した本発明の帯電防止性ハードコート膜を有しているため、透明性、耐擦傷性、および帯電防止性に優れている。また、導電性微粒子により帯電防止性を有するものとは異なり、曲げ加工等の加熱成形後でも、帯電防止性が良好である。したがって、本発明の成形体は、透明性、耐擦傷性、および帯電防止性が必要な光学用部材、ディスプレイ画面などの画像表示用透明材料などで使用することが好適であり、また、工業用無塵室(クリーンルーム)等の室内で使用する、壁面や床面の構造材、室内に設置される機械の窓材、機械の電子部品等の用途に用いることが可能である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本実施例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
【0042】
[実施例1]
下記処方の帯電防止性ハードコート塗料を混合し、実施例1の帯電防止性ハードコート塗料を作製した。次に、樹脂成形体として厚み125μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に、前記実施例1の帯電防止性ハードコート塗料をバーコーター法により塗布、乾燥した後、高圧水銀灯で紫外線を照射して厚み4μmの実施例1の帯電防止性ハードコート膜を形成し、実施例1の帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0043】
なお、処方中のリチウム塩化合物aは、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを20%含有したペンタエリスリトールトリアクリレートとし、ポリエーテル変性化合物aはポリエーテル変性シリコーンとした。
【0044】
<実施例1の帯電防止性ハードコート塗料の処方>
・電離放射線硬化型樹脂組成物(固形分100%)50部
(ウレタンアクリレート)(U−6LPA:新中村化学社)
・光重合性モノマー(固形分100%) 45部
(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
(A−DPA:新中村化学社)
・リチウム塩化合物a(固形分100%) 5部
(PETA−20R:三光化学工業社)
・ポリエーテル変性化合物a(固形分100%)0.1部
(ペインタッド29:東レ・ダウコーニング・シリコーン社)
・光重合開始剤 3部
(イルガキュア184:チバスペシャリティケミカルズ社)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 150部
【0045】
[実施例2]
実施例1の帯電防止性ハードコート塗料で、リチウム塩化合物aをリチウム塩化合物b(リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンを20%含有したトリメチロールプロパントリアクリレート、固形分100%、TMPTA−20T:三光化学工業社)とし、ポリエーテル変性化合物aをポリエーテル変性化合物b(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、固形分100%、メガファックF142D:大日本インキ化学工業社)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の帯電防止性ハードコート塗料、帯電防止性ハードコート膜、および帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0046】
[比較例1]
実施例1の帯電防止性ハードコート塗料を下記処方の帯電防止性ハードコート塗料に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の帯電防止性ハードコート塗料、帯電防止性ハードコート膜、および帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0047】
<比較例1の帯電防止性ハードコート塗料の処方>
・電離放射線硬化型樹脂組成物 33部
(固形分80%)(ウレタンアクリレート)
(ユニディック17-813:大日本インキ化学工業社)
・導電性微粒子(二酸化錫−五酸化アンチモン)104部
・光重合開始剤 0.8部
(イルガキュア184:チバスペシャリティケミカルズ社)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 128部
・トルエン 385部
【0048】
[比較例2]
実施例1の帯電防止性ハードコート塗料を下記処方の帯電防止性ハードコート塗料に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の帯電防止性ハードコート塗料、帯電防止性ハードコート膜、および帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0049】
<比較例2の帯電防止性ハードコート塗料の処方>
・電離放射線硬化型樹脂組成物(固形分100%)50部
(ウレタンアクリレート)(U−6LPA:新中村化学社)
・光重合性モノマー(固形分100%) 40部
(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
(A−DPA:新中村化学社)
・第四級アンモウニウム塩(固形分50%) 20部
(ブレンマーQA:日本油脂社)
・光重合開始剤 3部
(イルガキュア184:チバスペシャリティケミカルズ社)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 150部
【0050】
[比較例3]
実施例1の帯電防止性ハードコート塗料で、ポリエーテル変性化合物aを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例3の帯電防止性ハードコート塗料、帯電防止性ハードコート膜、および帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0051】
[比較例4]
実施例1の帯電防止性ハードコート塗料で、ポリエーテル変性化合物aをポリエステル変性シリコーン(固形分25%、BYK−370:ビックケミー社)0.4部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例4の帯電防止性ハードコート塗料、帯電防止性ハードコート膜、および帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0052】
[比較例5]
実施例1の帯電防止性ハードコート塗料で、ポリエーテル変性化合物aをアクリル系重合物(固形分52%、BYK−355:ビックケミー社)0.5部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例5の帯電防止性ハードコート塗料、帯電防止性ハードコート膜、および帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0053】
[比較例6]
実施例1の帯電防止性ハードコート塗料で、ポリエーテル変性化合物aをアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(固形分50%、ペインタッドA:東レ・ダウコーニング・シリコーン社)0.5部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例6の帯電防止性ハードコート塗料、帯電防止性ハードコート膜、および帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0054】
[比較例7]
実施例1の帯電防止性ハードコート塗料で、ポリエーテル変性化合物aをフルオロシロキサン(固形分5%、ペインタッド7:東レ・ダウコーニング・シリコーン社)1部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例6の帯電防止性ハードコート塗料、帯電防止性ハードコート膜、および帯電防止性ハードコートフィルム(成形体)を作製した。
【0055】
実施例、及び比較例で得られた帯電防止性ハードコートフィルムについて、塗膜のムラ、透明性、耐擦傷性、帯電防止性、及び帯電防止性の湿度依存性について評価した。評価結果を表1に示す。
【0056】
(1)塗膜のムラの評価
実施例、及び比較例で得られた帯電防止性ハードコートフィルムの帯電防止性ハードコート膜について、ムラが生じているかどうか目視にて評価した。評価は、全くムラがなく均一な塗膜となっているものを「◎」、若干うねりが生じているものを「○」、明らかにうねりが生じているものを「×」とした。
【0057】
(2)透明性の評価
まず、実施例1のポリエステルフィルムのヘーズをJIS K7136:2000に基づきヘーズメーター(NDH2000:日本電色社)を用いて測定した。次に実施例、及び比較例で得られた帯電防止性ハードコートフィルムのヘーズを測定し、前記ポリエステルフィルムのヘーズとの差が1%未満であったものを「○」、1%以上であったものを「×」とした。なお、各電防止性ハードコートフィルムの光を入射させる面は帯電防止性ハードコート膜を有する面とした。
【0058】
(3)耐擦傷性の評価
実施例、及び比較例で得られた帯電防止性ハードコートフィルムの帯電防止性ハードコート膜を有する面を、#0000のスチールウールを用いて、面積1cm2を1kg荷重で10往復し、目視にてキズが確認されなかったものを「○」、キズが確認されたものを「×」とした。
【0059】
(4)帯電防止性の評価
実施例、及び比較例で得られた帯電防止性ハードコートフィルムを、10cm×10cmの大きさに切り、23℃、50%RHの環境に48時間放置した後、表面抵抗率を表面抵抗計(デジタルマルチメータ抵抗計:HEWLETT・PACKARD社)を用いて測定し、測定値が1×1012Ω未満であったものを「○」、1×1014Ω以上であったものを「×」とした。
【0060】
(5)帯電防止性の湿度依存性の評価
(4)で用いた実施例、及び比較例1、2の帯電防止性ハードコートフィルムについて、帯電防止性の湿度依存性について評価した。まず23℃、20%RHの環境に48時間放置した後、上記表面抵抗計を用いて表面抵抗率を測定し、次に、23℃、80%の環境に48時間放置した後、表面抵抗率を測定し、測定値の幅が102Ω以下であったものを「○」、測定値の幅が103Ω以上であったものを「×」とした。
【0061】
【表1】

【0062】
表1からも明らかなように、実施例の帯電防止性ハードコートフィルムは、帯電防止性ハードコート膜が電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物、及びポリエーテル変性化合物を含む帯電防止性ハードコート塗料から形成されたものであるため、帯電防止性ハードコート膜は、ムラを生じることなく、透明性、耐擦傷性、帯電防止性、及び湿度依存性に優れたものとなった。
【0063】
一方、比較例1の帯電防止性ハードコートフィルムは、帯電防止性ハードコート膜が導電性微粒子を含有するものであったため、実施例と比べて透明性及び耐擦傷性に劣るものとなった。また比較例1の帯電防止性ハードコート塗料は、実施例と比べてレベリング性の劣るものであり、帯電防止性ハードコート膜とした際にムラが生じてしまった。
【0064】
また、比較例2の帯電防止性ハードコートフィルムは、帯電防止性ハードコート膜が第四級アンモウニウム塩を含有するものであり、樹脂成分との相溶性が低いものであったため、帯電防止性ハードコート膜とした際に実施例と比べて透明性に劣るものとなった。また、帯電防止性ハードコート膜を形成する際に硬化阻害が生じたため、耐擦傷性の低いものとなった。また、帯電防止性については23℃、50%RHの環境では優れた評価となったが湿度依存性が高く、安定した帯電防止性の得られないものとなった。
【0065】
また、比較例3については、帯電防止性ハードコート膜が電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物を含む帯電防止性ハードコート塗料から形成されたものであり、ポリエーテル変性化合物を含まないものであったため、実施例と比べて帯電防止性が劣るものとなった。また比較例3の帯電防止性ハードコート塗料は、実施例と比べてレベリング性の劣るものであり、帯電防止性ハードコート膜とした際にムラが生じてしまった。
【0066】
比較例4〜7の帯電防止性ハードコートフィルムは、帯電防止性ハードコート膜が電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物、及びポリエーテル変性化合物ではないレベリング剤を含む帯電防止性ハードコート塗料から形成されたものであるため、帯電防止性ハードコート膜は、ムラを生じることなく、透明性、耐擦傷性に優れるものとなったが、ポリエーテル変性化合物を含んでいないため、実施例と比べて帯電防止性が劣るものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線硬化型樹脂組成物、リチウム塩化合物、及びポリエーテル変性化合物を含むことを特徴とする帯電防止性ハードコート塗料。
【請求項2】
請求項1記載の帯電防止性ハードコート塗料を塗布、硬化させることにより形成されてなることを特徴とする帯電防止性ハードコート膜。
【請求項3】
請求項2記載の帯電防止性ハードコート膜を樹脂成形体の表面に有することを特徴とする成形体。

【公開番号】特開2006−70062(P2006−70062A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251589(P2004−251589)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】