説明

帯電防止性白色ポリエステルフィルム

【課題】 インクに対する接着性、艶消し性、耐カール性、搬送性に優れ、特に高度の隠蔽性と白色度を合わせ持ち、ICカードのコアシートとして好適に使用される帯電防止性単層白色フィルムを提供する。
【解決手段】 黒色顔料を10〜100ppm含有する単一層からなる白色ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面に、表面固有抵抗値が1×10〜1×1012Ωである塗布層を有し、当該塗布層が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分として含むポリウレタン樹脂と、カチオン性高分子帯電防止剤とを含有し、フィルムの透過濃度ODが0.9以上であり、色相L*値が91以上であることを特徴とする帯電防止性白色ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性単層白色ポリエステルフィルムに関し、インクに対する接着性、艶消し性、耐カール性、搬送性に優れ、特に高度の隠蔽性と白色度を合わせ持ち、ICカードのコアシートとして好適に使用される帯電防止性白色フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、大記録容量や多機能性において、従来のクレジットカードやキャッシュカードなどの磁気カードより優れるため、それらの代替として実用化が本格的に進んでいる。ICカードは、従来の磁気カードと同じく、プラスチックカードに集積回路(ICチップ)やアンテナコイルからなる内蔵モジュールを埋め込んだ構成を有するものである。この構成にはいくつかの種類があるが、基本的には3層構成であり、内蔵モジュールをコアシートで挟み込み、さらにそのコアシートの両面に保護層としてオーバーシートが設けられた構成をとる。その際、プリペイドカードやクレジットカードなどと同様にコアシートの片面あるいは両面に絵柄が印刷されたり、必要に応じて磁気記録層などが設けられたりする。コアシートとしては、従来、金属、エポキシ樹脂、硬質塩化ビニル樹脂が用いられ、最近ではポリイミド樹脂も用いられることがある。しかし、これらをコアシートとして用いた場合、コアシートに内蔵モジュールを挟み込んだ構成では、内部のICチップや回路等が透けて見えない程度の高隠蔽性および白色度が要求される。
【0003】
従来、磁気カード用ポリエステルフィルムとして、例えば特許文献1や特開平8−138231号公報等に示された隠蔽性フィルムが知られているが、これらフィルムをICカード用コアシートとして用いても、内蔵モジュールを十分に隠蔽することができない。その改善策として、フィルムを積層構成とし、中芯層の白色顔料濃度を50重量%程度まで高くすることにより隠蔽性を満足するフィルムとなるが、反面著しく製膜連続性が低下するため、製造が困難となる問題がある。
【0004】
一方、特許文献2に示されたような白色/黒色の多層フィルムの場合、黒色層に含有する黒色顔料が2重量%以上となり、顔料添加に要するコストアップが問題となる。
【0005】
さらに、ロール間をパスさせる工程でフィルムを印刷・貼合わせ加工する際、フィルムが静電気を帯びる傾向があり、溶剤使用雰囲気下でのスパーク発生は爆発事故に至る恐れがある。また帯電により異物を引き寄せると、印刷・塗布ヌケの原因となり、加工後製品の品質上、大きな問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−108458号公報
【特許文献2】特開2001−26087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、インクに対する接着性、艶消し性、耐カール性、搬送性に優れ、特に高度の隠蔽性と白色度を合わせ持ち、ICカードのコアシートとして好適に使用される帯電防止性単層白色フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、黒色顔料を10〜100ppm含有する単一層からなる白色ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面に、表面固有抵抗値が1×10〜1×1012Ωである塗布層を有し、当該塗布層が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分として含むポリウレタン樹脂と、カチオン性高分子帯電防止剤とを含有し、フィルムの透過濃度ODが0.9以上であり、色相L*値が91以上であることを特徴とする帯電防止性白色ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ンクに対する接着性、艶消し性、耐カール性、搬送性に優れ、特に高度の隠蔽性と白色度を合わせ持ち、ICカードのコアシートとして好適に使用される帯電防止性単層白色フィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、代表的には、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。その他にも、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0013】
上記の優位構成成分以外の共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびオキシモノカルボン酸などのエステル形成性誘導体を使用することができる。また、ポリエステルとしては、単独重合体または共重合体のほかに、他の樹脂との小割合のブレンドも使用することができる。
【0014】
本発明においては、単一層からなる白色のポリエステルフィルムからなるものであり、通常はフィルム中に白色顔料を含有する。白色顔料としては、従来公知のものを使用することができ、例えば二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛等を用いることができる。特に酸化チタンは高屈折率を有し、比較的少量でフィルムに高い隠蔽性を付与することが可能であるため、好ましく使用される。
【0015】
本発明で用いる白色顔料の平均粒子径は、通常0.1〜1.0μmの範囲であり、含有量は、通常5〜35重量%である。平均粒子径が0.1μm未満では、フィルムの隠蔽性が劣る傾向があり、一方、1.0μmを超えると製膜連続性が劣る傾向がある。また、含有量が5重量%未満では、フィルムの白色度と隠蔽性が劣る傾向があり、一方、35重量%を超えると製膜連続性が劣る傾向がある。
【0016】
本発明の単層フィルムは、白色度の観点から色相L*値が91以上であることが必要であり、好ましくは92〜98の範囲内である。L*値が91に満たない場合には、白色フィルム(ICカード)としての意匠性が劣る。一方、L*値の上限は限定されないが、定義上100以下となる。L*値を91以上とするためには、例えば、上記白色顔料の平均粒子径および添加量を調整すればよい。特に添加量を増やすとL*値は向上する傾向があり、上記範囲内で添加量を調整することが好ましい。また、併用する黒色顔料の添加量を低く抑えることで、L*値を所望の範囲内とすることが可能となる。
【0017】
本発明においては、単一層からなるポリエステルフィルムに、カーボンブラックに代表される黒色顔料を10〜100ppmの低濃度で含有する。ここで黒色顔料は、その一次粒子の平均粒子径が0.2μm以下であることが好ましい。一次粒子の平均粒子径が0.2μmを超えると、ポリエステルフィルム中で高次の凝集粒子径が大きくなり、濃度ムラが発生する傾向がある。含有量については、10ppmに満たないと隠蔽性が不足する。一方、含有量が100ppmを超えると、白色度が不十分となる。
【0018】
本発明の単層フィルムは、隠蔽性の観点から透過濃度ODが0.9以上であることが必要であり、好ましくは0.9〜1.2の範囲内である。ODが0.9未満の場合、ICカードを作成した際に隠蔽性が不足し、内部のICチップが透けて見えると共にカード表層の柄印刷の意匠性が悪くなる。一方、ODの上限は定めないが、1.2を超えると過剰品質となり、コストアップになるため好ましくない。
【0019】
本発明では、ICカード用フィルムの主要特性である高度の隠蔽性および白色度を両立するために、単層フィルム中の黒色顔料含有量を極めて少ない量に限定して併用することが重要である。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムには、平均粒子径0.1〜1.0μmの不定形シリカ粒子を0.01〜1.0重量%さらに含有することが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満または含有量が0.01重量%未満であると、フィルムの搬送性が劣る傾向がある。一方、平均粒子径が1.0μmを超えるまたは含有量が1.0重量%を超えると、フィルムの製膜連続性が低下するのに加え、過剰品質でコストがアップすることになる。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムには、上記の顔料、シリカ粒子以外にも、必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、蛍光増白剤、染料、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
【0022】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面に、表面固有抵抗値(23℃、50%RHで測定)が1×10〜1×1012Ωの範囲内となる塗布層を有することが必要である。表面固有抵抗値が1×1012Ωを超える場合、フィルムをロール間にパスさせて加工する際に静電気を帯びて、フィルム表面に異物を引き寄せることが問題となる。好ましい表面固有抵抗値は1×1011Ω以下であり、さらに好ましくは1×1010Ω以下である。一方で表面固有抵抗値が1×10Ωに満たない場合には、静電気防止効果が飽和するうえ、多量の帯電防止剤添加が必要となり、塗布面状の均一さが損なわれる傾向がある。好ましい表面固有抵抗値は1×10Ω以上であり、さらに好ましくは1×10Ω以上である。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面に、下記成分a1およびa2を構成単位として含むポリウレタン樹脂(A)と、カチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有する塗布層を有することが必要である。
【0024】
a1:ポリカーボネートポリオール
a2:分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物
本発明のポリウレタン樹脂(A)は、ポリオールとしてポリカーボネート単位を含むことが必要である。ポリカーボネートポリオールを含むポリウレタン樹脂を用いることで、印刷適性(インク接着性)が高度に良好となる。
【0025】
本発明のポリウレタン樹脂(A)で使用するa1は、例えばジエチルカーボネートなどの低級ジアルキレンカーボネートや、あるいはジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルと、ジオールとのエステル交換反応を用いるか、ジオールに直接ホスゲンを反応させることで得られるものが挙げられる。本発明では、ジオールとして、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等を用いたポリカーボネートポリオールを使用することができる。また、上記のポリカーボネートジオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量で、300〜4000であることが好ましい。さらに、これらのポリカーボネートポリオールの添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して40〜80重量%の範囲で選ぶことができる。
【0026】
本発明において、ポリウレタン樹脂(A)で使用するポリイソシアネートとしては、公知の脂肪族、脂環族、芳香族等のポリイソシアネートを挙げることができる。
【0027】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例として、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0028】
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0029】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。またこれらのポリイソシアネートは単独で使用してもよいが、2種以上混合して使用することもできる。
【0030】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、接着性の向上のため、上記のa1(ポリカーボネートポリオール)と共に、ポリオール成分としてポリオキシアルキレングリコールを共存させることができる。ポリウレタン(A)に含有させるポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブタンジオール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体等を挙げることができる。
【0031】
またこれらのポリオキシアルキレングリコールの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリオキシエチレングリコール換算の数平均分子量で、200〜3000であることが好ましい。さらに、これらのポリオキシアルキレングリコールの添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して3〜10重量%の範囲で選ぶことができる。
【0032】
本発明においては、ポリウレタン樹脂(A)は、a2(分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物)を構成単位として含むことが必要である。これによりポリウレタン樹脂(A)は自己乳化性となり、特に乳化剤を添加しなくとも、水を主体とする媒体中で安定した分散体となすことが可能となる。また、ポリウレタン樹脂(A)は、後述するカチオン性高分子帯電防止剤(B)と同じカチオン性高分子であるので、両者を混合しても、分子間のイオン凝集が発生しない。
【0033】
本発明のポリウレタン樹脂(A)で使用する鎖延長剤としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。これらの3級アミノ基を有する鎖延長剤は単独または2種以上併用して用いることができる。また、これらの鎖延長剤の添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して5〜15重量%の範囲から選ぶことができる。
【0034】
本発明においては、上記ポリウレタン樹脂に導入された上記3級アミノ基を有する鎖延長剤を、酸で中和するか、あるいは4級化剤で4級化した化合物を含むカチオン性ポリウレタン樹脂とする必要がある。3級アミノ基を酸で中和する場合には、酸として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、アジピン酸等の有機酸、および塩酸、燐酸、硝酸等の無機酸を挙げることができる。これらの酸は単独または2種以上併用して用いることができる。また、3級アミノ基を4級化剤で4級化する場合には、4級化剤として、ベンジルクロライド、メチルクロライド等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の硫酸エステル等を挙げることができる。これらの4級化剤は単独または2種以上併用して用いることができる。
【0035】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールと分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤を添加して反応させた後、4級化させることで得られるが、初めから4級化された化合物を鎖延長剤として反応させることもできる。
【0036】
本発明のポリエステルフィルムは、その少なくとも片面に有する塗布層にカチオン性高分子帯電防止剤(B)を含むことが必要である。ポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)とは、同じカチオン性高分子であるので、両者を混合した塗布剤には、分子間のイオン凝集が発生しない。また帯電防止剤としてカチオン性高分子を用いるので、アニオン性やノニオン性の帯電防止剤よりも良好な帯電防止性能や、フィルム延伸後の塗膜の透明性を得やすい点で好ましい。また低分子帯電防止剤でしばしば問題となる転着現象も生じることはない。
【0037】
本発明で用いるカチオン性高分子帯電防止剤(B)は、4級化された窒素を含むユニットを繰り返し単位として含有するポリマーが好適であるが、特に下記式(I)または(II)式で示される主鎖にピロリジニウム環を有するユニットを主たる繰り返し単位として含有するカチオンポリマーであることが、優れた帯電防止性能が得られる点で好ましい。
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】


上記(I)式あるいは(II)式の構造において、R、Rは、炭素数が1〜4のアルキル基もしくは水素であることが好ましく、これらは同一基でもよいし異なっていてもよい。またR、Rのアルキル基は、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、エーテル基で置換されていてもよい。さらに、RとRとが化学的に結合していて、環構造を有するものであってもよい。また、(I)式あるいは(II)式のXは、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンの何れかである。
【0040】
上述の、主鎖にピロリジニウム環を有するユニットを主たる繰り返し単位として含有するカチオンポリマーの中でも、特に(I)式の構造で、Xが塩素イオンである場合には、帯電防止性能が優れると同時に、帯電防止性能の湿度依存性が小さく、低湿度下でも帯電防止性能の低下が少なくなる点で好ましい。また、帯電性易接着にハロゲンイオンを使用できない場合においては、塩素イオンの代わりにメタンスルホン酸あるいはモノメチル硫酸イオンを使用することで、塩素イオンの場合に近い帯電防止性能を得ることができる。(I)式のユニットを繰り返し単位とするポリマーは、次の(III)式で示されるジアリルアンモニウム塩を単量体として、水を主とする媒体中で、ラジカル重合で閉環させな
がら重合することで得られる。また、(II)式のユニットを繰り返し単位とするポリマーは、(III)式の単量体を、二酸化硫黄を媒体とする系で環化重合させることにより得られる。
【0041】
【化3】

【0042】
また、(I)式または(II)式に示すユニットを繰り返し単位とするポリマーは、単一のユニットから構成されるホモポリマーである場合が、より良好な帯電防止性能を得ることができるが、後述するように、カチオンポリマーを含む塗布液をポリエステルフィルムに塗布した後に、さらにポリエステルフィルムを延伸する場合に、塗布層の透明性を改善するために、(I)式または(II)式で示されるユニットの0.1〜50モル%が、共重合可能な他の成分で置き換えられてもよい。
【0043】
共重合成分として用いる単量体成分としては、(III)式のジアリルアンモニウム塩と共重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を1種あるいは2種以上を選ぶことが
できる。
【0044】
これらは具体的には、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、マレイン酸およびその塩あるいは無水マレイン酸、フマル酸およびその塩あるいは無水フマル酸、モノアリルアミンおよびその4級化物、アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルアミノエチルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジアルキルアミンおよびその4級化物などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の塗布層中のカチオン性高分子帯電防止剤(B)は、上記(I)または(II)式で示される主鎖にピロリジニウム環を繰り返し単位として含有するカチオンポリマーの代わりに、例えば(IV)式または(V)式で示されるユニットを繰り返し単位とするカチオンポリマーであってもよい。
【0046】
【化4】

【0047】
【化5】


(IV)式あるいは(V)式の構造において、R、Rはそれぞれ水素またはメチル基であり、R、Rは、それぞれが炭素数2〜6のアルキル基であることが好ましく、またR、R、R、R10、R11、R12はメチル基あるいはヒドロキシエチル基もしくは水素であり、これらは同一基でもよいし異なっていてもよい。さらに(IV)式あるいは(V)式のXは、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンの何れかである。
【0048】
(IV)式あるいは(V)式で示されるユニットを繰り返し単位とするカチオンポリマーは、例えば、それぞれのユニットが対応するアクリル酸モノマーまたはメタクリル酸モノマーを、水を主とする媒体中でラジカル重合することで得ることができるが、これに限定されるわけではない。
【0049】
本発明で用いるカチオンポリマーの平均分子量(数平均分子量)は、通常1000〜500000、さらには5000〜100000の範囲であることが好ましい。平均分子量が1000未満であると、フィルムを巻き取った時に重なり合う面にカチオンポリマーが転着したり、ブロッキングしたりするなどの原因となり、逆に平均分子量が500000を超えると、これを含む塗布液の粘度が高くなり、フィルム面に均一に塗布することが困難となることがある。
【0050】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、前述のポリウレタン樹脂(A)と、カチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有することが必要であるが、その重量比(A)/(B)は、40/60〜90/10の範囲が好ましく、さらに好ましくは50/50〜80/20の範囲である。重量比(A)/(B)が40/60よりも小さい場合には、塗布層の帯電防止効果は十分であるが、インク層などの接着性が不十分となる傾向にある。一方で90/10よりも大きい場合には、塗布層の接着性は十分であるが、帯電防止効果が不十分となる傾向にある。
【0051】
また、塗布層中のポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)との重量合計は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上であり、最大で100%であってもよい。
【0052】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、前述のポリウレタン樹脂(A)およびカチオン性高分子帯電防止剤(B)の他に、塗膜の耐熱性や耐湿性、耐ブロッキング性の向上などを目的として、架橋剤を添加することができる。この架橋剤には、メチロール化あるいはアルコキシメチロール化したメラミン系化合物やベンゾグアナミン系化合物、もしくは尿素系化合物、もしくはアクリルアミド系化合物の他、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、シランカップリング剤系化合物、チタンカップリング剤系化合物などから選ばれた少なくとも1種類を含有させることが好ましい。これらの架橋剤の添加量は、塗布層全体に対して通常1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%の割合とすることができる。
【0053】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、塗布層表面の滑り性の付与や耐ブロッキング性の向上を目的として、無機や有機の微粒子を添加することができる。この微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカ−アルミナ複合体、シリカ−酸化チタン複合体、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などの微粒子、あるいは酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物微粒子、アンチモン−スズ複合酸化物微粒子などの導電性微粒子から選ばれた少なくとも1種以上を含有させることが好ましい。添加する微粒子は、平均粒子径が5〜200nmであることが好ましく、その添加量も塗布層全体に対して10重量%以下であることが好ましい。
【0054】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層には、界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤には、塗布液のヌレ性の改善を目的に、アルキレンオキサイド付加重合物で置換されたアセチレグリコール誘導体などのノニオン系界面活性剤を好ましく用いることができる。また、フィルムと共に塗布層が延伸される工程での塗布層の透明性の維持を目的として、グリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物、あるいはポリグリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物などを用いることができる。
【0055】
その他塗布層には、必要に応じて上記で述べた成分以外に、例えば、消泡剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等を添加することもできる。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0056】
また本発明の積層ポリエステルフィルムの塗布層には、ポリウレタン樹脂(A)を含むことが必要だが、これ以外のバインダー樹脂として、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、(A)以外のポリウレタン樹脂等を、本発明の効果を損なわない範囲で共存させることも可能である。
【0057】
本発明における積層ポリエステルフィルムの塗布層は、その塗工量としては、乾燥・固化された後の、あるいは二軸延伸・熱固定等を施された後の最終的な乾燥皮膜として、0.005〜1.0g/m、さらには0.01〜0.5g/mの範囲とするのが好ましい。この塗工量が0.005g/m未満では、帯電防止性能や接着性が不十分となることがあり、1.0g/mを超える場合には、もはや帯電防止性能や接着性は飽和しており、逆にブロッキングの発生等の弊害が発生しやすくなる傾向がある。
【0058】
本発明における積層ポリエステルフィルムの塗布層は、通常、主として水を媒体とした塗布液としてポリエステルフィルム上に塗工される。塗工されるポリエステルフィルムは、予め二軸延伸されたものでもよいが、塗工した後に少なくとも一方向に延伸され、さらに熱固定をする、いわゆるインラインコーティング法を用いることが好ましい。インラインコーティング法によれば、通常200℃以上の高温でポリエステルフィルムと塗布層が同時に熱固定されるため、塗布層の熱架橋反応が十分に進行すると共に、ポリエステルフィルムとの密着性がさらに向上する。
【0059】
また塗布液は、その保存安定性の向上、あるいは塗布性や塗布膜特性の改善を目的に、水以外に、通常10重量%以下の量で水との相溶性のある有機溶剤の1種または2種以上を加えることが可能である。この有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチルセルソルブ、t−ブチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラハイドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルエタノールアミン、トリメタノールアミン等のアミン類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等を例示することができる。
【0060】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0061】
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
【0062】
本発明のポリエステルフィルムの厚さは特に限定されるわけではないが、フィルムの加工適性として、適度の腰強度を有することが好ましく、通常25〜150μmの範囲であり、好ましくは38〜125μmの範囲内である。厚さが25μm未満ではカードとして腰がなくなると共に、所望の隠蔽性を確保できないことがある。一方、厚さが150μmを超えると、面積当たりのコストがアップすることとなる。
【0063】
次に二軸延伸を用いた場合の一例を詳細に説明するが、本発明の要旨を超えない限り、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0064】
まず、ポリエステルフィルムを構成する原料を押出機へ供給し、溶融混練後、押し出す。次に、ダイから押し出された溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面均一性、冷却効果を向上させるためには、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法が好ましく採用される。次いで、得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化する。まず、通常70〜150℃、好ましくは75〜130℃の延伸温度、通常2.0〜6.0倍、好ましくは2.5〜5.0倍の延伸倍率の条件下、前記未延伸シートを一方向(縦方向)に延伸する。かかる延伸にはロールおよびテンター方式の延伸機を使用することができる。ここで縦延伸後のフィルムに、上述の通り、塗布層を設けることが好ましい。次いで、通常75〜150℃、好ましくは80〜140℃の延伸温度で、通常2.0〜6.0倍、好ましくは2.5〜5.0倍の延伸倍率の条件下、一段目と直交する方向(横方向)に延伸を行い、二軸配向フィルムを得る。かかる延伸には、テンター方式の延伸機を使用することができる。
【0065】
上記の一方向の延伸を2段階以上で行う方法も採用することができるが、その場合も最終的な延伸倍率が上記した範囲に入ることが好ましい。次いで、テンター内熱処理を、通常180〜240℃、好ましくは200〜235℃で、1秒〜2分間行う。この熱処理工程では、熱処理の最高温度のゾーンおよび/または熱処理出口直前の冷却ゾーンにおいて、横方向および/または縦方向に0.1〜20%の弛緩を行うことが、熱寸法安定性付与の点で好ましい。
【0066】
なお、上記において、縦延伸後のフィルムに塗布層を設けることが好ましい。塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0067】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではないが、通常、塗布後の後工程において、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
【0068】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明の積層ポリエステルフィルムには、予めコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明における各種の物性およびその測定方法、定義は下記のとおりである。
【0070】
(1)白色顔料の平均粒子径(μm)
(株)島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いて、ストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒子の等価球形分布における積算(体積基準)50%の値を用いて平均粒径とした。
【0071】
(2)固有粘度(dl/g)
ポリエステル1gに対し、フェノール/テトラクロロエタン:50/50(重量比)の混合溶媒を100mlの比で加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0072】
(3)透過濃度OD
マクベス濃度計TD−904型を用いて、フィルムを単枚で測定した。(この値が大きいほど、高い隠蔽性を表す。)
【0073】
(4)色調(L*、a*、b*)
ミノルタ製分光測色計CM−3700dタイプを用いて、反射法によりフィルム表面の測定を行った。C光源、2°視野を用い、表色系はL*a*b*(CIE1976)とした。
【0074】
(5)表面固有抵抗(Ω)
横河ヒューレット・パッカード社の同心円型電極「16008A(商品名)」(内側電極50mm、外側電極70mm径)に23℃、50%RHの雰囲気下、試料フィルムを設置し、100Vの電圧を印加し、同社の高抵抗計「4329A(商品名)」でフィルム表面(塗布フィルムでは塗布層面)の表面抵抗を測定した。
(6)フィルム表面(塗布フィルムでは塗布層面)の印刷適性(インキ接着性)
藍色のセロカラー用印刷インキ(東洋インキ製造社製「CCST39」)を使用し、印刷後の塗布厚さが1.5μmとなる様にX層表面に塗布し、80℃で1分間熱風乾燥し評価用フィルムとする。印刷インキの表面に碁盤目のクロスカット(4mmの升目を100個)を施し、その上にインキ表面塗布面に24mm幅のニチバン製セロテープ(登録商標)を気泡が入らない様に7cmの長さ貼り、貼った上を3kgの手動式荷重ロールを往復させて密着させる。次いで、評価用フィルムを垂直方向に配置された基板上に固定し、テープの上側一端に45cmの糸で500gの錘を結びつける。そしてテープの上側一端と同じ高さから錘を落下させる。錘が45cmの距離自然落下した後、180°方向への剥離試験が開始される。
評価5:インキが全く剥離しない
評価4:10%未満のインキがテープ側に剥離する
評価3:10〜50%のインキがテープ側に剥離する
評価2:50%を超えるインキがテープ側に剥離する
評価1:全てのインキがテープ側に剥離する
上記評価で5および4を合格と判定した。
【0075】
比較例1:
IV=0.66で粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートを主原料とし、粒子径0.3μmのアナターゼ型二酸化チタン15重量%、一次粒子径0.01μmのカーボンブラック30ppm、さらに平均粒子径4.2μmの不定形シリカ0.4重量%を添加し混合したポリエチレンテレフタレート原料(A)を、ベント付二軸押出機に投入して270℃で溶融、混練し、得られた溶融体をスリット状に押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加法により密着、冷却させて無延伸シートを得た。次いで当該無延伸シートを縦方向に85℃で3.0倍延伸した後、さらに横方向に115℃で4.5倍延伸し、段階的に昇温後、230℃で5秒間熱処理した。次いで190℃の雰囲気下、幅方向に1%の弛緩処理(テンターレール幅を狭める)を行った。最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。当該フィルムは表面固有抵抗が高いことから静電気を帯びやすく、環境下の異物を吸着しやすいフィルムであった。
【0076】
実施例1,2,3、比較例2,3,4
比較例1において、縦延伸後のフィルム表面に、別表の水性塗布液をバーコート方式で塗布した。それ以外は同様にして、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。
【0077】
比較例5
実施例1において、ポリウレタン樹脂A1の代わりに、ポリカーボネートポリオール構造を有するアニオン系水性ポリウレタン(三井化学ポリウレタン社製 商品名タケラックW−6010)を用いて塗布液を配合した。塗布液は作成後直ちに沈殿が発生してしまい、フィルムに塗布することができなかった。
【0078】
実施例4
実施例1において、カーボンブラックの添加量を15ppmとする以外は同様にして、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。
【0079】
実施例5
実施例1において、カーボンブラックの添加量を60ppmとする以外は同様にして、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。
【0080】
比較例6:
実施例1において、カーボンブラックを添加しない以外は同様にして、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。
【0081】
比較例7:
実施例1において、カーボンブラックの添加量を120ppmとする以外は同様にして、最終的にフィルム厚さ45μmの二軸配向フィルムを得た。
【0082】
下記表1および2に、各々のフィルム組成、塗布層の組成、および(塗布層を有する)ポリエステルフィルムの評価結果を示す。
【0083】
各塗布層を構成する化合物は以下のとおりである。
・ポリウレタン樹脂A1:
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとの反応により得られるポリカーボネートポリオール(GPCでの数平均分子量約1000)を76.7重量部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.4重量部、トリメチロールプロパンを2.0重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを19.9重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを86.7重量部と、MEK87重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を16.8重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水623重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂A1の水分散体を得た。
【0084】
・ポリウレタン樹脂A2:
ポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製、商品名PTMG1000、分子量1000)を300重量部、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.0重量部、トリメチロールプロパンを2.5重量部、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを16.0重量部、イソホロンジイソシアネートを71.7重量部と、MEK89重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を13.4重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水457重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂A2の水分散体を得た。
【0085】
・カチオン性高分子帯電防止剤B:ジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた4級アンモニウム塩含有カチオンポリマー((I)式のピロリジニウム環含有ポリマー)平均分子量約30000
【0086】
・架橋剤C:2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとアクリル系モノマーとの共重合ポリマー型架橋剤水溶液(日本触媒社製 商品名エポクロスWS−500)、オキサゾリン基量=4.5mmol/g
【0087】
・微粒子D:コロイダルシリカ微粒子(平均粒径0.07μm)
比較例2では、塗布層にポリカーボネートポリオールを含まないポリウレタン樹脂が用いられているため、インキ層との接着性が不十分であった。比較例3では、塗布層にポリウレタン樹脂(A)が存在しないため、インキ層との接着性が発現されなかった。比較例4では、塗布層にカチオン性高分子帯電防止剤(B)を含有しないため、帯電防止性能が不十分であった。また比較例5では、用いたポリウレタン樹脂が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物を含有していないため、カチオン性高分子帯電防止剤との混合でイオン凝集による沈殿を生成してしまった。
【0088】
【表1】

【0089】
表1中、(A)/(B)比率とは、塗布層中のポリウレタン樹脂(A)/カチオン性高分子帯電防止剤(B)(重量比)を表す。
【0090】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のポリエステルフィルムは、例えば、ICカードシート用フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色顔料を10〜100ppm含有する単一層からなる白色ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面に、表面固有抵抗値が1×10〜1×1012Ωである塗布層を有し、当該塗布層が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分として含むポリウレタン樹脂と、カチオン性高分子帯電防止剤とを含有し、フィルムの透過濃度ODが0.9以上であり、色相L*値が91以上であることを特徴とする帯電防止性白色ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−184627(P2011−184627A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53197(P2010−53197)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】