説明

常温硬化型水性樹脂組成物

【課題】 光沢保持性、耐雨垂れ汚染性ならびに耐酸性雨性などの耐久性に優れた硬化物を与えることができ、硬化性や保存安定性などにも優れる水性樹脂を含有する、耐溶剤性、耐薬品性ならびに耐水性などの諸性能にも優れる常温硬化型水性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を含む組成物を加水分解縮合して得られる珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサンと加水分解性シリル基および酸基を併有する重合体とを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂を、水に分散ないしは溶解せしめた水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液と、該水性樹脂(A−I)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物とを含有する形の常温硬化型水性樹脂組成物等に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にして有用なる常温硬化型水性樹脂組成物とに関する。さらに詳細には、本発明は、加水分解性シリル基および酸基を併有する重合体、あるいは加水分解性シリル基および酸基なる両基と、さらに此等の官能基以外の官能基をも併有する重合体と、
【0002】
珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンとを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる、水性樹脂を必須の成分として含有する、常温硬化型水性樹脂組成物に関し、
【0003】
とりわけ、光沢保持性、耐雨垂れ汚染性ならびに耐酸性雨性などのような、いわゆる耐久性をはじめとして、耐溶剤性、耐薬品性ならびに耐水性などの諸性能にも優れる塗膜を形成することが出来て、しかも、優れた硬化性と、優れた保存安定性とを兼備した水性樹脂を含有する、硬化性に優れ、しかも、前述したような耐久性をはじめとする諸性能に優れる硬化塗膜を与える常温硬化型水性樹脂組成物をも提供するという発明に関する。
【背景技術】
【0004】
これまでにも、塗料用の水性硬化性樹脂組成物としては、塩基性基ないしは酸基と、水酸基のような、いわゆる官能基とを併有するビニル系重合体を、酸性化合物あるいは塩基性化合物で以て中和せしめたのち、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂と、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂またはアミノ樹脂のような、種々の硬化剤とから成る水性硬化性樹脂組成物が、幅広く、使用されている(例え非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、こうした、これまでに使用されて来たような水性樹脂をベースとする水性硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜は、とりわけ、曝露時の光沢保持性、耐雨垂れ汚染性ならびに耐酸性雨性などの耐久性が不十分であり、したがって、高度の耐久性などが要求されるような用途には、全くと言ってよいほど、利用し適用することが出来ない、という問題がある。
【非特許文献1】Journal of Coatings Technology.50,No638,39(1978)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、本発明者らは、上述したような従来型技術における種々の問題点を、悉く解決するべく、鋭意、研究を開始した。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、とりわけ、光沢保持性、耐雨垂れ汚染性ならびに耐酸性雨性などの耐久性に優れた硬化物を与えることができ、しかも、硬化性や保存安定性などにも優れる、新規にして有用なる水性樹脂を含有する、前述したような耐久性に加えて、とりわけ、耐溶剤性、耐薬品性ならびに耐水性などの諸性能にも優れるという、極めて実用性の高い常温硬化型水性樹脂組成物をも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、上述したような発明が解決しようとする課題に照準を合わせて、鋭意、検討を重ねた結果、
【0009】
加水分解性シリル基および酸基を併有する重合体、あるいは加水分解性シリル基および酸基なる両基と、さらに、これらの官能基以外の官能基をも併有する重合体と、一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物、又は前記一分子中に3個の珪素原子に結合した珪素化合物と分子中に2個もしくは4個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物とを含む混合物を加水分解縮合し、次いで得られる、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサンとを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂
【0010】
を必須の成分として含有する常温硬化型水性樹脂組成物が、とりわけ、光沢保持性、耐酸性雨性ならびに雨垂れ汚染性などの耐久性に優れるということをも見出し、ひいては、上述したような発明が解決しようとする課題を、見事に、解決することが出来るということを確信するに及んで、ここに、本発明を完成させるに到った。
【0011】
すなわち、本発明は、基本的には、一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物、又は前記一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物と分子中に2個もしくは4個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物とを含む混合物を加水分解縮合し、次いで得られる、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサン(a−2)と加水分解性シリル基および酸基を併有する重合体(a−1)とを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂(A−1)を、水に分散ないしは溶解せしめることを特徴とする、水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−I)と、該水性樹脂(A−I)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(B)とを含有する形の常温硬化型水性樹脂組成物をも提供しようとするものであるし、
【0012】
加えて、一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物、又は前記一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物と分子中に2個もしくは4個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物とを含む混合物を加水分解縮合し、次いで得られる、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサン(a−2)と加水分解性シリル基および酸基なる両基と、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基とを併有する重合体(a−3)とを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂(A−2)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる、水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−II)と、該水性樹脂(A−II)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(B)とを含有する形の常温硬化型水性樹脂組成物を提供しようとするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る常温硬化型水性樹脂組成物は、とりわけ、曝露時の光沢保持性、耐雨垂れ汚染性ならびに耐酸性雨性などの、いわゆる耐久性に優れる硬化塗膜を形成することの出来る、特に、被覆用組成物として、極めて実用性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、一つには、一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物、又は前記一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物と分子中に2個もしくは4個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物とを含む混合物を加水分解縮合し、次いで得られる、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサン(a−2)と、加水分解性シリル基および酸基を併有する重合体(a−1)とを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂(A−1)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−I)と、前記水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−I)中の水性樹脂に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(B)とを、必須の成分として、含有することを特徴とする、常温硬化型水性樹脂組成物を請求するものであるし、
【0015】
二つには、一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物、又は前記一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物と分子中に2個もしくは4個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物とを含む混合物を加水分解縮合し、次いで得られる、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサン(a−2)と加水分解性シリル基および酸基なる両基と、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基とを併有する重合体(a−3)とを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂(A−2)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−II)と、前記水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−II)中の水性樹脂に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(B)とを、必須の成分として、含有することを特徴とする、常温硬化型水性樹脂組成物を請求するものである。
【0016】
そして、前記した、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基が、水酸基、ブロックされた水酸基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基および次のような構造式(S−I)
【0017】
【化1】

【0018】
で示される官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基であるという、特定の常温硬化型水性樹脂組成物をも請求しようとするものであるし、
【0019】
さらには、前記した加水分解性シリル基がアルコキシシリル基であるという、特定の常温硬化型水性樹脂組成物をも請求しようとするものであるし、
【0020】
さらには亦、前記した化合物(B)が、珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基を含有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性を併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物およびポリエポキシ化合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物であるという、特定の常温硬化型水性樹脂組成物をも請求しようとするものであるし、
【0021】
そして亦、前記した珪素原子に結合した加水分解性基がアルコキシ基であるという、特定の常温硬化型水性樹脂組成物をも請求しようとするものであるし、
そして亦、前記したポリシロキサン(a−2)を構成する全珪素原子の少なくとも10モル%が、アリール基が結合した化合物に由来するものであるという、特定の常温硬化型水性樹脂組成物をも請求しようとするものであるし、
【0022】
そして更には、それぞれ、前記した重合体(a−1)または(a−3)がビニル系重合体であるという、特定の常温硬化型水性樹脂組成物をも請求しようとするものであるし、
【0023】
そして更には亦、前記したビニル系重合体がアクリル系重合体であるという、特定の常温硬化型水性樹脂組成物をも請求しようとするものである。
【0024】
以下に、本発明を、さらに一層、詳細に、説明することにする。
【0025】
ここにおいて、まず、本発明に使用する水性樹脂の前駆体である、前記した水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−1)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基および酸基を併有する重合体(a−1)とは、加水分解性シリル基および酸基なる両基とを併有する重合体を指称するというものであるし、斯かる加水分解性シリル基とは、次のような一般式(S−II)
【0026】
【化2】

【0027】
(ただし、式中のR1 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基なる1価の有機基を、R2 はハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基を表わすものとし、また、aは0あるいは1または2なる整数であるものとする。)
【0028】
で示されるような、加水分解されてシラノール基を生成するような基を指称するというものであって、しかも、該加水分解性シリル基それ自体が、直接に、炭素原子と共有結合することにより、あるいはシロキサン結合を介して、炭素原子と共有結合することにより、此の重合体(a−1)に結合しているものであるとする。
【0029】
また、ここでいう酸基とは、カルボキシル基、燐酸基、酸性燐酸エステル基、亜燐酸基、スルホン酸基またはスルフィン酸基などで代表されるような、各種の遊離の酸基に加えて、カルボン酸無水基、燐酸無水基、スルホン酸無水基またはカルボン酸−スルホン酸混合酸無水基などで代表されるような酸無水基を、さらには、たとえば、シリルエステル基、tert−ブチルエステル基または1−アルコキシエチルエステル基などのように、容易に、遊離の酸基に変換されるエステル基の形として、いわゆるブロックされた、それぞれ、カルボキシル基、リン酸基、酸性燐酸エステル基、亜リン酸基またはスルホン酸基などで代表されるようなブロックされた酸基などを指称するものである。
【0030】
前掲したような各種の酸基のうちでも特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基またはカルボン酸無水基などである。
【0031】
斯かる重合体(a−1)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体または芳香族ビニル系重合体の如き、各種のビニル系重合体;あるいはポリエステル樹脂、アルキド樹脂またはポリウレタン系重合体などである。
【0032】
これらのうちでも特に好ましいものとしては、ビニル系重合体またはポリウレタン系重合体が挙げられ、さらに、ビニル重合体のうちで特に望ましいものとしては、アクリル系重合体が挙げられる。
【0033】
斯かる重合体(a−1)のうちの、此のビニル系重合体を調製するには、たとえば、(i) 加水分解性シリル基を有するビニル系単量体と、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基またはカルボン酸無水基の如き、いわゆる酸基を有するビニル系単量体などのような、種々の酸基含有ビニル系単量体とを共重せしめたり、前記した両タイプ(二タイプ)の単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体類とを共重合せしめるという方法であるとか、
【0034】
(ii) 予め調製しておいた、水酸基と酸基とを併有するビニル系重合体に、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランのような、各種のイソシアナート基含有シラン化合物を反応せしめるという方法であるとか、
【0035】
(iii) メルカプト基と加水分解性シリル基とを併有する連鎖移動剤を使用して、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基またはカルボン酸無水基の如き、各種の酸基を有するビニル系単量体などのような、いわゆる酸基含有ビニル系単量体を重合せしめたり、これらの単量体類と、該単量体と共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめという方法であるとか、
【0036】
(iv) メルカプト基と加水分解性シリル基とを併有する連鎖移動剤を使用して、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基またはカルボン酸無水基の如き、各種の酸基を有するビニル系単量体などのような、いわゆる酸基含有ビニル系単量体とを共重合せしめたり、前記した二タイプの単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体類とを共重合せしめという方法であるとか、
【0037】
(v) 加水分解性シリル基を有する重合開始剤を使用して、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基またはカルボン酸無水基の如き、各種の酸基を有するビニル系単量体などのような、いわゆる酸基含有ビニル系単量体を重合せしめたり、前記した二タイプの単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体類とを共重合せしめという方法であるとか、
【0038】
(vi) 加水分解性シリル基を有する重合開始剤を使用して、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基またはカルボン酸無水基の如き、各種の酸基を有するビニル系単量体などのような、いわゆる酸基含有ビニル系単量体とを共重合せしめたり、前記した二タイプの単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体類とを共重合せしめという方法
【0039】
などのような、公知慣用の種々の方法を利用し適用することが出来るが、これらのうちでも、特に、上記(i)なる方法によるのが、最も簡便であるので推奨され得よう。
【0040】
当該重合体(a−1)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体とは、前掲したような構造式(S−II)で示される加水分解性シリル基を有する単量体を指称するというものであって、斯かる単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、2−トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、2−(メチルジメトキシシリル)エチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテルもしくは3−トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル
【0041】
または3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシランなどである。
【0042】
重合体(a−1)を調製する際に使用される、酸基含有ビニル系単量体のうち、遊離のカルボキシル基を含有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸類;
【0043】
イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルの如き、不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類との各種のモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニルまたはコハク酸モノビニルの如き、各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;
【0044】
無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸または無水トリメリット酸の如き、各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と、後掲するような各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物などであるし、さらには、前掲したような各種のカルボキシル基含有単量体類と、ラクトン類とを付加反応せしめて得られるような各種の単量体類などである。
【0045】
重合体(a−1)を調製する際に使用される酸基含有単量体のうち、ブロックされたカルボキシル基を有する単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチル−tert−ブチルシリル(メタ)アクリレートもしくはトリメチルシリルクロトネートの如き、特開昭62−254876号公報に開示されているような、各種のシリルエステル基含有ビニル系単量体類;
【0046】
1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンもしくは2−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフランの如き、特開平5−222134号公報に開示されているような、各種の、ヘミアセタールエステル基ないしはヘミケタールエステル基含有単量体類;またはtert−ブチル(メタ)アクリレートもしくはtert−ブチルクロトネートの如き、各種のtert−ブチルエステル基含有単量体類などである。
【0047】
重合体(a−1)を調製する際に使用される酸基含有単量体のうち、カルボン酸無水基含有単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸もしくは無水イタコン酸の如き、各種の不飽和ポリカルボン酸の無水物類;無水アクリル酸もしくは無水メタクリル酸の如き、各種の不飽和モノカルボン酸の無水物類;またはアクリル酸もしくはメタクリル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸と、酢酸、プロピオン酸もしくは安息香酸などのような、種々の飽和カルボン酸との混合酸無水物などである。
【0048】
そしてまた、前述した(i)なる方法に従って、斯かるビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用することが出来る、加水分解性シリル基含有単量体および酸基を有するビニル系単量体と共重合可能なる其の他のビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0049】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートもしくはラウリル(メタ)アクリレートの如き、C1 〜C22なる炭素数の1級ないしは2級アルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸との各種エステル類;
【0050】
ベンジル(メタ)アクリレートもしくは2−フェニルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレートもしくはイソボロニル(メタ)アクリレートの如き、各種のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレートもしくは4−メトキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
【0051】
スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンもしくはビニルトルエンの如き、各種の芳香族ビニル系単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルもしくは安息香酸ビニルの如き、各種のカルボン酸ビニルエステル類;
【0052】
クロトン酸メチルもしくはクロトン酸エチルの如き、各種のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジメチルイタコネートもしくはジ−n−ブチルイタコネートの如き、各種の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類;
【0053】
(メタ)アクリロニトリルもしくはクロトノニトリルの如き、各種のシアノ基含有単量体類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレンもしくはヘキサフルオロプロピレンの如き、各種のフルオロオレフィン類;塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンの如き、各種のクロル化オレフィン類;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンもしくは1−ヘキセンの如き、各種のα−オレフィン類;
【0054】
エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルもしくはn−ヘキシルビニルエーテルの如き、各種のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくは4−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの如き、各種のシクロアルキルビニルエーテル類;
【0055】
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルピロリドンの如き、3級アミド基含有単量体類;
【0056】
メトキシポリエチレングリコールもしくはメトキシポリプロピレングリコールの如き、1分子中に1個の水酸基を有するポリエーテル類と、(メタ)アクリル酸とのエステル類の如き、各種の含ポリエーテル含有単量体類などである。
【0057】
以上に掲げられたような種々の単量体を用いて、当該ビニル系重合体(a−1)を調製するには、溶液重合法、非水分散重合法または塊状重合法などのような、公知慣用の種々の重合法を利用し適用することが出来るが、それらのうちでも、特に、有機溶剤中での溶液ラジカル重合法によるのが、最も簡便である。
【0058】
此の溶液ラジカル重合法を適用する際に使用できる重合開始剤としては、勿論ながら、公知慣用の種々の化合物が使用できるけれども、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0059】
2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)もしくは2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の如き、各種のアゾ化合物類;
【0060】
またはtert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、
【0061】
ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドもしくはジイソプロピルパーオキシカーボネートの如き、各種の過酸化物類などである。
【0062】
また、溶液ラジカル重合法を適用する際に使用できる有機溶剤としては、公知慣用の有機溶剤のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは、単独使用でも2種類以上の併有でもよいことは、勿論である。
【0063】
それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンもしくはシクロオクタンの如き、各種の脂肪族系ないしは脂環式系の炭化水素類;
【0064】
トルエン、キシレンもしくはエチルベンゼンの如き、各種の芳香族炭化水素類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチルもしくは酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートもしくはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの如き、各種のエステル類;
【0065】
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、i−アミルアルコールもしくはtert−アミルアルコール
【0066】
またはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルもしくはエチレングリコールモノn−ブチルエーテルの如き、各種のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトンまたはシクロヘキサノンの如き、各種のケトン類;
【0067】
あるいはジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルまたはジ−n−ブチルエーテルの如き、各種のエーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、トリクロロエタンまたはテトラクロロエタンの如き、各種の塩素化炭化水素類などであるし、さらには、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネートなどである。
【0068】
当該重合体(a−1)を調製する際に、酸基含有単量体の使用量が多くなると、重合時に、ゲル化が起こることが、屡々あるので、注意を要する。
【0069】
こうしたゲル化を防止するためには、エチルオルソアセテート、エチルオルソ−n−ブチレート、エチルオルソフォーメイト、エチルオルソプロピオネートまたはメチルオルソフォーメイトの如き、各種の加水分解性エステル類を、前掲したような溶剤類と併用するというようにすればよい。
【0070】
以上に掲げたような、それぞれ、単量体類、重合開始剤類および有機溶剤類を使用して、公知慣用の溶液ラジカル重合法を利用し適用することによって、目的とする加水分解性シリル基および酸基を併有するビニル系重合体(a−1)を調製することが出来る。
【0071】
本発明に使用する水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−II)の前駆体である、前記した樹脂(A−2)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基および酸基なる両基と、此の加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基とを併有する重合体(a−3)とは、前記したような加水分解性シリル基と、前記したような酸基とに加えて、これらの加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の、公知慣用の種々の官能基をも含有するという形の重合体を指称するものである。
【0072】
当該重合体(a−3)に導入されるべき酸基としては、前記重合体(a−1)に導入できるものとして既に例示したような各種の基が挙げられるが、それらのうちでも特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基またはカルボン酸無水基などである。
【0073】
さらに、当該重合体(a−3)に導入されるべき、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、水酸基、ブロックされた水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、鎖状カーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基、オキサゾリン基、カルボニル基、アセトアセチル基または次のような構造式(S−I)
【0074】
【化3】

【0075】
で示される官能基などである。
【0076】
そして、上記した2級アミド基は、N−ヒドロキシメチルアミド基、N−アルコキシメチルアミド基または次のような構造式(S−III)
【0077】
−C(O)−NH−CH(OR3)−COOR4 (S−III)
【0078】
(ただし、式中のR3 は水素原子、炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わし、また、R4 は炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとする。)
【0079】
で示される官能基をも包含するというものである。
【0080】
また、これらの官能基は、当該重合体(a−3)中に、1種のみを含有させるというようにしてもよいし、2種以上を含有させるというようにすることもできる。
【0081】
加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の、前掲したような各種の官能基のうちでも特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、水酸基、ブロックされた水酸基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−I)で示されるような官能基などである。
【0082】
こうした各種の官能基を有する重合体(a−3)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体または芳香族ビニル系重合体のような、各種のビニル系重合体;あるいはポリエステル樹脂、アルキド樹脂またはポリウレタン系重合体などである。
【0083】
これらのうちでも特に望ましいものとしては、ビニル系重合体またはポリウレタン系重合体などが挙げられるし、さらに、此のビニル重合体のうちでも特に望ましいものとしては、アクリル系重合体が挙げられる。
【0084】
また、当該重合体(a−3)のうちの、此のビニル系重合体を調製するには、公知慣用の種々の方法を利用し適用することができるが、それらのうちでも、水酸基、ブロックされた水酸基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−I)で示されるような官能基の如き、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の各種官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有する単量体と、
【0085】
加水分解性シリル基を有する種々のビニル系単量体と、酸基を有する種々の単量体とを共重合せしめるというような方法であるとか、あるいは前記した三タイプの官能基を有する単量体とに加えて、これらと共重合可能なる其の他のビニル系単量体とを共重合せしめるというような方法が、特に簡便である。
【0086】
こうした諸々の方法によって、特に、当該重合体(a−3)のうちの、此のビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体、酸基含有単量体および此等と共重合可能なる其の他のビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前記したビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして、それぞれにつき、既に例示したような、各種の単量体などである。
【0087】
また、此のビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、水酸基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0088】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの如き、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテルもしくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、各種の水酸基含有ビニルエーテル類;
【0089】
2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き、各種の水酸基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコールなどで以て代表されるような、種々のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸などで以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸とから得られる、各種のポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;
【0090】
あるいは前掲したような各種の水酸基含有単量体類と、ε−カプロラクトンなどで以て代表されるような、種々のラクトン類との付加物;またはグリシジル(メタ)アクリレートなどで以て代表されるような、種々のエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸などで以て代表されるような、種々の酸類との付加物などであるし、
【0091】
さらには、(メタ)アクリル酸などで以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸類と、「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)などで以て代表されるような、α−オレフィンのエポキサイド系化合物以外の、種々のモノエポキシ化合物との付加物などのような種々の水酸基含有単量体類などである。
【0092】
此のビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、ブロックされた水酸基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−トリメチルシロキシブチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシエチルビニルエーテルもしくは4−トリメチルシロキシブチルビニルエーテルの如き、特開昭62−283163号公報に開示されているような、各種のシリルエーテル基含有ビニル系単量体類;
【0093】
2−(1−エトキシ)エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(1−n−ブトキシ)エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エトキシテトラヒドロフランもしくは2,2−ジメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシメチルジオキソランの如き、特開平4−41515号公報に開示されているような、各種のアセタール基ないしはケタール基含有ビニル系単量体類;
【0094】
または3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジン、2,2−ジメチル−3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジンもしくは2−イソブチル−2−メチル−3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジンの如き、各種のオキサゾリジン基含有ビニル系単量体類などである。
【0095】
此のビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、3級アミノ基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0096】
2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートまたはN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0097】
ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾールもしくはN−ビニルキノリンの如き、各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;
【0098】
N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミドまたはN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;
【0099】
N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミドまたはN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドの如き、各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;
【0100】
2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテルまたは4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルの如き、各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類などである。
【0101】
此のビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0102】
2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4,5−カーボネートペンチル(メタ)アクリレート、5,6−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、5−エチル−5,6−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレートもしくは7,8−カーボネートオクチル(メタ)アクリレート、2,3−カーボネートプロピルビニルエーテル、ジ(2,3−カーボネートプロピル)マレートまたはジ(2,3−カーボネートプロピル)イタコネートの如き、5員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類などをはじめ、
【0103】
さらには、〔5−N−(メタ)アクリロイルカルバモイルオキシ〕メチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−〔N−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エチルカルバモイルオキシ〕メチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−エチル−5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン−2−オンまたは4−(5−エチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシメチルスチレンの如き、6員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類である。
【0104】
此のビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、エポキシ基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシジルビニルエーテル、メチルグリシジルビニルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き、種々の化合物などである。
【0105】
当該ビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、1級アミド基ないしは2級アミド基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルフォルムアミド、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートとアセチルアセトンまたはアセト酢酸エステル類との付加反応物の如き、種々の化合物などである。
【0106】
此のビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、カーバメート基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0107】
N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸メチル、N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸エチル、N−〔2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルカルバミン酸エチル、2−カルバモイルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−(N−メチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレートもしくは3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートと、2−ヒドロキシプロピルカーバメートとの付加反応物;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、フェノールとの付加反応物;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、エタノールとの付加反応物;または2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、メチルエチルケトオキシムとの付加反応物のような種々の化合物などである。
【0108】
当該ビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、前掲した構造式(S−I)で示されるような官能基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートもしくは3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートの如き、各種のイソシアナート基含有ビニル系単量体と、ε−カプロラクタムもしくはγ−ブチロラクタムの如き、各種のアミド化合物との付加反応物のような種々の化合物などである。
【0109】
此のビニル系重合体(a−3)を調製する際に使用される、前記したような種々の官能基のうちの2種以上の官能基を併有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、モノ−(2−ヒドロキシエチル)イタコネートまたはモノ−(2,3−カーボネートプロピル)イタコネートなどのような種々の化合物などである。
【0110】
上述した、加水分解性シリル基含有単量体と、酸基含有単量体と、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基とを併有する単量体と、さらに、必要に応じて、これらと共重合可能なる其の他の単量体とを使用して、此のビニル系重合体(a−3)を調製するには、
【0111】
前述したビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして既に例示したような、それぞれ、溶剤類、重合開始剤、さらには、必要に応じて、重合時のゲル化を防止するための、前掲したような各種の加水分解性エステル類を使用して、公知慣用の種々の方法に従って、溶液ラジカル重合せしめるというようにすればよい。
【0112】
以上に掲げたような、単量体類、重合開始剤類および有機溶剤類を使用して、公知慣用の溶液ラジカル重合法を利用し適用することによって、目的とする加水分解性シリル基および酸基なる両基と、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基とを併有するビニル系重合体(a−3)を調製することが出来る。
【0113】
上述のようにして調製されるビニル系重合体(a−1)または(a−3)中に導入されるべき加水分解性シリル基の量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たり、0.005〜3モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.01〜2モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.05〜1モルなる範囲内が適切である。
【0114】
0.005モル未満の場合には、どうしても、ビニル系重合体(a−1)または(a−3)と、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサン(a−2)との縮合反応が進行しずらくなり、ひいては、得られる硬化物の耐久性などを低下するようになるし、一方、3モルを超えて余りにも多くなる場合には、どうしても、前記した縮合反応時の溶液粘度が上昇し、ひいては、ゲル化が起きてしまうなど不都合が惹起されるということにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0115】
また、これらのビニル系重合体(a−1)または(a−3)中に導入されるべき酸基量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たり、0.05〜13.5モルなる範囲内が適切であるし、好ましくは、0.07〜7.0モルなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.1〜2.0モルなる範囲内が適切である。
【0116】
さらに、ビニル系重合体(a−3)中に導入されるべき、それぞれ、水酸基、ブロックされた水酸基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲の構造式(S−I)で示されるような官能基などにより代表される、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基の少なくとも1種の官能基の量としては、ビニル系重合体(a−3)の固形分の1,000グラム当たり、0.1〜5モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルなる範囲内が適切である。
【0117】
5モルを超えて余りにも多くなるような場合には、どうしても、硬化物の、とりわけ、耐水性ならびに耐薬品性などが低下するようになるので、好ましくない。
【0118】
また、これらのビニル系重合体(a−1)または(a−3)の数平均分子量としては、500〜100,000なる範囲内が、好ましくは、1,000〜50,000なる範囲内が適切であるし、一層好ましくは、1,500〜30,000なる範囲内が適切である。
【0119】
これらのビニル系重合体(a−1)または(a−3)の数平均分子量が、500未満の場合には、どうしても、硬化性や、硬化物の機械的強度などが劣るようになるし、一方、100,000を超えて余りにも高くなる場合には、どうしても、本発明に係る常温硬化型水性硬化性樹脂組成物の不揮発分が著しく低くなったり、塗装作業性などにも劣るようになったり、また、硬化塗膜の外観が低下したりするので、いずれの場合も好ましくない。
【0120】
ビニル系重合体(a−1)として、重合性不飽和二重結合を有する、それぞれ、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などのような、ビニル系重合体以外の重合体の存在下に、加水分解性シリル基含有単量体と、酸基含有単量体とを必須成分とする単量体混合物を、ラジカル重合せしめるということによって得られる、加水分解性シリル基および酸基なる両基とを併有するビニル系重合体セグメントをグラフト化せしめた形の、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などを使用することも出来る。
【0121】
また、ビニル系重合体(a−3)として、重合性不飽和二重結合を有する、それぞれ、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などのような、ビニル系重合体以外の重合体の存在下に、加水分解性シリル基含有単量体と、酸基含有単量体と、これら以外の官能基を有する単量体とを必須成分とする単量体混合物を、ラジカル重合せしめるということによって得られる、加水分解性シリル基および酸基なる両基と、これら以外の官能基を有するビニル系重合体セグメントをグラフト化せしめた形の、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などを使用することも出来る。
【0122】
重合体(a−1)のうちのポリウレタン樹脂を調製するには、各種のジヒドロキシ化合物および各種のジイソシアネート化合物に加えて、加水分解性シリル基を有するジアミン化合物または加水分解性シリル基を有するモノアミン化合物、さらには、ジメチロールプロピオン酸もしくはジメチロールブタン酸の如き、各種の酸基含有ジヒドロキシ化合物の如き、公知慣用の種々の原料成分を使用して、特開昭51−90391号公報、特開昭55−73729号公報または特開昭60−255817号公報に記述されているような方法を利用し適用するというようにすればよい。
【0123】
重合体(a−3)のうちのポリウレタン樹脂を調製するには、前記したポリウレタン系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして既に掲げたような公知慣用の各種の原料類に加えて、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の、前記したような各種の官能基を有し、しかも、イソシアネート基と反応する活性水素を有する基を、1個または2個、有するというような種々の化合物を原料成分として使用して、公知慣用の種々の方法を利用し適用するというようにすればよい。
【0124】
ポリウレタン系重合体(a−3)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の、前記したような各種の官能基を有し、しかも、イソシアネート基と反応する活性水素を有する基を、1個または2個、有するというような化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、グリシドール、N−メチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチルカーバメートもしくは2−ヒドロキシプロピルカーバメートの如き、各種の官能基と水酸基とを併有する化合物などである。
【0125】
前述したような方法で以て調製されるポリウレタン系重合体(a−1)または(a−3)中に導入されるべき加水分解性シリル基の量としては、それぞれの重合体の固形分1,000グラム当たり、0.005〜3モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.01〜2モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.05〜1モルなる範囲内が適切である。
【0126】
0.005モル未満の場合には、どうしても、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−3)と、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサン(a−2)との縮合反応が進行しずらくなり、ひいては、得られる硬化物の、とりわけ、耐久性などが低下するというようになるし、一方、3モルを超えて余りにも多くなる場合には、前記した縮合反応時の溶液粘度が上昇し、ひいては、ゲル化を惹起してしまうようになるなどの不都合が認められるようにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0127】
また、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−3)中に導入されるべき酸基量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たり、0.07〜5.0モルなる範囲内が適切であるし、好ましくは、0.07〜2.0モルなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.1〜0.7モルなる範囲内が適切である。
【0128】
さらに、ポリウレタン系重合体(a−3)中に導入されるべき、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基の少なくとも1種の量としては、ポリウレタン系重合体(a−3)の固形分の1,000グラム当たり、0.1〜5モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルなる範囲内が適切である。
【0129】
また、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−3)の数平均分子量としては、500〜100,000なる範囲内が、好ましくは、1,000〜50,000なる範囲内が適切であるし、一層好ましくは、1,500〜30,000なる範囲内が適切である。
【0130】
ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−3)の数平均分子量が、500未満の場合には、どうしても、硬化性や硬化物の機械的強度などが劣るようになるし、一方、100,000を超えて余りにも高くなる場合には、どうしても、本発明に係る常温硬化型水性硬化性樹脂組成物の不揮発分が著しく低くなったり、塗装作業性などにも劣るようになったり、また、硬化塗膜の外観が低下したりするようにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0131】
本発明において用いられる樹脂(A−1)または(A−2)を調製する際に使用される他方の成分である、前記した、ポリシロキサン(a−2)とは、一般的に、シラノール基と呼称される珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンを指称するというものである。
【0132】
ここにおいて、珪素原子に結合した加水分解性基とは、珪素原子に結合した、それぞれ、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基の如き、加水分解されて、シラノール基を生成するというような種々の基を指称するというものである。
【0133】
こうしたポリシロキサン(a−2)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、一分子中に、少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめるということによって調製される形の、当該珪素化合物の加水分解縮合物あるいは斯かる珪素化合物を部分加水分解縮合せしめるということによって調製される形の、当該珪素化合物の部分加水分解縮合物などである。
【0134】
樹脂(A−1)または(A−2)を調製するに際して使用される、当該ポリシロキサン(a−2)としては、後掲するような手段ないしは処方によって調製されるような、一分子中に、少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物の加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物を使用するということが出来る。
【0135】
前記した、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物の加水分解ないしは部分加水分解によって、当該ポリシロキサン(a−2)を調製する際に使用される珪素化合物としては、一分子に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する3官能シラン化合物を必須成分として用いるものではあるが、その他、公知慣用の種々の化合物が、いずれも、使用できる。それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、次のような一般式(S−IV)
【0136】
5bSiR64-b (S−IV)
【0137】
(ただし、式中のR5 は、それぞれ、置換基を有していても有していなくてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルケニル基なる1価の有機基を、R6 はハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基を表わすものとし、また、bは0あるいは1または2なる整数であるものとする。)
【0138】
で以て示される珪素化合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる形の部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の混合物の部分加水分解縮合によって得られる形の部分共加水分解縮合物;
【0139】
あるいは
【0140】
(CH3 CH2O)3 SiCH2 CH2 Si(OCH2 CH33
【0141】
または
【0142】
(CH3 CH2 O)3 SiCH2 CH2 CH2 Si(OCH2 CH33
【0143】
などのような、一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物などである。
【0144】
前掲したような一般式で示される珪素化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランもしくはテトラ−n−ブトキシシランの如き、各種のテトラアルコキシシラン類;
【0145】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシランもしくはn−ブチルトリエトキシシラン、
【0146】
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランもしくはアリルトリメトキシシラン、
【0147】
または2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、2−トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランの如き、各種のオルガノトリアルコキシシラン類;
【0148】
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシランもしくはジ−n−ブチルジエトキシシラン、
【0149】
またはジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、2−(メチルジメトキシシリル)エチルビニルエーテル、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテルもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランの如き、各種のジオルガノジアルコキシシラン類;
【0150】
テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ビニルメチルジクオロロシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシランの如き、各種のクロロシラン類;
【0151】
またはテトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシランもしくはジフェニルジアセトキシシランの如き、各種のアセトキシシラン類などである。
【0152】
これらの加水分解性基を有する珪素化合物のうちで、ポリシロキサン(a−2)を調製する際に使用される珪素化合物として特に望ましいもののみを例示すれば、テトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシランまたはジオルガノジアルコキシシラン、それらの部分加水分解縮合物または其れらの部分共加水分解縮合物などであるし、さらには、各種のクロルシラン類の加水分解縮合物などである。
【0153】
また、当該珪素化合物として、テトラエトキシシランなどに代表されるような4官能の珪素化合物を使用する際には、重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との間の縮合反応中のゲル化の防止、ならびに塩基性化合物による中和反応中のゲル化の防止などのためにも、3官能珪素化合物と共に2官能の珪素化合物を併用するというのが望ましい。
【0154】
斯かるポリシロキサン(a−2)を調製するに際して、前掲したような各種の珪素化合物に加えて、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシランまたはトリフェニルクロロシランのような、一分子中に珪素原子に結合した加水分解性基を1個のみ有する、いわゆる1官能性の珪素化合物をも併用するということが出来る。
【0155】
前記したような各種の珪素化合物を加水分解縮合ないしは部分加水分解縮合せしめることによって、ポリシロキサン(a−2)として使用される加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物を得るということが出来るが、その際に、触媒を使用してもよいし、使用しなくてもよく、これらの縮合反応を容易に進行せしめるようにするという面からは、触媒を使用することが望ましい。
【0156】
ここにおいて、触媒を使用する場合には、公知慣用の種々の触媒のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは単独使用でも、2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0157】
斯かる触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、塩酸、硫酸または燐酸の如き、各種の無機酸類;p−トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピルまたは酢酸の如き、各種の有機酸類;
【0158】
水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの如き、各種の無機塩基類;テトライソプロピルチタネートまたはテトラブチルチタネートの如き、各種のチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレートまたはオクチル酸錫の如き、各種の錫カルボン酸塩類;
【0159】
鉄、コバルト、マンガンまたは亜鉛の如き、各種の金属のナフテン酸塩;あるいはオクチル酸塩の如き、各種の金属カルボン酸塩類;あるいは亦、アルミニウムトリスアセチルアセトネートの如き、各種のアルミニウム化合物;
【0160】
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミンまたはブチルアミンもしくはオクチルアミン、
【0161】
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールもしくは1,4−ジエチルイミダゾールの如き、各種のアミン化合物類;
【0162】
テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)アンモニウム塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム塩、テトラキス(ヒドロキシルメチル)アンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩もしくはo−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウム塩の如き、各種の4級アンモニウム塩類であって、
【0163】
さらには、代表的なる対アニオンとして、それぞれ、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類などである。
【0164】
使用される斯かる触媒の量としては、加水分解ないしは部分加水分解に供される珪素化合物に対して、0.000001〜10重量%なる範囲内が、好ましくは、0.000005〜5重量%なる範囲内が、特に好ましくは、0.00001〜1重量%なる範囲内が適切である。
【0165】
また、前記した反応に用いられる水の量としては、かかる珪素化合物の珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、0.05モル以上が、好ましくは、0.1モル以上が適切であるし、さらに好ましくは、0.2モル以上が適切である。
【0166】
0.05モル未満の場合には、どうしても、加水分解の速度が著しく遅くなってしまい、実用上、好ましくないけれども、此の水の量が、5モルとか、10モルとか、珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、余りにも過剰となるように使用するということは、一向に、支障が無い。
【0167】
そして、これらの触媒および水の添加は、一括添加でも、分割添加でもよく、また、触媒と水を混合した形で以て添加しても、あるいは別々に、添加してもよいことは、勿論である。
【0168】
斯かる反応の反応温度としては、0℃〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃が適切であるし、一方、これらの反応の圧力としては、常圧、加圧または減圧下の、いずれの条件においても行なうということが出来る。
【0169】
そして、こうした反応の副生成物である、それぞれ、アルコールや水などが、引き続いて行われる重合体(a−1)と、ポリシロキサン(a−2)との縮合反応や、得られる水性硬化性樹脂組成物の安定性などの上で以て問題を起こすようであれば、蒸留などの手段によって、系外に除くことが出来るし、問題が無ければ、そのまま、系内に存在させておいて、一向に、支障は無い。
【0170】
また、かかる反応にあっては、有機溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよいけれども、攪拌などが、容易に、行なえるというようにするためにも、有機溶剤を使用することが望ましい。
【0171】
ここにおいて、斯かる有機溶剤を使用するというような場合には、公知慣用の種々の有機溶剤のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは、単独使用でも2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0172】
その際に使用される有機溶剤としては、ビニル系重合体(a−1)または(a−3)を調製する際に使用できるものとして既に掲げたような種々のものを使用することが出来る。
【0173】
そして、斯かる有機溶剤を使用して、当該ポリシロキサン(a−2)を調製する際には、一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物の、斯かる有機溶剤中における濃度としては、5重量%程度以上にするということが望ましい。
【0174】
また、当該ポリシロキサン(a−2)として、市販のポリシロキサンを使用することもできるが、そのようなポリシロキサンとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シラノール基あるいは珪素原子に結合したメトキシ基を有するポリシロキサンとして市販されているような、それぞれ、「TSR−160もしくは165」[東芝シリコーン(株)製の商品名]、「SH−6018」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の商品名]または「GR−100、908もしくは950」[昭和電工(株)製の商品名]などで以て代表されるような、線状、環状、分岐状(分枝状)あるいはラダー(型)構造を有する、加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物などである。
【0175】
上述したようなポリシロキサンのうちでも、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)の安定性などの面からは、当該ポリシロキサン(a−2)を構成する全珪素原子のうち、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、さらに好ましくは、40モル%以上の珪素原子に、フェニル基のような、いわゆるアリール基が結合した形の化合物を使用するのが適切である。
【0176】
また、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)の硬化性と、耐久性との面からは、当該ポリシロキサン(a−2)を構成する全珪素原子のうち、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、さらに好ましくは、30モル%以上が、メチルトリアルコキシシラン類、メチルトリクロロシラン、フェニルトリアルコキシラン類またはフェニルトリクロロシランのような、いわゆる3官能シラン化合物に由来するものを使用するものである。
【0177】
次いで、前記した重合体(a−1)または(a−3)と、前記したポリシロキサン(a−2)との縮合反応について述べることにする。
【0178】
当該縮合反応を行なうに当たり、重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)の使用割合は、[重合体(a−1)または(a−3)]:(a−2)なる重量割合として、5:95〜99:1程度になるように、好ましくは、15:85〜95:5になるように、さらに好ましくは、20:80〜85:15になるように設定するのがよい。
【0179】
重合体(a−1)または(a−3)の重量割合が5%未満になるように設定すると、どうしても、ポリシロキサン(a−2)が多すぎるために、とりわけ、耐アルカリ性などに乏しい硬化塗膜が得られるというようになってしまうし、一方、重合体(a−1)または(a−3)の重量割合が99%を超えて余りにも多くなるような場合には、どうしても、ポリシロキサン(a−2)が少なすぎるために、高度の耐久性などを有する硬化塗膜が得られ難くなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0180】
こうした重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との縮合反応を行なうに当たり、此の反応をスムーズに進行させるために、触媒を添加することが出来るが、斯かる触媒としては、ポリシロキサン(a−2)を調製する際に使用されるものとして既に掲げたような種々の触媒類を、そのまま、使用することが出来る。
【0181】
また、当該縮合反応に際して、殊更に、触媒を添加せずとも、前述したような手段ないしは処方で以て調製されたポリシロキサン(a−2)中に残留している触媒のみでも、当該縮合反応を促進せしめ得ることは可能である。
【0182】
使用される触媒の量としては、重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)の合計量に対して、0.0001〜10重量%なる範囲内が、好ましくは、0.0005〜3重量%なる範囲内が、特に好ましくは、0.0005〜1重量%なる範囲内が適切である。
【0183】
また、重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との間の縮合反応をスムーズに進行せしめるというためには、重合体(a−1)または(a−3)中に含有される加水分解性シリル基の加水分解と、ポリシロキサン(a−2)中に、場合によっては含有される珪素原子に結合した加水分解性基の加水分解とを円滑に進行せしめることが望ましく、したがって、こうした縮合反応を、水の存在下で以て行なうということが、特に望ましい。
【0184】
水の存在下に、当該縮合反応を行なって縮合物を得るには、重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との混合物に、水を加えて、重合体(a−1)または(a−3)中に含まれる加水分解性シリル基と、ポリシロキサン(a−2)中に、場合によっては含まれる珪素原子に結合した加水分解性基との双方を加水分解せしめ、引き続いて、縮合反応を行なうというようにすればよいし、
【0185】
また、殊更に、水を加えずに、前記したような手段ないしは処方で以て調製された、此のポリシロキサン(a−2)中に残存している水を利用するということによって、重合体(a−1)中に含まれる加水分解性シリル基と、ポリシロキサン(a−2)中に、場合によっては含まれる珪素原子に結合した加水分解性基との双方を加水分解せしめ、しかるのち、引き続いて、縮合反応を行なうということによって達成することが出来る。
【0186】
当該縮合反応を行なう際に添加される水の量は、適宜、選択することが出来るし、触媒および水の添加方法は、一括添加でもよいし、分割添加でもよいし、また、触媒と水とを混合した形で以て添加しても、あるいは別々に、添加してもよいということは、勿論である。
【0187】
こうした縮合反応の反応温度としては、0℃〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃が適切であるし、一方、当該縮合反応の圧力としては、常圧下と、加圧または減圧下との、いずれの条件においても行なうということが出来る。
【0188】
また、当該縮合反応の副生成物である、アルコールや水などは、蒸留などの手段によって、これらを系外に除くということが出来るし、問題が無ければ、そのまま、系内に存在させておいても、一向に、支障は無い。
【0189】
さらに、当該縮合反応にあっては、有機溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、攪拌などが容易に行なえるようにするためには、ビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用できるものとして既に掲げたような、種々の有機溶剤類を使用することが望ましい。
【0190】
ここにおいて、有機溶剤を使用するという場合には、それらは、単独使用でも2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0191】
また、有機溶剤の存在下において、当該縮合反応を行なう場合の、それぞれ、重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との、有機溶剤中における濃度としては、両成分の合計量として、5重量%程度以上にすることが望ましい。
【0192】
このようにして調製される、重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との縮合反応生成物中に含有される酸基を、塩基性化合物で以て、部分的に、あるいは完全に中和反応せしめるということによって、それぞれ、樹脂(A−1)および(A−2)が調製される。
【0193】
かかる中和反応の際に使用される此の塩基性化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノ−ル、2−アミノエタノ−ルもしくは2−ジメチルアミノエタノ−ルなどによって代表されるような、各種の有機アミン化合物;
【0194】
またはアンモニアをはじめ、さらには、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどによって代表されるような、各種の無機塩基性物質;またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロオキサイドもしくはトリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイドなどによって代表されるような、各種の第四級アンモニウムハイドロオキサイド類などである。
【0195】
このような各種の塩基性化合物のうちでも、アンモニアまたは各種の有機アミン類の使用が、特に望ましい。
【0196】
そして、斯かる塩基性化合物の添加量としては、少なくとも、前記した重合体(a−1)または(a−3)と、前記したポリシロキサン(a−2)の縮合反応生成物に対して、水分散性を付与するということが可能なる量であり、これらの重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との縮合反応生成物中に含まれる酸基の当量数に対する、当該塩基性化合物の当量数の比率、
【0197】
つまり、当該塩基性化合物の当量数/〔重合体(a−1)または(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との縮合反応生成物中の酸基の当量数〕なる当量比が0.1以上となるような量が適切ではあるが、塗膜諸性能を損なわない範囲の量として、好ましくは、概ね、0.1〜3なる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.3〜2なる範囲内が適切である。
【0198】
斯かる中和反応は、水の存在下において行なってもよいし、また、水が存在しない状態で行なってもよいが、水が存在しない状態においては、前記した重合体(a−1)または(a−3)あるいは前記したポリシロキサン(a−2)などの種類や其れらの組成であるとか、さらには、当該中和反応の条件などによって、当該中和反応時における溶液粘度が上昇する処となり、ひいては、ゲル化が起きてしまうというような場合にさえなることもあるので、注意を要する。
【0199】
こうした問題が生じるような場合には、当該中和反応を、水の共存下で行なうことが特に望ましく、この際に添加される水の量は、前記した重合体(a−1)または(a−3)と、前記したポリシロキサン(a−2)との縮合反応生成物の固形分1000グラムに対して、100グラム以上、好ましくは、200グラム以上、さらに好ましくは500グラム以上という比率となるように設定するのが適切である。
【0200】
そして、当該中和反応を行なう際の塩基性化合物および水の添加方法は、一括添加でも、分割添加でもよいし、また、別々に、添加してもよいということは、勿論であるが、特に、塩基性化合物と水とを混合した形で以て添加するのが最適である。
【0201】
こうした中和反応の反応温度としては、0℃〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃が適切であるし、一方、これらの反応の圧力としては、常圧下と、加圧または減圧下との、いずれの条件においても行なうことが出来る。
【0202】
このようにして得られる樹脂(A−1)または(A−2)から、それぞれ、前記した水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)を調製するには、公知慣用の種々の方法を適用することが出来る。たとえば、これらの樹脂(A−1)または(A−2)に対して、単に、水を添加せしめるか、あるいは(A−1)または(A−2)を、水に対して加えるということによって、水中に分散せしめるか、あるいは溶解せしめるということによって、それぞれ、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)および(A−II)を製造するということが出来る。
【0203】
また、前述したように、こうした中和反応を、多量の水の存在下で以て行なうというような場合には、当該中和反応の終了後において、殊更に、水を添加せずとも、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液を調製することが出来る。
【0204】
さらにまた、必要に応じて、このようにして得られる水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)に含有される有機溶剤を、加熱および/または減圧によって、部分的に、あるいは完全に除去するということによって、有機溶剤の含有率が低いか、あるいは有機溶剤を含有しない形の水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)を調製することが出来る。
【0205】
このようにして得られる水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)中に含まれる官能基は、重合体(a−1)と、ポリシロキサン(a−2)とに由来するシラノール基と、場合によっては含有される珪素原子に結合した加水分解性基と、重合体(a−1)に由来する遊離の酸基と、塩基性化合物により中和された酸基とである。
【0206】
また、このようにして得られる水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−II)中に含まれる官能基は、重合体(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)とに由来するシラノール基と、場合によっては含有される珪素原子に結合した加水分解性基と、重合体(a−3)に由来する遊離の酸基と、塩基性化合物により中和された酸基とに加えて、重合体(a−3)に由来する、それぞれ、水酸基、ブロックされた水酸基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基および/または前掲した構造式(S−I)で示される官能基などのうちの、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基の、少なくとも1種のものとである。
【0207】
水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)を調製する過程で、重合体(a−1)または(a−2)中に、酸基として、ブロックした酸基あるいは酸無水基を導入せしめたものを使用したような場合には、かかるブロックした酸基あるいは酸無水基のうちの少なくとも一部分は、ポリシロキサン(a−2)との縮合過程で、あるいは塩基性化合物による中和過程で、加水分解、酸触媒分解、熱分解またはアルコリシスなどによって、遊離の酸基に変換されて、水性化のための親水性基として機能するようになる。
【0208】
もし、酸基として、前記したブロックした酸基あるいは酸無水基を導入せしめたような際に、塩基性化合物による中和過程ののちも、水性化に必要なる量の遊離の酸基が生成しない場合には、斯かる中和過程あるいはポリシロキサン(a−2)との縮合過程の反応条件を厳しくするということによって、遊離の酸基に変換せしめる必要がある。
【0209】
また、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−II)を調製する際に、重合体(a−3)に、ブロックされた水酸基、エポキシ基またはシクロカーボネート基を導入せしめた形のものを使用した場合には、重合体(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)とを縮合反応させる段階で以て、
【0210】
さらには、縮合反応ののちに行なわれる塩基性化合物を用いた中和反応による樹脂(A−2)の調製段階で以て、さらに加えて、水に対する樹脂(A−2)の分散または溶解の段階で以て、これらの官能基の少なくとも一部分は、加水分解、酸触媒分解またはアルコリシスなどによって、遊離の水酸基に変換されるということもある。
【0211】
そして、斯かるブロックされた水酸基、エポキシ基またはシクロカーボネート基の種類とか、あるいは重合体(a−3)と、ポリシロキサン(a−2)との縮合反応、該縮合反応ののちに行なう中和反応ならびに水に対する分散ないしは溶解せしめる際の諸条件などによっては、斯かる各種の官能基は、完全に、遊離の水酸基に変換されるということもある。
【0212】
このようにして得られる水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)から、本発明に係る常温硬化型水性樹脂組成物を調製するには、(A−I)および(A−II)は、それら自体が自己硬化性を有するという処から、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)に、前記した化合物(B)を配合せしめるということによって、これらの水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)中に含まれる官能基と、化合物(B)中に含まれる官能基との間の架橋反応をも利用するという形の常温硬化型水性樹脂組成物とすることが出来る。
【0213】
かかる常温硬化型水性樹脂組成物を調製するに際して使用される、斯かる化合物(B)とは、前述した(A−I)または(A−II)中に含まれる、前述のような各種の官能基と反応する官能基の少なくとも1種を有する、公知慣用の種々の化合物を指称するものである。
【0214】
まず、こうした官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、イソシアネート基、ブロックされたイソシアネート基、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、アミノ基、シクロカーボネート基、鎖状カーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基、オキサゾリン基、N−ヒドロキシメチルアミノ基、N−アルコキシメチルアミノ基、カルボニル基、アセトアセチル基、シラノール基、珪素原子に結合した加水分解性基または次のような構造式(S−III)
【0215】
−C(O)−NH−CH(OR3)−COOR4 (S−III)
【0216】
(ただし、式中のR3 は水素原子、炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わし、R4 は炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとする。)
【0217】
で示される部類の官能基などである。
【0218】
そして、斯かる化合物(B)中に含まれる官能基は、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)中に含まれる官能基の種類に応じて、適宜、選択して組み合わせることが出来る。そうした組み合わせとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シラノール基−シラノール基、シラノール基−アルコキシシリル基、アルコキシシリル基−アルコキシシリル基、カルボキシル基−エポキシ基、3級アミノ基−エポキシ基または水酸基−イソシアネート基などである。
【0219】
そして、当該化合物(B)としては、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)中に含まれる官能基によっては、前述したような種々の官能基のうちの2種以上を有するというようなものであってもよい。また、当該化合物(B)としては、比較的、分子量の低い化合物に加えて、各種の樹脂類を使用するということが出来る。このような樹脂類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0220】
アクリル樹脂またはフッ素樹脂の如き、各種のビニル系重合体などであるし、さらには、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂などである。そして、当該化合物(B)として、前記した官能基のうちの2種以上を有するような部類の化合物を使用する際には、当該化合物(B)としては、ビニル系重合体を使用するようにするのが簡便である。
【0221】
斯かる化合物(B)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物;一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基を併有する化合物;一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物;または一分子中にアミノ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物などをはじめ、
【0222】
ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、ポリアジリジン化合物、ポリアクリレート化合物、ポリカーボジイミド化合物、ブロックされた水酸基を含有する化合物、ポリアミン化合物、少なくとも2個のカルボン酸無水基を含有する化合物またはポリオキサゾリン化合物などであり、これらの諸々の化合物類は、単独使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよいことは、勿論である。
【0223】
これらのうちでも特に望ましい化合物としては、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物;一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基を併有する化合物;または一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物などが挙げられるし、ポリイソシアネート化合物またはポリエポキシ化合物などが挙げられる。
【0224】
前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有する珪素化合物中でも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような一般式(S−IV)で以て示される珪素化合物;これらの珪素化合物の加水分解物あるいは加水分解縮合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合により得られる部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の部分加水分解縮合により得られる部分共加水分解縮合物などである。
【0225】
これらのうちでも、当該珪素化合物として特に望ましく代表的なるものは、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシラン、それらの部分加水分解縮合物または其れらの部分共加水分解縮合物などである。
【0226】
前記した、一分子中に、それぞれ、イソシアネート基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併せ有する化合物として特に代表的なる化合物のみを例示するにとどめることにするならば、
【0227】
3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランもしくは3−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシランの如き、各種の珪素化合物;
【0228】
あるいは前掲したような、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体と、後掲するような、イソシアネート基含有ビニル系単量体からなる種々の共重合体、または此等の両単量体を、該両単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめるということによって得られるような、エポキシ基と加水分解性シリル基とを併有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0229】
前記した、一分子中に、それぞれ、エポキシ基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併せ有する化合物として特に代表的なる化合物のみを例示するにとどめることにするならば、
【0230】
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランもしくは3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランの如き、珪素化合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合により得られる部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の部分加水分解縮合により得られる部分共加水分解縮合物;
【0231】
「EGM−202」[東レ・ダウコーニング・シリコーン社製の、珪素原子に結合したメトキシ基と、3−グリシドキシプロピルとを併有する、環状のポリシロキサン];「KP−392」[信越化学(株)製の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物];
【0232】
あるいは前掲したような、各種のエポキシ基を有するビニル単量体と、同じく前掲した加水分解性シリル基を有するビニル系単量体からなる種々の共重合体、または此等両単量体を、該両単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られるような、エポキシ基と加水分解性シリル基を併有するアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0233】
前記したポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トリレンジイソシアネートもしくはジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類;
【0234】
メタ−キシリレンジイソシアネート、α,α,α',α'−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネートの如き、各種のアラルキルジイソシアネート類;
【0235】
ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナートシクロヘキサンもしくはイソホロンジイソシアネートの如き、各種の脂肪族ないしは脂環式ジイソシアネート類;
【0236】
前掲したような各種のポリイソシアネート類を、多価アルコール類と付加反応せしめて得られる、イソシアネート基を有するプレポリマー類;
【0237】
前掲したような各種のポリイソシアネート類を環化三量化せしめて得られる、イソシアヌレート環を有するプレポリマー類;
【0238】
前掲したような各種のポリイソシアンート類と、水とを反応せしめて得られる、ビウレット構造を有するポリイソシアネート類;
【0239】
さらには、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートもしくは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如き、各種のイソシアネート基を有するビニル単量体の単独重合体;
【0240】
または此等のイソシアネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめるということによって得られる、
【0241】
それぞれ、イソシアネート基含有の、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0242】
そして、斯かるポリイソシアネートのうちにあって、特に、耐候性などの面からは、脂肪族ないしは脂環式ジイソシアネート化合物、それらの各ジイソシアネート化合物から誘導される、種々のプレポリマーあるいはイソシアネート基含有ビニル系重合体などの使用が、特に望ましい。
【0243】
前記したブロック・ポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような各種のポリイソシアネート化合物を、後掲するような種々のブロック剤で以てブロック化せしめるということによって得られる形の種々のブロックポリイソシアネート化合物や、
【0244】
イソシアネート基を環化二量化せしめるということによって得られる形の種々のウレトジオン構造を含む化合物のように、熱によって、イソシアネート基が再生するという部類の化合物などである。
【0245】
そして、ブロック・ポリイソシアネート化合物を調製する際に使用される、ブロック剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコールもしくは乳酸エステルの如き、各種のカルビノール基含有化合物類;
【0246】
フェノール、サリチル酸エステルもしくはクレゾールの如き、各種のフェノール性水酸基含有化合物類;またはε−カプロラクタム、2−ピロリドンもしくはアセトアニリドの如き、各種のアマイド類;
【0247】
あるいはアセトンオキシムもしくはメチルエチルケトオキシムの如き、各種のオキシム類などであるし、さらには、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルもしくはアセチルアセトンの如き、各種の活性メチレン化合物類などである。
【0248】
前記したポリエポキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたは水添ビスフェノールAの如き、各種の脂肪族ないしは脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル類;
【0249】
ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールSもしくはビスフェノールFの如き、各種の芳香族系ジオールのポリグリシジルエーテル類;上掲したような芳香族系ジオール類のエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド付加体の如き、該芳香族系ジオール誘導体類のジグリシジルエーテル類;
【0250】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル類;アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、プロパントリカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸もしくはトリメリット酸の如き、各種の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル類;
【0251】
ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、ドデカジエン、シクロオクタジエン、α−ピネンもしくはビニルシクロヘキセンの如き、各種の炭化水素系ジエンの種々のビスエポキシド類;ビス(3,4ーエポキシシクロヘキシルメチル)アジペートもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートの如き、各種の脂環式ポリエポキシ化合物;またはポリブタジエンもしくはポリイソプレンの如き、各種のジエンポリマーの種々のエポキシ化物;
【0252】
「EX−612」[ナガセ化成工業(株)製の、ソルビトールポリグリシジルエーテルの商品名];または「EGM−400」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、3−グリシドキシプロピルを有する、環状のポリシロキサンの商品名];
【0253】
あるいは前掲したような各種のエポキシ基含有ビニル単量体の種々の単独重合体または此等のエポキシ基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめるということによって得られるような、エポキシ基含有の、それぞれ、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0254】
ポリシクロカーボネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような各種のポリエポキシ化合物を、たとえば、触媒の存在下に、二酸化炭素と反応せしめるということによって、此のエポキシ基を、シクロカーボネート基に変換せしめることにより得られる5員環シクロカーボネート基を有するポリシクロカーボネート化合物;あるいは前掲したような各種のシクロカーボネート基を有するビニル単量体の種々の単独重合体;
【0255】
または此等のシクロカーボネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめるということによって得られるような、シクロカーボネート基含有の、それぞれ、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0256】
アミノ樹脂として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、尿素またはグリコウリルの如き、各種のアミノ基含有化合物を、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドの如き、各種のアルデヒド化合物(ないしはアルデヒド供給物質)と反応せしめるということによって得られるような部類の、アルキロール基を有する種々のアミノ樹脂;
【0257】
あるいは斯かるアルキロール基を有するアミノ樹脂を、メタノール、エタノール、n−ブタノールまたはi−ブタノールの如き、各種の低級アルコールと反応せしめて得られる、アルコキシアルキル基を有するアミノ樹脂などである。
【0258】
また、1級ないしは2級アミド基含有化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、重合体(a−3)を調製する際に使用されるものとして既に例示したような、1級ないしは2級アミド基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体;
【0259】
または此等の1級ないしは2級アミド基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめるということによって得られるような、1級ないしは2級アミド基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0260】
また、ポリカルボキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸などの低分子量の化合物などであり、さらに、
【0261】
重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして既に例示したような、カルボキシル基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体;
【0262】
または此等のカルボキシル基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめるということによって得られるような、カルボキシル基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0263】
ポリヒドロキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールもしくはグリセリンなどの低分子化合物などであり、また、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどであり、さらに、重合体(a−3)を調製する際に使用されるものとして既に例示したような、水酸基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体;
【0264】
または此等の水酸基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめるということによって得られるような、水酸基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0265】
当該化合物(B)を、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)に配合せしめる際に、当該化合物(B)が水溶性のものであったり、或る程度の親水性を有するものであるというような場合には、当該化合物(B)が、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)の中に、均一に溶解ないしは均一に分散した形の組成物として得ることが出来る。
【0266】
しかしながら、当該化合物(B)の親水性が低いというような場合には、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)と混合しても、均一に溶解ないいしは分散した形の組成物を得ることが出来ない。このような場合には、公知慣用の種々の方法により、当該化合物(B)中に、親水性基などを導入せしめるということによって、当該化合物(B)の親水性を向上化せしめ、ひいては、均一なる組成物を得ることが出来る。
【0267】
当該化合物(B)が、それ自体、重合体であるというような場合には、当該化合物(B)としては、それぞれ、無溶剤液状物、有機溶剤溶液、水溶液ないしは水分散体のいずれの形態であっても使用するということができる。そして、当該化合物(B)がビニル重合体であるという場合には、エマルジョン重合体として使用するというのも好適である。
【0268】
前記した水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)と、当該化合物(B)とから成る常温硬化型水性樹脂組成物を調製するに当たって、此の化合物(B)が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物であるという場合には、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)の固形分の100重量部に対して、化合物(B)の固形分量が、0.1〜200重量部なる範囲内、好ましくは、0.5〜150重量部なる範囲内、一層好ましくは、1〜100重量部なる範囲内となるように、此の化合物(B)を配合せしめるようにすればよい。
【0269】
また、化合物(B)が、一分子中に、イソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物であるとか、ポリイソシアネート化合物であるとか、ブロックポリイソシアネート化合物であるというような場合には、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)中に含まれる、イソシアネート基またはブロックイソシアネート基と反応する官能基の1当量に対して、
【0270】
此の化合物(B)に含まれるイソシアネート基またはブロックイソシアネート基の量が0.1〜10当量なる範囲内、好ましくは、0.3〜5当量なる範囲内、一層好ましくは、0.5〜2当量なる範囲内となるように、此の化合物(B)を配合せしめるようにすればよい。
【0271】
さらに、化合物(B)が、一分子中に、エポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリエポキシ化合物あるいはポリシクロカーボネート化合物であるというような場合には、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)に含まれる、エポキシ基またはシクロカーボネート基と反応する官能基の1当量に対して、
【0272】
此の化合物(B)中に含まれるエポキシ基量および/またはシクロカーボネート基量の合計量が、0.2〜5.0当量なる範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量なる範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量なる範囲内となるように、此の化合物(B)を配合せしめるようにすればよい。
【0273】
さらに亦、化合物(B)がアミノ樹脂であるというような場合には、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)の固形分の100重量部に対して、化合物(B)の固形分量が、5〜200重量部なる範囲内、好ましくは、10〜150重量部なる範囲内、一層好ましくは、15〜100重量部なる範囲内となるように、配合せしめるようにすればよい。
【0274】
また、化合物(B)が1級ないしは2級アミド基を含有する化合物であるというような場合には、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)に含まれる、1級ないしは2級アミド基と反応する官能基の1当量に対して、
【0275】
化合物(B)中に含まれる1級ないしは2級アミド基量が、0.2〜5.0当量なる範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量なる範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量なる範囲内となるように、此の化合物(B)を配合せしめるようにすればよい。
【0276】
さらに、化合物(B)がポリカルボキシ化合物であるというような場合には、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)に含まれる、カルボキシル基と反応する官能基の1当量に対して、
【0277】
化合物(B)中に含まれるカルボキシル基量が、0.2〜5.0当量なる範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量なる範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量なる範囲内となるように、此の化合物(B)を配合せしめるようにすればよい。
【0278】
さらに亦、化合物(B)がポリヒドロキシ化合物であるというような場合には、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)に含まれる、ヒドロキシ基と反応する官能基の1当量に対して、
【0279】
化合物(B)中に含まれる水酸基量が、0.2〜5.0当量なる範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量なる範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量なる範囲内となるように、此の化合物(B)を配合せしめるようにすればよい。
【0280】
上述のようにして調製される、水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)に、さらに、化合物(B)をも配合せしめた形の、本発明に係る常温硬化型水性樹脂組成物は、着色顔料を含まない形の、いわゆるクリヤーな組成物として使用することが出来るし、また、公知慣用の種々の有機系あるいは無機系の顔料を含有する着色組成物としても、使用することが出来る。
【0281】
また、本発明の常温硬化型水性樹脂組成物には、さらに、硬化触媒、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤または可塑剤などのような、公知慣用の種々の添加剤類などをも配合せしめた形で、種々の用途に利用し適用することが出来る。
【0282】
こうした添加剤類のうち、硬化触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前記したようなポリシロキサン(a−2)を調製する際に使用されるものとして既に掲げたような各種の触媒類を使用することが出来るし、これらの既掲の触媒類に加えて、テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)ホスホニウム塩、トリフェニルホスホニウム塩またはベンジルホスホニウム塩類などを使用することが出来る。
【0283】
かくして得られる、本発明に係る常温硬化型水性樹脂組成物は、それを構成する水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液(A−I)または(A−II)の種類により、(B)成分の有無により、あるいは(B)成分を添加した場合には、その種類と量とにより、最適なる硬化条件は異なるけれども、通常は、室温で、3〜10日間程度のあいだ乾燥せしめるか、
【0284】
あるいは80〜250℃程度の温度範囲で、30秒から2時間程度のあいだ焼き付けを行なうということによって、実用性の高い硬化物を得ることが出来る。
【0285】
本発明に係る常温硬化型水性樹脂組成物は、主として、自動車上塗り用塗料、建築外装用塗料あるいは建材用塗料などの、種々の塗料用に利用し適用することが出来るし、さらには、接着剤用、インク用、繊維・紙の含浸剤用ならびに表面処理剤用などとして、広範囲なる用途にも利用し適用することが出来る。
【0286】
さらに具体的なものとしては、自動車、自動二輪車、電車、自転車、船舶または飛行機、あるいは其の他の輸送関連機器類と、それらの諸部品類;テレビ、ラジオ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー、クーラー室外機またはコンピュータ、あるいは其の他の家電製品類と、それらの諸部品類;各種の瓦、金属製の屋根材、窓枠、ドアまたは内外壁材の如き、各種の建材類;道路、道路標識、ガードレール、橋梁、タンク、煙突またはビルディングの如き、各種の屋外構築物などが挙げられるというものであって、それぞれ、本発明の常温硬化型水性樹脂組成物は、こうした用途に、有効に、利用し適用することが出来るというものである。したがって、被塗物基材の方も、上述の用途に即して、既に明らかとなろう。
【実施例】
【0287】
次に、本発明を、参考例、実施例および比較例により、一層、具体的に説明をすることにするが、本発明は、決して、これらの例示例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、重量基準であるものとする。
【0288】
参考例1〔重合体(a−1)の調製例〕
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応容器に、イソプロパノールの470部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0289】
次いで、同温度で、スチレンの100部、メチルメタアクリレートの300部、n−ブチルメタクリレートの334部、n−ブチルアクリレートの186部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30部およびアクリル酸の50部と、イソプロパノールの450部と、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの50部とからなる混合物を、4時間かけて滴下した。
【0290】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌するということによって、不揮発分が53.5%で、かつ、数平均分子量が12,800なる、カルボキシル基およびトリメトキシシリル基を併有する目的重合体の溶液を得た。以下、これを(a−1−1)と略記する。
【0291】
参考例2〜参考例4(同上)
単量体および溶剤類の種類と、それらの使用量とを、第1表に示すように変更した以外は、参考例1と同様に重合を行なって、同表に示すような性状値を有する、各種の目的重合体(a−1)を得た。それらの重合体は、同表に示すように略記をする。
【0292】
【表1】

【0293】
《第1表の脚注》原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0294】
「MPTMS」……………3−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの略記
「TBPOEH」…………tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの略記
【0295】
【表2】

【0296】
《第1表の脚注》
数平均分子量を示す各数値は、いずれも、百分の一となっているので、百倍(つまり、「×100」)をした値が、真のものである。
【0297】
参考例5〜7〔重合体(a−3)の調製例〕
単量体および重合開始剤の種類と、それらの使用量とを、第1表に示すように変更した以外は、参考例1と同様に重合を行なって、同表に示すような性状値を有する、各種の目的重合体(a−3)を得た。それらの重合体は、同表に示すように略記をする。
【0298】
【表3】

【0299】
《第1表の脚注》
「HEMA」……………2−ヒドロキシエチルメタクリレートの略記
「DMAEMA」………2−ジメチルアミノエチルメタアクリレートの略記
【0300】
「2,3−CPMA」…2,3−カーボネートプロピルメタクリレートの略記
【0301】
「ABMBN」…………2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)の略記
【0302】
【表4】

【0303】
参考例10
【0304】
本例は、水性樹脂(A−I)の調製例を示すものである。
【0305】
温度計、還流冷却器、攪拌機および滴下漏斗を備えた反応容器に、フェニルトリメトキシシランの354部およびイソプロパノールの365部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0306】
次いで、同温度で、「AP−3」[大八化学工業所(株)製の、イソプロピルアシッドホスフェートの商品名]の2.9部と、イオン交換水の96部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ攪拌したのちに、核磁気共鳴分析( 1H−NMR)で以て、フェニルトリメトキシシランの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0307】
しかるのち、重合体(a−1−1)の1,480部を添加し、同温度で、4時間のあいだ攪拌して、ポリシロキサンと、重合体(a−1−1)との縮合物を調製した。この縮合物を、1H−NMRで分析した処、此の重合体(a−1−1)に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0308】
次いで、同温度で、トリエチルアミンの55部と、イオン交換水の1,485部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、イソプロパノールなどのアルコール類を除いて、不揮発分が44.9%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(A−I−1)と略記する。
【0309】
しかるのち、此の水性樹脂(A−I−1)を、40℃に、1ヶ月間保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(A−I−1)は、極めて、保存安定性に優れるものであるということが判明した。
【0310】
参考例11〜参考例19
【0311】
これらの諸例も亦、水性樹脂(A−I)の調製例を示すものである。
【0312】
ポリシロキサン(a−2)を合成するための珪素化合物の種類と、その量ならびに溶剤、触媒および水の使用量とを、そして、重合体(a−1)の種類と、その使用量とを、さらには亦、中和反応の際の塩基性化合物の使用量と、水の使用量とを、第2表に示すように変更した以外は、実施例1と同様に縮合反応、中和反応ならびに水性化を行なって、同表に示すような性状値を有する、各種の水性樹脂(A−I)を得た。それらの水性樹脂は、同表に示すように略記をする。
【0313】
【表5】

【0314】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0315】
「PTMS」…………………フェニルトリメトキシシランの略記
「DMDMS」………………ジメチルジメトキシシランの略記
【0316】
「保存安定性」は、上記のように調製された、それぞれの水性樹脂を、しかるのちに、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存をして、保存後の水性樹脂において、保存前には認められなかった、それぞれ、ゲル化や沈澱物の析出などの、いわゆる異状が無いかどうかを確認した、それらの結果を示しているものである。
【0317】
【表6】

【0318】
《第2表の脚注》
「MTES」………………メチルトリエトキシシランの略記
「SH−6018」………東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、シラノール基含有ポリシロキサンの商品名
【0319】
【表7】

【0320】
参考例20〜22
【0321】
これらの諸例は、水性樹脂(A−II)の調製例を示すというものである。
【0322】
ポリシロキサン(a−2)を合成するための珪素化合物の種類と、その使用量ならびに溶剤、触媒および水の使用量とを、そして、重合体(a−3)の種類と、その使用量とを、さらには亦、中和反応の際の塩基性化合物の使用量と、水の使用量とを、第2表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、縮合反応、中和反応ならびに水性化を行なって、同表に示すような性状値を有する、各種の水性樹脂(A−II)を得た。それらの水性樹脂は、同表に示すように略記をする。
【0323】
【表8】

【0324】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0325】
「PTMS」…………………フェニルトリメトキシシランの略記
【0326】
「保存安定性」は、上記のように調製された、それぞれの水性樹脂を、しかるのちに、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存をして、保存後の水性樹脂において、保存前には認められなかった、それぞれ、ゲル化や沈澱物の析出などの、いわゆる異状が無いかどうかを確認した、それらの結果を示しているものである。
【0327】
実施例1〜9
まず、水性樹脂(A−I)または(A−II)の一部と、顔料と、エチレングリコールモノブチルエーテルとの混合物を、サンドミルを使用して分散せしめ、顔料重量濃度(PWC)が60%なる、各種のミルベースを調製せしめ、次いで、それぞれのミルベースに、(A−I)または(A−II)の残りの全量を添加して、混合せしめるということによって、各種の白色ベースを調製した。
【0328】
そして、それぞれの白色ベースに対して、水と、必要に応じて、化合物(B)とを配合せしめるということによって、PWCが35%なる、各種の白色塗料を調製した。
【0329】
上記のように調製される、それぞれの白色塗料に使用した、水性樹脂(A−I)または(A−II)、顔料、エチレングリコールモノブチルエーテルおよび化合物(B)の使用比率は、第3表に示す通りである。
【0330】
かくして得られた、それぞれの白色塗料を、予め、ポリエステル/メラミン系の塗料が塗装され、焼き付けされた塗装鋼板であって、しかも、水研ぎされた此の鋼板上に、乾燥膜厚が約40マイクロ・メーター(μm)となるように、アプリケーターで塗布し、同表に示すような硬化条件で以て、各種の硬化塗膜を得た。
【0331】
此処において得られた、本発明に係る常温硬化型水性樹脂組成物を用いた、それぞれの塗膜は、いずれもが、とりわけ、外観に優れるというものであることが明らかとなった。それぞれの塗膜についての諸性能の評価判定を行なった。それらの結果は、まとめて、同表に示す。
【0332】
【表9】

【0333】
《第3表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0334】
「GPTMS」……………3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの略記
「エチルシリケート40」は、コルコート(株)製の、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物の商品名である。
「CR−97」は、「タイペーク CR−97」の略記であって、石原産業(株)製の、ルチル型酸化チタンの商品名である。
「EGMBE」……………エチレングリコールモノブチルエーテルの略記
【0335】
【表10】

「耐候性」は、サンシャイン・ウエザオメーターによる、2,000時間に及ぶ曝露を行なったのちの、塗膜の60度鏡面反射率(%)なる光沢値を、未曝露時における、塗膜の同上の光沢値で以て除して、それを、100倍した値(光沢保持率:%)を表示したものである。
その値が大きいほど、耐候性が良好であるということを示している。
「耐汚染性」は、屋外において、2ヵ月間に及ぶ曝露を行なったのちの塗膜と、未曝露時の塗膜との色差△Eを表示したものである。その値が、0に近いほど、耐汚染性が良好であるということを示している。
「耐酸性」は、「耐酸性雨性」の代用試験として行なうものであり、それぞれの硬化塗膜の表面上に、10%硫酸水溶液の0.1ミリ・リットルを載せた試験板を、60℃の熱風乾燥器中に、30分間のあいだ保持したのち、塗膜表面を水洗乾燥してから、その表面の状態を、目視により評価判定した。その際の評価判定の基準は、次の通りである。
◎…エッチングなし
○…若干ながら、エッチングあり
△…光沢が低下している
×…エッチングが著しい
「耐アルカリ性」は、それぞれの試験板を、5%水酸化ナトリウム水溶液中に、室温下において、24時間のあいだ浸漬せしめたのちに、塗膜表面を、各別に、水洗し乾燥してから、その表面状態を、目視により評価判定したものである。
【0336】
【表11】

【0337】
《第3の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0338】
【表12】

【0339】
【表13】

【0340】
《第3表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0341】
「EX−612」は、「デナコール EX−612」の略記であって、ナガセ化成工業(株)製の、ソルビトールポリグリシジルエーテルの商品名である。
【0342】
「KP−392」は、信越化学工業(株)製の、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物である。
【0343】
「EGM−202」は、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、珪素原子に結合したメトキシ基と、3−グリシドキシプロピル基とを併有する形の、環状のポリシロキサンの商品名である。
【0344】
【表14】

【0345】
応用例1
【0346】
本例は、各種の水性樹脂についての、とりわけ、保存安定性の評価判定を行なっているものである。
【0347】
参考例10〜19において得られた、各種の水性樹脂(A−I)および(A−II)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存せしめたのち、実施例1〜9と同様の方法で以て、各種の白色ベースを調製し、水を、さらに必要に応じて、化合物(B)をも配合せしめるということによって、PWCが35%なる各種の白色塗料を調製した。
【0348】
かくして得られた、それぞれの白色塗料に使用した、水性樹脂(A−I)または(A−II)、顔料、エチレングリコールモノブチルエーテルおよび化合物(B)の使用比率は、第3表に示す通りである。
【0349】
次いで、実施例1〜9と同様の方法で以て、それぞれの白色塗料を試験塗板上に塗布せしめ、しかるのち、同表に示すような硬化条件で以て硬化せしめるということによって、各種の硬化塗膜を得た。
【0350】
此処において得られた、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したのちの水性樹脂より調製された白色ベースを含有する、本発明に係る常温硬化型水性樹脂組成物を用いた、それぞれの塗膜は、いずれもが、とりわけ、外観に優れるというものであると共に、それぞれの塗膜の諸性能が、同表に示すような結果と、殆ど、差異が認められなかった。
【0351】
此等の各事実から、水性樹脂(A−I)および(A−II)は、とりわけ、保存安定性に優れるというものであると判断されよう。
【0352】
また上記水性樹脂分散体もしくは水性樹脂溶液を必須の成分として含有する、本発明に係る常温硬化型水性樹脂組成物は、とりわけ、光沢保持性、耐雨垂れ汚染性ならびに耐酸性雨性などのような、いわゆる耐久性などに優れる塗膜を形成することの出来る、極めて実用性の高いものである。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物、又は前記一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物と分子中に2個もしくは4個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物とを含む混合物を加水分解縮合し、次いで得られる、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサン(a−2)と、加水分解性シリル基および酸基を併有する重合体(a−1)とを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂(A−1)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−I)と、前記水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−I)中の水性樹脂に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(B)とを、必須の成分として、含有することを特徴とする、常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項2】
一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物、又は前記一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物と分子中に2個もしくは4個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物とを含む混合物を加水分解縮合し、次いで得られる、珪素原子に結合した水酸基および/または加水分解性基を有するポリシロキサン(a−2)と加水分解性シリル基および酸基なる両基と、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基とを併有する重合体(a−3)とを縮合反応させたのち、塩基性化合物で以て部分中和ないし完全に中和せしめて得られる樹脂(A−2)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−II)と、前記水性樹脂分散体ないしは水性樹脂溶液(A−II)中の水性樹脂に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(B)とを、必須の成分として、含有することを特徴とする、常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項3】
前記した、加水分解性シリル基および酸基なる両基以外の官能基が、水酸基、ブロックされた水酸基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基および次のような構造式(S−I)
【化1】

で示される官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基である、請求項1または2に記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項4】
前記した、一分子中に3個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物が、オルガノトリアルコキシシラン、それらの部分加水分解縮合物および其の部分共加水分解縮合物であるアルコキシシランであり、かつ分子中に2個若しくは4個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物が、ジオルガノジアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、それらの部分加水分解縮合物および其の部分共加水分解縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコキシシランである、請求項1〜3のいずれかに記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項5】
前記した加水分解性シリル基がアルコキシシリル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項6】
前記した珪素原子に結合した加水分解性基がアルコキシ基である、請求項1〜5のいずれかに記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項7】
前記したポリシロキサン(a−2)を構成する全珪素原子の少なくとも10モル%が、アリール基が結合した化合物に由来するものである請求項1〜6のいずれかに記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項8】
前記した重合体(a−1)がビニル系重合体である、請求項1に記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項9】
前記した重合体(a−3)がビニル系重合体である、請求項2に記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項10】
前記した重合体(a−1)としての、前記したビニル系重合体がアクリル系重合体である、請求項8記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項11】
前記した重合体(a−3)としての、前記したビニル系重合体がアクリル系重合体である、請求項9に記載の常温硬化型水性樹脂組成物。
【請求項12】
前記した化合物(B)が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物である、請求項1または2に記載の常温硬化型水性樹脂組成物。



【公開番号】特開2006−77254(P2006−77254A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289886(P2005−289886)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【分割の表示】特願平8−197478の分割
【原出願日】平成8年7月26日(1996.7.26)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】