説明

干渉分類器、受信信号が雑音バーストを含むか又は正弦波信号を含む干渉を含むかを判断する方法、及び該方法のコンピュータープログラム製品

【課題】受信信号内に存在する干渉のタイプを求める干渉分類器を提供する。
【解決手段】干渉分類器601は、信号のサンプルを含むデータを受信及び格納するように動作可能なバッファーと、信号サンプルのレベルに依拠してスケールファクターを計算するように動作可能なスケールファクター計算機603と、スケールファクターを用いて信号サンプルを正規化することによって、正規化信号サンプルを計算するように動作可能な正規化器604と、正規化信号サンプルに対し非線形変換を実行して変換された信号サンプルを計算するように動作可能な非線形変換器605と、変換された信号サンプルの平均を計算するように動作可能な平均化回路606と、変換された信号サンプルの計算された平均を、所定の閾値レベルと比較して、受信信号内に存在する干渉のタイプを求めるように動作可能な比較器607とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑音バーストから生じる過渡干渉と、周波数掃引波形を含む正弦波信号によって生じる過渡干渉とを識別するための方法及び装置に関する。
【0002】
[優先権の主張]
本出願は、2010年5月27日に出願された欧州特許出願第10164050.6号の優先権を主張するものであり、該特許文献は相互参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
様々なアクティブ検知システム及びパッシブ検知システムに対する、干渉の有害な影響の多くの既知の事例が存在する。パッシブシステムは、プロービング信号を一切送信しないので、特に脆弱であり、このため単に送信電力を増大させるだけでは干渉効果を軽減することはできない。
【0004】
たとえば、1.2GHz〜1.4GHz周波数帯の電波天文学において、分光法及びパルサー観測は、地上ベースの航空レーダーの送信によって損なわれる。電波望遠鏡は可能な限り高い感度レベルで動作するので、アンテナサイドローブを通じて100kmよりも離れたレーダーパルスを検出する可能性がある。この距離は、望遠鏡が航空機等の物体により反射されたパルスを捕捉するときに大幅に増大するおそれがある。
【0005】
別の例は、地球の表面及び大気によって生成された自然熱放射を利用して地球の特性を検査するマイクロ波放射測定である。不都合なことに、パッシブ遠隔検知に利用されるマイクロ波周波数帯は、通信及び監視目的でも用いられ、そのような用途は高レベルのマイクロ波信号の生成及び送信を伴う。結果としての干渉は、マイクロ波輝度温度の画像を損なう「ホットスポット」の出現として顕在化する。
【0006】
パッシブエネルギーセンサーは、10ミリ秒〜200ミリ秒の範囲の時間間隔にわたって、全ての自然な(所望の)放射及び人工的な(所望でない)放射の電力を統合することによってマイクロ波エネルギーのレベルを求める。この場合、関心情報は自然源から発生するエネルギーのレベルのみであるが、センサーによって捕捉される任意の人工的な干渉も結果に寄与する。したがって、パッシブエネルギーセンサーは、人工的な干渉と、自然現象から発生した干渉とを識別することができない。
【0007】
国際電気通信連合の勧告(ITU−R RS.1029−2)によれば、「一般に、干渉によって汚染されたデータを検出及び排除することが可能でなく、かつ検出されていない汚染データが数値的気象予測(numerical weather prediction)(NWP)モデルに伝播することによって気象予報の信頼性/品質に破壊的影響が及ぼされる場合があるので、吸収帯における測定は、干渉に対し極度に脆弱であることが研究により確証されている」。
【0008】
人工的な干渉が過渡的な性質のものである場合、すなわち、人工的な干渉が総観測時間の比較的小さな部分の間に存在する場合、干渉を含む間隔を信頼性のある方法で検出することができると仮定して、そのような間隔を切除することが可能である。複数のいわゆるパルスブランキング技法が、文献に記載されてきた。たとえば、非特許文献1を参照されたい。
【0009】
1つの有用なパルスブランキング方式が非特許文献2において提示されている。提案される干渉排除方法は、破損したサンプルをゼロで置き換えて、全ての他の元のサンプルを保持することに基づく。結果として、元の「長さ」のデータフレームであるが複数のオールゼロブロックも含むデータフレームに対して高速フーリエ変換(FFT)が実行される。
【0010】
パルスブランキングの特定の方式とは無関係に、その有効性は人工的な干渉の信頼性のある検出に依拠する。高レベルの過渡現象(trasients)は自然現象からも発生する場合があるので、信号レベル自体を干渉の検出に利用することはできないことを指摘しておくべきである。したがって、最適なパルスブランキング方式は、或る形式のレベル検出器、その後段に、人工的な干渉と自然発生の信号とを識別することが可能な分類器を組み込むべきである。
【0011】
一般に、多くの人工的な送信は、位相又は周波数を変調されたパルス正弦波キャリアの形態を有する。非同期サンプリングから取得されたそのような信号の離散時間サンプルは、ランダムな位相を有するサンプリングされた正弦波の統計的特性と同じ統計的特性を有する。一方で、一般に、自然現象から生じる信号は、ランダムガウス過程によって表すことができる。
【0012】
したがって、観測される信号が、ガウスランダム過程を表すのか又はランダムに変動する位相を有する雑音のある正弦波を表すのかを判断する干渉分類器が必要とされている。
【0013】
そのような干渉分類器は、コグニティブ無線ネットワークにおいても用途を有する。そのようなネットワークを改善するために必要なものは、用いられていないスペクトルを検出して該スペクトルを他のユーザーとの一切の有害な干渉なしに共有する高品質のスペクトル検知デバイスである。単純なエネルギー検出器では信号の存在の信頼性のある検出を提供することができないので、より洗練された方法が必要とされる。
【0014】
上記の用途及び他の用途において、処理される信号は、雑音と結合され、また過渡的な性質の人工的な干渉とも結合された主周波数波形を含む。過渡干渉の存在によって、周波数領域における背景雑音のレベルが大幅に増大する。その結果、従来のシステムにおいて、小さな周波数成分の信頼性のある検出が実際的に不可能になる。したがって、実用性のあるいかなる周波数分析方法も、干渉の効率的な排除又は抑制の何らかの手段を組み込むべきである。
【0015】
たとえば、自動車周波数変調連続波(FMCW)レーダーにおいて、いかなるタイプの過渡干渉の効果も、信号ブランキングを利用することによって低減することができる。しかしながら、雑音バーストは信号ブランキングを用いることによってしか抑制することができないのに対し、チャープ干渉効果は、送信波形の特性を適切に変更することによってさらに軽減することができる。したがって、これらの2つの種類の過渡干渉を識別することは実際的に重要である。
【0016】
既知のタイプの干渉分類器は、検査中のサンプルのセットから尖度値を求めることに基づく。尖度は、4次中心積率と2次中心積率の二乗との比として規定される。したがって、K個のゼロ平均信号サンプルx1,x2,...,xk,...,xKの場合、
【0017】
【数1】

【0018】
から経験的な尖度ΚXを求めることができる。
【0019】
ランダムガウス過程によってモデル化された雑音の場合、尖度は雑音レベルと関係なく3に等しいことが知られている。しかしながら、任意の振幅のランダムにサンプリングされた正弦波の場合、尖度は1.5に等しい。したがって、検査中のサンプルのセットから求められた経験的尖度の値を所定の閾値と比較して、該セットが雑音を表す可能性がより高いか、又はそうではなく該セットがランダムにサンプリングされた正弦波である可能性がより高いかを判定することができる。
【0020】
尖度ベースの干渉分類器の性能は多くの刊行物において分析されている。たとえば、非特許文献3を参照されたい。
【0021】
様々な最先端技術による方法の最近の検討が非特許文献4に提示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】N. Niamsuvan他「Examination of a simple pulse-blanking technique for radar interference mitigation」(Radio Sci., vol. 40, RS5S03, 2005)
【非特許文献2】Q. Zhang他「Combating Pulsed Radar Interference in Radio Astronomy」(Astronom. J., pp. 1588-1594, Sep. 2003)
【非特許文献3】R. D. De Roo 他「Sensitivity of the Kurtosis Statistic as a Detector of Pulsed Sinusoidal RFI」(IEEE Trans. Geosci, Remote Sens., pp. 1938-1946, Jul. 2007)
【非特許文献4】S. Misra他「Microwave Radiometer Radio-Frequency Interference Detection Algorithms: A Comparative Study」(IEEE Trans. Geosci. Remote Sens., pp. 3742-3754, Nov. 2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
様々なアドホック干渉検出及び分類手順が多くの既知のシステムにおいて用いられているが、統計的に最適な分類器は考案されていない。
【0024】
したがって、人工的な干渉と自然発生による雑音干渉とを識別する改善された方法及び装置が所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、受信信号が、雑音バーストを含むか又は正弦波信号を含む干渉を含むかを判断するための干渉分類器であって、
信号のサンプルを含むデータを受信及び格納するように動作可能なバッファーと、
前記受信信号サンプルの前記レベルに依拠して、前記信号サンプルのためのスケールファクターを計算するように動作可能なスケールファクター計算機と、
前記スケールファクターを用いて前記受信信号サンプルを正規化することによって、正規化信号サンプルyを計算するように動作可能な正規化器と、
前記正規化信号サンプルyに対し非線形変換T(y)を実行して、変換された信号サンプルを計算するように動作可能な非線形変換器と、
前記変換された信号サンプルの平均レベルを計算するように動作可能な平均化回路と、
前記変換された信号サンプルの前記計算された平均レベルを所定の閾値レベルと比較して、前記信号が、正弦波信号を含む干渉を含むか否かを判断するように動作可能な比較器と、
を備え、
前記非線形変換器は、第1の関数T1(y)及び第2の関数T2(y)の組み合わせを含む非線形変換T(y)を実行するように動作可能であり、前記第1の関数は遷移値ytを超えない値を有する正規化信号サンプルに適用される変換を規定し、前記第2の関数は遷移値yt以上の値を有する正規化信号サンプルに適用される変換を規定し、
T1(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する非減少関数であり、
T2(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する減少関数である、
干渉分類器が提供される。
【0026】
前記非線形変換T(y)は、条件付き確率p(y|N1)及びp(y|N2)の比を表し、ここで、N1はバースト雑音であり、N2は正弦波信号を含む干渉である。
【0027】
前記第1の関数は正規化信号サンプル値の増加に対する増加関数、又は水平線を規定する関数とすることができる。増加関数の場合、第1の増加関数の平均勾配の大きさは第2の減少関数の平均勾配の大きさよりも小さい。
【0028】
好ましくは、前記正規化器は、各信号サンプルの大きさを求めるように動作可能であると共に、該求めた信号サンプルの大きさを前記スケールファクターで除算することによって、前記正規化信号サンプルを計算するように動作可能である。
【0029】
好ましくは、前記非線形変換器は、ローレンツ関数を含む第1の関数と、放物線を含む第2の関数との組み合わせによって規定される非線形変換を実行するように動作可能である。
【0030】
好ましくは、前記スケールファクター計算機及び前記非線形変換器は、複数の異なるタイプのスケールファクターを計算すると共に、複数の異なる非線形変換をそれぞれ適用するように動作可能であり、
前記スケールファクター計算機及び前記非線形変換器は、被試験受信信号に適用される正規化のタイプを規定する入力制御信号に依拠して、異なるタイプのスケールファクター及び異なる非線形変換間で選択するように構成される。
そのような再構成可能干渉分類器は、有利には動作環境に対し最も適切なタイプの正規化を実行することができる。
【0031】
本発明は、受信信号が、雑音バーストを含むか又は正弦波信号を含む干渉を含むかを判断する方法であって、
前記受信信号のサンプルのレベルに依拠してスケールファクターを計算すること、
前記スケールファクターを用いて前記受信信号サンプルを正規化することによって、正規化信号サンプルyを計算すること、
前記正規化信号サンプルyに対し非線形変換T(y)を実行することであって、変換された信号サンプルを計算する、実行すること、
前記変換された信号サンプルの平均レベルを計算すること、及び
前記変換された信号サンプルの前記計算された平均レベルを所定の閾値レベルと比較することであって、前記信号が正弦波信号を含む干渉を含むか否かを判断する、比較すること、
を含み、
前記線形変換T(y)は、第1の関数T1(y)及び第2の関数T2(y)の組み合わせを含み、前記第1の関数は、遷移値ytを超えない値を有する正規化信号サンプルに適用される変換を規定し、前記第2の関数は、遷移値yt以上の値を有する正規化信号サンプルに適用される変換を規定し、
T1(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する非減少関数であり、
T2(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する減少関数である、
方法をさらに提供する。
【0032】
本発明は、プログラム可能な処理装置をプログラムして、上述した方法を実行するように動作可能にするコンピュータープログラム命令を担持する、ストレージ媒体、ストレージデバイス、又は信号等のコンピュータープログラム製品も提供する。
【0033】
本発明は、無線周波数干渉信号の分類に特に適用可能であるが、他の周波数にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】雑音によって損なわれた正弦波の振幅の確率密度関数p(y|C)の形状及び雑音の大きさの確率密度関数p(y|B)の形状を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による干渉分類器において利用される非線形性D(y)の形状を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による干渉分類器において利用される非線形性D(y)及びまたその近似を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による干渉分類器において利用される非線形性V(y)を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による干渉分類器において利用される非線形性D(y)を非線形性V(y)と共に示す図である。
【図6】本発明の実際的な実施形態に従って構成される干渉分類器の機能ブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による信号内に存在する干渉のタイプを求める方法を示すフローチャートである。
【図8】従来のFMCW自動車レーダーの単純化された機能ブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態による干渉分類器を組み込むFMCW自動車レーダーの機能ブロック図である。
【図10】a)は、背景雑音によって破損された3つの正弦波を含むデータフレームを示す図であり、b)は、a)のデータフレームの周波数領域表現を示す図である。
【図11】a)は、背景雑音、及びさらに3つの高レベル周波数チャープによって破損された3つの正弦波を含むデータフレームを示す図であり、b)は、a)のデータフレームの周波数領域表現を示す図である。
【図12】a)は、背景雑音、及びさらに3つの高レベル周波数チャープによって破損された3つの正弦波を含む(ブランキングによって)変更されたデータフレームを示す図であり、b)は、a)のデータフレームの周波数領域表現を示す図である。
【図13】a)は、背景雑音、及びさらに2つの高レベル周波数チャープによって破損された3つの正弦波を含むデータフレームを示す図であり、b)は、a)のデータフレームの周波数領域表現を示す図である。
【図14】a)は、背景雑音、及びさらに2つの高レベル周波数チャープによって破損された3つの正弦波を含む(ブランキングによって)変更されたデータフレームを示す図であり、b)は、a)のデータフレームの周波数領域表現を示す図である。
【図15】コンピュータープログラム命令を用いて実装される干渉分類器の位置実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のいくつかの実際的な実施形態を説明する前に、実施形態の背後にある基礎を成す理論が与えられる。
【0036】
標準的な背景雑音(たとえば熱雑音)及びパルス状高レベル干渉(すなわち過渡干渉)を含む受信信号を考察する。そのような過渡干渉は、広帯域雑音の短いバースト及び周波数変調されたキャリア(チャープ)を有するパルスのいずれかから発生した場合がある。
【0037】
離散時間信号処理を用いるシステムにおいて、雑音バーストが、ガウス分布を有する一連のサンプルを生ずるのに対し、周波数チャープは、一定振幅の正弦波のランダムサンプリングにより取得される特徴と同じ特徴を有するサンプルを生成する。この観測を多くの異なる形で利用して、雑音バーストとチャープとを識別する統計的手順を開発することができる。
【0038】
しかしながら、観測される過渡干渉の持続時間も電力も、そのような干渉のタイプに関する有用な情報を一切提供することができない。
【0039】
統計的観点から、雑音バーストBと周波数チャープCとを識別する問題は、2つの代替的仮説H0及びH1のうちの一方を選択することに等しい。ここで、
H0=雑音バーストBが存在する
H1=チャープCが存在する
である。
【0040】
したがって、K個の信号サンプルx1,x2,...,xk,...,xKは2つの条件付き確率密度関数、すなわち
【0041】
【数2】

【0042】
のうちの一方によって特徴付けられる。
【0043】
仮説H1は、尤度比L(x1,x2,...,xK)が或る所定の判定閾値レベルを超えたときに選択される。ここで、尤度比は以下のように規定される。
【0044】
【数3】

【0045】
実際には、対数尤度比lnLに基づいて等価な手順を利用することがより好都合である。
【0046】
【数4】

【0047】
であり、ここで、TXは所定の判定閾値である。
【0048】
本発明者は、分類される干渉レベルはアプリオリに知ることができないことに着目した。
【0049】
しかしながら、本発明者らは、p(xk|C)及びp(xk|B)の比を近似する非線形変換を案出し、該変換は周波数チャープと雑音バーストとを識別する大幅に改善された実際的な方法を提供する。
【0050】
平均絶対偏差を利用する正規化−ロバストな分類器
本発明の1つの実施形態によれば、利用可能なデータから適切な範囲のデータブロックが選択され、ブロック内のK個の信号サンプルx1,x2,...,xk,...,xKを用いて、以下のように平均絶対偏差を求める。
【0051】
【数5】

【0052】
データブロックの範囲は、最も短い予期される過渡干渉の大部分を捕捉するように選択される。平均絶対偏差MAが所定の判定閾値TNを超えるとき、干渉の存在が宣言される。
【0053】
好ましくは、判定閾値TNは背景雑音のrms(二乗平均平方根(root-mean-squared))値σNよりも約3倍又は約4倍大きい値にセットされる。
【0054】
雑音バーストBの場合、平均絶対偏差は、
【0055】
【数6】

【0056】
に向かう。ここで、
【0057】
【数7】

【0058】
であり、σBはそれぞれの分散σN2及びσO2を有する背景雑音及びバースト雑音の和のrms値である。
【0059】
振幅Aを有するチャープCが観測され、かつ背景雑音のレベルが低い(たとえばσN<A/5)とき、平均絶対偏差MAはほぼ
【0060】
【数8】

【0061】
に等しい。
【0062】
実際には、双方のパラメーターσB及びAが未知であることに留意する。
【0063】
サンプルの一次シーケンス{xk}は、正規化変換を用いることによって対応する二次シーケンス{yk}に変換される。
【0064】
【数9】

【0065】
上記の変換の目的は、未知のパラメーターσB及びAと無関係に観測値{yk}を作成することである。
【0066】
雑音バーストBの場合、サンプル{yk}は、形態
【0067】
【数10】

【0068】
の確率密度関数を有するガウス非負確率変数の実現値を表す。
【0069】
チャープCが観測される場合、確率密度関数p(y|C)は、背景雑音が無視できるとき、すなわちA≫σNのときにのみ閉形式で表すことができる。そのような場合、
【0070】
【数11】

【0071】
である。
【0072】
他方で、背景雑音が存在する場合、付加雑音の拡散効果を考慮に入れると、p(y|C)は、基礎を成す通常の確率密度関数p0(y)を表すものとみなすことができる。ここで、
【0073】
【数12】

【0074】
である。
【0075】
表現p(y|C)の形状と基礎を成す確率密度関数P0(y)の形状との間の差異は、付加雑音のレベルが高くなると増加する。
【0076】
図1は、雑音レベルの選択された値(この場合、比A/σN)についてP0(y)を表す確率密度関数p(y|C)の形状を示している。各プロットは、108個の複製を利用してモンテカルロコンピューター法(Monte Carlo computer study)から取得されているが、雑音レベルに応じてP0(y)の他の表現を用いて確率密度関数を生成することができることが理解されよう。見て取ることができるように、引数y(argument y)がゼロに近づくと、確率関数は、式12において予測されるように、値が限界4/π2≒0.4に近づくものと想定する。
【0077】
比較の目的で、図1は雑音バーストBの確率密度関数p(y|B)も示している。
【0078】
対数尤度比は以下のように規定される。
【0079】
【数13】

【0080】
周波数チャープCの存在は、式13において規定されるような対数尤度比が所定の判定閾値を超えるときに宣言される。そうでない場合、処理されているサンプルは雑音バーストBを表すものとして分類される。
【0081】
より詳細には、本発明の一実施形態に従って後述するように、干渉するチャープCの存在は、式14に示すように、K個の非線形に変換されたサンプルy1,y2,...,yk,...,yKの平均GKが適切な判定閾値TCGを超えたときに宣言される。
【0082】
【数14】

【0083】
ここで、非線形変換D(y)は、本発明者によって案出された式13に登場した関数[ln p(yk|C)−ln p(yk|B)]の適切な表現である。
【0084】
以下において、平均絶対偏差に基づく正規化を利用する干渉分類器を、本明細書においてロバストな干渉分類器と呼ぶ。
【0085】
非線形性D(y)は、背景雑音が無視できるとき、すなわちΨ=A/σN→∞のときにのみ、閉形式で表すことができる。そのような場合、
【0086】
【数15】

【0087】
である。
【0088】
図2は、比A/σNの選択された値について非線形性D(y)の形状を示している。各プロットは、108個の複製を用いてモンテカルロコンピューター法から取得されている。
【0089】
引数yがゼロに近づくと、非線形性D(y)は、上記の式から予測されるように、値が限界ln(2/π)≒−0.45に近づくものと想定する。比較の目的で、図2は、無視できる背景雑音の場合の非線形性D(y)、すなわちA/σN→∞も示している。
【0090】
図2から見てとることができるように、非線形性D(y)の形状は、異なる値のA/σNについて概ね同じであり、D(y)の最大値はA/σNの値が増加するのと共に増加する。全ての場合において、最大値は距離1.4〜1.7のyの値について生じる。
【0091】
本発明の1つの実施形態によれば、非線形性D(y)は、2つの標準関数、すなわちローレンツ関数及び放物線の重ね合わせによって近似される。
【0092】
比A/σNに関わらず、非線形性D(y)は、D(y)のピークにおいて合体する2つのブランチで構成されるものとみなすことができる。D(y)の左のブランチは、以下の形式の下方シフトされたローレンツ関数の一部によって近似することができる。
【0093】
【数16】

【0094】
右のブランチは、放物線の一部によって表すことができる。
【0095】
【数17】

【0096】
たとえば、A/σN=10のとき、以下のパラメーター値を用いて良好な近似が達成されている。
【0097】
【数18】

【0098】
図3は、A/σN=10の場合の非線形性D(y)、並びにまた、ローレンツ関数及び放物線の組み合わせを用いて本発明の一実施形態に従って構築された、その非線形性D(y)の近似を示している。
【0099】
本発明のさらなる実施形態によれば、非線形性D(y)を多くの異なる形で近似することができる。しかしながら、各近似は何らかの意味で、図2に示す非線形性の一般形状を表現及び模倣しようとする。たとえば、左ブランチは直線で近似することができ、右ブランチは異なる直線で近似することができる。
【0100】
したがって、それぞれの場合に、近次関数は、雑音がないときはπ/2の引数値、又は雑音があるときは約1.4〜1.7の引数値を含む遷移値においてピーク又は水平域を呈する(引数値は、雑音の拡散効果に起因してπ/2から逸れ、偏差量は雑音量に依拠する)。遷移値を超えない引数値の場合、近似間数は非減少関数となる。さらに、遷移値以上の引数値の場合、近似関数は減少関数となる。一般に、この下落部分の峻度はピーク(又は水平域)に選考する非減少部分の峻度よりもはるかに大きくなる。
【0101】
標準偏差を利用する正規化−最適分類器
正規化手順における平均絶対偏差の適用は、実際的でかつまた統計的にロバストな手法とみなすことができる。しかしながら、理論的観点から、この目的のために標準偏差を用いることが好ましい場合がある。
【0102】
したがって、本発明のさらなる実施形態によれば、観測されるサンプルの一次シーケンス{xk}は、正規化変換を適用することによって、対応する二次シーケンス{yk}に変換される。
【0103】
【数19】

【0104】
ここで、SD
【0105】
【数20】

【0106】
から求められる標準偏差である。
【0107】
雑音バーストBの場合、標準偏差SDは単純にσB、すなわち背景雑音及びバースト雑音の和のrms値に等しい(式8を参照されたい)。振幅Aを有するチャープCが観測され、かつ背景雑音のレベルが低い(たとえばσN<A/5)とき、rmsはほぼ
【0108】
【数21】

【0109】
に等しい。
【0110】
雑音バーストBの場合、サンプル{yk}は確率密度関数
【0111】
【数22】

【0112】
を有するガウス非負確率変数の実現を表す。
【0113】
チャープCが観測されるとき、確率密度関数p(y|C)は、背景雑音が無視できるとき、すなわちA/σN≫1のときにのみ閉形式で表すことができる。そのような場合、
【0114】
【数23】

【0115】
である。
【0116】
他方で、背景雑音が存在する場合、付加雑音の拡散効果を考慮に入れると、p(y|C)は、基礎を成す通常の確率密度関数p0(y)を表すものとみなすことができる。ここで、
【0117】
【数24】

【0118】
である。
【0119】
表現p(y|C)の形状と基礎を成す確率密度関数P0(y)の形状との間の差異は、付加雑音のレベルが高くなると増加する。
【0120】
上述したロバストな分類器の場合のように、モンテカルロコンピューターシミュレーションを用いて、選択された雑音レベル値について表現p(y|C)を生成することができる。代替的に、他の形態の表現を用いることもできる。
【0121】
したがって、干渉するチャープCの存在は、式23に示すように、K個の非線形に変換されたサンプルy1,y2,...,yk,...,yKの平均HKが所定の判定閾値TCHを超えたときに宣言される。
【0122】
【数25】

【0123】
ここで、非線形変換V(y)は、関数[ln p(yk|C)−ln p(yk|B)]の適切な表現である。
【0124】
この場合、非線形性V(y)は、上述した非線形性D(y)が表す形状と異なる形状を有する。
【0125】
以下において、標準偏差に基づく正規化を利用する干渉分類器は、ガウス確率変数に関してその標準偏差がスケールを最良に推定するものであることを反映するために、本明細書において最適干渉分類器と呼ばれる。
【0126】
非線形性V(y)は、背景雑音が無視できるとき、すなわちΨ=A/σN→∞のときにのみ、閉形式で表すことができる。そのような場合、
【0127】
【数26】

【0128】
である。
【0129】
図4は、比A/σNの選択された値について非線形性V(y)の形状を示している。各プロットは、108個の複製を用いてモンテカルロコンピューター法から取得されている。
【0130】
引数yがゼロに近づくと、非線形性V(y)は、式24から予測されるように、値が限界−(lnπ)/2≒−0.57に近づくものと想定する。
【0131】
比較の目的で、図4は無視できる背景雑音、すなわちA/σN→∞の場合の非線形性V(y)も示している。
【0132】
図4を図2と比較することにより見てとることができるように、2つの非線形性D(y)及びV(y)の形状は実質的に同じである。しかしながら、非線形性V(y)の場合、最大値は、雑音がないときは
【0133】
【数27】

【0134】
のyの値で現れ、又は雑音があるときは約1.3〜1.6の範囲の値で現れる(引数値は雑音の拡散効果に起因して
【0135】
【数28】

【0136】
から逸れ、偏差量は雑音量に依拠する)のに対し、D(y)の最大値は、雑音がないときはπ/2の値で現れ、又は雑音があるときは1.4〜1.7の範囲で現れる。
【0137】
図5は、A/σN=10の場合の2つの非線形性D(y)及びV(y)を示している。双方の非線形性が同様の形状を有するが、非線形性V(y)は、関心引数の範囲のより良好な識別を提供するようであるので、D(y)より優れていると思われる。
【0138】
標準偏差に基づく正規化を利用する実施形態によれば、非線形関数V(y)の近似が適用される。
【0139】
より詳細には、1つの実施形態では、V(y)の左のブランチは、下方シフトされたローレンツ関数の一部によって近似され、
【0140】
【数29】

【0141】
右のブランチは、放物線の一部によって近似される。
【0142】
【数30】

【0143】
たとえば、A/σN=10のとき、以下のパラメーター値を用いて良好な近似を達成することが可能である。
【0144】
【数31】

【0145】
D(y)と同様に、ローレンツ関数及び放物線とは異なる様々な関数を用いてV(y)を近似することができる。これらについては上述したので、本明細書において再び説明しない。
【0146】
他の正規化方法
平均絶対偏差及び標準偏差を用いる正規化を上記で説明したが、本発明のさらなる実施形態によれば、幾何平均、中央値、又はトリム平均等の平均信号レベルの他の基準を用いて信号サンプルを正規化することができる。
【0147】
K個の信号サンプル|x1|,|x2|,...,|xk|,...,|xK|の幾何平均は、
【0148】
【数32】

【0149】
によって規定される。
【0150】
正規化の目的のために、中央値又はトリム平均は、|x|(1)<|x|(2)<...<|x|(k)<...<|x|(K)となるように昇順で並べられたK個の信号サンプルから求めることができる。
【0151】
このとき、サンプル中央値は、Kが奇数のとき中央サンプルに等しく、そうではなくKが偶数の場合、サンプル中央値は2つの中央サンプルの算術平均に等しい。
【0152】
トリム平均MLは、L個の最も大きなサンプルを除外し、残りのサンプルの算術平均を求めることによって取得され、したがって、
【0153】
【数33】

【0154】
である。
【0155】
正規化の目的で利用することができる平均信号レベルの他の基準がまだ存在する。
【0156】
正規化を実行するのに用いられる平均信号レベルの基準が何であれ、結果としての非線形性は上述した非線形性D(y)及びV(y)と同じ形式及び特性を有する。このため、各非線形性は1.3〜1.7のyの値を含む遷移値において最大値を有し、yの値が遷移値を超えない場合に非減少関数によって近似でき、yの値が遷移値以上の場合に減少関数によって近似することができる。全ての場合に、減少関数の平均勾配の大きさは非減少関数の平均勾配の大きさよりも大きくなる。
【0157】
実際的な実施形態
本発明の一実施形態による、上述した有利な干渉分類を実装するための干渉分類器が後述される。
【0158】
図6は、本発明の一実施形態に従って構成される、干渉分類器ICR601の機能ブロック図である。分類器ICR601は以下のブロックを含む。
−データバッファーBFR602、
−正規化器NRM604、
−スケールファクター計算機SCL603、
−非線形変換器NLT605、
−平均化回路AVG606、
−比較器CMR607。
【0159】
動作干渉分類器ICR601を下記で説明する。
【0160】
検査中のデータブロックを形成する複数のK個の信号サンプルx1,x2,...,xk,...,xKが入力BXを介してデータバッファーBFR602に転送される。
【0161】
出力XXにおいて入手可能なサンプルが、スケールファクター計算機SCL603によって用いられ、平均絶対偏差MA又は標準偏差SD等のスケールファクターSCが求められる。選択された正規化のタイプは、スケールファクター計算機SCL603の入力STを介して設定される。特に、分類器ICR601は、上述したようにたとえばロバストな分類器又は最適な分類器として動作するように、構成することができる。
【0162】
ブロックSCL603によって求められたスケーリングファクターSCは、正規化器NRM604に供給され、二次シーケンスのK個の正規化されたサンプルが計算される。
【0163】
【数34】

【0164】
ここで、正規化されたサンプルy1,y2,...,yk,...,yKはそれぞれ、データバッファーBFR602から入力XKを介して受信された一次信号サンプルx1,x2,...,xk,...,xKに対応する。
【0165】
非線形変換器NLT605は、入力YKにおいて現れる各正規化されたサンプルykを利用して、上記で検討したようなD(yk)及びV(yk)等の対応する値を求める。
【0166】
非線形変換器NLT604は、2つのパラメーター、すなわち(選択された正規化方法に対応する)非線形性のタイプST及び背景雑音のチャープ振幅A及びrms値σNの比の公称値ANを受信する。
【0167】
ANの公称値として、デフォルト値A/σN=10を自動的に選択することができる。代替的に、ANの適切な値を以下のように求めることができる。
【0168】
干渉分類器を組み込むシステムの信頼性のある動作のために、処理される信号のレベルが少なくとも背景雑音のrms値σNよりも少なくともg1倍大きいと仮定する。そのような最小レベル(g1・σN)を有する信号は、正弦干渉の最も小さな振幅Aがこの最小レベルよりg2倍大きいとき、破損する形で変形し、したがってA=g2・(g1・σN)及び
【0169】
【数35】

【0170】
であることも想定する。たとえば、g1=5及びg2=2であるとき、AN=A/σ=10である。
【0171】
さらに、図2及び図4から見てとることができるように、それぞれの非線形性D(y)及びV(y)の形状は、A/σNがたとえば10から20に増加するときに大きく変化しない。また、より大きな値の振幅Aを有する正弦干渉は、常により高い信頼性で検出することができる。したがって、分類器によって用いられるANの公称値は、好ましくは比A/σNのより低い動作値に対応するように選択される。
【0172】
平均化回路AVG606は、入力VDにおいて受信される非線形に変換された正規化サンプルの平均GHを求める。
【0173】
計算された平均GHは、比較器CMR607において判定閾値CTと比較される。平均GHが判定閾値CTを超えると、干渉チャープの存在が宣言される。そうでない場合、処理されるサンプルは雑音の干渉バーストを表すものとして分類される。
【0174】
干渉、雑音バーストB、又は周波数チャープCに関する判定は、比較器CMR607の出力BCにおいて提供される。さらに、出力SCは、分類される干渉レベルを示すスケールファクターを提供する。
【0175】
本実施形態の干渉分類器ICR601によって実行される、信号内に存在する雑音のタイプを求める処理動作の概要が図7に示されている。
【0176】
図7を参照すると、ステップS3において、分類されるべき干渉を含む信号のサンプルがデータバッファーBFR602から読み出される。
【0177】
プロセスは次にステップS5に進み、ステップS5において、上述した技法のうちの1つを用いて、信号サンプルのレベルに依拠して、該サンプルのためのスケールファクターが計算される。
【0178】
プロセスは次にステップS7に進み、ステップS7において、上述した正規化技法のうちの1つを用い、スケールファクターを用いて信号サンプルを正規化して、正規化信号サンプルを計算する。
【0179】
プロセスは次にステップS9に進み、ステップS9において、上述した技法のうちの1つを用いて、正規化信号サンプルに対し非線形変換を実行して、変換された信号サンプルを計算する。
【0180】
プロセスは次にステップS11に進み、ステップS11において、上述した技法のうちの1つを用いて、変換された信号サンプルの平均を計算する。
【0181】
プロセスは次にステップS13に進み、ステップS13において、変換された信号サンプルの計算された平均を所定の閾値レベルと比較して、信号内に存在する干渉のタイプを求める。
【0182】
プロセスは次にステップS15に進み、ステップS15においてプロセスは終了する。
【0183】
広範なモンテカルロシミュレーション法によって、本発明の実施形態に従って構築された干渉分類器が上述した従来技術による尖度ベースの分類器の性能を凌ぐことがわかっている。
【0184】
利点は、データブロックあたりK=16個のサンプルが存在し、かつ誤警報確率(false-alarm probability)がPFA=0.01に固定された以下に提供する例において実証される。
【0185】
分類器毎の判定閾値CT及び検出確率PDが以下に与えられる。
【0186】
【表1】

【0187】
上記の文脈において、検出確率PDは、実際にチャープCが存在するときに「チャープCが存在する」と判定する確率であり、誤警報確率PFAは、実際に雑音バーストBが存在するときに「チャープCが存在する」と判定する確率である。
【0188】
上記で与えられた各値は、106個の複製を利用するモンテカルロコンピューター法から取得された。見てとれるように、干渉分類器の実施形態のロバストなバージョン及び最適なバージョンは、それぞれ尖度ベースの分類器に対して、検出確率PDにおいて5%及び7%の改善を提供する。
【0189】
本発明の実施形態による干渉分類器601は、多くの異なる分野において用途を有する。
【0190】
次に、例として、本発明の一実施形態による干渉分類器を用いる周波数変調連続波(FMCW)自動車レーダーシステムを説明する。
【0191】
図8は、従来のFMCW自動車レーダーシステムの簡略化された機能ブロック図である。システムは、受信アンテナRAN702と、信号調整ユニットSCU703と、ダウンコンバーターDCR704と、アナログ/デジタルコンバーターADC705と、デジタルシグナルプロセッサDSP706と、タイミング/制御ユニットTCU711と、波形発生器WFG710と、アップコンバーターとしても機能する電圧制御発振器VCO709と、電力増幅器/駆動装置PAR708と、送信アンテナTAN707とを備える。
【0192】
波形発生器WFG710は、制御信号CVを供給して、電圧制御発振器VCO709に周波数上方掃引及び下方掃引を生じさせる。結果としての各波形SWは電力増幅器/駆動装置PAR708において増幅され、プロービング波形TWが生じる。アンテナTAN707によって送信される波形TWは一定の振幅を有するが、その周波数は、各上方掃引及び下方掃引時間間隔Ts中に帯域Δfを掃引する。
【0193】
距離Rにおける障害物OBS701からのエコーRWは、時間において(2R/c)だけ遅延された送信波形TWの減衰されたコピーである。cは、光速である。
【0194】
エコーRWは、信号調整ユニットSCU703において適切に処理され、反射信号の表現ARが生成される。信号ARは、ダウンコンバーターDCR704において、電圧制御発振器VCO709によって供給された送信波形TWのコピーSWと結合される。ダウンコンバーターDCR704の出力信号BSは、まずアナログ/デジタルコンバーターADC705においてデジタル形式DSに変換され、次にデジタルシグナルプロセッサDSP706に送信される。
【0195】
デジタルシグナルプロセッサDSP706は、各周波数掃引のパラメーター、すなわち該周波数掃引の開始時刻、掃引持続時間TS、及び掃引周波数帯域Δfを示す信号SSをタイミング/制御ユニットTCU711から受信する。信号SSは、要求される制御信号CVを生成するために、波形発生器WFG710によっても用いられる。
【0196】
デジタルシグナルプロセッサDSP706は、ダウンコンバーターDCR704から受信したビート信号BSを解析することによって、障害物OBS701の距離R及び速度Vを求める。ビート信号BSは、送信波形TWの対応する線形周波数掃引SWに応じて取得される。ビート周波数は、反射波RWの周波数から送信波TWの周波数を減算したものとして規定される。
【0197】
静止した障害物OBS701の場合、ビート周波数の大きさ|fR|は障害物距離Rに直接比例する。
【0198】
【数36】

【0199】
ここで、|SF|=|Δf|/TSは周波数掃引の勾配である。ビート周波数fRは周波数下方掃引(SF<0)の場合に正であり、周波数上方掃引s(SF>0)の場合に負である。正のビート周波数と負のビート周波数との識別は、直交信号ダウンコンバージョンを用いることによって達成することができる。
【0200】
レーダーと障害物OBS701との間の半径方向速度Vを有する相対運動は、ドップラー周波数シフト
【0201】
【数37】

【0202】
を付加することによって「距離によって生成された(range-generated)」ビート周波数fRを変更する。ここで、λは送信波形TWの波長である。実際に、ドップラーシフトfVの値は、掃引された周波数の量による影響を受けない。
【0203】
障害物OBS701が速度Vでレーダーに接近している場合、ドップラーシフトfVの値は正になるのに対し、障害物OBS701がレーダーから遠ざかっている場合、ドップラーシフトfVの値は負となる。その結果、観測されるビート周波数fBは2つの周波数成分fR及びfVを結合したものから生じ、したがって、
【0204】
【数38】

【0205】
である。
【0206】
勾配SF自体は(下方掃引の場合に)負となることもできるし、(上方掃引の場合に)正となることもできることに留意する。
【0207】
単一の動いている障害物OBS701の場合、障害物の距離R及び相対速度Vの双方を一意に求めるために、実質的に異なる勾配SFを有する少なくとも2つの周波数掃引が必要とされる。しかしながら、レーダーの視野(field of view)(FOV)内に2つ以上の障害物が存在する場合、各障害物の距離及び速度を正しく求めるために、別個の勾配を有するより多くの周波数掃引が必要となる。
【0208】
上記の検討から、障害物の距離及び速度に関する情報は、複数のビート信号の周波数成分内に含まれることになり、そのような各ビート信号は、レーダーによって送信された対応する周波数掃引に応じて取得される。したがって、デジタルシグナルプロセッサDSP706によって実行される信頼性のある周波数推定が最も重要である。
【0209】
G. M. Brooker「Mutual Interference of Millimeter-Wave Radar Systems」(IEEE Trans. Electromagn. Compat., pp. 170-1 81, Feb. 2007)において提示される分析は、自動車レーダーにおいて一般に使用される掃引パターン及び関連する信号処理技法が全てマルチユーザー干渉を受けることを示した。
【0210】
この結果、上述した自動車FMCWレーダーシステムがマルチユーザー環境内で動作するとき、当該自動車FMCWレーダーシステムは、信頼性のない障害物検出、並びに距離及び速度の不良な推定を提供する可能性がある。
【0211】
したがって、干渉の効果的な排除又は抑制の手段を組み込むことによって自動車FMCWレーダーシステムを改善することができる。
【0212】
したがって、本発明のさらなる実施形態によれば、上述した実施形態の干渉分類器601を自動車レーダーシステムに用いて、干渉が雑音バーストによって生じているのか、又は周波数チャープによって生じているのかを判断する。これによって、距離及び/又は速度を計算するために処理される信号におけるチャープ干渉を低減するために、システムが、自動車レーダーによって送信された波形の特性を変更することによって、かつ/又はブランキングを適用することによって、チャープ干渉の効果を軽減することが可能になる。
【0213】
図9は、本発明のさらなる実施形態によるFMCW自動車レーダーシステムの簡略化された機能ブロック図である。
【0214】
自動車レーダーシステムは以下のブロックを含む。
−受信アンテナRAN702、
−信号調整ユニットSCU703、
−ダウンコンバーターDCR704、
−アナログ/デジタルコンバーターADC801、
−フーリエシグナルプロセッサFFT805、
−タイミング/制御/算術ユニットTCA806、
−波形発生器WFG710、
−電圧制御発振器VCO709、
−電力増幅器/駆動装置PAR708、
−送信アンテナTAN707、
−モードスイッチPAS807、
−バッファー/スライサーFRM802、
−干渉分類器ICR601、
−ブランキング回路BLR804。
【0215】
FMCW自動車レーダーは、パッシブ及びアクティブの2つのモードで交互に動作するようになっている。
【0216】
パッシブモードの目的は、マルチユーザー干渉によって過剰に破損されることのない周波掃引パターンを動的かつ適応的に選択することである。
【0217】
アクティブモードにおいて、レーダーは、図8に示されるような既知のシステムの通常動作を実行することができる。しかしながら、物体の距離及び/又は速度を求めるのを改善するために、受信信号内のデータにブランキングも適用される。
【0218】
パッシブモード
レーダーシステムは、電圧制御発振器VCO709と電力増幅器/駆動装置PAR808との間の信号経路をモードスイッチPAS807がブロッキングしている限り、パッシブオペレーティングモード、すなわち「リスンのみ」オペレーティングモードにとどまる。
【0219】
パッシブモードにおいて、レーダーアンテナTAN707は、周波数掃引を送信しない。しかしながら、そのような掃引SWは依然としてVCO709によって生成され、ダウンコンバーターDCR704に適用される。
【0220】
モードスイッチPAS807は、タイミング/制御/算術ユニットTCA806によって提供される信号APによって制御される。
【0221】
パッシブオペレーティングモード中、フーリエシグナルプロセッサFFT805及びブランキング回路BLR804の双方がアイドルのままである。
【0222】
TCAユニット806は、適切な信号SSを波形発生器WFG710に適用することによって異なる周波数掃引SWを順次選択し、波形発生器WFG710は、それに応じて、対応する制御信号CVを生成する。結果として、電圧制御発振器VCO709は、一連の別個の周波数掃引SWを生成し、各掃引はその
−開始周波数、
−終了周波数、
−掃引持続時間、
によって特徴付けられる。
【0223】
後述するランク付けの目的で、各異なる周波数掃引SWは、掃引インデックスn∈{1,...,N}によって特定される。
【0224】
レーダーは、該レーダーの受信アンテナRAN702によって捕捉された信号を処理することによって、マルチユーザー「密信号」環境を検知する。受信信号RWは、同じ領域において動作している他の自動車レーダーによって送信された信号及び背景雑音を含む。受信信号RWの表現ARは、電圧制御発振器VCO709によって供給されたN周波数掃引SWと共に、ダウンコンバーターDCR704において一緒に処理される。
【0225】
ダウンコンバーターDCR704の出力信号BSは、アナログ/デジタルコンバーターADC801においてデジタル形式に変換された後、バッファー/スライサーFRM802内に格納される。バッファー/スライサーFRM802内に格納される各データフレームは、ダウンコンバーターDCR704に適用されるN個の異なる周波数掃引SWのうちの1つに一意に対応する。
【0226】
各データフレームは、TCAユニット806によって供給された制御信号FWに応じて、複数のJ個のデータブロックDBに「スライス」される。結果としてのデータブロックDBは次に、TCAユニット806によって提供される信号JJに応じて、干渉分類器ICR601に順次適用される。
【0227】
分類器ICR601は、チャープ干渉を含むデータブロックを特定し、そのような干渉のレベルを示す信号SCをTCAユニット806に送信する。
【0228】
結果として、TCAユニットはデータフレーム内の破損したデータブロックの数、及びまたマルチユーザー干渉の総破損エネルギーを求めることができる。この情報は、マルチユーザー干渉に対するその耐性に従ってTCAユニットがN個の周波数掃引SWをランク付けするのに用いられる。
【0229】
したがって、パッシブオペレーティングモード中、N個全ての利用可能な周波数掃引SWがマルチユーザーチャープ干渉への耐性の観点から評価される。次に、TCAユニット806は、被試験マルチユーザー環境において良好な測距性能を提供する1つ又は複数の掃引パターンを構築するのに最も良好なM個の掃引を選択する。
【0230】
掃引パターンにおいて用いられるM個の掃引が選択されると、掃引パターンは多くの形で構築することができる。たとえば、掃引のランダム順列又は擬似ランダム順列を利用することができる。
【0231】
アクティブモード
パッシブモードの後、適切な制御信号APをTCAユニット806がモードスイッチPAS807に印加することによって、アクティブモードが開始される。
【0232】
アクティブモードにおいて、レーダーは、そのアンテナTAN707を介して、パッシブモードにおいて求められた1つ又は複数の掃引パターンを送信する。
【0233】
アクティブモードにおいて、干渉分類器ICR803はアイドルのままであり、バッファー/スライサーFRM802に格納されるデータブロックDBに対して「トランスペアレント」である。
【0234】
アクティブモードにおいて用いられる1つ又は複数の掃引パターンは、パッシブモードにおいて被試験環境で良好な性能を有するように構築されているので、自動車FMCWレーダーはマルチユーザー干渉に対して改善した耐性で動作する。
【0235】
最も良好な掃引パターンを選択することによって相互干渉の効果が低減するが、干渉は完全に除去されない場合がある。したがって、自動車FMCWレーダーの測距性能は、バッファー/スライサーFRM802とフーリエシグナルプロセッサFFT805との間にブランキング回路BLR804を組み込むことによってさらに改善される。
【0236】
以下でブランキング回路BLR804の動作を説明する。
【0237】
まず、例えばrms値等のデータフレームのJ個全てのデータブロックの平均レベルが求められる。次に、本明細書ではブランキング閾値と呼ばれる干渉検出閾値が設けられる。たとえば、閾値はデータrms値の4倍に設定することができる。好ましくは、閾値はシステムの雑音レベルの固定値倍(たとえば10倍)を超えるように設定することができる。
【0238】
次に、J個のデータブロックのそれぞれがテストされる。被試験ブロックのrms値がブランキング閾値を超える場合、データブロックはオールゼロブロックと置き換えられる。結果として、ブランキング回路BLR804は、全ての破損したデータブロックがオールゼロブロックに置換された変更データフレームZFをフーリエシグナルプロセッサFFT805に転送する。そのような動作によって個々のデータブロックがデータフレーム内に現れる順序が変化しないことに留意すべきである。
【0239】
ブランキング動作によって背景雑音レベルが低減するので、フーリエシグナルプロセッサFFT805によって用いられる信号検出閾値も低減されるべきである。したがって、ブランキング回路BLR804は、適切に低減された閾値DTをプロセッサFFT805に送信する。変更された閾値DTは、データフレーム内に保有される元のデータブロックの数に比例する。
【0240】
フーリエシグナルプロセッサFFT805は、各周波数掃引パラメーター、すなわちその開始時刻、掃引持続時間TS及び掃引周波数帯域Δfを示す信号SSを受信する。
【0241】
DSPによって実装され得るフーリエシグナルプロセッサ805は、物体の距離R及び/又は速度Vの計算を実行するようになっている。
【0242】
自動車FMCWレーダーは、各モードの動作後にパッシブモードとアクティブモードとの間で交互に切り換えるようにアレンジすることもでき、又はパッシブモードが用いられる頻度の方が低くなるようにアレンジすることもできる。
【0243】
例示的な実施例
干渉分類器601の実施形態を利用する自動車レーダーによって提供される利点の理解を容易にするために、以下で実施例を説明する。
【0244】
異なる周波数の3つの正弦波及び単位rms値の背景雑音を含むビート信号を検討する。各正弦波の振幅は0.27に等しく、そのようなケースは、たとえば、自動車レーダーの視野(FOV)に現れる3つの非常に小さな物体を表すことができる。
【0245】
図10のa)はビート信号を表す512個のサンプルを含むデータフレームを示している。正弦波は雑音にかなり埋もれているが、対応する周波数成分は図10のb)に示す周波数領域表現において明確に見ることができる。
【0246】
図11のa)は、同じデータフレームであるが、それぞれが同じ振幅25を有する3つの高レベル周波数チャープによってさらに破損されたデータフレームを示している。比較のために、ブランキング閾値レベルBTHも示されている。このケースでは、図11のb)に示す周波数領域表現が、干渉チャープの複数の周波数成分によって支配され、関心周波数成分は検出可能でない。
【0247】
このケースでは、図12のa)及びb)に示されるように、ブランキング手順を適用する試みは失敗する。図12のa)は、高レベル周波数チャープを除去したブランキング動作によって変更されたデータフレームを示し、図12のb)は、そのデータフレームの周波数領域表現を示している。
【0248】
図13のa)は、自動車レーダーによって送信された周波数掃引が周波数において適切にシフトされ(すなわち、異なる掃引パターンが用いられ)、3つの干渉チャープのうちの1つが回避されたときの対応するデータフレームを示している。しかしながら、図13のb)に示す周波数領域表現において、関心周波数成分は依然として検出するのが困難である。
【0249】
検出を改善するために、図13のa)に示すデータフレームに適切なブランキング閾値レベルBTHを用いてブランキングが適用され、それによって図13のa)に示すようになる。変更されたデータフレームが図14のa)に示され、干渉チャープによって破損された元もブロックに置き換えられた2つのオールゼロデータブロックを含む。
【0250】
図14のb)に示す変更されたデータフレームの周波数領域表現によって、全て検出閾値を超えた所望の3つの周波数成分の存在がはっきりと明らかになる。
【0251】
上記の実施例において、ブランキングのみではマルチユーザー干渉の効果を抑制するのに十分でなかった。しかしながら、信号ブランキングと併せて送信周波数掃引の適応的な選択を用いることによって、信頼性のある検出が達成された。
【0252】
しかしながら、代替的なシナリオにおいて、信号ブランキングをさらに必要とすることなく、送信周波数掃引の適応的な選択のみで、信頼性のある検出を達成するのに十分である場合がある。
【0253】
上記で論証したように、自動車レーダーは、本発明の一実施形態に従って干渉分類器によって実行される、自然な干渉と人工的な干渉との識別に基づく適応的な波形最適化を利用することによって改善される。
【0254】
変更及び変形
上述した実施形態に対し、多くの変更及び変形を行うことができる。
【0255】
たとえば、図6に示す実施形態は、ハードウェアコンポーネントを備える。しかしながら、一実施形態は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェア、ファームウェア、及びハードウェアの任意の組み合わせを用いて実施することができる。
たとえば、図15は、スケールファクター計算機SCL603、正規化器NRM604、非線形変換器NLT605、平均化回路AVG606、及び比較器CMR607が全て、コンピュータープログラム命令によってプログラムされたプログラム可能処理装置1503によって実装されて上述した処理動作を実行する一実施形態を示している。
コンピュータープログラム命令は、たとえばストレージ媒体1501等のコンピュータープログラム製品又は信号1502に対し与えられる。
【0256】
上述した実施形態では、受信信号の一様サンプリングを実行して、処理のための信号サンプルを生成する。しかしながら、その代わりに、非決定論的サンプリングを含む非一様サンプリングを実行して、サンプルが干渉する正弦波と同期しないことを保証することもできる。
【0257】
上述したFMCW自動車レーダーの実施形態は、一実施形態による干渉分類器を用いて周波数チャープを特定することができる方法の例として提供した。しかしながら、干渉分類器ははるかに広範な適用可能性を有し、たとえば、その周波数が急激又は不連続な形で変化する干渉、及び非決定論的干渉信号を特定するのに用いることができる。
【0258】
本発明の実施形態の上記の説明は、説明及び記述の目的で提示された。上記の説明は、網羅的であることも、本発明を開示された形式に限定することも意図していない。上記の説明を鑑みて、多くの代替形態、変更形態、及び変形形態によって、当業者が本発明を検討される特定の使用に適した様々な実施形態において利用することが可能になることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号が、雑音バーストを含むか、又は正弦波信号を含む干渉を含むかを判断するための干渉分類器であって、
信号のサンプルを含むデータを受信及び格納するように動作可能なバッファーと、
前記受信信号サンプルのレベルに依拠して、該信号サンプルのためのスケールファクターを計算するように動作可能なスケールファクター計算機と、
前記スケールファクターを用いて前記受信信号サンプルを正規化することによって、正規化信号サンプルyを計算するように動作可能な正規化器と、
前記正規化信号サンプルに対し非線形変換T(y)を実行して、変換された信号サンプルを計算するように動作可能な非線形変換器と、
前記変換された信号サンプルの平均レベルを計算するように動作可能な平均化回路と、
前記変換された信号サンプルの前記計算された平均レベルを所定の閾値レベルと比較して、前記信号が、正弦波信号を含む干渉を含むか否かを判断するように動作可能な比較器と、
を備え、
前記非線形変換器は、第1の関数T1(y)及び第2の関数T2(y)の組み合わせを含む非線形変換T(y)を実行するように動作可能であり、前記第1の関数は遷移値ytを超えない値を有する正規化信号サンプルに適用される変換を規定し、前記第2の関数は遷移値yt以上の値を有する正規化信号サンプルに適用される変換を規定し、
T1(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する非減少関数であり、
T2(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する減少関数であり、
遷移値は1.3≦yt≦1.7の範囲の値を有する、 干渉分類器。
【請求項2】
前記第1の関数T1(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する増加関数であり、T1(y)の平均勾配の大きさはT2(y)の平均勾配の大きさよりも小さい、請求項1に記載の干渉分類器。
【請求項3】
前記スケールファクター計算機は、前記信号サンプルの平均絶対偏差であるスケールファクターを計算するようになっており、
前記非線形変換器は、条件付き確率p(y|N1)及びp(y|N2)の比を近似する第1の関数T1(y)及び第2の関数T2(y)の組み合わせを含む非線形変換T(y)を実行するように動作可能であり、ここで
【数1】

であり、
p(y|N2)は雑音レベルに依存する関数
【数2】

の表現であり、
N1はバースト雑音であり、N2は正弦波信号を含む干渉である、請求項1又は2に記載の干渉分類器。
【請求項4】
前記スケールファクター計算機は、前記信号サンプルの標準偏差であるスケールファクターを計算するようになっており、
前記非線形変換器は、条件付き確率p(y|N1)及びp(y|N2)の比を近似する第1の関数T1(y)及び第2の関数T2(y)の組み合わせを含む非線形変換T(y)を実行するように動作可能であり、ここで
【数3】

であり、
p(y|N2)は雑音レベルに依存する関数
【数4】

の表現であり、
N1はバースト雑音であり、N2は正弦波信号を含む干渉である、請求項1又は2に記載の干渉分類器。
【請求項5】
前記スケールファクター計算機は、前記スケールファクターとして、平均絶対偏差、標準偏差、幾何平均、中央値、又はトリム平均のうちの1つを計算するように動作可能である、請求項1又は2に記載の干渉分類器。
【請求項6】
前記正規化器は、各信号サンプルの大きさを求めるように動作可能であると共に、該信号サンプルの大きさを前記スケールファクターで除算することによって、前記正規化信号サンプルyを計算するように動作可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の干渉分類器。
【請求項7】
前記非線形変換器は、非線形変換を実行するように動作可能であり、該非線形変換において、前記第1の関数T1(y)はローレンツ関数を含み、前記第2の関数T2(y)は放物線を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の干渉分類器。
【請求項8】
受信信号が、雑音バーストを含むか又は正弦波信号を含む干渉を含むかを判断する方法であって、
前記受信信号のサンプルのレベルに依拠して、スケールファクターを計算すること、
前記スケールファクターを用いて前記受信信号サンプルを正規化することによって、正規化信号サンプルyを計算すること、
前記正規化信号サンプルに対し非線形変換T(y)を実行することであって、変換された信号サンプルを計算する、実行すること、
前記変換された信号サンプルの平均レベルを計算すること、及び
前記変換された信号サンプルの前記計算された平均レベルを所定の閾値レベルと比較することであって、前記信号が正弦波信号を含む干渉を含むか否かを判断する、比較すること、
を含み、
前記線形変換T(y)は、第1の関数T1(y)及び第2の関数T2(y)の組み合わせを含み、前記第1の関数は遷移値ytを超えない値を有する正規化信号サンプルに適用される変換を規定し、前記第2の関数は遷移値yt以上の値を有する正規化信号サンプルに適用される変換を規定し、
T1(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する非減少関数であり、
T2(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する減少関数であり、
遷移値ytは1.3≦yt≦1.7の範囲の値を有する、方法。
【請求項9】
前記第1の関数T1(y)は正規化信号サンプル値の増加に対する増加関数であり、T1(y)の平均勾配の大きさはT2(y)の平均勾配の大きさよりも小さい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スケールファクターは、前記信号サンプルの平均絶対偏差であり、
前記非線形変換T(y)は、条件付き確率p(y|N1)及びp(y|N2)の比を近似する第1の関数T1(y)及び第2の関数T2(y)の組み合わせを含み、ここで
【数5】

であり、
p(y|N2)は雑音レベルに依存する関数
【数6】

の表現であり、
N1はバースト雑音であり、N2は正弦波信号を含む干渉である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記スケールファクターは、前記信号サンプルの標準偏差であり、
前記非線形変換T(y)は、条件付き確率p(y|N1)及びp(y|N2)の比を近似する第1の関数T1(y)及び第2の関数T2(y)の組み合わせを含み、ここで
【数7】

であり、
p(y|N2)は雑音レベルに依存する関数
【数8】

の表現であり、
N1はバースト雑音であり、N2は正弦波信号を含む干渉である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記正規化信号サンプルを計算するプロセスは、各信号サンプルの大きさを求めると共に、該信号サンプルの大きさを前記スケールファクターで除算することによって、前記正規化信号サンプルを計算することを含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記非線形変換の前記第1の関数T1(y)はローレンツ関数を含み、前記非線形の前記第2の関数T2(y)は放物線を含む、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
プログラム可能な処理装置をプログラムして請求項8〜13の少なくとも1項に記載の方法を実行するように動作可能にするコンピュータープログラム命令を担持するコンピュータープログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−247893(P2011−247893A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−119126(P2011−119126)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(503163527)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (175)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
【Fターム(参考)】