説明

平板スピーカ

【課題】本発明は、居住空間を構成する天井面や壁面に設置する平板スピーカに関するものであり、薄型で、壁・天井へ取り付けた際に、隣室・上階等への音漏れを防止する優れた平板スピーカを提供するものである。
【解決手段】本発明の平板スピーカは、フレーム201の開口端面に平板振動板203を接合して、スピーカの内部を外部に音漏れを起こさない程度の密閉状態として、隣室や階上への影響のない天井面や壁面に設置する平板スピーカとするとともに、前記平板振動板203をボイスコイル103に接合した円筒状伝達部材202の水平平坦部202aで上下動させる構成として薄型化を図ったものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板スピーカに関するものであり、特に住宅やマンション、オフィスビル等の建築材料で構成された居住空間の壁や天井に設置・使用される平板スピーカの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の平板スピーカを図9の側断面図により説明する。
【0003】
同図によると、101は鉄鋼材等からなり複数の穴部を有するフレームであり、このフレーム101には、下部プレート102aと環状のマグネット102bと環状の上部プレート102cを接着結合して磁気回路102を構成している。
【0004】
なお、前記磁気回路102は前記下部プレート102aの中央突出部であるセンターポール102dと前記上部プレートの間に磁気空隙102eを有している。
【0005】
また、前記磁気回路102の磁気空隙102e内に一端が位置するように配置した円筒形のボイスコイル103が配挿されている。
【0006】
また、104は、前記ボイスコイル103を前記磁気空隙の中心に保持するように内周を前記ボイスコイル103に接合すると共に、外周を前記フレーム101に接合した支持部である。
【0007】
105は、前記ボイスコイル103上部に接合された逆円錐状のカップリングコーンであり、このカップリングコーン105の前記ボイスコイル103と接合されていない端部と、平板振動板106とが接合されている。この平板振動板106の外周はエッジ部107の内周と接合されており、このエッジ部107の外周は前記フレーム101と接合されている。
【0008】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開昭63−262000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の構成では、エッジ部107が平板振動板106に対して突出、もしくは奥まった構成になることや、スピーカの存在を目立たなくするために、スピーカ表面をクロスで覆ったとしても隣接する壁材や天井とは質感が相違し、壁や天井に配置したスピーカ位置が聴取者にとって容易に視認でき、音響壁や音響天井というイメージの提供からは課題を有するものであった。
【0010】
また、カップリングコーン105は前記平板振動板106との接合時の偏芯の影響を抑制するため、接合点を平板振動板の外側に位置させるために、カップリングコーン105の大型化は避けられず、結果として高さが必要となり、スピーカの厚みが増し、壁・天井等へ設置した際に、壁内や天井内においてスピーカが目立つ形で突出することから、他の配線や配管などの工事の円滑化を図るためにスピーカの薄型化が要望されていた。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、住宅やマンション、オフィスビル等の建築材料で構成された居住空間内に設置した際に、居住空間に違和感を感じさせることなく、また、天井への設置に際しては上階との間隔、壁に設置する場合は隣室との間隔を広くすることのない平板スピーカの提供を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のスピーカは、少なくとも矩形状の平板振動板と、前記平板振動板の周囲と開口端面で接合して内部に略密閉空間を形成するフレームと、前記略密閉空間を形成する前記フレームの略中央内底部に装着された磁気回路と、一端を前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置したボイスコイルと、このボイスコイルの上方端側に下端側が接合され、上端に形成した水平平坦部を前記平板振動板に接合した円筒状伝達部材とで構成したものであり、従来のエッジ部を削除して室内の聴取者にスピーカの存在を視認させることがなく、スピーカの存在による室内の違和感を感じさせることがなく、また、平板振動板の背面側を音の漏れない密閉空間としたため、背面からの音漏れが抑制できて、階上や隣接する部屋との防音措置が比較的簡易なものとすることができると共に、水平平坦部を設けた円筒状伝達部材によって、面で平板振動板を振動させて放音するものであるため、前記水平平坦部は平板振動板の中央部分を上下に振動させるので、円筒状伝達部材の全高は、カップリングコーンに比して低くできてスピーカとしての薄型化が図れるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の平板スピーカは、表面にエッジ部分が視認されることがないので、天井や壁面に見掛け上スピーカが設置されているという違和感を在室者に与えることがないものであるとともに、従来のカップリングコーンを用いずに、水平平坦部を設けた円筒状伝達部材によって、平板振動板と、ボイスコイルとを接合して薄型化を実現したため、従来の平板スピーカと比べてスピーカ自体の存在を排除して天井面や壁面のデザイン化が可能となって、平板スピーカがデザイン上の制約とならずにデザインの自由度を高めると共に、住宅工事における配線や配管工事の障害の緩和が図れるものである。
【0014】
また、スピーカ背面からの、周囲空間への逆相音の放射を抑え、壁・天井等へ設置した際に、隣室・上階等への音漏れが起こりにくいという効果も奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態の平板スピーカを図1〜図2により説明する。
【0016】
図1(a)は本発明の実施の形態1における平板スピーカの平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A´における構造断面図、図2は、同実施の形態における他の平板スピーカの例を示す構造断面図である。
【0017】
図1、図2において、図9と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0018】
同図において、201は薄板の鉄鋼材等からなるフレームであり、このフレーム201には、空気の流出入を可能とする隙間・継ぎ目・穴部が設けられていない。また、203は軽量の矩形の平板振動板であり、特に発泡樹脂や木材、金属といった材料で構成されている。この平板振動板203の外周端面と、前記フレーム201の外周端面とは、接着剤等の接合手段によって接合されて、前記平板振動板203とフレーム201が形成した空間は音漏れしない程度の密閉状態となっている(接着剤は固化状態でも弾力性を維持するものが望ましい。)。
【0019】
202は前記ボイスコイル103の内壁と下端側で接合されるとともに、上端側に前記平板振動板203の中央部と接合される水平平坦部202aを有するアルミなどの薄板よりなる金属製の円筒状伝達部材であり、前記ボイスコイル103と前記磁気回路102から発生した駆動力によって、前記平板振動板203を振動させることで音を発生させている。
【0020】
なお、前記円筒状伝達部材202の上端の水平平坦部202aは、円形もしくは多角形の形状としている。
【0021】
かかる構成によれば、従来技術のエッジ部107を用いることなく、前記フレーム201と、前記平板振動板203とを接合することで、天井や壁面に他の天井材や壁材と共に、本実施の形態のスピーカを設置したときには、前記平板振動板203の表面や表面クロスと質感や色相が同じ表面を有する天井材や壁材を用いることで、本実施の形態のスピーカの存在を視認させることがなくなり、意匠上の制約を有さないものとしてスピーカのインテリア性を向上することができるものである。
【0022】
また、前記円筒状伝達部材202を用いて、前記平板振動板203と、前記ボイスコイル103とを接合することで、従来のスピーカのカップリングコーン105を用いた場合と比べ、平板振動板203の中央部分を前記円筒状伝達部材202の水平平坦部202aで上下動させる構成としたために、スピーカ全体の厚みを少なくすることができ、住宅やマンション、オフィスビル等の建築材料で構成された居住空間内に設置した際に、設置時のスペースファクターが従来の平板スピーカと比べて広くなり、隣室との壁面間や天井と階上間の隙間における住宅工事における配線や配管工事の障害の緩和が図れるものである。
【0023】
更に、前記平板振動板203とフレーム201が形成した空間を音漏れしない程度の密閉状態としたことで、スピーカ背面(前記平板振動板203)からの、周囲空間への逆相音の放射を抑え、壁・天井等へ設置した際に、隣室・上階等への音漏れを抑制するものである。
【0024】
なお、本実施の形態において、前記平板振動板203の材料として発泡樹脂、木、金属としているが、紙、ガラス等の材料を用いても良いし、ハニカムパネルやアルミ複合板といった新素材を用いても、同様の効果が得られる。
【0025】
また、本実施の形態において、前記円筒状伝達部材202の材料としてアルミを始めとした金属としているが、樹脂等の材料を用いても、同様の効果が得られる。
【0026】
更に、前記平板振動板203の外周端面と、前記フレーム201の外周端面とをクッション性を有する厚みを有した両面粘着材301にて接合することで、前記平板振動板203の外周端における反射波のロスを減らし、周波数特性の乱れを抑えると共に、組立誤差を吸収することが可能となる。
【0027】
また、本実施の形態では、前記フレーム201と、前記平板振動板203とが接合されていることから、前記平板振動板203の表面上に発生する複数の分割共振を利用して音を再生する (なお、分割共振を利用したスピーカの周波数特性は、複雑なピーク、ディップが生じるが、前記平板振動板203の内側に補強を施す等により、共振を分散して振動モードをコントロールすることも可能である。)。
【0028】
(実施の形態2)
本発明の他の実施の形態の平板スピーカを図3〜図6により説明する。
【0029】
図3は、本発明の実施の形態2における平板スピーカの構造断面図、図4〜図6は、同実施の形態における他の平板スピーカの例を示す構造断面図である。なお、図3〜図6において、図1および図2および図9と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略して説明する。
【0030】
図3において、実施の形態1と相違する点は、前記平板振動板203と、前記フレーム201とから形成される空間内に、帯状の弾性材401を前記平板振動板203外周部に沿わせて配設して、この帯状弾性材401を介して、前記平板振動板203と、前記フレーム201とを接合する点である。なお、前記帯状弾性材の材質としては、ゴム、エラストマー、布等が挙げられる。
【0031】
この構成により、前記平板振動板203が、前記ボイスコイル103の動きに合わせて実施の形態1の平板スピーカと比してよりピストン運動することが可能となり、周波数特性の乱れを抑えることができるという効果が得られる。
【0032】
また、図4に示すように、前記帯状弾性材401の、長手方向に沿った外周部と、前記平板振動板203とを接合し、前記帯状弾性材401の、前記長手方向に沿った内周部と、前記フレーム201とを接合した構成にすることで、前記フレーム201の、外周部周囲に空間を設けることができ、壁・天井への取り付け加工が可能となる。
【0033】
また、図5に示すように、前記帯状弾性材401の、短手方向における断面形状が、波状の凹凸断面を有する、弾性材501を用いることで、前記平板振動板203のピストン運動における線形性がより向上するという効果が得られる。
【0034】
また、図6に示すように、前記帯状弾性材401の短手方向における断面形状を弧状とした弾性材601を用いることで、前記平板振動板203のピストン運動における線形性が向上するという効果が得られる。
【0035】
(実施の形態3)
本発明の他の実施の形態の平板スピーカを図7により説明する。
【0036】
図7は、本発明の平板スピーカの他の実施の形態の要部である円筒状伝達部材の平面図である。なお、図7において、図1〜図6および図9と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0037】
図7において、実施の形態1、実施の形態2と相違する点は、円筒状伝達部材701の、上端の水平平坦部701aの形状を非円形形状とした点である。図7(a)は楕円形状としたものであり、図7(b)はヒトデ形状としたものである。
【0038】
この構成により、前記円筒状伝達部材701の、上端の水平平坦部701aと接合されている前記平板振動板203表面で発生する振動モードは、水平平坦部701aの形状に合わせて、不規則な形状で現れるため、前記平板振動板203に特別な処理を施すことなく、周波数特性の乱れを抑えることが可能となる。即ち、前述の各実施の形態においては、天井や壁面に使用されるパネル形状が正方形であることに併せて前記平板振動板203も矩形形状である正方形としているが、水平平坦部701aを実施の形態1のように円形とした場合に発生する分割共振周波数が正方形の平板振動板203との間で特定のものとなってピークデップの著しい周波数音圧特性となることを水平平坦部701aを楕円形などの非円形形状として、分割共振周波数を分散させて、特定の著しいピークデップの発生を抑制して、放音する上でより寄与させるものである。
【0039】
(実施の形態4)
前述の各実施の形態とは異なる他の実施の形態の平板スピーカを図8により説明する。
【0040】
図8は、他の実施の形態の平板スピーカの構造断面図である。なお、図8において、図1〜図7および図9と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0041】
図8において、実施の形態1〜実施の形態3と相違する点は、前記磁気回路102の磁気空隙内に、磁界に反応する磁性流体801を充填し、前記磁気回路102で発生した磁界を利用して、前記ボイスコイル103を、前記磁気空隙の中心に保持している点である。
【0042】
この構成により、従来技術や実施の形態1〜3で用いていた支持部104を排除した構成が可能となり、さらなる薄型化が実現できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかる平板スピーカは、平板振動板表面にスピーカの存在を顕示するものを有さないため、壁や天井材との配置位置の自由度を向上させると共に、平板スピーカの厚みを抑えることで、住居としての壁や天井の狭小な間隙内での配線や配管工事の障害となることを抑制し、更に、スピーカ背面からの周囲空間への逆相音の放射を抑えて、隣室・上階等への音漏れが起こりにくいという効果を有し、住宅やマンション、オフィスビル等の建築材料で構成された居住空間内に設置する音響機器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における平板スピーカの平面図、(b)図1(a)のA−A´における構造断面図
【図2】同実施の形態における他の平板スピーカの例を示す構造断面図
【図3】本発明の実施の形態2における平板スピーカの構造断面図
【図4】同実施の形態における他の平板スピーカの例を示す構造断面図
【図5】同実施の形態における他の平板スピーカの例を示す構造断面図
【図6】同実施の形態における他の平板スピーカの例を示す構造断面図
【図7】(a)本発明の実施の形態1における円筒状伝達部材の平面図、(b)本発明の実施の形態3における円筒状伝達部材の平面図
【図8】本発明の実施の形態4における平板スピーカの構造断面図
【図9】従来の平板スピーカの例を示す構造断面図
【符号の説明】
【0045】
101 フレーム
102 磁気回路
103 ボイスコイル
104 支持部
105 カップリングコーン
106 平板振動板
107 エッジ部
201 フレーム
202 円筒状伝達部材
202a 水平平坦部
203 平板振動板
301 両面粘着材
401 帯状弾性材
501 弾性材
601 弾性材
701 円筒状伝達部材
801 磁性流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも矩形状の平板振動板と、前記平板振動板の周囲と開口端面で接合して内部に略密閉空間を形成するフレームと、前記略密閉空間を形成する前記フレームの略中央内底部に装着された磁気回路と、一端を前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置したボイスコイルと、このボイスコイルの上方端側に下端側が接合され、上端に形成した水平平坦部を前記平板振動板に接合した円筒状伝達部材とで構成された平板スピーカ。
【請求項2】
平板振動板とフレーム間に弾性部材を介して接合した請求項1に記載の平板スピーカ。
【請求項3】
弾性部材がクッション性を有する両面粘着材である請求項2に記載の平板スピーカ。
【請求項4】
円筒状伝達部材の水平平坦部の形状が、非円形形状である、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の平板スピーカ。
【請求項5】
磁気空隙内に磁性流体を充填した請求項1に記載の平板スピーカ。
【請求項6】
少なくとも矩形状の平板振動板は、隣接する壁材または天井材と表面の質感が近似し、色相が同色である請求項1から請求項5に記載の平板スピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−260763(P2009−260763A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108601(P2008−108601)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】