説明

平板型固体酸化物形燃料電池

【課題】性能の低下を防ぐことができる平板型固体酸化物形燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】単セル4と燃料極セパレータ5との間に発泡金属8とともに金属メッシュ9を設けることにより、単セル4と燃料極セパレータ5との間に隙間等が生じるのを防ぐことができるので、電気的な接続が強くなり、結果として性能の低下を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板型の単セルとこの単セルを収容するセパレータとを備えた平板型固体酸化物形燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平板型固体酸化物形燃料電池は、固体酸化物からなる平板状の電解質層と、この電解質層の表裏面にそれぞれ形成した空気極および燃料極とで単セルを形成し、燃料極と空気極に燃料ガスと酸化剤ガスをそれぞれ給排気する通路を有するセパレータと単セルとを交互に複数個積層して電気的に直列に接続することにより燃料電池セルスタックを形成し、上記通路を介して各単セルの各極に燃料ガスと酸化剤ガスを供給することにより発電を行うようにした燃料電池である。このような従来の平板型固体酸化物型燃料電池のセルスタックを図5に示す。
【0003】
図5に示すように、平板型固体酸化物形燃料電池スタックは、平板からなる電解質1、この電解質の一方の面に形成された平板からなる燃料極2、および電解質1の他方の面に形成された平板からなる空気極3から構成された燃料極支持型の単セル4と、単セル4を収容する凹部5aが形成された燃料極セパレータ5と、この燃料極セパレータ5と協働して単セル4を介装する空気極セパレータ6と、燃料極セパレータ5と空気極セパレータ6との間に配設された絶縁部材7と、燃料極2と燃料極セパレータ5との間に配設された発泡金属8とを備え、これらを1組とするセルを複数組重ねて設けた構造を有する。
【0004】
このような平板型固体酸化物形燃料電池スタックの1つのセルは、燃料極セパレータ5の凹部5aの底面に形成された燃料流路5b上に、発泡金属8および単セル4を順次積層した後、これらを燃料極セパレータ5側に押し込むように空気極セパレータ6を絶縁部材7を介して燃料極セパレータ5に接合することにより形成される。これにより、単セル4は、燃料極2側が発泡金属8を介して燃料極セパレータ5により、空気極3側が空気極セパレータ6により、それぞれ電解質1側に押圧されることにより燃料極セパレータ5と空気極セパレータ6との間に保持される。
【0005】
このように形成された平板型固体酸化物形燃料電池スタックは、次のように動作する。まず、水素等の燃料ガスG1は、燃料供給マニホールド(図示せず)から燃料極セパレータ5の燃料供給経路5cを通って燃料流路5bから燃料極2に供給される。一方、空気等の酸化剤ガスG2は、空気供給マニホールド(図示せず)から空気極セパレータ6の空気供給経路6bを通って空気流路6aから空気極3に供給される。このように燃料ガスG1および酸化剤ガスG2を所定の温度下において単セル4に供給されると、燃料極2と空気極3との間に起電力が発生する。燃料極2は、発泡金属8を介して燃料極セパレータ5と電気的に接続され、空気極3は、空気極セパレータ6に接続されている。また、燃料極セパレータ5と空気極セパレータ6とは、それぞれ隣接する燃料極セパレータ5または空気極セパレータ6に電気的に接続されている。したがって、平板型固体酸化物形燃料電池スタックの上端の空気極セパレータ6と下端の燃料極セパレータ5とを端子として負荷回路を構成することにより、平板型固体酸化物形燃料電池スタックは、所定の電圧レベルの電力を発生させることができる。
【0006】
【非特許文献1】宮澤隆、その他、“ランタンガレート系電解質を用いた低温作動SOFCの開発(5)”、第14回SOFC研究発表会 講演要旨集、p20−25、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の平板型固体酸化物形燃料電池スタックでは、発泡金属が軟らかすぎるので変形しすぎてしまい、発泡金属と燃料極や燃料極セパレータとの間に隙間が生じて電気的な接続が弱くなり、結果として性能が低下することがあった。
【0008】
そこで、本願発明は、性能の低下を防ぐことができる平板型固体酸化物形燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る平板型固体酸化物形燃料電池は、燃料極、空気極および固体酸化物の電解質から構成される平板型の単セルと、この単セルを収容するとともに、燃料極に燃料を供給し、かつ、空気極に酸化剤を供給する収容部材と、単セルと収容部材との間に配設された発泡金属と、この発泡金属と収容部材との間に配設された導電性を有する補強部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記平板型固体酸化物形燃料電池において、補強部材は、金属メッシュから構成されるようにしてもよい。ここで、金属メッシュは、ニッケル合金、ニッケルおよびステンレス鋼のうちの何れかからなる直径0.05mm以上1mm以下の線状金属部材を、格子状に編み込んだ部材から構成され、格子の間隔は、直径以上直径の2倍以下であるようにしてもよい。
【0011】
また、上記平板型固体酸化物形燃料電池において、補強部材は、複数の孔を有する金属板から構成されるようにしてもよい。ここで、金属板は、ニッケル合金、ニッケルおよびステンレス鋼のうちの何れかからなり、かつ、0.05mm以上1mm以下の厚さを有し、孔は、それぞれ厚さの2倍以上3倍以下の大きさを有し、厚さの2倍以上4倍以下の間隔で一列に配列されるとともに、この列を交互に列方向に間隔の半分ずつずらしながら行方向に間隔で格子状に配列して形成されるようにしてもよい。
【0012】
また、上記平板型固体酸化物形燃料電池において、補強部材と収容部材との間に配設される第2の発泡金属をさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発泡金属と収容部材との間に補強部材を配設することにより、単セルと収容部材との間に隙間等が生じるのを防ぐことができるので、電気的な接続が強くなり、結果として性能の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態は、図5を参照して背景技術の欄で説明した従来の平板型固体酸化物形燃料電池スタックと、燃料極と燃料極セパレータとの間に配置する部材が異なるものである。したがって、本実施の形態において、図5を参照して説明した従来技術と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して適宜説明を省略する。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る平板型固体酸化物形燃料電池スタックは、平板からなる電解質1、この電解質1の一方の面に形成された平板からなる燃料極2、および電解質1の他方の面に形成された平板からなる空気極3から構成された燃料極支持型の単セル4と、単セル4を収容する凹部5aが形成された燃料極セパレータ5と、この燃料極セパレータ5と協働して単セル4を介装する空気極セパレータ6と、燃料極セパレータ5と空気極セパレータ6との間に配設された絶縁部材7と、燃料極セパレータ5の燃料流路5b上に配設された金属メッシュ9と、この金属メッシュ9と燃料極2との間に配設された発泡金属8とを備え、これらを1組とするセルを単数または複数組重ねて設けた構造を有する。
【0016】
燃料極セパレータ5は、板状の形状を有し、上面の略中央部が上面側から下面側に掘り込まれた凹部5aと、この凹部5aの底面に形成され燃料ガスを燃料極2に一様に供給するための流路を有する燃料流路5bと、この燃料流路5bと燃料極セパレータ5の一側面とを結ぶ貫通孔からなる燃料供給経路5cと、燃料流路5bと燃料極セパレータ5の一側面とを結ぶ貫通孔からなる燃料排出経路5dとを備える。ここで、燃料供給経路5cの上記一側面側の端部には、燃料供給マニホールド(図示せず)が接続され、この燃料供給マニホールドから燃料ガスが供給される。また、燃料排出経路5dの上記一側面側の端部には、燃料排出マニホールド(図示せず)が接続され、この燃料排出マニホールドから単セル4で未反応の燃料ガスが排出される。
【0017】
空気極セパレータ6は、板状の形状を有し、下面に形成され酸化剤ガスを空気極3に一様に供給するための流路を有する空気流路6aと、この空気流路6aと空気極セパレータ6の一側面とを結ぶ貫通孔からなる空気供給経路6bとを備える。ここで、空気供給経路6bの上記一側面側の端部には、空気供給マニホールド(図示せず)が接続され、この空気供給マニホールドから空気等の酸化剤ガスが供給される。
【0018】
発泡金属8は、例えば、INCONEL(登録商標)等のニッケル合金、ニッケル、ステンレス鋼などからなる空隙率が85%以上96%以下、より望ましくは88%以上92%以下の板状の部材から構成される。
【0019】
金属メッシュ9は、例えば、INCONEL(登録商標)等のニッケル合金、ニッケル、ステンレス鋼などからなる直径0.05mm以上1mm以下の線状部材を、直径以上直径の2倍以下程度の間隔で格子状に編み込んだ全体として板状の部材から構成される。ここで、直径0.1mm以上0.2mm以下の上記線状部材を直径の間隔で格子状に編み込んだ部材が金属メッシュ9としてより望ましい。このような金属メッシュ9は、上述した発泡金属8よりも硬く、塑性変形がしにくいという特性を有する。
【0020】
このような平板型固体酸化物形燃料電池スタックの1つのセルは、次のように作成される。まず、燃料極セパレータ5の凹部5aの底面に形成された燃料流路5b上に、金属メッシュ9、発泡金属8、および燃料極2を発泡金属8側に向けた状態の単セル4を順次積層する。このとき、単セル4は、少なくとも凹部5aの端面から凹部5a外部にはみ出た状態となる。このような状態から、空気極セパレータ6を燃料極セパレータ5側に押し込むように絶縁部材7を介して燃料極セパレータ5に接合する。これにより、燃料極2側が発泡金属8および金属メッシュ9を介して燃料極セパレータ5により、空気極3側が空気極セパレータ6により、それぞれ電解質1側に押圧されることによって単セル4が燃料極セパレータ5と空気極セパレータ6との間に保持された1つのセルが生成される。
【0021】
このとき、発泡金属8は、当接する燃料極2および金属メッシュ9により押圧されて変形するが、金属メッシュ9を設けることにより、燃料極2および金属メッシュ9との間に隙間等が生じるのを防ぐことができる。すなわち、金属メッシュ9は、上述したように発泡金属8よりも硬い材料から構成されているので、燃料極セパレータ5により空気極セパレータ6側に押圧されても変形量が少ない。このため、燃料極セパレータ5側からの圧力を発泡金属8に伝えるとともに、燃料極セパレータ5および発泡金属8と密着する。一方、発泡金属8は、金属メッシュ9よりも軟らかく塑性変形しやすいという特性を有する。このため、発泡金属8は、金属メッシュ9により燃料極2側に押圧されて、当接する燃料極2および金属メッシュ9の表面形状に応じて変形することにより、燃料極2および金属メッシュ9と密着する。したがって、燃料極セパレータ5と単セル4との間に隙間等が生じないので、電気的な接続が強くなり、結果として性能の低下を防ぐことができる。
【0022】
このように本実施の形態によれば、単セル4と燃料極セパレータ5との間に発泡金属8とともに金属メッシュ9を設けることにより、単セル4と燃料極セパレータ5との間に隙間等が生じるのを防ぐことができるので、電気的な接続が強くなり、結果として性能の低下を防ぐことができる。
【0023】
なお、本実施の形態では、発泡金属8とともに金属メッシュ9を設けるようにしたが、図2に示すように、金属メッシュ9の代わりに複数の孔が形成された金属板10を設けるようにしてもよい。この金属板としては、エッチングを施すことにより複数の孔が形成されたエッチングメタルや、所定の金型で金属板をプレスすることにより複数の孔が形成されたパンチングメタルなどを用いることができる。一例として、金属板10としてエッチングメタルを用いた場合について、図2,図3を参照して説明する。
【0024】
このエッチングメタルからなる金属板10は、図3に示すように、例えば、INCONEL(登録商標)等のニッケル合金、ニッケル、ステンレス鋼などからなる厚さ0.05mm以上1mm以下の板部材に、直径が厚さの2倍以上3倍以下程度の孔10aが、厚さの2倍以上4倍以下の間隔(ピッチ(P))で格子状に、かつ、一列毎に列方向の位置をピッチPの1/2ずつずらして形成されている。言い換えると、孔10aは、それぞれ上記厚さの2倍以上3倍以下の大きさを有し、上記厚さの2倍以上4倍以下の間隔で一列に配列されるとともに、この列を交互に列方向に上記間隔の半分ずつずらしながら行方向に上記間隔で格子状に配列して形成される。このとき、厚さ0.1mm以上0.2mm以下の上記板部材に、直径が厚さの2倍以上2.5倍以下で、ピッチPが厚さの3倍以上3.5倍以下の孔10aを形成した部材が金属板10としてより望ましい。このような金属板10は、発泡金属8よりも硬く、塑性変形がしにくい特性を有する。
【0025】
このように、単セル4と燃料極セパレータ5との間に発泡金属8とともにエッチングメタルからなる金属板10を設けた場合においても、金属メッシュ9を設けた場合と同様、単セル4と燃料極セパレータ5との間に隙間等が生じるのを防ぐことができるので、電気的な接続が確実となり、結果として性能の低下を防ぐことができる。
【0026】
なお、図3において、金属板10としてエッチングメタルの代わりに、このエッチングメタルと同等の形状を有するパンチングメタルを用いた場合においても、同等の作用効果を実現することができる。
【0027】
また、図3では、平面視略円形の孔10aが形成されているが、この孔10aの平面形状は円形に限定されず、例えば、矩形や楕円など適宜自由に設定することができる。矩形の場合、短辺、長辺および対角線のうち何れかの大きさが金属板の厚さに基づいて設定される。楕円の場合、長径および短径のうち何れかの大きさが金属板の厚さに基づいて設定される。
【0028】
さらに、図4に示すように、金属メッシュ9の上面および下面を発泡金属8で挟むようにしてもよい。このようにすることにより、発泡金属8が単セル4、燃料極セパレータ5および金属メッシュ9と密着するので単セル4と燃料極セパレータ5との間の電気的接続を確実にすることができるとともに、金属メッシュ9により燃料極セパレータ5側からの押圧力を単セル4に効果的に伝えることができる。結果として、単セル4と燃料極セパレータ5との間に隙間等が生じるのを防ぐことができるので、電気的な接続が確実となり、性能の低下を防ぐことができる。
【0029】
図4において、金属メッシュ9の代わりに複数の孔が形成された金属板10を用いるようにしてもよい。また、金属メッシュ9と複数の孔が形成された金属板10を組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0030】
なお、本実施の形態においては、単セル4と燃料極セパレータ5との間に発泡金属8、金属メッシュ9、金属板10を設けるようにしたが、単セル4と空気極セパレータ6との間にそれらを設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、平板型固体酸化物形燃料電池スタックに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の平板型固体酸化物形燃料電池スタックの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の平板型固体酸化物形燃料電池スタックの変形例を示す断面図である。
【図3】エッチングメタルの構成を示す平面図である。
【図4】本発明の平板型固体酸化物形燃料電池スタックの変形例を示す断面図である。
【図5】従来の平板型固体酸化物形燃料電池スタックの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1…電解質、2…燃料極、3…空気極、4…単セル、5…燃料極セパレータ、5a…凹部、5b…燃料流路、5c…燃料供給経路、5d…燃料排出経路、6…空気極セパレータ、6a…空気経路、6b…空気供給経路、7…絶縁部材、8…発泡金属、9…金属メッシュ、10…金属板、10a…孔。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極、空気極および固体酸化物の電解質から構成される平板型の単セルと、
この単セルを収容するとともに、前記燃料極に燃料を供給し、かつ、前記空気極に酸化剤を供給する収容部材と、
前記単セルと前記収容部材との間に配設された発泡金属と、
この発泡金属と前記収容部材との間に配設された導電性を有する補強部材と
を備えることを特徴とする平板型固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記補強部材は、金属メッシュから構成される
ことを特徴とする請求項1記載の平板型固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記補強部材は、複数の孔を有する金属板から構成される
ことを特徴とする請求項1記載の平板型固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記金属メッシュは、ニッケル合金、ニッケルおよびステンレス鋼のうちの何れかからなる直径0.05mm以上1mm以下の線状金属部材を、格子状に編み込んだ部材から構成され、
前記格子の間隔は、前記直径以上前記直径の2倍以下である
ことを特徴とする請求項2記載の平板型固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記金属板は、ニッケル合金、ニッケルおよびステンレス鋼のうちの何れかからなり、かつ、0.05mm以上1mm以下の厚さを有し、
前記孔は、それぞれ前記厚さの2倍以上3倍以下の大きさを有し、前記厚さの2倍以上4倍以下の間隔で一列に配列されるとともに、この列を交互に列方向に前記間隔の半分ずつずらしながら行方向に前記間隔で格子状に配列して形成される
ことを特徴とする請求項3記載の平板型固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記補強部材と前記収容部材との間に配設される第2の発泡金属
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の平板型固体酸化物形燃料電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−117737(P2008−117737A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302589(P2006−302589)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】