説明

平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物

【課題】平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物は、オイルに酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤、多価アルコール系化合物、アルカリ金属水酸化物、及び水を含み、pH12〜pH14であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低気泡性水系洗浄剤である、平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物に関する。本発明は、2009年10月30日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2009−0104416号の出願日の利益を主張し、その内容全部は本発明に含まれる。
【背景技術】
【0002】
FPD(flat panel display device)は、半導体デバイスと同様に、成膜、露光、エッチングなどの工程を経て製品が製造される。ところが、このような製造工程によって、基板の表面に各種の有機物や無機物などの大きさが1μm以下の非常に小さいパーティクル(Particle)により、付着汚染が発生する。このようなパーティクルが付着したままで次の工程処理を実施した場合、膜のピンホールまたはピット、配線の断線またはブリッジ(Bridge)が発生して製品の製造収率が低下する。
【0003】
したがって、汚染物を除去するための洗浄が各工程の間に行われており、このための洗浄剤についても多くの提案があった。例えば、特許文献1には、芳香族アルコールに酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤、及び炭化水素アルコールに酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤を含む水系洗浄剤が開示されている。ところが、長鎖の炭化水素系に酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤を使用するので、スプレーなどの工程で気泡が発生する。また、特許文献2では、酸性のpH環境下に脱イオン水、有機化合物及びアンモニウム化合物を含む洗浄液を提案した。ところが、前記洗浄液が酸性範囲の洗浄液であるから、洗浄初期段階の基本的特性、すなわち有機物や無機物などの大きさが1μm以下の非常に小さいパーティクルに対する除去性が不十分である。また、特許文献3は、長鎖アルコールに酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤、短鎖のグリコールエーテル溶剤、長鎖のグリコールエーテル溶剤、パラフィン系またはオレフィン系炭化水素及び水を含んでなる洗浄剤組成物を提案した。ところが、炭化水素系溶剤を使用する場合、引火性と乾燥問題の発生可能性が存在する。また、末端アルキル基の炭素数が増加する場合、洗浄剤の粘度上昇と水に対する溶解性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許公開第2003−0039408号明細書
【特許文献2】韓国登録特許第10−0574607号明細書
【特許文献3】特開平7−133496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラス基板上に存在する汚染物質を完全に除去することにより洗浄効果及び生産性を増大させることが可能な低気泡性水系洗浄剤である、平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、化学式1で表されるテルペン系オイルに酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤、多価アルコール系化合物、アルカリ金属水酸化物、及び水を含み、pH12〜pH14であることを特徴とする、平板表示装置ガラス基板用洗浄剤組成物を提供する:
【0007】
【化1】

【0008】
式中、AOはオキシエチレン基、オキシプロピレン基またはポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体であり、nは1〜40である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤組成物は、平板表示装置のガラス基板の表面に対する有機物汚染物及びパーティクルの除去力に優れる。本発明の洗浄剤組成物は、リンス後に残留物がなく、多量の脱イオン水を含むので、取り扱いが容易で環境的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例9の洗浄剤組成物を用いて洗浄前の接触角を示す写真である。
【図2】実施例9の洗浄剤組成物を用いて洗浄後の接触角を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物は、pH12〜pH14であり、非イオン性界面活性剤、多価アルコール系化合物、アルカリ金属水酸化物及び水を含む。
【0013】
本発明の平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物に含まれる非イオン性界面活性剤は、下記化学式1で表されるテルペン系オイルに酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤である。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、AOはオキシエチレン基、オキシプロピレン基またはポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体であり、nは1〜40である。
【0016】
前記化学式1で表される非イオン性界面活性剤は、スプレー工程で低気泡性を示し、湿潤浸透力を向上させてガラス基板から汚染物質を容易に除去する。
【0017】
前記化学式1で表される非イオン性界面活性剤は、組成物の総重量に対して、0.01〜5重量%で含まれることが好ましく、0.1〜2重量%で含まれることがより好ましい。上述した範囲未満で含まれると、ガラス基板の表面と粒子などの汚染物間の界面に迅速に洗浄液を浸透させることが難しくなり、汚染物に対する洗浄力が減少するという問題点がある。上述した範囲超過で含まれると、湿潤浸透力が強くてガラス基板の表面に洗浄剤組成物が残留する。そして、リンス工程においても界面活性剤が基板に残留する。また、洗浄剤組成物の粘度上昇による気泡発生の度合いが激しくなって工程上の作業性が低下するという問題がある。
【0018】
前記化学式1で表される非イオン性界面活性剤としては市販の製品を用いることができるが、Rhodia製のRhodoclean ASP(Rhodocleanは登録商標)、Rhodoclean MSC、Rhodoclean EFC、及びRhodoclean HPなどがある。
【0019】
本発明の平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物に含まれる多価アルコール系化合物は、ガラス基板表面の湿潤性を増加させて、前記化学式1で表される非イオン性界面活性剤のみでは除去し難いガラス基板表面のオイル成分の除去能力、すなわち洗浄力を向上させる。また、前記多価アルコール系化合物は本発明の洗浄剤組成物の水に対する溶解力及びリンス力を向上させる。
【0020】
前記多価アルコール系化合物は、組成物の総重量に対して、0.01〜5重量%で含まれることが好ましく、0.1〜3重量%で含まれることがより好ましい。上述した範囲未満で含まれると、ガラス基板の表面に対する湿潤性付与が足りない。上述した範囲超過で含まれると、非経済的である。
【0021】
前記多価アルコール系化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、エリトリトール、アドニトール、トレイトール、アラビトール及びタリトールよりなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物に含まれるアルカリ金属水酸化物は高アルカリ性を有する。これにより、高分子の有機汚染物またはオイル性有機化合物を低分子量化させ、ガラス基板に対する剥離性を高めてガラス基板に対する洗浄力を付与する。
【0023】
前記アルカリ金属水酸化物は、組成物の総重量に対して、0.05〜5重量%で含まれることが好ましく、0.1〜2重量%で含まれることがより好ましい。上述した範囲未満で含まれると、ガラス基板上に付着したパーティクルまたは有機汚染物を除去することが容易ではない。上述した範囲超過で含まれると、洗浄効果がもはや増加せず、洗浄液の価格が上昇して非経済的であり、環境的な問題を誘発するおそれもある。
【0024】
前記アルカリ金属水酸化物は、KOH、NaOH及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる1種であることが好ましい。その理由は高アルカリ性を与えるうえ、入手が容易で、経済的だからである。
【0025】
本発明の平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物に含まれる水は、脱イオン水を意味し、半導体工程用を使用し、好ましくは18MΩ・cm以上の水を使用する。組成物の総重量に対して、前記水は本発明の洗浄剤組成物の総重量が100重量%となるように残量含まれる。
【0026】
本発明の平板表示装置のガラス基板用洗浄剤組成物は、前述した成分以外に通常の添加剤をさらに含むことができ、前記添加剤としては金属イオン封鎖剤及びpH調節剤などを挙げることができる。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物は、平板表示装置のガラス基板の表面に対する有機物汚染物及びパーティクルの除去力に優れる。本発明の洗浄剤組成物は、リンス後に残留物がなく、多量の脱イオン水を含むので、取り扱いが容易で環境的にも有利である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び試験例によって本発明をさらに詳細に説明する。ところが、本発明の範囲は下記の実施例及び試験例によって限定されるものではない。
【0029】
−実施例1〜17及び比較例1〜4:洗浄剤組成物の製造−
攪拌器が設置されている混合槽に、下記表1に記載された成分を表1に記載の組成比によって混合し、常温で1時間500rpmの速度で攪拌して洗浄剤組成物を製造した。
【0030】
【表1】

【0031】
−試験例:洗浄剤組成物の特性評価−
<大気中汚染物の除去力の評価>
実施例1〜17及び比較例1〜4の洗浄剤組成物100mLをそれぞれ容量250mLのビーカーに入れた。一方、汚染物の除去力評価のために5cm×5cmのサイズに形成されたガラス基板を大気中に3日間放置させて汚染させた。
【0032】
前記汚染した基板を、スプレー式ガラス基板洗浄装置を用いて1分間室温で実施例1〜17及び比較例1〜4の洗浄剤組成物で洗浄した。洗浄の後、超純水で30秒間洗浄した後、窒素で乾燥させた。汚染物の除去度合いは接触角測定装置を用いて洗浄前と洗浄後の接触角減少量で評価し、その結果を表2に示した。
【0033】
<有機汚染物の除去力の評価>
有機汚染物の除去力評価のために5cm×5cmのサイズに形成されたガラス基板上にヒトの指紋跡で汚染させ、汚染した基板を、スプレー式ガラス基板洗浄装置を用いて2分間室温で実施例1〜17及び比較例1〜4の洗浄剤組成物で洗浄した。洗浄の後、超純水で30秒間洗浄した後、窒素で乾燥させた。汚染物の除去度合いは接触角測定装置を用いて洗浄前と洗浄後の接触角減少量で評価した。その結果を表2に示した。
【0034】
<パーティクルの除去力の評価>
ガラス基板を平均粒径0.8μmの有機パーティクルソリューションで汚染させ、1分間3000rpmでスピンドライした後、スプレー式ガラス基板洗浄装置を用いて2分間室温で実施例3、実施例4、実施例9、実施例10、実施例17、比較例2及び比較例4の洗浄剤組成物で洗浄した。洗浄の後、超純水で30秒間洗浄し、窒素で乾燥させた。洗浄前後のパーティクル数は表面粒子測定器(Topcon WM−1500)で0.3μm以上のパーティクル数を測定し、その結果を表3に示した。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
表2及び表3を参照すると、実施例1〜実施例17の洗浄剤組成物を用いると、全ての汚染物の除去力があることを示し、接触角が30°以上減少して有機汚染物の除去能力を示し、パーティクル除去力にも優れることが分かる。これに対し、比較例1〜4の洗浄剤組成物の場合、全ての汚染物ではなく特定の汚染物に対してのみ洗浄能力があり、パーティクル除去率にも優れないことが分かる。
【0038】
一方、図1は実施例9の洗浄剤組成物を用いて洗浄前の接触角を示す写真である。図2は実施例9の洗浄剤組成物を用いて洗浄後の接触角を示す写真である。
【0039】
図1及び図2を参照すると、前条前後の接触角が減少して大気中の汚染物が効果的に除去されたことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表されるテルペン系オイルに酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤と、
多価アルコール系化合物と、
アルカリ金属水酸化物と、
水とを含み、pH12〜pH14であることを特徴とする、平板表示装置ガラス基板用洗浄剤組成物:
【化1】

式中、AOはオキシエチレン基、オキシプロピレン基またはポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体であり、nは1〜40である。
【請求項2】
組成物の総重量に対して、
前記化学式1で表されるテルペン系オイルに酸化アルキレンが付加された非イオン性界面活性剤0.01〜5重量%、
前記多価アルコール系化合物0.01〜5重量%、および
前記アルカリ金属水酸化物0.05〜5重量%を含有し、
残部は前記水からなることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置ガラス基板用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記多価アルコール系化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、エリトリトール、アドニトール、トレイトール、アラビトール及びタリトールよりなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置ガラス基板用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記アルカリ金属水酸化物はKOH、NaOH及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる1種であることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置ガラス基板用洗浄剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−509482(P2013−509482A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536672(P2012−536672)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007416
【国際公開番号】WO2011/052988
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(506171277)ドンウー ファイン−ケム カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】