説明

平滑化フィルタ装置および速度検出装置

【課題】暴れを有する時系列データをデータの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化することが可能な平滑化フィルタ装置およびそれを用いた速度検出装置を提供する。
【解決手段】時系列的に離散的に入力される物理量Xのデータを平滑化して出力する平滑化フィルタ装置1は、加算割合Pを決定する加算割合決定手段2と、今回入力された物理量Xのデータの入力値Xin(t)と所定周期前の出力値Xout(t-1)とを加算割合Pにより重み付け加算して算出した出力値Xout(t)を出力する平滑化手段3と、出力値の時間微分dXout(t)を算出して、出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)を算出する時間微分平滑化値算出手段4とを備え、加算割合決定手段2は、入力値の時間微分dXin(t)を算出し、算出した入力値の時間微分dXin(t)と時間微分平滑化値算出手段4が算出した出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)に基づいて加算割合Pを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑化フィルタ装置および速度検出装置に係り、特に、入力された物理量のデータを平滑化する平滑化フィルタ装置とそれを用いて物体の速度を検出する速度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車や貨物自動車等の車両では、自車両前方を撮像した画像の解析やレーダ装置による計測等により先行車両との距離や相対速度を検出して、自動的に自車両の加減速制御を行う先行車両追従装置や衝突防止装置の開発が進められている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
このような制御を確実に行うためには、自車両と先行車両との距離や相対速度等を正確にかつ遅れなく検出することが必要となる。しかし、実際には、例えば相対速度を車速センサを用いて検出したり時系列データとして検出した距離の時間的な差分から検出したりする場合、センサ自体が有する誤差や精度或いは検出した距離の精度や誤検出された結果等のために、図23に模式的に示すように、時系列データとして検出された相対速度に、その値が大きく上下するいわゆる暴れが生じる。
【0004】
このように値が上下に大きく暴れる時系列データをそのまま制御に用いることはできないため、このような時系列データの暴れを抑えることを目的として、データをカルマンフィルタや移動平均フィルタ、時定数フィルタ等の平滑化フィルタで平滑化することが一般的に行われている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−69598号公報
【特許文献2】特開2006−188155号公報
【特許文献3】特開2001−242242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図23に例示した暴れを有するデータでは、平滑化フィルタを用いることにより図24に曲線Aで示されるようにデータの暴れの振幅の中心付近を通るようなデータに平滑化されることが望まれる。しかしながら、前記のような平滑化フィルタを用いた平滑化では、通常、そのフィルタの特性によりそれぞれ特徴を持った平滑化がなされる。
【0006】
例えば前記の3種類の平滑化フィルタのうち、移動平均フィルタや時定数フィルタを用いた場合には、通常、理想的な平滑化曲線Aに比べて時間遅れをもって変化する曲線B、すなわち図24の例では時系列データにあわせて減少していく平滑化曲線Aと比較してΔTだけ時間的に遅れて減少していく曲線Bのようにデータが平滑化される。
【0007】
曲線Bのように時間遅れをもって平滑化された結果に基づいて自車両の自動制御が行われると、例えばこの時系列データが相対速度のデータである場合には、ある時刻における相対速度が平滑化曲線Aで表される実際の相対速度よりも大きな相対速度であると判断されて大きな制動が自動的に加わり、ドライバに違和感を与えるとともに、車間をつめるために不必要な加速を強いることとなる。
【0008】
また、この時系列データが自車両と先行車両との距離のデータである場合には、ある時刻における距離が平滑化曲線Aで表される実際の距離よりも大きな距離であると判断されて、今度は逆に必要な量の制動が加わらないため、ドライバが急ブレーキを踏んだり、最悪の場合には先行車両に追突するという事態を招いてしまう。
【0009】
一方、図24の時系列データにカルマンフィルタを適用して平滑化した場合には、通常、理想的な平滑化曲線Aに比べてデータの増減がより強調された曲線Cのようにデータが平滑化される。この場合、曲線Cに基づいて自車両の自動制御が行われると、時系列データが距離や相対速度のデータである場合には、その値が実際よりも大きく急激に変化したと認識されて急制動がかかるなどして、やはりドライバに違和感を与えたり、最悪の場合には先行車両に追突するという事態を招いてしまう。
【0010】
このように、暴れを有するデータを平滑化し、その平滑化したデータに基づいて自動制御等を行うような場合には、従来のカルマンフィルタや移動平均フィルタ、時定数フィルタ等の平滑化フィルタをそのまま用いることは必ずしも有効とはいえない。図24に示した理想的な平滑化曲線Aのように、暴れを有する時系列データをデータの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化することができる平滑化フィルタの開発が望まれる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、暴れを有する時系列データをデータの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化することが可能な平滑化フィルタ装置を提供することを目的とする。また、それを用いて物体の速度を的確に検出可能な速度検出装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の問題を解決するために、第1の発明は、
時系列的に離散的に入力される物理量のデータを平滑化して出力する平滑化フィルタ装置において、
加算割合を決定する加算割合決定手段と、
今回入力された前記物理量のデータの入力値と所定周期前の出力値とを前記加算割合により重み付け加算して算出した値を平滑化された前記物理量のデータの出力値として出力する平滑化手段と、
前記出力値の時間微分を算出して、前記出力値の時間微分の平滑化値を算出する時間微分平滑化値算出手段と
を備え、
前記加算割合決定手段は、前記入力値の時間微分を算出し、算出した前記入力値の時間微分と前記時間微分平滑化値算出手段が算出した前記出力値の時間微分の平滑化値に基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の平滑化フィルタ装置において、前記加算割合決定手段は、前記時間微分平滑化値算出手段が算出した前記出力値の時間微分の平滑化値に基づいて前記入力値の変化傾向を判定し、判定した前記入力値の変化傾向と前記入力値の時間微分との関係に基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第1の発明の平滑化フィルタ装置において、前記加算割合決定手段は、前記時間微分平滑化値算出手段が算出した前記出力値の時間微分の平滑化値を所定の係数で増幅した値と前記入力値の時間微分との差分を算出し、その差分に基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第3の発明の平滑化フィルタ装置において、前記所定の係数は、その所定の係数で前記出力値の時間微分の平滑化値を増幅した値が前記入力値の時間微分の振幅内に収まるように設定されることを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第3または第4の発明の平滑化フィルタ装置において、前記所定の係数は、正の値とされ、その所定の係数で前記出力値の時間微分の平滑化値を増幅した値が前記入力値の時間微分の振幅の端部付近の値となるように設定されることを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、第3から第5のいずれかの発明の平滑化フィルタ装置において、前記加算割合決定手段は、前記入力値に重み付けする前記加算割合を、前記差分の絶対値が小さいほど大きい値となるように決定することを特徴とする。
【0018】
第7の発明は、第6の発明の平滑化フィルタ装置において、前記加算割合決定手段は、複数の範囲に分割された前記差分の絶対値の範囲ごとに予め加算割合が割り当てられたテーブルを備え、前記テーブルに基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする。
【0019】
第8の発明は、第6の発明の平滑化フィルタ装置において、前記加算割合決定手段は、前記差分の絶対値についての単調減少関数を備え、前記単調減少関数に基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする。
【0020】
第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明の平滑化フィルタ装置において、前記加算割合決定手段は、前記入力値の入力回数が所定回数に満たない間は、前記加算割合を予め設定された一定値に決定することを特徴とする。
【0021】
第10の発明は、第1から第9のいずれかの発明の平滑化フィルタ装置において、前記時間微分平滑化値算出手段は、前記出力値の時間微分とその所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値とを所定の割合で重み付け加算して現在のサイクリング周期の前記出力値の時間微分の平滑化値を算出することを特徴とする。
【0022】
第11の発明は、第1から第10のいずれかの発明の平滑化フィルタ装置において、前記物理量のデータは、他の物理量を時間微分して算出される前記他の物理量の変化速度のデータであることを特徴とする。
【0023】
第12の発明は、第3から第10のいずれかの発明の平滑化フィルタ装置において、前記物理量のデータは、他の物理量を時間微分して得られる前記他の物理量の変化速度のデータであり、前記所定の係数は、前記他の物理量の値が小さいほど小さい値となるように可変させることを特徴とする。
【0024】
第13の発明は、第1から第10のいずれかの発明の平滑化フィルタ装置を用いて物体の速度を検出する速度検出手装置であって、
前記物理量のデータは前記物体の速度を測定する測定手段から入力される速度のデータであり、平滑化された前記速度を出力することを特徴とする。
【0025】
第14の発明は、第11または第12の発明の平滑化フィルタ装置を用いて物体の速度を検出する速度検出装置であって、
前記他の物理量は前記物体の距離を測定する測定手段から入力される距離であり、前記物理量のデータは前記距離を時間微分して得られる前記物体の速度のデータであり、平滑化された前記速度を出力することを特徴とする。
【0026】
第15の発明は、第13または第14の発明の速度検出装置において、前記速度は、自車両の車速であることを特徴とする。
【0027】
第16の発明は、第13または第14の発明の速度検出装置において、前記速度は、自車両と先行車両との相対速度であることを特徴とする。
【0028】
第17の発明は、第16の発明の速度検出装置において、前記時間微分平滑化値算出手段は、前記出力値の時間微分とその所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値とを所定の割合で重み付け加算して出力値の時間微分の平滑化値を算出する場合には、前記自車両と先行車両との距離が大きいほど前記所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値に重み付けする前記所定の割合を大きくすることを特徴とする。
【0029】
第18の発明は、第15から第17のいずれかの発明の速度検出装置において、
自車両が高速道路を走行していることを検出する手段を備え、
前記時間微分平滑化値算出手段は、前記手段により自車両が高速道路を走行していることが検出された場合には、前記出力値の時間微分とその所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値とを所定の割合で重み付け加算して出力値の時間微分の平滑化値を算出する際に、前記所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値に重み付けする前記所定の割合を大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
第1の発明によれば、平滑化フィルタ装置を、従来の平滑化フィルタのように時間遅れを生じることなく時系列データの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化するように構成するためには、データの入力値の変化傾向を的確に捉え、そのデータの変化傾向を平滑化された出力値に的確に反映させることが必要となる。
【0031】
本発明では、時間微分平滑化値算出手段で平滑化された出力値の時間微分をさらに平滑化しその平滑化値から入力値の全体的な変化傾向を把握する。そして、加算割合決定手段でこの出力値の時間微分の平滑化値から把握される入力値の全体的な変化傾向と同じ方向、すなわち例えば入力値の変化傾向が減少傾向にあれば物理量のデータを減少させる方向の入力値の加算割合が増大するように加算割合を決定する。そして、最後にその加算割合に基づいて平滑化手段で時定数フィルタ処理を行い、入力値を強調して所定周期前の出力値と重み付け加算する。
【0032】
このようにして物理量のデータの入力値の変化傾向を平滑化される出力値に的確に反映させることが可能となり、平滑化される出力値を入力値の変化傾向にあわせて的確に増減させることが可能となる。そのため、従来の移動平均フィルタや時定数フィルタ等の平滑化フィルタのように時間遅れを発生させることなく、また、カルマンフィルタのように必要以上にデータの増減を強調することなく、時系列データの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化された理想的な平滑化曲線を得ることが可能となる。
【0033】
第2の発明によれば、出力値の時間微分の平滑化値から入力値の変化傾向が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのか、或いはあまり変化しない傾向であるのかを判定し、例えばその傾向の分類に対応して予め加算割合が割り当てられたテーブル等に基づいて加算割合を決定する。そのため、前記発明の効果に加え、加算割合を簡単に求めることが可能となり、演算負荷の低減を図ることが可能となる。
【0034】
第3の発明によれば、入力値の全体的な変化傾向を表す出力値の時間微分の平滑化値を所定の係数で増幅した値と、入力値の時間微分との差分に基づいて加算割合を決定することで、出力値を算出するための時定数フィルタ処理において入力値を強調する度合を表す加算割合を差分という具体的な数値に基づいて決定することが可能となり、入力値を出力値に的確に反映させて、前記各発明の効果をより的確に発揮させることが可能となる。
【0035】
第4の発明によれば、出力値の時間微分の平滑化値を増幅させる前記所定の係数は、例えばそれをあまりに大きな値に設定すると、出力値の時間微分の平滑化値自体が有する暴れがより拡大されると同時に、出力値の時間微分の平滑化値を所定の係数で増幅した値と入力値の時間微分の値とが大きく異なる値となり、差分が有する有用性が弱まる。
【0036】
そのため、その所定の係数で出力値の時間微分の平滑化値を増幅した値が入力値の時間微分の振幅内に収まるように適切に設定されることで、出力値の時間微分の平滑化値自体が有する暴れの拡大を適切な範囲に収め、差分が有する有用性を維持した状態で差分に基づいて加算割合を決定することが可能となり、前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【0037】
第5の発明によれば、正の値の所定の係数により出力値の時間微分の平滑化値を増幅した値が入力値の時間微分の振幅の端部付近の値となるように設定される。この場合、出力値の時間微分の平滑化値を所定の係数で増幅した値と入力値の時間微分の差分の絶対値が小さくなるような入力値は、平滑化される出力値を入力値の変化傾向にあわせて的確に増減させるために強調されるべき入力値である。従って、その差分の絶対値と加算割合との対応づけが容易になり、前記第3の発明や第4の発明の効果がより的確に発揮される。
【0038】
第6の発明によれば、入力値に重み付けする加算割合を差分の絶対値が小さいほど大きい値となるように決定することで、差分と加算割合を非常に単純な対応づけにより対応づけることが可能となり、前記各発明の効果が的確かつ容易に発揮される。
【0039】
第7の発明によれば、加算割合決定手段に、複数の範囲に分割された差分の絶対値の範囲ごとに予め加算割合が割り当てられたテーブルを備えておき、入力値に重み付けする加算割合を差分の絶対値が小さいほど大きい値となるように加算割合を割り当て、そのテーブルに基づいて加算割合を決定するように構成すれば、前記各発明の効果をより的確にかつより容易に発揮することが可能となる。
【0040】
第8の発明によれば、加算割合決定手段に、差分の絶対値について単調に減少する関数を備えておき、その単調減少関数に基づいて加算割合を決定するように構成すれば、前記各発明の効果をより的確にかつより容易に発揮することが可能となる。
【0041】
第9の発明によれば、第1から第8のいずれかの発明の平滑化フィルタ装置において、 平滑化フィルタ装置の起動時などにはメモリに所定周期前の出力値の時間微分の平滑化値等の情報が保存されていなかったり、記憶されていても出力値の時間微分の平滑化値が安定していない場合がある。そのため、前記各発明の効果に加え、入力値の数が所定回数分に満たない間は加算割合を可変させずに予め設定された一定値に決定することで、平滑化フィルタ装置の起動時などに出力値を安定させて適切な値を出力させることが可能となり、装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【0042】
第10の発明によれば、入力値の変化傾向を表す出力値の時間微分の平滑化値を算出する際に、出力値の時間微分とその所定周期前の出力値の時間微分の平滑化値とを所定の割合で重み付け加算する時定数フィルタ処理により算出することで、出力値の時間微分の平滑化値が、入力値や入力値の時間微分の暴れに追随して暴れることなく、滑らかに推移するようになる。そのため、滑らかに推移する出力値により入力値の変化傾向を的確に把握して加算割合を決定することが可能となり、前記各発明の効果をより的確に発揮することが可能となる。
【0043】
第11の発明によれば、平滑化フィルタ装置は、前記各発明により、測定手段で測定され入力された物理量のデータを平滑化して出力することが可能であることは言うまでもないが、例えば測定手段が測定した物理量が時間微分されて形成されたその物理量の変化速度のデータを平滑化して出力するように構成することも可能である。そして、そのように構成された場合にも、前記各発明と同様に物理量の変化速度のデータの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化された理想的な平滑化曲線を得ることが可能となり、物理量の変化速度のデータに対して前記各発明の効果が的確に発揮される。
【0044】
第12の発明によれば、例えば自車両と先行車両との距離の測定値を時間微分して得られる変化速度である自車両と先行車両との相対速度を平滑化する場合、自車両と先行車両との距離が大きい場合には相対速度の暴れが大きくその時間微分である相対加速度の暴れも大きいが、自車両と先行車両との距離が小さくなるにつれて相対速度の暴れが小さくなり相対加速度の暴れも小さくなることがある。そのような場合、相対加速度の暴れの端部に沿うように設定された所定の係数で増幅された出力値の時間微分の平滑化値が、前記距離が小さくなってくると暴れの端部から離れてしまい、前記差分の有用性が弱まってしまう場合がある。
【0045】
そのため、そのような場合には、所定の係数を「他の物理量」である自車両と先行車両との距離の値が小さいほど小さい値となるように可変させるように構成すれば、所定の係数で増幅された出力値の時間微分の平滑化値が相対加速度の暴れの端部から離れてしまうことを防止することができ、差分の有用性を維持することが可能となり、前記各発明の効果がより効果的に発揮される。
【0046】
第13の発明によれば、第1〜第10の発明の平滑化フィルタ装置は、自動車やトラック等の車両や鉄道車両、航空機、船舶等の運輸手段或いはロボットや各種機械・機器等のように自ら移動し、他の物体等を移動し、或いは自己の内部部品を移動させることで観念される物体の速度を検出する速度検出装置に適用することができる。
【0047】
そして、速度検出装置を、物体の速度を測定する測定手段から入力される速度のデータに対して演算処理を行い、平滑化された速度を出力するように構成すれば、もともと暴れを有していた速度のデータを、そのデータの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化された速度として出力することが可能となり、速度検出装置により物体の速度を的確に検出することが可能となる。
【0048】
第14の発明によれば、第11または第12の発明の平滑化フィルタ装置は、自動車やトラック等の車両や鉄道車両、航空機、船舶等の運輸手段或いはロボットや各種機械・機器等のように他の物体との距離を把握し、その把握された距離を時間微分して物体の速度を検出する速度検出装置に適用することができる。
【0049】
そして、速度検出装置を、他の物理量として測定手段から入力される距離のデータを時間微分して物体の速度を算出し、その速度に対して演算処理を行い、平滑化された速度を出力するように構成すれば、もともと暴れを有していた速度のデータを、そのデータの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化された速度として出力することが可能となり、速度検出装置により物体の速度を的確に検出することが可能となる。
【0050】
第15の発明によれば、前記の速度検出装置においては、平滑化される速度が自車両の車速である場合にも前記各発明の効果が効果的に発揮される。
【0051】
第16の発明によれば、前記の速度検出装置においては、平滑化される速度が自車両と先行車両との相対速度である場合にも前記各発明の効果が効果的に発揮される。
【0052】
第17の発明によれば、平滑化される速度が自車両と先行車両との相対速度である場合には、自車両と先行車両との距離が大きい場合に距離が小さい場合に比べて相対加速度が比較的大きく暴れることがあり、前記所定の割合を一定に維持したままであると出力値の時間微分の平滑化値も比較的大きく暴れてしまう場合がある。
【0053】
そのため、第17の発明の構成とすれば、所定の割合を一定のままに維持した場合に比べて出力値の時間微分の平滑化値の暴れをより少なくすることが可能となり、出力値の時間微分の平滑化値を滑らかに推移させて、相対速度のデータの変化傾向を的確に把握することが可能となる。そのため、平滑化フィルタ装置の機能が的確に発揮され、それを用いた速度検出装置についての前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【0054】
第18の発明によれば、自車両が高速道路を走行している場合には、通常の道路を走行している場合に比べて自車両と先行車両との相対速度の増減の程度がさほど大きくなく、相対加速度が比較的安定して推移する傾向がある。従って、速度検出装置に自車両が高速道路を走行していることを検出する手段を備え、第18の発明の構成とすれば、出力値の時間微分の平滑化値の暴れをより少なくすることが可能となり、出力値の時間微分の平滑化値を滑らかに推移させて、相対速度のデータの変化傾向を的確に把握することが可能となる。そのため、平滑化フィルタ装置の機能が的確に発揮され、それを用いた速度検出装置についての前記各発明の効果がより的確に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明に係る平滑化フィルタ装置およびそれを用いた速度検出装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0056】
[第1の実施の形態]
まず、平滑化フィルタ装置について説明する。平滑化フィルタ装置1は、図示しないCPUやROM、RAM等がバスに接続されたマイクロコンピュータより構成されている。
【0057】
本実施形態に係る平滑化フィルタ装置1は、図1に示すように、主に加算割合決定手段2と、平滑化手段3と、時間微分平滑化値算出手段4と、メモリ5とを備えて構成されている。平滑化フィルタ装置1は、所定のサンプリング周期で時系列的かつ離散的に所定の物理量Xのデータが入力値Xin(t)としてI/Oインターフェース6を介して入力されると、以下に説明する演算処理を行った後、その物理量Xのデータの平滑化された値を出力値Xout(t)として出力するようになっている。
【0058】
ここで、本実施形態では、変数tはサンプリングタイミングを表す変数であり、以下では、tは今回すなわち所定の物理量Xの時系列データのうち入力値Xin(t)が入力されたサンプリングタイミングを表し、t−1は前回すなわち今回のサンプリングタイミングtの1周期前のサンプリングタイミングを表すものとする。
【0059】
以下、図2に示すフローチャートに従って平滑化フィルタ装置1の加算割合決定手段2、平滑化手段3および時間微分平滑化値算出手段4の構成と演算処理について説明する。
【0060】
まず、装置全体の演算処理の流れを概説すると、平滑化フィルタ装置1は、加算割合決定手段2で物理量Xのデータの時間微分に基づいて加算割合Pを決定し(ステップS2〜S5)、平滑化手段3で加算割合Pを用いて今回の入力値Xin(t)と前回の出力値Xout(t-1)との重み付け加算により物理量Xのデータを平滑化して今回の出力値Xout(t)を算出するようになっている(ステップS6)。
【0061】
つまり、平滑化手段3では後述する(3)式に示すように時定数フィルタの手法を用いて物理量Xのデータの平滑化が行われるが、その際、従来の時定数フィルタのように時定数すなわち加算割合Pを一定の値に固定するのではなく、加算割合Pを加算割合決定手段2で今回入力された物理量Xのデータの時間微分に基づいて可変させ、各サンプリングタイミングtで可変させることで、平滑化を適切に行うようになっている。
【0062】
また、平滑化フィルタ装置1の時間微分平滑化値算出手段4では、次回の加算割合Pを決定するために前回の出力値Xout(t-1)の時間微分の平滑化値dXs(t-1)を算出するようになっている(ステップS7〜S9)。
【0063】
以下、詳しく説明する。なお、後述するように、メモリ5には、前回の出力値Xout(t-1)と前回の演算処理で算出した出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)とが保存されている。
【0064】
加算割合決定手段2は、今回のサンプリングタイミングtで物理量Xのデータの入力値Xin(t)が入力されると(ステップS1:YES)、メモリ5から前回の出力値Xout(t-1)を読み出して、下記(1)式に従って入力値の時間微分dXin(t)を算出するようになっている(ステップS2)。ここで、Δtはサンプリング周期を表す。
dXin(t)=(Xin(t)−Xout(t-1))/Δt …(1)
【0065】
入力される物理量Xのデータが例えば図23に示したような時系列的な暴れを有するデータである場合、算出される入力値の時間微分dXin(t)も図3に示すように時系列的な暴れを有する波形となる。
【0066】
加算割合決定手段2は、続いて、メモリ5から前回のサンプリングタイミングで算出された出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)を読み出して、平滑化値dXs(t-1)を所定の係数Kで増幅するようになっている(図2のステップS3)。ここで、本実施形態では、係数Kは正の値とする。
【0067】
本実施形態では、前記所定の係数Kは予め設定されるようになっている。平滑化フィルタ装置1に入力される物理量Xのデータの入力値Xin(t)の暴れの具合はその物理量Xのデータを測定するセンサ等の測定装置により種々であり、平滑化フィルタ装置1が適用される測定装置に応じて適宜設定されることが必要となる。
【0068】
物理量Xのデータとして、ある測定装置から例えば図23に示したような時系列的な暴れを有するデータが入力され、図3に示すような入力値Xin(t)の時間微分dXin(t)が得られるとする。この場合、図4に示すように係数Kで出力値Xout(t-1)の時間微分の平滑化値dXs(t)を増幅した値dXs(t)×Kが入力値の時間微分dXin(t)の暴れの振幅の上端および下端の内側に収まるように係数Kの値が設定されることが好ましい。
【0069】
本実施形態では、特に、係数K倍された平滑化値dXs(t)すなわちdXs(t)×Kが入力値の時間微分dXin(t)の暴れの振幅の下端にほぼ沿う状態になるように係数Kの値が設定されている。
【0070】
加算割合決定手段2は、続いて、下記(2)式に従って前記(1)式で算出した入力値の時間微分dXin(t)と、前回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)を所定の係数Kで増幅した値dXs(t-1)×Kとの差分D(t)を算出するようになっている(図2のステップS4)。
D(t)=dXin(t)−dXs(t-1)×K …(2)
【0071】
加算割合決定手段2は、続いて、算出した差分D(t)に基づいて後述する平滑化手段3での重み付け加算に用いられる加算割合Pを決定するようになっている(ステップS5)。本実施形態では、加算割合決定手段2は、差分D(t)の絶対値|D(t)|が小さいほど加算割合Pが大きい値となるように決定するように構成されている。
【0072】
具体的には、例えば差分D(t)が加速度のディメンジョンを有する場合、加算割合決定手段2には、図5に示すような差分の絶対値|D(t)|の複数の範囲に分割して各範囲ごとに加算割合Pが割り当てられたテーブルが備えられていれば、算出した差分D(t)とこのテーブルとに基づいて加算割合Pを決定することが可能となる。本実施形態では、加算割合決定手段2はこのようなテーブルを備えている。
【0073】
なお、図5中、Gは標準重力加速度を表す。また、本実施形態のようにテーブルを準備しておく代わりに、例えば差分の絶対値|D(t)|を変数とする単調減少関数を備えておき、この単調減少関数に基づいて加算割合Pを決定するように構成することも可能である。
【0074】
加算割合決定手段2は、以上のようにして決定した加算割合Pを平滑化手段3に送信するようになっている。
【0075】
平滑化手段3は、加算割合決定手段2で決定された加算割合Pを用いて下記(3)式に従って今回の入力値Xin(t)と前回の出力値Xout(t-1)との重み付け加算により物理量Xのデータを平滑化して今回の出力値Xout(t)を算出するようになっている(図2のステップS6)。
Xout(t)=Xout(t-1)×(1−P)+Xin(t)×P …(3)
【0076】
平滑化手段3は、このようにして算出した今回の出力値Xout(t)を出力するとともに(ステップS6)、時間微分平滑化値算出手段4に送るようになっている。
【0077】
時間微分平滑化値算出手段4は、次回の加算割合決定手段2における演算処理で用いるために、平滑化手段3で算出された出力値Xout(t)に基づいて、前述した出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)を算出するようになっている。
【0078】
具体的には、時間微分平滑化値算出手段4は、まず、平滑化手段3から送信されてきた今回の出力値Xout(t)とメモリ5から読み出した前回の出力値Xout(t-1)とを用いて、下記(4)式に従って出力値の時間微分dXout(t)を算出するようになっている(ステップS7)。なお、Δtは前記(1)式の場合と同様にサンプリング周期を表す。
dXout(t)=(Xout(t)−Xout(t-1))/Δt …(4)
【0079】
時間微分平滑化値算出手段4は、続いて、算出した出力値の時間微分dXout(t)とメモリ5から読み出した前回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)に基づいて、今回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)を算出するようになっている(ステップS8)。
【0080】
この今回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)の算出においては、種々の平滑化手法を用いることが可能であり、前述したカルマンフィルタや移動平均フィルタ、時定数フィルタ等の平滑化フィルタを用いることができる。
【0081】
本実施形態では、時間微分平滑化値算出手段4は、今回算出した出力値の時間微分dXout(t)と前回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)とに基づいて、下記(5)式に示される時定数が固定された時定数フィルタで重み付け加算して今回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)を算出するようになっている。
dXs(t)=dXs(t-1)×0.95+dXout(t)×0.05 …(5)
【0082】
時間微分平滑化値算出手段4は、今回の出力値Xout(t)と算出した今回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)とを、次回の加算割合決定手段2における演算処理のために「前回の出力値Xout(t-1)」および「前回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)」としてそれぞれメモリ5に上書き保存するようになっている(ステップS9)。
【0083】
なお、上記の本実施形態の平滑化フィルタ装置1の構成から分かるように、平滑化フィルタ装置1の起動時などには、メモリ5に前回の出力値Xout(t-1)や前回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)が保存されていなかったり、前回の出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)が安定しない場合がある。
【0084】
そのため、本実施形態では、加算割合決定手段2は、入力される物理量Xのデータの入力値Xin(t)の数が予め設定された所定回数分に満たない間は、加算割合Pを例えば0.1等の予め設定された一定値に決定するようになっている。
【0085】
次に、本実施形態に係る平滑化フィルタ装置1の作用について説明する。
【0086】
本実施形態に係る平滑化フィルタ装置1では、平滑化手段3で、前記(3)式に示したように時定数フィルタの手法を用いて物理量Xのデータの平滑化が行われるが(ステップS6)、その際に用いられるフィルタの時定数すなわち加算割合Pを加算割合決定手段2で物理量Xのデータの時間微分に基づいて可変させる(ステップS2〜S5)。また、時間微分平滑化値算出手段4では次回の演算処理のために出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)を算出する(ステップS7〜S9)。
【0087】
前述したように、移動平均フィルタや時定数フィルタ等の従来の平滑化フィルタでは、図24に示したようにデータの暴れの振幅の中心付近を通る理想的な平滑化曲線Aに対して時間遅れΔTをもって物理量Xのデータが平滑化される。そのような時間遅れを解消し、減少傾向や増加傾向を示しているデータを図24の平滑化曲線Aのように理想的に平滑化するためには、(i)データの入力値Xin(t)が減少傾向にあるのか、増加傾向にあるのか、或いはあまり変化しない傾向にあるのか等の入力値Xin(t)の変化傾向を的確に捉え、(ii)そのデータの変化傾向を平滑化された出力値Xout(t)に的確に反映させることが必要となる。
【0088】
本実施形態に係る平滑化フィルタ装置1では、まず、(i)の入力値Xin(t)の変化傾向を、前述した時間微分平滑化値算出手段4におけるステップS7、S8の演算処理で装置1から出力された出力値Xout(t)の時間微分dXout(t)を算出し、それをさらに平滑化して平滑化値dXs(t-1)を算出して追跡する。
【0089】
入力値Xin(t)の変化傾向を出力値Xout(t)の時間微分で判定するのは一見矛盾するようだが、図23に示したように入力値Xin(t)が時系列的な暴れを有する場合、その時間微分dXin(t)も図3、図4に示すようにサンプリングタイミングtごとにその値が正になったり負になったり時系列的に暴れるため、入力値Xin(t)の時間微分dXin(t)を入力値Xin(t)の変化傾向の判定にそのまま使用できない。
【0090】
そこで、本実施形態では、入力値Xin(t)の値を平滑化した出力値Xout(t)を用い、その時間微分dXout(t)の平滑化値dXs(t)から入力値Xin(t)の全体的な変化傾向を判定することとしている。
【0091】
次に、(ii)の前記のようにして判定した入力値Xin(t)の変化傾向を出力値Xout(t)に的確に反映させる手法として、本実施形態に係る平滑化フィルタ装置1では、前記入力値の変化傾向すなわちそれを表す出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)を加味して前記(3)式の加算割合Pの値を可変させる手法が用いられている。
【0092】
具体的には、(i)で述べた入力値Xin(t)の全体的な変化傾向を表す平滑化値dXs(t)を所定の係数Kで増幅し、それと現在の入力値Xin(t)の時間的変化を表す時間微分dXin(t)との差分D(t)を算出し、その差分の絶対値|D(t)|に応じて加算割合Pを決定する。
【0093】
本実施形態では、特に、図4に示したように平滑化値dXs(t)のK倍が入力値の時間微分dXin(t)の暴れの振幅の下端に沿う状態となるように係数Kの値が設定されており、|D(t)|が小さいほど加算割合Pが大きくなり、|D(t)|が大きいほど加算割合Pが小さくなるように決定される。
【0094】
つまり、例えば図4の領域R2のように、入力値Xin(t)の全体的な変化傾向を表す平滑化値dXs(t)が負の値となり入力値Xin(t)が全体的に減少傾向を示している場合、現在の入力値の時間微分dXin(t)がdXs(t)×Kに近く、入力値の時間微分dXin(t)の暴れの振幅の下端に近く大きく負側に振れているときに入力値Xin(t)の加算割合Pを大きくして出力値Xout(t)に対する入力値Xin(t)の寄与度を大きくする。
【0095】
入力値の時間微分dXin(t)が負の値であれば今回の入力値Xin(t)は前回の出力値Xout(t-1)よりも小さい場合が多いから、この入力値Xin(t) の加算割合Pを大きくして出力値Xout(t)に対する入力値Xin(t)の寄与度を大きくすることで、従来のように加算割合Pを固定した場合よりも大きく今回の出力値Xout(t)を前回の出力値Xout(t-1)に対して減少させることができる。
【0096】
つまり、本実施形態では、入力値Xin(t)の全体的な変化傾向を表す平滑化値dXs(t)が負の値となり入力値Xin(t)が全体的に減少傾向を示している場合に、入力値Xin(t) の加算割合Pをより増大させて出力値Xout(t)に対する入力値Xin(t)の寄与度を大きくすることで、出力値Xout(t)の減少傾向がより強調されるようになる。そのため、図6に示すように、出力値Xout(t)が、加算割合Pを固定した場合に平滑化された出力値Bよりも減少側に押し下げられて、理想的な平滑化曲線Aを描くようになる。
【0097】
一方、例えば図4の領域R1のように、入力値Xin(t)が全体的にあまり変化しない傾向を示している場合、出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)は0に近い値であり、dXs(t)×Kも0に近い値となる。そのため、現在の入力値の時間微分dXin(t)が0に近いほど差分の絶対値|D(t)|が小さくなって加算割合Pが大きくなる。つまり、前回の出力値Xout(t-1)とそれほど値が変わらない今回の入力値Xin(t)の出力値Xout(t)に対する寄与度が大きくなる。
【0098】
また、入力値の時間微分dXin(t)が正の方向や負の方向に大きく出ても|D(t)|が大きく出力値Xout(t)に対する入力値Xin(t)の寄与度は小さく、その出現頻度も正負ともに同程度であるから、時間微分dXin(t)が正の方向や負の方向に大きく出るような入力値Xin(t)の出力値Xout(t)に対する影響は小さいものとなる。
【0099】
そのため、図4の領域R1のように入力値Xin(t)が全体的にあまり変化しない傾向を示している場合には、入力値Xin(t)が時系列的に暴れても、出力値Xout(t)は暴れが小さく全体的にはあまり変化しない値を取り続けるようになる。
【0100】
他方、例えば図4の領域R3のように、入力値Xin(t)の全体的な変化傾向が減少傾向からあまり変化しない傾向に変わるような場合、時間微分dXin(t)が正の方向に大きく出る入力値Xin(t)の加算割合Pの値自体はそれほど大きくない。
【0101】
しかし、減少傾向を示していた領域R2に比べて、前回の出力値Xout(t-1)よりも大きな値の入力値Xin(t)が入力される頻度が増大するため、前記(3)式に従って次第に出力値Xout(t)も減少傾向からあまり変化しない傾向に変わっていき、出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)も0に近づいていく。
【0102】
このようにして、本実施形態に係る平滑化フィルタ装置1は、入力値Xin(t)があまり変化しない傾向にあるときは平滑化された出力値Xout(t)もあまり変化しない傾向を示し、入力値Xin(t)が減少傾向にあるときは平滑化された出力値Xout(t)も減少傾向を示し、しかも入力値Xin(t)の減少傾向に理想的に追従して減少する平滑化された出力値Xout(t)を出力することが可能となる。
【0103】
なお、上記の例では、物理量Xのデータの入力値Xin(t)の全体的な変化傾向が図23に示すように減少傾向にある場合について述べたが、例えば、図7に示すように物理量Xのデータの入力値Xin(t)の全体的な変化傾向が増加傾向にある場合も何ら前記構成を変更することなく同様に出力値Xout(t)の理想的な平滑化を行うことができる。
【0104】
すなわち、図7に示すように入力値Xin(t)の全体的な変化傾向が増加傾向にある場合には、図8に示すように出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)も正の値をとるようになる。その際、本実施形態のように、入力値Xin(t)が全体的に減少傾向を示し平滑化値dXs(t)が負の値をとるときに図4に示したようにdXs(t)×Kが入力値の時間微分dXin(t)の暴れの振幅の下端にほぼ沿う状態になるように係数Kの値が設定されていれば、平滑化値dXs(t)も正の値をとる場合には、図8に示すように、dXs(t)×Kは入力値の時間微分dXin(t)の暴れの振幅の上端にほぼ沿う状態となる。
【0105】
そして、前記と同様に差分D(t)を算出し、その絶対値|D(t)|と加算割合Pとの関係を設定すれば、入力値Xin(t)が全体的に増加傾向にある場合には、図9に示すように、出力値Xout(t)が、加算割合Pを固定した場合に平滑化された出力値Bよりも増加側に押し上げられて、理想的な平滑化曲線Aを描くようになる。また、入力値Xin(t)があまり変化しない傾向にある場合や、増加傾向にあった入力値Xin(t)があまり変化しない傾向に変化する場合も前記減少傾向の場合と同様に説明され、良好に入力値Xin(t)を平滑化することができる。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る平滑化フィルタ装置1によれば、出力値の時間微分dXout(t)を平滑化した平滑化値dXs(t)を算出し、それに基づいて物理量Xのデータの入力値Xin(t)の変化傾向を的確に捉えることが可能となる。また、それと同時に、例えば平滑化値dXs(t)を所定の係数Kで増幅した値と入力値の時間微分dXin(t)との差分に基づいて加算割合Pを決定するなどして入力値の時間微分dXin(t)と平滑化値dXs(t)に基づいて出力値Xout(t)の算出に用いる加算割合Pを決定することで、データの入力値Xin(t)の変化傾向を平滑化される出力値Xout(t)に的確に反映させることが可能となる。
【0107】
そのため、平滑化される出力値Xout(t)を入力値Xin(t)の変化傾向にあわせて的確に増減させることが可能となり、従来の移動平均フィルタや時定数フィルタ等の平滑化フィルタのように時間遅れを発生させることなく、図24に示した理想的な平滑化曲線Aのように、暴れを有する時系列データをデータの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化することが可能となる。
【0108】
また、前記所定の係数Kを適切に設定したり、差分の絶対値|D(t)|と加算割合Pとの関係を適切に設定すれば、従来のカルマンフィルタのようにデータの増減を必要以上に強調させて出力値Xout(t)が入力値Xin(t)の変化傾向に的確には符合しない平滑化を行うことを防止し、理想的な平滑化曲線Aを出力することが可能な平滑化フィルタ装置とすることが可能となる。
【0109】
さらに、移動平均フィルタでは、平均をとるための所定のサンプリング回数分の過去の入力値Xin(t-1)〜Xin(t-n)をメモリ5に保存しておく必要があるが、本実施形態では、メモリ5に保存しておくのは前回の出力値Xout(t-1)と平滑化値dXs(t-1)のみであり、メモリ5の使用効率の低減させることができるという副次的な効果もある。
【0110】
なお、加算割合Pの決定手法、すなわち所定の係数Kの設定手法や、その係数Kに基づいて算出される差分D(t)と加算割合Pとの関係の設定手法は、本実施形態の手法に限定されない。
【0111】
前述の説明から分かるように、極端に言えば、物理量Xのデータの入力値Xin(t)の変化傾向が増加傾向であるか、減少傾向であるか、或いはあまり変化しない傾向であるかさえ分かれば、それに応じて加算割合Pの可変のさせ方を変えて的確な平滑化を行うことが可能となる。
【0112】
そのため、例えば、加算割合決定手段2を、時間微分平滑化値算出手段4が前回算出した出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)に基づいて入力値Xin(t)の変化傾向を分類して判定し、例えば図10に示すようなテーブルに基づいて加算割合Pの可変のさせ方を変更して加算割合Pを決定するように構成することも可能である。
【0113】
また、本実施形態では、入力された物理量Xのデータ自体を平滑化する平滑化フィルタ装置1について説明した。この平滑化フィルタ装置1は、例えば自車両の速度を測定する測定手段や平滑化フィルタ装置を搭載した装置と他の物体との相対速度を測定する測定手段から入力された速度や相対速度のデータXを平滑化して、平滑化された速度や相対速度を出力値Xout(t)として出力する。
【0114】
しかし、例えば、ある移動可能な装置の移動距離を測定する測定手段から距離Yのデータを入力し、入力された距離Yのデータの入力値Yin(t)を時間微分して速度Xin(t)を求め、算出した速度Xin(t)を平滑化し、平滑化された速度を出力値Xout(t)として出力するような平滑化フィルタ装置として構成することも可能である。
【0115】
また、例えば、ある装置と他の物体との距離を測定する測定手段から距離Yのデータを入力し、入力された距離Yのデータの入力値Yin(t)を時間微分して相対速度Xin(t)を求め、算出した相対速度Xin(t)を平滑化し、平滑化された相対速度を出力値Xout(t)として出力するような平滑化フィルタ装置として構成することも可能である。
【0116】
つまり、平滑化フィルタ装置を、平滑化して出力する物理量Xのデータとは別の物理量Yのデータから平滑化の対象とする物理量Xのデータを形成して、その物理量Xのデータを平滑化するように構成することも可能である。例えば、別の物理量Yのデータが入力されると、そのデータYを時間微分して物理量Yの変化速度である物理量のデータXを算出し、物理量Yの変化速度である物理量Xのデータを平滑化して出力するように構成することも可能である。
【0117】
この場合、図2にフローチャートは図11に示すフローチャートのように修正される。すなわち、メモリ5には、前回の出力値Xout(t-1)や出力値の時間微分の平滑化値dXs(t-1)のほか、前回の入力値Yin(t-1)も保存されており、平滑化フィルタ装置の加算割合決定手段2は、ステップ1に代わるステップS10で今回のサンプリングタイミングtでの物理量Yのデータの入力値Yin(t)が入力されると(ステップS10:YES)、メモリ5から前回の入力値Yin(t-1)を読み出す。
【0118】
そして、下記(6)式に従って入力値Yin(t)を時間微分して物理量Yのデータの変化速度dYin(t)を算出し、その変化速度dYin(t)をそれ以降の処理の対象となる物理量Xin(t)とする(ステップS11)。なお、Δtはサンプリング周期を表す。
Xin(t)=dYin(t)=(Yin(t)−Yin(t-1))/Δt …(6)
【0119】
Xin(t)は、前述した演算処理により加算割合決定手段2、平滑化手段3および時間微分平滑化値算出手段4で演算処理されて平滑化され(ステップS2〜S9)、平滑化された出力値Xout(t)が出力される。
【0120】
一方、加算割合決定手段2は、今回入力された物理量Yのデータの入力値Yin(t)を「前回の入力値Yin(t-1)」としてメモリ5に上書き保存し(ステップS12)、次回の入力値の時間微分dYin(t)すなわち物理量Xin(t)の算出処理に用いる。
【0121】
このように、物理量XのデータXin(t)が他の物理量Yを時間微分して算出される他の物理量Yの変化速度のデータYin(t)である場合でも、基本的に、前述した実施形態に他の物理量Yを時間微分し、算出した変化速度Yin(t)を処理の対象となる物理量Xin(t)とするという演算処理が加わるだけで、加算割合決定手段2や平滑化手段3、時間微分平滑化値算出手段4における他の演算処理は上記とまったく同様に行われるから、前述した実施形態の効果は本変形例においてもまったく同様に発揮される。
【0122】
なお、上記の例では、物理量XのデータXin(t)が入力されるごとに出力値Xout(t)を算出する構成について述べたが、物理量XのデータXin(t)が入力されるサンプリング周期に対して例えば2サンプリング周期ごとに出力値Xout(t)を算出するように構成してもよい。
【0123】
[第2の実施の形態]
本実施形態では、前記第1の実施形態に係る平滑化フィルタ装置を用いた速度検出装置について説明する。
【0124】
本実施形態では、前述した第1の実施形態の変形例を用いて、後述する測定手段により測定された自車両と先行車両との距離を時間微分して自車両と先行車両との相対速度を算出し、平滑化フィルタ装置でその相対速度を平滑化して検出し出力する速度検出装置について述べる。
【0125】
本実施形態に係る速度検出装置10は、図12に示すように、主に撮像手段11や変換手段12、画像処理手段15等で構成される測定手段18と、平滑化フィルタ装置22を含む検出手段19とで構成されている。
【0126】
なお、撮像手段11から検出手段19の立体物検出手段20までの構成は本願出願人により先に提出された特開平5−114099号公報、特開平5−265547号公報、特開平6−266828号公報、特開平10−283461号公報、特開平10−283477号公報、特開2006−72495号公報等に詳述されており、詳細な説明はそれらの公報に委ねる。以下、簡単に説明する。
【0127】
撮像手段11は、本実施形態では、互いに同期が取られたCCDやCMOSセンサ等のイメージセンサがそれぞれ内蔵され例えばルームミラー近傍に車幅方向に所定の間隔をあけて取り付けられた一対のメインカメラ11aおよびサブカメラ11bからなるステレオカメラであり、所定のサンプリング周期で車両前方の道路を含む風景を撮像して一対の画像を出力するように構成されている。一対のカメラのうちメインカメラ11aは、運転者に近い側のカメラであり、図13に示すような基準画像Tを撮像するようになっている。なお、サブカメラ11bで撮像された画像を比較画像という。
【0128】
メインカメラ11aとサブカメラ11bから出力された画像データは、変換手段12であるA/Dコンバータ12a、12bでアナログ画像から画素ごとに輝度値を有するデジタル画像にそれぞれ変換され、画像補正部13で、ずれやノイズの除去等の画像補正が行われ、画像データメモリ14に格納されると同時に検出手段19に送信されるようになっている。
【0129】
画像処理手段15のイメージプロセッサ16では、基準画像Tと比較画像の各画像データにステレオマッチング処理やフィルタリング処理を施して実空間上の距離に対応する視差dpを算出するようになっている。以下、視差dpが割り当てられた画像を距離画像という。このようにして算出された視差dpの情報すなわち距離画像は、画像処理手段15の距離データメモリ17に格納するようになっている。
【0130】
なお、視差dp、距離画像上の点(i,j)と、前記一対のカメラ11a、11bの中央真下の道路面上の点を原点とし、自車両の車幅方向をX軸方向、車高方向をY軸方向、車長方向をZ軸方向とした場合の実空間上の点(X,Y,Z)とは、下記(7)〜(9)式で表される座標変換により一意に対応づけられる。なお、下記各式において、CDは一対のカメラの間隔、PWは1画素当たりの視野角、CHは一対のカメラの取り付け高さ、IVおよびJVは自車両正面の無限遠点の距離画像上のi座標およびj座標、DPは消失点視差を表す。
X=CD/2+Z×PW×(i−IV) …(7)
Y=CH+Z×PW×(j−JV) …(8)
Z=CD/(PW×(dp−DP)) …(9)
【0131】
本実施形態では、以上の撮像手段11からイメージプロセッサ16や距離データメモリ17を含む画像処理手段15までで、自車両前方の所定領域内に存在する立体物までの自車両からの距離Zすなわち前記(9)式により距離Zと一意に対応づけられる視差dpを測定する測定手段18が構成されている。
【0132】
なお、本実施形態では、測定手段18は自車両前方に存在する立体物までの距離Zを測定できるものであればよく、本実施形態の他にも、例えば自車両前方にレーザ光や赤外線等を照射してその反射光の情報に基づいて立体物までの距離Zを測定するレーダ装置等で構成することも可能であり、検出の手法は特定の手法に限定されない。
【0133】
検出手段19は、図示しないCPUやROM、RAM、入出力インターフェース等がバスに接続されたマイクロコンピュータより構成されている。また、検出手段19には、車速センサやヨーレートセンサ、ステアリングホイールの操舵角を測定する操舵角センサ等のセンサ類Qが接続されている。なお、ヨーレートセンサの代わりに自車両の車速等からヨーレートを推定する装置等を用いることも可能である。
【0134】
検出手段19は、図12に示すように、立体物検出手段20と、先行車両検出手段21と、前述した平滑化フィルタ装置22とを備えており、さらに図示しないメモリを備えている。また、検出手段19の各手段には、センサ類Qから必要なデータが入力されるようになっている。
【0135】
立体物検出手段20は、本実施形態では、前述したように特開平10−283461号公報等に記載された車外監視装置等をベースに構成されている。詳細な説明はそれらの公報に委ねる。以下、簡単にその構成について説明する。
【0136】
立体物検出手段20は、距離データメモリ17から前述した距離画像を読み出して、距離画像を所定の画素幅で垂直方向に延びる短冊状の区分に分割する。そして、短冊状の各区分に属する各視差dpを前記(9)式に従ってそれぞれ距離Zに変換し、各距離Zのうち道路面より上方に存在すると位置付けられる距離に関してヒストグラムを作成して、度数が最大の区間までの距離をその短冊状の区分における立体物までの距離とする。これを全区分について行うようになっている。以下、各区分を代表する距離を距離Zという。
【0137】
例えば、図13に示した基準画像Tから作成された距離画像に対して前記距離Zの算出を行い、算出された各区分ごとの距離Zを実空間上にプロットすると、図14に示すように自車両前方の立体物の自車両MCに面した部分に対応する部分に多少バラツキを持って各点としてプロットされる。
【0138】
立体物検出手段20は、このようにプロットされる各点を図15に示すように近接する各点の距離や方向性に基づいて互いに隣接する各点をそれぞれグループG1〜G7にグループ化し、図16に示すようにそれぞれのグループ内の各点が自車両MCの車幅方向すなわちX軸方向に略平行に並ぶサブグループには“物体”O1〜O3とラベルし、各点が自車両MCの進行方向すなわちZ軸方向に略平行な並ぶサブグループには“側壁”S1〜S4とラベルして分類する。また、同一の立体物の“物体”と“側壁”の交点をコーナー点Cとしてラベルするようになっている。
【0139】
立体物検出手段20は、このようにして、[物体O1、コーナー点C、側壁S1]、[側壁S2]、[物体O2]、[物体O3]、[側壁S3]、[側壁S4]をそれぞれ立体物として検出するようになっている。立体物検出手段20は、このようにして検出した立体物の情報や各サブグループの端点の座標等をそれぞれメモリに保存するようになっている。
【0140】
先行車両検出手段21は、自車両の進行路上や自車両が走行している走行レーン上に存在する立体物の中で、自車両に最も近接する立体物を先行車両として検出するようになっている。本実施形態では、先行車両検出手段21は、自車両の進行路上に先行車両を検出するようになっていて、まず、センサ類Qである車速センサやヨーレートセンサ、舵角センサから入力される自車両の挙動すなわち自車両の車速Vやヨーレートγ、ステアリングホイールの舵角δ等に基づいて自車両の旋回曲率Cuaを算出して、図17に示すように自車両MCの走行軌跡Lestを算出するようになっている。
【0141】
旋回曲率Cuaは、例えば車速Vとヨーレートγとを用いて、
Cua=γ/V …(10)
に従って算出される。また、例えば車速Vと舵角δとを用いて、
Re=(1+Asf・V)・(Lwb/δ) …(11)
Cua=1/Re …(12)
に従って算出することもできる。ここで、Reは旋回半径、Asfは車両のスタビリティファクタ、Lwbはホイールベースである。
【0142】
先行車両検出手段21は、このようにして算出した走行軌跡を中心とする自車両の車幅分の領域を自車両の進行路Restとして把握し、その上に存在する立体物のうち自車両MCに最も近い物体O2を検出するようになっている。
【0143】
先行車両検出手段21は、さらに、前回検出された先行車両の情報をメモリから読み出し、前回検出した先行車両と今回検出した自車両に最も近接する立体物すなわち物体O2との位置関係や移動速度等に基づいて前回の先行車両と今回検出した立体物とが同一の立体物である確率をそれぞれ算出し、算出された確率が予め設定された閾値以上であれば今回検出した立体物を先行車両とラベル付けして先行車両を検出し、先行車両の情報を今回検出した立体物の情報で更新してメモリに継続登録することで、先行車両の情報を更新しながらそれを追跡するようになっている。
【0144】
なお、前述したように、先行車両検出手段21を、自車両MCが走行している走行レーン上に存在し自車両MCに最も近接する立体物として先行車両を検出するように構成することも可能である。自車両MCの走行レーンを検出するために必要な自車両MCの左右の区画線等の車線の位置を検出するための装置としては、例えば本願出願人により先に提出された特開2001−92970号公報に記載の車線認識装置等を用いることができる。
【0145】
平滑化フィルタ装置22には、先行車両検出手段21が検出した先行車両すなわちこの場合は物体O2と自車両MCとの距離Zが入力されるようになっている。この場合の物体O2の距離Zとしては、例えば車幅方向すなわちX軸方向に延在する物体O2の中心位置の自車両MCからのZ軸方向の距離Zが入力される。
【0146】
平滑化フィルタ装置22は、前記第1の実施形態において詳述した演算処理を行い、算出した自車両MCと先行車両O2との平滑化された相対速度を、最終的に速度検出装置10により検出された相対速度として装置外に出力するようになっている。具体的には、図11に示したフローチャートに従って加算割合決定手段2、平滑化手段3および時間微分平滑化値算出手段4で演算処理を行い、出力値Xout(t)である自車両MCと先行車両O2との相対速度を出力するようになっている。
【0147】
なお、この場合、物体O2と自車両MCとの距離Zが第1の実施形態における他の物理量Yin(t)に相当し、距離Zの時間微分である相対速度ΔVが他の物理量Yin(t)の時間微分dYin(t)すなわちXin(t)に相当し、出力される平滑化された相対速度ΔVが出力値Xout(t)に相当する。また、本実施形態では、出力値Xout(t)の算出に用いられる入力値の時間微分dXin(t)や出力値の時間微分dXout(t)、出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)はそれぞれ加速度[m/s]のディメンジョンを有する。
【0148】
次に、本実施形態に係る速度検出装置10の作用について説明する。
【0149】
上記のような本実施形態に係る速度検出装置10の構成では、例えばCCDカメラ等の撮像手段11の解像度等の影響で、自車両と先行車両との距離Zが実際には連続的に滑らかに変化しているにもかかわらず、あるサンプリングタイミングt−1で検出された距離Z=Yin(t-1)と次のサンプリングタイミングtで検出された距離Z=Yin(t)とが比較的大きく変化したように検出されることが多い。このような場合、その時間微分Xin(t)=dYin(t)である相対速度ΔVは比較的大きく変化して、相対速度ΔVのデータが時系列的に暴れを有するデータとなる。
【0150】
実際に、本実施形態の構成を備えた速度検出装置10により自車両と先行車両との距離Z=Yin(t)を測定すると、図18に示すように比較的滑らかに推移するデータが得られるが、その相対速度ΔVである時間微分dYin(t)=Xin(t)を前記(6)式に従って算出すると、図19に示すような比較的暴れの大きい時系列データXin(t)が得られる。
【0151】
さらに、平滑化フィルタ装置22の加算割合決定手段2で、自車両と先行車両との相対加速度に相当するXin(t)の時間微分dXin(t)を前記(1)式に従って算出すると、図20に示すような暴れの大きい時系列データdXin(t)が得られる。また、算出される出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)のK倍は同図に示すようにXin(t)の時間微分dXin(t)の暴れの振幅の下端にほぼ沿う状態で推移する。
【0152】
平滑化フィルタ装置22の加算割合決定手段2では、図21に示すようにこのdXin(t)とdXs(t-1)×Kとの差分D(t)の絶対値に応じて激しく増減する加算割合Pが決定される。そして、このように各サンプリングタイミングtごとに変動する加算割合Pすなわち時定数に基づいて、平滑化フィルタ装置22の平滑化手段3で前記(3)式で示される時定数フィルタによって相対速度ΔVに相当し暴れを有する時系列データであるXin(t)が平滑化され、図22に示すようなデータの暴れの振幅の中心付近の値に平滑化された出力値Xout(t)が出力される。
【0153】
なお、図22において、Xcom(t)は、比較例として、前記(3)式の時定数フィルタにおける加算割合Pを0.1に固定した従来の時定数フィルタによる演算結果を表したものである。
【0154】
以上のように、本実施形態に係る速度検出装置10によれば、平滑化フィルタ装置22が前記第1の実施形態における効果を的確に発揮して、自車両と先行車両との距離Zから得られた比較的暴れの大きい相対速度ΔV=Xin(t)の時系列データを有効に平滑化し、しかも、図22に示したように、データの暴れの振幅の中心付近の値に的確に平滑化された相対速度ΔV=Xout(t)を出力することが可能となる。
【0155】
そのため、この速度検出装置10の出力値Xout(t)を例えば先行車両追従装置に適用すれば、先行車両と自車両との適切な相対速度ΔVに基づいて適切な先行車両追従制御を行うことが可能となり、例えば図22に示した従来の時定数フィルタの出力値Xcom(t)に基づいて制御を行った場合に必要以上の制動が加わってドライバに違和感を与えたりドライバがそれに反発して車間をつめるために不必要な加速を強いることを有効に防止することが可能となる。
【0156】
なお、上記の第2の実施形態では、平滑化された自車両と先行車両との相対速度ΔVを出力するにあたって、自車両と先行車両との距離Zから相対速度ΔVを求める場合について説明した。しかし、本発明はこの場合に限定されず、例えばドップラーレーダ等の測定手段により自車両と先行車両との相対速度ΔVを直接測定し、測定された相対速度ΔVを平滑化フィルタ装置22により平滑化して検出し出力する場合についても適用される。
【0157】
その場合、速度検出装置の平滑化フィルタ装置22における演算処理は、図2に示したフローチャートに従って行われる。そして、図2のフローチャートにおいて入力値Xin(t)は自車両と先行車両との相対速度ΔVであり、出力値Xout(t)は平滑化された自車両と先行車両との相対速度ΔVとなる。
【0158】
また、本発明は、前述したような自車両と先行車両との相対速度ΔVの平滑化に限定されず、例えば自車両の車速Vの平滑化に適用することも可能である。自車両の車速Vの測定手段としては、例えば本願出願人により先に提出された特開2004−317206号公報に記載された自車両の車輪の回転を検出して車速Vを算出するパルス検出センサを用いることができる。
【0159】
さらに、上記の第2の実施形態では、速度検出装置を自動車やトラック等の車両に搭載する場合について説明したが、本実施形態に係る速度検出装置は、この他にも、例えば鉄道車両や航空機、船舶等の運輸手段や、ロボット、各種機械・機器等のように自ら移動し或いは他の物体等を移動させることで物体の速度を観念でき、その速度を測定できるものであれば、いずれにも適用可能である。
【0160】
ところで、上記の第2の実施形態のように自車両と先行車両との距離Zから相対速度ΔVを求める構成とすると、自車両と先行車両との距離Zが大きいほど距離画像の1画素あたりの距離差が大きくなり検出された距離Zの検出誤差が大きくなる傾向がある。そのため、図18、図19に示したように、「他の物理量」である距離Zが大きい場合ほど、その時間微分Xin(t)であり平滑化の対象となる「物理量のデータ」すなわち自車両と先行車両との相対速度ΔVは暴れが大きくなり、距離Zが小さいほど相対速度ΔVの暴れが小さくなるという特徴的な傾向を示す。
【0161】
その結果、図20に示したように、相対加速度を表すdXin(t)も距離Zが小さくなるほど暴れが小さくなり、同図の場合のように係数Kを一定とした場合には、距離Zが小さくなり相対加速度dXin(t)の暴れの振幅が減少し始めたサンプリングタイミングtでは、相対加速度dXin(t)の振幅の下端に対してdXs(t)×Kが若干離れている。
【0162】
このように、「他の物理量」である距離Zが小さいほど相対加速度dXin(t)の振幅も小さくなる場合には、それに適合させるため、前記所定の係数Kを他の物理量の値が小さいほど小さい値となるように可変させることが好ましい。適合の手法としては、上記のように距離Zを所定の範囲ごとに区分して区分ごとに係数Kの値が設定されたテーブルを用意したり、係数Kの値を距離Zの関数として算出するように構成することが可能である。
【0163】
また、図20に示したように、距離Zが大きい場合に相対加速度dXin(t)が比較的大きく暴れるため、加算割合Pを決定するための基準となる出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)が、距離Zが大きい場合には距離Zが小さい場合と比較して比較的大きな暴れを有している場合がある。
【0164】
そのため、本実施形態では前記(5)式に示したように出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)の算出における時定数を一定としたが、時定数を可変とし、自車両と先行車両との距離Zが大きいほど前記(5)式における右辺第1項すなわちdXs(t-1)の係数をさらに大きくするように修正し、平滑化値dXs(t)の暴れを少なくするようにして平滑化値dXs(t)を算出するように構成することが好ましい。
【0165】
また、別の観点として、自車両が高速道路を走行している場合には、通常の道路を走行している場合に比べて自車両と先行車両との相対速度の増減の程度がさほど大きくなく、相対加速度dXin(t)が比較的安定して推移する傾向がある。このような場合には、前記と同様に、加算割合Pを決定するための基準となる出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)を算出するための前記(5)式において右辺第1項すなわちdXs(t-1)の係数をさらに大きくするように修正して、平滑化値dXs(t)の暴れを少なくするように構成することが可能となる。
【0166】
そこで、速度検出装置10に、自車両が高速道路を走行していることを検出する手段を備えておき、この手段により自車両が高速道路を走行していることが検出された場合には、前記(5)式においてdXs(t-1)の係数をさらに大きくするように修正して平滑化値dXs(t)を算出するように構成することが好ましい。
【0167】
前記手段としては、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機等を搭載したナビゲーション装置からの情報に基づいて地図情報から検出したり、或いは自車両の車速が時速80km等の所定の速度以上である状態が所定時間以上継続したことを認識したり、或いは自車両の左右の車線位置の間隔を測定しその間隔が所定間隔以上であることを認識するなどして、自車両が高速道路を走行していることを検出するように構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】第1の実施形態に係る平滑化フィルタ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】平滑化フィルタ装置における演算処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】算出された入力値の時間微分dXin(t)を表すグラフである。
【図4】算出された出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)とそのK倍された値を表すグラフである。
【図5】差分の絶対値の各範囲に加算割合が割り当てられたテーブルの例を表す図である。
【図6】加算割合を固定した場合の出力値と理想的な平滑化曲線とを表すグラフである。
【図7】増加傾向にある物理量のデータの入力値を表すグラフである。
【図8】図7の入力値に基づく出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)とそのK倍された値を表すグラフである。
【図9】入力値が増加傾向にある場合の加算割合を固定した場合の出力値と理想的な平滑化曲線とを表すグラフである。
【図10】入力値の変化傾向と加算割合とを対応させるテーブルの例を表す図である。
【図11】他の物理量の時間微分を平滑化するための演算処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態に係る速度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図13】基準画像の一例を示す図である。
【図14】区分ごとの距離を実空間上にプロットした各点を表す図である。
【図15】図14の各点をグループ化した場合の各グループを表す図である。
【図16】図15の各グループに基づいて検出された物体や側壁を表す図である。
【図17】自車両の走行軌跡と進行路を説明する図である。
【図18】測定された距離の例を表すグラフである。
【図19】図18の距離に基づいて算出された相対速度を表すグラフである。
【図20】図19の相対速度に基づいて算出された相対加速度に相当するdXin(t)および出力値の時間微分の平滑化値dXs(t)のK倍を表すグラフである。
【図21】図20に基づいて決定された加算割合を表すグラフである。
【図22】図21の加算割合に基づいて算出された出力値を表すグラフである。
【図23】減少傾向にある相対速度の時系列データを表すグラフである。
【図24】図23のデータを理想的に平滑化した場合の平滑化曲線と従来の平滑化フィルタにより平滑化した場合の曲線を表すグラフである。
【符号の説明】
【0169】
1、22 平滑化フィルタ装置
2 加算割合決定手段
3 平滑化手段
4 時間微分平滑化値算出手段
10 速度検出装置
18 測定手段
D(t) 差分
dXin(t) 入力値の時間微分
dXout(t) 出力値の時間微分
dXs(t) 出力値の時間微分の平滑化値
K 係数
MC 自車両
O2 先行車両
P 加算割合
Δt サンプリング周期
V 車速
ΔV 相対速度
X 物理量
Xin(t) 物理量のデータの入力値
Xout(t) 物理量のデータの出力値
Y 他の物理量
Z 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列的に離散的に入力される物理量のデータを平滑化して出力する平滑化フィルタ装置において、
加算割合を決定する加算割合決定手段と、
今回入力された前記物理量のデータの入力値と所定周期前の出力値とを前記加算割合により重み付け加算して算出した値を平滑化された前記物理量のデータの出力値として出力する平滑化手段と、
前記出力値の時間微分を算出して、前記出力値の時間微分の平滑化値を算出する時間微分平滑化値算出手段と
を備え、
前記加算割合決定手段は、前記入力値の時間微分を算出し、算出した前記入力値の時間微分と前記時間微分平滑化値算出手段が算出した前記出力値の時間微分の平滑化値に基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする平滑化フィルタ装置。
【請求項2】
前記加算割合決定手段は、前記時間微分平滑化値算出手段が算出した前記出力値の時間微分の平滑化値に基づいて前記入力値の変化傾向を判定し、判定した前記入力値の変化傾向と前記入力値の時間微分との関係に基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする請求項1に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項3】
前記加算割合決定手段は、前記時間微分平滑化値算出手段が算出した前記出力値の時間微分の平滑化値を所定の係数で増幅した値と前記入力値の時間微分との差分を算出し、その差分に基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする請求項1に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項4】
前記所定の係数は、その所定の係数で前記出力値の時間微分の平滑化値を増幅した値が前記入力値の時間微分の振幅内に収まるように設定されることを特徴とする請求項3に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項5】
前記所定の係数は、正の値とされ、その所定の係数で前記出力値の時間微分の平滑化値を増幅した値が前記入力値の時間微分の振幅の端部付近の値となるように設定されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項6】
前記加算割合決定手段は、前記入力値に重み付けする前記加算割合を、前記差分の絶対値が小さいほど大きい値となるように決定することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項7】
前記加算割合決定手段は、複数の範囲に分割された前記差分の絶対値の範囲ごとに予め加算割合が割り当てられたテーブルを備え、前記テーブルに基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする請求項6に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項8】
前記加算割合決定手段は、前記差分の絶対値についての単調減少関数を備え、前記単調減少関数に基づいて前記加算割合を決定することを特徴とする請求項6に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項9】
前記加算割合決定手段は、前記入力値の入力回数が所定回数に満たない間は、前記加算割合を予め設定された一定値に決定することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項10】
前記時間微分平滑化値算出手段は、前記出力値の時間微分とその所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値とを所定の割合で重み付け加算して現在のサイクリング周期の前記出力値の時間微分の平滑化値を算出することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項11】
前記物理量のデータは、他の物理量を時間微分して算出される前記他の物理量の変化速度のデータであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項12】
前記物理量のデータは、他の物理量を時間微分して得られる前記他の物理量の変化速度のデータであり、
前記所定の係数は、前記他の物理量の値が小さいほど小さい値となるように可変させることを特徴とする請求項3から請求項10のいずれか一項に記載の平滑化フィルタ装置。
【請求項13】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の平滑化フィルタ装置を用いて物体の速度を検出する速度検出装置であって、
前記物理量のデータは前記物体の速度を測定する測定手段から入力される速度のデータであり、平滑化された前記速度を出力することを特徴とする速度検出装置。
【請求項14】
請求項11または請求項12に記載の平滑化フィルタ装置を用いて物体の速度を検出する速度検出装置であって、
前記他の物理量は前記物体の距離を測定する測定手段から入力される距離であり、前記物理量のデータは前記距離を時間微分して得られる前記物体の速度のデータであり、平滑化された前記速度を出力することを特徴とする速度検出装置。
【請求項15】
前記速度は、自車両の車速であることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の速度検出装置。
【請求項16】
前記速度は、自車両と先行車両との相対速度であることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の速度検出装置。
【請求項17】
前記時間微分平滑化値算出手段は、前記出力値の時間微分とその所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値とを所定の割合で重み付け加算して出力値の時間微分の平滑化値を算出する場合には、前記自車両と先行車両との距離が大きいほど前記所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値に重み付けする前記所定の割合を大きくすることを特徴とする請求項16に記載の速度検出装置。
【請求項18】
自車両が高速道路を走行していることを検出する手段を備え、
前記時間微分平滑化値算出手段は、前記手段により自車両が高速道路を走行していることが検出された場合には、前記出力値の時間微分とその所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値とを所定の割合で重み付け加算して出力値の時間微分の平滑化値を算出する際に、前記所定周期前の前記出力値の時間微分の平滑化値に重み付けする前記所定の割合を大きくすることを特徴とする請求項15から請求項17のいずれか一項に記載の速度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−128998(P2008−128998A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318040(P2006−318040)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】