説明

平版印刷材料の印刷時の地汚れ改良

【課題】銀塩拡散転写法を利用した平版印刷材料において、インキ着肉性を低下させることなく地汚れの発生が改善された平版印刷材料を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を少なくともこの順に有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料において、該物理現像核層もしくはこれに隣接する少なくとも一層が、炭素数14〜18のアルキル硫酸エステルを少なくとも2種以上含有する混合物を含有し、該混合物中における炭素数16のアルキル硫酸エステルの割合が40質量%以上であることを特徴とする平版印刷材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀錯塩拡散転写法(以下DTR法と称する)を利用した平版印刷材料は高感度であり、各種レーザーを搭載した出力機(プレートセッター)を用いて直接に製版できることから、今日のCTP(コンピューター・ツー・プレート)システムに好適に用いられている。
【0003】
平版印刷材料は、油脂性のインキを受理する親油性の画像部と、インキを受理しない撥油性の非画像部とからなり、一般に該非画像部は水を受け付ける親水性素材から構成されている。通常の平版印刷では、水とインキの両方を版面に供給し、画像部は着色性のインキを、非画像部は水を選択的に受け入れ、該画線上のインキを、例えば紙等の被印刷体に転写させることによって印刷がなされている。
【0004】
DTR法を用いた画像形成方法は、大きく分けてモノシートタイプとツーシートタイプに分別される。モノシートタイプは、少なくともハロゲン化銀乳剤層と物理現像核を同一支持体面上に順次塗設し、露光後、現像処理することにより、物理現像核層上に銀を析出させるタイプで、ツーシートタイプは、支持体にハロゲン化銀乳剤層を設けた銀供給シートと、別の支持体上に物理現像核層を設けた受像シートを2枚重ね合わせて現像処理することで、銀供給シートから、受像シートの物理現像核上に銀が供給され、画像形成するタイプである。一般にモノシートタイプは、画像の位置精度に優れているので、好適に用いられる。
【0005】
このモノシートタイプの平版印刷材料(以下DTR印刷版と称する)としては、例えば、特公昭48−30562号公報、特開昭53−21602号公報、特開昭54−103104号公報、米国特許第3,728,114号明細書、米国特許第4,134,769号明細書、米国特許第4,160,670号明細書、米国特許第4,336,321号明細書、米国特許第4,501,811号明細書、米国特許第4,510,228号明細書、米国特許第4,621,041号明細書、特開平5−265164号公報、特開2000−275852号公報、特開2003−287892号公報、特開2004−170472号公報等に記載されている。
【0006】
DTR印刷版において、画像部はハロゲン化銀を現像液中の銀塩錯化剤の作用により、銀塩錯体にして、物理現像核層まで拡散させ、核を触媒とする還元反応を生じさせることによって、インキ受容性の物理現像銀を主体とする画像部を形成する。一方、非画像部は親水性バインダーによって形成される。よってDTR印刷版の非画像部は、陽極酸化されたアルミニウム板を用いた一般の印刷版(例えばPS版)に比べ保水性が低く、印刷時に地汚れが発生する問題があった。そこで、例えば、特開昭53−21602号公報、特開昭54−103104号公報、特開平8−211614号公報には物理現像核を含む層中に親水性のポリマーを含有させることが提案されている。また特開平6−230575号公報や特開平8−211614号公報等には物理現像核を含む層中に特定のアクリルアミドポリマーを導入することが提案されている。これらにより保水性は向上するものの、印刷物のインキ着肉性が充分でなく満足できるものではなかった。
【0007】
一方、特開平10−301291号公報(特許文献1)、特開平11−258810号公報(特許文献2)、特開2005−31127号公報(特許文献3)等には、DTR印刷版において物理現像核層もしくはこれに隣接する層が含有する界面活性剤としてアルキル硫酸エステルが記載されている。また特開平6−118652号公報(特許文献4)には、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の中間層にアラビアゴムとアニオン又はベタイン界面活性剤を含有させることでインキ乗りと耐地汚れ性に優れたDTR印刷版が得られることが記載されるが、充分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−301291号公報
【特許文献2】特開平11−258810号公報
【特許文献3】特開2005−31127号公報
【特許文献4】特開平6−118652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、銀塩拡散転写法を利用した平版印刷材料において、インキ着肉性を低下させることなく地汚れの発生が改善された平版印刷材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
1)支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を少なくともこの順に有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料において、該物理現像核層もしくはこれに隣接する少なくとも一層が、炭素数14〜18のアルキル硫酸エステルを少なくとも2種以上含有する混合物を含有し、該混合物中における炭素数16のアルキル硫酸エステルの割合が40質量%以上であることを特徴とする平版印刷材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によりインキ着肉性を低下させることなく地汚れの発生が改善された平版印刷材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の平版印刷材料は、支持体上にハロゲン化銀乳剤層、及び物理現像核層をこの順に有する。更に、支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に下塗り層を設けてもよい。本発明において、炭素数14〜18のアルキル硫酸エステルを少なくとも2種以上含有し、炭素数16のアルキル硫酸エステルの割合が40質量%以上であるアルキル硫酸エステルの混合物(以下本発明のアルキル硫酸エステルと称す)は物理現像核層もしくは、これに隣接する少なくとも一層に用いる。隣接する層としては具体的にはハロゲン化銀乳剤層、ハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間の中間層、物理現像核層の上層に必要に応じて設けられる層が挙げられる。本発明において好ましくは、ハロゲン化銀乳剤層又は物理現像核層に本発明のアルキル硫酸エステルを含有させることであり、特に好ましくは、物理現像核層に含有させることである。
【0013】
本発明のアルキル硫酸エステルの製造方法としては、高純度のアルキル硫酸エステルを任意の比率で混合して用いることができる。更に、例えば特開平11−12246号公報に記載されているようにアルキル硫酸エステルの混合物を製造することもできる。
【0014】
混合するアルキル硫酸エステルの炭素数が少ないと塗布液と混合しにくく、炭素数が多いと塗布液のゲル化が起こる。よって本発明のアルキル硫酸エステルが含有する、少なくとも2種のアルキル硫酸エステルが有するアルキル基の炭素数は14〜18である。また、同様の理由から本発明のアルキル硫酸エステルは炭素数14〜18のアルキル硫酸エステルを3種以上含有する混合物であることが好ましい。そして本発明は炭素数16のアルキル硫酸エステルの割合を40質量%以上とすることでインキ着肉性を低下させることなく地汚れに優れる平版印刷材料が得られることを見いだした。なお炭素数16のアルキル硫酸エステル割合の上限は70質量%であることが好ましい。
【0015】
本発明のアルキル硫酸エステルの含有量は、ハロゲン化銀乳剤層に含有させる場合は、0.01〜0.5g/mが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3g/mである。物理現像核層に含有する場合は、0.02〜0.6g/mが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3g/mである。ハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間の中間層に本発明のアルキル硫酸エステルを用いる場合はハロゲン化銀乳剤層と同様の含有量が好ましく、物理現像核層の上層に用いる場合は物理現像核層と同様の含有量が好ましい。
【0016】
本発明の平版印刷材料の好ましい構成は、支持体上に下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層、及び物理現像核層をこの順に有する。これらの層は、バインダーを含有する。下塗り層及びハロゲン化銀乳剤層のバインダーとしては、ゼラチンが好ましく用いられるが、ゼラチンとその他のバインダー、例えば、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子、あるいはポリマーラテックスを組み合わせて含有することができる。特に、下塗り層は、ゼラチンとポリマーラテックスを併用するのが好ましい。
【0017】
下塗り層は、ハレーション防止層を兼ねるのが好ましく、そのために、カーボンブラックあるいは着色顔料を含有することが好ましい。下塗り層には、更に平均粒径が0.1〜10μmの固形粉末(例えば、シリカ粒子)を含有するのが好ましく、また、現像主薬を含有することも好ましい。下塗り層のバインダー量は0.5〜8g/mが好ましく、更に1〜5g/mが好ましい。
【0018】
ハロゲン化銀乳剤層としては当分野で公知のものを用いることができるが、好ましくは高感度ハロゲン化銀感光材料、高温迅速処理用ハロゲン化銀感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤層等が挙げられる。ハロゲン化銀乳剤層は、バインダーとしてゼラチンを0.5〜1.5g/m含有するのが好ましい。
【0019】
ハロゲン化銀乳剤層は、例えば、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、及びこれらに沃化銀を含むものからなり、感度と高温迅速性の観点から塩化銀が70モル%以上の単分散もしくは多分散結晶が好ましく使用でき、ハロゲン化銀結晶にはロジウム塩、イリジウム塩、パラジウム塩、ルテニウム塩、ニッケル塩、白金塩等の重金属塩を含んでいてもよく、立方体ないし14面体粒子、更にはコアシェル型、平板状粒子でもよい。またハロゲン化銀の平均粒経は0.2〜0.8μmの範囲であることが好ましい。特に好ましい例の一つとしては、ロジウム塩もしくはイリジウム塩又は両方を含む粒子サイズが0.3μmの単分散ハロゲン化銀立方体結晶である。
【0020】
ハロゲン化銀乳剤は、それが製造される時又は塗布される時に種々の方法で増感することができる。例えば、チオ硫酸ナトリウム、アルキルチオ尿素によって、又は金化合物、例えばロダン金、塩化金によって、又はこれらの両者の併用等当該技術分野においてよく知られた方法により化学的に増感することが好ましい。またハロゲン化銀乳剤は、例えばシアニン、メロシアニン等の色素によって増感され得る。特に、青色半導体レーザー、赤色LED、ヘリウム−ネオンレーザー等の各種波長のレーザーに高感度で対応できるように、分光増感させるのが好ましい。
【0021】
ハロゲン化銀乳剤層の上層の物理現像核層は物理現像核を含有する。物理現像核としては銀、アンチモン、ビスマス、カドミウム、コバルト、鉛、ニッケル、パラジウム、ロジウム、金、白金等の金属コロイド微粒子や、これらの金属の硫化物、多硫化物、セレン化物、又はそれらの混合物、混晶であってもよい。物理現像核層は、親水性バインダーとして、ゼラチン、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子又はそのオリゴマーを含むことができ、その含有量は5〜100mg/mの範囲とすることが好ましい。更に物理現像核層には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール等の現像主薬や、ホルマリン、ジクロロ−s−トリアジン、ビニルスルホン等の公知の硬膜剤を含んでもよい。
【0022】
上記した下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層には、バインダーの硬膜剤を含有することができる。硬膜剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の1種もしくは2種以上を用いることができる。
【0023】
硬膜剤はすべての層に添加することもでき、幾つか又は一層にのみ添加することも可能である。勿論、拡散性の硬膜剤は二層以上を同時塗布する場合には、何れか一層にのみ添加することが可能である。添加方法は塗布液中に添加したり、塗布時にインラインで添加することもできる。
【0024】
本発明に用いられる支持体としては、セルロースナイトレートフィルム、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチック樹脂フィルム、あるいは紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙等が挙げられる。これらの支持体の中でも、特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく用いられる。これらの支持体の表面を塗布層との接着を良くするために表面処理することも可能である。これらの支持体の厚みとしては70〜300μm程度が好ましく用いられる。
【0025】
本発明の平版印刷材料の製版に用いられる現像処理液には、アルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム等、保恒剤としての亜硫酸塩、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、2−メルカプト安息香酸、アミン類、粘稠剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、更に現像剤としてハイドロキノン類、カテコール、1−フェニル−3−ピラゾリドン等、現像変性剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、オニウム化合物等を含むことができる。更に現像処理液には、表面銀層のインキ乗りを良くする特開2000−214589号公報の実施例に記載のアルキル基を有するメルカプト化合物を使用することができる。
【0026】
本発明において、銀錯塩拡散転写法を実施するにあたっては、ハロゲン化銀乳剤層又は/及び物理現像核層又はそれに隣接する他の水透過性層中にハイドロキノン、1−フェニル−3−ピラゾリドン等の現像主薬を混入することも行われている。従って、このような材料においては、現像段階で使用される処理液は、現像剤を含まない、いわゆる「アルカリ性活性化液」を使用し得る。
【0027】
本発明の平版印刷版の現像後の表面銀層は、任意の公知の表面処理剤でインキ受容性に変換ないしは受容性を改善させることもでき、例えば特開2000−214589号公報の実施例に記載の不感脂化液により施すこともできる。
【0028】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。なお記載中、部、%及び混合比は質量基準である。
【実施例】
【0029】
<比較例1の平版印刷材料の作製>
(裏塗り層の作製)
下引き加工が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム支持体の片面に下記裏塗り液1及び裏塗り液2を、裏塗り液1が支持体側になるように両液を同時にスライドホッパーコーティング法により積層塗布して、帯電防止層を兼ねた裏塗り層を作製した。
<裏塗り液1>
ゼラチン 8.0kg
カーボンブラック 7.0kg(固形分量=約20%)
PH調整剤、界面活性剤等を加え全量を160kgに調整して塗液を作製した。
湿分塗布量は16g/mとした。
<裏塗り液2>
ゼラチン 22kg
シリカ粉末 8.0kg(平均粒子径=約3.5μm)
酸化チタン粉末 72kg(平均粒子径=約0.2μm)
PH調整剤、界面活性剤等を加え全量を480kgに調整して塗液を作製した。
湿分塗布量は48g/mとした。
【0030】
(下塗り層及び乳剤層の作製)
上記裏塗り層とは反対面の支持体表面にコロナ放電加工後、下記下塗り液と乳剤塗布液を下塗り液が支持体側になるように両液を同時にスライドホッパーコーティング法により積層塗布した。
<下塗り液>
ゼラチン 30kg
シリカ粉末 5.0kg
「グレイスデビソン社製“SY378”:平均粒径約3.5μm」
カーボンブラック 10kg(固形分量=約32%)
スチレン−ブタジエン系ラテックス 50kg(固形分量=約48%)
「日本エイアンドエル株式会社製“スマーテックス PA9281”:Tg=7℃」
PH調整剤、界面活性剤等を加え全量を450kgに調整して液を作製した。
湿分塗布量は45g/mとした。
<乳剤塗布液>
赤感の増感色素で増感された高感度塩化銀乳剤
(銀(硝酸銀換算):ゼラチン質量比=2:1)
銀(硝酸銀換算) 12kg
エチレンジアミン四酢酸Na塩 0.1kg
チオサリチル酸 0.4kg
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.2kg
ホルマリン(37質量%水溶液) 0.8kg
PH調整剤、界面活性剤等を加え全量を150kgに調整して液を作製した。
湿分塗布量は15g/mとした。
【0031】
上記高感度塩化銀乳剤は、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウムを銀1モル当たり0.006ミリモルドープさせ、0.2モル%のKI溶液でコンバージョンを行った塩化銀乳剤で、コントロールダブルジェット法により平均粒径は約0.30μmに調整した。更に、この乳剤を沈殿−水洗−脱水後に再溶解を行い、常法により硫黄−金増感を施した後、安定剤等を添加、その後、赤色増感色素を銀(硝酸銀換算)1g当たり3mgを添加して分光増感を行った。
【0032】
なお、硬膜剤として、裏塗り層及び下塗り層には2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩、乳剤層にはN−メチロールエチレン尿素をそれぞれ含有させた。
【0033】
なお、上記下塗り層及び乳剤層を塗布した後、硬膜することを目的に40℃で5日間加温して、下塗り層及び乳剤層を完成させた。
【0034】
(物理現像核層の作製)
上記乳剤層の上に、下記物理現像核塗布液をファウンテン/エアドクター法にて塗布乾燥して、物理現像核層を塗設した。その後、再び40℃で5日間加温して平版印刷材料1を得た。
<物理現像核層塗布液>
硫化パラジウムゾル 10kg
ハイドロキノン 7.0kg
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.7kg
ポリマー 1.0kg
「アクリルアミド(97)とビニルイミダゾール(3)共重合体;平均分子量=約10万」
アルキル硫酸エステル 2.0kg
(炭素数=14,16,18の混合物、混合比14:16:18=1:1:1)
ホルマリン 1.0kg(37%水溶液)
全量を100kgに調整して液を作製した。
湿分塗布量は10g/mとした。
【0035】
上記物理現像核層塗布液に用いる硫化パラジウムゾルは予め下記構成により調製した。
<硫化パラジウムゾルの調整>
A液 塩化パラジウム 5部
12N−塩酸 40部
蒸留水 1000部
B液 硫化ソーダ 8.6部
蒸留水 1000部
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂(IR−120E,IRA−400)の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0036】
<比較例2の平版印刷材料>
前記比較例1の物理現像核層の炭素数14,16,18のアルキル硫酸エステル(混合比1:1:1)の代わりに、アルキル硫酸エステル(混合比40:30:30)とする以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0037】
<比較例3の平版印刷材料>
前記比較例1の物理現像核層の炭素数14,16,18のアルキル硫酸エステル(混合比1:1:1)の代わりに、アルキル硫酸エステル(混合比50:25:25)とする以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0038】
<比較例4の平版印刷材料>
前記比較例1の物理現像核層の炭素数14,16,18のアルキル硫酸エステル(混合比1:1:1)の代わりに、アルキル硫酸エステル(混合比30:30:40)とする以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0039】
<比較例5の平版印刷材料>
前記比較例1の物理現像核層の炭素数14,16,18のアルキル硫酸エステル(混合比1:1:1)の代わりに、アルキル硫酸エステル(混合比25:25:50)とする以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0040】
<本発明1の平版印刷材料>
前記比較例1の物理現像核層の炭素数14,16,18のアルキル硫酸エステル(混合比1:1:1)の代わりに、アルキル硫酸エステル(混合比30:40:30)とする以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0041】
<本発明2の平版印刷材料>
前記比較例1の物理現像核層の炭素数14,16,18のアルキル硫酸エステル(混合比1:1:1)の代わりに、アルキル硫酸エステル(混合比25:50:25)とする以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0042】
<比較例6の平版印刷材料>
前記比較例1の乳剤塗布液、物理現像核層塗布液をそれぞれ下記のように調整する以外は、比較例1と同様にして作製した。
<乳剤塗布液>
赤感の増感色素で増感された高感度塩化銀乳剤
(銀(硝酸銀換算):ゼラチン質量比=2:1)
銀(硝酸銀換算) 12kg
エチレンジアミン四酢酸Na塩 0.1kg
チオサリチル酸 0.4kg
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.2kg
アルキル硫酸エステル 2.5kg
(炭素数=14,16,18の混合物、混合比14:16:18=1:1:1)
ホルマリン(37質量%水溶液) 0.8kg
PH調整剤、界面活性剤等を加え全量を150kgに調整して液を作製した。
湿分塗布量は15g/mとした。
<物理現像核層塗布液>
硫化パラジウムゾル 10kg
ハイドロキノン 7.0kg
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.7kg
ポリマー 1.0kg
「アクリルアミド(97)とビニルイミダゾール(3)共重合体;平均分子量=約10万」
ホルマリン(37質量%水溶液) 1.0kg
全量を100kgに調整して液を作製した。
湿分塗布量は10g/mとした。
【0043】
<本発明3の平版印刷材料>
前記比較例6の乳剤塗布液の炭素数14,16,18のアルキル硫酸エステル(混合比1:1:1)の代わりに、アルキル硫酸エステル(混合比30:40:30)とする以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0044】
<本発明4の平版印刷材料>
前記比較例6の乳剤塗布液の炭素数14,16,18のアルキル硫酸エステル(混合比1:1:1)の代わりに、アルキル硫酸エステル(混合比25:50:25)とする以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0045】
上記のようにして作製したそれぞれの平版印刷材料をヘリウム・ネオンレーザーを光源とするプレートセッターで露光し、下記銀錯塩拡散転写現現像液を用いて、30℃で20秒間現像処理を行った後、該原版を2本の絞りローラー間に通し、余分の現像液を除去し、直ちに下記組成を有する中和液で25℃20秒間処理し、絞りローラーで余分の液を除去し室温で乾燥させそれぞれ印刷版を作製した。
【0046】
<銀錯塩拡散転写現像液>
水酸化カリウム 20g
無水亜硫酸ナトリウム 50g
2−メルカプト安息香酸 1.5g
2−メチルアミノエタノール 15g
を水に加えて1リットルに調整して液を作製した。
<中和液>
クエン酸 10g
クエン酸ナトリウム 35g
コロイダルシリカ(20%液) 5ml
エチレングリコール 5ml
を水に加えて1リットルに調整して液を作製した。
【0047】
以上の操作により作製した平版印刷材料をオフセット印刷機に装着し、下記の給湿液にて版面をくまなく拭き与え、その給湿液を用いて印刷を行った。
【0048】
<給湿液>
o−リン酸 10g
硝酸ニッケル 5g
亜硝酸ナトリウム 5g
エチレングリコール 100g
コロイダルシリカ(20%液) 28g
を水に加えて2リットルに調整して液を作製した。
【0049】
印刷機は、ハイデルベルグ製QM46(オフセット印刷機)を使用した。画像部のインキ着肉性、及び非画像部の地汚れ性について、これらが印刷面に不良が生じ印刷に供せなくなった時点の印刷枚数をもって、次の評価基準によりそれぞれ判定した。なお、インキ着肉性評価には、DIC製のニューチャンピオンFグロス墨Hインキを、地汚れの評価には同社製のニューチャンピオンFグロス紫Sインキをそれぞれ用いた。
<インキ着肉性>
○:20,000枚以上
△:15,000〜20,000枚未満
×:10,000〜15,000枚未満
<地汚れ性>
○:3,000枚以上
△:2,000〜3,000枚未満
×:2,000枚未満
印刷結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
上記の結果から明らかなように、本発明によりインキ着肉性を低下させることなく地汚れの発生が改善された平版印刷材料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を少なくともこの順に有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料において、該物理現像核層もしくはこれに隣接する少なくとも一層が、炭素数14〜18のアルキル硫酸エステルを少なくとも2種以上含有する混合物を含有し、該混合物中における炭素数16のアルキル硫酸エステルの割合が40質量%以上であることを特徴とする平版印刷材料。