説明

平版印刷版の製版方法

【課題】耐刷性に優れた平版印刷版を得ることができ、現像液の臭気及び現像除去成分起因の現像スラッジを抑制でき、かつ感度及び現像性に優れた平版印刷版の製版方法を提供すること。
【解決手段】支持体上に光重合性感光層を有するネガ型平版印刷版原版を作製する工程、前記ネガ型平版印刷版原版を画像様に露光する工程、(成分A)下記式(I)で表される化合物、(成分B)下記式(II)で表される化合物及び(成分C)水を少なくとも含む現像液により露光された前記ネガ型平版印刷版原版を現像する工程を含むことを特徴とする平版印刷版の製版方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(感光層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像部に対応する感光層を残存させ、非画像部に対応する不要な感光層をpH12以上の強アルカリ性現像液によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
従来の平版印刷版の作製工程においては、露光の後、不要な感光層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から高pHのアルカリ現像処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、簡易化の一つとして、中性に近い水溶液で現像できることが一層強く望まれている。
【0003】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。したがって、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
上述したCTP技術に用いられるレーザー光源として、波長760〜1,200nmの赤外線を放射する半導体レーザー及びYAGレーザー等の固体レーザーは、高出力かつ小型のものを安価に入手できるようになったことから、極めて有用である。また、UVレーザーも用いることができる。
【0004】
上述のような背景から、現在、製版作業の簡易化とデジタル化の両面への適合が、従来にも増して、強く望まれるようになってきている。
これに対して、例えば、特許文献1には、親水性結合剤中に疎水性熱可塑性重合体粒子を分散させた感光層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版をガム液により現像する製版方法が記載されている。
特許文献2には、(i)親水性支持体、及び(ii)ラジカル重合性エチレン性不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤及び赤外吸収染料を含有する感光層からなる平版印刷版原版を、赤外レーザーで画像様に露光した後、感光層の未硬化部分をガム液で除去する平版印刷版原版の処理方法が記載されている。
また、特許文献3では、ラジカル重合系感光層を赤外レーザー露光により硬化し、pH12未満、かつベンジルアルコール及び特定構造の両性界面活性剤を含む溶剤含有現像液で未露光部を除去することからなる平版印刷版原版の現像方法が記載されている。
更には、特許文献4では、ラジカル重合系感光層を赤外レーザー露光により硬化し、60重量%以下の水、水溶性もしくは水分散可能な溶剤、及び特定構造の界面活性剤とを含む溶剤含有現像液で未露光部を除去することからなる平版印刷版原版の現像方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1342568号明細書
【特許文献2】国際公開第05/111727号パンフレット
【特許文献3】国際公開第08/027227号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0216067号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された製版方法では、上記平版印刷版原版を、赤外レーザーを用いた画像露光によって、疎水性熱可塑性重合体粒子を融着させて画像を形成させた後、ガム液により未露光部を除去することにより現像している。
しかし、このような微粒子の熱融着による画像形成を用いた平版印刷版原版をガム液で現像する方法は、現像性は極めて良好であるが感度や耐刷性が低く、かつ未露光部の除去された微粒子が現像液中で凝集・沈降しやすいため現像スラッジと呼ぶヘドロ状堆積物が発生してしまうという大きな問題を有している。
また、特許文献3及び4に記載された発明における現像液では、有機溶剤を含有しており作業安全性の点で劣るものの、これらは低pH現像を可能としており環境配慮に優れ、かつ画像形成にラジカル重合を用いていることから感度、耐刷性は高いが、依然として、現像除去後の感光層成分が現像液中で凝集・沈降し、劣悪な現像スラッジが発生してしまい、現像液循環系にあるフィルターの交換頻度が著しく高くなり、更には現像液交換時の現像浴洗浄に要する時間が長くなってしまうという問題を有している。
【0007】
したがって、本発明の目的は、耐刷性に優れた平版印刷版を得ることができ、現像液の臭気及び現像除去成分起因の現像スラッジを抑制でき、かつ感度及び現像性に優れた平版印刷版の製版方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記<1>に記載の手段により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<25>と共に以下に示す。
<1>支持体上に光重合性感光層を有するネガ型平版印刷版原版を作製する工程、前記ネガ型平版印刷版原版を画像様に露光する工程、(成分A)下記式(I)で表される化合物、(成分B)下記式(II)で表される化合物及び(成分C)水を少なくとも含む現像液により露光された前記ネガ型平版印刷版原版を現像する工程を含むことを特徴とする平版印刷版の製版方法、
【0009】
【化1】

(式中、R1は炭素数4〜8の直鎖又は分岐したアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、かつR2及びR3のいずれか一方がメチル基の場合他方は水素原子であり、nは1又は2を表し、R4は置換若しくは無置換の、フェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基を表し、mは4〜20の整数を表す。)
【0010】
<2>前記nが、1である、上記<1>に記載の平版印刷版の製版方法、
<3>前記R2及びR3が、共に水素原子である、上記<1>又は<2>に記載の平版印刷版の製版方法、
<4>前記R1が、n−ブチル基、n−ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基である、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<5>成分Aが、0.8〜2.0のオクタノール/水分配係数を有する化合物である、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<6>成分Aが、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、及び、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルよりなる群から選ばれた化合物である、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<7>前記現像液中における成分Aの含有量が、成分Aの水に対する溶解度を超え40重量%以下である、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<8>前記現像液中における成分Aの含有量が、2〜30重量%である、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<9>前記現像液中における成分Aの含有量が、5〜20重量%である、上記<8>に記載の平版印刷版の製版方法、
<10>前記R4が、置換若しくは無置換の、1−ナフチル基又は2−ナフチル基である、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
【0011】
<11>前記mが、9〜16である、上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<12>前記現像液中における成分Bの含有量が、成分Aを可溶化させることができる量以上20重量%以下である、上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<13>前記現像液中における成分Bの含有量が、1〜15重量%である、上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<14>前記現像液中における成分Bの含有量が、4〜10重量%である、上記<13>に記載の平版印刷版の製版方法、
<15>前記現像液中における成分Cの含有量が、50重量%以上である、上記<1>〜<14>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<16>前記現像液が、アニオン系界面活性剤又は両性界面活性剤を更に含有する、上記<1>〜<15>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<17>前記現像液が、pH6〜8である、上記<1>〜<16>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<18>前記光重合性感光層が、ビニルカルバゾール化合物由来のモノマー単位を有するアクリルポリマーを含有する、上記<1>〜<17>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<19>前記アクリルポリマーが、アクリロニトリル由来のモノマー単位を更に含有する、上記<18>に記載の平版印刷版の製版方法、
<20>前記光重合性感光層が、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーを含有する、上記<1>〜<19>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
【0012】
<21>前記ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーが、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選ばれた化合物由来のモノマー単位を有する、上記<20>に記載の平版印刷版の製版方法、
<22>前記光重合性感光層が、赤外光感応性であり、かつトリフェニルアルキルボレート塩又はテトラフェニルボレート塩を含有する、上記<1>〜<21>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<23>前記光重合性感光層が、銅フタロシアニン顔料を更に含有する、上記<22>に記載の平版印刷版の製版方法、
<24>前記光重合性感光層が、赤外光感応性であり、かつボレート塩を含有せず、着色染料を含有する、上記<1>〜<21>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<25>前記光重合性感光層が、シアニン色素及びヨードニウム塩を含有する、上記<22>〜<24>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐刷性に優れた平版印刷版を得ることができ、現像液の臭気及び現像除去成分起因の現像スラッジを抑制でき、かつ感度及び現像性に優れた平版印刷版の製版方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の平版印刷版の製版方法に好適に用いることができる平版印刷版原版の自動現像装置の一例の構成を示す図である。
【図2】本発明の平版印刷版の製版方法に好適に用いることができる現像部のみの自動現像装置の一例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の平版印刷版の製版方法は、支持体上に光重合性感光層を有するネガ型平版印刷版原版を作製する工程(以下、「原版作製工程」ともいう。)、前記ネガ型平版印刷版原版を画像様に露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)、(成分A)下記式(I)で表される化合物、(成分B)下記式(II)で表される化合物及び(成分C)水を少なくとも含む現像液により露光された前記ネガ型平版印刷版原版を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう。)を含むことを特徴とする。
【0016】
【化2】

(式中、R1は炭素数4〜8の直鎖又は分岐したアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、かつR2及びR3のいずれか一方がメチル基の場合他方は水素原子であり、nは1又は2を表し、R4は置換若しくは無置換の、フェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基を表し、mは4〜20の整数を表す。)
【0017】
以下、本発明の平版印刷版の製版方法について詳細に説明する。なお、本発明において、最も特徴的な工程である現像工程を説明した後、他の工程等について説明する。
また、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。また、「(成分A)式(I)で表される化合物」等を単に「成分A」等ともいう。
【0018】
(現像工程)
本発明の平版印刷版の製版方法は、(成分A)前記式(I)で表される化合物、(成分B)前記式(II)で表される化合物及び(成分C)水を少なくとも含む現像液により露光された前記ネガ型平版印刷版原版を現像する工程(現像工程)を含む。
【0019】
<現像液>
本発明の平版印刷版の製版方法に使用される現像液は、少なくとも前記成分A〜Cを含む水溶液又は水分散液である。
前記現像液は、特定構造の有機溶剤である成分Aが、特定構造のノニオン系界面活性剤である成分Bによって、成分Cの水に可溶化されている、単相の(分離していない)水溶液または水分散液であることが好ましい。
前記現像液における(成分A)前記式(I)で表される化合物は、平版印刷版原版の未露光部の除去作用を担う現像主剤であり、かつ現像除去された感光層の現像液中での分散性を付与(現像スラッジ抑制)することができる。現像液として成分Aを単独で使用した場合は、溶剤臭が極めて強く、現像装置周辺の環境が悪くなるため、使用量が削減でき、かつ液表面での溶剤露出を低減できるように、本発明に用いられる現像液においては(成分C)水と混合して用いる。このとき水と極めて相溶性が高い化合物を用いると、有機溶剤が水中で安定に存在し得るので平版印刷版原版表面に現像液を接触させても有機溶剤が平版印刷版原版の感光層中に浸透していきにくく現像性が不十分となる。そのため、(成分A)式(I)で表される化合物としては水との相溶性が低いものを用い、好ましくは水に対する溶解度以上の量混合させ、これを、(成分B)式(II)で表される化合物で水中に可溶化させて用いることにより、溶剤臭を大幅に低減でき、かつ平版印刷版原版表面に接触したときにはoil in waterのミセルを破壊させることによって現像主剤である成分Aが感光層中に浸透し現像が可能となる。また、(成分B)式(II)で表される化合物も現像スラッジ抑制の機能を有していると考えている。
以下、成分A〜Cに関して説明する。
【0020】
(成分A)式(I)で表される化合物
成分Aは、下記式(I)で表される化合物である。また、前記式(I)で表される化合物は、現像液において、現像除去成分起因の現像スラッジを現像液中へ溶解及び/又は分散させる有機溶剤として機能することが好ましい。
【0021】
【化3】

(式中、R1は炭素数4〜8の直鎖又は分岐したアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、かつR2及びR3のいずれか一方がメチル基の場合他方は水素原子であり、nは1又は2を表す。)
【0022】
前記式(I)のnは1であることが好ましい。また、R2とR3は共に水素原子であることが好ましい。R1は、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基であることが好ましく、n−ヘキシル基であることがより好ましい。上記態様であると、現像除去成分起因の現像スラッジをより抑制でき、更に現像性により優れる。
成分Aとして具体的には、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、及び、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルよりなる群から選ばれた化合物であることが好ましく、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、及び、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルよりなる群から選ばれた化合物であることがより好ましく、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテルであることが更に好ましい。
【0023】
また、成分Aは、物性的特徴の1つとして、0.8〜2.0のオクタノール/水分配係数を有することが好ましい。オクタノール/水分配係数とは、1−オクタノールと水の2つの溶媒相中に化学物質を加えて平衡状態となった時の、その2相における化学物質の濃度比のことで、化学物質の疎水性(脂質への溶けやすさ)を表す物理化学的な指標であり、値が大きいほど疎水性が高くなる。オクタノール/水分配係数は、Powの略号で記載することもあり、また、一般的に対数値(LogP)で記述されることもある。
上記のオクタノール/水分配係数を有する化合物は、比較的水溶性が低い特徴を有すことになり、本発明に用いられる現像液は、成分Aをその水に対する溶解度以上の量で含有することが好ましい。この場合には、溶解度以上の成分Aは、水溶液と分離して2相になるが、これを後述の成分Bで可溶化して単相の水溶液又は水分散液とした形態が好ましい。上記成分Aをその水に対する溶解度以上の量で現像液に含有する態様であると、現像液の臭気及び現像除去成分起因の現像スラッジをより抑制でき、更に現像性により優れる。
【0024】
成分Aは、現像液中で40重量%以下の量であることが好ましい。40重量%以下であると、成分Aを成分Bで水中に可溶化したoil in water(o/w)の状態の現像液が容易に得られ、有機溶剤臭が少なく、作業安全性に優れる。成分Aの含有量は、現像液中に2〜30重量%含有することが更に好ましく、現像液中に5〜20重量%含有することが最も好ましい。
成分Aは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
(成分B)式(II)で表される化合物
成分Bは、下記式(II)で表される化合物である。また、前記式(II)で表される化合物は、現像液において、成分Aや現像除去成分起因の現像スラッジを現像液中への分散に寄与するノニオン性界面活性剤として機能することが好ましい。
【0026】
【化4】

(式中、R4は置換若しくは無置換の、フェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基を表し、mは4〜20の整数を表す。)
【0027】
前記式(II)のR4は、置換若しくは無置換の、1−ナフチル基、又は、2−ナフチル基であることが好ましく、1−ナフチル基、又は、2−ナフチル基であることがより好ましく、1−ナフチル基であることが更に好ましい。また、mは9〜16であることが好ましく、11〜16であることがより好ましい。
前記R4のフェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基における置換基としては、アルキル基、アリール基、及び、アラルキル基が好ましく挙げられる。
成分Bの具体的な例としては、以下の構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
これらの中でも、成分Bとしては、B−12〜B−15が好ましく、B−14が特に好ましい。
【0031】
また、成分Bは、花王(株)製「エマルゲンA」シリーズ、「エマルゲンB」シリーズ、三洋化成工業(株)製「ナロアクティーCL」シリーズ、日本乳化剤(株)製「ニューコール 700」シリーズ、「ニューコール 2600」シリーズ、「ニューコールB」シリーズ、などの市販品として入手可能である。
【0032】
成分Bは、現像液中で成分Aを可溶化させることができる量以上を含有することが好ましい。成分Aを水中に可溶化することにより、有機溶剤臭を抑制でき、かつ平版印刷版の現像にムラを生じることを抑制することができる。また、成分Bは、現像液中20重量%以下の量であることが好ましい。20重量%以下であると、可溶化した有機溶剤が現像液中における安定性が適度であり、平版印刷版原版表面上でもミセル破壊が容易であり、現像性に優れる。
成分Bは、現像液中に1〜15重量%含有することが更に好ましく、現像液中に4〜10重量%含有することが最も好ましい。
成分Bは、2種以上を併用してもよい。
【0033】
(成分C)水
成分Cは、水である。
ここで水とは、純水、蒸留水、イオン交換水、水道水などを指し、また如何なる硬度の水でも使用可能である。
前記現像液における成分Cの含有量は、前述の通りoil in waterのミセル構造を維持するために50重量%以上であることが好ましい。
【0034】
以下に、前記現像液におけるその他の成分に関して記載する。
前記現像液は、前記(成分B)式(II)で表される化合物以外にも、その他の界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性等)を含有してもよい。
本発明に用いることができるアニオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及び/又はアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0035】
本発明に用いることができるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0036】
本発明に用いることができるその他のノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコーン系等の界面活性剤も同様に使用することができる。
【0037】
本発明に用いることができる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アミノ酸系、ベタイン系、アミンオキシド系等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
これら、その他の界面活性剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
その他の界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%がより好ましい。
【0039】
pHの調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的にアルカリ剤を含有してもよい。アルカリ剤としては、例えば炭酸塩又は炭酸水素塩や、有機アルカリ剤を挙げることができる。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。また、有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらのアルカリ剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
前記現像液のpHは、特に制限はないが、環境配慮の観点、更には作業安全性の観点から、6〜8の範囲にあることが好ましい。
【0041】
感光層現像除去後の非画像部表面保護などの目的で、前記現像液には、水溶性高分子化合物を含有してもよい。
本発明に用いることができる水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
水溶性高分子化合物の好ましい酸価は、0〜3.0meq/gである。
【0042】
上記大豆多糖類としては、従来知られているものが使用でき、例えば市販品としてソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10重量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0043】
上記澱粉としては、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉及びコーンスターチ等、更にこれらの変性澱粉や澱粉誘導体が挙げられる。
変性澱粉は、酸又は酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作製することができる。
澱粉誘導体としては、ブリティッシュガム等の焙焼澱粉、酵素デキストリン及びシャーディンガーデキストリン等の酵素変成デキストリン、可溶化澱粉に示される酸化澱粉、変成アルファー化澱粉及び無変成アルファー化澱粉等のアルファー化澱粉、燐酸澱粉、脂肪澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉及びカルバミン酸澱粉等のエステル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、スルフォアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉、ジアルキルアミノ澱粉等のエーテル化澱粉、メチロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、燐酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、澱粉ポリアクリロアミド共重合体、澱粉ポリアクリル酸共重合体、澱粉ポリ酢酸ビニル共重合体、澱粉ポリアクリロニトリル共重合体、カオチン性澱粉ポリアクリル酸エステル共重合体、カオチン性澱粉ビニルポリマー共重合体、澱粉ポリスチレンマレイン酸共重合体、澱粉ポリエチレンオキサイド共重合体、澱粉ポリプロピレン共重合体等の澱粉グラフト重合体が好ましい。
【0044】
水溶性高分子化合物の中でも、大豆多糖類、澱粉、アラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコールが好ましく、アラビアガム又は澱粉がより好ましい。
水溶性高分子化合物は、2種以上を併用することもできる。
水溶性高分子化合物の現像液中における含有量は、0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。
【0045】
前記現像液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有することができる。
【0046】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。
湿潤剤は1種単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。
湿潤剤は、前記現像液の全重量に対し、0.1〜5重量%の量で使用されることが好ましい。
【0047】
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
防腐剤の含有量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液に対して0.01〜4重量%の範囲が好ましい。
【0048】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
キレート剤は現像液中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが好ましく選ばれる。
キレート剤の含有量は、現像液の全重量に対して、0.001〜1.0重量%であることが好ましい。
【0049】
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)の5以下等の化合物を使用することができる。シリコーン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化等がいずれも使用できる。
消泡剤の含有量は、現像液の全重量に対して、0.001〜1.0重量%の範囲が好ましい。
【0050】
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。
有機酸の含有量は、現像液の全重量に対して、0.01〜0.5重量%が好ましい。
【0051】
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。
無機酸及び無機塩の含有量は、現像液の全重量に対して、0.01〜0.5重量%が好ましい。
【0052】
前記現像工程における現像処理は、特に制限はなく、公知の方法により現像を行えばよいが、擦り部材を備えた自動処理機を用いて実施されることが好ましい。更に前記現像処理は、前記現像液などの供給手段を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像記録後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開2006−235227号公報等に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0053】
本発明に好ましく使用できる回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、更には、平版印刷版原版支持体の腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。
回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチック又は金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報、特開平3−100554号公報に記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属又はプラスチックの溝型材を芯となるプラスチック又は金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、及び、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は、20〜400μm、毛の長さは、5〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は、30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は、0.1〜5m/secが好ましい。
【0054】
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが、同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが、逆方向に回転することが好ましい。これにより、未露光部の感光層の除去がさらに確実となる。さらに、回転ブラシロールをブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0055】
本発明に使用される現像液は、常に新鮮な液を用いてもよいが、現像処理後の現像液を、フィルターを通して循環させて繰り返し使用することが好ましい。
【0056】
前記現像工程に用いられる現像液の濾過に使用するフィルターは、現像液に混入した異物を濾過出来るものであれば、如何なるものでも使用可能である。フィルターの材質としてはポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロース樹脂、コットン等が好ましく用いられる。また、その形態としては、交換可能なフィルターとして、ハウジング内にカートリッジの様式で収容されたものが好ましい。カートリッジは、例えばセルロース繊維製の濾紙に、強度補強、繊維離脱防止のため、エポキシ樹脂加工を施し、濾過面積を大きくするためにプリーツ状に成型したプリーツタイプ、多くの繊維からなるヤーン(繊維の束)を中心筒より緩やかな密度勾配が得られるよう巻き上げたデプスタイプ、あるいはポリエチレン等のプラスチック製ケースに吸着剤を収納させるか、又は、主に樹脂、セルロース、ガラス繊維及び吸水性ポリマーによって構成されたメディアに活性炭などの吸着剤を担持させた吸着タイプのものが好ましい。この吸着剤としては、シリカゲル、活性炭、活性アルミニウム、モレキュラーシーブ、クレー及び超吸収性繊維、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム及び活性金属から選択された材料、及び、各種フィルターに用いられるイオン交換体を用いることができる。
入手可能なフィルターとして、アドバンテック東洋(株)製のカートリッジフィルター「TCWタイプ」、「TCPタイプ」、「TCSタイプ」などが好ましく用いられる。
フィルターのメッシュ径としては、5〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、20〜100μmが更に好ましい。
【0057】
本発明の平版印刷版の製版方法においては、現像工程を2回以上連続して行うことが好ましい。このような現像処理を2回以上連続して行う具体的な方法としては、上記のような擦り部材を備えた現像部のみからなる自動処理機(図2参照)を使って現像処理を2回以上繰り返して行う方法(その場合、自動現像機2台以上を連結して行ってもよい。)、上記のような擦り部材を備えた現像部を複数有する自動処理機を使用する方法などが挙げられる。
また、本発明の平版印刷版の製版方法の好ましい形態として、前記現像工程に続いて水洗工程を行うことが挙げられる。上記連続現像や水洗工程の実施によって、現像除去成分の版面再付着に起因する印刷汚れが抑制される。
前記水洗工程に用いられる水は、一般の水道水、井水、イオン交換水、蒸留水など如何なる水でも使用可能であるが、経済的観点からは水道水や井水が好ましい。前記水洗工程に用いられる水は、常に新鮮水を使用するか、水洗工程で使用された水を、前述のようなフィルターを通して循環させて再使用することが好ましい。
【0058】
前記現像工程の後に、水洗工程に引き続いて更に、ガム液による非画像部の不感脂化工程を行うことも可能である。水洗工程の後にガム液を版面に供給することによって、非画像部を充分に不感脂化させることができる。
前記不感脂化工程では、一般的なガム液や、前記現像液のうち、水溶性高分子化合物(「水溶性樹脂」ともいう。)を含有する現像液が使用される。後者の場合、現像工程に用いられた現像液と基本的に同一組成の液を用いることが装置構造上好ましい。これは、現像ユニットのタンクに仕込む現像液と、不感脂化ユニットのタンクに仕込む液が同一のものであることを意味し、その後の現像処理による現像液成分の持ち出しや平版印刷版原版成分の混入、更には水の蒸発や二酸化炭素の溶解などによる組成変化を意味するものではない。これによって、それぞれの工程で使用する液の仕込み液や補充液の共通化ができる。更には、現像部の補充液として、その必要量を不感脂化部の循環液をオーバーフローさせて供給するカスケード方式も採用してもよい。
【0059】
前記水洗工程後の不感脂化工程に用いられるガム液について説明する。
ガム液に用いられる不感脂化剤としては、アラビアガムが好ましく、アラビアガムの15〜20重量%の水溶液をガム液とすることがより好ましい。
アラビアガム以外にも種々の水溶性樹脂が不感脂化剤として用いられる。例えば、デキストリン、ステラビック、ストラクタン、アルギン酸塩類、ポリアクリル酸塩類、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシアルキルセルロース塩、大豆のオカラから抽出した水溶性多糖類が好ましく、また、プルラン又はプルラン誘導体、ポリビニルアルコールも好ましい。
【0060】
更に、不感脂化剤としては、変成澱粉誘導体としてブリティッシュガム等の焙焼澱粉、酵素デキストリン及びシャーディンガーデキストリン等の酵素変成デキストリン、可溶化澱粉に示される酸化澱粉、変成アルファー化澱粉及び無変成アルファー化澱粉等のアルファー化澱粉、燐酸澱粉、脂肪澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉及びカルバミン酸澱粉等のエステル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、スルフォアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉、ジアルキルアミノ澱粉等のエーテル化澱粉、メチロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、燐酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、澱粉ポリアクリロアミド共重合体、澱粉ポリアクリル酸共重合体、澱粉ポリ酢酸ビニル共重合体、澱粉ポリアクリロニトリル共重合体、カオチン性澱粉ポリアクリル酸エステル共重合体、カオチン性澱粉ビニルポリマー共重合体、澱粉ポリスチレンマレイン酸共重合体、澱粉ポリエチレンオキサイド共重合体、澱粉ポリプロピレン共重合体等の澱粉グラフト重合体が好ましい。
【0061】
また、不感脂化剤に用いることができる天然高分子化合物としては、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉及びコーンスターチ等の澱粉類、カラジーナン、ラミナラン、海ソウマンナン、ふのり、アイリッシュモス、寒天及びアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、トロロアオイ、マンナン、クインスシード、ペクチン、トラガカントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、キャロブガム、ベンゾインガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、レバン等のホモ多糖、並びに、サクシノグルカン及びサンタンガム等のヘトロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼイン及びコラーゲン等の蛋白質が好ましい。
【0062】
水溶性樹脂は、2種以上組み合わせても使用でき、ガム液中に好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%の範囲で含有させることができる。
【0063】
ガム液には、上記の不感脂化剤の他にpH調整剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、親油性物質、湿潤剤、キレート剤、消泡剤などを含有させることができる。
ガム液は、pH3〜12の範囲で使用することが好ましく、そのためpH調整剤が添加されていることが好ましい。pHを3〜12にするためには、ガム液中に鉱酸、有機酸又は無機塩等を添加し調節することが好ましい。その添加量は0.01〜2重量%であることが好ましい。
例えば、鉱酸としては、硝酸、硫酸、リン酸、メタリン酸等が挙げられる。
有機酸としては、酢酸、蓚酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸、レブリン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、また、グリシン、α−アラニン、β−アラニンなどのアミノ酸等が挙げられる。
無機塩としては、硝酸マグネシウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、硫酸ニッケル、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。鉱酸、有機酸又は無機塩等の2種以上を併用してもよい。
【0064】
ガム液に含有させる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、及び、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0065】
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等が好ましく挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン類、アルキルイミダゾリン類、アルキルアミノカルボン酸類等が好ましく挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリプロピレングリコールの分子量200〜5,000、トリメチロールプロパン、グリセリン又はソルビトールのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンの付加物、アセチレングリコール系等が好ましく挙げられる。また、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
【0066】
界面活性剤は、2種以上併用することができる。使用量は特に限定する必要はないが、ガム液の全重量に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましい。
【0067】
防腐剤としては繊維、木材加工、食品、医薬、化粧品、農薬分野等で使用されている公知の防腐剤が使用できる。例えば第四級アンモニウム塩、一価フェノール誘導体、二価フェノール誘導体、多価フェノール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾロピリミジン誘導体、一価ナフトール、カーボネート類、スルホン誘導体、有機スズ化合物、シクロペンタン誘導体、フェニル誘導体、フェノールエーテル誘導体、フェノールエステル誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、ニトリル誘導体、ナフタリン類、ピロール誘導体、キノリン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、第二級アミン、1,3,5−トリアジン誘導体、チアジアゾール誘導体、アニリド誘導体、ピロール誘導体、ハロゲン誘導体、二価アルコール誘導体、ジチオール類、シアン酸誘導体、チオカルバミド酸誘導体、ジアミン誘導体、イソチアゾール誘導体、一価アルコール、飽和アルデヒド、不飽和モノカルボン酸、飽和エーテル、不飽和エーテル、ラクトン類、アミノ酸誘導体、ヒダントイン、シアヌール酸誘導体、グアニジン誘導体、ピリジン誘導体、飽和モノカルボン酸、ベンゼンカルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸誘導体、ビフェニル、ヒドロキサム酸誘導体、芳香族アルコール、ハロゲノフェノール誘導体、ベンゼンカルボン酸誘導体、メルカプトカルボン酸誘導体、第四級アンモニウム塩誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒノキチオール、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、イソキノリン誘導体、アルシン誘導体、チオカルバミン酸誘導体、リン酸エステル、ハロゲノベンゼン誘導体、キノン誘導体、ベンゼンスルホン酸誘導体、モノアミン誘導体、有機リン酸エステル、ピペラジン誘導体、フェナジン誘導体、ピリミジン誘導体、チオファネート誘導体、イミダゾリン誘導体、イソオキサゾール誘導体、アンモニウム塩誘導体等の公知の防腐剤が使用できる。
特に好ましい防腐剤として、ピリジンチオール−1−オキシドの塩、サリチル酸及びその塩、1,3,5−トリスヒドロキシエチルヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,3,5−トリスヒドロキシメチルヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
また、種々のカビ、細菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
好ましい含有量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、ガム液の全重量に対して、0.01〜4重量%の範囲が好ましい。
【0068】
また、ガム液には、親油性物質を含有させておくこともできる。
親油性物質としては、例えばオレイン酸、ラノリン酸、吉草酸、ノニル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などのような炭素数が5〜25の有機カルボン酸、ひまし油などが好ましく挙げられる。
親油性物質は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ガム液中における親油性物質の含有量は、ガム液の全重量に対して、0.005〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましい。
【0069】
その他、ガム液には、必要により湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ポリオキシエチレン等を添加することができる。
湿潤剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。
湿潤剤の好ましい使用量としては、ガム液の全重量に対して、0.1〜5重量%である。
【0070】
また、ガム液には、キレート剤を添加してもよい。
ガム液は、通常濃縮液として市販され、使用時に水道水、井戸水等を加えて希釈して使用される。この希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に悪影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもあるので、キレート剤を添加して、上記欠点を解消することができる。好ましいキレート剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
キレート剤は、ガム液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。含有量は、ガム液の全重量に対して、0.001〜1.0重量%であることが好ましい。
【0071】
また、ガム液は、消泡剤を含有することもでき、特にシリコーン消泡剤が好ましい。また、乳化分散型及び可溶化型等がいずれも使用できる。消泡剤の好ましい含有量は、ガム液の全重量に対して、0.001〜1.0重量%の範囲である。
【0072】
ガム液は、乳化分散型として調製してもよく、その油相としては有機溶剤が用いられ、また、前述したような界面活性剤の助けを借りて、可溶化型(乳化型)にしてもよい。
有機溶剤としては、20℃で水に対する溶解性が5重量%以下であり、かつ沸点160℃以上の有機溶剤であることが好ましい。例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸ジエステル剤、例えば、ジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、例えば、エポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセリド類、例えば、トリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリスクロルエチルフォスフェートなどの燐酸エステル類、例えば、安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類などの凝固点が15℃以下で、1気圧下での沸点が300℃以上の可塑剤が含まれる。
【0073】
その他アルコール系溶剤としては、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−ドデカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、ブチルセロソルブ、オクチレングリコール等が挙げられる。
【0074】
上記化合物を選択するときの条件としては臭気が特に挙げられる。これら溶剤の使用量は、不感脂剤の0.1〜5重量%であることが好ましく、0.5〜3重量%であることがより好ましい。溶剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前述したガム液以外にも、欧州特許第1342568号明細書、欧州特許出願公開第1788444号明細書などに記載されているガム液も好適に使用することができる。
【0076】
ガム液は、水相を温度40℃±5℃に調製し、高速撹拌し、水相の中に調製した油相をゆっくり滴下し充分撹拌後、圧力式のホモジナイザーを通して乳化分散することによって作製されることが好ましい。
【0077】
ガム液の残余の成分は水である。ガム液は、水の含有量を少なくした濃縮液とし、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は、各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0078】
前記現像工程の現像液、水洗工程の水、不感脂化工程のガム液の温度は、それぞれ別々に任意の温度で使用できるが、好ましくは10℃〜50℃の範囲である。
【0079】
なお、本発明において、各工程の後に乾燥工程を設けることも任意に可能である。特に自動処理機の最後の工程に設けることが好ましく、更に水洗工程と不感脂化工程とを有す場合はその間にも設けることがより好ましい。
前記乾燥工程は、ローラーニップで現像液のほとんどを除去した後に、任意の温度の乾燥風を吹き付けることにより行われることが好ましい。
【0080】
(露光工程)
本発明の平版印刷版の製版方法は、前記ネガ型平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)を含む。
前記現像工程に先立って、前記露光工程を行う。前記露光工程においては、前記原版作製工程において得られたネガ型平版印刷版原版を、線画像、網点画像等を有する透明原画を通して露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光することが好ましい。
なお、本発明における「画像」とは、図形、絵写真などのような狭義の画像のほか、文字、数字、記号などをも含む概念であり、それらが混在しているものも含むものとする。
露光に好適な光源としては、カーボンアーク灯、水銀灯、キセノンランプ、メタルハイラドランプ、ストロボ、LED、レーザー光線などが挙げられる。特にレーザー光線が好ましく、760〜1,200nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザー、250〜420nmの光を放射する紫外線半導体レーザー、可視光を放射するアルゴンイオンレーザー、FD−YAGレーザーなどが挙げられる。中でも、製版の簡易化の点からは、白灯又は黄色灯下で作業を行うことができる赤外線を放射するレーザーが好ましい。
赤外レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20μs以内であることが好ましく、また、照射エネルギー量は10〜300mJ/cm2であることが好ましい。露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。
【0081】
(原版作製工程)
本発明の平版印刷版の製版方法は、支持体上に光重合性感光層(単に「感光層」ともいう。)を有するネガ型平版印刷版原版を作製する工程(原版作製工程)を含む。
以下に、本発明に用いることができる平版印刷版原版の構成要素及び成分について説明する。
【0082】
<平版印刷版原版>
本発明に用いられる平版印刷版原版は、画像露光した領域が硬化して画像部となり、未露光部が前述のような現像処理によって除去されることにより非画像部を形成するネガ型の画像形成能を有することを特徴とする。なお、本発明において、「支持体上に感光層を有する」とは、支持体上に感光層が直接接して設けられていても、支持体と感光層との間に他の層が設けられていてもよく、平版印刷版原版において所望により設けられる保護層、下塗り層、中間層、バックコート層など任意の層の存在を否定するものではない。
【0083】
〔感光層〕
本発明に用いられる平版印刷版原版の感光層の代表的な画像形成機構としては、(成分a)増感色素、(成分b)重合開始剤及び(成分c)重合性化合物を含有し、露光領域が重合硬化して画像部を形成する態様が好ましく挙げられる。すなわち、前記感光層は、(成分a)増感色素、(成分b)重合開始剤及び(成分c)重合性化合物を含有することが好ましい。
また、前記感光層は、赤外光感応性の感光層であることが好ましい。
更に、前記感光層は、赤外光感応性であり、かつトリフェニルアルキルボレート塩又はテトラフェニルボレート塩を含有することがより好ましく、銅フタロシアニン顔料を更に含有することが更に好ましい。
また、前記感光層は、赤外光感応性であり、かつボレート塩を含有せず、着色染料を含有することもより好ましい。
これら赤外光感応性の感光層においては、シアニン色素及びヨードニウム塩を含有していることが特に好ましい。
以下に、感光層に含まれる各成分について、順次説明する。
【0084】
(成分a)増感色素
前記感光層は、(成分a)増感色素を含有することが好ましい。
感光層には、例えば、350〜450nmに極大吸収を有する増感色素、500〜600nmに極大吸収を有する増感色素、750〜1,400nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤を添加することで、各々、当業界で通常用いられている405nmのバイオレットレーザ、532nmのグリーンレーザ、803nmのIRレーザに対応した高感度な平版印刷版原版を提供することができる。
まず、350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素について説明する。このような増感色素としては、例えば、メロシアニン色素類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類等を挙げることができる。
【0085】
350〜450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点から好ましい色素は下記式(IV)で表される色素である。
【0086】
【化7】

【0087】
式(IV)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環基又はヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子又はN−(R3)を表す。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、AとR1及びR2とR3はそれぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0088】
式(IV)について更に詳しく説明する。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、一価の非金属原子団であり、好ましくは、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換の芳香族複素環残基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、又は、ハロゲン原子を表す。
【0089】
式(IV)におけるAは、置換基を有してもよい芳香族環基又はヘテロ環基を表し、置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環は、式(IV)中のR1、R2及びR3で記載した置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換の芳香族複素環残基と同様のものが挙げられる。
【0090】
このような増感色素の具体例としては、特開2007−58170号公報の段落0047〜0053に記載の化合物が挙げられる。
【0091】
更に、下記式(V)〜(VII)で表される増感色素も用いることができる。
【0092】
【化8】

【0093】
【化9】

【0094】
式(V)中、R1〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。ただし、R1〜R10の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
式(VI)中、R15〜R32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。ただし、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
【0095】
【化10】

【0096】
式(VII)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、−NR45基又は−OR6基を表し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、k、m及びnはそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
【0097】
また、特開2007−171406号、特開2007−206216号、特開2007−206217号、特開2007−225701号、特開2007−225702号、特開2007−316582号、及び、特開2007−328243号の各公報に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
350〜450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素の好ましい添加量は、感光層の全固形分100重量部に対し、好ましくは0.05〜30重量部、更に好ましくは0.1〜20重量部、最も好ましくは0.2〜10重量部の範囲である。
【0098】
続いて、本発明において好適に用いられる750〜1,400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素について詳述する。
このような増感色素は、赤外線吸収剤を包含し、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、感光層中に併存する重合開始剤に作用して、重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させるものと推定されている。いずれせよ、750〜1,400nmに極大吸収を有する増感色素を添加することは、750〜1,400nmの波長を有する赤外線レーザー光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
【0099】
赤外線吸収剤は、750〜1,400nmの波長域に吸収極大を有する染料又は顔料であることが好ましい。
【0100】
染料としては、市販の染料、及び、例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0101】
【化11】

【0102】
式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、Phはフェニル基を表し、X2は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を表し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを表す。Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基及びハロゲン原子よりなる群から選択される置換基を表す。
【0103】
【化12】

【0104】
1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0105】
Ar1及びAr2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。
好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。
1及びY2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を表す。
3及びR4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を表す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。
5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。
また、Za-は、対アニオンを表す。ただし、式(a)で表されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。Za-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又は、スルホン酸イオンが好ましく、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又は、アリルスルホン酸イオンが特に好ましい。また、高感度化の面からは、トリフェニルアルキルボレートイオン、テトラフェニルボレートイオンも好ましく用いられる。なお、対イオンとして、ハロゲン化物イオンを含有してないものが特に好ましい。
【0106】
本発明においては、増感色素として水溶性のシアニン染料を用いることが好ましい。
水溶性のシアニン染料としては、例えば、特開2004−351823号公報に記載のものが挙げられ、分子内に親水性基として、スルホン酸基及び/又はその塩、ホスホン酸基及び/又はその塩、カルボン酸基及び/又はその塩、並びに、水酸基から選ばれる少なくともいずれかを有することが好ましい。
中でも、スルホン酸基及び/又はその塩、ホスホン酸基及び/又はその塩を分子内に2個以上有し、対イオンが無機イオンであることが更に好ましい。
【0107】
以下に、本発明に好適な水溶性シアニン染料の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、下記具体例中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0108】
【化13】

【0109】
【化14】

【0110】
【化15】

【0111】
【化16】

【0112】
【化17】

【0113】
顔料としては、市販の顔料、及び、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0114】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち、好ましいものはカーボンブラックである。
【0115】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0116】
顔料の粒径は、0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、0.1μm〜1μmの範囲にあることが特に好ましい。上記範囲であると、感光層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な感光層が得られる。
【0117】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0118】
増感色素は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0119】
増感色素の含有量は、感光層中における均一性や感光層の耐久性の観点から、感光層を構成する全固形分に対し、0.01〜50重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましく、染料の場合、0.5〜10重量%であることが特に好ましく、顔料の場合、0.1〜10重量%であることが特に好ましい。
【0120】
(成分b)重合開始剤
前記感光層には、重合開始剤(以下、「開始剤化合物」ともいう。)を含有することが好ましい。
開始剤化合物は増感色素の電子励起状態に起因する電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用をうけて、化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基から選択される少なくとも1種を生成する化合物である。以下、このようにして生じたラジカル、酸、塩基を単に活性種と呼ぶ。開始剤化合物を使用することにより、実用上十分な感度が得られる。増感色素と開始剤化合物とを併用する一つの態様として、これらを、適切な化学的方法(増感色素と開始剤化合物との化学結合による連結等)によって単一の化合物として利用することも可能である。
【0121】
通常これらの開始剤化合物の多くは、次の(1)〜(3)に代表される初期化学プロセスのいずれかを経て、活性種を生成するものと考えられる。すなわち、(1)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(2)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(3)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解である。個々の開始剤化合物が(1)〜(3)のどのタイプに属するかに関しては、曖昧な場合も多いが、本発明においては、これらいずれのタイプの開始剤化合物と組み合わせても非常に高い増感効果が得られる。
【0122】
本発明における開始剤化合物としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、トリハロメチル化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、鉄アレーン錯体が挙げられる。中でも、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、オニウム塩、トリハロメチル化合物及びメタロセン化合物よりなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が特に好ましい。重合開始剤は、2種以上を適宜併用することもできる。
【0123】
ヘキサアリールビイミダゾール系化合物としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
ヘキサアリールビイミダゾール系化合物は、350〜450nmに極大吸収を有する増感色素と併用して用いられることが特に好ましい。
【0124】
本発明において好適に用いられるオニウム塩(本発明においては、酸発生剤としてではなく、イオン性の重合開始剤として機能する。)は、下記式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
【0125】
【化18】

【0126】
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数2〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数6〜12のチオアリール基が挙げられる。
11-は1価の陰イオンを表し、具体的には、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、トリフェニルアルキルボレートイオン、テトラフェニルボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、又は、スルフィン酸イオンが好ましく、高感度化の面から、トリフェニルアルキルボレートイオン、テトラフェニルボレートイオンが好ましい。
【0127】
式(RI−II)中、Ar21及びAr22はそれぞれ独立に、置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数2〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数6〜12のチオアリール基が挙げられる。
21-は1価の陰イオンを表す。具体的には、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも、安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、トリフェニルアルキルボレートイオン、テトラフェニルボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましく、高感度化の面から特に、トリフェニルアルキルボレートイオン、テトラフェニルボレートイオンが好ましい。
【0128】
式(RI−III)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立に、置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基、アルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。中でも反応性、安定性の面から好ましいのは、アリール基である。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数2〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数6〜12のチオアリール基が挙げられる。
31-は1価の陰イオンを表す。具体例としては、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、トリフェニルアルキルボレートイオン、テトラフェニルボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましく、高感度化の面から特に、トリフェニルアルキルボレートイオン、テトラフェニルボレートイオンが好ましい。
また、特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンも好ましく用いられる。
オニウム塩は、750〜1,400nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤と併用して用いられることが特に好ましい。
【0129】
その他、特開2007−171406号、特開2007−206216号、特開2007−206217号、特開2007−225701号、特開2007−225702号、特開2007−316582号、特開2007−328243号の各公報に記載の重合開始剤を好ましく用いることができる。
【0130】
本発明における重合開始剤は、1種単独又は2種以上の併用によって好適に用いられる。
本発明における感光層中の重合開始剤の使用量は、感光層全固形分の重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜15重量%であることがより好ましく、1.0〜10重量%であることが更に好ましい。
【0131】
(成分c)重合性化合物
前記感光層は、(成分c)重合性化合物を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる(成分c)重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、2個以上有する化合物であることがより好ましい。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又は、それらの共重合体、並びに、それらの混合物などの化学的形態をもつ。
【0132】
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類又はアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び、単官能又は多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲノ基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0133】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0134】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等が挙げられる。
【0135】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられる。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
【0136】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
前述のエステルモノマーは、混合物としても使用することができる。
【0137】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0138】
また、イソシアネートとヒドロキシ基との付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(ii)で示されるヒドロキシ基を有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH 式(ii)
(ただし、R4及びR5はそれぞれ独立に、H又はCH3を表す。)
【0139】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0140】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号の各公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に記載の光硬化性モノマー及びオリゴマーも使用することができる。
【0141】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、感光層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上する場合がある。また、支持体や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0142】
本発明において、(成分c)重合性化合物の含有量は、感光層中の全不揮発性成分(全固形分)に対して、5〜80重量%であることが好ましく、25〜75重量%であることがより好ましい。
そのほか、重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から、適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施してもよい。
【0143】
(成分d)バインダーポリマー
前記感光層は、1種又は2種以上の(成分d)バインダーポリマーを含むことが好ましい。
バインダーポリマーとしては、ネガ型平版印刷版原版の感光層に使用されることが当業界で知られているものなどの様々なポリマーのうちのいずれも限定されず用いることができる。
本発明に用いることができるバインダーポリマーの重量平均分子量は、2,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜200,000であることがより好ましい。バインダーポリマーの酸価(mgKOH/g)は、周知の方法を使用して求めた場合に、20〜400であることが好ましい。
【0144】
いくつかのバインダーポリマーは、水に不溶性であるが、慣用されているアルカリ性現像液には可溶性である。かかるバインダーポリマーの例としては、例えば欧州特許第1,182,033号、並びに、米国特許第6,309,792号、第6,352,812号、第6,569,603号及び第6,893,797号の各明細書などに記載されているものなどの、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから誘導されたポリマー、ポリビニルアセタール、フェノール系樹脂、スチレン及びその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、N−置換環状イミド又は無水マレイン酸から誘導されたポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第4,774,163号明細書に記載されているものなどのペンダントN−カルバゾール部分を有するビニルカルバゾールポリマー、並びに米国特許第6,899,994号明細書及び第4,511,645号明細書、並びに、欧州特許出願公開第1,182,033号明細書に記載されているものなどのペンダントビニル基を有するポリマーも有用である。
【0145】
本発明に有用なバインダーポリマーは、疎水性骨格を有し、以下のa)及びb)の構成繰り返し単位の両方又はb)の構成繰り返し単位のみを含んでなる。
a)疎水性骨格に直接結合したペンダントシアノ基を有する反復単位、及び、
b)ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含んでなるペンダント基を有する反復単位。
これらのバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)セグメント、好ましくはポリ(エチレンオキシド)セグメントを含んでなる。これらのバインダーポリマーは、主鎖ポリマー及びポリ(アルキレンオキシド)側鎖を有するグラフトコポリマーでも、(アルキレンオキシド)含有構成繰り返し単位のブロックと非(アルキレンオキシド)含有反復単位のブロックとを有するブロックコポリマーでもよい。グラフトコポリマー及びブロックコポリマーのどちらも、更に、疎水性骨格に直接結合したペンダントシアノ基を有していてもよい。アルキレンオキシド構成単位は、炭素数1〜6のアルキレンオキシド基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキレンオキシド基であることがより好ましい。アルキレン部分は、直鎖状でも、分岐状でも、それらの置換体でもよい。ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)セグメントが好ましく、ポリ(エチレンオキシド)セグメントが最も好ましい。
【0146】
実施形態によっては、バインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含んでなる構成繰り返し単位のみを含んでいてもよく、他の実施形態では、ポリマーバインダーは、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含んでなる構成繰り返し単位と、疎水性骨格に直接結合したペンダントシアノ基を有する構成繰り返し単位とを含んでいてもよい。たんに一例として、かかる構成繰り返し単位は、シアノ、シアノ置換又はシアノ末端アルキレン基を含んでなるペンダント基を含んでいてもよい。反復単位は、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート又はこれらの組み合わせなどのエチレン性不飽和モノマーから誘導できる。しかし、他の従来手段によりシアノ基をポリマー中に導入することができる。かかるシアノ基含有バインダーポリマーの例は、例えば、米国特許出願公開第2005/003285号明細書に記載されている。
【0147】
一例として、バインダーポリマーは、以下の好適なエチレン性不飽和モノマー若しくはマクロマーの組み合わせ又は混合物の重合により形成できる。
A)アクリロニトリル、メタクリロニトリル又はこれらの組み合わせ、
B)アクリル酸又はメタクリル酸のポリ(アルキレンオキシド)エステル、例えばポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエステルメタクリレート又はこれらの組み合わせ、及び、
C)必要に応じて、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ヒドロキシスチレン、アクレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのモノマー、又は、かかるモノマーの組み合わせ。
【0148】
かかるバインダーポリマー中のポリ(アルキレンオキシド)セグメントの量は、0.5〜60重量%であることが好ましく、2〜50重量%であることがより好ましく、5〜40重量%であることが更に好ましく、5〜20重量%であることが特に好ましい。ブロックコポリマー中の(アルキレンオキシド)セグメントの量は、5〜60重量%であることが好ましく、10〜50重量%であることがより好ましく、10〜30重量%であることが更に好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)側鎖を有するポリマーバインダーが離散粒子の形態で存在することも可能である。
【0149】
バインダーポリマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、スチレン及びスチレン誘導体、ビニルカルバゾール、並びに、ポリ(アルキレングリコール)(メタ)アクリレートの1又は2種以上から誘導された構成繰り返し単位を含むものが好ましい。また、バインダーポリマーは、かかるモノマーの2又は3種以上に由来する構成繰り返し単位を含むものがより好ましい。
【0150】
本発明において、バインダーポリマーは、ビニルカルバゾール化合物由来のモノマー単位を含むポリマーであることが特に好ましく、ビニルカルバゾール化合物由来のモノマー単位を含み、かつアクリロニトリル由来のモノマー単位を更に含むポリマーであることが最も好ましい。また、上記ポリマーは、アクリルポリマー(「アクリル樹脂」ともいう。)であることが好ましい。なお、アクリルポリマーとは、(メタ)アクリレート化合物を単独重合又は共重合した重合体である。
【0151】
バインダーポリマーは、感光層の全固形分に対し、10〜70重量%であることが好ましく、20〜50重量%であることがより好ましい。
【0152】
また、前記感光層中には、層中に均一に分散される、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーを含むことが好ましい。このハイブリッドポリマーは、粒子形状であることが更に好ましい。このハイブリッドポリマーの重量平均分子量は、5万〜50万であり、その粒子の平均粒径は10〜10,000nmであって、30〜500nmであることが好ましく、30〜150nmであることが更に好ましい。これらのハイブリッドポリマーは、製造原料の構造により、芳香族であってもよく、脂肪族であってもよい。また、2つ以上のウレタン−アクリルハイブリッドポリマー粒子を混合して用いてもよい。例えば、Hybridur 570ポリマー分散物と、Hybridur 870ポリマー分散物を混合して使用可能である。
【0153】
本発明に用いることができるウレタン−アクリルハイブリッドポリマーは、一般に次のようにして作製することができる。まずポリオールと過剰のジイソシアネートとを反応させ、水分散されたポリウレタンプレポリマーを得る。プレポリマーはカルボキシ基を有することが好ましい。次に、プレポリマーは、アクリレートモノマーや置換/無置換のスチレンモノマーなど、1つ以上のビニルモノマーと混合され、更に第三級アミンを加えて、これらを水中に分散する。この水分散液に、油溶性の開始剤を添加して重合を開始することによって、コロイド粒子状に水中に分散されたハイブリッドポリマーを得ることが出来る。この分散液は、単にポリウレタン分散液とアクリルの乳化液の混合物でなく、ウレタンとアクリルのポリマー化が同時起こり完了しているものである。このウレタン−アクリルハイブリッドポリマー粒子は、負電荷により分散安定化していることが好ましい。
【0154】
また、米国特許第3,684,758号明細書に記載されているように、ポリウレタン分散物をまず作製し、その存在下にアクリルモノマーを加えて、アクリルポリマーを形成する方法も、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー分散物を得る有用な方法のひとつである。
【0155】
また別の方法は、ウレタンプレポリマーとアクリルモノマーとを一緒に水に分散させ、ウレタン縮重反応とアクリル重合とを同時に進行させる方法も、例えば、米国特許第4,644,030号明細書、米国特許第5,173,526号明細書に記載されている。
【0156】
ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーのその他の製法と物性に関する詳細は、JCT Coatings Tech., 2(13), 28〜36(2005年2月)に、Galgociらによって記述されている。
【0157】
本発明に用いることができるるウレタン−アクリルハイブリッドポリマーとしては、特にウレタンの原料として用いられるジイソシアネート化合物が、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートであることが特に好ましい。すなわち、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーが、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選ばれた化合物由来のモノマー単位を有することが特に好ましい。
【0158】
本発明に好ましく用いられるウレタン−アクリルハイブリッドポリマーは、エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社(アレンタウン、ペンシルベニア州)から、例えばHybridur 540、560、570、580、870、878、880のウレタン−アクリルハイブリッドポリマー粒子の分散液として、市販品を入手可能である。一般に、これらの分散液は、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー粒子を少なくとも30重量%の固形分として含有し、市販品として入手可能な界面活性剤、消泡剤、分散剤、防腐剤、更には付加的に顔料や水分散性有機溶媒を含むことができる適切な水性媒体中に分散されている。
【0159】
ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーは、感光層の全固形分に対して、10〜70重量%含有することが好ましく、10〜50重量%含有することがより好ましい。
【0160】
−その他の成分−
(1)界面活性剤
本発明における感光層には、現像性を促進するため、及び、塗布面状を向上させるため、界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0161】
好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0162】
界面活性剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、感光層の全固形分に対して、0.001〜10重量%であることが好ましく、0.01〜5重量%であることがより好ましい。
【0163】
(2)着色剤
本発明における感光層には、可視光域に大きな吸収を持つ顔料、又は、染料を画像の着色剤として使用することができる。着色剤を用いると、画像形成後の画像部と非画像部との区別がつきやすくなるので、添加することが好ましい。
本発明に用いられる顔料としては、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を挙げることができる。本発明においては、銅フタロシアニン顔料を用いることが画像形成感度、耐刷性の観点から特に好ましい。
一方、染料に関しては、感光層中にトリフェニルアルキルボレート塩、テトラフェニルボレート塩を含有する場合(赤外線吸収染料(IR染料)や重合開始剤のカウンターイオンとして存在する場合も含む。)には、理由は明確でないが平版印刷版原版が微弱な光でカブリ易くなってしまい、製版時の取扱い性が著しく劣ってしまう場合もあるが、上記ボレート塩を感光層に含まない場合には、上記顔料同様に着色剤として有用に用いることができる。
染料の具体例としては、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI45170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び、特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。
着色剤の好適な添加量は、感光層の全固形分に対し、0.01〜10重量%である。
【0164】
(3)焼き出し剤
本発明における感光層には、焼き出し画像の生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。
このような化合物としては、例えば、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0165】
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、感光層固形分に対して、0.01〜10重量%であることが好ましい。
【0166】
(4)重合禁止剤
本発明における感光層には、感光層の製造中又は保存中において、(成分c)重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、感光層の全固形分に対して、0.01〜5重量%であることが好ましい。
【0167】
(5)高級脂肪酸誘導体等
本発明における感光層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。
高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層の全固形分に対して、0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0168】
(6)可塑剤
本発明における感光層は、現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、感光層の全固形分に対して、30重量%以下であることが好ましい。
【0169】
(7)無機粒子
本発明における感光層は、硬化皮膜強度向上及び現像性向上のために、無機粒子を含有してもよい。
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム、又は、これらの混合物が好適に挙げられる。これらは皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであることが好ましく、0.5μm〜3μmであることがより好ましい。上記範囲であると、感光層中に安定に分散して、感光層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機粒子の含有量は、感光層の全固形分に対して、40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
【0170】
(8)低分子親水性化合物
本発明における感光層は、耐刷性を低下させることなく現像性を向上させることから、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩等が挙げられる。
これらの中でも、有機スルホン酸、有機スルファミン酸、有機硫酸のナトリウム塩やリチウム塩などの有機硫酸塩が好ましく使用される。
【0171】
これらの化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどなく、長鎖アルキルスルホン酸塩や長鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩などが良好に用いられる前述の界面活性剤とは明確に区別される。
【0172】
低分子親水性化合物の感光層への添加量は、感光層の全固形分量に対し、0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましく、2〜8重量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、良好な現像性と耐刷性が得られる。
低分子親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0173】
(9)感脂化剤
本発明に用いることができる平版印刷版原版では、着肉性向上のため、感光層及び/又は保護層に感脂化剤としてホスホニウム化合物を添加することができる。
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報や特開2007−50660号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0174】
感脂化剤としてはホスホニウム化合物の他に、含窒素化合物も好適なものとして挙げられる。好ましい含窒素化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類でもよく、またイミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類の構造でもよい。これらの中でも、第四級アンモニウム塩類、ピリジニウム塩類が好ましく用いられる。
【0175】
感光層又は保護層への感脂化剤の添加量としては、各層の固形分中、0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が更に好ましい。上記範囲であると、良好なインキ着肉性が得られる。
【0176】
(10)連鎖移動剤又は共増感剤
前記感光層には、感度を一層向上させる、又は、酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する連鎖移動剤又は共増感剤などと呼ばれる公知の化合物を加えてもよい。
このような化合物の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、N−フェニルグリシン、N−フェニルアスパラギン酸、及び、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等のN,N−ジアルキルアニリン誘導体等が挙げられる。
【0177】
連鎖移動剤として作用する別の例としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が挙げられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、又は、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。
【0178】
前記感光層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。中でも、特開2006−091479号公報等に記載のチオール化合物が特に好適に使用される。連鎖移動剤としてこのチオール化合物を用いることによって、臭気の問題、及び、感光層から蒸発や他の層への拡散による感度減少を回避し、保存安定性に優れ、更には高感度で高耐刷の平版印刷版原版が得られる。
【0179】
これらの増感剤あるいは連鎖移動剤の使用量は、感光層の全固形分に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜15重量%であることがより好ましく、1.0〜10重量%であることが更に好ましい。
【0180】
〔感光層の形成〕
本発明における感光層は、必要な上記各成分を溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥することで形成されることが好ましい。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
溶剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
塗布液の固形分濃度は、1〜50重量%であることが好ましい。
【0181】
本発明における感光層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散又は溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して、多層構造の感光層を形成することも可能である。
【0182】
塗布、乾燥後に得られる支持体上の感光層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、0.3〜3.0g/m2が好ましい。上記範囲であると、良好な感度と感光層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
【0183】
〔保護層〕
本発明に用いることができる平版印刷版原版は、感光層の上に保護層(オーバーコート層)を備えることが好ましい。
保護層は、酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、感光層での傷の発生防止、高照度レーザー露光時のアブレーション防止などの機能を有する層が好ましく例示できる。
以下、保護層を構成する成分等について説明する。
【0184】
通常、平版印刷版の露光処理は、大気中で実施する。露光処理によって生じる感光層中での画像形成反応は、大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物によって阻害され得る。保護層は、この酸素、塩基性物質等の低分子化合物が感光層へ混入することを防止し、結果として大気中での画像形成阻害反応を抑制する。したがって、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性を低くすることであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去することができるものである。このような特性を有する保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。
【0185】
保護層に用いられる材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。
これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
【0186】
上記材料中で比較的有用な素材としては、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム等が好適であり、なかでも、水を溶媒として塗布可能であり、かつ、印刷時における湿し水により容易に除去されるという観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾールが好ましい。その中でも、ポリビニルアルコール(PVA)は、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
【0187】
保護層に用いることができるポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するかぎり、一部がエステル、エーテル、及び、アセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を含有していてもよい。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、更にはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等も好ましく用いられる。
これらの中でも、アニオン変性ポリビニルアルコールが、前記現像液中での分散安定性が良好であり最も好ましい。このアニオン変性ポリビニルアルコールは、保護層全固形分中の10〜50重量%含有することが好ましく、20〜40重量%含有することがより好ましい。
【0188】
これらポリビニルアルコールは加水分解度(けん化度)71〜100モル%、重合度300〜2400の範囲の化合物が好適に挙げられる。具体的には、(株)クラレ製のPVA−105,PVA−110,PVA−117,PVA−117H,PVA−120,PVA−124,PVA−124H,PVA−CS,PVA−CST,PVA−HC,PVA−203,PVA−204,PVA−205,PVA−210,PVA−217,PVA−220,PVA−224,PVA−217EE,PVA−217E,PVA−220E,PVA−224E,PVA−405,PVA−420,PVA−613,L−8等が挙げられる。
また、変性ポリビニルアルコールとしては、アニオン変性部位を有するKL−318、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、CKS−50、カチオン変性部位を有するC−318、C−118、CM−318、末端チオール変性部位を有するM−205、M−115、末端スルフィド変性部位を有するMP−103、MP−203、MP−102、MP−202、高級脂肪酸とのエステル変性部位を末端に有するHL−12E、HL−1203、その他反応性シラン変性部位を有するR−1130、R−2105、R−2130等が挙げられる。
【0189】
また、保護層は、無機質の層状化合物、すなわち、無機化合物であって層状構造を有し、かつ、平板状の形状を有する化合物を含有することが好ましい。このような無機質の層状化合物を併用することにより、酸素遮断性はさらに高まり、また、保護層の膜強度が一層向上して耐キズ性が向上する他、保護層にマット性を付与することができる。
無機質の層状化合物としては、例えば、式:A(B,C)2〜5410(OH,F,O)2(ただし、AはLi、K、Na、Ca、Mg又は有機カチオンを表し、B及びCはそれぞれ独立に、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg又はVを表し、DはSi又はAlを表す。)で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0190】
雲母化合物のうち、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si410)F2等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si410)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。また、合成スメクタイトも有用である。
【0191】
前記雲母化合物の中でも、合成の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、雲母、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+、アミン塩、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩等の有機カチオンの陽イオンを吸着している。これらの層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明に有用であり、特に、入手容易性、品質の均一性の観点から、膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
【0192】
層状化合物の形状は平板状であり、拡散制御の観点からは、その厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。したがって、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0193】
層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましく、1〜5μmであることが特に好ましい。上記範囲であると、酸素や水分の透過の抑制が十分であり、また、塗布液中での分散安定性が十分であり、安定的な塗布を行うことができる。また、層状化合物の粒子における平均の厚さは、0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましく、0.01μm以下であることが更に好ましい。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μmであることが好ましい。
【0194】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0195】
次に、層状化合物を保護層に用いる場合の一般的な分散方法の例について述べる。
まず、水100重量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10重量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速撹拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物5〜10重量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。
この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製することが好ましい。
【0196】
保護層中における無機質の層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーポリマーの量に対し、重量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の重量比に適合することが好ましい。
【0197】
保護層の他の添加物として、例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、ソルビトール等を前記水溶性又は水不溶性ポリマーに対して数重量%相当量添加して可撓性を付与することができる。また、皮膜の物性改良のため水溶性の(メタ)アクリル系ポリマー、水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。
【0198】
更に、本発明における保護層は後述のような保護層用塗布液を用いて形成されるが、この塗布液には、感光層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
すなわち、保護層用塗布液には、塗布性を向上させためのアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、具体的には、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。
界面活性剤の添加量は、前記水溶性又は水不溶性ポリマーに対して0.1〜100重量%添加することができる。
【0199】
また、画像部との密着性を良化させるため、例えば、特開昭49−70702号公報及び英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルション、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を20〜60重量%混合させ、感光層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。
【0200】
更に、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
【0201】
保護層の形成は、上記保護層成分を溶媒に分散又は溶解して調製された保護層用塗布液を、感光層上に塗布、乾燥して行われる。
塗布溶剤は、バインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。
【0202】
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書又は特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。
具体的には、例えば、保護層を形成する際には、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が用いられる。
【0203】
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.02〜3g/m2の範囲であることが好ましく、0.05〜1g/m2の範囲であることがより好ましく、0.1〜0.4g/m2の範囲であることが最も好ましい。
【0204】
〔支持体〕
前記平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。
好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が特に好ましい。
【0205】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等が挙げられる。合金中の異元素の含有量は、10重量%以下であることが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0206】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すことが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び感光層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0207】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0208】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0209】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。例えば、硫酸、塩酸、シュウ酸、リン酸、クロム酸又はそれらの混酸が好ましく用いられる。これらの中でも、硫酸、シュウ酸、リン酸がより好ましく、リン酸が更に好ましい。それらの電解質の濃度は、電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、電解質濃度1〜80重量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であることが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であることが好ましく、1.5〜4.0g/m2であることがより好ましい。上記範囲であると、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0210】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などを一層改良するため、必要に応じて、特開2001−253181号や特開2001−322365号の各公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろん、これら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知のいずれの方法も行うことができる。例えば、封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
【0211】
本発明に用いられる封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、中でも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理及び熱水による封孔処理が好ましい。以下詳細に説明する。
【0212】
<1>無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0213】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。
【0214】
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、更に、リン酸塩化合物を含有することが好ましい。リン酸塩化合物を含有すると、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、現像性及び耐汚れ性を向上させることができる。
【0215】
リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物との組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有することが好ましい。
【0216】
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、現像性及び耐汚れ性の向上の点で、0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、また、溶解性の点で、20重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。
【0217】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の重量比が、1/200〜10/1であることが好ましく、1/30〜2/1であることがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、また、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であることが好ましく、pH2以上であることがより好ましく、また、pH11以下であることが好ましく、pH5以下であることがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回又は複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であることが好ましく、3秒以上であることがより好ましく、また、100秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。
【0218】
<2>水蒸気による封孔処理
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧又は常圧の水蒸気を連続的に又は非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、また、105℃以下であることが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧(1気圧)−50mmAq)〜(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105〜1.043×105Pa)であることが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であることが好ましく、3秒以上であることがより好ましく、また、100秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。
【0219】
<3>熱水による封孔処理
熱水による封孔処理としては、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)又は有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、また、100℃以下であることが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であることが好ましく、3秒以上であることがより好ましく、また、100秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。
【0220】
前記親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,136,636号明細書に記載されているようなポリアクリル酸で処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属シリケート処理やポリビニルホスホン酸処理が好ましく、ポリビニルホスホン酸処理が更に好ましい。
【0221】
本発明における支持体として、ポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが好ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモン及び遷移金属よりなる群から選択された少なくとも一つの元素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネート又はアルミネートの加水分解及び縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0222】
また、本発明における支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側又は反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けることが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
【0223】
支持体は、その中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであることが好ましい。上記範囲であると、感光層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
支持体の厚さは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましい。
【0224】
〔バックコート層〕
支持体に表面処理を施した後又は下塗り層(後述)を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。なかでも、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物を用いることが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0225】
〔下塗り層〕
本発明に用いられる平版印刷版原版においては、必要に応じて、感光層と支持体との間に下塗り層を設けることができる。
下塗り層は、未露光部において、感光層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。また、赤外レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散せず効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。
【0226】
下塗り層用化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報に記載のエチレン性不飽和結合を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
【0227】
下塗り層に用いられる化合物は、支持体表面への吸着性を有することが好ましい。支持体表面への吸着性の有無に関しては、例えば、以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布夜を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に、試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば、蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィ測定などで実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物である。
【0228】
下塗り層に用いられる化合物に、支持体表面への吸着性を付与するには、基板吸着性基(以下、単に「吸着性基」ともいう。)の導入により行うことができる。吸着性基は、支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)、あるいは官能基(例えば、ヒドロキシ基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基又はカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシル基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2、−COCH2COCH3が挙げられる。中でも、−OPO32、及び、−PO32が特に好ましい。また、これら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基が挙げられる。中でも、アンモニウム基、ホスホニウム基及びスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基及びホスホニウム基が更に好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
【0229】
下塗り層用化合物として好適な高分子化合物を合成する際に用いられる、吸着性基を有するモノマーの好ましい例としては、下記式(U1)又は式(U2)で表される化合物が挙げられる。
【0230】
【化19】

【0231】
式(U1)及び(U2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基を表す。
1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが更に好ましい。また、R2及びR3は、水素原子であることが特に好ましい。
Zは、支持体表面に吸着する官能基であり、前記吸着性基を含む。
【0232】
Lは、単結合又は2価の連結基を表す。
Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)又は2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基又は複素環基)又はカルボニル(−CO−)とを組み合わせた基であることが好ましい。
【0233】
前記2価の脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。
前記2価の脂肪族基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が更に好ましい。また、2価の脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。さらに、2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6〜20が好ましく、6〜15がより好ましく、6乃至10が更に好ましい。また、前記2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の複素環基は、複素環として5員環又は6員環を有することが好ましい。また、複素環に他の複素環、脂肪族環又は芳香族環が縮合していてもよい。前記2価の複素環基は、置換基をしていてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
【0234】
Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCH2CH2n−(nは2以上の整数)を含むことが好ましい。
式(U1)において、Xは、酸素原子(−O−)又はイミノ(−NH−)を表す。Xは、酸素原子であることが好ましい。
式(U2)において、Yは炭素原子又は窒素原子を表す。Yが窒素原子でY上にLが連結し第四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではなく、Zが水素原子でもよい。
【0235】
以下に、式(U1)又は式(U2)で表される代表的な化合物の例を示す。なお、下記化合物において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0236】
【化20】

【0237】
下塗り層に用いられる化合物は、親水性基を有することが好ましい。
親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等が好適に挙げられる。中でも、高親水性を示すスルホ基が好ましい。
【0238】
スルホ基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸,アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。中でも、親水性能及び合成の取り扱いから、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0239】
下塗り層に用いられる化合物は、架橋性基を有することが好ましい。架橋性基によって画像部との密着性の向上が得られる。下塗り層に用いられる化合物に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子化合物の側鎖中に導入したり、高分子化合物の極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物とで塩構造を形成させたりして導入することができる。
【0240】
側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又は−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0241】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−(CH2nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2n−O−CO−CR1=CR23、及び(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2又はR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、及びCH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
下塗り層用の高分子化合物の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドが好適である。
【0242】
下塗り層用化合物中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合の含有量)は、化合物1g当たり、0.1〜10.0mmolであることが好ましく、1.0〜7.0mmolであることがより好ましく、2.0〜5.5mmolであることが特に好ましい。上記範囲であると、良好な感度と汚れ性の両立、及び良好な保存安定性が得られる。
【0243】
本発明において好ましい下塗り層用化合物としては、基板吸着性基及び架橋性基を有する化合物が挙げられる。かかる化合物は、少なくとも吸着性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーを重合して得る化合物を包含する。
【0244】
下塗り層用の高分子化合物は、重量平均分子量が5,000以上であることが好ましく、1万〜30万であることがより好ましく、また、数平均分子量が1,000以上であることが好ましく、2,000〜25万であることがより好ましい。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
下塗り層用の高分子化合物は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0245】
下塗り用の化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
下塗り層用塗布液は、上記下塗り用の化合物を有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど)及び/又は水に溶解して得られる。
下塗り層用塗布液には、赤外線吸収剤を含有させることもできる。
下塗り層用塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であることが好ましく、1〜30mg/m2であることがより好ましい。
【0246】
本発明の平版印刷版の製版方法により得られた平版印刷版は、例えば、印刷機の版胴に装着され、湿し水と印刷インキとが供給されることにより、好適に多数枚の印刷物を提供することができる。
【実施例】
【0247】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は重量基準である。また、樹脂の化学構造における括弧の右下の数字は、特に断りのない限り、モル比を表す。
【0248】
<ポリマー粒子の合成及び感光層塗布液に使用される化学物質の用語の説明>
・PEGMA:Sigma-Aldrich社(St. Louis, Missouri)から入手可能なポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートの50重量%水溶液、平均数平均分子量(Mn)〜2,080
・Hybridur 580:Air Products and Chemicals社より入手可能なウレタン−アクリルハイブリッドポリマー分散液(40%)
・Hybridur 870:Air Products and Chemicals社より入手可能なウレタン−アクリルハイブリッドポリマー分散液(40%)
・SR399:サートマー・ジャパン(株)から入手可能なジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・NK-Ester A-DPH:中村合成化学工業(株)から入手可能なジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・CD9053:サートマー・ジャパン(株)から入手可能な3官能有機酸のエステル化合物
・Fluor N2900:Cytnix社より入手可能な界面活性剤
・Masurf FS-1520:Mason Chemical社から入手可能なフッ化アルキル基含有両性界面活性剤
【0249】
<バインダーポリマー1の合成>
マグネチックスターラー、ウォーターバス、及びN2入口を備えた三口フラスコ内に、AIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、Vazo−64、Du Pont社から入手、1.6部)、メチルメタクリレート(20部)、アクリロニトリル(24部)、N−ビニルカルバゾール(20部、Polymer Dajac社から入手)、メタクリル酸(16部)、及び、ジメチルアセトアミド(DMAC、320部)を入れた。反応混合物を60℃まで加熱し、そしてN2保護下で一晩(16時間)にわたって撹拌した。これにより、バインダーポリマー1のDMAC20%溶液を得た。
バインダーポリマー1の組成は、メチルメタクリレート/アクリロニトリル/N−ビニルカルバゾール/メタクリル酸=21/48/11/20(モル比)であり、テトラヒドロフラン中で、ゲル透過クロマトグラフィを用いて分子量を測定したところ、Mw(重量平均分子量)は約52,000であった。
【0250】
<バインダーポリマー2の合成>
上記のようにして合成したバインダーポリマー1のDMAC溶液を200部量り取り、これに、水(20部)中の水酸化カリウム(2.6部)をゆっくりと添加し、粘性液体を形成した。混合物を10分間にわたって撹拌した後、臭化アリル(6.7部)を添加し、そして混合物を3時間にわたって55℃で撹拌した。DMAC(20部)中の36%濃塩酸(6部)をフラスコに添加し、そして反応混合物を更に3時間にわたって撹拌した。結果として生じた反応混合物を次いで、12,000部の氷水と20部の濃塩酸との混合物中に、撹拌しながらゆっくりと滴下した。結果として生じた沈殿物を濾過し、1,608部のプロパノールで洗浄し、これに続いて2,000部の水で洗浄した。濾過後に白い粉末を得た。粉末を室温(10〜25℃)で一晩にわたって、次いで50℃で3時間にわたって乾燥させることにより、約40部のバインダーポリマー2の固形物を得た。
バインダーポリマー2の組成は、メチルメタクリレート/アクリロニトリル/N−ビニルカルバゾール/メタクリル酸アリル=21/48/11/20(モル比)であり、前記同様にして測定したMwは約57,000であった。
【0251】
<バインダーポリマー3の合成>
アクリロニトリルを使用せず、メチルメタクリレートの量を65部にし、DMACの量を400部にした以外は、上記のバインダーポリマー1の合成と同様にして、バインダーポリマー3のDMAC20%溶液を得た。
バインダーポリマー3の組成は、メチルメタクリレート/N−ビニルカルバゾール/メタクリル酸=69/11/20(モル比)であり、前記同様にして測定したMwは約55,000であった。
【0252】
<バインダーポリマー4の合成>
N−ビニルカルバゾールを使用せず、メチルメタクリレートの量を30部にし、DMACの量を280部にした以外は、上記のバインダーポリマー1の合成と同様にして、バインダーポリマー4のDMAC20%溶液を得た。
バインダーポリマー4の組成は、メチルメタクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸=32/48/20(モル比)であり、前記同様にして測定したMwは約50,000であった。
【0253】
<バインダーポリマー5の合成>
加熱マントル、温度調節器、メカニカルスターラー、還流冷却器、滴下ロート、窒素供給口を備えた4口スリガラスフラスコに、DMAC(100.7部)とPEGMA(50%水溶液、20部)を入れ、窒素気流下で反応混合物を80℃まで加熱した。予め混合した、DMAC(125部)、ビニルカルバゾール(25部)、アクリロニトリル(35部)、スチレン(20部)、メタクリル酸(10部)、及び、AIBN(0.5部、Vazo−64)を2時間掛けて80℃で添加し、その後、1.25部のVazo−64を添加しながら続けて15時間反応を行った。不揮発分の定量測定からモノマー反応率は99%以上であった。得られたポリマー溶液を、高速で撹拌している6,000部の水/氷(3:1)を用いて再沈させ、沈殿したポリマー粉末を濾過し、その後室温で24時間、43℃で2日間乾燥させ、バインダーポリマー5の粉末を得た。収率は95%で、酸価は69mgKOH/g(理論値:65)であった。
バインダーポリマー5の組成は、PEGMA/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール/スチレン/メタクリル酸=0.5/60/12/17/11(モル比)であり、前記同様にして測定したMwは約100,000であった。
【0254】
<ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー1の合成>
Formrez55〜56(Witco Chemical社から入手可能なポリオールであるポリ(ネオペンチルアジペート)、Mw約2,000)(100部)を窒素パージした反応器に充填した。これにメチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(90.6部)、及び、スズ触媒の10%DABCO T−12(Air Products and Chemicals社から入手可能なジブチルスズジラウレート)(0.25部)を添加した。この混合物を92℃で3時間撹拌した。一定に撹拌しながら、ジメチロールプロピオン酸(14.8部)を添加し、次いで、1−メチル−2−ピロリジノン(54.6部)を添加した。混合物を92℃で更に5時間保持した。
プレポリマーを75℃に冷却し、ブチルメタクリレート(141.6部)、及び、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(0.88部)を添加した。混合物を15分撹拌した後、遊離NCO%を測定したところ、NCO量はほぼ0%であった。次に、混合物を25℃に冷却し、トリエチルアミン(10.66部)を添加し、1時間反応させた。中和した後、プレポリマー/モノマー混合物を脱イオン水(489.97部)中に分散した。連鎖延長するために、エチレンジアミン(8.97部)を脱イオン水(16.67部)に溶解し、反応器に添加し、2時間反応させた。次いで、1−メチル−2−ピロリジノン(6.93部)中に溶解したフリーラジカル開始剤Vazo−64(Du Pont社から入手可能なAIBN)(0.88部)を添加し、ブチルメタクリレート(31.44部)、及び、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(29.12部)の混合物も添加した。5分後、ディスパージョンを75℃に加熱し、そこで2時間保持した。
重合が完了した後、ディスパージョンをフィルターに通して濾過し、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー1を得た。
得られたウレタン−アクリルハイブリッドポリマー1のMwは、約150,000と推定した。また、その粒子サイズを、(株)堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910を使用して測定したところ、ma(面積分布の平均直径)が360nm、mv(容積分布の平均直径;分布の重心)が440nmであった。
【0255】
<ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー2の合成>
Formrez55〜56(Witco Chemical社から入手可能なポリオールであるポリ(ネオペンチルアジペート)、Mw約2,000)(200.1部)を窒素パージした反応器に充填した。これにメチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(105.3部)、及び、スズ触媒の10%DABCO T−12(Air Products and Chemicals社から入手可能なジブチルスズジラウレート)(0.52部)を添加した。この混合物を92℃で3時間撹拌した。一定に撹拌しながら、ジメチロールプロピオン酸(26.8部)を添加し、次いで、1−メチル−2−ピロリジノン(110部)を添加した。混合物を92℃で更に5時間保持した。
プレポリマーを75℃に冷却し、メチルメタクリレート(199.7部)を添加した。混合物を15分撹拌した後、遊離NCO%を測定したところ、NCO量は約1〜1.5%であり、混合物を25℃に冷却し、トリエチルアミン(19.5部)を添加し、1時間反応させた。中和した後、メチルメタクリレート(64.2部)、及び、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(64.2部)を添加し、5分間撹拌した。次いで、プレポリマーを脱イオン水(800.2部)中に分散した。連鎖を停止するために、ジエタノールアミン(18.6部)を脱イオン水(32.5部)に溶解し、反応器に添加し、2時間反応させた。次いで、1−メチル−2−ピロリジノン(13.52部)中に溶解したフリーラジカル開始剤Vazo−67(Du Pont社から入手可能な2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))(3.94部)及びチオール連鎖移動剤1−ドデシルチオール(20.2部)を添加した。5分後、ディスパージョンを75℃に加熱し、そこで2時間保持し、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー2を得た。
得られたウレタン−アクリルハイブリッドポリマー2のMwは、約30,000と推定した。前記方法で測定した粒子サイズは、ma=230nm、mv=350nmであった。
【0256】
<ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー3の合成>
使用したジイソシアネート化合物を、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートからジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)に置き換えた以外は、上記ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー1の合成と同様にして、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー3を合成した。
得られたウレタン−アクリルハイブリッドポリマー3のMwは、約100,000と推定した。前記方法で測定した粒子サイズは、ma=300nm、mv=380nmであった。
【0257】
<ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー4の合成>
使用したジイソシアネート化合物を、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートからm−トリレンジイソシアネート(TDI)に置き換えた以外は、上記ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー1の合成と同様にして、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー4を合成した。
得られたウレタン−アクリルハイブリッドポリマー4のMwは、約130,000と推定した。前記方法で測定した粒子サイズは、ma=320nm、mv=400nmであった。
【0258】
<ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー5の合成>
使用したジイソシアネート化合物を、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートからイソホロンジイソシアネート(IpDI)に置き換えた以外は、上記ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー1の合成と同様にして、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー5を合成した。
得られたウレタン−アクリルハイブリッドポリマー5のMwは、約150,000と推定した。前記方法で測定した粒子サイズは、ma=340nm、mv=450nmであった。
【0259】
<ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー6の合成>
使用したジイソシアネート化合物を、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートからヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)に置き換えた以外は、上記ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー1の合成と同様にして、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマー6を合成した。
得られたウレタン−アクリルハイブリッドポリマー6のMwは、約180,000と推定した。前記方法で測定した粒子サイズは、ma=420nm、mv=520nmであった。
【0260】
(実施例1〜124及び比較例1〜30)
<平版印刷版原版(1)の作製>
(1)支持体(1)の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10重量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25重量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20重量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0261】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0262】
続いて、塩酸0.5重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。次に、この板に15重量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
更に、100℃の水蒸気を1.033×105Paの圧力で上記の陽極酸化皮膜に8秒間吹き付けて、封孔処理を行った。
その後、非画像部の親水性を確保するため、2.5重量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて75℃で6秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m2であった。その後、水洗して、支持体(1)を得た。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0263】
(2)下塗り層の形成
次に、上記支持体(1)上に、下記下塗り層用塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/m2になるよう塗布して、下塗り層を有する支持体を作製した。
【0264】
〔下塗り層用塗布液(1)〕
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18部
・メタノール 55.24部
・水 6.15部
【0265】
【化21】

【0266】
(3)感光層の形成
上記下塗り層上に、下記組成の感光層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の感光層を形成した。
感光層塗布液(1)は、下記感光液(1)10.467部に対して、表4に記載の本発明に用いられるウレタン−アクリルハイブリッドポリマーの水分散液1.00部を、塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。
【0267】
〔感光液(1)〕
・表4に記載のバインダーポリマー 固形分量として0.240部
・下記赤外線吸収剤(1) 0.030部
・下記重合開始剤(A) 0.162部
・重合性化合物(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート)
(NKエステルA−9300、新中村化学工業(株)製) 0.192部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 0.062部
・パイオニンA−20(竹本油脂(株)製) 0.055部
・ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018部
・下記フッ素系界面活性剤(1) 0.008部
・メチルエチルケトン 1.091部
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609部
【0268】
【化22】

【0269】
【化23】

【0270】
(3)保護層の形成
上記感光層上に、下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成して平版印刷版原版(1)を得た。
【0271】
〔保護層用塗布液(1)〕
・下記無機質層状化合物分散液(1) 1.5部
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
ケン化度99モル%以上、重合度300)6重量%水溶液 0.55部
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、ケン化度81.5モル%、
重合度500)6重量%水溶液 0.03部
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1重量%水溶液 0.86部
・イオン交換水 6.0部
【0272】
−無機質層状化合物分散液(1)の調製−
イオン交換水193.6部に合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4部を添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0273】
<平版印刷版原版(2)の作製>
(1)支持体(2)の作製
支持体(1)の作製において電気化学的粗面化処理までを行ったアルミニウム板を、2.5Mリン酸を電解液として、電圧50V、最大電流密度2A/dm2で1.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
続いて、100℃の水蒸気を1.033×105Paの圧力で上記の陽極酸化皮膜に15秒間吹き付けて、封孔処理を行った。
その後、液温50℃、0.4重量%のポリビニルホスホン酸水溶液に10秒間浸漬し、水洗、乾燥して支持体(2)を得た。
【0274】
(2)下塗り層、感光層及び保護層の形成
上記支持体(2)を用いて、下塗り層を設けることなく、感光層塗布液(1)を下記の感光層塗布液(2)に変更してバー塗布し、82℃90秒オーブン乾燥して乾燥塗布量1.2g/m2の感光層を設け、かつ保護層塗布液(1)を下記の保護層塗布液(2)に変更してバー塗布し、乾燥塗布量0.4g/m2の保護層を設けた以外は、平版印刷版原版(1)の場合と同様にして、平版印刷版原版(2)を得た。
【0275】
〔感光層塗布液(2)〕
・表1又は表2に記載のバインダーポリマー 固形分量として1.75部
・表1又は表2に記載のウレタン−アクリルハイブリッドポリマー
固形分量として2.34部
・SR399 2.66部
・NK−Ester A−DPH 2.66部
・CD9053 0.53部
・ビス−t−ブチルフェニルヨードニウム テトラフェニルボレート 0.96部
・Fluor N2900 0.11部
・Pigment1 0.73部
・下記赤外線吸収剤(2) 0.27部
・イオン交換水 13.77部
・1−メトキシ−2−プロパノール 48.18部
・2−ブチロラクトン 13.77部
・2−ブタノン 61.94部
【0276】
【化24】

【0277】
【化25】

【0278】
・Disperbyk167:Byk Chemie社より入手可能な分散剤
【0279】
〔保護層用塗布液(2)〕
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、ケン化度81.5モル%、
重合度500)6重量%水溶液 66.33部
・Masurf1520 0.02部
・イオン交換水 8.65部
【0280】
<平版印刷版原版(3)の作製>
(1)支持体(3)の作製
支持体(2)の作製におけるポリアクリル酸処理をポリビニルホスホン酸処理に変更した。すなわち、支持体(2)の作製におけるポリビニルホスホン酸処理の手前までの処理を完了したアルミニウム板を、液温25℃、1.0重量%のポリアクリル酸水溶液に8秒間浸漬し、水洗し、乾燥して支持体(3)を得た。
【0281】
(2)感光層の形成
上記支持体(3)に、下塗り層を設けることなく、感光層塗布液(1)を下記の感光層塗布液(3)に変更してバー塗布し、90℃90秒オーブン乾燥して乾燥塗布量1.5g/m2の感光層を設け、かつ保護層塗布液(1)を下記の保護層塗布液(3)に変更してバー塗布し、乾燥塗布量2.1g/m2の保護層を設けた以外は、平版印刷版原版(1)の場合と同様にして、平版印刷版原版(3)を得た。
【0282】
〔感光層塗布液(3)〕
・表3に記載のバインダーポリマー 固形分量として8.50部
・ヘキサメチレンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートの
1:2反応生成物 6.00部
・ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの
1:2反応生成物 6.00部
・下記重合開始剤(B) 0.70部
・下記赤外線吸収剤(3) 0.20部
・N−フェニルイミノジ酢酸 0.25部
・クリスタルバイオレット 0.35部
・FluorN2900 0.08部
・1−メトキシ−2−プロパノール 88.32部
・2−ブチロラクトン 22.08部
・2−ブタノン 110.40部
【0283】
【化26】

【0284】
【化27】

【0285】
〔保護層用塗布液(3)〕
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−105、ケン化度98モル%以上、
重合度500)6重量%水溶液 66.33部
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1重量%水溶液 0.86部
・イオン交換水 12.60部
【0286】
<露光>
平版印刷版原版(1)及び(2)をそれぞれ、赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm、レーザー出力70%、解像度2,400dpiの条件で露光した。
他方、平版印刷版原版(3)を赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力10Wで外面ドラム回転数150rpm、解像度2,400dpiの条件で露光した。露光画像にはそれぞれベタ画像及び細線画像を含むようにした。
【0287】
<現像処理>
実施例33、50、87、124を除く、実施例1〜124及び比較例1〜30においては、露光済み原版を、図1に示す自動現像装置を使用して現像処理した。図1中、現像部14にて現像、水洗部16にて水洗、不感脂化処理部18にて不感脂化を行った。用いた現像液は下記表1〜表4に示す。水洗水及び不感脂化液は、下記のものを用いた。
現像液は、アドバンテック東洋(株)製カートリッジフィルター「TCW−75N−PPS」(メッシュ径:75μm)を通し、ポンプを用いて循環使用した。
【0288】
〔水洗工程で用いた水洗水〕
水道水を投入後、ポンプを用いて循環し、再使用した。一度水洗に使用後、アドバンテック東洋(株)製カートリッジフィルター「TCW−75N−PPS」(メッシュ径:75μm)を通した後、再使用した。
【0289】
〔不感脂化工程のガム液〕
富士フイルム(株)製ガム液「FN−6」を等量の水道水で希釈して使用した。
【0290】
実施例33、50、87、124においては、露光済み原版を、図2に示す自動現像装置を使用して現像処理した後、ドライヤーで乾燥した。後述する表1〜表4に、用いた現像液を示した。
【0291】
<評価>
上記の現像液の臭気、現像処理の現像性(非画像部除去性)、現像処理部の現像除去成分による現像スラッジ、及び、上記現像処理により作製した平版印刷版の細線再現性(感度)と印刷における耐刷性とを、下記の要領で評価した。評価結果を表5〜表8に示す。
【0292】
(1)現像液の臭気
上記現像処理を行っているときの自動現像装置周辺での溶剤臭を、評価者10名で官能評価し、その平均点で下記の指標に従いランク分けした。
A:ほとんど溶剤臭がしないか、又は、気にならず、極めて良好であった。
B:僅かに溶剤臭がするが、許容レベルであった。
C:溶剤臭が強く、実用上許容できないレベルであった。
D:溶剤臭が極めて強く劣悪であった。
【0293】
(2)現像性
現像処理後の平版印刷版の非画像部、及び、各平版印刷版原版の作製に使用した各支持体(表面処理まで行った未塗布基板)のそれぞれを、Gretag濃度計にてシアン濃度(C濃度)を測定し、この光学濃度の差(ΔD)を求めた。現像性が良好であればがΔDは0〜0.02であり、0.04までは許容範囲である。この値を超えると非画像部上に残っている感光層成分によって印刷時にインキ汚れが発生するなどの弊害となり実用上許容できないレベルである。
【0294】
(3)現像スラッジ
上記現像処理を、現像液1Lあたり平版印刷版原版20m2となるように平版印刷版原版の多数枚をランニング処理し、その後、現像浴内の現像液を自動現像装置のドレインから排出し、現像浴底部に堆積した現像スラッジを観察した。更には循環系のフィルターカートリッジを取り出して、フィルター表面に捕捉されている現像スラッジを観察した。現像スラッジの量、及び、状態を目視にて官能評価し、下記の指標に従いランク分けした。
A:現像浴底部、フィルター表面ともに、ほとんど現像スラッジが無く、極めて良好であった。
B:現像浴底部には現像スラッジが無く、フィルター表面に僅かに現像スラッジ発生が認められたが、現像浴の洗浄性やフィルター寿命にはほとんど影響がないと考えられ許容レベルであった。
C:現像浴底部、及び、フィルター表面に現像スラッジの発生が認められ、現像浴の洗浄性やフィルター寿命に影響があると考えられ、実用上許容できないレベルであった。
D:現像浴底部、及び、フィルター表面に現像スラッジが極めて多く発生し、劣悪であった。
【0295】
(4)感度
上記平版印刷版原版の感度の評価手法として、露光された細線画像(5μmから50μmまで5μmおきに細線(非画像部の中の細線状画像部)の太さを変えたテストチャート)が現像処理後の平版印刷版上で、どの太さの細線まで再現できているかを、平版印刷版上で目視にて評価した。すなわち、値が小さい方がより細い細線まで良好に画像形成されていることを表しており感度が高いことを示す。
【0296】
(5)耐刷性
現像処理後の平版印刷版を(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して印刷を開始し、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を行った。約5,000枚おきにマルチクリーナーE(富士フイルム(株)製プレートクリーナー)で版面を洗浄しながら、画像部のインキ濃度が低下して20μmFMスクリーンの5%網点濃度が印刷開始時より0.5%低下したときを刷了と判断し、そのときの印刷枚数を耐刷枚数として評価した。
【0297】
表5〜表8の結果から、本発明の平版印刷版の製版方法を用いた実施例1〜124のいずれにおいても、現像液の臭気、現像性、及び、現像除去成分起因の現像スラッジが良好で、かつ感度、耐刷性に優れた平版印刷版が得られることが判る。
【0298】
【表1】

【0299】
【表2】

【0300】
【表3】

【0301】
【表4】

【0302】
〔現像工程で用いた現像液の組成〕
<現像液1(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
(オクタノール/水分配係数=1.86、水に対する溶解度=1.0g/水100ml)
例示化合物B−14に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0303】
<現像液2(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ブチルエーテル 表1〜表4に記載の量
(オクタノール/水分配係数=0.83、水に対する溶解度=混和)
・例示化合物B−14に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0304】
<現像液3(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・プロピレングリコール モノ−n−ブチルエーテル 表1〜表4に記載の量
(オクタノール/水分配係数=データなし、水に対する溶解度=4.4g/水100ml)
・例示化合物B−14に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0305】
<現像液4(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000gとなる量
・ジエチレングリコール モノ−2−エチルヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
(オクタノール/水分配係数=データなし、水に対する溶解度=0.3g/水100ml)
・例示化合物B−14に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0306】
<現像液5(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−t−ブチルエーテル 表1〜表4に記載の量
(オクタノール/水分配係数=0.36、水に対する溶解度=混和)
・例示化合物B−14に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0307】
<現像液6(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・ベンジルアルコール 1,000部
(オクタノール/水分配係数=1.1、水に対する溶解度=4.0g/水100ml)
・例示化合物B−14に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
現像液6は単一相とならず2相に分離した。
【0308】
<現像液7(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノフェニルエーテル 1,000部
(オクタノール/水分配係数=1.2、水に対する溶解度=2.7g/水100ml)
・例示化合物B−14に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
現像液7は単一相とならず2相に分離した。
【0309】
<現像液8(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・例示化合物B−12に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0310】
<現像液9(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・例示化合物B−15に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0311】
<現像液10(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000gとなる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・例示化合物B−26に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0312】
<現像液11(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・例示化合物B−7に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0313】
<現像液12(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・例示化合物B−11に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
【0314】
<現像液13(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・エマレックス710
(日本エマルジョン(株)製ノニオン系界面活性剤) 500部
現像液13は単一相ではあるが高粘度化した。
【0315】
<現像液14(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・プルロニックL31
(旭電化工業(株)製ノニオン系界面活性剤) 500部
現像液14は単一相とならず2相に分離した。
【0316】
<現像液15(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・ペレックスNBL(花王(株)製アニオン系界面活性剤) 500部
現像液6は単一相とならず2相に分離した。
【0317】
<現像液16(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・ニューコールB13SN
(日本乳化剤(株)製アニオン系界面活性剤) 500部
【0318】
<現像液17(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・パイオニンB111(竹本油脂(株)製カチオン系界面活性剤) 500部
現像液17は単一相とならず2相に分離した。
【0319】
<現像液18(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・ソフタゾリンLPB−R
(川研ファインケミカル(株)製両性界面活性剤) 500部
現像液18は単一相であるが高粘度化した。
【0320】
<現像液19(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・ベンジルアルコール 1,000部
・ペレックスNBL(花王(株)製アニオン系界面活性剤) 500部
【0321】
<現像液20(pH:7.0)>
・水 他成分と合わせ10,000部となる量
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 表1〜表4に記載の量
・例示化合物B−14に示したノニオン系界面活性剤 表1〜表4に記載の量
・ペレックスNBL(花王(株)製アニオン系界面活性剤) 500部
【0322】
<現像液21(pH:9.8)>
・水 7829.8部
・炭酸ナトリウム 130部
・炭酸水素ナトリウム 70部
・ニューコールB−13
(日本乳化剤(株)ノニオン系界面活性剤) 500部
・アラビアガム 250部
・ヒドロキシアルキル化澱粉(日澱化学(株)製:ペノンJE66) 700部
・燐酸第一アンモニウム 20部
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール 0.1部
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.1部
・エチレングリコール モノ−n−ヘキシルエーテル 500部
【0323】
<その他表1〜表4中の現像液>
・SP−200:KODAK社製ベンジルアルコール含有現像液
【0324】
【表5】

【0325】
【表6】

【0326】
【表7】

【0327】
【表8】

【0328】
(実施例125〜161、及び、比較例31〜40)
<平版印刷版原版(4)の作製>
上記平版印刷版原版(1)の作製における感光層塗布液(1)を下記組成の感光層塗布液(4)に変更し、保護層塗布液(1)を保護層塗布液(3)に変更した以外は平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、平版印刷版用原版(4)を得た。
【0329】
〔感光層塗布液(4)〕
・下記重合開始剤(1) 0.18部
・下記増感色素(1)(吸収極大波長;359nm) 0.06部
・表3に記載のバインダーポリマー 固形分量として0.54部
・重合性化合物(アロニックスM−315、東亞合成(株)製)) 0.45部
・ロイコクリスタルバイオレット 0.20部
・熱重合禁止剤 0.01部
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
・パイオニンA−20(竹本油脂(株)製) 0.05部
・前記フッ素系界面活性剤(1) 0.001部
・メチルエチルケトン 3.50部
・1−メトキシー2−プロパノール 8.00部
【0330】
【化28】

【0331】
【化29】

【0332】
<露光>
平版印刷版原版(4)を、Fujifilm Electronic Imaging(FFEI)社製Violet半導体レーザープレートセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー(発光波長405nm±10nm/出力30mW)を搭載))により画像露光した。画像描画は、解像度2,438dpiで、富士フイルム(株)製FMスクリーン(TAFFETA 20)を用い、版面露光量0.05mJ/cm2で行った。
露光画像には、上記ベタ画像及び細線画像を含むようにした。
【0333】
<現像処理、評価>
実施例157を除く、実施例125〜161及び比較例31〜40は、実施例33、50、87、124を除く実施例1〜124と同様にして、表9に示す現像処理と評価を行った。また、実施例157については、実施例33、50、87、124と同様にして、表9に示す現像処理と評価を行った。
その結果、表10に記載の結果が得られた。
表10の結果から、本発明の平版印刷版の作製方法を用いた実施例125〜161のいずれにおいても、現像液の臭気、現像性、及び現像除去成分起因の現像スラッジが良好で、かつ感度、耐刷性に優れた平版印刷版が得られることが判る。
【0334】
【表9】

【0335】
【表10】

【符号の説明】
【0336】
1 自動現像装置
10 現像処理部
12 印刷版原版
14 現像部
16 水洗部
18 不感脂化処理部
20 乾燥部
24 現像槽
61 回転ブラシロール
62 受けロール
63 搬送ロール
64 搬送ガイド板
65 スプレーパイプ
66 管路
67 フィルター
68 給版台
69 排版台
70 現像液タンク
71 循環ポンプ
72 版
141,142 ブラシロール(擦り部材)
200 前処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に光重合性感光層を有するネガ型平版印刷版原版を作製する工程、
前記ネガ型平版印刷版原版を画像様に露光する工程、
(成分A)下記式(I)で表される化合物、(成分B)下記式(II)で表される化合物及び(成分C)水を少なくとも含む現像液により露光された前記ネガ型平版印刷版原版を現像する工程を含むことを特徴とする
平版印刷版の製版方法。
【化1】

(式中、R1は炭素数4〜8の直鎖又は分岐したアルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、かつR2及びR3のいずれか一方がメチル基の場合他方は水素原子であり、nは1又は2を表し、R4は置換若しくは無置換の、フェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基を表し、mは4〜20の整数を表す。)
【請求項2】
前記nが、1である、請求項1に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項3】
前記R2及びR3が、共に水素原子である、請求項1又は2に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項4】
前記R1が、n−ブチル基、n−ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項5】
成分Aが、0.8〜2.0のオクタノール/水分配係数を有する化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項6】
成分Aが、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、及び、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルよりなる群から選ばれた化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項7】
前記現像液中における成分Aの含有量が、成分Aの水に対する溶解度を超え40重量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項8】
前記現像液中における成分Aの含有量が、2〜30重量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項9】
前記現像液中における成分Aの含有量が、5〜20重量%である、請求項8に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項10】
前記R4が、置換若しくは無置換の、1−ナフチル基又は2−ナフチル基である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項11】
前記mが、9〜16である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項12】
前記現像液中における成分Bの含有量が、成分Aを可溶化させることができる量以上20重量%以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項13】
前記現像液中における成分Bの含有量が、1〜15重量%である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項14】
前記現像液中における成分Bの含有量が、4〜10重量%である、請求項13に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項15】
前記現像液中における成分Cの含有量が、50重量%以上である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項16】
前記現像液が、アニオン系界面活性剤又は両性界面活性剤を更に含有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項17】
前記現像液が、pH6〜8である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項18】
前記光重合性感光層が、ビニルカルバゾール化合物由来のモノマー単位を有するアクリルポリマーを含有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項19】
前記アクリルポリマーが、アクリロニトリル由来のモノマー単位を更に含有する、請求項18に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項20】
前記光重合性感光層が、ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーを含有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項21】
前記ウレタン−アクリルハイブリッドポリマーが、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選ばれた化合物由来のモノマー単位を有する、請求項20に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項22】
前記光重合性感光層が、赤外光感応性であり、かつトリフェニルアルキルボレート塩又はテトラフェニルボレート塩を含有する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項23】
前記光重合性感光層が、銅フタロシアニン顔料を更に含有する、請求項22に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項24】
前記光重合性感光層が、赤外光感応性であり、かつボレート塩を含有せず、着色染料を含有する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項25】
前記光重合性感光層が、シアニン色素及びヨードニウム塩を含有する、請求項22〜24のいずれか一項に記載の平版印刷版の製版方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−173728(P2012−173728A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38916(P2011−38916)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】