説明

平版印刷版原版及びその製版方法

【課題】高耐刷で、しかも汚れ性に優れ、機上現像カスの少ない機上現像型の平版印刷版原版及び製版方法を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、(a)赤外線吸収剤、(b)ラジカル重合開始剤、(c)ポリマー微粒子及び(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーを含有し、印刷機のシリンダー上で湿し水及び印刷インキにより未露光部が除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーが重合性基、並びにスルホ基、ポリオキシアルキレン鎖を有する基、ヒドロキシ基、アミド基、アンモニウム基及びベタイン構造を有する基から選ばれる少なくとも一つの親水性基を有し、質量平均モル質量(Mw)が1500〜10000であり、かつポリマー微粒子外に存在することを特徴とする平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及びそれを用いる製版方法に関する。詳しくは、レーザーによる画像露光後、印刷機上において直接製版可能な平版印刷版原版、及び、前記平版印刷版原版を機上現像する製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来は、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)を用い、PS版にリスフィルムなどのマスクを通した露光を行った後、アルカリ性現像液などによる現像処理を行い、画像部に対応する画像記録層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像記録層を溶解除去して、平版印刷版を得ていた。
【0003】
この分野の最近の進歩によって、現在、平版印刷版は、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術によって得られるようになっている。すなわち、レーザーやレーザーダイオードを用いて、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版原版を走査露光し、現像して平版印刷版が得られる。
【0004】
上記進歩に伴って、平版印刷版原版に関わる課題は、CTP技術に対応した画像形成特性、印刷特性、物理特性などの改良へと変化してきている。また、地球環境への関心の高まりから、平版印刷版原版に関わるもう一つの課題として、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
【0005】
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化や無処理化が指向されている。簡易な製版方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
また、簡易現像の方法としては、画像記録層の不要部分の除去を、従来の高アルカリ性現像液ではなく、pHが中性に近いフィニッシャー又はガム液によって行う「ガム現像」と呼ばれる方法も行われている。
【0006】
上述のような製版作業の簡易化においては、作業のしやすさの点から明室又は黄色灯下で取り扱い可能な平版印刷版原版及び光源を用いるシステムが好ましいので、光源としては、波長760〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー及びYAGレーザー等の固体レーザーが用いられる。また、UVレーザーを用いることができる。
【0007】
機上現像可能な平版印刷版原版としては、例えば特許文献1及び2には、親水性支持体上に、重合性化合物を内包するマイクロカプセルを含む画像記録層(感熱層)を有する平版印刷版原版が記載されている。また、特許文献3には、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合物とを含有する画像記録層(感光層)を設けた平版印刷版原版が記載されている。更に、特許文献4には、支持体上に、重合性化合物と、ポリエチレンオキシド鎖を側鎖に有するグラフトポリマー又はポリエチレンオキシドブロックを有するブロックポリマーを含有する画像記録層を設けた機上現像可能な平版印刷版原版が記載されている。
【0008】
特許文献5には、ラジカル重合性化合物にウレタンオリゴマーを用いた平版印刷版原版が良好な感光性、高い解像度及び耐刷性を有し、現像剤浴内にスラッジを発生させないことが記載されている。また、感光性塗膜の非露光領域が印刷機上で印刷インク及び/又は湿し水によって除去されるとの記載もある。しかしながら、機上現像型平版印刷版原版の場合、これら先行技術に記載のウレタンオリゴマーを用いても、十分な耐刷性を満たし、なおかつ十分な機上現像性、汚れ性、機上現像カスに関する課題を満たすものは無かった。
【0009】
また、特許文献6には、特定の親水性ポリマーと熱により画像部に転換する特定の反応性ウレタンオリゴマーを含むマイクロカプセルを含有する親水層を支持体上に設けてなり、いかなる現像処理も要しない無処理の平版印刷版原版が記載されている。しかしながら、これら無処理の平版印刷版原版は無処理という利点はあるものの、耐刷性や汚れ性の点が実用的な観点でまだ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−277740号公報
【特許文献2】特開2001−277742号公報
【特許文献3】特開2002−287334号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0064318号明細書
【特許文献5】特表2009−522609号公報
【特許文献6】特開2001−1658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高耐刷で、汚れ性に優れ、機上現像カスの少ない機上現像型の平版印刷版原版及び製版方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1.支持体上に、(a)赤外線吸収剤、(b)ラジカル重合開始剤、(c)ポリマー微粒子及び(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーを含有し、印刷機のシリンダー上で湿し水及び印刷インキにより未露光部が除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーが重合性基、並びにスルホ基、ポリオキシアルキレン鎖を有する基、ヒドロキシ基、アミド基、アンモニウム基及びベタイン構造を有する基から選ばれる少なくとも一つの親水性基を有し、質量平均モル質量(Mw)が1500〜10000であり、かつポリマー微粒子外に存在することを特徴とする平版印刷版原版。
2.親水性基がポリオキシアルキレン鎖を有する基、アミド基及びベタイン構造を有する基のいずれかであることを特徴とする前記1に記載の平版印刷版原版。
3.親水性基がポリオキシエチレン鎖を有する基であることを特徴とする前記2に記載の平版印刷版原版。
4.ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレンの繰り返し数が2〜20であることを特徴とする前記3に記載の平版印刷版原版。
5.ラジカル重合性ウレタンオリゴマーの質量平均モル質量(Mw)が2000〜5000であることを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
6.ラジカル重合性ウレタンオリゴマーが、少なくとも(A)三官能以上のイソシアネート化合物、(B)メタクリロイル基又はアクリロイル基及びヒドロキシ基を有する化合物、並びに(C)親水性基及びヒドロキシ基を有する化合物の反応により得られるラジカル重合性ウレタンオリゴマーであり、(B)及び(C)の少なくともいずれかは2つ以上のヒドロキシ基を有することを特徴とする前記1〜5のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
7.ポリマー微粒子が、ポリオキシアルキレン鎖を含有することを特徴とする前記1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
8.ポリマー微粒子の有するポリオキシアルキレン鎖がポリオキシエチレン鎖であることを特徴とする前記7に記載の平版印刷版原版。
9.ポリマー微粒子の有するポリオキシエチレン鎖のオキシエチレンの繰り返し数が2〜20であることを特徴とする前記8に記載の平版印刷版原版。
10.ポリマー微粒子が、少なくともアクリロニトリルモノマー単位を構成成分とする有機樹脂微粒子であることを特徴とする前記1〜9のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
11.ポリマー微粒子が、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー単位を含有することを特徴とする前記1〜10のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
12.画像記録層の上に、保護層を有することを特徴とする前記1〜11のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
13.保護層が、親水性樹脂を含有することを特徴とする前記12に記載の平版印刷版原版。
14.保護層が、無機層状化合物を含有することを特徴とする前記12又は13に記載の平版印刷版原版。
15.前記1〜14のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を露光後に、現像処理工程を経ることなく、印刷機のシリンダー上で湿し水及び/又は印刷インキを供給して画像記録層未露光部分を除去し、平版印刷版を作製すること特徴とする平版印刷版の製版方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高耐刷で、汚れ性に優れ、機上現像カスの少ない機上現像型の平版印刷版原版が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔平版印刷版原版〕
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、(a)赤外線吸収剤、(b)ラジカル重合開始剤、(c)ポリマー微粒子及び(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーを含有し、印刷機のシリンダー上で湿し水及び印刷インキにより未露光部が除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーは、重合性基、並びにスルホ基、ポリオキシアルキレン鎖を有する基、ヒドロキシ基、アミド基、アンモニウム基及びベタイン構造を有する基から選ばれる少なくとも一つの親水性基を有し、質量平均モル質量(Mw)が1500〜10000であり、かつポリマー微粒子外に存在することを特徴とする。
以下、平版印刷版原版の構成要素及び成分などについて詳細に説明する。
【0015】
(画像記録層)
(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマー
本発明のラジカル重合性ウレタンオリゴマーは、少なくとも一つ以上の重合性基と、少なくとも一つ以上の親水性基を有することを特徴とする。親水性基はスルホ基、ポリオキシアルキレン鎖を有する基、ヒドロキシ基、アミド基、アンモニウム基及びベタイン構造を有する基から選ばれる少なくとも一つの基である。スルホ基はスルホネート基であってもよい。なかでも好ましいのは、ポリオキシアルキレン鎖を有する基、アミド基及びベタイン構造を有する基である。
【0016】
本発明のウレタンオリゴマーの質量平均モル質量(Mw)は1500〜10000であり、更に好ましくは2000〜8000であり、最も好ましくは2000〜5000である。質量平均モル質量はウレタンオリゴマーをジメチルアセトアミド(DMAc)などの溶媒に溶かしてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置により、ポリスチレンを基準物質として測定することができる。
本発明のラジカル重合性ウレタンオリゴマーは、25℃でDMAcに濃度10質量%以上溶解するものが好ましい。
また、本発明のウレタンオリゴマーは画像記録層中でポリマー微粒子外に存在することを特徴とする。
【0017】
上記ウレタンオリゴマーは、(A)3官能以上のイソシアネート化合物、(B)重合性基とヒドロキシ基を有する化合物、及び(C)親水性基とヒドロキシ基を有する化合物を反応して得ることができる。但し、(B)及び(C)の少なくともいずれか一つはヒドロキシ基を2つ以上有してもよい。更に、(A)〜(C)以外の第4の成分として(D)その他の成分を含んでもよい。
【0018】
<(A)3官能以上のイソシアネート化合物〔(A)成分〕>
(A)成分としては、3官能以上のイソシアネート化合物であればいずれも好適であるが、トリイソシアネート化合物及びテトライソアネート化合物が好ましい。更に好ましいのは下記一般式(I)又は(II)で表される化合物であり、これらは複数の種類を使用してもよい。
【0019】
【化1】

【0020】
上式中、Aは非金属原子から構成される3〜4価の有機残基を表し、3から30個までの炭素原子、10個までの窒素原子、10個までの酸素原子、10個までのハロゲン原子、10個までのケイ素原子、3個から100個までの水素原子、10個までのリン原子、10個までの硫黄原子から選ばれる元素から構成されるものが挙げられる。中でも2から30個までの炭素原子、5個までの窒素原子、8個までの酸素原子、3個から50個までの水素原子の組合せが好ましい。
【0021】
更に好ましくは下記の原子及び連結基群中の構造及びこれらを組み合わせた3〜4価の有機残基である。
【0022】
【化2】

【0023】
(A)成分の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0024】
【化3】

【0025】
<(B)重合性基とヒドロキシ基を有する化合物〔(B)成分〕>
重合性基とヒドロキシ基を有する化合物であれば(B)成分としていずれも好適に用いられるが、ヒドロキシ基を1〜4個有する化合物が好ましく、更に好ましくは1〜3個のヒドロキシ基を有する化合物であり、特に好ましくは1又は2個のヒドロキシ基を有する化合物である。
重合性基数は1以上であればいずれも好適に用いられるが、2以上10以下が好ましく、更に好ましくは2以上8以下であり、最も好ましくは3以上6以下である。
重合性基としてはエチレン性不飽和基が好ましく用いられるが、具体的にはメタクリル基、アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニル基が好ましく、更に好ましくは、メタクリル基、アクリル基、スチリル基である。
【0026】
好ましい(B)成分としては下記一般式(III)〜(V)の化合物が挙げられる。
【0027】
【化4】

【0028】
上式中、Xはメタクリル基、アクリル基、アリル基、スチリル基又はビニル基を表し、好ましくは、メタクリル基、アクリル基及びスチリル基である。nは1〜12の整数を表し、好ましくは2〜8であり、更に好ましくは3〜6である。
は非金属原子から構成される3〜14価の有機残基を表し、2から30個までの炭素原子、10個までの窒素原子、10個までの酸素原子、10個までのハロゲン原子、10個までのケイ素原子、2個から100個までの水素原子、10個までのリン原子、10個までの硫黄原子から選ばれる少なくとも1種以上の元素から構成されるものが挙げられる。中でも3個から20個までの炭素原子、5個までの窒素原子、10個までの酸素原子、2個から40個までの水素原子の組合せが好ましい。好ましくは前記の原子及び連結基群中の構造及びそれらを組み合わせた3〜14価の有機残基である。
【0029】
(B)成分にはスルホ基、ポリオキシアルキレン基、ヒドロキシ基、ベタイン構造を有する基、アミド基及びアンモニウム基などの親水性基を含んでいてもよい。
(B)成分の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
<(C)親水性基とヒドロキシ基を有する化合物〔(C)成分〕>
(C)成分としては、親水性基とヒドロキシ基を有していれば、いずれの化合物も好適に用いられるが、1〜4個のヒドロキシ基を有する化合物が好ましく、更に好ましくは1〜3個のヒドロキシ基を有する化合物であり、特に好ましくは1個又は2個のヒドロキシ基を有する化合物である。
【0034】
好ましい(C)成分の具体例としては下記一般式(VI)〜(IX)の化合物が挙げられる。
【0035】
【化8】

【0036】
上式中、nは1〜12の整数を表し、好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜6である。
及びAはそれぞれ独立に非金属原子から構成される2〜14価の有機残基を表し、3から30個までの炭素原子、10個までの窒素原子、10個までの酸素原子、10個までのハロゲン原子、10個までのケイ素原子、3個から100個までの水素原子、10個までのリン原子、10個までの硫黄原子から選ばれる少なくとも1種以上の元素から構成されるものが挙げられる。中でも3から20個までの炭素原子、5個までの窒素原子、10個までの酸素原子、2個から50個までの水素原子の組合せが好ましい。好ましくは前記の原子及び連結基群中の構造及びそれらを組み合わせた2〜14価の有機残基である。
【0037】
Yはスルホ基若しくはスルホネート基、ポリオキシアルキレン鎖を有する基、ヒドロキシ基、アミド基、アンモニウム基及びベタイン構造を有する基から選ばれる親水性基を表す。好ましくはポリオキシアルキレン鎖を有する基、ヒドロキシ基、アミド基又はベタイン構造を有する基であり、最も好ましくはポリオキシアルキレン基、アミド基又はベタイン構造を有する基である。
ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基が好ましく、特にポリオキシエチレン基が好ましく、オキシエチレンの繰り返し数としては2〜100が好ましく、更に好ましくは2〜50であり、最も好ましくは2〜20である。
アミド基としては特に無置換アミド、若しくはN上に置換基を有する一置換アミド基が好ましい。置換基としては炭素数1〜10のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基が更に好ましく、最も好ましくは炭素数1〜6のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である。
ベタイン構造としては、ベタイン構造であれば好適に用いられるが、特にスルホベタイン、ホスホベタイン、カルボベタインが好ましく、更に好ましくはスルホベタイン、ホスホベタイン、最も好ましくはスルホベタインである。
【0038】
(C)成分の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0039】
【化9】



【0040】
ポリオキシアルキレン基を有する(C)成分としては上記の構造のほかにポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、テトラヒドロフラン−エチレンオキサイトリ共重合体、テトラヒドロフラン−プロピレンオキサイド共重合体、ポリエステルジオール(例えば、ポリエチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリヘキサメチレンネオペンチルアジペート、ポリエチレンジエチレンアジペート、ポリエチレンヘキサメチレンアジペート等)、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンアジペート等)を代表例として挙げることが出来る。
【0041】
親水性基がヒドロキシ基である化合物は多価アルコールであり、(C)成分として用いることができる。多価アルコールの具体例としては、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ペンタントリオール、ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、更にはソルビトールやマンニトール等の糖アルコール等を例示することができる。多価アルコールに、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル基、ヒドロキシ基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基等が置換していてもよい。
【0042】
<(D)その他の成分〔(D)成分〕>
本発明のウレタンオリゴマーは、上記(A)、(B)及び(C)成分以外に、(D)その他の成分を加えて合成してもよい。(D)成分には特に制限はないが、モノイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、一価アルコールが好ましく用いられる。
【0043】
モノイソシアネートとしては、炭素原子数1〜20個までのアルキル基又はアリール基を有するイソシアネートが挙げられる。これらは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基など置換基を有していてもよい。具体例としてはフェニルイソシアネート、m−トルエンイソシアネート、エチルイソシアネート、n−プロピルイソシアネートなどが挙げられる。
【0044】
ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
一価アルコールとしては、(C)成分の説明に挙げられた親水性基を有しないアルコールが用いられる。炭素原子数1〜20個までの直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルコールのほかに下記の置換基を有するアルコールも好適に用いられる。ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル基、ヒドロキシ基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基等が挙げられ、これらの基は導入可能な場合には更に置換基を有していてもよい。具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、3−クロロプロパノール、3−ブロモプロパノール、メトキシメタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、ベンジルアルコール、4−クロロベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、2−クロロ−2−プロペニルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、プレニルアルコール、3−メトキシ−2−プロペニルアルコール等が挙げられる。
【0046】
ヒドロキシ基価〔(B)、(C)及び(D)の各成分が有するヒドロキシ基のモル数の総和〕の中での(B)成分の比率は10〜60mol%が好ましく、更に好ましくは20〜60mol%であり、最も好ましくは25〜55mol%である。(C)成分の比率は20〜60mol%が好ましく、更に好ましくは20〜55mol%であり、最も好ましくは25〜55mol%である。
ウレタンオリゴマーを合成する際、好ましくはイソシアネート価〔(A)成分に含まれるイソシアネート基のモル数〕:ヒドロキシ基価=1:1〜1:5であることが好ましく、更に好ましくは1:1〜1:4であり、最も好ましくは1:1〜1:3である。
【0047】
上記ウレタンオリゴマーの画像記録層への含有量は、画像記録層の全固形分に対して、3〜90質量%であるのが好ましく、5〜80質量%であるのがより好ましく、10〜75質量%であるのが更に好ましく、15〜70質量%であるのが最も好ましい。
【0048】
本発明のウレタンオリゴマーの分子量を調整する目的で、反応中に大量のアルコールを投入し、反応を停止することが可能である。
【0049】
(a)赤外線吸収剤
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述のラジカル重合開始剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料である。
【0050】
染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0051】
【化10】

【0052】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−N(R9)(R10)、−X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、R9及びR10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜8のアルキル基、水素原子を表し、またR9とR10とが互いに結合して環を形成してもよい。なかでもフェニル基が好ましい(-NPh2)。X2は酸素原子又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロアリール基、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。以下に示す基において、Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0053】
【化11】

【0054】
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましい。またR1とR2は互いに連結し環を形成してもよく、環を形成する際は5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0055】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を示す。好ましいアリール基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0056】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]に記載の化合物、特開2002−023360号公報の段落番号[0016]〜[0021]、特開2002−040638号公報の段落番号[0012]〜[0037]に記載の化合物、好ましくは特開2002−278057号公報の段落番号[0034]〜[0041]、特開2008−195018号公報の段落番号[0080]〜[0086]に記載の化合物、最も好ましくは特開2007−90850号公報の段落番号[0035]〜[0043]に記載の化合物が挙げられる。
また特開平5−5005号公報の段落番号[0008]〜[0009]、特開2001−222101号公報の段落番号[0022]〜[0025]に記載の化合物も好ましく使用することが出来る。
【0057】
また、これらの赤外線吸収染料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、顔料等の赤外線吸収染料以外の赤外線吸収剤を併用してもよい。顔料としては、特開2008−195018号公報[0072]〜[0076]に記載の化合物が好ましい。
【0058】
本発明における画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分の0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である
【0059】
(b)ラジカル重合開始剤
本発明に用いられる(b)ラジカル重合開始剤としては、(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーの重合を開始、促進する化合物を示す。本発明において使用しうるラジカル重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
【0060】
本発明におけるラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0061】
(a)有機ハロゲン化物としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0022]〜[0023]に記載の化合物が好ましい。
【0062】
(b)カルボニル化合物としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0024]に記載の化合物が好ましい。
【0063】
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0064】
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0025]に記載の化合物が好ましい。
【0065】
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0026]に記載の化合物が好ましい。
【0066】
(f)アジド化合物としては、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0027]に記載の化合物が好ましい。
【0067】
(h)有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0028]に記載の化合物が好ましい。
【0068】
(i)ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号に記載の化合物が挙げられる。
【0069】
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0028]〜[0030]に記載の化合物が好ましい。
【0070】
(k)オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5-158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許出願公開第2008/0311520号の各明細書、特開平2−150848号、特開2008−195018号の各公報、又はJ.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩、特開2008−195018号公報に記載のアジニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0071】
上記の中でもより好ましいものとして、オニウム塩、なかでもヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩が挙げられる。以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これに限定されない。
【0072】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えばアルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、更に好ましくは非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=テトラフェニルボラートが挙げられる。
【0073】
スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0074】
アジニウム塩の例としては、1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−シクロヘキシルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロ−1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4−ジクロロ−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−ベンジルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−フェネチルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=p−トルエンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ブロミド、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
【0075】
重合開始剤は、画像記録層の全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
【0076】
(c)ポリマー微粒子
本発明では、機上現像性を向上させるため、ポリマー微粒子を用いることができる。ポリマー微粒子としてはあらゆる粒子を用いることができるが、好ましくは後述のラテックス、マイクロカプセルを挙げることができる。
ラテックスとしては1992年1月のResearch Disclosure No.333003、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載のポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
ラテックスを構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、シアノ基を含有するモノマー及びビニルカルバゾールから選ばれるモノマー単位を含むホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。なかでも、スチレン、アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルから選ばれるモノマー単位を含むホモポリマー又はコポリマーが好ましい。耐刷性の観点では特にアクリロニトリルをモノマー単位として含むホモポリマー又はコポリマーが好ましい。
【0077】
また、ポリオキシアルキレン鎖を有するラテックスも好ましい。特に側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリマー微粒子が好ましい。具体的には、ポリオキシアルキレン鎖を有するアクリレート又はメタクリレート単位を共重合単位として有するポリマー微粒子が好ましい。ポリオキシアルキレン鎖により、湿し水の浸透性が向上し、機上現像性が良好となる。ポリオキシアルキレン鎖としては、エチレンオキシド単位を2〜20個有するポリオキシエチレン鎖がより好ましい。
【0078】
ポリマー微粒子を含む画像記録層が強固な画像をつくるためには、露光時にポリマー微粒子が反応できるようにポリマー微粒子上に反応性基をもたせることも好ましい。そのような反応性基としては、エチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基を好適なものとして挙げることができる。
上記の中でもエチレン性不飽和基が特に好ましい。ポリマー微粒子がエチレン性不飽和基を有することによって、露光時にポリマー微粒子も重合反応に関わり、耐刷性を向上させることができる。
【0079】
本発明で用いるラテックスの合成方法としては、(1)水等の媒体と、媒体に難溶な
モノマーと乳化剤(界面活性剤)を混合し、そこに媒体に溶解可能な重合開始剤(通常ラジカル発生剤)を加えて行う乳化重合、(2)モノマーと水などの媒体とを機械的に撹拌し、懸濁させて行う重合方法である懸濁重合、が挙げられる。
【0080】
本発明ではポリマー微粒子としてマイクロカプセルを用いることもできる。例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものである。マイクロカプセルの製造方法としては、米国特許2800457号、同2800458号に見られるコアセルベーションを利用した方法、英国特許990443号、米国特許3287154号、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号にみられる界面重合法による方法、米国特許3418250号、同3660304号に見られるポリマーの析出による方法、米国特許3796669号に見られるイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許3914511号に見られるイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許4001140号、同4087376号、同4089802号に見られる尿素−ホルムアルデヒド系あるいは尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許4025445号に見られるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号に見られるモノマー重合による in situ法、英国特許930422号、米国特許3111407号に見られるスプレードライング法、英国特許952807号、同967074号に見られる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。
【0081】
本発明のマイクロカプセルは、その合成時に、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤を分散媒中に添加することができる。この溶剤によって、内包された化合物のマイクロカプセル外への拡散が促進される。このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
【0082】
具体的化合物としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化することがある。通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり、好ましい範囲は10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0083】
本発明においては、ラジカル重合性ウレタンオリゴマーはその機能を十分発揮させるためには、マイクロカプセルやラテックスなどポリマー微粒子の外に存在するように添加することが必須である。
【0084】
上記のポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmが更に好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0085】
ポリマー微粒子の含有量としては、画像記録層全固形分の5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0086】
(F)その他の成分
【0087】
(1)前記ウレタンオリゴマー以外のラジカル重合性化合物
本発明の画像記録層にはラジカル重合性化合物として、前記ウレタンオリゴマー以外の公知のラジカル重合性化合物を用いることができる。かかるラジカル重合性化合物として、例えば、特開2002−287334号、特開2005−329708号などの公報に記載のラジカル重合性化合物を挙げることができる。より具体的には、多価アルコールとアクリル酸とのエステル、多価アミンとアクリル酸とのアミド、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレートなどのイソシアヌル酸骨格を有する重合性化合物が挙げられる。また、ウレタン系の重合性化合物の中でも親水性基を持たないもの、分子量が1500未満のものなどを用いることもできる。
上記ラジカル重合性化合物の含有量はウレタンオリゴマーの10mol%以下が好ましい。
【0088】
(2)バインダーポリマー
本発明の画像記録層には、画像記録層の膜強度を向上させるため、バインダーポリマーを用いることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0089】
なかでも本発明に好適なバインダーポリマーとしては、特開2008−195018号公報に記載のような、画像部の皮膜強度を向上するための架橋性官能基を主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。架橋性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
【0090】
架橋性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するアクリルポリマーやポリウレタンとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
【0091】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは0.25〜7.0mmol、最も好ましくは0.5〜5.5mmolである。
【0092】
また、本発明のバインダーポリマーは、更に親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と現像性の両立が可能になる。
【0093】
親水性基としては、たとえば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、なかでも、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダーポリマーに親水性基を付与するには親水性基を有するモノマーを共重合すればよい。
【0094】
また、本発明のバインダーポリマーには、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入できる。具体的には、メタクリル酸アルキルエステルなどの親油性基含有モノマーを共重合すればよい。
【0095】
以下に本発明に用いられるバインダーポリマーの具体例(1)〜(11)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
【化12】

【0097】
【化13】


【0098】
なお、本発明におけるバインダーポリマーは質量平均モル質量(Mw)が2000以上であることが好ましく、5000以上であるのがより好ましく、1万〜30万であるのが更に好ましい。
【0099】
本発明では必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを用いることができる。また、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することもできる。
【0100】
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、5〜90質量%であるのが好ましく、5〜80質量%であるのがより好ましく、10〜70質量%であるのが更に好ましい。
バインダーを使用しても良いが、バインダーの含有量はウレタンオリゴマーの10mol%以下が好ましい。
【0101】
(3)低分子親水性化合物
本発明における画像記録層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
【0102】
本発明においてはこれらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類の群から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
【0103】
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラデコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007−276454〔0026〕〜〔0031〕、特開2009−154525〔0020〕〜〔0047〕に記載の化合物などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0104】
有機硫酸塩としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましく、塩は、ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。これらの具体例としては、特開2007−276454〔0034〕〜〔0038〕に記載の化合物が挙げられる。
【0105】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
【0106】
上記の低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
【0107】
これら低分子親水性化合物の画像記録層への添加量は、画像記録層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以上10質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0108】
(4)感脂化剤
本発明の画像記録層には、着肉性を向上させるために、画像記録層にホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。特に、保護層に無機質の層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機質の層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
【0109】
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物を挙げることができる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナートなどが挙げられる。
【0110】
上記含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。またイミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。なかでも、第4級アンモニウム塩類、及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008−284858〔0021〕〜〔0037〕、特開2009−90645〔0030〕〜〔0057〕に記載の化合物などが挙げられる。
【0111】
上記アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すれば如何なるものでもよいが、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5〜80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009−208458[0089]〜[0105]に記載のポリマーが挙げられる。
【0112】
上記アンモニウム塩含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値で、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を質量平均モル質量(Mw)に換算すると、10000〜150000が好ましく、17000〜140000がより好ましく、20000〜130000が特に好ましい。
【0113】
<還元粘度の測定方法>
30%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液を30℃の恒温槽で30分間静置し、ウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れて30℃にて流れ落ちる時間を測定する。なお測定は同一サンプルで2回測定し、その平均値を算出する。同様にブランク(N−メチルピロリドンのみ)の場合も測定し、下記式から還元粘度(ml/g)を算出した。
【0114】
【数1】

【0115】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90 Mw4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 Mw6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70 Mw4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80 Mw6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60 Mw7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比 25/75 Mw6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 Mw6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 Mw7.5万)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5 Mw6.5万)
【0116】
上記感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15.0質量%、1〜5質量%が更に好ましい。
【0117】
(5)その他
更にその他の成分として、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物、及び共増感剤若しくは連鎖移動剤などを添加することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号[0114]〜[0159]、特開2006−091479号公報の段落番号[0023]〜[0027]、米国特許公開2008/0311520号明細書[0060]に記載の化合物及び添加量が好ましい。
【0118】
(G)画像記録層の形成
本発明における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0142]〜[0143]に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、これを支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することで形成される。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0119】
(下塗り層)
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある)を設けることが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ。
【0120】
下塗り層に用いる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基、及び画像記録層と密着性を向上させるために架橋性基を有するものが好ましい。更に、スルホ基などの親水性付与基を有する化合物も好適な化合物として挙げることができる。これらの化合物は、低分子でも高分子ポリマーであってもよい。又、これらの化合物は必要に応じて2種以上を混合して使用してもよい。
高分子ポリマーである場合は、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−COCH2COCH3が好ましい。親水基としては、スルホ基が好ましい。架橋性基としてはメタクリル基、アリル基などが好ましい。
この高分子ポリマーは、高分子ポリマーの極性置換基と、対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816、特開2005−125749、特開2006−239867、特開2006−215263号の各公報記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面に相互作用する官能基、及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物を含有するものも好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0121】
下塗り層用高分子樹脂中の不飽和二重結合の含有量は、高分子ポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、最も好ましくは0.2〜5.5mmolである。
下塗り層用の高分子ポリマーは、Mwが5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましい。
【0122】
本発明の下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時における汚れ防止のため、キレート剤、第2級又は第3級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物等(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)を含有することができる。
【0123】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0124】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体としては、公知の支持体が用いられる。なかでも、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
また、上記アルミニウム板は必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。
【0125】
本発明の支持体には必要に応じて、裏面に、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平5−45885号公報に記載されているケイ素のアルコキシ化合物を含むバックコート層を設けることができる。
【0126】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層)を設けることが好ましい。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止、及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0127】
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしては、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216、特開2006−259137記載の変性ポリビニルアルコールが好適に挙げられる。
【0128】
また、保護層には酸素遮断性を高めるため、特開2005−119273号公報に記載のように天然雲母、合成雲母等の無機質の層状化合物を含有することが好ましい。
また、保護層には、可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御する無機微粒子など公知の添加物を含むことができる。また、画像記録層の説明に記載した感脂化剤を保護層に含有させることもできる。
【0129】
保護層は、公知の方法で塗布される。保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/mの範囲であることが好ましく、0.02〜3g/mの範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/mの範囲である。
【0130】
〔製版方法〕
本発明の平版印刷版原版の製版は機上現像方法で行うことが好ましい。機上現像方法は、平版印刷版原版を画像露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の未露光部分が除去されることを特徴とする。画像様の露光は平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で行ってもよいし、プレートセッターなどで別途行ってもよい。後者の場合は、露光済み平版印刷版原版は現像処理工程を経ないでそのまま印刷機に装着される。その後、該印刷機を用い、油性インキと水性成分とを供給してそのまま印刷することにより、印刷途上の初期の段階で機上現像処理、すなわち、未露光領域の画像記録層が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出され非画像部が形成される。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキと湿し水が用いられる。
以下、更に詳細に説明する。
【0131】
本発明において画像露光に用いられる光源としては、レーザーが好ましい。本発明に用いられるレーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を照射する固体レーザー及び半導体レーザーなどが好適に挙げられる。
赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cmであるのが好ましい。レーザーにおいては、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
【0132】
露光された平版印刷版原版は、印刷機の版胴に装着される。レーザー露光装置付きの印刷機の場合は、平版印刷版原版を印刷機の版胴に装着したのち画像露光される。
【0133】
画像様に露光した平版印刷版原版に湿し水と印刷インキとを供給して印刷すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された湿し水及び/又は印刷インキによって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の画像記録層に着肉して印刷が開始される。
【0134】
ここで、最初に版面に供給されるのは、湿し水でもよく、印刷インキでもよいが、湿し水が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給するのが好ましい。
このようにして、本発明の平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0136】
I.ウレタンオリゴマーの合成例
【0137】
〔ウレタンオリゴマー1の合成〕
C−1 10.71g(0.025mol)、B−1 10.76g(0.035 mol)、メチルエチルケトン600mlを45℃で混合攪拌しながらA−1 23.30g(0.040mol)を1時間かけて滴下し、その後4時間反応させた。更に反応温度を10℃以下にしてネオスタンU−600(日東化成、ビスマス触媒)0.2gを30分かけ滴下し、次いで45℃で3時間攪拌反応させた後、エタノール50gを加え更に10分間攪拌した。その後、水に析出させ、濾過乾燥し、ウレタンオリゴマー1を合成した、Mwは3,000であった。
【0138】
〔ウレタンオリゴマー5の合成〕(分子量違い)
C−1 10.71g(0.025mol)、B−1 10.76g(0.035 mol)、メチルエチルケトン400mlを55℃で混合攪拌しながらA−1 23.30g(0.040mol)を1時間かけて滴下し、その後4時間反応させた。更に反応温度を10℃以下にしてネオスタンU−600(日東化成、ビスマス触媒)0.2gを30分かけ滴下し、次いで55℃で3時間攪拌反応させた後、エタノール50gを加え更に10分間攪拌させ、その後、水に析出させ、濾過乾燥し、ウレタンオリゴマー5を合成した、Mwは7,000であった。
【0139】
〔ウレタンオリゴマー10の合成〕(組成比違い)
C−1 2.91g(0.005mol)、B−1 23.67g(0.055 mol)、メチルエチルケトン600mlを45℃で混合攪拌しながらA−1 23.30g(0.040mol)を1時間かけて滴下し、その後4時間反応させた。更に反応温度を10℃以下にして、ネオスタンU−600(日東化成、ビスマス触媒)0.2gを30分かけ滴下し、次いで45℃で3時間攪拌反応させた後、エタノール50gを加え更に10分間攪拌させ、その後、水に析出させ、濾過乾燥し、ウレタンオリゴマー10を合成した、Mwは3,000であった。
【0140】
〔その他のウレタンオリゴマーの合成〕
その他のウレタンオリゴマーは上記合成例を適宜応用して合成した。分子量については、反応温度、反応時間、反応中にエタノール添加するタイミングを変化させることによりコントロールした。
【0141】
II.ポリマー微粒子水分散液の製造例
【0142】
〔ポリマー微粒子水分散液D1の製造〕
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA エチレングリコールの平均の繰返し単位は4)20g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)30g、アクリロニトリル(AN)50g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN=20/30/50のポリマー微粒子水分散液D1が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径150nmに極大値を有していた。
【0143】
〔ポリマー微粒子水分散液D2の製造〕
油相成分として、下記構造の多官能イソシアナート(三井化学ポリウレタン製;75%酢酸エチル溶液)4.46g、トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアナート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、なおオキシエチレン単位の繰り返し数は90)を付加させた付加体(三井化学ポリウレタン製;50%酢酸エチル溶液)0.86g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(サートマー製、SR399E)1.72g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂製;メタノール70%溶液)0.05gを酢酸エチル4.46gに溶解した。油相成分及び水相成分としての水17.30gを混合し、ホモジナイザーを用いて10000rpmで15分間乳化した。得られた乳化物を、40℃で4時間攪拌した。このようにして得られたポリポリウレア/ウレタン微粒子(ミクロゲル)液の固形分濃度を、15質量%になるように水を用いて希釈し、このポリウレア/ウレタン微粒子(ミクロゲル)液をポリマー微粒子水分散液D2とした。ポリウレア/ウレタン微粒子(ミクロゲル)の平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.25μmであった。
【0144】
【化14】

【0145】
〔ポリマー微粒子(ウレタンオリゴマー内包ポリウレア/ウレタン微粒子)水分散液D3の製造〕
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井化学ポリウレタン(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1g、ウレタンオリゴマー1 0.5gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたポリウレア/ウレタン微粒子(ミクロゲル)液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これをポリマー微粒子水分散液D3とした。ポリウレア/ウレタン微粒子(ミクロゲル)の平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0146】
〔ポリマー微粒子水分散液D4の製造〕
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、エチレングリコール20g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)20g、アクリロニトリル(AN)80g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でSt/AN=20/80のポリマー微粒子水分散液D4が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径170nmに極大値を有していた。
【0147】
〔ポリマー微粒子水分散液D5の製造〕
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ蒸留水350mLを加えて内温が80℃となるまで加熱した。分散剤としてドデシル硫酸ナトリウム1.5gを添加し、更に開始剤として過硫化アンモニウム0.45gを添加し、次いでスチレン45.0gを滴下ロートから約1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、水蒸気蒸留で未反応単量体を除去した。その後冷却しアンモニア水でpH6に調整し、最後に不揮発分が15質量%となるように純水を添加してポリマー微粒子水分散液D5を得た。ポリマー微粒子水分散液D1の場合と同様に測定したこのポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径60nmに極大値を有していた。
【0148】
〔ポリマー微粒子水分散液D6の製造〕
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA エチレングリコールの平均の繰返し単位は2)20g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)50g、アリルメタクリレート(AllylMA)20g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN/AllylMA=20/10/50/20のポリマー微粒子水分散液D6が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径150nmに極大値を有していた。
【0149】
〔ポリマー微粒子水分散液D7の製造〕
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA エチレングリコールの平均の繰返し単位は4)20g,蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)50g、アリルメタクリレート(AllylMA)20g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN/AllylMA=20/10/50/20のポリマー微粒子水分散液D7が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径150nmに極大値を有していた。
【0150】
〔ポリマー微粒子水分散液D8の製造〕
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA エチレングリコールの平均の繰返し単位は20)20g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)50g、アリルメタクリレート(AllylMA)20g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN/AllylMA=20/10/50/20のポリマー微粒子水分散液D8が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径150nmに極大値を有していた。
【0151】
〔ポリマー微粒子水分散液D9の製造〕
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA エチレングリコールの平均の繰返し単位は45)20g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)50g、アリルメタクリレート(AllylMA)20g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN/AllylMA=20/10/50/20のポリマー微粒子水分散液D9が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径150nmに極大値を有していた。
【0152】
〔ポリマー微粒子水分散液D10の製造〕
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA エチレングリコールの平均の繰返し単位は1)20g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)50g、アリルメタクリレート(AllylMA)20g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN/AllylMA=20/10/50/20のポリマー微粒子水分散液D10が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径150nmに極大値を有していた。
【0153】
ここで、粒径分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0154】
上記製造例のポリマー微粒子は、簡略に示すと下記のようである。
D1:ポリ[PEGMA(エチレンオキサイド繰り返し数4)/St/AN]微粒子
D2:ポリウレタン/ウレア微粒子
D3:ポリウレタン/ウレア微粒子 (ウレタンオリゴマー内包、比較例用)
D4:ポリ[St/AN]微粒子 (ポリオキシアルキレン基を含まない)
D5:ポリ[St]微粒子
D6: ポリ[PEGMA(エチレンオキサイド繰り返し数2)/St/AN/AllylMA]微粒子
D7: ポリ[PEGMA(エチレンオキサイド繰り返し数4)/St/AN/AllylMA]微粒子
D8: ポリ[PEGMA(エチレンオキサイド繰り返し数20)/St/AN/AllylMA]微粒子
D9: ポリ[PEGMA(エチレンオキサイド繰り返し数45)/St/AN/AllylMA]微粒子
D10: ポリ[PEGMA(エチレンオキサイド繰り返し数1)/St/AN/AllylMA]微粒子
【0155】
[実施例1〜5、実施例18〜53及び比較例3、4]
【0156】
1.平版印刷版原版の作製
(1)支持体の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0157】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0158】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥して支持体(1)を作製した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、支持体(1)に2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間、シリケート処理を施し、その後、水洗して支持体(2)を得た。Siの付着量は10mg/mであった。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0159】
(2)下塗り層の形成
次に、上記支持体(2)上に、下記下塗り層用塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、以下の実験に用いる下塗り層を有する支持体を作製した。
【0160】
<下塗り層用塗布液(1)>
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
【0161】
【化15】

【0162】
下塗り層を有する上記の支持体に、下記の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.6g/mの画像記録層を形成して、実施例1〜5、実施例18〜53及び比較例3、4の平版印刷版原版を得た。

【0163】
<画像記録層塗布液(1)>
・ポリマー微粒子水分散液[下表に記載] 20.0g
・赤外線吸収剤(1)[下記構造] 0.2g
・ラジカル重合開始剤 Irgacure250(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.5g
・ラジカル重合性ウレタンオリゴマー[下表に記載] 0.24g
・メルカプト−3−トリアゾール 0.2g
・Byk336(Byk Chimie社製) 0.4g
・Klucel M(Hercules社製) 4.8g
・ELVACITE4026(Ineos Acrylica社製) 2.5g
・n−プロパノール 55.0g
・2−ブタノン 17.0g
【0164】
なお、上記組成中の商品名で記載の化合物は下記の通りである。
・IRGACURE 250:(4−メトキシフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート(75質量%プロピレンカーボナート溶液)
・Byk 336:変性ジメチルポリシロキサン共重合体(25質量%キシレン/メトキシプロ
ピルアセテート溶液)
・Klucel M:ヒドロキシプロピルセルロース(2質量%水溶液)
・ELVACITE 4026:高分岐ポリメチルメタクリレート(10質量%2−ブタノン溶液)
【0165】
【化16】

【0166】
[実施例6]
実施例1の平版印刷版原版に用いた画像記録層塗布液(1)のポリマー微粒子水分散液D1の代りにポリマー微粒子水分散液D2用いて形成した画像記録層上に、更に下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して、実施例6の平版印刷版原版を得た。
【0167】
[実施例7]
実施例1の平版印刷版原版の画像記録層上に、更に下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して、実施例7の平版印刷版原版を得た。
【0168】
<保護層塗布液(1)>
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0169】
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0170】
[実施例8]
画像記録層塗布液(1)に更にバインダーポリマー〔例示化合物(10)、Mw25000〕を0.2g加えた以外は実施例1と同様にして実施例8の平版印刷版原版を作製した。
【0171】
[実施例9]
画像記録層塗布液(1)に更に重合性化合物〔テトラエチレングリコールジメタクリレート〕を0.3g加えた以外は実施例1と同様にして実施例9の平版印刷版原版を作製した。
【0172】
[実施例10]
実施例1の平版印刷版原版に用いる画像記録層塗布液の粒子としてD1の代りに下記表2に記載のポリマー粒子を用いた平版印刷版原版の画像記録層上に、更に上記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して、実施例10の平版印刷版原版を得た。
【0173】
[実施例11〜17]
実施例1の平版印刷版原版に用いる画像記録層塗布液の粒子としてD1の代りに下記表3に記載のポリマー粒子を用いた実施例11〜17の平版印刷版原版を得た。
【0174】
[比較例1]
画像記録層塗布液(1)のラジカル重合性ウレタンオリゴマーをウレタンオリゴマーUA−306H〔ペンタエリスリトールトリアクリレート/ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製、Mw726)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例1の平版印刷版原版を作製した。
【0175】
[比較例2]
画像記録層塗布液(1)のウレタンオリゴマー1を無添加とし、ポリマー微粒子水分散液D1の代わりにウレタンオリゴマー1を内包するポリマー微粒子D3を用いた画像記録層塗布液(1)を実施例1と同様の方法で塗布して画像記録層を形成した後、その上に更に保護層塗布液(1)をバー塗布し、120℃、60秒でオーブン乾燥して乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成し比較例2の平版印刷版原版を得た。
【0176】
[比較例5]
画像記録層塗布液(1)のポリマー微粒子水分散液を添加しなかった以外は実施例1と同様にして比較例5の平版印刷版原版を作製した。
【0177】
[比較例6]
画像記録層塗布液(1)のラジカル重合性ウレタンオリゴマーを下記表4に記載のC成分を含まないラジカル重合性ウレタンオリゴマーX1に変更した以外は実施例1と同様にして比較例6の平版印刷版原版を作製した。
【0178】
[比較例7]
画像記録層塗布液(1)のラジカル重合性ウレタンオリゴマーを下記表4に記載のB成分を含まないラジカル重合性ウレタンオリゴマーX2に変更した以外は実施例1と同様にして比較例7の平版印刷版原版を作製した。
【0179】
[平版印刷版原版の評価]
(1)耐刷性
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を行った。
印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。結果を下表に示す。
【0180】
(2)印刷汚れ
各々の平版印刷版について上記通り印刷行い、1万枚印刷した後における非画像部のブランケットの汚れをテープに転写し1cmあたりのインキ汚れ面積が1%未満を100、2%未満を90、4%未満を80、6%未満を70、8%未満を60、10%未満を50、15%未満を40、20%未満を30、30%未満20、40%未満を10、40%以上を0の10段階で評価した。結果を下表に示す。
【0181】
(3)機上現像カス
各々の平版印刷版について上記通り印刷行い、1万枚印刷後における非画像部の機上現像カスを目視で評価した。印刷後水つけローラをテープに転写し、マイクロスコープで1cm中の長さ3マイクロメートル以上のカスの数が2個未満を100、4個未満を90、6個未満を80、10個未満を70、15個未満を60、20個未満を50、25個未満を40、30個未満を30、40個未満を20、50個未満を10、50個以上を0の10段階で評価した。結果を下表に示す。
【0182】
【表1】

【0183】
上記表1から、本発明のウレタンオリゴマーを用いた場合、高耐刷性であるだけでなく、機上現像カスが少なく、汚れ性良好な平版印刷版原版が得られることがわかる。
比較例1の公知のウレタンオリゴマーを用いた場合と比較して、本発明のウレタンオリゴマーは、耐刷性、機上現像カス、汚れ性、いずれの点でも優れている。
比較例2は、ウレタンオリゴマーを含有するが、ポリマー微粒子中に内包され、粒子外にウレタンオリゴマーがない場合は、本発明の効果は発現されないことを示している。
また、比較例3、4は、ウレタンオリゴマーのMwが本発明の範囲外である場合も、耐刷性、機上現像カス、汚れ性のいずれもが良好という本発明の効果は発現されないことを示している。
【0184】
【表2】

【0185】
保護層を有する場合(実施例7及び6)も本発明の効果が得られ、対応する保護層のない場合(実施例1及び10)に比べて耐刷性が向上する。
【0186】
【表3】

【0187】
上記表3から明らかなように、比較例5のようにポリマー微粒子を含有しないと、特に機上現像カス及び汚れ性の性能低下が顕著である。
本発明の実施例においては、種々のポリマー微粒子D1〜D10のいずれでも本発明の効果が発現されるが、なかでも、ポリオキシアルキレン基を有するポリマー微粒子を含有する場合(実施例1、実施例10、実施例13〜16)が、機上現像カス及び汚れ性の点で優れている。実施例13〜17の比較から、ポリマー微粒子が有するエチレンオキサイド繰り返し数は2〜20が特に好ましいことが分かる。
また、耐刷性の点ではシアノ基を有するポリマー微粒子がより好ましいことがわかる。
【0188】
【表4】

【0189】
比較例6のように親水性基を有さないウレタンオリゴマーでは機上現像カス性、汚れ性の点が特に劣っている。一方、比較例7のように重合性基を有さないウレタンオリゴマーは耐刷性の点で劣っている。
【0190】
【表5】

【0191】
表5から、種々のA成分を用いたウレタンオリゴマーのいずれもが本発明の効果を十分発現していることが分かる。
【0192】
【表6】

【0193】
表6から、重合性基を有する種々のB成分を用いたウレタンオリゴマーのいずれもが本発明の効果を十分発現していることが分かる。
【0194】
【表7】

【0195】
表7から、親水性基を有する種々のC成分を用いたウレタンオリゴマーのいずれもが本発明の効果を十分発現していることが分かる。
なかでも、親水性基がポリオキシエチレン鎖、ベタイン、アミド基であるウレタンオリゴマーを用いた場合がより良好であり、ポリオキシエチレン鎖のくり返し単位数としては2〜20である場合がより良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(a)赤外線吸収剤、(b)ラジカル重合開始剤、(c)ポリマー微粒子及び(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーを含有し、印刷機のシリンダー上で湿し水及び印刷インキにより未露光部が除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記(d)ラジカル重合性ウレタンオリゴマーが重合性基、並びにスルホ基、ポリオキシアルキレン鎖を有する基、ヒドロキシ基、アミド基、アンモニウム基及びベタイン構造を有する基から選ばれる少なくとも一つの親水性基を有し、質量平均モル質量(Mw)が1500〜10000であり、かつポリマー微粒子外に存在することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
親水性基がポリオキシアルキレン鎖を有する基、アミド基及びベタイン構造を有する基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
親水性基がポリオキシエチレン鎖を有する基であることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレンの繰り返し数が2〜20であることを特徴とする請求項3に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
ラジカル重合性ウレタンオリゴマーの質量平均モル質量(Mw)が2000〜5000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
ラジカル重合性ウレタンオリゴマーが、少なくとも(A)三官能以上のイソシアネート化合物、(B)メタクリロイル基又はアクリロイル基及びヒドロキシ基を有する化合物、並びに(C)親水性基及びヒドロキシ基を有する化合物の反応により得られるラジカル重合性ウレタンオリゴマーであり、(B)及び(C)の少なくともいずれかは2つ以上のヒドロキシ基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
ポリマー微粒子が、ポリオキシアルキレン鎖を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
ポリマー微粒子の有するポリオキシアルキレン鎖がポリオキシエチレン鎖であることを特徴とする請求項7に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
ポリマー微粒子の有するポリオキシエチレン鎖のオキシエチレンの繰り返し数が2〜20であることを特徴とする請求項8に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
ポリマー微粒子が、少なくともアクリロニトリルモノマー単位を構成成分とする有機樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
ポリマー微粒子が、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー単位を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項12】
画像記録層の上に、保護層を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項13】
保護層が、親水性樹脂を含有することを特徴とする請求項12に記載の平版印刷版原版。
【請求項14】
保護層が、無機層状化合物を含有することを特徴とする請求項12又は13に記載の平版印刷版原版。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を露光後に、現像処理工程を経ることなく、印刷機のシリンダー上で湿し水及び/又は印刷インキを供給して画像記録層未露光部分を除去し、平版印刷版を作製すること特徴とする平版印刷版の製版方法。

【公開番号】特開2011−161872(P2011−161872A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29447(P2010−29447)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】