説明

平版印刷版原版

【課題】高い解像性を有する画像を得ることが可能で、明室下での取り扱い性に優れ処理液を必要とせず、また印刷において高い耐刷力と耐汚れ性を有する平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を含有するインク組成物を印字して製版することを特徴とした平版印刷版原版において、支持体上に水溶性高分子とTgが20℃以下のポリマーラテックスを含有する下塗り層、さらにその上に多孔質親水性層が設けられていることを特徴とする平版印刷版原版を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い解像性を有する画像を得ることが可能で、かつ明室下での取り扱い性に優れ処理液を必要とせず、また製造コストが安価である平版印刷に用いられる平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のコンピュータ及び周辺機器の発達により各種デジタルプリンターを使用した平版印刷版の製版方法が提案されている。このような平版印刷版の製版方法は、その画像部の形成方法の違いにより、乾式電子写真法レーザプリンターにより製版するもの(特開平6−138719号公報、特開平6−250424号公報、特開平7−1847号公報等)、熱溶融型インクを用いたオンデマンドインクジェットプリンターを用いて製版するもの(特開平9−58144号公報)、インクジェットプリンターを用いて親油性物質や画像定着物質を印字することで製版するもの(特開昭56−105960号公報、特開平8−295683号公報等)、熱転写インクリボンを用いたサーマルプリンターで製版するもの(特開昭63−166590号公報)、サーマルレーザーもしくはインクリボンを用いずにサーマルプリンターで製版するもの(特許第3522450号公報)などがある。
【0003】
上記各種デジタルプリンターによる製版方法は、従来の、ハロゲン化銀乳剤を用いた感光層或いは感光性樹脂を利用した平版印刷版の製版方法と異なり、取り扱い上安全光の制約がなく、また画像記録後の水性現像液による現像処理を必要としない点で簡便容易に平版印刷版を製版できる利点がある。
【0004】
上記各種デジタルプリンターによる製版方法の中でもインクジェットプリンターを用いる製版方法は、近年のインクジェットプリンターの発達により他方式に比べ高精細に印字することができ、高品質かつ低コストの製版方法となることが期待できる。これらインクジェットプリンターを用いる製版方法では、例えば国際公開公報WO/0037261号パンフレットや同WO/0037254号パンフレットなどで記載されているように、親油性物質を親水性表面をもつ平版印刷版原版に像様に印字することで製版する。しかし、国際公開公報WO/0037261号パンフレットでのオリゴマー水性分散物を含有するインク組成物や同WO/0037254号パンフレットでの有機フィルム形成性ポリマーの水性エマルジョンを含有するインク組成物のように固体の親油性物質が分散された、若しくは溶媒中に溶解されたインク組成物を用いると、印字中、若しくは印字後にインク組成物が乾燥し、インクジェットプリンターのヘッドを詰めてしまうという問題があった。
【0005】
一方、例えば特開昭56−105960号公報(特許文献1)などで提案されている紫外線硬化樹脂をインク組成物として用いるインクジェットプリンターの製版方式では、インクジェットプリンターのヘッドを詰めるような固体物質を含有しないないので、上記問題は非常に起きにくい。しかしながら、紫外線硬化樹脂は紫外線の照射を受けるまで液体であるという性質上、印字直後に紫外線を照射しなければ画像ににじみが発生し、画質の劣化となる。その問題に対して、インクジェットプリンターには例えば特開2004−322560号公報などで提案されているように、通常はプリンターヘッドの直ぐ横に紫外線灯を設置させるなどしているが、この場合、紫外線灯の発熱をおさえる機構などが必要となり、非常に特殊な構造のヘッドが要求される。従って、このような特殊なヘッドを用いないでも画像のにじみが発生しないようなシステムの開発が要望されていた。
【0006】
上記問題に対し、平版印刷版原版にインク受理層を設けることでにじみを抑える方法も提案されている。例えば特開2005−144692号公報(特許文献2)では10〜50nmの細孔径を持つ多孔質親水性層を有する平版印刷版原版にインク組成物の3〜50質量%が非紫外線硬化性有機溶媒であり、かつ紫外線硬化樹脂を含有するインク組成物を印字する方法が提案されている。あるいは特開平5−204138号公報(特許文献3)では線状有機ポリマーからなるインク受像層を有する平版印刷版原版に紫外線硬化樹脂を含有するインク組成物を印字する方法が提案されている。前述の特許文献2のように多孔質親水性層を平版印刷版原版の表面に設けると、インク組成物の吸収を早めるので、にじみを防止する上で有効な手段ではある。しかし、ハイライト部の耐刷力が弱いと言う問題を有する方法であった。また、特許文献2に記載されているような少量の親水性バインダーと多量の無機顔料からなる多孔質親水層は一般に強度が弱く、印刷中に剥がれ、汚れの原因となる問題も有している。一方、特許文献3のように受像層が親水性ポリマーから構成されている場合、インク組成物の吸収速度は遅くにじみの問題は十分解決できない。
【0007】
インクジェットプリンターを用いるが、紫外線硬化樹脂をインク組成物として用いない製版方法においても、紫外線硬化樹脂をインク組成物として用いる製版方法同様ににじみの防止、耐汚れ性の確保という問題があり、これらに対して種々の解決策が提案されている。しかし、例えば特開2004−66816号公報や特開平10−119230号公報などに記載されているようにインク組成物中の親油性物質と平版印刷版原版表面の電荷を反対にして、電気的に結合させることでにじみを防止したり、あるいは特開平10−315645号公報に記載されているホットメルト型インクジェットのように、平版印刷版にインク組成物が印字された段階でインク組成物が固化することでにじみを防止する技術などが知られている。しかし、印字後も液体のままでいる紫外線硬化樹脂をインク組成物として用いた場合の問題を解決出来るものではなかった。
【0008】
ポリエステルフィルム等のフィルム上にポリマーラテックスを含有する易接着層を塗布することは広く行われており、数多くの特許も提出されている。例えば特開2000−229396号公報(特許文献4)では2個以上のイソシアネート基を有する自己乳化性イソシアネート化合物と疎水性ラテックスを含有する易接着層をポリエステルフィルム上に塗設し、接着性を改良する方法を提案している。これら易接着層として要求される品質は、易接着層を塗布、乾燥した後、その上に各種水溶性高分子をバインダーとして含有する水性塗工液を塗設した際の十分な接着性、あるいは易接着層を塗布し、巻き取った後にフィルム同士のブロッキングの防止を目的としている。
【特許文献1】特開昭56−105960号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2005−144692号公報(第1頁)
【特許文献3】特開平5−204138号公報(第1頁)
【特許文献4】特開2000−229396号公報(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高い解像性を有する画像を得ることが可能で、明室下での取り扱い性に優れ処理液を必要とせず、また印刷において高い耐刷力と耐汚れ性を有する平版印刷版原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は鋭意検討した結果、以下の発明によって達成された。
1) インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を含有するインク組成物を印字して製版する平版印刷版原版において、支持体上に水溶性高分子とTgが20℃以下のポリマーラテックスを含有する下塗り層と、さらにその上層に多孔質親水性層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
2) 前記下塗り層における水溶性高分子含有量に対するポリマーラテックス含有量の質量比が1〜30であることを特徴とする上記1記載の平版印刷版原版。
3) 前記下塗り層が更にアルデヒド系硬膜剤、メチロール基を含有する硬膜剤、及び活性ビニル硬膜剤の中から選ばれる少なくとも1種類の硬膜剤を含有することを特徴とする上記1若しくは2に記載の平版印刷版原版。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い解像性を有する画像を得ることが可能で、明室下での取り扱い性に優れ処理液を必要とせず、また印刷において高い耐刷力と耐汚れ性を有する平版印刷版原版を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において平版印刷版原版の支持体上には、優れた耐刷性と耐汚れ性を確保するために下塗り層を設ける。下塗り層は水溶性高分子とTg20℃以下のポリマーラテックスを含有する。
【0013】
本発明において下塗り層に用いるポリマーラテックスのTgは20℃以下であり、好ましくは10℃以下である。本発明に用いるポリマーラテックスとしてはTgが20℃以下であれば単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としてはブチルアクリレート、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体等がある。この中でもアニオン性のポリマーラテックスが好ましく、更にカルボキシル基を含有するポリマーラテックスを用いることが好ましい。カルボキシル基を含有するポリマーラテックスとしてはカルボキシル変性スチレン・ブタジエンラテックスや、カルボキシル変性アクリロニトリル・ブタジエンラテックスなどが挙げられる。本発明で用いる高分子ラテックスの平均粒子径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0014】
本発明において下塗り層に含有される水溶性高分子としては各種公知の親水性ポリマーを用いることができる。その具体例としてはカッパ型、イオタ型、ラムダ型のカラギーナン、フコイダン、ポルフィラン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン、ヒアルロン硫酸、デキストラン硫酸、ポリビニル硫酸、特開2005−120068号公報などに記載されている硫酸化キトサン、あるいはこれら水溶性高分子のナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩など、また澱粉類、海藻マンナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、マンナン、ペクチン、トラガントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローストビンガム、アラビアガム、デキストラン、グルカン、キサンタンガム、およびレバンなどのホモ多糖類、サクシノグルカン、プルラン、カードラン、およびザンタンガムなどのヘテロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼインおよびコラーゲン等のタンパク質、キチン誘導体等。セルロース誘導体、カルボキシメチルグアーガム等の変性ガム、並びにデキストリン等の培焼澱粉類、酸化澱粉類、エステル化澱粉類等の加工澱粉等、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル部分けん化物、ポリメタクリル酸塩、及びポリアクリルアマイド等のポリアクリル酸誘導体及びポリメタクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物、カルボキシビニル重合物、スチレン/マレイン酸共重合物、スチレン/クロトン酸共重合物等が挙げられる。なかでも水酸基とその硫酸エステルを有している水溶性高分子が好ましく、またセット性を有している為塗布がしやすいことなどからカラギーナン類を用いることが好ましい。好ましい水溶性高分子の分子量に関しては特に規定しないが、好ましくは50000以上、さらに好ましくは80000以上である。これら水溶性高分子は単独でも複数を混合させて用いても良い。
【0015】
本発明において下塗り層に含まれる水溶性高分子含有量に対するポリマーラテックス含有量の質量比は1〜30、好ましくは3/2〜20、更に好ましくは2〜10である。ポリマーラテックスの比率が少ないと耐刷力が得られないし、多すぎると印刷中に汚れが発生する。ポリマーラテックスの好ましい使用量は0.5〜5g/m2、更に好ましくは1〜3g/m2である。また水溶性高分子の好ましい使用量は0.05〜5g/m2、さらに好ましくは0.1〜3g/m2である。
【0016】
本発明において下塗り層は下塗り層に使用する水溶性高分子と架橋反応し得る架橋剤を用いて架橋させ、印刷時に下塗り層が取れないようにすることが好ましい。架橋剤としては、例えば、クロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキサール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、N−メチロールエチレン尿素やこれらの初期縮合物など、N−メチロール化合物類、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−S−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ビス(ビニルスルホニル)メタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテルなどの活性化ビニル化合物類、N,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、イソシアネート基を分子中に二個以上有する化合物、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の1種もしくは2種以上を用いることができる。これらの他にも「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5・2章、9・3章など記載の架橋剤など公知の架橋剤を用いることができる。これら架橋剤の中でもアルデヒド系架橋剤、メチロール基を含有する架橋剤、若しくは活性ビニル架橋剤を用いることが耐刷性が向上するので好ましい。架橋剤の使用量は水溶性高分子に対し1〜20質量%、好ましくは5〜10質量%である。
【0017】
本発明において下塗り層には水溶性高分子、Tgが20℃以下のポリマーラテックス、架橋剤以外にも各種マット剤や、耐電防止剤、界面活性剤、顔料、色素等の色剤などを加えることもできる。
【0018】
本発明において、水溶性高分子とTgが20℃以下のポリマーラテックスを含有する下塗り層の上層には、少なくとも1層の多孔質親水性層を有し、この多孔質親水性層がインク組成物を吸収するためには最表層として存在することが好ましい。なお、本発明において多孔質親水性層とは少なくとも50nm以上、好ましくは100〜200nmの平均細孔径を有し、かつ50nm以上の細孔の容量が0.1mL/g以上である層を意味する。この様な多孔質親水性層を設けるには無機顔料と水溶性高分子を含有する層であり、かつその比が1/1(無機顔料/水溶性高分子)以上である層を塗設することで得られるが、その詳細については後述する。多孔質親水性層の平均細孔径やその容量についてはガス吸着法(例えばベックマンコールカウンター社(株)製SA3100など)を用いて測定することが可能である。
【0019】
以下、本発明に用いる多孔質親水性層について詳細を記述する。本発明において多孔質親水性層に使用することができる水溶性高分子としては、前述の下塗り層と同様の水溶性高分子を用いることができ、好ましくは水酸基とその硫酸エステルを有する水溶性高分子が好ましい。特にカラギーナン類を用いることが好ましい。
【0020】
本発明における平版印刷版原版の多孔質親水性層は水溶性高分子と共に無機顔料を含有する。無機顔料としてはシリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ニオブ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレーなど各種公知の無機顔料粒子を用いることができるが、シリカ粒子を用いることが最も好ましい。また、上記無機顔料のいずれかを組み合わせて用いることもできる。
【0021】
本発明において、多孔質親水性層は塗工液を塗布、乾燥することで設けられるので、本発明に用いる無機顔料はスラリーの形にして、それを塗工液に混合して用いることが好ましい。本発明の無機顔料粒子スラリーの製造工程は、分散媒に無機顔料粒子を添加し混合(予備混合)する一次分散工程と、該一次分散工程で得られた粗分散液を分散装置(例えば高圧ホモジナイザーやボールミル)で分散する二次分散工程からなる。
【0022】
一次分散工程における予備混合は、通常のプロペラ攪拌、タービン型攪拌、ホモミキサー型攪拌、超音波攪拌等で行うことができる。二次分散工程に用いられる分散装置としては、好ましくは高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機から選ばれる少なくとも1つを用いる。高圧ホモジナイザーはバルブ/バルブシート間の間隙を高圧・高速で被処理物を通過させる際の剪断力を利用した分散機でゴウリンタイプとして広く知られており、APVゴウリン社、ラニー社、NIRO SOAVI社、(株)日本精機製作所、三和機械(株)等から市販されているものを使用できる。超高圧ホモジナイザーは高圧ホモジナイザーでは達成できないような更に高圧の処理ができる分散機であり、チャンバー中の折れ曲がった細い経路内を高圧・高速で被処理物を通過させる際の剪断力や衝撃力を利用したタイプや、対向するノズルから被処理液を高圧・高速で噴射して被処理液同士を衝突させる際の剪断力を利用した対向衝突型ジェット粉砕タイプが知られており、(株)スギノマシン、みづほ工業(株)、ナノマイザー社等からアルティマイザー、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等の商品名で市販されているものを使用できる。超音波分散機は超音波発振器より発生する超音波振動エネルギーを利用した分散機であり(株)日本精機製作所等から市販されているものを使用できる。薄膜施回型分散機はブラシを備えた高速回転軸を有するチャンバー内に被処理液を導入し、被処理液が薄膜となってチャンバー内壁を上部に移動する際のずり応力を利用したタイプであり、特殊機化工業(株)からフィルミックスという商品名で市販されているものを用いることができる。
【0023】
前記無機顔料の分散媒は水を主体とするものであるが、少量の有機溶剤(エタノール等の低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤)を含んでもよい。その場合、有機溶剤は全分散媒に対して20質量%以下、更には10質量%以下であることが好ましい。また、酢酸ナトリウム、硼砂、炭酸水素ナトリウムなど各種公知のpH緩衝剤を添加することもできる。またその他に分散助剤として水溶性高分子を用いることもできる。
【0024】
本発明に用いる無機顔料の粒子形状は球形、針状、羽毛状、不定形など如何なる形を取ることもでき、さらにこれらの粒子を一次粒子として、それらの凝集した二次粒子の形を取ることもできる。本発明に用いる無機顔料粒子の形状としてはこれらの中で、一次粒子が塊状に凝集した二次粒子であることが好ましく、さらにその平均一次粒子径は25nm以下の粒子であり、これが塊状凝集した二次粒子を形成していることが好ましい。このようなシリカは特公平3−56552号、特開平10−81064号各公報等に開示されている気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)がある。気相法シリカは日本アエロジル株式会社からアエロジルとして、また(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0025】
本発明における好ましい無機顔料粒子の二次平均粒子径は好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下であり、このような微小粒子を用いることで好ましい多孔質構造の層を形成することができる。なお、本発明において、無機顔料粒子の平均粒子径は顔料が二次粒子を形成している場合にはその二次粒子の平均粒子径を、形成していない場合には一次粒子の平均粒子径を意味する。平均粒子径50nm以上の二次粒子、若しくは二次粒子を形成していない場合の一次粒子でやはり50nm以上の平均粒子径を持つ粒子の平均粒子径は、レーザー散乱式の粒度分布計(例えば、堀場製作所製、LA920)で測定することができる。それ以下の微小粒子に関しては電子顕微鏡を用いて確認することができる。また、粒子が一次粒子の凝集した二次粒子を形成している場合には、同じく電子顕微鏡を用いて、一次粒子のサイズ、また凝集の形を確認することができる。
【0026】
本発明において多孔質親水性層の無機顔料/水溶性高分子の比は1/1以上、更に好ましくは3/2〜10/1である。このような比率であれば50nm以上の細孔の開いた、さらには孔の層中の容量が0.1mL/g以上の多孔質構造を取ることができる。本発明において下塗り層を設けることで多孔質親水性層の厚みによる印刷性への影響は少なくなるものの、多孔質親水性層の厚みは本発明において非常に重要で、厚すぎるとハイライト部にインキが載らなくなるし、薄すぎるとにじみの問題が発生する。従って、本発明における多孔質親水性層の塗布量は固形分で0.06〜5g/m2、好ましくは0.1〜3g/m2、更に好ましくは0.2〜2g/m2である。また多孔質親水性層中の無機顔料の使用量は0.05〜5g/m2、好ましくは0.1〜2g/m2である。また同じく水溶性高分子の使用量は0.025〜3g/m2、好ましくは0.05〜0.5g/m2である。
【0027】
本発明において多孔質親水性層を多層構成とし、支持体に近い方の多孔質親水性層より表面の親水層の無機顔料/水溶性高分子比を大きくすることでより高い耐刷力を得ることができるので更に好ましい。表面側の親水層の好ましい塗布量は固形分で0.5g/m2以下、更に好ましくは0.01〜0.4g/m2であり、0.05〜0.3g/m2とすることは更に好ましい。その中での主構成要素である無機顔料の好ましい使用量は0.02〜0.4g/m2、更に好ましくは0.06〜0.25g/m2である。また水溶性高分子の使用量は好ましくは0.001〜0.1g/m2、更に好ましくは0.002〜0.05g/m2である。
【0028】
本発明において多孔質親水性層に使用する水溶性高分子と架橋反応し得る架橋剤を用いて架橋させ、印刷時に多孔質親水性層が取れないようにすることが好ましい。架橋剤としては、前述の下塗り層と同様の架橋剤を用いることができるが、これら架橋剤の中でもアルデヒド類を用いることが好ましい。架橋剤の使用量は水溶性高分子に対し1〜20質量%、好ましくは5〜10質量%である。
【0029】
また、本発明の平版印刷版原版の多孔質親水性層を塗設するために、助剤としてアニオン系、カチオン系もしくはノニオン系界面活性剤等を用いても良い。特に表面に存在する多孔質親水性層については画像のにじみを防止するため含フッ素界面活性剤、若しくは含シリコン界面活性剤等の利用が好ましい。
【0030】
本発明の平版印刷版原版の多孔質親水性層はその他にマット剤、増粘剤、帯電防止剤等を用いることもできる。さらに、カーボンブラック、フタロシアニンブルーなどの顔料や食用青色1号、同2号、食用赤色3号などの染料など色材を加えることもできる。
【0031】
本発明において多孔質親水性層と下塗り層は同時塗布することが工程数を減らす上で好ましい。
【0032】
本発明おいて平版印刷版原版の支持体としては耐水性支持体であれば、何れでも使用でき、例えば樹脂被覆紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等の合成もしくは半合成高分子フィルム、アルミニウムや鉄等の金属板等を用いることができる。中でも樹脂被覆紙、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂をベースを用いることが好ましい。また、これらの支持体の表面は、上層として塗設される層との接着を良くするためにコロナ処理などの表面処理を行うこともできる。
【0033】
本発明において平版印刷版原版には多孔質親水性層、下塗り層の他、必要に応じて導電層、帯電防止層、支持体のカールを防止するカール防止層、所望のカールを付与するカール促進層等を設けることができる。
【0034】
本発明において平版印刷版原版を製版するにはインクジェットプリンターで紫外線硬化樹脂を含有するインク組成物を像様に印字し、その後印字された平版印刷版を全面紫外線で照射することでなされる。
【0035】
本発明に用いるインク組成物は紫外線硬化樹脂、重合開始剤、希釈剤を含有し、さらに色材、界面活性剤、助剤を含有してもよい。
【0036】
本発明に用いるインク組成物に用いる紫外線硬化樹脂としては、ウレタンアクリレート型、エポキシアクリレート型、ポリエステルアクリレート型など、各種公知の紫外線硬化樹脂を用いることができる。さらにこれら紫外線硬化樹脂の中でも、人体に害の少ない希釈剤を用いるためには水系の紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。このような水系紫外線硬化樹脂としては例えば特開平3−168209号公報、特開平4−211413号公報、特開平5ー140251号公報、特開平7−242716号公報、特開平7−25958号公報、特開平7−62026号公報、特開平6−287260号公報、特開平9−146270号公報、特開平5−222135号公報、特開平9−136981号公報、特開平6−298851号公報、特開平7−43900号公報などに記載されている紫外線硬化樹脂などがある。特に好ましい紫外線硬化樹脂はLogPが0〜4の範囲にある紫外線硬化樹脂であり、またアクリロイル基やメタクリロイル基等の反応性基を分子中に3ヶ以上保有する紫外線硬化樹脂も硬化後の樹脂強度が高く、耐刷力の強い画像が得られやすいので好ましい。なお、本発明においてLogPとはn−オクタノール/水の分配係数を意味し、特に「J.Chem.Inf.Compt.Sci.,27,21(1987)」記載のCrippenの方法に基づいて計算したLogPの予測値を使用する。また、水系硬化樹脂としてはその形態から、水溶性の紫外線硬化樹脂、強制乳化型の紫外線硬化樹脂、自己乳化型の紫外線硬化樹脂に大別されるが、乳化分散物とした紫外線硬化樹脂は乾燥後、希釈剤に再溶解し難く、ヘッドを詰まらせる場合があり、水溶性の硬化樹脂を用いることが好ましい。しかし、自己乳化型の紫外線硬化樹脂でもエチルアルコールなどの水溶性有機溶媒、あるいは水溶性紫外線硬化樹脂、重合開始剤を溶剤として、一旦溶解させることでその欠点を消すことができ、一般的に紫外線照射後強い皮膜を形成する自己乳化型紫外線硬化樹脂をこのように溶解させ用いることも好ましい。
【0037】
本発明に用いるインク組成物中の紫外線硬化樹脂は単独でも複数種を混合させて使用することもできる。またインク組成物中の総紫外線硬化樹脂の濃度は1〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
【0038】
本発明に用いるインク組成物には光重合開始剤が含有される。紫外線の代わりに活性エネルギー線として電子線のような高エネルギー線を使用する場合は光重合開始剤無しでも印刷可能なだけの強度を持つ画像をつくることはできるが、安全性、簡便性の点から紫外線を使用する事が好ましい。よって、本発明に用いるインク組成物には光重合開始剤を含有させ、印字後紫外線で照射し、画像を定着させる。
【0039】
光重合開始剤としては、水、または本発明で使用する表面張力調整剤、水溶性有機溶剤に可溶で、インク中で安定に存在し、紫外線により発生したラジカルが不飽和二重結合と効率的に反応するものであれば何れも使用できる。具体的には、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン,4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンの如きアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上を併用する事もできる。これらの光重合開始剤の使用量は、紫外線硬化樹脂に対して、0.1〜20質量%とする。また、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の光重合開始助剤も使用する事ができる。
【0040】
本発明に用いるインク組成物には粘度を調整するため希釈剤が用いられる。インクジェットプリンター、特に水系のインクジェットプリンターでは粘度の高いインク組成物ではヘッドを詰まらせるので、好ましいその粘度は15mPa・s以下、更に好ましくは10mPa・s以下、更に好ましくは2〜5mPa・sである。このような好ましい粘度を得るためには紫外線硬化樹脂や重合開始剤のみでは不可能であるが故に希釈剤を用いる。希釈剤としては環境上の問題から水が最も好ましいが、水単独で紫外線硬化樹脂を完全に溶解できない場合はエタノールを用いることが好ましい。さらに、その他に公知の水溶性有機溶媒を用いることもできる。その具体例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンの如きグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルの如きグリコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドンの如きピロリドン類、トリエタノールアミンの如きアルカノールアミン類、メタノール、イソプロピルアルコールの如きアルコール類、ジメチルスルフォキシド等が挙げられる。溶剤が紫外線露光時に残存すると画像強度が落ちるので、沸点が100℃以下の有機溶媒を用いることが好ましい。希釈剤の使用量としては水が0〜50質量%、好ましくは2〜20質量%で、その他の有機溶媒と併せて希釈剤で30〜90質量%が好ましい。
【0041】
本発明に用いるインク組成物には印字後の検版用に色材を含有することが好ましい。色材としては、インクジェット記録用インクに一般的に用いられている染料、顔料を用いる事ができる。染料としては、例えば直接染料としてのアゾ染料、フタロシアニン染料、酸性染料としてのアゾ染料、アントラキノン染料等が挙げられる。顔料としては、従来公知な有機顔料、無機顔料を全て用いる事ができる。具体的には、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料等の有機顔料、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
これらの色材は単独または複数を組合せて使用する事ができる。色材のインク組成物中の含有量は、良好な皮膜強度と着色性を得るため、0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0043】
本発明に用いるインク組成物には表面張力調整剤としての界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤としては一般的に水性塗料、インキに用いられているシリコーン系、フッ素系、アクリル系、アセチレンジオール系界面活性剤を用いることが出来る。
【0044】
本発明に用いるインク組成物にはその他に公知のインク組成物に含有される助剤を含有させることもできる。助剤としては、アルカリ金属の水酸化物や、アルカノールアミンのようなpH調整剤、防菌、防黴剤、金属封鎖剤、顔料分散剤、水溶性樹脂等を使用してもよい。
【0045】
本発明ではインクジェットプリンターでの印字後、画像に紫外線を照射し、画像を硬化させる。紫外線照射は印字中でも印字後に行っても良く、例えば特開2004−322560号公報に記載されているようにインクジェットヘッドの直ぐ横に紫外線灯をつけても、あるいは特開2000−186243号公報に記載されているようにインクジェットプリンターの出口部分に紫外線灯をつけても良いし、あるいはプリンターから独立させた公知の紫外線照射装置を用いても良い。しかしながら、希釈剤の蒸発後に紫外線照射を行う方が画像の強度が強くなり、また迷光によりインクジェットヘッドに付着したインクが硬化してしまわないようするため、プリンターからは独立した紫外線照射装置を用いることが好ましい。印字後、紫外線照射されるまでの時間は従って好ましくは数秒後から数分までの間になされることが好ましい。また印字後、紫外線照射までの間に平版印刷版原版をドライヤーに通して、希釈剤の乾燥を促すこともできるが、温度をかけると紫外線硬化樹脂の粘度が下がり、樹脂の移動が起きるので、好ましくは50℃以下の風を当てて乾燥させる。
【0046】
紫外線照射装置に用いる紫外線ランプとしては、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる低圧水銀ランプ、あるいはそれ以上の圧力を有する高圧水銀ランプ、蛍光体が塗布された水銀灯等が好ましい。これらの水銀ランプの紫外線領域の発光スペクトルは184nm〜450nmの範囲であり、黒色あるいはカラー着色されたインク中の紫外線重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、小型の電源を使用できるので、その意味でも適している。水銀ランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等を挙げることができる。またその他にクセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、UVレーザーなどが実用化されており、発光波長領域としては上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状などに応じて適宜選択して用いることができる。光源は、用いる光重合開始剤の吸収波長を考慮して選択することが好ましい。
【0047】
必要な紫外線強度は、紫外部のエネルギー総量が2〜50mW/cm2程度のものがより良好な重強速度を得る上で望ましい。積算照射量が不足していると所望の耐刷性が得られないので、必要な積算照射量を考慮して照射処理を行うのが好ましい。
【0048】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。
【実施例1】
【0049】
<シリカ分散液の作製>
アエロジル300(日本アエロジル(株)社製気相法シリカ)1.44kgを、水酸化ナトリウム14.4g、酢酸ナトリウム6.12gを含有している水溶液に加え全量を8kgとした。これをのこぎり歯状ブレード型分散機でブレードの周速が30m/秒で90分間攪拌して18質量%のシリカ粗分散物を得た。一次分散工程で得られたシリカ粗分散物を高圧ホモジナイザーにより処理量40L/時間、圧力19614kPaの条件で3回乳化分散してシリカ分散物を得た。得られた分散物を60℃で1時間プロペラ羽根型分散機で低速攪拌しながら保存してシリカスラリーを得た。得られたスラリー内の粒子径をレーザー散乱粒度分布計HORIBA LA920を用いて二次粒子径を調べたところ0.1μmであった。また電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径12nmの一次粒子が塊状に凝集した凝集体であった。
【0050】
坪量135g/m2の両面ポリエチレン被覆紙(RC紙)をコロナ放電加工した後、以下に示す処方にて下塗り層を塗設し、さらにその上に前述のシリカスラリーを含有する支持体側多孔質親水性層、表面側多孔質親水性層とを下記の処方にて、この順に塗設した。得られた試料を比表面積測定装置SA3100(ベックマンコールカウンター社(株)製)を用いて、その細孔径の分布を測定した結果、50〜200nmの細孔が観測され、その容量は0.38mL/gあった。
【0051】
(下塗り層処方A/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性スチレン・ブタジエンラテックス(SBR)、Tg7℃) 3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0052】
(下塗り層処方B/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
SR130(日本A&L社(株)製、未変性SBRラテックス、Tg−6℃)
2.4g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0053】
(下塗り層処方C/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
MR171(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性メタクリル酸メチル・ブタジエン・ラテックス(MBR)、Tg−5℃) 2.4g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0054】
(下塗り層処方D/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
MR180(日本A&L社(株)製、未変性MBRラテックス、Tg−12℃)
2.4g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0055】
(下塗り層処方E/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
LACSTER7200(DIC(株)製、カルボキシル変性MBR、Tg15℃)
3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0056】
(下塗り層処方F/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
ユリアーノW321(荒川化学工業(株)製、ウレタンポリエーテルラテックス、カルボキシル基含有、Tg−60℃) 3.4g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0057】
(下塗り層処方G/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
リカボンドFK264(中央理化工業(株)製、アクリルラテックス、Tg−2℃)
2.7g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0058】
(下塗り層処方H/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
S−752(住友化学(株)製、エチレン・酢ビ・ラテックス、Tg15℃)
2.4g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0059】
(比較下塗り層処方I/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
SR100(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg25℃)
2.4g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0060】
(比較下塗り層処方J/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
DS−205(DIC(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg40℃)
2.4g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0061】
(比較下塗り層処方K/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
AP−40(日本A&L社(株)製、ポリエステルウレタンラテックス、Tg49℃)
6g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0062】
(比較下塗り層処方L/1m2当たり)
κカラギーナン 0.36g
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0063】
(比較下塗り層処方M/1m2当たり)
PA9281 3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0064】
<支持体側多孔質親水性層処方/1m2当たり>
シリカ分散液(固形分として) 260mg
グリオキサール(37%水溶液) 7mg
κカラギーナン 140mg
活性剤(塗布助剤) 5mg
【0065】
<表面側多孔質親水性層処方/1m2当たり>
シリカ分散液(固形分として) 8mg
κカラギーナン 2mg
グリオキサール(37%水溶液) 0.1mg
サーフロンS−132(セイミケミカル(株)社製、含フッ素界面活性剤)
0.2mg
【0066】
下記処方にてインクジェットプリンターのインクを作製し、PM−750C(セイコーエプソン(株)社製)の黒インクに、これを入れ、作製した平版印刷版原版に印字した。印字後高圧水銀ランプ(80W/cm2、電源1kW)で印字部を15秒露光し、硬化させた。
【0067】
<紫外線硬化樹脂を含有するインク組成物>
下記化1 10g
下記化2 10g
食用青色1号 0.4g
ダロキュア1173(チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製)
2g
エタノール 57.6g
水 20g
エタノールで完全に溶解し、その後水を加えて全量を100gとする。
【0068】
【化1】

【0069】
【化2】

【0070】
得られた印刷版を用いて、オフセット印刷機(リョービイマジクス(株)製3200CD)にて印刷を行った。
【0071】
印刷物の汚れ状態と耐刷性を以下の基準で評価した。
<印刷物の汚れ状態の評価>
1:全く汚れない。
2:部分的に薄く汚れる。
3:全面が薄く汚れる。
4:全面が汚れる。
<印刷物の耐刷状態の評価>
1:全く印刷画像が変わらない。
2:ほとんど印刷画像は変わらないが、360dpi100線の3%網線画像が細る。
3:ほとんど印刷画像は変わらないが、360dpi100線の6%網線画像が細る。
4:画像部のインキ濃度低下、細線部が細る。
【0072】
印刷物の汚れ状態、及び耐刷性を評価するために使用した給湿液及びインキを以下に示す。
<汚れ状態の評価>
1:給湿液
日研化学(株)アストロマークIII 1%(上水道を使用し1%にする。)
2:インキ
大日本インキ化学工業(株)製ニューチャンピオン 紫68N
<耐刷性の評価>
1:給湿液
三菱製紙(株)SLM−OD30 3%(上水道を使用し3%にする。)
2:インキ
大日本インキ化学工業(株)製ニューチャンピオン 墨85H
汚れ状態の評価は、1000枚目のブランケットの汚れ状態で評価した。耐刷性は10000枚印刷した後の状態で評価した。また、画像にじみを耐刷試験での100枚目の印刷物を目視し、にじみのないものを○、発生しているものを△、はげしくにじみが発生しているもの×とした。これらの結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1よりラテックスのTgが20℃よりも低くないと耐刷力が低くなることが判り、さらにTgが10℃以下のラテックスの方が好ましいことが判る。また、ノニオン性のラテックスよりアニオン性のラテックスの方が好ましいことも判る。
【実施例2】
【0075】
実施例1の下塗り層の代わりに下記処方の下塗り層を用いる以外実施例1と同様に試験した。その結果、表2のようになった。
【0076】
(下塗り層処方A2/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0077】
(下塗り層処方B2/1m2当たり)
κカラギーナン 0.7g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0078】
(下塗り層処方C2/1m2当たり)
κカラギーナン 0.6g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0079】
(下塗り層処方D2/1m2当たり)
κカラギーナン 0.12g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0080】
(下塗り層処方E2/1m2当たり)
κカラギーナン 0.1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0081】
(下塗り層処方F2/1m2当たり)
κカラギーナン 0.05g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
グリオキサール(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0082】
【表2】

【0083】
表2より水溶性高分子に対するTgが20℃以下のポリマーラテックスの比率を1〜30とした場合、実用的に十分な印刷結果が得られ、またその比率が2〜10とした場合にに最も耐刷力、汚れが良いことことが判る
【実施例3】
【0084】
実施例1の下塗り層の代わりに下記処方の下塗り層を用いる以外実施例1と同様に試験した。その結果、表3のようになった。
【0085】
(下塗り層処方A3/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
ホルムアルデヒド(37%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0086】
(下塗り層処方B3/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
グルタルデヒド(25%水溶液) 0.01g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0087】
(下塗り層処方C3/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
SRAU(住友化学社製、エチレン尿素のN−メチロール体)
0.05g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0088】
(下塗り層処方D3/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
ジメチロール尿素 0.02g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0089】
(下塗り層処方E3/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル 0.02g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0090】
(比較下塗り層処方F3/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
EX313(長瀬ケムテックス社製エポキシ硬膜剤)
0.02g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0091】
(比較下塗り層処方G3/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
デュラネートWB40D(旭化成社製イソシアネート硬膜剤)
0.02g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0092】
(比較下塗り層処方H3/1m2当たり)
κカラギーナン 1g
PA9281(日本A&L社(株)製、カルボキシル変性SBRラテックス、Tg7℃)
3g(固形分1.2g)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジン
0.02g
活性剤(塗布助剤) 1g
【0093】
【表3】

【0094】
表3よりアルデヒド系硬膜剤、活性ビニル系硬膜剤を用いた平版印刷版の方が汚れ、にじみが良いことが判る。
【実施例4】
【0095】
実施例1で作製したプレートNoA−1、A−2を用いてUVプリンターUJF−604(ミマキ(株)社製、インクジェットヘッドの横にUV照射装置を装備)の黒インクで画像を印字し、実施例1同様に評価したところ、どちらも耐刷、汚れは1の評価、にじみも発生しない結果を得た。プリンターは高価ではあるが、非水系UVインクジェットプリンターを用いても良好な結果を得られることが判明した。
【実施例5】
【0096】
実施例1のプレートNoA−1同様に下塗り処方AをRC紙に塗布し、その上に実施例1で用いた支持体側多孔質親水性層処方で作製した塗液をその塗設量(固形分で)を変えて塗布し、さらにその上に実施例1で用いた表面側多孔質親水性層を塗布して、平版印刷版原版D−1〜D−5を作製した。これを実施例1同様に評価した結果、表4のようになった。
【0097】
【表4】

【0098】
表4より多孔質親水性層の固形分量としては0.2〜2.0g/m2が最も好ましいことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を含有するインク組成物を印字して製版する平版印刷版原版において、支持体上に水溶性高分子とTgが20℃以下のポリマーラテックスを含有する下塗り層と、さらにその上層に多孔質親水性層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
前記下塗り層における水溶性高分子の含有量に対するポリマーラテックス含有量の質量比が1〜30であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記下塗り層が更にアルデヒド系架橋剤、メチロール基を含有する架橋剤、及び活性ビニル架橋剤の中から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含有することを特徴とする請求項1若しくは2に記載の平版印刷版原版。

【公開番号】特開2008−49686(P2008−49686A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231312(P2006−231312)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】