説明

平版印刷版原版

【課題】レーザーによる画像記録が可能で、高感度を維持しつつ、十分なインキ受容性を有する機上現像型の平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】支持体上に画像記録層及び保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、保護層に無機質層状化合物を含有し、かつ、エチレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120であるポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する高分子化合物を画像記録層に含有することを特徴とする平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーによる画像露光により直接製版可能な平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来は、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)を用い、PS版にリスフィルムなどのマスクを通した露光を行った後、アルカリ性現像液などによる現像処理を行い、画像部に対応する画像記録層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像記録層を溶解除去して、平版印刷版を得ていた。
【0003】
この分野の最近の進歩によって、現在、平版印刷版は、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術によって得られるようになっている。すなわち、レーザーやレーザーダイオードを用いて、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版原版を走査露光し、現像して平版印刷版が得られる。
【0004】
上記進歩に伴って、平版印刷版原版に関わる課題は、CTP技術に対応した画像形成特性、印刷特性、物理特性などの改良へと変化してきている。また、地球環境への関心の高まりから、平版印刷版原版に関わるもう一つの課題として、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
【0005】
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化や無処理化が指向されている。簡易な製版方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
また、簡易現像の方法としては、画像記録層の不要部分の除去を、従来の高アルカリ性現像液ではなく、pHが中性に近いフィニッシャー又はガム液によって行う「ガム現像」と呼ばれる方法も行われている。
【0006】
上述のような製版作業の簡易化においては、作業のしやすさの点から明室又は黄色灯下で取り扱い可能な平版印刷版原版及び光源を用いるシステムが好ましいので、光源としては、波長760〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー及びYAGレーザー等の固体レーザーが用いられる。また、UVレーザーを用いることができる。
【0007】
機上現像可能な平版印刷版としては、例えば特許文献1及び2には、親水性支持体上に、重合性化合物を内包するマイクロカプセルを含む画像記録層(感熱層)を有する平版印刷版原版が記載されている。また、特許文献3には、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合物とを含有する画像記録層(感光層)を設けた平版印刷版原版が記載されている。
【0008】
さらに特許文献4には、支持体上に、活性光線吸収剤と重合開始剤と重合性化合物とを含有し、印刷インキ、湿し水又はこれらの両方により除去可能な画像記録層を有し、さらに無機質の層状化合物を含有する保護層(オーバーコート層)をこの順に有する平版印刷版原版記載されている。このように、無機質の層状化合物を保護層に含有させることで、高感度でかつ機上現像性に優れた平版印刷版原版を得られることが知られている。
しかしながら、無機質の層状化合物が塗布・乾燥段階で画像記録層中に潜りこみ、除去しづらくなるため、刷り出し及び印刷途中でのインキ着肉性を低下させるという問題があった。
【0009】
一方、特許文献5には、支持体上に、重合性化合物と、ポリエチレンオキシド鎖を側鎖に有するグラフトポリマー又はポリエチレンオキシドブロックを有するブロックポリマーを含有する画像記録層を設けた機上現像可能な平版印刷版原版が記載されている。しかし、この平版印刷版原版は、感度と機上現像性の両立が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−277740号公報
【特許文献2】特開2001−277742号公報
【特許文献3】特開2002−287334号公報
【特許文献4】特開2005−119273号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0064318号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
レーザーによる画像記録が可能であり、高感度を維持しつつ、十分なインキ受容性を有する機上現像型の平版印刷版原版を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1.支持体上に画像記録層及び保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、保護層に無機質層状化合物を含有し、かつ、アルキレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120であるポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する高分子化合物を画像記録層に含有することを特徴とする平版印刷版原版。
2.前記高分子化合物がパーフルオロアルキル基を実質的に含まないことを特徴とする前記1に記載の平版印刷版原版。
3.前記画像記録層が、赤外線吸収剤、ラジカル重合開始剤及びラジカル重合性化合物を含有することを特徴とする前記1又は前記2に記載の平版印刷版原版。
4.前記高分子化合物のアルキレンオキサイドの繰返し単位数が20〜50であることを特徴とする前記1〜前記3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
5.前記高分子化合物が下記一般式(1)で表される構造を側鎖に有することを特徴とする前記1〜前記4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(1)中、yは10〜120を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は有機基を表す。
【0015】
6.前記無機質層状化合物が雲母であることを特徴とする前記1〜前記5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
7.前記画像記録層が、アンモニウム塩及びホスホニウム塩から選ばれる少なくともいずれかを含有することを特徴とする前記1〜前記6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
8.前記アンモニウム塩又はホスホニウム塩の対アニオンが有機ボレートアニオンであることを特徴とする前記7に記載の平版印刷版原版。
9.前記アンモニウム塩が、下記一般式(2)で表されるアンモニウム塩であることを特徴とする前記7又は前記8に記載の平版印刷版原版。
【0016】
【化2】

【0017】
一般式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。Xは対アニオンを表す。
【0018】
10.前記一般式(2)において、R〜Rのうち少なくとも1つがアリール基又はアラルキル基であることを特徴とする前記9に記載の平版印刷版原版。
11.前記アンモニウム塩が、下記一般式(3)で表される繰返し単位を有するポリマーであることを特徴とする前記7又は8に記載の平版印刷版原版。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(3)中、R11は水素原子又はメチル基を表し、Lは連結基を表す。R12〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。Xは対アニオンを表す。
【0021】
12.前記一般式(3)において、Lがフェニレン基、カルボニルオキシ基及びカルボニルイミノ基から選ばれる少なくとも一つの基を有する連結基であることを特徴とする前記11に記載の平版印刷版原版。
13.前記画像記録層が、露光後に、印刷機上で印刷インキ及び湿し水のうちの少なくともいずれかを供給して未露光部を除去することにより画像形成可能な画像記録層であることを特徴とする前記1〜前記12のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
14.アルキレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120であるポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する高分子化合物の含有量が画像記録層中の全固形分に対して10〜90質量%であることを特徴とする前記1〜前記13のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レーザーによる画像記録が可能で、高感度を維持しつつ、十分なインキ受容性有する機上現像型の平版印刷版原版を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔平版印刷版原版〕
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に画像記録層、画像記録層上に保護層を有す。支持体と画像記録層の間に下塗り層を有してもよい。
以下、本発明の平版印刷版原版の構成要素及び成分などについて説明する。
【0024】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層)を有する。
保護層は、酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止、及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0025】
このような酸素遮断性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。より具体的には、特開2008−195018号公報の段落番号[0172]から[0175]に記載のポリマーを挙げることができる。
【0026】
本発明では保護層に無機質の層状化合物を含有する。無機質の層状化合物は、保護層の塗布厚を小さくしても酸素遮断性を高く保持できるため、保護層による機上現像負荷を軽減しつつ高感度化を達成するのに寄与する。
本発明の保護層としては、無機質の層状化合物を含有し、上記酸素低透過性のポリマーをバインダーとして用いることが好ましい。
【0027】
上記の無機質の層状化合物とは、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、
一般式 A(B,C)2-5410(OH,F,O)2
〔ただし、AはK,Na,Caの何れか、B及びCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSi又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0028】
上記雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3 (AlSi310)F2 、カリ四ケイ素雲母KMg2.5 (Si410)F2等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5 (Si410)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2 Li(Si4 10)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8 Mg2 /5Li1/8 (Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0029】
本発明においては、上記の無機質の層状化合物の中でも、雲母が好ましく、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、この膨潤性合成雲母や、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に層間の陽イオンがLi+ 、Na+ の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明において有用であり、特に膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
【0030】
本発明で使用する無機質の層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0031】
本発明で使用する無機質の層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0032】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0033】
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質層状化合物の合計量が上記の質量比であることが好ましい。
【0034】
また、保護層には、可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御する無機微粒子など公知の添加物を含むことができる。また、後述の画像記録層の説明に記載のアンモニウム塩又はホスホニウム塩を保護層に含有させることもできる。
【0035】
保護層は、公知の方法で塗布される。保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/mの範囲であることが好ましく、0.02〜3g/mの範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/mの範囲である。
【0036】
(画像記録層)
本発明の画像記録層は、(A)アルキレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120であるポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する高分子化合物を含有することを特徴とする。これによって、良好な機上現像性と共に、良好な着肉性が得られる。以下では、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する高分子化合物を特定高分子化合物とよぶ。
なお、特定高分子化合物が着肉性を改良する機構としては、次のように推測している。特定高分子化合物中のアルキレンオキサイド長鎖が、雲母などの無機質層状化合物表面と相互作用し、特定高分子化合物が無機質層状化合物表面を覆い、無機質層状化合物表面の親水性を低下させることにより、着肉性が改良される。
【0037】
さらに、本発明の画像記録層は、(B)赤外線吸収剤、(C)ラジカル重合開始剤、(D)ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。
以下に、画像記録層に含有できる各成分について、順次説明する。
【0038】
(A)アルキレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120である特定高分子化合物
本発明の平版印刷版原版に用いられるアルキレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120である特定高分子化合物は、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有していても、側鎖に有していてもよく、ポリ(アルキレンオキサイド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキサイド)含有ブロックと(アルキレンオキサイド)非含有の繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
主鎖に有する場合にはポリウレタン樹脂が好ましい。側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられるが、特にアクリル樹脂が好ましい。
【0039】
この特定高分子化合物は、パーフルオロアルキル基を実質的に含まないものである。「パーフルオロアルキル基を実質的に含まない」とは、特定高分子化合物中のパーフルオロアルキル基として存在するフッ素原子の質量比が0.5質量%より少ないものであり、含まないものが好ましい。フッ素原子の質量比は元素分析法により測定される。
また、「パーフルオロアルキル基」とは、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換されたものである。
【0040】
上記のアルキレンオキサイドとしては炭素原子数が2〜6のアルキレンオキサイドが好ましく、特にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は10〜120であり、20〜70の範囲が好ましく、20〜50の範囲がより好ましい。
アルキレンオキサイドの繰り返し数が10未満だとインキ受容性の向上が得られない。
また、繰り返し数が120を超えると摩耗による耐刷性、インキ受容性による耐刷性、両方が低下する。
【0041】
ポリ(アルキレンオキサイド)部位は、特定高分子化合物の側鎖として、一般式(1)で表される構造で含有されることが好ましい。より好ましくは、アクリル樹脂の側鎖として、一般式(1)で表される構造で含有される。
【0042】
【化4】

【0043】
一般式(1)中、yは10〜120を表し、20〜70の範囲が好ましく、20〜50の範囲がより好ましい。Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は有機基を表す。有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1, 1-ジメチルブチル基、2, 2−ジメチルブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
上記の中でも、Rは水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
は水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0044】
上記の特定高分子化合物は、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。上記ポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合などの架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレンなどが挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又は−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0045】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2 n CR1 =CR2 3 、−(CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 n NH−CO−O−CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 n −O−CO−CR1 =CR2 3 及び(CH2 CH2 O)2 −X(式中、R1 〜R3 はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1 とR2 又はR3 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0046】
エステル残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 (特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2 CH2 O−CH2 CH=CH2 、−CH2 C(CH3 )=CH2 、−CH2 CH=CH−C6 5 、−CH2 CH2 OCOCH=CH−C6 5 、−CH2 CH2 −NHCOO−CH2 CH=CH2 及びCH2 CH2 O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
【0047】
架橋性を有する特定高分子化合物は、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0048】
特定高分子化合物中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、高分子化合物1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0049】
本発明の特定高分子化合物は、画像強度などの諸性能を向上させる目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、さらに、共重合成分を含んでいてもよい。好ましい共重合成分の構造としては、下記一般式(4)で表されるものを挙げることができる。
【0050】
【化5】

【0051】
一般式(4)において、R21は水素原子又はメチル基を表す。R22は置換基を表す。
22の好ましい例としては、エステル基、アミド基、シアノ基、ヒドロキシ基、又はアリール基が挙げられる。なかでも、エステル基、アミド基、又は置換基を有してよいフェニル基が好ましい。フェニル基の置換基としては、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アセトキシメチル基などが挙げられる。
【0052】
一般式(4)で表される共重合成分としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などが挙げられる。好ましくは、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、などが挙げられる。
【0053】
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレートなど)、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン類(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、クロルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、カルボン酸を含有するラジカル重合性化合物(アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの酸基の塩等)が挙げられる。アクリロニトリルが耐刷性の観点より好ましい。
【0054】
以下に本発明に用いられる特定高分子化合物の具体例(1)〜(13)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
【化6】

【0056】
【化7】

【0057】
なお、本発明における高分子化合物は質量平均モル質量(Mw)が2000以上であることが好ましく、5000以上であるのがより好ましく、1万〜30万であるのがさらに好ましい。
【0058】
本発明では必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性高分子化合物を併用することができる。また、親油的な高分子化合物と親水的な高分子化合物を併用することもできる。
【0059】
本発明の特定高分子化合物の形態は、画像記録層中で、各素材のつなぎの機能を果たすバインダーとして存在してもよいし、微粒子の形状で存在してもよい。微粒子形状で存在する場合には、平均粒径は10〜1000nmの範囲であり、好ましくは20〜300nmの範囲であり、特に好ましくは30〜120nmの範囲である。
【0060】
本発明の特定高分子化合物の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、10〜90質量%、好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは15〜70質量%である。
【0061】
(B)赤外線吸収剤
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述のラジカル重合開始剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
【0062】
赤外線吸収剤としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0058]〜[0087]に記載されている化合物を用いることができる。
これらのうち好ましい赤外線吸収剤としては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0063】
【化8】

【0064】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−N(R9)(R10)、−X2−L1又は以下に示す基を表す。
ここで、R9及びR10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルキル基、水素原子を表し、またR9とR10とが互いに結合して環を形成してもよい。なかでもフェニル基が好ましい。
2は酸素原子又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。
なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。以下に示す基において、Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0065】
【化9】

【0066】
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0067】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0068】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−023360号公報の段落番号[0012]〜[0021]、特開2002−040638号公報の段落番号[0012]〜[0037]に記載されたものを挙げることができる。
これらの赤外線吸収剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
顔料としては、特開2008−195018号公報[0072]〜[0076]に記載の化合物が好ましい。上記染料に併用することもできる。
【0070】
本発明における画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分の0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0071】
(C)ラジカル重合開始剤
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、光照射によりラジカルを発生する化合物である。発生したラジカルがラジカル重合性化合物を重合硬化させる。
【0072】
本発明において好適に用いられるラジカル重合開始剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アジニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、米国特許第4,708,925号明細書、特開平7−20629号公報、特開2008−195018号公報に記載されている化合物を挙げることができる。
また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号の明細書に記載されているベンジルスルホナート類、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特開平9−197671号の各公報に記載されている活性スルホン酸エステル、特開2008−001740号公報に記載のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステルなどのイミドエステル、特開昭61−166544号、特開2002−328465号公報等に記載のジスルホン化合物類、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報、特開2000−80068号公報、特開2008−195018号公報に記載のオキシムエステル化合物、特開平7−271029号公報に記載されているハロアルキル置換されたs−トリアジン化合物が挙げられる。
【0073】
なかでも、オニウム塩が好ましく、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩が最も好ましい。以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
【0074】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0075】
スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナートが挙げられる。
【0076】
アジニウム塩の例としては、1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−シクロヘキシルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロ−1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4−ジクロロ−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−ベンジルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−フェネチルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=p−トルエンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ブロミド、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
【0077】
ラジカル重合開始剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。
【0078】
(D)ラジカル重合性化合物
本発明に用いることができるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれることが好ましい。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの(共)重合体などの化学的形態をもつ。
【0079】
具体例としては、特開2008−105018号公報の段落番号[0089]〜[0098]に記載の化合物が挙げられる。なかでも好ましいものとして、脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)とのエステルが挙げられる。別の好ましいラジカル重合性化合物としては特開2005−329708号公報に記載のイソシアヌル酸構造を有する重合性化合物が挙げられる。
【0080】
上記の中でも、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
【0081】
本発明において、(5)ラジカル重合性化合物は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。
【0082】
(E)アンモニウム塩又はホスホニウム塩
アルキレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120の特定高分子化合物の添加により本発明の平版印刷版原版のインキ着肉性を向上させることができるが、アンモニウム塩及びホスホニウム塩から選ばれる少なくともいずれかを併用することで、さらに着肉性が良好となる。なかでも、アンモニウム塩を用いることが好ましい。保護層に無機質の層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機質の層状化合物の表面被覆剤として機能し、インキ着肉性の低下を防止する。
【0083】
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物を挙げることができる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナートなどが挙げられる。
【0084】
アンモニウム塩としては、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0085】
【化10】

【0086】
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。なかでも、アリール基及びアラルキル基が好ましい。
【0087】
〜Rで表されるアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−アミル基、イソアミル−基、sec−アミル基、t−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、t−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロブチルメチル基、直鎖又は分岐のヘプチル基、シクロペンチルエチル基、直鎖又は分岐のオクチル基、直鎖又は分岐のノニル基、直鎖又は分岐のデシル基、直鎖又は分岐のドデシル基、直鎖又は分岐のオクタデシル基、が好ましい。これら中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−アミル基、イソアミル−基、sec−アミル基、t−アミル基、neo−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、t−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、直鎖又は分岐のオクチル基がより好ましい。
【0088】
〜Rで表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、3−ナフチルプロピル基などが挙げられるが、なかでもベンジル基が好ましい。
【0089】
アリール基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0090】
また、R〜Rは置換基を有していてもよい。置換基としては、トリフルオロメチル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、メトキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ビニル基、ジメチルアミノ基、フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が好ましく、なかでも、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、メトキシ基、ヒドロキシ基、ビニル基、フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、がより好ましい。
これらの基はさらに同様の置換基で置換されていてもよい。
【0091】
〜Rは、全て同一でも、全て異なっていても、3つのうち二つが同一でもよく、任意に選択できる。
【0092】
は対アニオンを表す。対アニオンは有機アニオンでも、無機アニオンでもよい。Xとしては、F、Cl、Br、I、置換基を有してもよいベンゼンスルホン酸アニオン、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン、プロピル硫酸アニオン、分岐してもよいブチル硫酸アニオン、分岐してもよいアミル硫酸アニオン、PF、BF、B(Cが挙げられる。なかでもCl、Br、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン、プロピル硫酸アニオン、PF、BF、B(Cが好ましい。
【0093】
一般式(2)で表されるアンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファートなどが挙げられる。
【0094】
またアンモニウム塩としては、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。
【0095】
また、アンモニウム塩としては、アンモニウム基を含有するポリマーも挙げられる。アンモニウム基を含有すポリマーとしては、下記一般式(3)で表される繰返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0096】
【化11】

【0097】
11は水素原子又はメチル基を表す。R12〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。なかでも、アリール基及びアラルキル基が好ましい。
【0098】
12〜R14で表されるアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−アミル基、イソアミル−基、sec−アミル基、t−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、t−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロブチルメチル基、直鎖又は分岐のヘプチル基、シクロペンチルエチル基、直鎖又は分岐のオクチル基、直鎖又は分岐のノニル基、直鎖又は分岐のデシル基が好ましい。この中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−アミル基、イソアミル−基、sec−アミル基、t−アミル基、neo−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、t−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、直鎖又は分岐のオクチル基がより好ましい。
12〜R14は、全て同一でも、全て異なっていても、3つのうち2つが同一でもよい。
【0099】
アリール基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0100】
は連結基を表す。連結基としては、フェニレン基、カルボニルオキシ基、及びカルボニルイミノ基から選ばれる少なくとも一つを有する連結基が挙げられる。これらの中でも、カルボニルオキシ基を有する連結基が好ましく、具体例としては−COO(CH−が挙げられる。nは1〜4の整数を表し、2及び3がより好ましい。
【0101】
は対アニオンを表す。対アニオンは有機アニオンでも、無機アニオンでもよいが、アリール基、アラルキル基、炭素数が6以上のアルキル基から選ばれる置換基を有する有機スルホン酸アニオン、ボレートアニオン及びPFが好ましく、なかでも有機ボレートアニオン及びPFが好ましい。
有機ボレートアニオンとしては、下記一般式(5)に示す構造を有する有機ボレートアニオンがより好ましい。対アニオンが有機ボレートアニオンである場合、高感度化に伴い画像部の硬化がさらに進行し、水浸透性が抑制されるため、インキの着肉性を一段と向上させることができ、耐刷性が良好になる。
【0102】
【化12】

【0103】
一般式(5)中、R1〜R4は各々独立に1価の有機基を表す。R1〜R4で表される1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、シクロアルキル基が挙げられ、なかでもアリール基が好ましい。これらの有機基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、シアノ基、アミド基、ウレタン基、スルホ基、チオアルコキシ基、カルボキシ基などが挙げられる。
上記の中でも、R1〜R4が置換基として電子吸引性基を有するアリール基であることが好ましい。アリール基に導入される好ましい電子吸引性基としては、ハロゲン原子、フルオロアルキル基が好ましく、なかでもフッ素原子、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0104】
上記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、その他の共重合成分を有することができる。その他の共重合成分としては、共重合可能であれば特に限定されないが、(メタ)アクリレートが好ましい。(メタ)アクリレートの側鎖−COORのRとしては、炭素数1〜21のアルキル基、アラルキル基、アリール基、-(CO)-R、又は-(CO)-Rが挙げられる。Rは水素原子、メチル基又はエチル基を表す。nは1〜3の整数を表す。
その他の共重合成分を有する場合、高分子化合物中の一般式(3)で表される繰り返し単位の含有率は5〜80モル%の範囲であることが好ましい。
【0105】
上記アンモニウム塩含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:cSt/g/ml)の値で、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。
【0106】
<還元比粘度の測定方法>
30%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液をウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れ、30℃にて流れ落ちる時間を測定し、計算式(「動粘度」=「粘度計定数」×「液体が細管を通る時間(秒)」)を用いて定法により算出した。
【0107】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5)
(10)N−2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリルアミド=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/メタクリルアミド共重合体(モル比20/40/40)
(11)4−(ブチルジメチルアンモニオメチル)スチレン=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート(モル比20/80)
【0108】
上記アンモニウム塩又はホスホニウム塩の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15.0質量%、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0109】
(F)疎水化前駆体
本発明では、機上現像性を向上させるため、疎水化前駆体を用いることができる。本発明における疎水化前駆体とは、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれる少なくともひとつの粒子が好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー微粒子及びミクロゲルが好ましい。
【0110】
疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0111】
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
【0112】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋、及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0113】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
【0114】
本発明で用いられるマイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。さらに、マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0115】
本発明においては、架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様であってもよい。このミクロゲルは、その中及び/又は表面に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができ、特に、ラジカル重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
【0116】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
【0117】
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0118】
疎水化前駆体の含有量としては、画像記録層の固形分濃度で5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0119】
(G)低分子親水性化合物
本発明における画像記録層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
【0120】
本発明においてはこれらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類の群から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
【0121】
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラデコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0122】
有機硫酸塩としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましく、塩は、ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。
【0123】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
【0124】
上記の低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
【0125】
これら低分子親水性化合物の画像記録層への添加量は、画像記録層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0126】
(H)界面活性剤
本発明の画像記録層には、機上現像性を促進するため、及び塗布面状を向上させるため界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤にハロゲン化物イオンが不純物や対イオンとして含まれる場合は、脱塩、イオン交換などの方法で、除去又は他の陰イオンに交換することが好ましい。
【0127】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0128】
本発明に用いられるイオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0129】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。カチオン界面活性剤の対アニオンとしては、ハロゲン化物イオン以外のもの(硫酸イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオンなど)を選択することが好ましい。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0130】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0131】
さらに好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のイオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤、例えば、パーフルオロアルキル基を含有するアクリレート又はメタクリレートとポリ(オキシアルキレン)アクリレート又はメタクリレートとの共重合体、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン・ブロック共重合体の両末端パーフルオロアルキルエーテル化物など、も好適に挙げられる。
【0132】
界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。0.01質量%以上であれば界面活性能が十分に発揮され、塗布面状の均一性が得られる。また、含有量が10質量%以下であれば、画像記録層上にさらに一層、例えば保護層などを塗布する場合に、塗布ハジキを生じず、良好な性能が得られる。
【0133】
(I)その他の成分
本発明における画像記録層には、必要に応じて、さらに他の成分として、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物、及び共増感剤もしくは連鎖移動剤などを添加することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号[0114]〜[0159]、特開2006−091479号公報の段落番号[0023]〜[0027]、米国特許公開2008/0311520号明細書[0060]に記載の化合物及び添加量が好ましい。
【0134】
(J)画像記録層の形成
本発明における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0142]〜[0143]に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、これを支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することで形成される。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0135】
(下塗り層)
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある)を設けることが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ。
【0136】
下塗り層に用いる化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が挙げられる。より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載のごとき、支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、及び架橋性基を有する高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。より具体的には、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−COCH2COCH3などの吸着性基を有するモノマーと、親水性のスルホ基を有するモノマーと、さらにメタクリル基、アリル基などの重合性の架橋性基を有するモノマーとの共重合体である高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、高分子樹脂の極性置換基と、対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーがさらに共重合されていてもよい。
【0137】
下塗り層用高分子樹脂中の不飽和二重結合の含有量は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均モル質量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましい。
【0138】
本発明の下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時における汚れ防止のため、キレート剤、第2級又は第3級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物等(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)を含有することができる。
【0139】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0140】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体としては、公知の支持体が用いられる。なかでも、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
また、上記アルミニウム板は必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。
【0141】
本発明の支持体には必要に応じて、裏面に、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平5−45885号公報に記載されているケイ素のアルコキシ化合物を含むバックコート層を設けることができる。
【0142】
〔製版方法〕
本発明の平版印刷版原版の製版は機上現像方法で行うことが好ましい。機上現像方法は、平版印刷版原版を画像露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の未露光部分が除去されることを特徴とする。画像様の露光は平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で行ってもよいし、プレートセッターなどで別途行ってもよい。後者の場合は、露光済み平版印刷版原版は現像処理工程を経ないでそのまま印刷機に装着される。その後、該印刷機を用い、油性インキと水性成分とを供給してそのまま印刷することにより、印刷途上の初期の段階で機上現像処理、すなわち、未露光領域の画像記録層が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出され非画像部が形成される。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキと湿し水が用いられる。
以下、さらに詳細に説明する。
【0143】
本発明において画像露光に用いられる光源としては、レーザーが好ましい。本発明に用いられるレーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を照射する固体レーザー及び半導体レーザーなどが好適に挙げられる。
赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cmであるのが好ましい。レーザーにおいては、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
【0144】
露光された平版印刷版原版は、印刷機の版胴に装着される。レーザー露光装置付きの印刷機の場合は、平版印刷版原版を印刷機の版胴に装着したのち画像露光される。
【0145】
画像様に露光した平版印刷版原版に湿し水と印刷インキとを供給して印刷すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された湿し水及び/又は印刷インキによって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の画像記録層に着肉して印刷が開始される。
【0146】
ここで、最初に版面に供給されるのは、湿し水でもよく、印刷インキでもよいが、湿し水が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給するのが好ましい。
このようにして、本発明の平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0147】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0148】
[実施例1〜12及び比較例1〜4]
【0149】
〔平版印刷版原版(1)〜(12)及び(41)〜(44)の作製〕
(1)支持体の作製(その1)
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0150】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0151】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥して支持体(1)を作製した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、支持体(1)に2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間、シリケート処理を施し、その後、水洗して支持体(2)を得た。Siの付着量は10mg/mであった。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0152】
(2)下塗り層の形成
次に、上記支持体(2)上に、下記下塗り層用塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、以下の実験に用いる下塗り層を有する支持体を作製した。
【0153】
<下塗り層用塗布液(1)>
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
【0154】
【化13】

【0155】
(3)画像記録層の形成
上記のようにして形成された下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
【0156】
<感光液(1)>
・特定高分子化合物〔表1に本明細書例示化合物番号で記載〕 0.240g
・赤外線吸収染料(1)〔下記構造〕 0.030g
・ラジカル重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.162g
・ラジカル重合性化合物
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・低分子親水性化合物
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.050g
・アンモニウム塩(表1記載の化合物) 表1記載の量
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・2−ブタノン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0157】
<ミクロゲル液(1)>
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0158】
上記の、重合開始剤(1)、赤外線吸収染料(1)、低分子親水性化合物(1)、及びフッ素系界面活性剤(1)の構造及びミクロゲル(1)の合成法は、以下に示す通りである。
【0159】
【化14】

【0160】
−ミクロゲル(1)の合成−
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井化学ポリウレタン(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0161】
(4)保護層の形成
上記画像記録層上に、さらに下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して平版印刷版原版(1)〜(12)〔実施例1〜12用〕、及び平版印刷版原版(41)〜(43)〔比較例1〜3用〕を得た。
なお、平版印刷版原版(44)〔比較例4用〕は、上記保護層塗布液(1)の代わりに保護層塗布液(2)を使用した以外は平版印刷版原版1と同様にして作製した。
【0162】
<保護層用塗布液(1)>
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0163】
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0164】
<保護層用塗布液(2)>
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0165】
比較例で使用した比較用高分子化合物の構造は以下の通りである。
【0166】
【化15】

【0167】
〔平版印刷版原版の評価〕
【0168】
(1)機上現像性
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
画像記録層の未露光部の印刷機上での除去が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。結果を表1に示す。
【0169】
(2)画像磨耗による耐刷性
上述した機上現像性の評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に、画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。結果を表1に示す。
【0170】
(3)画像部のインキ受容性による耐刷性(着肉性の指標)
上述した機上現像性の評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に、画像部のインキ受容性が低下し、印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。結果を表1に示す。ちなみに、インキ濃度の低下が磨耗によるものか、画像記録層のインキ受容性低下に伴うものかの識別は、インキ濃度低下後の印刷版をSEM観察し判別した。
【0171】
[実施例13〜24及び比較例5〜7]
【0172】
〔平版印刷版原版 (21)〜(29)及び(45)〜(47)の作製〕
(1)画像記録層の形成
下塗り層を有する上記の支持体に、下記の画像記録層塗布液(4)をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.6g/mの画像記録層を作製し、画像記録層を形成した。
【0173】
<画像記録層塗布液(4)>
・特定高分子化合物〔表2記載〕 4.0g
・赤外線吸収染料(2)[下記構造] 0.2g
・光開始剤 Irgacure250(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.5g
・ラジカル重合性化合物 SR-399(サートマー社製) 1.50g
・メルカプト−3−トリアゾール 0.2g
・Byk336(Byk Chimie社製) 0.4g
・KlucelM(Hercules社製) 4.8g
・ELVACITE4026(Ineos Acrylica社製) 2.5g
・n−プロパノール 55.0g
・2−ブタノン 17.0g
【0174】
なお、上記組成中の商品名で記載の化合物は下記の通りである。
・IRGACURE 250:(4−メトキシフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート(75質量%プロピレンカーボナート溶液)
・SR-399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・BYK 336:変性ジメチルポリシロキサン共重合体(25質量%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液)
・Klucel M:ヒドロキシプロピルセルロース(2質量%水溶液)
・ELVACITE 4026:高分岐ポリメチルメタクリレート(10質量%2−ブタノン溶液)
【0175】
【化16】

【0176】
(2)保護層の形成
上記画像記録層上に、さらに前記の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して平版印刷版原版(21)〜(29)〔実施例13〜21用〕及び(45)〜(46)〔比較例5〜6用〕を得た。
なお、平版印刷版原版(47)〔比較例7用〕は、保護層塗布液(1)の代わりに保護層塗布液(2)を用いた以外は、平版印刷版原版(13)と同様にして作製した。
【0177】
〔平版印刷版原版(30)の作製〕
前記画像記録層塗布液(4)の特定高分子化合物の代わりに下記ポリマー微粒子水分散液(1)を用いた画像記録層塗布液(5)を使用した以外は平版印刷版原版(21)の作製と同様にして平版印刷版原版(30)〔実施例22用〕を得た。なお、ポリマー微粒子水分散液の添加量は、画像記録層塗布液(5)中、19.0gである。
【0178】
(ポリマー微粒子水分散液(1)の製造)
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA エチレングリコールの平均の繰返し単位は50)20g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)80g及び2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2‘−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN=18/9/73のポリマー微粒子水分散液(1)が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径150nmに極大値を有していた。
【0179】
ここで、粒径分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0180】
〔平版印刷版原版の評価〕
平版印刷版原版(21)〜(30)、(45)〜(47)について、実施例1〜12、及び比較例1〜3と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0181】
[実施例23及び24]
【0182】
〔平版印刷版原版(31)の作製〕
前記画像記録塗布液(5)に、さらに下記化合物(c1)0.3gを加えた画像記録層塗布液(6)を使用した以外は平版印刷版原版(21)の作製と同様にして平版印刷版原版(31)[実施例23用]を得た。
【0183】
〔平版印刷版原版(32)の作製〕
前記画像記録塗布液(5)に、さらに下記化合物(d1)0.3gを加えた画像記録層塗布液(7)を使用した以外は平版印刷版原版(21)の作製と同様にして平版印刷版原版(32)[実施例24用]を得た。
【0184】
〔平版印刷版原版の評価〕
平版印刷版原版(31)〜(32)について、実施例1〜12、及び比較例1〜3と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0185】
【表1】

【0186】
表1中のアンモニウム塩(a1)、(a2)、(b1)、(b2)の構造は以下のとおりである。
【0187】
【化17】

【0188】
【表2】

【0189】
表1、表2において、無機層状化合物を含有しない保護層を用いた比較例4及び比較例7は、酸素遮断性が不十分で低感度であることに起因して低耐刷である。しかし、無機層状化合物を含有する保護層を用いた比較例1、2及び5は、高感度を維持し摩耗による耐刷性は良好だが、本発明の範囲よりアルキレンオキサイド繰り返し単位数が小さい高分子化合物を用いているためインキ受容性が低い。逆に、本発明の範囲よりアルキレンオキサイド繰り返し単位数が大きい高分子化合物を用いた比較例3及び6では、摩耗による耐刷性が低下する。これらに対して、本発明を用いた実施例は、高感度を維持しつつ、機上現像性、摩耗による耐刷性、インキ受容性を両立できている。
【0190】
【表3】

【0191】
表3中のオニウム塩(c1)、(d1)の構造は以下のとおりである。
【0192】
【化18】

【0193】
表3から、(c1)、(d1)のようなオニウム塩を添加することで、それらを添加していない平版印刷版原版(30)より版面のインキ受容性が一層良化し、耐刷性を向上できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に画像記録層及び保護層をこの順に有する平版印刷版原版であって、保護層に無機質層状化合物を含有し、かつ、アルキレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120であるポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する高分子化合物を画像記録層に含有することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
前記高分子化合物がパーフルオロアルキル基を実質的に含まないことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記画像記録層が、赤外線吸収剤、ラジカル重合開始剤及びラジカル重合性化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記高分子化合物のアルキレンオキサイドの繰返し単位数が20〜50であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記高分子化合物が下記一般式(1)で表される構造を側鎖に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【化1】

一般式(1)中、yは10〜120を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Rは水素原子または有機基を表す。
【請求項6】
前記無機質層状化合物が雲母であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
前記画像記録層が、アンモニウム塩及びホスホニウム塩から選ばれる少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
前記アンモニウム塩またはホスホニウム塩の対アニオンが有機ボレートアニオンであることを特徴とする請求項7に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
前記アンモニウム塩が、下記一般式(2)で表されるアンモニウム塩であることを特徴とする請求項7または8に記載の平版印刷版原版。
【化2】

一般式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはアラルキル基を表す。Xは対アニオンを表す。
【請求項10】
前記一般式(2)において、R〜Rのうち少なくとも1つがアリール基またはアラルキル基であることを特徴とする請求項9に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
前記アンモニウム塩が、下記一般式(3)で表される繰返し単位を有するポリマーであることを特徴とする請求項7または8に記載の平版印刷版原版。
【化3】

一般式(3)中、R11は水素原子またはメチル基を表し、Lは連結基を表す。R12〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはアラルキル基を表す。Xは対アニオンを表す。
【請求項12】
前記一般式(3)において、Lがフェニレン基、カルボニルオキシ基及びカルボニルイミノ基から選ばれる少なくとも一つの基を有する連結基であることを特徴とする請求項11に記載の平版印刷版原版。
【請求項13】
前記画像記録層が、露光後に、印刷機上で印刷インキ及び湿し水のうちの少なくともいずれかを供給して未露光部を除去することにより画像形成可能な画像記録層であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項14】
アルキレンオキサイドの繰返し単位数が10〜120であるポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する高分子化合物の含有量が画像記録層中の全固形分に対して10〜90質量%であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。

【公開番号】特開2010−253920(P2010−253920A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202013(P2009−202013)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】