説明

平版印刷版支持体の再生方法

【課題】 使用済み平版印刷版支持体より、不純物の混入がない高純度のアルミニウムを効率よく再生しうる平版印刷版支持体の再生方法を提供する。
【解決手段】 アルミニウムを含有する使用済み平版印刷版支持体を、有機溶剤と界面活性剤とを含有する、好ましくはpHが4.5〜9.5である中性水溶液で処理して、平版印刷版表面に付着したインキを除去するインキ除去工程を有することを特徴とする。その後、さらに、平版印刷版支持体を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る工程を実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み平版印刷版用支持体の再生方法に関し、詳細には、使用済み平版印刷版支持体より高純度のアルミニウム再生地金を得ることができる平版印刷版支持体の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版の支持体は表面親水性が高いことを要するため、高純度のアルミニウム板が用いられているのが一般的である。即ち、平版印刷版は、アルミニウムを主成分とする板状の原料を粗面化処理等の表面処理を施して得られる支持体表面に、画像記録層を設けてなるものであり、露光および現像を経た後、印刷機上に装着され、インキおよび湿し水を供給されて、印刷に供される。
印刷に用いられた後の使用済み平版印刷版は、前記アルミニウム板表面に、インキが付着した画像記録層が残存しており、支持体に用いられる高純度アルミニウムに再利用するにあたり、特に付着したインキが問題となり、できるだけ高効率で高純度アルミニウム原材料として再生する技術が望まれている。
【0003】
アルミニウムは資源として有用であり、高純度の再生方法については種々の提案がなされている。例えば、脂系塗布膜が表面に形成されているアルミ塗布材の再生方法として、予熱炉300〜550℃内に2〜24時間放置し、樹脂を除去する工程を実施した後、溶解炉に投入する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、樹脂類の除去には有用であるが、平版印刷版には顔料として重金属類を含有するインキが用いられており、インクに含まれている重金属類はこの方法では除去されず、溶解時アルミ中に混入し、アルミ純度が低下するという問題を有している。
【0004】
また、インクと残存する記録層とを除去するために、Si成分を含有する研磨パミスを含む研磨液を供給しながら研磨ブラシで処理する方法が記載されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法では、記録層とともにインクも除去されるため、インクに起因す
る重金属の問題は解消されるが、アルミニウムも同時に研磨され、回収率が低下したり、パミスが表面にささって残ることがあり、溶解時アルミに混入して、アルミ純度低下の原因となっている。同様に、酸、アルカリで処理して記録層やインクを除去する場合にも、アルミニウムの溶解による回収率の低下が生じる問題がある。
このように、単なる加熱による前処理によっては、インクに含まれる重金属を除去できず、また、物理的、化学的除去によってアルミニウム板自体が損傷したり、或いは、研磨工程に起因する新たな不純物の混入も予想されるため、さらなる改良が望まれているのが現状である。
【0005】
即ち、従来、印刷済み平版印刷版のアルミから作られた再生地金はインクに含有している有機顔料、例えば、フタロシアニンのCu等、がアルミに混入するため純度を確保できず、低純度アルミ製品用原料としてリサイクルされており(カスケード リサイクル)、再度、平版印刷版用アルミ原料として使用可能なリサイクル(product to productリサイクル)が望まれていた。
【特許文献1】特開2003−138325公報
【特許文献2】特開2005−186415公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、使用済み平版印刷版支持体より、不純物の混入がない高純度のアルミニウムを効率よく再生しうる平版印刷版支持体の再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、使用済み平版印刷版のインクをアルミニウム板に損傷を与えることなく除去する工程を実施することで本発明の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の使用済み平版印刷版支持体の再生方法は、アルミニウムを含有する使用済み平版印刷版支持体を、有機溶剤と界面活性剤とを含有する中性水溶液で処理して、平版印刷版表面に付着したインキを除去するインキ除去工程を有することを特徴とする。
本発明においては、前記インキ除去工程の後、アルミニウムを含有する使用済み平版印刷版支持体を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る工程を実施することにより、高純度のアルミニウム原料を得ることができる。
【0008】
なお、本発明の平版印刷版支持体の再生方法において用いられる中性水溶液のpHは、4.5〜9.5の範囲にあることが好ましく、また、該中性水溶液には有機溶剤を10〜45質量%の範囲で、界面活性剤を10〜45質量の範囲でそれぞれ含有することが好ましい。
ここで用いられる有機溶剤としては、環構造を有するものが好ましく、例えば、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノールから選択される1種以上であることが好ましい態様である。また、併用される界面活性剤としては使用される有機溶剤を水に40%以上可溶化することができる界面活性剤を選択して用いることが好ましい。
【0009】
なお、本発明で再生の対象となる使用済み平版印刷版支持体としては、画像形成されインクを供給されて実際に印刷に使用されたもののみならず、工程トラブルや抜き取り検査で使用に供されなかった汚れやキズが付着した平版印刷版の支持体も包含されることはいうまでもない。また、本発明の再生方法により、平版印刷版の切断屑などからのアルミニウムの再生も可能である。ただし、印刷インキの付着した平版印刷版の支持体の再生に使用した場合に、本発明の効果がより顕著である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用済み平版印刷版支持体より、不純物の混入がない高純度のアルミニウムを効率よく再生しうる平版印刷版支持体の再生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の使用済み平版印刷版支持体の再生方法は、アルミニウムを含有する使用済み平版印刷版支持体を、有機溶剤と界面活性剤とを含有する中性水溶液で処理して、平版印刷版表面に付着したインキを除去するインキ除去工程を含有することを特徴とする。
また、前記インキ除去工程の後、アルミニウムを含有する使用済み平版印刷版支持体を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る工程を実施することができる。以下、本発明の方法について順次説明する。
【0012】
〔付着物除去工程〕
本発明の再生方法においては、前記インキ除去工程に先立って、使用済み平版印刷版の汚れ、埃などの固形付着物を除去する工程を行うことができる。
例えば、使用時、或いは、回収、保存時に付着した汚れや埃などをあらかじめ除去しておくことにより、インキ除去工程における中性水溶液に不純物が混入するのが抑制できる。この付着物を除去する工程には、水又は界面活性剤を含む水による洗浄方法、アルミニウム板表面を傷付けない程度の、研磨ブラシ、研磨布などを用いた弱研磨方法、高圧エアーまたは高圧ジェット水などを用いたブラスト処理方法などを適用することができる。
【0013】
〔インキ除去工程〕
この工程では、アルミニウムを含有する使用済み平版印刷版支持体を、有機溶剤と界面活性剤とを含有する中性水溶液で処理して、インキを除去する。
ここで用いられる中性水溶液は、インクを溶解しうる有機溶剤と、有機溶剤を水に可溶化させる界面活性剤と溶媒としての水を含有する。本発明における中性水溶液は、pHが4.5〜9.5であることが好ましい。アルミニウム板は酸又はアルカリによって溶解しやすく、酸又はアルカリ水溶液で処理すると支持体を形成するアルミニウムが溶出し、アルミニウムの再生効率を低下させるため好ましくない。pHはより好ましくは5.0〜9.0の範囲である。
【0014】
中性水溶液に用いられ得る有機溶剤は、少なくともインクを溶解除去する機能を有し、且つ、アルミニウムに影響を与えないものを選択することが好ましい。また、中性水溶液調製の容易性からは、界面活性剤により水或いは水系の溶媒に溶解しうるものが好ましい。このような観点からは、鎖状構造を持つものに比較して、環構造を有するものが好ましく、アリール基などの不飽和環状炭化水素基と親水性の官能基とを有するものが好ましく、具体的には、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−アニリノエタノールなどが挙げられ、なかでも、ベンジルアルコールが好ましい。
中性水溶液中の有機溶剤の量は、インクの種類や付着状態により適宜選択することができるが、固形分で10〜45質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、15〜40質量%の範囲である。上記好ましい範囲において、アルミニウム板への影響を抑制しつつ、高いインク除去性を得ることができる。
【0015】
前記有機溶剤とともに中性水溶液に含まれる界面活性剤は、使用する有機溶剤を40〜100質量%程度、水もしくは水系溶媒に可溶化しうるものであれば特に制限はなく、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤のいずれであってもよい。有機溶剤の溶解性の観点からはアニオン界面活性剤であることが好ましく、例えば、アルキルアリールスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等が挙げられ、なかでも、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。

中性水溶液中の界面活性剤の量は、併用する有機溶剤の種類や量により適宜選択することができるが、固形分で10〜45質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、15〜40質量%の範囲である。上記好ましい範囲において、有機溶剤の溶解性を確保し、高いインク除去性を得ることができる。
【0016】
中性水溶液には、上述の有機溶剤、界面活性剤、及び、溶媒となる水に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて種々の併用成分を用いることができる。
例えば、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤、キレート剤などを挙げることができる。
【0017】
処理対象物である使用済み平版印刷版を中性水溶液で処理する方法としては、例えば、使用済み平版印刷版を、中性水溶液に浸漬する方法、中性水溶液を使用済み平版印刷版表面にスプレーやシャワーにより適用する方法が挙げられ、なかでも、インク除去性や数多くの平版印刷版を処理できるという観点からは、浸漬法が好ましい。
浸漬は、液温15〜45℃の中性水溶液を満たした液浴に、20〜300分分間浸漬することが好ましい。
液浴中に浸漬する際、複数の平版印刷版を積層して浸漬することができる。使用済みの平版印刷版はドラムにセットするための爪部を有し、且つ、湾曲していることから、複数枚を積層しても、処理対象である記録層を有するインク付着面と中性水溶液との接触が妨げられることはない。
インク除去効率向上の観点からは、浸漬中に機械的振動や超音波による振動を与える、液浴中に気体を吹き込みバブリングする、或いは、液浴中の中性水溶液を攪拌する、などの処理を行うことが好ましい。
浸漬は1回に複数枚の平版印刷版を処理する方法で行ってもよく、また、液浴中を、平版印刷版を搬送しながら通過させて連続的に処理する方法で行ってもよい。
【0018】
中性水溶液によるインク除去工程が終了した後、処理液を除去するため、洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理は、例えば、平版印刷版の表面(記録層が存在する面)に、水洗水をスプレー等により吹きかけつつ、ナイロンブラシでこする方法、水洗浴中を搬送することで洗浄する方法などが挙げられる。
洗浄処理の後、水分を除去する乾燥処理を行うのが好ましい。乾燥処理は、公知の方法、例えば、非接触型ヒーター、エアーナイフ、熱風吹き付け装置等の乾燥装置を用いる方法で行うことができる。
【0019】
このようにして平版印刷版として使用されたものと同様の高純度のアルミニウム板(再生地金)を得ることがでる。このアルミニウム板を溶融してアルミニウム溶湯とする。
【0020】
インクを除去した使用済み平版印刷版は、さらに溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯とすることで新たなアルミ原材料を得ることができる。
本工程においては、アルミニウム溶湯の原材料として、インクを除去された使用済み平版印刷版のみを用いることで、高純度のアルミニウム原料を得ることができる。得られたアルミニウムの純度が高いため、そのまま板状に加工して平版印刷版の支持体用とすることもでき、アルミニウム溶湯の原材料として、アルミニウムインゴットを作製することもできる。さらに、Fe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn等の元素を含むアルミニウム母合金を用いて、任意の組成に容易に調整することもできる。
【0021】
本発明においては、再生されたアルミニウム溶湯に溶湯処理を行うのが好ましい。溶湯処理は、非金属不純物やその燃焼ガス、酸化物等を除去するとともに、アルミニウム溶湯中に溶け込んだH2ガスやNaを除去することを目的として行われる。
溶湯処理の方法としては、フラックス、ガス、フィルター等の公知の方法を適宜用いることができる。中でも、第一の溶湯処理層においてガスを用いる溶湯処理を行い、ついで、第二の溶湯処理層においてフィルターを用いる溶湯処理を行う2段階での溶湯処理が好ましい。
【0022】
再生により得られたアルミニウム溶湯を用いて、支持体用のアルミニウム板を形成する方法は、公知の方法を適用することができる。代表的な方法としては、アルミニウム溶湯を用いてスラブ(例えば、厚さ400〜600mm、幅1000〜2000mm、長さ2〜20m)を鋳造する。スラブ表面の不純物部分を面削機にかけて3〜10mmずつ切削して不純物を面削により除去した後、スラブ内部の応力の除去と組織の均一化のため、均熱炉において480〜540℃、6〜12時間保持する均熱化処理工程を行う。その後、熱間圧延を480〜540℃で行い、厚さ1〜40mmとした後、室温で冷間圧延を行い、所望の厚さとする。その後、組織の均一化のため焼鈍を行い、圧延組織等を均質化した後、冷間圧延を行い所望の厚さとし、更に、矯正を行って、平坦度のよいアルミニウム板を得る。
得られたアルミニウム板はインクに起因する重金属などの混入が抑制された高純度アルミニウム板であり、平版印刷版用支持体、その他、高純度であることを要する種々の用途に利用することができる。
【0023】
得られたアルミニウム板を平版印刷版原版の支持体として用いる場合には、公知の表面処理、陽極酸化処理、所望により実施される親水化処理などを行えばよい。
本発明の再生方法によれば、アルミニウムをエッチングすることなく、処理が可能であり、アルミニウムの回収率が低下する懸念がなく、さらに、熱処理では除去できない重金属なども効果的に除去しうるため、高純度を確保できるという利点をも有するものである。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
(実施例1)
(印刷済み平版印刷版から再生地金を製造する)
(a)使用済み平版印刷版
表面に画像記録層が残存しインキが付着した使用済み平版印刷版(支持体原材料としてJIS 1050材使用、アルミ純度:99.60%、富士フイルム製、PS版 VS(商品名))にインク:エコピュアSOY、藍(サカタINKS製)を供給して印刷を行った。使用後の平版印刷版表面におけるインクの付着量は約20g/m2であった。
【0025】
(b)インク除去工程
印刷済みPS版は、回収された後、箱などに積み重ねられているので、版同士がインク等で固着している。このため、箱から平版印刷版を取り出し、事前に版同士を別々分離した後、以下に示す組成の中性水溶液に、互いに固着したままの平版印刷版100枚を、そのまま中性水溶液に浸漬しインクを除去する。版と版の間への中性水溶液の浸透を確実のものにするため、版に物理的な振動(3〜4回/分)を与える、また、用いた中性水溶液の温度は25℃であり、浸漬時間は4時間(温度:25℃)である。
【0026】
(中性水溶液の処方)
・ベンジルアルコール(有機溶剤) 20%
・ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤) 20%
・水 60%

浸漬後、水洗水スプレーを行い、乾燥装置により100℃の熱風吹き付けを行い、完全に乾燥した。
この処理によりインクを除去された使用済み平版印刷版を溶解炉に投入し、750℃で溶解した後、アルミニウム溶湯として分析を行い、収率と純度を確認した。
収率は、再生地金重量/印刷済みPS版重量(インク除去)により算出した。
純度は、発光分光分析器で測定した。
結果を、下記表1に示す。なお、対照例1として、インクを供給して印刷する前の印刷版(インク付着せず)、対照例2としてインクが付着したままの印刷版を、それぞれ同様に溶解炉に投入して収率と純度を確認した。結果を表1に併記した。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に明らかなように、本発明の再生方法により得られたアルミニウム板は、使用前の平版印刷版の支持体と同等の純度を維持し、回収率も極めて高いことがわかる。また、対照例2より、インクを付着したまま溶解すると、インクに起因する重金属のため、純度が低下することがわかる。
【0029】
(比較例1:熱によるインクの除去)
実施例1で用いた印刷済みの平版印刷版を準備し、それを、予熱炉内に導入して予熱温度400℃で1時間予熱した後、予熱炉から取り出し、実施例1と同様に溶解炉に投入して、750℃で溶解した。
実施例1と同様に、回収率と純度を確認した。
【0030】
(比較例2:研磨材によるインクの除去)
実施例1で用いた印刷済みの平版印刷版を準備し、くわえ部によりベルトコンベアに固定して搬送しつつ、研磨材(パミス)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液として表面に供給して、回転するローラ状研磨ブラシを押し当てて、画像記録層およびインキを除去した。ローラ状研磨ブラシを押し当てた部分は、ベルトコンベアの裏側から、受け板で支持した。
研磨材の平均粒径は40μm、最大粒径は100μmであった。研磨ブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。研磨ブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。研磨ブラシは3本使用した。研磨ブラシは研磨ブラシを回転させる駆動モータの負荷が、研磨ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。研磨ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。研磨ブラシの回転数は200rpmであった。
インクと画像記録層除去後の平版印刷版を実施例1と同様に溶解炉に投入して、750℃で溶解し、実施例1と同様に、回収率と純度を確認した。
【0031】
(比較例3:アルカリ液によるインクの除去)
実施例1で用いた印刷済みの平版印刷版を準備し、アルカリ溶液(濃度10質量%の水酸化ナトリウム水溶液)の液温30℃として、アルカリ溶液中に10分間浸漬した。その後、除去した画像記録層および付着物のカスの除去を目的として、表面に、水洗水をスプレー等により吹きかけつつ、ナイロンブラシでこすって画像記録層を除去した。
インクと画像記録層除去後の平版印刷版を実施例1と同様に溶解炉に投入して、750℃で溶解し、実施例1と同様に、回収率と純度を確認した。
前記比較例1〜3の結果を表1に併記した。
表1に明らかなように、熱や研磨材で画像記録層やインクを除去した比較例1、2によるアルミニウム再生地金では、実施例1に比べ、収率、純度ともに低いことがわかる。また、アルカリ水溶液によりインクなどを除去した比較例3によるアルミニウム再生地金では、純度は本発明と同様であったが、回収率が極めて低いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを含有する使用済み平版印刷版支持体を、有機溶剤と界面活性剤とを含有する中性水溶液で処理して、平版印刷版表面に付着したインキを除去するインキ除去工程を有することを特徴とする平版印刷版支持体の再生方法。
【請求項2】
前記インキ除去工程の後、アルミニウムを含有する使用済み平版印刷版支持体を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る工程を実施することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版支持体の再生方法。
【請求項3】
前記中性水溶液のpHが4.5〜9.5である請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版支持体の再生方法。
【請求項4】
前記中性水溶液に、有機溶剤を10〜45質量%の範囲で、界面活性剤を10〜45質量の範囲でそれぞれ含有する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版支持体の再生方法。
【請求項5】
前記有機溶剤がベンジルアルコール、2−フェノキシエタノールから選択される1種以上である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版支持体の再生方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が前記有機溶剤を水に40%以上可溶化することができる界面活性剤である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版支持体の再生方法。

【公開番号】特開2007−63583(P2007−63583A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248357(P2005−248357)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】