説明

平版印刷版材料の処理方法および平版印刷方法

【課題】 本発明の目的は、露光可視画性に優れかつ、機上現像性に優れ、環境負荷の少ない現像処理ができ、印刷機内の汚染が少なく網点再現の安定性に優れた印刷が可能であり、耐傷性に優れた平版印刷版材料を与える平版印刷版材料の処理方法及びこの処理によって得られた平版印刷版材料を用いる平版印刷方法を提供することにある。
【解決手段】 親水性表面を有する基材上に、感熱画像形成層を含む構成層を有する平版印刷版材料を像様加熱し、該像様加熱後現像処理を行う平版印刷版材料の処理方法であって、該構成層の少なくとも1層が、水により濃度が減少する着色剤を含有し、該像様加熱の後、水を主成分とする現像液で前現像処理を行うことを特徴とする平版印刷版材料の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版材料の処理方法及び平版印刷方法に関し、特にコンピュータ・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な平版印刷版材料の処理方法及び平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、印刷の分野においては、印刷画像データのデジタル化に伴い、CTP方式による印刷が行われるようになってきているが、この印刷においては、安価で取り扱いが容易で従来の所謂PS版と同等の印刷適性を有したCTP方式用印刷版材料が求められている。
【0003】
特に近年、特別な薬剤(例えばアルカリ、酸、溶媒など)を含む処理液による現像処理を必要とせず、従来の印刷機に適用可能である印刷版材料が求められており、例えば、全く現像処理を必要としない相変化タイプの印刷版材料、水もしくは水を主体とした実質的に中性の処理液で処理をする印刷版材料、印刷機上で印刷の初期段階で現像処理を行い特に現像工程を必要としない印刷版材料などの、ケミカルフリータイプ印刷版材料やプロセスレスタイプ印刷版材料と呼ばれる印刷版材料が知られている。
【0004】
上記の全く現像処理を必要としない印刷版材料や印刷機上で現像を行うプロセスレスタイプの印刷版材料においても、印刷機に取り付ける際に必要なパンチングを露光後に行うため、従来のPSと同様に所謂露光可視画性をもつことが必要とされている。
【0005】
また、プロセスレスタイプの印刷版材料の画像形成に主として用いられるのは近赤外〜赤外線の波長を有するサーマルレーザー記録方式であり、この方式で画像形成可能なサーマルプロセスレスプレートには、大きく分けて、アブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ、および相変化タイプが知られている。
【0006】
一方これらのプロセスレスタイプの印刷版材料に露光可視画性を持たせた印刷版材料として以下の印刷版材料が知られている。
【0007】
例えば、画像形成層中にロイコ色素とその顕色剤といったような感熱発色する素材を含有させた層や、熱によってスルホン酸を発生する官能基を有する高分子化合物および発生した酸によって変色する化合物とを含有する親油層、を有する印刷版材料(特許文献1、2参照)、画像形成要素の露出によりその光学濃度を変化させることができるIR−色素を含有する層を有する印刷版材料(特許文献3参照)、露光によって光学濃度を変化させることのできるシアニン系赤外線吸収色素を20質量%以上含有させた、印刷機上で除去可能な親水性オーバーコート層を有する印刷版材料(特許文献4参照)が知られている。
【0008】
しかしながら、これらの印刷版材料においては、露光により発色あるいは退色、変色する色素を含有するため、機上現像において、これらの色素による印刷インキ、湿し水に対する汚染を避けるのは困難であり、機上現像時に正常な印刷物を得るまでに要する損紙の量が多い場合があるといった問題があった。
【0009】
また、これらの印刷版材料では、充分な露光可視画性を得ようとすると印刷版材料の感度、機上現像性が不充分となり、印刷適性と露光可視画性を両立させるのは困難であった。
【特許文献1】特開2000−225780号公報
【特許文献2】特開2002−211150号公報
【特許文献3】特開平11−240270号公報
【特許文献4】特開2002−205466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、露光可視画性に優れかつ、機上現像性に優れ、環境負荷の少ない現像処理ができ、印刷機内の汚染が少なく網点再現の安定性に優れた印刷が可能であり、耐傷性に優れた平版印刷版材料を与える平版印刷版材料の処理方法及びこの処理によって得られた平版印刷版材料を用いる平版印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0012】
(1)親水性表面を有する基材上に、感熱画像形成層を含む構成層を有する平版印刷版材料を像様加熱し、該像様加熱後現像処理を行う平版印刷版材料の処理方法であって、該構成層の少なくとも1層が、水により濃度が減少する着色剤を含有し、該像様加熱の後、水を主成分とする現像液で前現像処理を行うことを特徴とする平版印刷版材料の処理方法。
【0013】
(2)前記水により濃度が減少する着色剤が電子供与性呈色化合物と水溶性の電子受容性顕色化合物とからなることを特徴とする前記(1)項に記載の平版印刷版材料の処理方法。
【0014】
(3)前記電子供与性呈色化合物が、クリスタルバイオレットラクトンであることを特徴とする前記(1)または(2)項に記載の平版印刷版材料の処理方法。
【0015】
(4)前記水溶性の電子受容性顕色化合物がサリチル酸亜鉛であることを特徴とする前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の平版印刷版材料の処理方法。
【0016】
(5)前記着色剤が、前記感熱画像形成層に含有されていることを特徴とする前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の平版印刷版材料の処理方法。
【0017】
(6)前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載の平版印刷版材料の処理方法により処理された平版印刷版材料を平版印刷機を用いて印刷することを特徴とする平版印刷方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記構成により、露光画像の確認が容易で露光可視画性に優れ、刷り出し時のヤレ紙が大幅に低減でき機上現像性に優れ、環境負荷の少ない現像処理ができ、印刷機内の汚染防止性に優れ、網点再現の安定性に優れた印刷が可能であり、耐傷性に優れた平版印刷版材料を与える平版印刷版材料の処理方法及びこの処理によって得られた平版印刷版材料を用いる平版印刷方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、親水性表面を有する基材上に、感熱画像形成層を含む構成層を有する平版印刷版材料を像様加熱し、該像様加熱後現像処理を行う平版印刷版材料の処理方法であって、該構成層の少なくとも1層が、水により濃度が減少する着色剤を含有し、該像様加熱の後、水を主成分とする液で前現像処理を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明では特に、水により濃度が減少する着色剤を含有する感熱画像形成層を有する平版印刷版材料を像様加熱し水を主成分とする液で前現像処理を行い、さらに平版印刷機で機上現像を行い印刷することにより、露光画像の確認が容易で、刷り出し時のヤレ紙が大幅に低減でき、環境負荷の少ない現像処理ができ、印刷機内の汚染が少なく網点再現性の安定性に優れた印刷方法が提供出来る。
【0021】
〔基材〕
本発明に係る親水性表面を有する基材は、基材の表面を親水化処理する方法あるいは基材上に親水性層を設ける方法により得られる。
【0022】
本発明に係る基材としては、印刷版の基材として使用される公知の材料を使用することができる。
【0023】
例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0024】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムが好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層の塗布を行なっても良い。
【0025】
例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行なう方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬または塗布処理を組み合わせて使用することもできる。また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム基材、いわゆるアルミ砂目を、親水性表面を有する基材として使用することもできる。
【0026】
本発明の印刷版材料に用いることができるアルミニウム基材には、純アルミニウムおよびアルミニウム合金よりなる基材が含まれる。アルミニウム合金としては種々のものが使用でき、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0027】
アルミニウム基材は、粗面化処理に先立ってアルミニウム表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。また、脱脂処理には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。
【0028】
脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合には、燐酸、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0029】
基材の粗面化としては公知の方法での電解粗面化処理を行うが、その前処理として、適度な処理量の化学的粗面化や機械的粗面化を適宜組み合わせた粗面化処理を行なってもかまわない。
【0030】
化学的粗面化は脱脂処理と同様に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いる。処理後には燐酸、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0031】
機械的粗面化処理方法は特に限定されないがブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。
【0032】
機械的に粗面化された基材は、基材の表面に食い込んだ研磨剤、アルミニウム屑等を取り除いたり、ピット形状をコントロールしたりする等のために、酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面をエッチングすることが好ましい。酸としては、例えば硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が含まれる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0033】
機械的粗面化処理に#400よりも細かい粒度の研磨剤を用い、かつ、機械的粗面化処理の後にアルカリ水溶液によるエッチング処理を行うことで、機械的粗面化処理による入り組んだ粗面化構造を滑らかな凹凸の表面とすることができる。このため、本発明の画像形成層を設けた際にも機上現像性を損なうことなく数μm〜数十μmの比較的長波長のうねりを形成することができ、これに後述する電解粗面化処理を加えることで、印刷性能が良好で、かつ、耐刷性向上にも寄与するアルミニウム基材とすることができる。また、電解粗面化処理時の電気量を低減することもでき、コストダウンにもつながる。
【0034】
上記をアルカリの水溶液で浸漬処理を行った場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0035】
中和処理の次に電解粗面化処理を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化処理に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0036】
電解粗面化処理は一般に酸性電解液中で交流電流を用いて粗面化を行うものである。酸性電解液は通常の電解粗面化法に用いられるものが使用できるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましく、本発明においては塩酸系電解液を用いるのが特に好ましい。
【0037】
電解に使用する電源波形は、矩形波、台形波、のこぎり波等さまざまな波形を用いることができるが、特に正弦波が好ましい。
【0038】
また、特開平10−869号公報に開示されているような分割電解粗面化処理も好ましく用いることができる。
【0039】
硝酸系電解液を用いての電解粗面化において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。
【0040】
電気量は全処理工程を合計して、100〜2000C/dm2、好ましくは200〜1500C/dm2、より好ましくは200〜1000C/dm2である。
【0041】
温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
【0042】
電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることが出来る。
【0043】
本発明においては,電解粗面化処理された基材は、表面のスマット等を取り除いたり、ピット形状をコントロールしたりする等のために、アルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチングを行う。
【0044】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が含まれる。
【0045】
アルカリ水溶液によるエッチング処理を行うことで、本発明の画像形成層を設けた際の刷り出し性や地汚れが非常に良好となる。
【0046】
アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に陽極酸化処理を行う場合は、中和に使用する酸を陽極酸化処理に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0047】
粗面化処理の次に、陽極酸化処理を行う。
【0048】
本発明で用いられる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理により基材上には酸化皮膜が形成される。本発明において、陽極酸化処理には、硫酸および/または燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に米国特許第1,412,768号に記載されている硫酸中で、高電流密度で電解する方法や、米国特許第3,511,661号に記載されている燐酸を用いて電解する方法等を用いることができる。
【0049】
陽極酸化処理された基材は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0050】
また、陽極酸化処理された基材は適宜、上記封孔処理以外の表面処理を行うこともできる。表面処理としては、ケイ酸塩処理、リン酸塩処理、各種有機酸処理、PVPA処理、ベーマイト化処理といった公知の処理が挙げられる。また、特開平8−314157号に記載の炭酸水素塩を含有する水溶液による処理や、炭酸水素塩を含有する水溶液による処理に続けてクエン酸のような有機酸処理を行ってもよい。
【0051】
本発明に係る基材としてのプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。
【0052】
また、裏面のすべり性を制御する(例えば版胴表面との摩擦係数を低減させる)目的で、裏面コート層を設けた基材も好ましく使用することができる。
【0053】
〔親水性層〕
親水性表面を有する基材は、上記のような基材の表面を親水化処理する方法、あるいは基材上に親水性層を設ける方法により得られる。
【0054】
親水性層を設ける場合、親水性層は親水性素材を含み、親水性素材としては、金属酸化物が好ましく用いられる。
【0055】
金属酸化物としては、金属酸化物の粒子を含むことが好ましい。
【0056】
例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。
【0057】
この金属酸化物粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0058】
上記金属酸化物粒子はその造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0059】
本発明には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。
【0060】
上記コロイダルシリカとしては、ネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0061】
本発明に用いることができる親水性層は金属酸化物として多孔質金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
【0062】
多孔質金属酸化物粒子としては、多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0063】
多孔質無機粒子の粒径としては、親水性層に含有されている状態で、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。
【0064】
親水性層にはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0065】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているもの、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0066】
本発明の好ましい態様として、親水性層には後述の光熱変換剤を含有させることができる。
【0067】
光熱変換素剤としては下記のような素材を挙げることができる。
【0068】
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
また、特開平11−240270号、特開平11−265062号、特開2000−309174号、特開2002−49147号、特開2001−162965号、特開2002−144750号、特開2001−219667号に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0070】
〔感熱画像形成層〕
本発明に係る感熱画像形成層(以下単に画像形成層と略記)は、像様加熱により画像形成可能な層である。
【0071】
像様に加熱するには、直接熱源で画像様に加熱する方法、あるいはレーザーなどで、画像露光を行い、露光することにより発生する熱により加熱する方法があるが、本発明においては、レーザー光を用いた画像露光による方法が好ましく用いられる。
【0072】
本発明に係る画像形成層は、像様加熱により加熱された部分が、親水性から疎水性に変化し、印刷時印刷インキ受容性である画像部となる得るものであり、また像様加熱により加熱されなかった部分が、前現像処理及び機上現像処理により除去され得るものであり、この除去された部分は、基材の親水性表面が露出され印刷時非画像部となる。
【0073】
画像形成層は熱により変形、溶融、軟化等の変化を生じる感熱性素材を含有する。また、画像形成層には、前述の光熱変換剤を含有させるのが好ましい態様である。
【0074】
感熱性素材としては、天然または合成ワックス類、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリウレタン系樹脂もしくはこれらの共重合体樹脂あるいはブロックイソシアネートなどの熱反応性の素材などが挙げられる。
【0075】
感熱性素材は、耐刷性、機上現像性等の面でブロックイソシアネート、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂粒子等であることが好ましい。
【0076】
これらの樹脂の好ましい物性として、融点、軟化点、ガラス転移点(Tg)などの性質が40℃以上である。
【0077】
又、感熱性素材は熱可塑性の樹脂粒子などが好ましく、その平均粒径は機上現像性、解像度の面から0.01〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0078】
〔画像形成層に含有可能なその他の素材〕
本発明に係る画像形成層にはさらに以下のような素材を含有させることが好ましい。
【0079】
画像形成層には水溶性樹脂、水分散性樹脂を含有させることが好ましい。水溶性樹脂、水分散性樹脂としては、オリゴ糖、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。
【0080】
オリゴ糖としては、ラフィノース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、スクロース、ラクトースといったものが挙げられるが、特にトレハロースが好ましい。
【0081】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0082】
ポリアクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(Na塩等)、ポリアクリルアミドとしては、分子量3000〜500万であることが好ましく、5000〜100万であることがより好ましい。
【0083】
水溶性樹脂、水分散性樹脂は印刷版材料の経時保存後の地汚れや耐熱性、および機上現像性を向上させるために添加させる場合があるが、添加量を増やした場合、印刷版画像部の耐久性を低下させる場合があるため添加量は必要最低限であることが好ましく、通常50質量%以下の範囲が好ましく、30%以下の範囲がより好ましい。
【0084】
また、画像形成層には、水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、F系、アセチレングリコール系等の界面活性剤を使用することができる。
【0085】
さらに、pH調整のための酸(リン酸、酢酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、ケイ酸塩、リン酸塩等)を含有していても良い。
【0086】
画像形成層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0087】
(可視画像の形成)
本発明の平版印刷版材料は、親水性表面を有する基材上に、感熱画像形成層を有する印刷版材料であって、基材上のいずれかの構成層に水により濃度が減少する着色剤を含有する。
【0088】
水により濃度が減少する着色剤とは、水と接触することにより、濃度の減少を生ずる着色剤をいい、特に電子供与性呈色化合物と水溶性の電子受容性顕色化合物とからなることが好ましい。
【0089】
ここでいう水溶性とは20℃における純水への溶解度が0.5質量%以上であることをいう。また電子供与性呈色化合物と水溶性の電子受容性顕色化合物とからなるとは、電子供与性呈色化合物と水溶性の電子受容性顕色化合物とが接触して存在している状態をいう。
【0090】
濃度の減少を生ずるとは、感熱画像形成層の可視光での反射濃度が減少することであり、25℃の水に30秒間、浸漬後、浸漬前の反射濃度に対して、反射濃度が、0.1以上低下することをいう。
【0091】
反射濃度の測定は、X−Rite社製分光濃度計X−Rite530を用いて、フィルター条件status−Tで測定し、濃度測定についての選択において、モードを絶対値、基準値をオート、測定色モードをオートに設定してシアン、マゼンタ、イエロー、ビジュアルの、測定した色の中で最も濃度の高い色の値を濃度と定義する。
【0092】
電子供与性呈色化合物と水溶性の電子受容性顕色化合物とを含む構成層用塗布液を用いて、構成層を塗設することにより電子供与性呈色化合物と水溶性の電子受容性顕色化合物とを接触して存在させることができる。
【0093】
本発明に係る電子供与性呈色化合物として、クリスタルバイオレットラクトン;マラカイトグリーンラクトン;1,3ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン;6−ジエチルアミノ−ベンゾ〔α〕−フルオラン;3−シクロヘキシルメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;ペンゾイルロイコメチレンブルー;エチルロイコメチレンブルー;メトキシベンゾイルロイコメチレンブルー;2−(フェニルイミノエタンジリデン)−3,3−トリメチル−インドリン;1,3,3−トリメチル−インドリノ−7′−クロル−β−ナフトスピロピラン;ジ−β−ナフトスピロピラン;N−アセチルオーラミン;N−フェニルオーラミン:ローダミンBラクタムが挙げられる。
【0094】
これらの中でも特に、クリスタルバイオレットラクトンが好ましい。
【0095】
また、水溶性の電子受容性顕色化合物としては、電子受容性化合物は、前記電子供与性無色染料前駆体と反応して顕色させる化合物であり、例えば、フェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。
【0096】
具体的には、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(即ち、ビスフェノールP)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸及びその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸及びその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸及びその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノールなどが挙げられる。
【0097】
これらの中でも特に、サリチル酸亜鉛が好ましい。
【0098】
本発明に用いられる電子供与性呈色化合物および、水溶性の電子受容性顕色化合物は感熱画像形成層に含有されることが好ましい。この場合、加熱された部分の画像形成層は疎水性となり、電子供与性呈色化合物と、水溶性の電子受容性顕色化合物からなる着色剤は水に接触することなく、層中に固定されている。
【0099】
画像露光により、露光された部分は、前記のように親インキ性となる。画像露光の未露光部分においては、本発明に係る水を主成分とする液で前現像処理を行うことにより、濃度の減少を生ずる。この濃度の減少により露光による目視可能な画像が形成される。
【0100】
具体的な可視画像の形成方法としては、親水性表面を有する基材上に、熱または光エネルギーにより、親水性から疎水性に変化する感熱画像形成層を有する印刷版材料において、基材上のいずれかの層に電子供与性呈色化合物と水溶性の電子受容性顕色化合物を含有する平版印刷版材料の感熱画像形成層を熱または光エネルギーにより、親水性から疎水性に像様に変化させた後、水を主成分とする前現像処理用の液に浸漬して、必要に応じて印刷版表面をブラシ等でこすることで、感熱画像形成層の疎水性に変化しなかった部分の少なくとも一部を除去することにより、平版印刷版表面の着色を選択的に消色する。
【0101】
本発明に係る平版印刷版材料の好ましい態様としては、前述の表面を親水化処理されたアルミニウム基材、もしくは基材上に設けられた親水性層上に、画像形成層を設け、画像形成層またはそれ以外の基材上の構成層のいずれかに、光熱変換剤を含有する平版印刷版材料が挙げられる。
【0102】
本発明に係る構成層は、少なくとも感熱画像形成層を含む層である。感熱画像形成層以外の層としては、感熱画像形成層の上に設けられる、保護層、下に設けられる下引き層が挙げられる。
【0103】
前記のように着色剤を含む層が、感熱画像形成層であることが好ましい態様である。
【0104】
保護層に用いる素材としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂を好ましく用いることができる。また、特開2002−019318号や特開2002−086948号に記載されている親水性オーバーコート層も好ましく用いることができる。保護層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0105】
本発明においては保護層に着色剤を含んでもよい。
【0106】
画像形成層は、印刷機上現像可能な層であることが好ましい態様である。
【0107】
印刷機上現像可能とは、露光後、平版印刷における湿し水及びまたは印刷インキにより非画像部の画像形成層が除去され得ることをいう。
【0108】
印刷機上現像可能とするには、上述の感熱性素材、水溶性樹脂、水分散性樹脂などを含有させることにより得られる。
【0109】
着色剤を含有する層が、感熱画像形成層である場合であって、この画像形成層用の塗布液を用い、塗布、乾燥して設層する場合、この乾燥としては、温度20℃〜200℃で10秒〜30分程度で行うのが好ましい。その際、乾燥の熱により、感熱性素材が前現像で除去不可能な程度に軟化、溶融して親水性表面に密着しないような乾燥の条件に、温度と時間を調整することが必要である。
【0110】
〔像様加熱〕
本発明に係る像様加熱する方法としては、前記のようにサーマルヘッドなどの媒体による加熱あるいはレーザー光の照射による方法があるが、レーザー光を用いる方法が本発明においては好ましい。レーザー光を用いる方法の中でも、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0111】
例えば赤外及び/または近赤外領域で発光する、即ち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。
【0112】
レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0113】
走査露光に好適な装置としては、この半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0114】
一般的には、(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。又特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0115】
(前現像処理)
本発明の処理方法では、画像様加熱の後、水を主成分とする液で前現像処理される。
【0116】
水を主成分とする液とは、水を50質量%以上含む液であり、好ましくは水以外の成分の含有量が50質量%以下、特に好ましくは、30質量%以下であることが好ましい。
【0117】
水以外の成分としては、例えば防腐剤、pH調整剤、水溶性のアルコール類、界面活性剤、無機または有機の増粘剤、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂等を含んでもよい。
【0118】
前現像は、水を主成分とする液に接触させることにより、行われ、接触させる方法としては、この液を含む処理槽に浸漬する方法、この液をノズルなどから噴射して接触させる方法、ワイヤーバーなどのコーターを用いて表面に塗布する方法、セルローススポンジなど含水性素材に液を含ませた部材を接触させる方法などがあるが、本発明においては、スプレーコーティング方式、セルローススポンジに液を含ませて擦過する方法が好ましく適用できる。
【0119】
前現像処理に用いられる上記液の温度は、5℃〜60℃が好ましく、特に10℃〜50℃が好ましい。また前処理の時間としては、1秒〜10分が好ましく、特に1秒〜1分が好ましい。
【0120】
〔機上現像方法〕
本発明の平版印刷方法では、画像露光による未露光部は、前現像処理で一部除去されるが、印刷時に印刷機上で完全に除去されて非画像部となり印刷が行われる。
【0121】
刷機上での画像形成層の未露光部の除去は、版胴を回転させながら水付けローラーやインクローラーを接触させて行なうことができるが、下記に挙げる例のような、もしくは、それ以外の種々のシークエンスによって行なうことができる。
【0122】
また、その際には、印刷時に必要な湿し水水量に対して、水量を増加させたり、減少させたりといった水量調整を行ってもよく、水量調整を多段階に分けて、もしくは、無段階に変化させて行ってもよい。
(1)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
(2)印刷開始のシークエンスとして、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
(3)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーとインクローラーとを実質的に同時に接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
【実施例】
【0123】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中「部」は特に断りのないかぎり「質量部」を表す。
【0124】
〔基材の作製〕
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0125】
次いでこのアルミニウム板を、塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行なった。
【0126】
この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で480C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に5秒間の休止時間を設けた。
【0127】
電解粗面化後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマット含めた溶解量が1.2g/m2になるようにエッチングし、水洗し、次いで25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0128】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた1質量%のリン酸二水素ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、基材1を得た。
【0129】
基材1のRaは460nmであった(WYKO社製RST Plusを使用し、40倍で測定した)。
【0130】
続いて、酢酸アンモニウム(関東化学社製)を固形分濃度0.1質量%の水溶液とし、90℃に液温を保った浴中に、撹拌しながら60秒浸漬処理後、水洗、乾燥した後、カルボキシメチルセルロース1150(ダイセル化学株式会社製)を固形分濃度0.1質量%の水溶液とし、80℃に液温を保った浴中に、撹拌しながら30秒浸漬処理後、水洗、乾燥した。
【0131】
〔平版印刷版材料の作製〕
<実施例1>
[印刷版材料1]
下記組成の素材を、十分に撹拌混合した後、純水で濃度を適宜希釈調整し、濾過して、固形分2.5質量%の可視画付与層兼画像形成層(1)の塗布液を得た。
【0132】
次いで、親水性層上に、可視画付与層兼画像形成層(1)の塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の付量が0.8g/m2となるように塗布し、温度50℃で3分間乾燥した。
【0133】
次いで、35℃24時間のエイジング処理を行って、730mm×600mmの大きさの平版印刷版材料1を得た。
【0134】
画像形成層(1)用塗布液組成
感熱性素材:ブロック型ウレタンプレポリマー水分散液(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートWB−700固形分44質量%) 145部
水溶性樹脂:ポリアクリル酸ナトリウム、アクアリックDL522(日本触媒社製)の水溶液、固形分5質量% 40部
赤外吸収色素:ADS830AT(AmericanDyeSource 社製)の2質量%イソプロパノール溶液 200部
層状鉱物粒子:コープケミカル株式会社製親水性スメクタイトSWNの5%水溶液
200部
クリスタルバイオレットラクトンの2質量%イソプロパノール溶液 500部
サリチル酸亜鉛の2質量%イソプロパノール溶液 500部
〔赤外線レーザー露光による画像形成〕
平版印刷版材料1を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを400mJ/cm2として、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、175線で画像を形成した。露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像とを含むものである。
【0135】
(前現像)
上記露光後の平版印刷版材料を20枚、コダックポリクローム社製プレートプロセッサー(PK−910II)の全処理層に水を入れ、処理温度28℃、搬送速度120cm/分で処理を行った。なお補充も水で行い、液面が低下しない程度に水を補充した。
【0136】
[可視画性の評価]
赤外線レーザー露光による画像形成後、印刷前の平版印刷版材料を、グレタグマクベス社製、標準光源装置プルーフライト(反射用)LD50−440モデルの光源下で観察を行い、網点ステップ部の画像を観察した。
【0137】
その際の網点%の異なるステップ同士の階調差の判別性の可否を比較した。
【0138】
評価基準
5:網点1%から99%の全領域において網点の階調差%が5%のステップの差を目視判別可能
4:網点5%から95%の領域において網点の階調差%が5%のステップの差を目視判別可能
3:網点10%から90%の領域において網点の階調差%が20%のステップの差を目視判別可能
2:網点0%(未露光部)と50%および100%(ベタ露光部)のステップの差を目視判別可能
1:網点0%(未露光部)と100%(ベタ露光部)のステップの差を目視判別可能
〔印刷方法〕上記前現像後の平版印刷版材料を印刷機:三菱重工業社製DAIYA1F−1を用いて、コート紙、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所社製)2質量%、インク(東洋インク社製TKハイユニティ紅)を使用して印刷を行った。平版印刷版材料は版胴に取り付け、PS版と同じ刷り出しシークエンスを用いて200枚印刷した。
【0139】
(印刷評価)
[機上現像性]
印刷版材料について、刷り出しから何枚目の印刷で良好な印刷物が得られるかを求め、この枚数を機上現像性の指標とした。良好な印刷物とは、印刷物上で非画像部の汚れがなく、かつ、ベタ画像部の濃度が1.6以上(MacbethRD918を用いてMのモードで測定し)であり、かつ、95%の網点画像が開いていることである。
【0140】
〔湿し水濁り〕
20枚印刷後の、印刷機の水舟の底の湿し水をガラス瓶にサンプリングして、液の濁りを観察し、湿し水濁り下記ランクで評価し、これを印刷機内の汚染防止性の指標とした。
【0141】
5印刷前の新液と差がみられず。
【0142】
4透明であるが液の色にわずかに変化がみられた
3液の色が変化した。
【0143】
2液に濁りがみられた。
【0144】
1沈殿物がみられた
〔網点ばらつき〕
20枚現像処理後の各印刷版面の55%網点部を有限会社テシコン製デジタルマイクロスコープDMS910を用いて網点面積率の変動を測定し下記ランクで評価し、これを網点再現性の指標とした。
【0145】
5変動幅0.5%未満
4変動幅0.5%以上1.0%未満
3変動幅1.0%以上2.0%未満
2変動幅2.0%以上4.0%未満
1変動幅5.0%以上
〔印刷前の耐傷性〕
印刷版の非画像部を0.1mФのサファイヤ針で10、30、100、200gの荷重で、2cm/秒の速度で引っかき傷をつけ、印刷物に影響が出るか確認し、下記ランクで評価し、これを耐傷性の指標とした。
【0146】
5 200g荷重でも印刷物に影響なし
4 200g荷重で傷状に汚れ発生
3 100g荷重で傷状に汚れ発生
2 30g荷重で傷状に汚れ発生
1 10g荷重で傷状に汚れ発生
上記評価の結果を下記にしめした。
【0147】
可視画性:5
機上現像性:6枚
湿し水濁り:5
網点ばらつき:5
印刷前の耐傷性:5
<比較例1>
実施例1において、前現像処理を行わずに印刷を行った以外は同様にして評価を行った。
【0148】
可視画性:2
機上現像性:20枚
湿し水濁り:2
網点ばらつき:4
印刷前の耐傷性:2
<比較例2>
[平版印刷版材料2]
平版印刷版材料1におけるクリスタルバイオレットラクトンとサリチル酸亜鉛のイソプロパノール溶液を添加しなかった以外は平版印刷版材料1と同様にして平版印刷版材料2を作製し、評価を行った。可視画性は1であった。
【0149】
<比較例3>
平版印刷版材料1におけるクリスタルバイオレットラクトンとサリチル酸亜鉛のイソプロパノール溶液をキリヤ化学株式会社製、青色2号BlueNo.2 Indigo Carmineに変更した以外は同様にして評価を行った。
【0150】
可視画性:2
機上現像性:25枚
湿し水濁り:3
網点ばらつき:3
印刷前の耐傷性:3
<比較例4>
コダックポリクローム社製、グラフィックス エクスサーモ プリンティング プレート TP−Rをコダックポリクローム社製、現像液/補充液を用いて、メーカー指定の条件で処理を行ったが、本発明と異なり強アルカリの廃液が発生した。また、実施例1と同様に、廃液が出ないよう現像処理浴の液面が低下しない程度に補充液を減量補給した場合、網点ばらつきランクが2となった。
【0151】
またアグファ社製:Azuraを300mj/cm2のエネルギー量で露光後、専用現像機C85で標準条件で処理を行った。着色した現像廃液が約550ml発生した。
【0152】
上記実施例及び比較例の結果から、本発明の処理方法は、露光画像の確認が容易で、刷り出し時のヤレ紙が大幅に低減でき、環境負荷の少ない現像処理ができ、印刷機内の汚染が少なく網点再現の安定性に優れた印刷が可能であり、耐傷性に優れた平版印刷版材料を与えることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性表面を有する基材上に、感熱画像形成層を含む構成層を有する平版印刷版材料を像様加熱し、該像様加熱後現像処理を行う平版印刷版材料の処理方法であって、該構成層の少なくとも1層が、水により濃度が減少する着色剤を含有し、該像様加熱の後、水を主成分とする現像液で前現像処理を行うことを特徴とする平版印刷版材料の処理方法。
【請求項2】
前記水により濃度が減少する着色剤が電子供与性呈色化合物と水溶性の電子受容性顕色化合物とからなることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版材料の処理方法。
【請求項3】
前記電子供与性呈色化合物が、クリスタルバイオレットラクトンであることを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版材料の処理方法。
【請求項4】
前記水溶性の電子受容性顕色化合物がサリチル酸亜鉛であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版材料の処理方法。
【請求項5】
前記着色剤が、前記感熱画像形成層に含有されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版材料の処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の平版印刷版材料の処理方法により処理された平版印刷版材料を平版印刷機を用いて印刷することを特徴とする平版印刷方法。

【公開番号】特開2007−55004(P2007−55004A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240944(P2005−240944)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】