説明

平織り全幅機上縫い閉じ可能ファブリック

2つの横方向端に配置された縫い目ループを伴うファブリックを製造するために、ベースファブリック層が内側に折り畳まれて平らにされる平らに織られた全幅のベースファブリック層から、機上での縫い合わせが可能な積層された産業用ファブリックを作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般の産業用ファブリックに関する。特に、本発明は、抄紙装置の成形、プレス、及び乾燥セクションにおいて用いられるファブリック、並びに同上の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ファブリックは、成形ファブリック、プレスファブリック、乾燥ファブリック又はプロセスベルト(「抄紙機布」)として使用するもののような無端のファブリック又はベルトを意味する。それはまた、インプレッションファブリック、TADファブリック、工業用ファブリック、メルトブローイング、スパンボンディング、ハイドロエンタングルメントのような方法による不織布の生産に用いられるファブリック、或いは繊維仕上げ加工において用いられるファブリックでもあり得る。
【0003】
一般に、製紙プロセスの間には、抄紙機の成形セクションで移動中の成形ファブリック上に、繊維スラリー、すなわち、セルロース繊維の水分散液を堆積させることにより、例えば、セルロース繊維ウェブが成形される。成形ファブリックから大量の水が排出され、成形ファブリックの表面上にセルロース繊維ウェブが残される。
【0004】
新たに成形されたセルロース繊維ウェブは、成形セクションから、一連のプレスニップを含むプレスセクションへ進行する。セルロース繊維ウェブは、単一のプレスファブリックにより、或いは、多くの場合は、そのようなプレスファブリックの2つの間に支持されてプレスニップを通過する。プレスニップにおいて、セルロース繊維ウェブは、そこから水分を絞り出し、かつ、ウェブ内のセルロース繊維を互いに固定してセルロース繊維ウェブを紙シートにする圧縮力を受ける。水は、単一又は複数のプレスファブリックに受け入れられ、理想的には、紙シートに戻らない。
【0005】
紙シートは、最後に、蒸気によって内部加熱された少なくとも一連の回転可能な乾燥ドラム又はシリンダーを含む乾燥セクションに進む。新たに成形された紙シートは、ドラムの表面に対して密接に紙シートを保持する乾燥ファブリックによって、一連のドラムにおけるそれぞれを連続的に取り囲む蛇行路内で方向付けられる。加熱されたドラムは、蒸発により、望ましいレベルにまで紙シートの含水量を減少させる。
【0006】
成形、プレス及び乾燥ファブリックが全て、抄紙機上では無端ループの形をとり、かつ、コンベヤの方法で機能することが理解されるべきである。更に、製紙が、かなりのスピードで進行する連続工程であることも認識されるべきである。換言すれば、繊維スラリーが成形セクションにおいて成形ファブリック上に連続的に堆積させられ、その一方、新たに製造された紙シートが、乾燥セクションから出た後にロール上に連続的に巻取られる。
【0007】
本発明は、特に、プレスセクションにおいて用いられるプレスファブリックに関して優れている。プレスファブリックは、製紙工程の間、重要な役割を演ずる。それらの機能のうちの1つは、上に示唆した通り、プレスニップを通して製造される紙製品を支持し、かつ、搬送することである。
【0008】
プレスファブリックは、紙シートの表面仕上げにも参加する。すなわち、プレスファブリックは、プレスニップを通過する過程で、滑らかでマークのない表面が紙に与えられるように、滑らかな表面と一様に弾力のある構造を有するように設計されている。
【0009】
おそらく最も重要なことに、プレスファブリックは、プレスニップ内の湿った紙から抽出される多量の水を受け入れる。この機能を満たすため、プレスファブリック内には、水を行かせるため、一般にボイド容量と呼ばれる空間が文字通り存在していなければならず、また、このファブリックは、その耐用寿命の全体に亘って、水に対する十分な透過性を有していなければならない。最後に、プレスファブリックは、湿った紙から受け入れた水が、プレスニップからの脱出に応じて紙に戻り再湿させてしまうのを防ぐことができなければならない。
【0010】
現在のプレスファブリックは、製造される紙のグレードに合わせてそれらが据え付けられる抄紙機の要求を満たすべく設計された様々なスタイルに製造される。通常それらは、不織繊維状物質の打ち延ばし綿(batt)が縫い込まれた織りベースファブリックを備えている。ベースファブリックは、単繊維、プライド(plied)単繊維、多繊維、或いはプライド多繊維から織られていてもよく、かつ、単層化、復層化、或いは積層化されていてもよい。編み糸は、一般に、抄紙機布技術の分野の当業者がこの目的のために使用する、ポリアミドのような、合成高分子樹脂の何れかの押し出しにより成形される。
【0011】
織られたベースファブリック自体は、多くの異なる形をとる。例えば、それらは無端に編まれてもよく、又は、それらは、1層以上の縦方向(「Md」)及び幅方向(「CD」)の編み糸を用いて平織りされた後、編み縫い目によって無端形状にされてもよい。或いは、それらは、ベースファブリックの幅方向端部に、その縦方向編み糸を用いた縫い目ループが備え付けられる修正無端織りとして一般に知られるプロセスによって製造されてもよい。この方法では、縦方向編み糸は、織り返して縫い目ループを形成する各端部において、ファブリックの幅方向端部の間を連続的に行ったり来たり織り合わされる。この方法で生産されるベースファブリックは、抄紙機上で組み入れられる際に無端形状にされ、この理由により、機上縫い込み可能なファブリックと呼ばれる。この種のファブリックを無端形状にするために、2つの横方向端部が一つにされ、2つの端部における縫い目ループが互いに嵌め合わされ、そして、縫い目ピン又はピントルが、嵌め合わされた縫い目ループによって形成された通路を通って進められる。
【0012】
更に、織られたベースファブリックは、一つのベースファブリックを、もう一つで形成された無端ループ内に置くことにより、かつ、それらを互いに一つにするために双方のベースファブリックを通してステープル繊維打ち延ばし綿を縫い付けることにより積層されてもよい。一つ或いは双方の織られたベースファブリックは、機上縫い付け可能なタイプであってもよい。
【0013】
何れにせよ、織られたベースファブリックは、無端ループの形状にあり、或いはそのような形状に縫い合わすことができ、縦にその周囲で測定した場合に特定の長さを、かつ、横に横断して測定した場合に特定の幅を有している。抄紙機の構成は広く変化するので、抄紙機布の製造業者には、プレスファブリックや他の抄紙機布を、彼らの顧客の抄紙機において特定位置にフィットさせるために要求される寸法に製造することが求められ、従って、各ファブリックは、一般にオーダーメイドでなければならない。
【0014】
様々な長さ及び幅のプレスファブリックを、より迅速かつ効率的に製造するためのこの需要に応えて、プレスファブリックは、近年、同一出願人によるレクスフェルトらに対する米国特許番号5,360,656(’656特許)に開示された螺旋巻き技術を用いて製造されており、参照によりその技術は本願明細書に引用したものとする。
【0015】
’656特許は、内部に縫い込まれたステープル繊維素材の1以上の層を有するベースファブリックを備えるプレスファブリックを開示する。そのベースファブリックは、ベースファブリックの幅より小さい幅を有する織りファブリックの螺旋巻きストリップからなる少なくとも一つの層を備えている。そのベースファブリックは、長手、又は縦方向において無端である。螺旋巻きストリップの長手方向糸は、プレスファブリックの長手方向に対して角度を形成している。織りファブリックのストリップは、抄紙機布の製造において一般に用いられるものより狭い織機上で平織りされてもよい。
【0016】
ベースファブリックは、螺旋状に巻かれ、かつ結合された、比較的狭い複数の織りファブリックストリップターンを備えている。ファブリックストリップは、平織りの場合、長手方向(縦糸)と横断方向(横糸)の編み糸で織られる。螺旋状に巻かれたファブリックストリップの隣接するターンは互いに隣接してもよく、また、そのように製造された螺旋状の連続縫い目は、縫い合わせ、縫合、溶着、溶接(例えば超音波)、又は接着により閉じられてもよい。或いは、隣接する螺旋ターンの隣り合う長手方向端部は、重複領域の厚さを増加させないように厚さが減じられている限り、重複配置されてもよい。更なる代替として、縦方向編み糸間のスペースは、隣接する螺旋ターンが重複配置された際に、重複領域において長手方向の糸の間隔が変わらないで済むように、ストリップの端部において増加させてもよい。
【0017】
多軸のプレスファブリックは、少なくとも4つの異なる方向でそれを走らせる編み糸を有する2つ以上の別々のベースファブリックで作ることもできる。先行技術の標準プレスファブリックが3本の軸(1つは縦方向(MD)、一つは幅方向(CD)、そして一つはz方向)を有するのに対して、多軸ファブリックは、これら3本の軸だけでなく、その螺旋状に巻かれた単一又は複数の層における編み糸系の方向によって定められる軸を少なくとも更にあと2つ有している。更に、多軸のプレスファブリックのz方向には複数の流路が存在する。結果として、多軸のプレスファブリックは、少なくとも5本の軸を有する。1より多くの層を有する多軸のプレスファブリックは、その多軸構造のために、編み糸が互いに平行なベースファブリックを有するものに比べて、圧縮に応えてぴったりと組み合わされること、及び/又は崩壊することに対して優れた耐性を示す。
【0018】
他のものの上に2つの別個のベースファブリックが存在するという事実は、ファブリックが「積層」されており、かつ、各層が異なる機能のために設計され得ることを意味している。加えて、別個のベースファブリック又は層は、それらを通して前述した打ち延ばし綿を縫い込むように、適用に応じて、熟練した職人にとって周知な方法で、典型的には一緒に結合される。
【0019】
上記したように、プレスファブリックの構造的特徴は、紙シートの品質に貢献する。平坦な構造的特徴は紙シートに接触する均一な圧縮面を提供し、プレス振動を低減させる。従って、プレスファブリック状に滑らかな接触面を形成する努力が成されてきた。しかし、表面の滑らかさは、ファブリックを形成する織りパターンにより制限されることがある。織り合わされた編み糸の交錯点は、ファブリックの表面上にナックルを形成する。これらのナックルはファブリックの残りの領域よりもz方向において厚くなることがある。従って、ファブリックの表面は、圧縮動作の間にシートにマークを付けることのある厚みの変化や厚さのバラツキを有する局所領域によって特徴付けられる非平面の構造的特徴を有することがある。厚さのバラツキは、不均一な打ち延ばし綿の摩耗、圧縮及びマーキングをもたらす打ち延ばし綿に対する不利な影響をも与え得る。
【0020】
積層プレスファブリックは、特に多軸ファブリックは、この種の厚さのバラツキを有することがある。特に、同じ織りパターンを伴う2つの層を有する多軸ファブリックの特殊なケースでは、局所的な厚みのバラツキが強められることがある。従って、圧力分布を改善し動作期間中のシートマーキングを減少させるため、厚さのバラツキが減じられたプレスファブリックが必要とされている。
【0021】
抄紙ファブリックの他の形は、ヨークに対する米国特許番号5,916,421;5,939,176;6,117,274及び6,776,878、並びに、コーネットに対する米国特許番号6,378,566に対する;6,508,278;及び6,719,014(その技術は参照により本明細書に引用されるものとする)に開示されている。
【0022】
本発明の目的のうちの1つは、現在の縫い目のある多軸ファブリックの限定の幾つかに取り組むことでもある。特に、織られた布の「狭い」ストリップの螺旋巻きは、従来技術において教示されているように嵌め合わされたループを介して縫い目を形成するときに、各ストリップ幅のインタフェースに不連続を導入することがある。これらの不連続は:a)縫い目に沿って生ずる、各接合でのループの欠け又は変形、及びb)螺旋巻きの角度(狭い布の縦糸軸と最終構造における縦方向との間の角度)に依存する頻度で定期的にループサイトトンネル内に突出する移動横糸端又はピックを含む。加えて、従来技術において教示されている螺旋巻きテクニックは、(抄紙機状での最終寸法を参照して)W×2Lの寸法の構造から開始する。編まれる場合、サイズW×2Lのこの構造は、編み糸密度及び織りパターンに関して同じ開始原料から成る。しかしながら、編み糸密度、間隔、及び織りパターンが同一の層は、最終構造中に、干渉、或いはモアレ現象又は干渉模様を作るということが学習されている。
【0023】
多軸であるか否かに関わらず大部分の積層多層ファブリックの場合は、層の間の編み糸配列がしばしば完全ではないため、幾らかの特性干渉、又はモアレ現象が起きることがある点に留意するべきである。積層プレスファブリック(2以上のベース構造又は層からなるもの)において、この種のファブリックは、縦及び横糸双方の間隔とサイズの関数であるモアレ現象を呈する。この効果は、編み糸が単繊維編み糸であると、特に直径が増加し、糸番手が下がるほど増強される。一つの層の直交編み糸系は、他の層のそれらに対して平行や垂直でないため、この効果は、多軸ファブリックにおいても存在する。
【0024】
多軸多層ファブリック構造は、従来の無端織り積層構造よりベースファブリックの圧縮に耐える能力が優れているため、多くの抄紙パフォーマンスの利点を提供してきた。その理由は、例えば2層多軸積層の場合は、一の層の直交編み糸系が他の積層層におけるそれらに平行でも垂直でもないことである。しかしながら、このために、各層(すなわち、層110及び120)の縦及び横糸系それぞれの間の相対角は、実用上1から7°のオフセットに分布する。この角度の効果は、それがモアレ現象を多大に強めて、境界の外形的特徴の平坦度を悪化させ得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、機械上で縫い付け可能な全幅平織りのベースファブリック、及びその作成プロセスを記述し、それは、記述した先行技術におけるファブリックと関連する限定を方向付ける。本発明は、特に、モアレ効果と関連する問題を解決し、かつ、無端織りの決定を克服するより高速な製造方法を更に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一つの目的は、現在の縫い合わせファブリックの限定の幾つかを方向付けて、より強く、より信頼性のあるファブリックを生成するといった更なる効果、及びその製造方法を提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、機械上で縫い合わせ可能な多層ファブリックにおいて起きるのが一般に見られるモアレ現象を減らす、或いは除去することである。
【0028】
本発明の更にもう一つの目的は、縫い目におけるループの欠如又は歪み、及び縫い合わせられた多軸ファブリックにおいて通常見られる移動した横方向編み糸を含む不連続性を避けることである。
【0029】
本発明の更にもう一つの目的は、現在の縫い合わされた修正無端織りファブリックにおいて用いられている複数イベントループ形成に代えて、単一イベントループ形成(全てのループが同時に形成される)を用いることにより、縫い目ループの方向性、平坦性、及び平行性を改善することである。
【0030】
本発明の更にもう一つの目的は、無端織りの代替案を除去又は提供し、それにより、平織りの使用を通じたより高い生産速度を提供することである。
【0031】
本発明は、特に、平織り全幅ベースファブリック層で作られた機械上で縫い付け可能な産業ファブリック、及びその製造方法である。平織りベースファブリックは、複数の長手方向編み糸及び複数の横方向編み糸を備えている。ベースファブリックは、製造される最終的なファブリックの2倍の長さに対して2以上の織り柄及び編み糸密度で織られる。ベースファブリックの、ほぼ1/4及び3/4の位置に、「スキッパー領域」又は横方向編み糸のない縦方向長さのような境界が定められた領域が織られる。境界の定められた領域は、その後にファブリックから除去され得る横方向編み糸に織り込むことによっても形成され得る。境界が定められた領域の境界は、特別な横方向充填編み糸又はテクスチャード編み糸を織ることにより、或いは時としてサーカムフレックス編み糸と呼ばれるものにより定めることができる。サーカムフレックス編み糸の使用は任意であるが、用いられる場合は、それらはファブリックの残りと同じ手法で嵌入又は織り込まれる。スキッパー領域の長さは、後の嵌め合いステップで使用される縫い目ループの実効長のほぼ2倍である。図1を参照してより完全に記載されている通り、ベースファブリックのほぼ1/4の長さにある第1スキッパーまで、及びベースファブリックのほぼ3/4の長さにある第2スキッパーの後ろでは、モアレ現象に対処するために、ファブリックは、それらの長さの間のせく所のそれとは異なる横方向編み糸密度及び/又は織り柄を有することが好ましい。ベースファブリック層は、各端にスキッパー領域を伴うファブリックを生成するために平坦化されている。換言すると、ファブリックは、共通の縦方向編み糸が双方の幅方向端上に縫い目ループを形成するべくスキッパー領域が互いに180°反対になるように、それ自体の上に縦方向(「MD」)に畳まれる。ファブリックは、次いで、一時的に又は永続的に、他の隣接境界端において一緒に取り付けられることができ、現在はファブリックの一層に位置するこれらの結合での自由端は、非接着のままとすることができ、或いは、例えば、熱溶着、超音波接着又は融合のような様々な手法により互いに接着することもできる。
【0032】
最終的なファブリックの2つの層は、例えばプレスファブリックとして用いるために、それらを通してステープル繊維打ち延ばし綿素材を縫い込むことにより互いに積層することができる。ステープル繊維打ち延ばし綿素材の少なくとも一層は、第1及び第2のファブリック層(plies)を互いに積層するために、ファブリック層の一つに縫い込まれて他方を通過する。接着剤の使用や熱融合法のような層を一緒に積層するための他の手段は、当業者にとって容易に明らかである。
【0033】
ファブリックは、積層されたファブリックの2つの幅方向端における縫い目ループの嵌め合いによって形成された通路を通してピントルを送ることにより、抄紙又は他の産業プロセス装置上での取り付けの間に無端形式に結合される。
【0034】
結果は、縦方向、幅方向、内表面及び外表面を有する無端ループの形の積層された2層のベースファブリック層である。
【0035】
本発明、その動作による効果、及びその使用によって得られる特別な対象をより良く理解するために、本発明の好ましい、非限定的な実施形態が描かれている添付の記述的事項を参照されたい。
【0036】
この開示における「備えている(comprising)」及び「備える(comprises」の用語は、「含んでいる(including)」及び「含む(includes)」を意味することができ、又は米国特許法において「備えている(comprising)」又は「備える(comprises」の用語に通常与えられている意味を有することができる。「から基本的に成っている(consisting essentially of)」又は「から基本的に成る(consists essentially of)」の用語は請求項で用いられる場合は、米国特許法におけるそれらに帰する意味を有する。本発明の他の態様は、下記の開示中(及び本発明の範囲内)に説明されており、或いはそこから明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の更なる理解を提供するために含まれている添付の図面は、本願明細書に組み込まれており、また、その一部を構成している。ここに提示されている図面は、本発明の異なる実施形態を図示しており、記述と一緒になって本発明の原理の説明に役立っている。
【図1】図1(A)は本発明の一実施形態であるファブリックの平坦図(flat view)平面視を示す。図1(B)は本発明の他の実施形態であるファブリックの平面図(plan view)を示す。図1(C)は本発明の更なる他の実施形態であるファブリックの平面図(plan view)を示す。
【図2】一緒に嵌め合わされた縫い目ループを有するファブリックの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本願明細書において開示されるファブリックは、上述した通り、これに限定されるものではないが、抄紙装置のセクション、例えば、成型、乾燥及び/又はプレスセクションにおいて使用されるファブリック又は抄紙装置布を含む産業用ファブリック関する。しかしながら、本願明細書において記載されている好ましい実施形態は、抄紙装置のプレスセクションにおいて使用されるプレスファブリックに言及する。
【0039】
本発明の一態様によれば、最終的なファブリックの長さの2倍の全幅ファブリック構造が、選択された織り柄、及び/又は、横糸の密度、サイズ又は編み糸タイプの組み合わせを用いて編まれる。本発明の一態様に係る同上の製造方法は、図1(A)乃至図1(C)に示されており、以下のパラグラフにおいて、より詳細にその説明を提供する。
【0040】
少なくともW(要求される最終的なファブリックの全幅)以上の幅を有する織物織機上で、ベースファブリックのほぼ1/4の長さ(A1)だけ、開始位置0から、第1の縦及び横糸密度及び/又は選択の第1組織柄、編み糸サイズ及び/又はタイプで、ベースファブリックが織られる。プレーン、綾織り、繻子織り、及びそれらの組み合わせ、又は抄紙技術の当業者に公知なもののような織り柄は何れもベースファブリックの織りに使用することができる。例えばポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びそれらの組み合わせ、或いは当業者に公知なもののようなポリマ材料は、何れもここでは縦糸及び/又は横糸に用いることができる。
【0041】
ベースファブリックのほぼ1/4であるこの長さ(0.25L)で、「スキッパー領域」のように横糸を用いないで境界が定められた領域が、所定の縦方向長さだけ織られる(短い距離、織機内で進んだファブリック)。境界が定められた、或いはスキッパー領域は、後にファブリックから除去することのできる横糸に織り込むことによっても形成することができる。これらの境界が定められた領域の境界は、特別な横方向充填編み糸又はテクスチャード編み糸、或いはサーカムフレックス(例えば、米国特許番号5,476,123及び5,531,251参照)又はフュージブル(fusible)編み糸と呼ばれることのあるものを織ることによっても定めることができる。その全教示が本願明細書に引用したものとされる米国特許番号6,378,566において教示されているものに類似した織りを含め、追加の横糸に加えるためには、如何なる織り柄も用いることができる。スキッパー領域の長さは、嵌め合いステップ(詳細な説明が記述の後の部分で与える)で用いられる縦糸により形成される縫い目ループの実効長のほぼ2倍である。
【0042】
スキッパー領域が作られた後、図1に示すベースファブリックのほぼ3/4、0.75L(B)として定義された点まで、0.5L、或いはループ縫い合わせ前のベースファブリックの長さの半分とほぼ等しい長さだけ、織りが継続される。セクションBの終端には、横糸を用いずに、もう一つのスキッパー領域(20)が上記の通り織られる。このセクションBは、セクションA1及びA2で用いられるのと同じ織り柄及び/又は横糸サイズ又は編み糸タイプとすることができ、或いは、それらとは異なり、上述した通り、一緒に積層された別個のベースファブリック構造を用いる如何なるファブリック形成プロセスにおいても生じ得る「類似」構造を積層することにより生ずるモアレ現象又は干渉柄を避けることができるように選択されることができる。また、「B」セクションが最終形態において紙側ベース層を形成することになることから、セクションBのための織り柄、及び/又は横糸密度、サイズ又は編み糸タイプの選択は、例えば圧力分布のような目的に適した方法において最適化され得る。但し、縦糸密度、サイズ又は編み糸タイプは、しかしながら、全てのセクションにおいて同じであってもよい。 混信パターンを回避するために、上記の通りに、それは一緒に積層単独ベッドファブリック層を使用しているいかなるファブリック成形過程でも起こることができる。
【0043】
第2のスキッパー領域(20)を作成した後に、0.25L、或いはベースファブリックの長さの1/4とほぼ等しい長さだけ、セクションA1と同じ織り柄、編み糸密度サイズ又は編み糸タイプで、全最終長さL(2つのスキッパー領域に用いられる両を含む)まで織りが継続される。
【0044】
寸法W×Lのこの平織り片は、次に、領域10及び20にてそれ自身の上に折り畳まれ、位置0及びLで接続され(30)、図2に示すような最終ファブリックの全長である0.5L長の無端ループを形成するために、好ましくはファブリックの内側で接着され、或いは結合されてもよい。本発明の一態様に係る好適な接合方法は、2つの自由端(0及びL)での編み糸の超音波接着である。しかしながら、ファブリック50の隣接する編み糸を結合するために、例えば編み糸の接着、融着、熱溶接及び融合のような他の接着方法を用いることとしてもよく、或いは、その2つの終端は単に開放され未接着のままとしてもよい。
【0045】
最終的なファブリックの2枚の層は、次に、それらを通して、例えばステープル繊維打ち延ばし綿材料を針縫いすることにより一緒に積層されることができる。この点に関して、第1及び第2のファブリック層を一緒に積層するために、ステープル繊維打ち延ばし綿材料の1以上の層をファブリック層の一つに針縫いし、かつ、他方に通すこととしても良い。ファブリック層を一緒に結合する他の手段は当業者にとって容易に明らかである。
【0046】
織られていない縦方向編み糸のスキッパー領域10及び20は、ここで、各ファブリック端上に連続ループを形成している。これらは、縫い目ループ40であり、図1(C)及び図2に示すように、抄紙機上に縫い合わされた連続ファブリックを形成するために、それらは一緒に嵌め合わされ、かつ、1以上の縫い合わせピン又はピントルがそれらの中を通過させられる。
【0047】
抄紙機上での据え付けの間に、平らにされたベースファブリック層50の2つの幅方向端10,20に形成された縫い目ループ40が互い違いに嵌め合わされ、図2に示すように、嵌め合わされた縫い目ループによって形成された通路を通してピントルを進行させることにより、ファブリックが無端形状に結合される。尚、図2におけるループの長さは、描写のために誇張されている。
【0048】
以上により、縦方向、幅方向、内表面及び外表面を有する積層された機上縫い合わせが可能な産業用ファブリックが得られる。
【0049】
このように本発明によって、その目的及び効果が実現され、そして、好ましい実施形態が本願明細書において詳細に開示され、かつ説明されているが、その範囲及び対象はむしろ、添付の請求の範囲によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械上での縫い合わせが可能な積層された産業用ファブリックの成形方法であって、
ベース構造の第1セクションを織る工程を備え、
前記第1セクションは、第1の織り柄、及び/又は横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプで織り合わされた縦方向(MD)及び横方向(CD)編み糸を備えており、
横方向編み糸を用いずに、縦方向に沿って所定長だけ、スキッパー又は特別な充填編み糸を挿入することにより、第1境界領域を生成する工程と、
第2の織り柄、及び/又は横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプでベース構造の第2セクションを織る工程と、
横方向編み糸を用いずに、縦方向に沿って所定長だけ、スキッパー又は特別な充填編み糸を挿入することにより、第2境界領域を生成する工程と、
前記第1の織り柄、及び/又は横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプでベース構造の第3セクションを織る工程と、
前記第1及び第3セクションの自由編み糸端が互いに隣接するように、ベース構造の第1及び第3セクションを折り畳む工程と、
その中の縦方向編み糸によって縫い目ループが形成されるように、その横方向端上に前記境界領域が位置するように前記ファブリックをその上に折り畳む工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記第1及び第3セクションは、同じ織り柄、及び/又は、横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプを有し、これは、前記第2セクションのものとは異なる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第3セクションは、同じ織り柄、及び/又は、横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプを有し、これは、前記第2セクションのものと同じである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第3セクションの自由編み糸端を結合して、それにより最終的なファブリックの全幅を有する全幅積層ファブリックを形成する工程を更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記縫い目ループを互い違いに嵌め合わせ、当該縫い目ループの嵌め合わせによって形成された通路を通して1以上のピントルを挿入し、それにより産業用ファブリックを機上縫い合わせ可能なファブリックに形成する工程を更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2境界領域の縦方向長さが前記縫い目ループの実効長の2倍である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記自由編み糸端の結合が超音波溶着、接着、融着、熱溶着又は融合によって実施される請求項4に記載の方法。
【請求項8】
1以上のステープル繊維打ち延ばし綿材料をベース構造に針縫いすることで前記ベース構造を積層する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3の織り柄は、平織り、綾織り、サテン及びそれらの組み合わせのうちの1つである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記縦方向及び/又は横方向編み糸が、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びそれらの組み合わせからなるグループから選択されるポリマ材料から成る請求項1に記載の方法。
【請求項11】
機上での縫い合わせが可能な積層された産業用ファブリックであって、前記ファブリックは、
第1セクション、第2セクション及び第3セクションを備える平らに織られたベース構造を備え、
前記ベース構造は、織り合わされた1セット以上の縦方向及び横方向編み糸を備え、
前記第1セクションは、第1の織り柄、及び/又は横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプで織られており、
前記第1セクションの後に縦方向に沿って所定長だけ、横方向編み糸を用いずに、スキッパー又は特別な充填編み糸を挿入することにより形成された第1境界領域を備え、
前記第2セクションは、第2の織り柄、及び/又は横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプで織られており、
前記第2セクションの後に縦方向に沿って所定長だけ、横方向編み糸を用いずに、スキッパー又は特別な充填編み糸を挿入することにより形成された第1境界領域を備え、
前記第3セクションは、前記第1の織り柄、及び/又は横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプで織られており、
前記ベース構造の第1及び第3セクションは、当該第1及び第3セクションの自由端が互いに隣接するように内側に折り畳まれているファブリック。
【請求項12】
前記第1及び第3セクションは、同じ織り柄、及び/又は、横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプを有し、これは、前記第2セクションのものとは異なる請求項11に記載のファブリック。
【請求項13】
前記第1及び第3セクションは、同じ織り柄、及び/又は、横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプを有し、これは、前記第2セクションのものと同じである請求項1に記載のファブリック。
【請求項14】
最終的なファブリックの全幅を有する全幅積層ファブリックを形成するために、前記第1及び第3セクションの自由編み糸端が結合される請求項11に記載のファブリック。
【請求項15】
ベース構造の2つの幅方向端に形成された縫い目ループを互い違いに嵌め合わせ、かつ、
当該縫い目ループの嵌め合わせによって形成された通路を通して1以上のピントルが挿入された請求項11に記載のファブリック。
【請求項16】
前記第1及び第2境界領域の縦方向長さが前記縫い目ループの長さの2倍である請求項15に記載のファブリック。
【請求項17】
前記第1及び第3セクションの自由編み糸端は、超音波溶着、接着、融着、熱溶着又は融合を用いて結合される請求項14に記載のファブリック。
【請求項18】
ベース構造に針縫いされた1以上のステープル繊維打ち延ばし綿材料を更に備える請求項11に記載のファブリック。
【請求項19】
前記第1、第2及び第3の織り柄は、平織り、綾織り、サテン及びそれらの組み合わせのうちの1つである請求項11に記載のファブリック。
【請求項20】
前記縦方向及び/又は横方向編み糸が、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びそれらの組み合わせからなるグループから選択されるポリマ材料から成る請求項11に記載のファブリック。
【請求項21】
機上での縫い合わせが可能な積層された産業用ファブリックの成形方法であって、
ファブリックの3つのセクションを織る工程を備え、少なくともそれらのうちの1つは他の2つのセクションのものとは異なる織り柄、及び/又は横方向編み糸密度、サイズ及び/又は編み糸タイプを有し、かつ、
他の2つのセクションをファブリックの第3セクションの上に折り畳む工程を備える方法。
【請求項22】
前記境界領域は、後にベース構造から除去される横方向編み糸内に織ることにより形成される請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記境界領域は、後にベース構造から除去される横方向編み糸内に織ることにより形成される請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−540794(P2010−540794A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528084(P2010−528084)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/078297
【国際公開番号】WO2009/046017
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】