説明

平面アンテナ

【課題】高周波スイッチにより電波の放射方向を切り替え、その際高周波スイッチ自身が有する電気長の影響を受けること無く意図した特定方向に精度良く電波を放射する平面アンテナを実現する。
【解決手段】基板と、前記基板の一方の面に形成された給電アンテナ素子と、前記一方の面に形成された、前記給電アンテナ素子から所定の素子間距離だけ離れて配設された少なくとも一つの無給電アンテナ素子と、前記一方の面と対向する面に形成された接地電極と、前記無給電アンテナ素子に電気的に接続された、少なくとも一つの入力端子と、高周波が出力される少なくとも一つの出力端子とを備え、前記入力端子と前記出力端子の間を開放、又は短絡に切り替え可能な高周波スイッチと、を備えた平面アンテナであって、前記高周波スイッチは、前記給電アンテナ素子が配設された面と同一面側に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波又はそれより高い周波数の高周波信号である電波を放射する平面アンテナに係り、特に平面アンテナから放射される電波の指向方向を制御するために好適な技術に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の平面アンテナで電波の放射方向を切り替えるための技術には、高周波スイッチを用いる方法があった。特に、センサ用途等特定方向のみに電波を傾けて放射する方法として、基板の一方の面に給電アンテナと無給電アンテナを形成し、前記同一基板面上に前記無給電アンテナと接続された伝送線路を設け、前記伝送線路と高周波スイッチを接続し、高周波スイッチの入力端子と出力端子の間が開放又は短絡であるとき、電波を給電アンテナ本来の放射方向から傾けた方向の放射方向と、前記本来の放射方向とに切り替えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
このような場合、高周波スイッチによって電波の放射方向を切り替えると、伝送線路もアンテナとして働くため干渉電波の放射方向が変化し、意図した方向に精度性良く電波を放射させることが困難であるという問題があった。実際に作製した伝送線路の寸法
も製造公差によるばらつきが存在し、放射方向が影響を受けることもあった。
また、高周波スイッチの入力端子と出力端子が短絡であるときに電波を給電アンテナ素子本来の放射方向から傾けることを試みると、高周波スイッチが電波の放射方向に影響を及ぼし、所定の方向に曲がらない場合があった。この原因として、高周波スイッチが有する電気長の影響が挙げられる。高周波スイッチは無給電アンテナ素子に接続されているため、入力端子と出力端子が短絡であるとき、高周波スイッチに接続された端子や内部の電気長がアンテナ素子の一部としてはたらき、無給電アンテナ素子の見かけの形状を変化させる。そのため、電波を傾けようとしたとき高周波スイッチによって見かけ上変化した箇所が影響を及ぼして電波放射方向が一部歪曲し、意図した方向に精度良く電波を放射させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4208025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、高周波スイッチにより電波の放射方向を切り替え、その際高周波スイッチ自身が有する電気長の影響を受けること無く意図した特定方向に精度良く電波を放射する平面アンテナを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、基板と、前記基板の一方の面に形成された給電アンテナ素子と、前記一方の面に形成された、前記給電アンテナ素子から所定の素子間距離だけ離れて配設された少なくとも一つの無給電アンテナ素子と、前記一方の面と対向する面に形成された接地電極と、前記無給電アンテナ素子に電気的に接続された、少なくとも一つの入力端子と、高周波が出力される少なくとも一つの出力端子とを備え、前記入力端子と前記出力端子の間を開放、又は短絡に切り替え可能な高周波スイッチと、を備えた平面アンテナであって、前記高周波スイッチは、前記給電アンテナ素子が配設された面と同一面側に配設され、前記一つの入力端子は前記無給電アンテナ素子に直接接続され、前記入力端子と前記出力端子の間が開放であるとき、前記無給電アンテナ素子の整合点における給電電波周波数の位相がプラスとなることを特徴とする平面アンテナを可能とした。
請求項1の構成とした場合、前記入力端子と前記出力端子が開放であるとき、前記無給電アンテナ素子は導波器としてはたらき、電波のメイン放射方向は前記給電アンテナ素子単体の時と比較して前記無給電アンテナ素子の存在方向に傾く。
このとき、前記高周波スイッチは前記無給電アンテナ素子に直接接続されているため前記伝送線路の影響が無い。さらに、前記高周波スイッチは前記入力端子と前記出力端子が開放状態であれば、見かけの電気長は端子の長さだけになり、前記端子は前記無給電アンテナ素子上に配設・接続されているため、見かけの形状にはほぼ影響しない。そのため、電波の放射パターンはほぼ変わらず、高周波スイッチの影響を受けること無く意図した特性方向のみに精度良く電波を放射することができる。
【0006】
また、請求項2記載の発明によれば、前記一つの入力端子は前記無給電アンテナ素子に直接接続され、前記入力端子と前記出力端子の間が短絡であるとき、前記短絡状態の高周波スイッチを搭載した前記無給電アンテナ素子の整合点における給電電波周波数の位相がマイナスとなることを特徴とする請求項1記載の平面アンテナを可能とした。
この構成とした場合、前記高周波スイッチの見かけの電気長は前記無給電アンテナ素子の見かけの形状を変化させるが、前記無給電アンテナ素子の整合点における給電電波周波数の位相がマイナスかつアンテナゲインもマイナスであるため、前記給電アンテナ素子から放射される電波が前記無給電アンテナ素子で励振・放射することはほぼ無く、前記無給電アンテナ素子からの電波の放射がほぼ存在しないため、前記給電アンテナ素子と前記無給電アンテナ素子から構成される平面アンテナ全体としての電波の放射方向は高周波スイッチの影響をほぼ受けない。したがって、電波の放射方向は、前記給電アンテナ素子単体の時と略同一になる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給電アンテナ素子と無給電アンテナ素子から形成される平面アンテナにおいて、アンテナに接続した高周波スイッチによってアンテナの電波放射方向を切り替え、高周波スイッチの影響を受けず、意図した特定方向のみに精度良く電波を放射できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に従う平面アンテナの構成例を示す斜視図である。
【図2】図1の一部を拡大した上面図である。
【図3】図1の断面図である。
【図4】給電アンテナ素子のみで構成される平面アンテナの一例を示す上面図で ある。
【図5】図4に示す平面アンテナにおいて、電波の放射方向を示す図である。
【図6】給電アンテナ素子と無給電アンテナ素子から構成され、無給電アンテナ素 子の整合点における給電電波周波数の位相がプラスである平面アンテナ の構成例を示す上面図である。
【図7】図6に示す平面アンテナにおいて、電波の放射方向を示す図である。
【図8】給電アンテナ素子と無給電アンテナ素子から構成され、無給電アンテナ素 子の整合点における給電電波周波数の位相がマイナスである平面アンテ ナの構成例を示す上面図である。
【図9】図8に示す平面アンテナにおいて、電波の放射方向を示す図である。
【図10】給電アンテナ素子と、高周波スイッチが接続された無給電アンテナ素子か ら構成され、高周波スイッチを短絡したときに無給電アンテナ素子の整合 点における給電電波周波数の位相がプラスである状態の平面アンテナの 一例を近似モデルで表した図である。
【図11】図10に示す平面アンテナにおいて、電波の放射方向を示す図である。
【図12】給電アンテナ素子と、高周波スイッチが接続された無給電アンテナ素子 から構成され、高周波スイッチを開放したときに無給電アンテナ素子の 整合点における給電電波周波数の位相がプラスである状態の平面アンテ ナの一例を近似モデルで表した図 である。
【図13】図12に示す平面アンテナにおいて、電波の放射方向を示す図である。
【図14】給電アンテナ素子と、高周波スイッチが接続された無給電アンテナ素子 ら構成され、高周波スイッチを短絡したときに無給電アンテナ素子の整合 点における給電電波周波数の位相がマイナスである状態の平面アンテナ の一例を近似モデルで表した図 である。
【図15】図12に示す平面アンテナにおいて、電波の放射方向を示す図である。
【図16】本発明の一実施形態に従う平面アンテナの構成例を示す上面図である
【図17】本発明の一実施形態に従う平面アンテナの構成例を示す上面図である。
【図18】本発明の一実施形態に従う平面アンテナの構成例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明における平面アンテナを実施するための形態に
ついて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に従う平面アンテナの構成例を示す斜視図である。さ
らに、図1の一部を拡大した上面図を図2に、断面図を図3に示す。
【0011】
平面アンテナ12では、基板1の一方の面に給電アンテナ素子3が配設され、給電
アンテナ素子3の励振方向に対して横方向に無給電アンテナ素子5が形成されてお
り、基板1の前記一方の面と対向する面に接地電極2が接続されている。
本実施例においては、図中に二つ存在する出力端子8は共に接地端であり、高周波
スイッチ11は基板の接合部6と導通孔13を介して接地電極2に繋がっている。
【0012】
給電アンテナ素子3は、マイクロストリップアンテナ構造をなす素子であり、給電
点4よりマイクロ波信号源から直接的にマイクロ波電力の給電を受ける。給電アンテ
ナ素子3は導体のパターンであり、励振方向の一辺の長さは約λg/2(但しλg
は波長)である。
給電点4は給電アンテナ素子3のインピーダンスが略50Ωとなる点に設けられ
ることが望ましく、給電アンテナ素子3は給電点4に特定周波数(例えば、10.5
25GHz、24.15GHz、または76GHzなど)の電波を受け、給電される。
【0013】
無給電アンテナ素子5は、給電アンテナ素子3から所定の素子間距離だけ離れて配
設されている。無給電アンテナ素子5の寸法は、給電アンテナ素子3のそれとほぼ同
じとしても良いし、異なっていても良い。励振方向の長さは、使用する電波の波長や、
必要とする特性に応じて調整する。
【0014】
高周波スイッチ11は、電波を入力する入力端子7と、入力された電波を出力する
出力端子8、高周波スイッチ11を駆動させるための電源を供給する電源供給端子9、
そしてそれらの端子が半導体に接続されている筐体部10からなる。入力端子7は無
給電アンテナ素子5に直接接続されており、出力端子8と、電源供給端子9は基板1
と接合部6で接続されている。
高周波スイッチ11は、例えば電源供給端子9に与える電位差によって、入力端子
7と出力端子8の間の短絡、開放を切り替えることができる。
高周波スイッチ11として用いる部品としては、ガリウム砒素電界効果トランジス
タ(GaAsFET)でも良いし、所望の高周波に対応したトランジスタ、ダイオー
ド、オペアンプでも良く、スイッチとして機能する高周波スイッチであれば使用する
ことができる。
【0015】
高周波スイッチ11の入力端子7と出力端子8との間を短絡させるか開放させる
かで、高周波スイッチ11を接続した無給電アンテナ素子5の整合点における給電電
波周波数の位相は変化する。
無給電アンテナ素子5の整合点における給電電波周波数の位相を給電アンテナ素
子3に対して遅らせたり進めたりすることにより、電波の放射方向は変化する。
電波の放射方向の変化は、給電アンテナ素子3から放射された電波が無給電アンテ
ナ素子5を励振させ、無給電アンテナ素子5からも電波の放射が起こり、給電アンテ
ナ素子3と無給電アンテナ素子5からそれぞれ放射された電波が空間結合を起こすため
に起きる。
【0016】
本発明では、入力端子7と出力端子8の開放時に、無給電アンテナ素子5の整合点 における給電電波周波数の位相がプラスとなるように、無給電アンテナ素子5の寸法 を調整する。無給電アンテナ素子5の寸法は、得たい電波の放射特性によって適宜調 整する。無給電アンテナ素子5に 高周波スイッチ11を接続すると、インピーダン スが変化するため位相も変化する。
高周波スイッチ11の入力端子7と出力端子8の間が開放か短絡かによっても位 相は異なる。短絡時は開放時と比較して見かけの伝送線路が長くなるため、位相は開 放時よりも負の側に動く。
そのため、位相変化に応じた寸法の調整は無給電アンテナ素子5に入力端子7と出 力端子8が開放である状態の高周波スイッチ11を接続して行なわなければならな い。
【0017】
図4に、各辺Ammの給電アンテナ素子のみで構成される平面アンテナの構成例の
上面図を示し、図5にそのときの電波放射パターンを示す。
このとき、電波は特定の方向に偏ることは無く円形に放射されている。
【0018】
図6に、給電アンテナ素子と無給電アンテナ素子から構成され、無給電アンテナ素
子の整合点における給電電波周波数の位相がプラスである平面アンテナ構成例の上
面図を示し、図7にそのときの電波放射パターンを示す。
このとき、給電アンテナ素子から所定の距離に無給電アンテナ素子を構成すること
によって、図5に比較して電波の放射方向が傾く。
【0019】
図8に、給電アンテナ素子と無給電アンテナ素子から構成され、無給電アンテナ素
子の整合点における給電電波周波数の位相がマイナスである平面アンテナの構成例 の上面図を示し、図9にそのときの 電波放射パターンを示す。
図9より、無給電アンテナ素子が設けられていても、無給電アンテナ素子の整合点
における整合点における給電電波周波数の位相がマイナスであれば給電アンテナ素
子のみのときとほぼ同じ電波放射 パターンになることが分かる。
無給電アンテナ素子の整合点における給電電波周波数の位相は無給電アンテナ素
子の寸法によって変化するため、電波を放射したい方向に応じ無給電アンテナ素子寸
法の調整を行なえば良い。
【0020】
図10に、給電アンテナ素子と、高周波スイッチが接続された無給電アンテナ素子
から構成され、高周波スイッチを短絡したときに無給電アンテナ素子の整合点におけ
る給電電波周波数の位相がプラスである状態の平面アンテナの一例を近似モデルで
表した図を示し、図11にそのときの電波放射パターンを示す。
無給電アンテナ素子に高周波スイッチを接続したとき、無給電アンテナ素子の寸法 が同一であっても、高周波スイッチを開放するか短絡するかによって整合点における
給電電波周波数の位相は異なるものとなる。そのため、無給電アンテナ素子の整合点
における給電電波周波数の位相をプラスにしたいかマイナスにしたいか、つまり電波
の放射方向を傾けたいか傾けたくないかによって、定めるべき無給電アンテナ素子寸 法は異なる値となる。図10における無給電アンテナ素子寸法Dmmは、高周波ス イッチを短絡したとき、整合点における給電電波周波数の位相がプラスとなる値であ る。
ここで、高周波スイッチを短絡させたときは高周波スイッチ内の電気長が影響し、 見かけのアンテナ面積が変化する。その変化分が、図10中に示しているように、各 辺fmmのアンテナパターンで近似できる。
高周波スイッチを接続していない本来の矩形アンテナ形状であれば電波の放射は 図7のような傾き方をするが、図11では図7に比べ電波放射に歪みがあることが分 かる。この歪みは、高周波スイッチ短絡による見かけのアンテナ面積の変化によって 生じるものである。図6に示す無給電アンテナ素子は、長さDmmでのみ励振され るが、図10の無給電アンテナ素子は、場所によって長さDmmでの励振と(D+ f)mmでの励振両方が存在する。高周波スイッチ短絡時の無給電アンテナ素子は、 図10中での右側と左側とで励振距離が異なるため励振のバランスに偏りが生じる ことにより、電波放射方向にも歪みが現れる。
したがって、無給電アンテナ素子に高周波スイッチを接続したとき、高周波スイッ チを短絡させた状態で電波の放射方向を傾けようとすると、高周波スイッチの影響に より意図した方向のみに精度良く電波を放射することが出来ない。
【0021】
図12に、給電アンテナ素子と、高周波スイッチが接続された無給電アンテナ素子
から構成され、高周波スイッチを開放したときに無給電アンテナ素子の整合点におけ
る給電電波周波数の位相がプラスである状態の平面アンテナの一例を近似モデルで
表した図を示し、図13にそのときの電波放射パターンを示す。
図12における無給電アンテナ素子寸法Dmmは、高周波スイッチを開放したと きに整合点における給電電波周波数の位相がプラスとなる値である。
ここで、高周波スイッチを開放させているとき、高周波スイッチが見かけのアンテ ナ面積に影響を及ぼす部分は、高周波スイッチと無給電アンテナ素子を接続する端子 のみである。この端子とは、図1における入力端子7のことである。図1からも分か るように、入力端子7は無給電アンテナ素子に直接接続され端子はほぼ無給電アンテ ナ素子上に存在するため、高周波スイッチを開放させているときは無給電アンテナ素 子の見かけのアンテナ面積は元のアンテナ形状である矩形とほぼ同一であると考え られる。
したがって、図12に示すように、無給電アンテナ素子に高周波スイッチを接続し ているときでも、高周波スイッチが開放状態であれば高周波スイッチが及ぼすアンテ ナの見かけの形状への影響は無視できる。
よって、無給電アンテナ素子に高周波スイッチが接続されていても、高周波スイッ チが開放状態であれば高周波スイッチは見かけのアンテナ面積の変化を生じさせる ことが無いため、その電波放射パターンは図13に示すように図7とほぼ等しいもの となる。
したがって、開放状態の高周波スイッチを無給電アンテナ素子に接続し、整合点に おける給電電波周波数の位相がプラスとなるとき、高周波スイッチの影響無く、意図 した方向に精度良く電波を放射することが可能となる。
【0022】
図14に、給電アンテナ素子と、高周波スイッチが接続された無給電アンテナ素子
から構成され、高周波スイッチを短絡したときに無給電アンテナ素子の整合点におけ
る給電電波周波数の位相がマイナスである状態の平面アンテナの一例を近似モデル
で表した図を示し、図15にそのときの電波放射パターンを示す。
図14における無給電アンテナ素子寸法Dmmは、高周波スイッチを短絡した ときに整合点における給電電波周波数の位相がマイナスとなる値である。図12と同 じ寸法Dmmであるのは、Dmmは、接続している高周波スイッチの開放と短絡 を切り替えることによって無給電アンテナ素子の整合点における給電電波周波数の 位相がプラスとマイナスに切り替わる値であるためである。
ここで、高周波スイッチが短絡状態であるとき、高周波スイッチは無給電アンテナ 素子の見かけのアンテナ面積を変化させる。その変化分が、図14中に示しているよ うに、各辺fmmのアンテナパターンで近似できる。
無給電アンテナ素子の整合点における給電電波周波数の位相がマイナスなので、電 波の放射方向は給電アンテナ素子のみで構成される平面アンテナとほぼ同一である。
したがって、短絡状態の高周波スイッチを接続していることによる無給電アンテナ
素子の見かけのアンテナ面積の変化は存在するが、そもそも整合点における給電電波 周波数の位相がマイナスであるため、無給電アンテナ素子は電波の放射方向に影響を 及ぼさず、前記給電アンテナ素子単体の時と略同一になる。
つまり、図15は、図9とほぼ同一になる。
【0023】
ここで、図2で示した平面アンテナについて、高周波スイッチ11の入力端子7を
無給電アンテナ素子5における励振方向と直交する辺の略中央部へ接続するとする。
この場合、図中の高周波スイッチの端子形状であると右下の一つの出力端子8が無
給電アンテナ素子5と接触し、入力端子7と出力端子8が常に短絡した状態となり、
高周波スイッチ11がスイッチとしての機能を果たさない。
この状況を防ぐ構造を、本発明の一実施形態に従う平面アンテナの構成例を示す上
面図として図16に示す。
図16で示した平面アンテナでは、無給電アンテナ素子を電気的に非導通である5
(a)と5(b)の二部に分離する構造にしている。ここで、5(b)は5(a)に
対して十分小さい。入力端子7は5(a)に、出力端子8(b)は5(b)に接続し
ている。
本構造とすることにより、入力端子7と出力端子8(b)の構造的な短絡を防ぐこ
とが可能となる。
無給電アンテナ素子を電気的に非導通である5(a)と5(b)の二部に分離する
方法には、無給電アンテナ素子の一部に溝を設ける方法や、無給電アンテナ素
子を最初から二部に分けて形成する方法等様々に考えられる。
ただしこの場合、無給電アンテナ素子を二部に分離することで、元の無給電アンテ
ナ素子の面積と比較して5(a)の面積が小さくなりすぎないよう、元の無給電アン
テナ素子の整合点における給電電波周波数の位相から大きくずれないよう留意しな ければならない。
【0024】
図17に、本発明の一実施形態に従う平面アンテナの構成例を示す上面図を示す。
ここで示す形状の高周波スイッチを用いる場合、入力端子7を無給電アンテナ素子5
における励振方向に直交する辺の略中央部に接続しても入力端子7と出力端子8が
構造的に短絡となることは無く、製造が容易となる。
上述の通り、用いる高周波スイッチの形状に応じて、無給電アンテナ素子との接続
位置や無給電アンテナ素子の形状を工夫すべきである。
【0025】
図18に、本発明の一実施形態に従う平面アンテナの構成例を示す上面図を示す。
ここで示すように複数の無給電アンテナ素子を用い、それぞれに接続された高周波ス イッチの開放と短絡を切り替えることによって、電波の放射方向を変化させることが できる。
図18のような構成にした場合、各方向に無給電アンテナ素子が存在するため、意 図した方向に精度良く電波を放射させるためには、各無給電アンテナ素子に接続した 高周波スイッチが放射方向に影響を及ぼしてはならない。例えば、図18中右方向に 電波を放射させたいとき、無給電アンテナ素子5(b)と5(d)の整合点における 給電電波周波数の位相がプラスとなるよう高周波スイッチを動作させる。このとき、 高周波スイッチが短絡状態で位相がプラスとなるとすると、無給電アンテナ素子5( b)と5(c)により意図した放射方向に、高周波スイッチ10(b)と10(d) の影響による放射方向の歪みが加わり、意図した方向への電波の放射ができない。図 18中、左右上下の4方向に電波を放射することを試みた場合、それぞれの放射方向 に高周波スイッチの影響が加わり、意図した4方向への放射を行なうことはできず、 この平面アンテナを用いた4方向に対するセンシングの精度は低いものとなる。
しかし、高周波スイッチが開放状態で各無給電アンテナ素子の整合点における給電 電波周波数の位相がプラスとなるとすると、高周波スイッチの影響なく給電アンテナ 素子5(b)と5(d)のみによって電波放射方向が定まるので、意図した方向のみ に精度良く電波を放射することができる。
図18に示す構造の平面アンテナは、無給電アンテナ素子に接続する高周波スイッ チを開放状態としたときに無給電アンテナ素子整合点における給電電波周波数の位 相をプラスとすることによって、図18中、左右上下の意図した4方向への電波の放 射方向切り替えが実現でき、4方向に対するセンシングも精度良く行なうことが可能 となる。
【0026】
本発明は、高周波スイッチによって電波の放射方向の切り替え可能で、その際高周 波スイッチの接続法や高周波スイッチの影響を受けること無く、意図した特定方向に 精度良く電波を放射する平面アンテナを実現するので、各方向の検波を高精度に行な うセンサとして使用できる。
【符号の説明】
【0027】
1…基板
2…接地電極
3…給電アンテナ素子
4…給電点
5…無給電アンテナ素子
6…高周波スイッチと基板の接合部
7…高周波スイッチの入力端子
8…高周波スイッチの出力端子
9…高周波スイッチの電源供給端子
10…高周波スイッチの筐体部
11…高周波スイッチ
12…本発明の平面アンテナ
13…導通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面に形成された給電アンテナ素子と、
前記一方の面に形成された、前記給電アンテナ素子から所定の素子間距離だけ離れて配設された少なくとも一つの無給電アンテナ素子と、
前記一方の面と対向する面に形成された接地電極と、
前記無給電アンテナ素子に電気的に接続された、少なくとも一つの入力端子と、高周波が出力される少なくとも一つの出力端子とを備え、前記入力端子と前記出力端子の間を開放、又は短絡に切り替え可能な高周波スイッチと、
を備えた平面アンテナであって、
前記高周波スイッチは、
前記給電アンテナ素子が配設された面と同一面側に配設され、
前記一つの入力端子は前記無給電アンテナ素子に直接接続され、前記入力端子と前記出力端子の間が開放であるとき、
前記無給電アンテナ素子の整合点における給電電波周波数の位相がプラスとなることを特徴とする平面アンテナ。
【請求項2】
前記一つの入力端子は前記無給電アンテナ素子に直接接続され、前記入力端子と前記出力端子の間が短絡であるとき、
前記短絡状態の高周波スイッチを搭載した前記無給電アンテナ素子の整合点における給電電波周波数の位相がマイナスとなることを特徴とする請求項1記載の平面アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−71639(P2011−71639A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219422(P2009−219422)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】