説明

幼児用靴

【課題】幼児等が水遊び等をしても、内部に水等が溜まり難いにも拘わらず、幼児等の足を保持するホールド性が高く、且つ、接地面が水等で濡れていても滑り難い幼児用靴を提供すること。
【解決手段】歩行に際し接地する靴底面21と、足を配置する中底面22と、を有する靴底部2と、足を保持するために靴底部から立ち上がるように形成されるアッパー部3と、アッパー部に形成される足を挿入するための履き口部4と、を備え、履き口部が、踵側に形成された、分割可能な分割部41a、41bを有すると共に、アッパー部には、複数のアッパー開口部5aが形成され、靴底部の中底面側の踵側には、幼児の足の踵側を中底面側に位置決めするための凸状の位置決め部23が形成され、靴底部の靴底面には、通気排水用の通気排水開口部21bと、滑り止め防止用の滑り止め部21dが形成され、通気排水開口部が滑り止め部に隣接又は近接して配置されている幼児用靴1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児等が歩行の際に用いる幼児用靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幼児等は水遊び等を好むため路面等が水で濡れているところや水溜り等で遊ぶことが多い。この際、幼児が通常履いている靴を使用して遊ぶと靴が水に濡れてしまうため、保護者等は、水に濡れることを前提としたサンダル等に履き替えさせることが多い。
このようなサンダルは、幼児の足の甲の部分を覆うアッパーを小さくし、水が履物内に溜まることがない構成となっている。このため、このようなサンダルは、幼児の足の踵側を保持する構成になっていないことから、脱げ易く、歩き難いため、幼児が使用を嫌うという問題があった。
そこで、従来は、サンダルであっても幼児の踵側をサンダルが保持できる構成が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【特許文献1】実開昭55−54002号公報(図1等)
【特許文献2】実開平4−118002号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1及び特許文献2の構成でも、幼児等が水遊びをすると、特許文献1ではサンダルの爪先側に水が溜まり幼児等に不快感を与えることとなる。
また、特許文献2では、爪先側には水は溜まらないが、その分、サンダルが幼児の足を保持するホールド性が低下し、足の屈曲に追従してサンダルが足を保持することができず、このため歩行し難いサンダルとなっていた。
さらに、このように歩行し難いサンダルを使用して幼児等が水遊びをすると、接地面が濡れて滑りやすい環境であることとも相まって、特に滑りやすいサンダルとなってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、幼児等が水遊び等をしても、内部に水等が溜まり難いにも拘わらず、幼児等の足を保持するホールド性が高く、且つ、接地面が水等で濡れていても滑り難い幼児用靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、本発明によれば、使用者が歩行に際し接地する靴底面と、使用者が足を配置する中底面と、を有する靴底部と、使用者の足を保持するために前記靴底部から立ち上がるように形成されるアッパー部と、前記アッパー部に形成される使用者の足を挿入するための履き口部と、を備える幼児用靴であって、前記履き口部が踵側に形成された、分割可能な分割部を有すると共に、前記アッパー部には、複数のアッパー開口部が形成され、前記靴底部の中底面側の踵側には、幼児の足の踵側を前記中底面側に位置決めするための凸状の位置決め部が形成され、前記靴底部の靴底面には、通気排水用の通気排水開口部と、滑り止め防止用の滑り止め部が形成され、前記通気排水開口部が前記滑り止め部に隣接又は近接して配置されていることを特徴とする幼児用靴により達成される。
【0006】
前記構成によれば、履き口部が踵側に形成された分割可能な分割部を有している。このため、使用者である幼児等が靴を履くときは、この分割部を分割させ、履き口部を開放することで、幼児等が足を入れやすく履きやすい幼児用靴となる。
また、幼児等が足をアッパー部内に挿入した後、この分割部を非分割状態とすれば、履き口部は閉状態となり、挿入された幼児等の足の踵側が履き口部によって保持されることになる。このため、幼児等の足は、アッパー部によって確実に保持されることなり、歩行し易い幼児用靴となる。
【0007】
また、前記構成では、アッパー部には、複数のアッパー開口部が形成されている。このため、アッパー部の内部に入り込んだ水等をこのアッパー開口部から速やかに排出することができる。
そして、前記構成では、靴底部の中底面側の踵側には、幼児の足の踵側を前記中底面側に位置決めするための凸状の位置決め部が形成されている。ところで、幼児等は、大人と異なり、踵に重心をかけて歩行する傾向があることが知られている。このため、前記構成によれば、幼児等の歩行に際し、最も重心がかかる足の踵が靴底部から脱落等することが防止され、幼児が歩行し易い構成となっている。
【0008】
さらに、前記構成では、靴底部の靴底面には、通気排水用の通気排水開口部が配置されているため、排水と排気が可能となり快適な幼児用靴となる。一方、このような通気排水開口部を靴底部に形成すると、通常、靴底部が滑りやすくなるおそれがある。そこで、前記構成では、滑り止め防止用の滑り止め部が、相互に隣接又は近接して配置されている。
このように滑り止め部を配置することで、この通気排水開口部を形成したことに起因する滑り易さを防止でき、歩行し易い幼児用靴となっている。
【0009】
好ましくは、前記靴底部の中底面側の爪先側には、幼児の爪先側を保護するための凸状の爪先保護部が形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0010】
前記構成によれば、靴底部の中底面側の爪先側には、幼児の爪先側を保護するための凸状の爪先保護部が形成されているので、幼児等の足の爪先側をこの爪先保護部で効果的に保護することができる。
【0011】
好ましくは、前記靴底部の爪先側は、前記靴底部が接地する接地面から離間する方向に反って形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0012】
前記構成によれば、靴底部の爪先側は、前記靴底部が接地する接地面から離間する方向に反って形成されているので、靴底部の爪先側が接地面の障害物等につまずき難い構成とすることができ、幼児等の爪先側をより有効に保護することができる。
【0013】
好ましくは、前記通気排水開口部は、前記靴底部の靴底面側における爪先側領域に形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0014】
前記構成によれば、反って形成されている靴底部の爪先側領域に通気排水開口部が形成されているので、通気排水開口部が接地し難い構成となり、滑りをより防止することができる。
【0015】
好ましくは、前記通気排水開口部は、前記靴底部の靴底面側における使用者の足の土踏まず領域に相当する領域に形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0016】
前記構成によれば、土踏まず領域は、幼児の歩行に際し、地面等に接地しないので、通気排水開口部を形成しても、これらが地面等に接地せず、これにより通気排水開口部による滑りが生じ難い靴となる。
【0017】
好ましくは、前記滑り止め部は、前記靴底部の靴底面側における踵側領域に形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0018】
前記構成によれば、滑り止め部は、靴底部の靴底面側における踵側領域に形成されている。幼児等は歩行に際し、踵領域に重心がかかる傾向にあるため、滑り止め部を靴底部の靴底面側における踵側領域に形成することで、幼児が踵に重心をかけて歩行しても滑り難い幼児用靴となる。
【0019】
好ましくは、前記靴底部の靴底面側のうち、使用者が歩行に際し足指を屈曲させる足指屈曲領域に対応した領域に前記靴底部の変形を促す屈曲溝部が形成され、この屈曲溝部に隣接又は近接した爪先側及び踵側の靴底部の靴底面に、それぞれ前記滑り止め部が形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0020】
前記構成によれば、靴底部の靴底面側のうち、使用者が歩行に際し足指を屈曲させる足指屈曲領域に対応した領域に靴底部の変形を促す屈曲溝部が形成されているので、幼児等の歩行動作に追従して靴底部も変形する。このため、幼児等の歩行に際し、足のホールド(保持)性が高い履き易い靴となる。
また、前記構成では、屈曲溝部に隣接又は近接した爪先側及び踵側の靴底部の靴底面に、それぞれ滑り止め部が形成されているので、歩行における靴底部の屈曲にも拘わらず、滑り難い靴底部とすることができる。
【0021】
好ましくは、前記屈曲溝部に隣接又は近接した爪先側及び踵側の靴底部の靴底面に、それぞれ形成された前記滑り止め部に、その屈曲を促進させる滑り止め屈曲部が形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0022】
前記構成によれば、屈曲溝部に隣接又は近接した爪先側及び踵側の靴底部の靴底面に、それぞれ形成された滑り止め部に、その屈曲を促進させる滑り止め屈曲部が形成されている。このため、幼児等の歩行に際し屈曲溝部と共に、滑り止め屈曲部も屈曲するので、滑り止め部を配置しているにも拘わらず、その歩行動作を妨げない履き易い幼児用靴となる。
【0023】
好ましくは、前記通気排水開口部には、その上部にネットが形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0024】
前記構成によれば、通気排水開口部には、その内部に排水ネットが形成されているので、外側から通気排水開口部内に異物等が入り込むことを未然に防止することができる。
【0025】
好ましくは、前記アッパー開口部は、少なくとも、使用者が歩行に際し足指を屈曲させる足指屈曲領域の上方に配置されることを特徴とする幼児用靴である。
【0026】
前記構成によれば、アッパー開口部は、少なくとも、使用者が歩行に際し足指を屈曲させる足指屈曲領域の上方に配置される。ところで、幼児等が歩行に際し、足を足指屈曲領域で屈曲させると、それに伴い、その上方にあるアッパー開口部が形成されているアッパー部が変形する。このとき、アッパー部にアッパー開口部が形成されていると、その変形が容易となり、幼児等の足の屈曲動作等を妨げることがなく、履き易い幼児用靴となる。
【0027】
好ましくは、前記アッパー部には、前記履き口部から爪先方向にかけて上部開口部が形成されると共に、この上部開口部の開口状態を変化させる操作部付き調節紐が形成されていることを特徴とする幼児用靴である。
【0028】
前記構成によれば、アッパー部には、履き口部から爪先方向にかけて上部開口部が形成されると共に、この上部開口部の開口状態を変化させる操作部付き調節紐が形成されている。このため、使用者は操作部を操作するだけで調節紐を介して上部開口部の開口状態を変化させることができ、これにより、容易に幼児等の足の大きさに合致したアッパー部とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、幼児等が水遊び等をしても、内部に水等が溜まり難いにも拘わらず、幼児等の足を保持するホールド性が高く、且つ、接地面が水等で濡れていても滑り難い幼児用靴を提供することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る幼児用靴1を示す概略側面図である。図1に示す幼児用靴1は、月齢が18ヶ月程度の幼児が例えば、水遊び等をする際に使用するサンダル型の幼児用靴1である。
具体的には、幼児用靴1は、図1に示すように、例えばEVA、ラバー等からなる靴底部2を有している。また、靴底部2に図において上方には、靴底部2から立ち上がるようにアッパー部3が形成されている。
この靴底部2は、使用者である例えば、幼児等が歩行する際に接地する靴底面21(図1の下側)と、幼児等がその足を配置する中底面22を有している。
また、アッパー部3は、図1に示すように幼児等の足を挿入するための開口を含む履き口部4を有している。
【0032】
図2は、図1の幼児用靴1の概略平面図である。図1及び図2に示すように、履き口部4の踵側には、幼児等が幼児用靴1を履く際に、履き口部4を開放可能な分割片41a、41bが備わっている。このように、本実施の形態では、履き口部4は、分割片41a、41bを挟む上部側の開口と踵側の開口の双方を含む構成となっている。
図3は、図2の分割片41a、42aを開いた状態を示す概略側面図である。
図2及び図3に示すように、分割片41a、41bは、相互に図示しない面ファスナを有し、これらによって、分割片41a、41bを図2に示すような閉状態若しくは図3に示すような開状態に変化させることができるようになっている。
具体的には、分割片41aの内側と分割片41bの外側にそれぞれ、雄又は雌のそれぞれ異なる面ファスナが形成され、これらの面ファスナによって、分割片41a、41bを閉状態若しくは開状態に維持させることができる構成となっている。
このように、分割片41a、41bは、分割部の一例となっている。
【0033】
そして、これら分割片41a、41bを幼児又はその保護者等が操作し、履き口部4を図3のように開放状態とすれば、履き口部4は、開放され、幼児の足を図3の矢印Aで示すように踵側から中底面22に沿って幼児用靴1内に挿入することができ、いわゆる、ヒールエントリーが可能な構成となっている。
このため、幼児等にとっては履き易く、その保護者等にとっては履かせ易い構成となっている。
一方、幼児等が一旦、幼児用靴1を履いた後、図2に示すように分割片41a、41bの面ファスナを相互に接触させ、固定状態(閉状態)とすれば、幼児等の踵側を分割片41a、41bで確実に保持することができるので、幼児等にとって履きやすい幼児用靴1となる。
【0034】
図1乃至図3に示すように、アッパー部3には、その両側面にそれぞれ3つずつのアッパー開口部であるアッパー開口5a乃至5fが6個形成されている。
すなわち、図1等の幼児用靴1は、上述のように、幼児が水遊び等をする際に、使用するものであるため、水遊び等に際し、アッパー部3内に入り込んだ水等が、これら6つのアッパー開口5a乃至5fを介して外部に排出する構成となっている。
このため、従来のように、内部に水が溜まり、幼児等を不快な状態にすることを未然に防ぐことができる構成となっている。
また、従来のサンダルや幼児用靴等では、幼児の足を確実に保持(ホールド)すると、靴の内部に水が溜まり易く、逆に、靴の内部に水が溜まり難い構成とすると、幼児の足を確実にホールドさせ難くなっていた。
この点、本実施の形態では、上述の分割片41a、41bとアッパー開口5a等の組み合わせで、幼児の足のホールド性を高めつつ、水はけのよいサンダルタイプの幼児用靴1とし、従来にないものとなっている。
【0035】
また、図1に示すように、靴底部2には、中底面22側に向かって凸状の位置決め部である例えば、巻き上げ部23が形成されている。
このため、中底面22に足を配置した幼児等は、その配置された足が、この巻き上げ部23で正しい中底面22に位置決めされることになる。
特に、アッパー部3が靴底部21と連接して形成されていない踵側では、この巻き上げ部23の凸状部分によって、幼児等の足が外側にはみ出したり、脱落したりしない構成となり、幼児等の足を保持し易い幼児用靴1となっている。
また、一般に幼児は、歩行に際し、踵側に重心がかかる傾向があることが知られているが、本実施の形態では、上述のように、靴底部2の踵側に巻き上げ部23を設けることで最も重心がかかる幼児の踵が靴底部2から脱落等することが防止され、安定して歩行することができる構成となっている。
【0036】
また、この巻き上げ部23は、図1に示すように、靴底部2の爪先側にも形成されている。このため、この爪先側の巻き上げ部23により、衝突等の衝撃から幼児等の足の爪先側を保護することができ、幼児等にとって安全性の高い構成となっている。
すなわち、この爪先側の巻き上げ部23が、凸状の爪先保護部の一例となっている。
【0037】
また、図1に示すように、靴底部2の爪先側は、靴底部2が接地する接地面から離間する方向に反って形成されており、この反り上がりは、爪先先端部hで10mm乃至30mm、好ましくは、15mm〜25mm程度接地面21から離間している。
このため、幼児等が歩行に際し、地面等の障害物等につまずき難い構成とすることができ、幼児等が歩行し易い構成となっている。また、上述した靴底部2の爪先側の巻き上げ部23と、この反り上がりの構成によって歩行時の幼児等の爪先側をより確実に保護することができる構成ともなっている。
【0038】
ところで、図2に示すように、幼児用靴1のアッパー部3は履き口部4から爪先側にかけて上部開口部6が形成されている。この上部開口部6は、アッパー部3が形成されていない開口部分である。
そして、この上部開口部6には、その開口部分を補うように、舌部7が配置されている。
さらに、この上部開口部6を渡すようにアッパー部3には、調節紐8が形成され、この調節紐8を操作するための操作部8aが形成されている。
このため、操作部8aを操作することで調節紐8の長さを調節でき、この調節紐8の長さを調節することで、図2の上部開口部6の開口状態を狭くしたり広くしたりすることで変化させることができ、当該幼児等の足にとって最適な大きさのアッパー部3とすることができる。
このように、アッパー部3の大きさの調節を操作部8aの操作だけでできるので、いわゆる、ワンアクションで、アッパー部3の幼児等の足に対するフィット調節が可能な構成となり、操作し易い幼児用靴1となっている。
【0039】
図4は、図1の幼児用靴1の靴底部2の靴底面21を示した概略図である。図4に示すように、靴底面21には、溝21aが形成され、この溝21aによって靴底面21の表面には、六角形等の多角形等が形成される。この溝21aによって靴底面21の表面には、凹凸が形成され、全体として滑り止めの機能を発揮することになる。
また、このように溝21aで形成された六角形のセル状部分のうち一部、例えば7箇所に通気や排水用の開口穴である通気排水開口部21bが形成されている。
この通気排水開口部21bは靴底部2の靴底面21に形成された、図4に示す例えば六角形の開口穴となっている。
このため、幼児等が幼児用靴1を履いて水遊びしても、7箇所の通気排水開口部21bを介して通気と排水ができるため、幼児等に不快感を与え難い構成となっている。
【0040】
また、図4に示すように、この通気排水開口部21bは、穴形状となっているため、その内部に異物が入り込むおそれがある。そのため、このような異物が外部から入り込むのも防止するため、通気排水開口部21bの上部には、ネット21cが形成されている。
【0041】
また、本実施の形態では、図4に示すように、六角形のセル状部分のうち、12箇所に滑り止めであるラバー等が配置されているラバー部21d(滑り止め部の一例)が形成されている。
そして、このラバー部21dは、図4に示すように通気排水開口部21bと隣接又は近接して配置されている。すなわち、図4の接地面21では、例えば、爪先側に配置された3箇所の通気排水開口部21bは溝21aを介してラバー部21aと隣接して配置されている。
一方、図4の接地面21の踵側に配置されているラバー部21dに対しても、通気排水開口部21bが溝21aを介して隣接又は近接して配置されている。
【0042】
本実施の形態では、上述のように通気排水開口部21bを形成しているため、通気と排水が可能で、幼児等に不快感を与え難い構成となっている。一方で、このような通気排水開口部21bを形成すると、その部分から排水等されるため、幼児等の歩行に際し接地面21が滑り易くなるおそれがある。
そこで、本実施の形態では、図4に示すように、通気排水開口部21bに隣接又は近接させてラバー部21dを形成することで、通気と排水が可能で、滑り難い接地面21としている。
【0043】
図5は、図1の幼児用靴1の概略正面図である。図5に示すように、幼児用靴1の靴底部2の爪先側領域は反り上がって形成され、この靴底面21の反り上がり部分、すなわち、地面等に接地していない部分に、3個の通気排水開口部21bが形成されている。
他の4個の通気排水開口部21bは、図4に示すように、幼児等の足の土踏まず領域に相当する靴底面21に形成されている。
このように、7個の通気排水開口部21bは、いずれも幼児等の歩行に際し、地面等に接地しない部分(土踏まずに相当する部分)又は地面等に接地しにくい部分(爪先側領域の反り上がり部分)に形成されているため、これら通気排水開口部21bが地面等に接地して、滑るという事態の発生を少なくすることができ、歩行し易い幼児用靴1となっている。
【0044】
また、図4に示すように、ラバー部21dは、幼児等の足の踵側領域に相当する部分に例えば、6箇所形成されている。上述のように、幼児等は歩行に際し踵領域に重心をかける傾向にあるため、このようにラバー部21dを踵側領域に重点的に配置することで、幼児等が踵に重心をかけても滑り難い幼児用靴1となっている。
【0045】
図6は、歩行に際し幼児等の足が屈曲する部分である足指屈曲領域を示す概略説明図である。
幼児等が歩行する際、足を屈曲させるが、この足指の屈曲する部分が足指屈曲領域といわれている。具体的には、足指は、親指側である第1趾から小指側である第5趾まで配置され、その各指の中足指関節及びその周辺に、幼児等が歩行に際し、足を屈曲させる部分である足指屈曲領域が矢印Cで示されている。
【0046】
本実施の形態では、足指屈曲領域の一例である足指屈曲領域Cに対応した靴底部2の靴底面21に靴底部2の変形を促す屈曲溝部である例えば、屈曲溝21eが形成されている。すなわち、図4の溝21aのうち、矢印Dで示す幅に含まれる部分の溝が、他の溝部分と異なる屈曲溝21eとなり、この屈曲溝21eは、他の溝21aより深い溝となっている。
このため、歩行に際し、幼児等が足指を足指屈曲領域Cで屈曲させると、それに伴い靴底部2も、この屈曲溝21eで屈曲するので、幼児用靴1が幼児等の足をホールド(保持)し易い構成となっている。
特に、屈曲溝21eは、他の溝21aより深いため、より屈曲し易い構成となっているので、幼児等の歩行動作等を妨げ難い構成となっている。
【0047】
また、本実施の形態では、図4に示すように、屈曲溝21eに隣接又は近接してラバー部21dが6個形成されている。具体的には、屈曲溝21eの爪先側に3個のラバー部21dが形成され、屈曲溝21eの踵側に3個のラバー部21dが形成されている。
このように、屈曲溝21eを挟んで両側にラバー部21dを形成することで、屈曲溝21eの変形にも拘わらず、滑り難い構成となっている。
このため、幼児等が水遊び等をしている場合でも、滑りにくく安全性の高い幼児用靴1となる。
【0048】
また、図4に示すように、屈曲溝21eを挟んで形成される6個のラバー部21dには、それぞれ、幼児等の歩行に追従する靴底部2の屈曲動作を促進するラバー溝21f(滑り止め屈曲部の一例)が形成されている。
すなわち、このラバー溝21fの形成方向は、屈曲溝21eの形成方向とほぼ同様であるため、幼児等の歩行動作等により、屈曲溝21eが屈曲する際、ラバー溝21fも同様に屈曲するため、ラバー部21dが、靴底部2の屈曲を妨げることがなく、歩行し易い幼児用靴1となる。
【0049】
また、図1の2つのアッパー開口5b、5eは、靴底部2に形成されている図4の屈曲溝21fの上方に形成されている。このため、幼児等の歩行動作等により、靴底部2が屈曲する際、同様にアッパー部3も、2つのアッパー開口5b、5eが脆弱部となってより変形し易い構成となっている。したがって、幼児等の足の屈曲動作により追従し易い幼児用靴1となる。
【0050】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る幼児用靴を示す概略側面図である。
【図2】図1の幼児用靴の概略平面図である。
【図3】図2の分割片を開いた状態を示す概略側面図である。
【図4】図1の幼児用靴の靴底部の接地面を示した概略図である。
【図5】図1の幼児用靴の概略正面図である。
【図6】歩行に際し足が屈曲する部分である足指屈曲線を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・幼児用靴、2・・・靴底部、3・・・アッパー部、4・・・履き口部、5a・・・アッパー開口、6・・・上部開口部、7・・・舌部、8・・・調節紐、8a・・・操作部、21a・・・溝、21b・・・通気排水開口部、21c・・・ネット、21d・・・ラバー部、21e・・・屈曲溝、21f・・・ラバー溝、41a、41b・・・分割片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が歩行に際し接地する靴底面と、使用者が足を配置する中底面と、を有する靴底部と、
使用者の足を保持するために前記靴底部から立ち上がるように形成されるアッパー部と、
前記アッパー部に形成される使用者の足を挿入するための履き口部と、を備える幼児用靴であって、
前記履き口部が、踵側に形成された、分割可能な分割部を有すると共に、前記アッパー部には、複数のアッパー開口部が形成され、
前記靴底部の中底面側の踵側には、幼児の足の踵側を前記中底面側に位置決めするための凸状の位置決め部が形成され、
前記靴底部の靴底面には、通気排水用の通気排水開口部と、滑り止め防止用の滑り止め部が形成され、前記通気排水開口部が前記滑り止め部に隣接又は近接して配置されていることを特徴とする幼児用靴。
【請求項2】
前記靴底部の中底面側の爪先側には、幼児の爪先側を保護するための凸状の爪先保護部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の幼児用靴。
【請求項3】
前記靴底部の爪先側は、前記靴底部が接地する接地面から離間する方向に反って形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の幼児用靴。
【請求項4】
前記通気排水開口部は、前記靴底部の靴底面側における爪先側領域に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の幼児用靴。
【請求項5】
前記通気排水開口部は、前記靴底部の靴底面側における使用者の足の土踏まず領域に相当する領域に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の幼児用靴。
【請求項6】
前記滑り止め部は、前記靴底部の靴底面側における踵側領域に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の幼児用靴。
【請求項7】
前記靴底部の靴底面側のうち、使用者が歩行に際し足指を屈曲させる足指屈曲領域に対応した領域に前記靴底部の変形を促す屈曲溝部が形成され、
この屈曲溝部に隣接又は近接した爪先側及び踵側の靴底部の靴底面に、それぞれ前記滑り止め部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の幼児用靴。
【請求項8】
前記屈曲溝部に隣接又は近接した爪先側及び踵側の靴底部の靴底面に、それぞれ形成された前記滑り止め部に、その屈曲を促進させる滑り止め屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の幼児用靴。
【請求項9】
前記通気排水開口部には、その上部にネットが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の幼児用靴。
【請求項10】
前記アッパー開口部は、少なくとも、使用者が歩行に際し足指を屈曲させる足指屈曲領域の上方に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の幼児用靴。
【請求項11】
前記アッパー部には、前記履き口部から爪先方向にかけて上部開口部が形成されると共に、この上部開口部の開口状態を変化させる操作部付き調節紐が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の幼児用靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−195403(P2009−195403A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39064(P2008−39064)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】