広帯域アンテナおよび広帯域アンテナ搭載基板
【課題】 アンテナの小型化を図ることができ、さらに、グランドパターンの形状を変えることなく、かつ、搭載する電子部品のスペースを広くとりつつ、VSWRの広帯域化を図ることができるアンテナを提供する。
【解決手段】 アンテナ1は、給電電極部4を有するアンテナ1であって、給電電極部4は、導電性の平板からなり、平板は矩形の1角が切り欠かれ、切り欠き部15が、角をなす2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧からなっている。
【解決手段】 アンテナ1は、給電電極部4を有するアンテナ1であって、給電電極部4は、導電性の平板からなり、平板は矩形の1角が切り欠かれ、切り欠き部15が、角をなす2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧からなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VSWR特性の広帯域化を図る広帯域アンテナおよび広帯域アンテナ搭載基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信方式が多様化し、様々な周波数に対応するアンテナが必要となり、広帯域なアンテナが必要となっている。広帯域アンテナとしては、図13に示すように、グランドパターンが設けられた基板(GND基板)50上に、半円形状の放射導体51が円弧の中心部分(給電端子52)をGND基板50に接する形で設けられたものがある。
【0003】
このようなアンテナは、GND基板50の端にいくにつれて、放射導体51とGND基板50との距離が離れているため、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)特性の広帯域化を図ることができる。
【0004】
また、携帯電話やPC(personal computer)間での無線通信のために、PCカード型の無線通信カードが用いられている。この無線通信カードには、無線通信を行なうために、アンテナが内蔵されている。
【0005】
このアンテナの広帯域化を図るために、特許文献1には、図14に示すように、誘電体基板62上に先細らせたグランドパターン63を設け、平面エレメント61を適当な位置に配置することによって、グランドパターン63と平面エレメント61との距離を調整することにより、VSWRの広帯域化を図った、アンテナが開示されている。
【特許文献1】特開2004−328694号公報(平成16年11月18日 公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の図13に示す広帯域アンテナは、放射導体51が半月形状であるため、アンテナ全体として大きいという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の広帯域アンテナは、グランドパターン63の形状を工夫することによってVSWR特性の広帯域化を図っているため、平面エレメント61を購入した者が、わざわざグランドパターン63の形状を設計する必要があるため、面倒であるという問題があった。さらに、グランドパターン63の形状を先細らせているため、グランドパターン63に搭載する電子部品のためのスペースが小さくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、広帯域アンテナの小型化を図ることができ、さらに、グランドパターン(接地電極)の形状を変えることなく、かつ、搭載する電子部品のスペースを広くとりつつ、VSWRの広帯域化を図ることができる広帯域アンテナおよび広帯域アンテナ搭載基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広帯域アンテナは、上記課題を解決するために、給電体を有する広帯域アンテナであって、上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の広帯域アンテナは、上記課題を解決するために、接地電極を有する基板に取り付けられる、給電体を有する広帯域アンテナであって、上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっており、
上記給電体は、上記基板の端部側に、上記基板の端部に近づくにつれて上記接地電極と上記給電体との距離が離れるように、上記接地電極に対して上記切り欠き部分における上記1本の直線あるいは上記凸をなす円弧を対向させて、設けられていることを特徴としている。
【0011】
上記構成では、接地電極(グランド;グランドパターン)の形状の設計は行なっていない。そのため、接地電極の形状を変えるという面倒な作業を行なわなくて済む。また、接地電極を従来のように先細らせたりしていないため、電子部品を載せるスペース(接地電極のスペース)を大きくとることができる。
【0012】
さらに、アンテナを構成する給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれた部分からなっている。そのため、形状が半円形状をさらに略半分にした形状となっている。そのため、アンテナを上記で説明した従来のアンテナの半分の大きさにすることができる。従って、アンテナを小型化することができる。
【0013】
さらに、このように小型化しても、上記基板の端部に近づくにつれて上記接地電極と上記給電体との距離が離れるように、上記接地電極に対して上記切り欠き部分における上記1本の直線あるいは上記凸をなす円弧を対向させているため、広帯域のVSWR特性を図ることができる。さらに、給電体を基板の端部に設けることにより、さらなるVSWR特性の広帯域化を図ることができることを本発明者らは鋭意検討の結果見出した。
【0014】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電体は、平板状の誘電体にて覆われていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、給電体は平板状の誘電体にて覆われている。従って、この誘電体は、波長短縮効果と呼ばれる、仮想的にアンテナの大きさが実際の大きさよりも大きいアンテナと同等の機能を有するような効果を奏する。そのため、アンテナのサイズを大きくすることなく、広帯域のVSWR特性を得ることができる。
【0016】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記角をなす2辺のうち、一方の辺に給電用の給電端子が、上記誘電体の外部に設けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電端子は、上記誘電体の平面に直交して突出しており、該突出している部分が、L字状に折れ曲がっていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、上記給電端子は、上記誘電体の平面に直交して突出しており、該突出している部分が、L字状に折れ曲がっている。そのため、誘電体を容易に基板に取り付けることができる。
【0019】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電端子が設けられている上記一方の辺と対向する辺の両脇に1つずつ、固定用の固定端子が、上記誘電体の外部に設けられていることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、上記給電端子が設けられている上記一方の辺と対向する辺の両脇に1つずつ、固定用の固定端子が、上記誘電体の外部に設けられている。そのため、安定して給電体を基板に取り付けることができる。
【0021】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記固定端子は、上記給電端子と同じ方向および同じ高さ突出している部分を有しており、L字状に折れ曲がっていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、上記固定端子は、上記給電端子と同じ方向および同じ高さ突出している部分を有しており、L字状に折れ曲がっているため、基板に容易に誘電体を取り付けることができる。
【0023】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記誘電体における上記切り欠き部分に相当する部分に、上記突出している部分と同じ方向および同じ高さ突出した突出部が設けられていることが好ましい。
【0024】
固定端子は、上記のように、1辺の両脇に設けられているが、給電端子が設けられている辺は切り欠き部分を有しているため、切り欠き部分を避けて給電端子を設けることになる。そのため、アンテナを基板に取り付ける際に、3点は突出している一方、切り欠き部分は突出しておらず、アンテナが基板に対してがたつき、不安定な設置方法となる。これに対して、上記構成によれば、誘電体における上記切り欠き部分に相当する部分に、上記突出している部分と同じ方向および同じ高さ突出した突出部が設けられている。そのため、がたつくことなく、安定してアンテナを基板に取り付けることができる。
【0025】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電端子は、上記給電体の平面と平行に延びていることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、給電端子が給電体の平面と平行に延びている。このため、アンテナを基板に対して垂直に配置させることができる。そのため、指向性の幅を広げることができると共に、給電端子をスルーホール端子として用いることができる。
【0027】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電体と上記誘電体とはインサート成形にて互いに一体成形されていることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、上記給電体と上記誘電体とはインサート成形にて互いに一体成形されている。そのため、容易にアンテナを製造することができるため、アンテナの量産性を高めることができる。
【0029】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記誘電体は、高誘電率樹脂、または、高誘電率セラミックからなることが好ましい。
【0030】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電体は、平板状の支持部材の両面に設けられており、この両面に設けられている給電体は互いに繋がっていることが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、上記給電体は、平板状の支持部材の両面に設けられており、この両面に設けられている給電体は互いに繋がっている。このように、給電体は平板状の支持部材の両面に設けられているため、1つの給電体を用意すれば、基板の両端のいずれにも取り付けることができる。また、両面に設けられている給電体は互いに繋がっているため、基板に対して平行に取り付け可能であるだけでなく、基板に対して垂直に取り付けることも可能であり、所望の指向性に合わせたアンテナを得ることができる。
【0032】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記支持部材は、誘電体からなることが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、支持部材は、誘電体からなっている。そのため、波長短縮効果により、アンテナの小型化を図ることができる。
【0034】
また、本発明の広帯域アンテナ搭載基板では、上記のいずれかに記載の広帯域アンテナが搭載されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の広帯域アンテナは、以上のように、給電体を有する広帯域アンテナであって、上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっている。
【0036】
また、本発明の広帯域アンテナは、以上のように、接地電極を有する基板に取り付けられる、給電体を有する広帯域アンテナであって、上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっており、上記給電体は、上記基板の端部側に、上記基板の端部に近づくにつれて上記接地電極と上記給電体との距離が離れるように、上記接地電極に対して上記切り欠き部分における上記1本の直線あるいは上記凸をなす円弧を対向させて、設けられている。
【0037】
従って、広帯域アンテナの小型化を図ることができ、さらに、グランドパターン(接地電極)の形状を変えることなく、かつ、搭載する電子部品のスペースを広くとりつつ、VSWRの広帯域化を図ることができる広帯域アンテナを提供することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
【0039】
図3は、本実施の形態のアンテナ搭載基板を示す斜視図である。このアンテナ搭載基板は、図3に示すように、基板10と、この基板(広帯域アンテナ搭載基板)10上に設けられたアンテナ(広帯域アンテナ)1およびグランドパターン(接地電極)11とを有している。なお、このアンテナ搭載基板は、さらに、図示しない高周波電源および図示しない給電線を備えている。基板10は、アンテナ1およびグランドパターン11の基台としての役割を有しており、FR−4、テフロン(登録商標)などを素材とする樹脂基板からなっている。グランドパターン11は、アンテナ1の機能を担保する役割を有している。
【0040】
図2は、アンテナ1の概略構成を示す斜視図である。アンテナ1は、同図に示すように、チップ形状(平板形状)のアンテナ、すなわち、チップアンテナである。このチップアンテナは、モノポールアンテナに比して、低背化および小型化を図ることができる。また、アンテナ1は、同図に示すように、後述する誘電体としての誘電体基板3によって、平板状の外形が形成されている。
【0041】
図1は、図2に示したアンテナ1の概略構成を示す透視図である。アンテナ1は、同図に示すように、給電導体2と、高誘電率用樹脂または高誘電率セラミックなどから成る誘電体基板3とを備えている。
【0042】
給電導体2は、グランドパターン11と一体となってアンテナ機能を果たしており、給電電極部(給電体;扇形放射素子部;放射電極部)4と、固定用表面実装端子部(固定端子;固定端子部)5と、給電用表面実装端子部(給電端子;給電端子部)6とを備えている。給電導体2は、図1に示すように、誘電体基板3にて挟持された構成となっている。そして、給電導体2のうち、給電電極部4は、誘電体基板3にて被覆されている(覆われている)一方、固定端子部5および給電端子部6は、誘電体基板3の外部に露出している。
【0043】
給電電極部4は、導体(例えば、金属材料)からなる平板電極である。この給電電極部4の形状は、短辺と長辺との2組(2対)の対向辺を有する、長方形形状の平板の一隅(一角)を外側に膨らむように(湾曲して)切り欠いた形状となっている(この湾曲部を切り欠き部15という)。つまり、給電電極部4の平面形状は、3つの矩形角と、1つの湾曲して膨らんだ角とを有している。但し、ここでは、切り欠き部15は、湾曲しているが一直線であってもよい。また、上記で長方形状の平板とあるが、長方形状に限らず、正方形状であってもよい。
【0044】
さらに換言すれば、給電電極部4は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっている。
【0045】
固定端子部5は、導体(例えば、金属材料)からなる平板電極であり、アンテナ1を基板10に固定する役割を有している。固定端子部5は、長方形形状の給電電極部4の切り欠き部15を有さない方の短辺の両脇に、誘電体基板3の外部に、誘電体基板3の長手方向へ突き出て設けられている。
【0046】
固定端子部5は、アンテナ1を表面実装させやすいように、屈曲した構造(ここでは例えば、L字型に折れ曲がった構造)となっていることが好ましい。より具体的には、固定端子部5は、誘電体基板3の平面に直交して突出しており、該突出している部分が、L字状に折れ曲がっていることが好ましい。本実施の形態では、固定端子部5は、誘電体基板3に対して外側へ曲がっているが、これに限られず、誘電体基板3に対して内側へ曲がっていてもよい。
【0047】
固定端子部5を屈曲した構造とすることにより、アンテナ1を基板10に表面実装させやすくなり、アンテナ搭載基板(図3)の量産性を向上させることができる。しかしながら、アンテナ1を基板10に表面実装させることができるものであれば、固定端子部5の構造は、屈曲した構造に限らず、何でもよい。さらに言えば、アンテナ1を基板10に実装する手段は、固定端子部5に限らず、他の手段でもよい。
【0048】
給電端子部6は、導体(例えば、金属材料)からなる平板状の電極であり、アンテナ1を基板10に固定する役割と、図示しない給電線を通してアンテナ1に給電(電力を供給)する役割とを有している。給電端子部6は、長方形状の給電電極部4のうち、切り欠き部15を有する方の短辺に、誘電体基板3の外部に、誘電体基板3の長手方向へ突き出て設けられている。この給電端子部6は、上記の固定端子部5と同様に、屈曲した構造となっている。すなわち、給電端子部6は、固定端子部5と同じ方向および同じ高さ突出している部分を有しており、誘電体基板3から離れる方へL字状に折れ曲がっていることが好ましい。しかしながら、給電端子部6は、上記の固定端子部5と同様に、必ずしも屈曲した構造に限られない。
【0049】
誘電体基板3は、波長短縮効果によりアンテナの小型化を図る機能を有している。但し、誘電体基板3は、必須の構成要素ではなく、誘電体基板3が設けられていないアンテナ1も本実施の形態の技術的範囲に含まれる。
【0050】
また、誘電体基板3は、例えば樹脂からなることが好ましい。この樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂(EP)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、フェノール樹脂(PF)などを用いることができる。また、誘電体基板3としては、高誘電率樹脂または高誘電率セラミックからなることが好ましい。
【0051】
また、上記のPPSやLCPは、耐熱性、寸法安定性、および成形加工特性に優れている。また、誘電体基板3の比誘電率を5〜20の範囲に設定することが可能である。
【0052】
なお、誘電体基板3の4角のうちの1角には、突起部9が設けられている(図1・図2・図7参照)が、この突起部9の機能などについては、後に詳述する。
【0053】
次に、アンテナ1の製造方法について図4(a)〜(f)を用いて説明する。アンテナ1は、インサート成形によって、製造することが好ましい。ここで、インサート成形とは、金型を用いて、この金型内に、材料を注入して、一体成形する方法である。但し、アンテナ1を製造する方法は、インサート成形に限らず、例えば押出成形・射出成形などであってもよい。
【0054】
このインサート成形によるアンテナ1の製造は、チップの形状をなした金型を用いて、給電導体2と誘電体基板3とを一体成形することにより行なう。この金型には、図4(a)に示すように、3つの端子位置決め部(窪み部)19が設けられている。このような端子位置決め部19を設けることにより、固定端子部5および給電端子部6と、給電電極部4との位置合せをすることができる。つまり、端子位置決め部19は、給電導体2の位置決めを行なう役割を有している。
【0055】
なお、このような端子位置決め部19は、上記のような窪み部に限らず、例えば、所定の位置に棒状の突起部が形成されており、この突起部に固定端子部5および給電端子部6を給電電極部4とを接触させることによって、固定端子部5および給電端子部6と、給電電極部4とを位置合わせさせるものであってもよい。
【0056】
このように、金型18には、端子位置決め部19が設けられているため、図4(b)に示すように、給電導体2を金型18の正確な位置に設置することができ、給電導体2と誘電体基板3とを精度よく一体成形することができる。
【0057】
金型18に給電導体2を位置決めした後、図4(c)に示すように、2つの金型18によって、給電導体2を両側から挟む。そして、金型18に設けられた図示しない注入口から誘電体基板3の誘電体材料を注入し、誘電体基板3と給電導体2とを一体化する。
【0058】
これにより、図4(d)に分解斜視図にて示すように、給電導体2と誘電体基板3とが一体成形される。そして、図4(e)に示すように、固定端子部5および給電端子部6が所望の長さになるようにカットする。最後に、図4(f)に示すように、固定端子部5および給電端子部6を屈曲させる。なお、固定端子部5および給電端子部6は、所望の長さにカットした後に、屈曲させて、その後に、図4(a)〜図4(c)に示すプロセスを行なってもよい。
【0059】
次に本発明の最重要部分である、アンテナ1の構成、および基板10におけるアンテナ1の位置などについて説明する。
【0060】
本実施の形態のアンテナ1は、特に、基板10の端部側に設けられており、基板10の端部側に給電電極部4の切り欠き部15が設けられている一方、基板10の中央側は矩形状になっており、かつ、切り欠き部15は基板10の端部に近づくにつれてグランドパターン11と給電電極部4との距離が離れるようになっている。上記構成によれば、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の広帯域化を図ることができることを本発明者は見出した。このようにVSRWの広帯域化を図ることができる理由については後に実験データを用いて説明する。
【0061】
さらに、給電電極部4に切り欠き部15を設けているため、従来の半円状の給電電極部4に比して、給電電極部4の小型化(アンテナ1の小型化)を図ることができる。
【0062】
また、グランドパターン11については、何らその構造を変えることなくVSWRの広帯域化を図ることができるので、アンテナを購入したグランドメーカーにグランドパターンの設計を強いることもない。
【0063】
さらに、グランドパターン11の構造を変える必要がないため、グランドパターン11の面積を広くとることができる。グランドパターン11の面積を広くとることができれば、より多くの電子部品(不図示)をグランドパターン11の上に搭載することができる。なお、グランドパターン11の無い場所に電子部品(不図示)を搭載すると、アンテナ特性に悪影響を与えてしまうという問題があり、本実施の形態のアンテナ搭載基板によれば、このような問題を解決することができる。
【0064】
上記したようにアンテナ1を基板10の端に設けると共に、基板10の端部側に給電電極部4の切り欠き部15が設けられている一方、基板10の中央側は矩形状になっており、かつ、基板10の端部に近づくにつれてグランドパターン11と給電電極部4との距離が離れる(大きくなる)ように設けた場合に、VSWRの広帯域化が図れることを、本発明者が鋭意検討の結果見出した。この実験データについて説明する。
【0065】
この実験では、図5に示すように、サイズを10×5×1(mm)としたアンテナ1と、サイズを10×10×1(mm)としたアンテナ1の2通りのアンテナ1を用い、それぞれのアンテナ1を基板10の中央(中心)に配置した場合と、基板10の端に配置した場合とにおけるVSWR特性を調べた。なお、図5では、いずれも基板10の端部側に給電電極部4の切り欠き部15が設けられている一方、基板10の中央側は矩形状になっており、かつ、切り欠き部15は基板10の端部に近づくにつれてグランドパターン11と給電電極部4との距離が離れるようになっている。
【0066】
また、同図において、波形(a)はサイズが10×5×1(mm)で基板10の端に配置したアンテナ1のVSWR特性を示しており、波形(b)はサイズが10×5×1(mm)で基板10の中央に配置したアンテナ1のVSWR特性を示しており、波形(c)はサイズが10×10×1(mm)で基板10の中央に配置したアンテナ1のVSWR特性を示しており、波形(d)はサイズが10×10×1(mm)で基板10の端に配置したアンテナ1のVSWR特性を示している。
【0067】
波形(a)と波形(b)とを比較すると、同図から分かるように、VSWRが3以下における周波数帯域は、波形(a)の方が広くなっている。特に、周波数が7(GHz)〜8(GHz)では、波形(a)ではVSWRが3以下になっているのに対して、波形(b)では、VSWRが3以上となっている。従って、サイズが10×5×1(mm)のアンテナ1では、基板10の端に配置した方(波形(a)の方)が広帯域化を図ることができることがわかる。
【0068】
次に、波形(c)と波形(d)とを比較すると、同図から分かるように、VSWRが3以下の周波数帯域は、波形(d)の方が広くなっている。特に、周波数が7(GHz)〜9(GHz)では、波形(d)の方が波形(c)に比してVSWRが小さくなっている。従って、サイズが10×10×1(mm)のアンテナ1では、基板10の端に配置した方(波形(d)の方)が広帯域化を図ることができる。
【0069】
図6(a)〜(d)に本実施の形態のアンテナ1を基板に取り付けた後、水平に回転させて指向性の指標となる遠方界面放射特性利得を測定した結果を示す。なお、図6(b)〜(d)において円周部分に示された0、90、180、270は、アンテナ1を基板に取り付けた後、水平に回転させたときの回転角を示す。ここで、回転角はアンテナ1の基板に取り付けた後の正面方向と遠方界放射特性利得の測定装置(不図示)との位置関係を表している。
【0070】
すなわち、今回の例では、Z軸を回転させるとき(z)は、X−Y面上のX軸上が、回転の始めの地点0度であり、ここからY軸の矢印方向に測定装置を回転させて、90度回転させたときがY軸に相当する。また、円の半径に示される数値は遠方界放射特性利得を示している。また、図6(b)〜(d)において、V偏波は太線で、H偏波を細線にて示している。周波数は、3.1GHz(図6(b))、4GHz(図6(c))、4.9GHz(図6(d))について測定している。
【0071】
同図から分かるように、本実施の形態のアンテナ1では、H(水平)偏波において、高い周波数利得が得られていることが分かる。
【0072】
図7は、図2に示すアンテナ1を背面から見た斜視図である。
【0073】
固定端子部5および給電端子部6は、同図に示すように、基板10(図3)にアンテナ1を固定するために、誘電体基板3面よりも突き出ている。これに対して、給電導体2の切り欠かれている部分に対応する誘電体基板3の部分には、固定端子部5や給電端子部6などの端子が設けられていないため、突き出た部分を有していない。そのため、アンテナ1を基板10に取り付けた際には、3点止めになり、アンテナ1ががたつき、アンテナ1の基板10への設置が不安定になってしまう。
【0074】
これを防止するために、図7に示すように、誘電体基板3における給電導体2の切り欠き部に相当する部分に、固定端子部5および給電端子部6と同じ高さまで突き出た突起部9を設けることが好ましい。これにより、アンテナ1を基板10に取り付けた際にアンテナ1が基板10に対してがたついて不安定な設置になることを防止することができる。
【0075】
〔実施の形態2〕
次に別の実施の形態のアンテナについて説明する。本実施の形態では、上記実施の形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施の形態1で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0076】
上記実施の形態1では、アンテナ1表面のうち、表面積の最も大きい面を基板10面に対向させて、アンテナ1を基板10に取り付けていた。つまり、アンテナ1を基板10に対して平行に配置していた。そのため上記では、給電端子部6は、アンテナ1を基板10に平面実装させやすいように、屈曲して構成されていた。
【0077】
しかしながら、これに限らず、本実施の形態のように、給電端子部6が設けられている面(給電端子6が突き出ている面)を基板10面に対向させて、アンテナ1を基板10に取り付けてもよい。つまり、アンテナ1を基板10に垂直に配置してもよい。この場合、図8に示すように、給電端子部6を屈曲させずに、ストレートにすることが好ましい。これにより、図9に示すように、ストレートの給電端子部6を基板10に突き刺すだけでよいので、アンテナ1をスルーホール端子として用いることもでき、かつ、基板10に対して垂直に配置させることが容易になる。
【0078】
このように、アンテナ1を基板10に対して垂直に配置させた場合にも、図9に示すように、上記実施の形態1と同様に、アンテナ1は基板10の端部に設けられており、基板10の端部側に給電電極部4の切り欠き部15が設けられている一方、基板10の中央側は矩形状になっており、かつ、この切り欠き部15は基板10の端に近づくにつれてグランドパターン11と給電電極部4との距離が離れるようになっている。そのため、上記実施の形態1と同様に、VSWRの広帯域化を図ることができる。
【0079】
また、アンテナ1を基板10に対して垂直に配置した場合、アンテナ1の指向性のパターンが変化し、V偏波(垂直偏波)を改善することができる。この点について、図10(a)〜(d)を用いて説明する。
【0080】
図10(a)〜(d)に本実施の形態のアンテナ1を基板に取り付けた後、水平に回転させて指向性の指標となる遠方界面放射特性利得を測定した結果を示す。なお、図10(b)〜(d)において円周部分に示された0、90、180、270は、アンテナ1を基板に取り付けた後、水平に回転させたときの回転角を示す。ここで、回転角はアンテナ1の基板に取り付けた後の正面方向と遠方界放射特性利得の測定装置(不図示)との位置関係を表している。
【0081】
すなわち、今回の例では、Z軸を回転させるとき(z)は、X−Y面上のX軸上が、回転の始めの地点0度であり、ここからY軸の矢印方向に測定装置を回転させて、90度回転させたときがY軸に相当する。また、円の半径に示される数値は遠方界放射特性利得を示している。また、図10(b)〜(d)において、V偏波は太線で、H偏波を細線にて示している。周波数は、3.1GHz(図10(b))、4GHz(図10(c))、4.9GHz(図10(d))について測定している。
【0082】
同図から分かる通り、本実施の形態のアンテナ1ではV(垂直)偏波において、高い周波数利得が得られていることが分かる。
【0083】
なお、本実施の形態では、アンテナ1の給電端子部6を基板10に対向させて、アンテナ1を基板10に対して垂直に設置しているため、上記の実施の形態1に示すような固定端子部5は不要である。そのため、コストを削減できると共に、アンテナ1の量産性を高めることができる。さらに、例えば上記実施の形態1における固定端子部5を収納自在とすることにより、アンテナ1の基板10に対する取り付け方向を切り替える(実施の形態1と本実施の形態とを切り替える)構成としてもよい。これにより、所望の指向性に合わせてアンテナ1を用いることができる。
【0084】
本実施の形態のアンテナ1も上記の実施の形態1と同様に、金型18(図4(a)〜(f)参照)を用いたインサート成形にて製造することができる。但し、本実施の形態のアンテナは、固定端子部5が不要であるため、金型18における端子位置決め部19は、1つでよい。
【0085】
〔実施の形態3〕
さらに、別の実施の形態のアンテナについて説明する。本実施の形態では、上記実施の形態1および実施の形態2との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施の形態1および実施の形態2で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0086】
上記いずれの実施の形態でも、給電導体2は、誘電体基板3にて挟持されていた。しかしながら、この構成に限らず、図11に示すように、誘電体基板(支持部材)21の表面に給電導体2を設けてもよい。なお、ここでは支持部材として誘電体基板21としたが、本実施の形態では、必ずしも支持部材は誘電性を有する必要はなく給電導体2の給電電極部4を支持することができるものであれば、何でもよい。但し、誘電体基板21が誘電体樹脂からなることが好ましい。誘電体基板21が誘電体樹脂から成っていれば、波長短縮効果によりアンテナサイズを小さくできる。
【0087】
より具体的には、チップ形状(平板状)の誘電体基板21の両面に上記の給電電極部4と同様の形状(湾曲した切り欠き部15を有する形状)の給電電極部(放射電極)4を設けることが好ましい。この誘電体基板21の両面に設けられた給電電極部4は、誘電体基板21の上面および下面にて接続されている(繋がっている)ことが好ましい。
【0088】
本実施の形態のアンテナ1は、上記の実施の形態とは異なり、インサート成形ではなく、いわゆるMID(Molded Interconnection Device)方法にて、誘電体基板21に給電導体2を貼り付けて製造することができる。なお、MID方法とは、立体成型された、樹脂または、セラミック等の絶縁体上に、銅その他の金属を用いて、電気回路を成型する手法をいう。
【0089】
本実施の形態のアンテナ1を図12(a)(b)に示すように、基板10に対して平行に取り付ける場合には、給電導体2が外側に露出しているため、実施の形態1のような給電端子部6は不要である。そのため、アンテナ1の量産性を高めることができる。
【0090】
また、本実施の形態のアンテナ1は、裏表をひっくり返すことにより、図12(a)(b)に示すように、基板10の両端のいずれにも取り付けることができる。また、誘電体基板3の両面に設けられている給電電極部14は、誘電体基板3の上面および下面にて接続されているので、この接続部分が給電機能を担うため、実施の形態2のように、基板10に対して垂直に取り付けることもできる。つまり、指向性に関しては、上記のいずれの実施の形態よりも汎用性が広い。
【0091】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のチップアンテナは、携帯電話などと通信可能な無線通信カード、携帯内蔵アンテナ、無線LANアンテナ、およびRF−IDアンテナとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態を示すものであり、アンテナの概略構成を示す透視図である。
【図2】図1に示すアンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示すアンテナを搭載したアンテナ搭載基板を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明の実施の形態を示すものであり、アンテナの製造方法を示す図である。
【図5】アンテナのサイズ、および、基板への載置位置を変更した際のVSWR特性を示すグラフである。
【図6】(a)〜(d)は、アンテナの放射特性解析の解析結果を示した図である。
【図7】図2に示すアンテナを背面から見た斜視図である。
【図8】本発明の別の実施の形態のアンテナを示す透視図である。
【図9】図8に示すアンテナを搭載したアンテナ搭載基板を示す斜視図である。
【図10】(a)〜(d)は、アンテナの放射特性解析の解析結果を示した図である。
【図11】本発明のさらに別の実施の形態のアンテナを示す斜視図である。
【図12】(a)(b)は、図11に示すアンテナを搭載したアンテナ搭載基板を示す斜視図である。
【図13】従来のアンテナを示す説明図である。
【図14】従来のアンテナを示す説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 アンテナ(広帯域アンテナ)
3 誘電体基板(誘電体)
4 給電電極部(給電体)
5 固定端子部(固定端子)
6 給電端子部(給電端子)
9 突起部
10 基板(広帯域アンテナ搭載基板)
11 グランドパターン(接地電極)
15 切り欠き部(切り欠き部分)
21 誘電体基板(支持部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、VSWR特性の広帯域化を図る広帯域アンテナおよび広帯域アンテナ搭載基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信方式が多様化し、様々な周波数に対応するアンテナが必要となり、広帯域なアンテナが必要となっている。広帯域アンテナとしては、図13に示すように、グランドパターンが設けられた基板(GND基板)50上に、半円形状の放射導体51が円弧の中心部分(給電端子52)をGND基板50に接する形で設けられたものがある。
【0003】
このようなアンテナは、GND基板50の端にいくにつれて、放射導体51とGND基板50との距離が離れているため、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)特性の広帯域化を図ることができる。
【0004】
また、携帯電話やPC(personal computer)間での無線通信のために、PCカード型の無線通信カードが用いられている。この無線通信カードには、無線通信を行なうために、アンテナが内蔵されている。
【0005】
このアンテナの広帯域化を図るために、特許文献1には、図14に示すように、誘電体基板62上に先細らせたグランドパターン63を設け、平面エレメント61を適当な位置に配置することによって、グランドパターン63と平面エレメント61との距離を調整することにより、VSWRの広帯域化を図った、アンテナが開示されている。
【特許文献1】特開2004−328694号公報(平成16年11月18日 公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の図13に示す広帯域アンテナは、放射導体51が半月形状であるため、アンテナ全体として大きいという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の広帯域アンテナは、グランドパターン63の形状を工夫することによってVSWR特性の広帯域化を図っているため、平面エレメント61を購入した者が、わざわざグランドパターン63の形状を設計する必要があるため、面倒であるという問題があった。さらに、グランドパターン63の形状を先細らせているため、グランドパターン63に搭載する電子部品のためのスペースが小さくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、広帯域アンテナの小型化を図ることができ、さらに、グランドパターン(接地電極)の形状を変えることなく、かつ、搭載する電子部品のスペースを広くとりつつ、VSWRの広帯域化を図ることができる広帯域アンテナおよび広帯域アンテナ搭載基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広帯域アンテナは、上記課題を解決するために、給電体を有する広帯域アンテナであって、上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の広帯域アンテナは、上記課題を解決するために、接地電極を有する基板に取り付けられる、給電体を有する広帯域アンテナであって、上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっており、
上記給電体は、上記基板の端部側に、上記基板の端部に近づくにつれて上記接地電極と上記給電体との距離が離れるように、上記接地電極に対して上記切り欠き部分における上記1本の直線あるいは上記凸をなす円弧を対向させて、設けられていることを特徴としている。
【0011】
上記構成では、接地電極(グランド;グランドパターン)の形状の設計は行なっていない。そのため、接地電極の形状を変えるという面倒な作業を行なわなくて済む。また、接地電極を従来のように先細らせたりしていないため、電子部品を載せるスペース(接地電極のスペース)を大きくとることができる。
【0012】
さらに、アンテナを構成する給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれた部分からなっている。そのため、形状が半円形状をさらに略半分にした形状となっている。そのため、アンテナを上記で説明した従来のアンテナの半分の大きさにすることができる。従って、アンテナを小型化することができる。
【0013】
さらに、このように小型化しても、上記基板の端部に近づくにつれて上記接地電極と上記給電体との距離が離れるように、上記接地電極に対して上記切り欠き部分における上記1本の直線あるいは上記凸をなす円弧を対向させているため、広帯域のVSWR特性を図ることができる。さらに、給電体を基板の端部に設けることにより、さらなるVSWR特性の広帯域化を図ることができることを本発明者らは鋭意検討の結果見出した。
【0014】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電体は、平板状の誘電体にて覆われていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、給電体は平板状の誘電体にて覆われている。従って、この誘電体は、波長短縮効果と呼ばれる、仮想的にアンテナの大きさが実際の大きさよりも大きいアンテナと同等の機能を有するような効果を奏する。そのため、アンテナのサイズを大きくすることなく、広帯域のVSWR特性を得ることができる。
【0016】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記角をなす2辺のうち、一方の辺に給電用の給電端子が、上記誘電体の外部に設けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電端子は、上記誘電体の平面に直交して突出しており、該突出している部分が、L字状に折れ曲がっていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、上記給電端子は、上記誘電体の平面に直交して突出しており、該突出している部分が、L字状に折れ曲がっている。そのため、誘電体を容易に基板に取り付けることができる。
【0019】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電端子が設けられている上記一方の辺と対向する辺の両脇に1つずつ、固定用の固定端子が、上記誘電体の外部に設けられていることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、上記給電端子が設けられている上記一方の辺と対向する辺の両脇に1つずつ、固定用の固定端子が、上記誘電体の外部に設けられている。そのため、安定して給電体を基板に取り付けることができる。
【0021】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記固定端子は、上記給電端子と同じ方向および同じ高さ突出している部分を有しており、L字状に折れ曲がっていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、上記固定端子は、上記給電端子と同じ方向および同じ高さ突出している部分を有しており、L字状に折れ曲がっているため、基板に容易に誘電体を取り付けることができる。
【0023】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記誘電体における上記切り欠き部分に相当する部分に、上記突出している部分と同じ方向および同じ高さ突出した突出部が設けられていることが好ましい。
【0024】
固定端子は、上記のように、1辺の両脇に設けられているが、給電端子が設けられている辺は切り欠き部分を有しているため、切り欠き部分を避けて給電端子を設けることになる。そのため、アンテナを基板に取り付ける際に、3点は突出している一方、切り欠き部分は突出しておらず、アンテナが基板に対してがたつき、不安定な設置方法となる。これに対して、上記構成によれば、誘電体における上記切り欠き部分に相当する部分に、上記突出している部分と同じ方向および同じ高さ突出した突出部が設けられている。そのため、がたつくことなく、安定してアンテナを基板に取り付けることができる。
【0025】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電端子は、上記給電体の平面と平行に延びていることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、給電端子が給電体の平面と平行に延びている。このため、アンテナを基板に対して垂直に配置させることができる。そのため、指向性の幅を広げることができると共に、給電端子をスルーホール端子として用いることができる。
【0027】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電体と上記誘電体とはインサート成形にて互いに一体成形されていることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、上記給電体と上記誘電体とはインサート成形にて互いに一体成形されている。そのため、容易にアンテナを製造することができるため、アンテナの量産性を高めることができる。
【0029】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記誘電体は、高誘電率樹脂、または、高誘電率セラミックからなることが好ましい。
【0030】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記給電体は、平板状の支持部材の両面に設けられており、この両面に設けられている給電体は互いに繋がっていることが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、上記給電体は、平板状の支持部材の両面に設けられており、この両面に設けられている給電体は互いに繋がっている。このように、給電体は平板状の支持部材の両面に設けられているため、1つの給電体を用意すれば、基板の両端のいずれにも取り付けることができる。また、両面に設けられている給電体は互いに繋がっているため、基板に対して平行に取り付け可能であるだけでなく、基板に対して垂直に取り付けることも可能であり、所望の指向性に合わせたアンテナを得ることができる。
【0032】
また、本発明の広帯域アンテナでは、上記支持部材は、誘電体からなることが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、支持部材は、誘電体からなっている。そのため、波長短縮効果により、アンテナの小型化を図ることができる。
【0034】
また、本発明の広帯域アンテナ搭載基板では、上記のいずれかに記載の広帯域アンテナが搭載されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の広帯域アンテナは、以上のように、給電体を有する広帯域アンテナであって、上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっている。
【0036】
また、本発明の広帯域アンテナは、以上のように、接地電極を有する基板に取り付けられる、給電体を有する広帯域アンテナであって、上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっており、上記給電体は、上記基板の端部側に、上記基板の端部に近づくにつれて上記接地電極と上記給電体との距離が離れるように、上記接地電極に対して上記切り欠き部分における上記1本の直線あるいは上記凸をなす円弧を対向させて、設けられている。
【0037】
従って、広帯域アンテナの小型化を図ることができ、さらに、グランドパターン(接地電極)の形状を変えることなく、かつ、搭載する電子部品のスペースを広くとりつつ、VSWRの広帯域化を図ることができる広帯域アンテナを提供することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
【0039】
図3は、本実施の形態のアンテナ搭載基板を示す斜視図である。このアンテナ搭載基板は、図3に示すように、基板10と、この基板(広帯域アンテナ搭載基板)10上に設けられたアンテナ(広帯域アンテナ)1およびグランドパターン(接地電極)11とを有している。なお、このアンテナ搭載基板は、さらに、図示しない高周波電源および図示しない給電線を備えている。基板10は、アンテナ1およびグランドパターン11の基台としての役割を有しており、FR−4、テフロン(登録商標)などを素材とする樹脂基板からなっている。グランドパターン11は、アンテナ1の機能を担保する役割を有している。
【0040】
図2は、アンテナ1の概略構成を示す斜視図である。アンテナ1は、同図に示すように、チップ形状(平板形状)のアンテナ、すなわち、チップアンテナである。このチップアンテナは、モノポールアンテナに比して、低背化および小型化を図ることができる。また、アンテナ1は、同図に示すように、後述する誘電体としての誘電体基板3によって、平板状の外形が形成されている。
【0041】
図1は、図2に示したアンテナ1の概略構成を示す透視図である。アンテナ1は、同図に示すように、給電導体2と、高誘電率用樹脂または高誘電率セラミックなどから成る誘電体基板3とを備えている。
【0042】
給電導体2は、グランドパターン11と一体となってアンテナ機能を果たしており、給電電極部(給電体;扇形放射素子部;放射電極部)4と、固定用表面実装端子部(固定端子;固定端子部)5と、給電用表面実装端子部(給電端子;給電端子部)6とを備えている。給電導体2は、図1に示すように、誘電体基板3にて挟持された構成となっている。そして、給電導体2のうち、給電電極部4は、誘電体基板3にて被覆されている(覆われている)一方、固定端子部5および給電端子部6は、誘電体基板3の外部に露出している。
【0043】
給電電極部4は、導体(例えば、金属材料)からなる平板電極である。この給電電極部4の形状は、短辺と長辺との2組(2対)の対向辺を有する、長方形形状の平板の一隅(一角)を外側に膨らむように(湾曲して)切り欠いた形状となっている(この湾曲部を切り欠き部15という)。つまり、給電電極部4の平面形状は、3つの矩形角と、1つの湾曲して膨らんだ角とを有している。但し、ここでは、切り欠き部15は、湾曲しているが一直線であってもよい。また、上記で長方形状の平板とあるが、長方形状に限らず、正方形状であってもよい。
【0044】
さらに換言すれば、給電電極部4は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっている。
【0045】
固定端子部5は、導体(例えば、金属材料)からなる平板電極であり、アンテナ1を基板10に固定する役割を有している。固定端子部5は、長方形形状の給電電極部4の切り欠き部15を有さない方の短辺の両脇に、誘電体基板3の外部に、誘電体基板3の長手方向へ突き出て設けられている。
【0046】
固定端子部5は、アンテナ1を表面実装させやすいように、屈曲した構造(ここでは例えば、L字型に折れ曲がった構造)となっていることが好ましい。より具体的には、固定端子部5は、誘電体基板3の平面に直交して突出しており、該突出している部分が、L字状に折れ曲がっていることが好ましい。本実施の形態では、固定端子部5は、誘電体基板3に対して外側へ曲がっているが、これに限られず、誘電体基板3に対して内側へ曲がっていてもよい。
【0047】
固定端子部5を屈曲した構造とすることにより、アンテナ1を基板10に表面実装させやすくなり、アンテナ搭載基板(図3)の量産性を向上させることができる。しかしながら、アンテナ1を基板10に表面実装させることができるものであれば、固定端子部5の構造は、屈曲した構造に限らず、何でもよい。さらに言えば、アンテナ1を基板10に実装する手段は、固定端子部5に限らず、他の手段でもよい。
【0048】
給電端子部6は、導体(例えば、金属材料)からなる平板状の電極であり、アンテナ1を基板10に固定する役割と、図示しない給電線を通してアンテナ1に給電(電力を供給)する役割とを有している。給電端子部6は、長方形状の給電電極部4のうち、切り欠き部15を有する方の短辺に、誘電体基板3の外部に、誘電体基板3の長手方向へ突き出て設けられている。この給電端子部6は、上記の固定端子部5と同様に、屈曲した構造となっている。すなわち、給電端子部6は、固定端子部5と同じ方向および同じ高さ突出している部分を有しており、誘電体基板3から離れる方へL字状に折れ曲がっていることが好ましい。しかしながら、給電端子部6は、上記の固定端子部5と同様に、必ずしも屈曲した構造に限られない。
【0049】
誘電体基板3は、波長短縮効果によりアンテナの小型化を図る機能を有している。但し、誘電体基板3は、必須の構成要素ではなく、誘電体基板3が設けられていないアンテナ1も本実施の形態の技術的範囲に含まれる。
【0050】
また、誘電体基板3は、例えば樹脂からなることが好ましい。この樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂(EP)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、フェノール樹脂(PF)などを用いることができる。また、誘電体基板3としては、高誘電率樹脂または高誘電率セラミックからなることが好ましい。
【0051】
また、上記のPPSやLCPは、耐熱性、寸法安定性、および成形加工特性に優れている。また、誘電体基板3の比誘電率を5〜20の範囲に設定することが可能である。
【0052】
なお、誘電体基板3の4角のうちの1角には、突起部9が設けられている(図1・図2・図7参照)が、この突起部9の機能などについては、後に詳述する。
【0053】
次に、アンテナ1の製造方法について図4(a)〜(f)を用いて説明する。アンテナ1は、インサート成形によって、製造することが好ましい。ここで、インサート成形とは、金型を用いて、この金型内に、材料を注入して、一体成形する方法である。但し、アンテナ1を製造する方法は、インサート成形に限らず、例えば押出成形・射出成形などであってもよい。
【0054】
このインサート成形によるアンテナ1の製造は、チップの形状をなした金型を用いて、給電導体2と誘電体基板3とを一体成形することにより行なう。この金型には、図4(a)に示すように、3つの端子位置決め部(窪み部)19が設けられている。このような端子位置決め部19を設けることにより、固定端子部5および給電端子部6と、給電電極部4との位置合せをすることができる。つまり、端子位置決め部19は、給電導体2の位置決めを行なう役割を有している。
【0055】
なお、このような端子位置決め部19は、上記のような窪み部に限らず、例えば、所定の位置に棒状の突起部が形成されており、この突起部に固定端子部5および給電端子部6を給電電極部4とを接触させることによって、固定端子部5および給電端子部6と、給電電極部4とを位置合わせさせるものであってもよい。
【0056】
このように、金型18には、端子位置決め部19が設けられているため、図4(b)に示すように、給電導体2を金型18の正確な位置に設置することができ、給電導体2と誘電体基板3とを精度よく一体成形することができる。
【0057】
金型18に給電導体2を位置決めした後、図4(c)に示すように、2つの金型18によって、給電導体2を両側から挟む。そして、金型18に設けられた図示しない注入口から誘電体基板3の誘電体材料を注入し、誘電体基板3と給電導体2とを一体化する。
【0058】
これにより、図4(d)に分解斜視図にて示すように、給電導体2と誘電体基板3とが一体成形される。そして、図4(e)に示すように、固定端子部5および給電端子部6が所望の長さになるようにカットする。最後に、図4(f)に示すように、固定端子部5および給電端子部6を屈曲させる。なお、固定端子部5および給電端子部6は、所望の長さにカットした後に、屈曲させて、その後に、図4(a)〜図4(c)に示すプロセスを行なってもよい。
【0059】
次に本発明の最重要部分である、アンテナ1の構成、および基板10におけるアンテナ1の位置などについて説明する。
【0060】
本実施の形態のアンテナ1は、特に、基板10の端部側に設けられており、基板10の端部側に給電電極部4の切り欠き部15が設けられている一方、基板10の中央側は矩形状になっており、かつ、切り欠き部15は基板10の端部に近づくにつれてグランドパターン11と給電電極部4との距離が離れるようになっている。上記構成によれば、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の広帯域化を図ることができることを本発明者は見出した。このようにVSRWの広帯域化を図ることができる理由については後に実験データを用いて説明する。
【0061】
さらに、給電電極部4に切り欠き部15を設けているため、従来の半円状の給電電極部4に比して、給電電極部4の小型化(アンテナ1の小型化)を図ることができる。
【0062】
また、グランドパターン11については、何らその構造を変えることなくVSWRの広帯域化を図ることができるので、アンテナを購入したグランドメーカーにグランドパターンの設計を強いることもない。
【0063】
さらに、グランドパターン11の構造を変える必要がないため、グランドパターン11の面積を広くとることができる。グランドパターン11の面積を広くとることができれば、より多くの電子部品(不図示)をグランドパターン11の上に搭載することができる。なお、グランドパターン11の無い場所に電子部品(不図示)を搭載すると、アンテナ特性に悪影響を与えてしまうという問題があり、本実施の形態のアンテナ搭載基板によれば、このような問題を解決することができる。
【0064】
上記したようにアンテナ1を基板10の端に設けると共に、基板10の端部側に給電電極部4の切り欠き部15が設けられている一方、基板10の中央側は矩形状になっており、かつ、基板10の端部に近づくにつれてグランドパターン11と給電電極部4との距離が離れる(大きくなる)ように設けた場合に、VSWRの広帯域化が図れることを、本発明者が鋭意検討の結果見出した。この実験データについて説明する。
【0065】
この実験では、図5に示すように、サイズを10×5×1(mm)としたアンテナ1と、サイズを10×10×1(mm)としたアンテナ1の2通りのアンテナ1を用い、それぞれのアンテナ1を基板10の中央(中心)に配置した場合と、基板10の端に配置した場合とにおけるVSWR特性を調べた。なお、図5では、いずれも基板10の端部側に給電電極部4の切り欠き部15が設けられている一方、基板10の中央側は矩形状になっており、かつ、切り欠き部15は基板10の端部に近づくにつれてグランドパターン11と給電電極部4との距離が離れるようになっている。
【0066】
また、同図において、波形(a)はサイズが10×5×1(mm)で基板10の端に配置したアンテナ1のVSWR特性を示しており、波形(b)はサイズが10×5×1(mm)で基板10の中央に配置したアンテナ1のVSWR特性を示しており、波形(c)はサイズが10×10×1(mm)で基板10の中央に配置したアンテナ1のVSWR特性を示しており、波形(d)はサイズが10×10×1(mm)で基板10の端に配置したアンテナ1のVSWR特性を示している。
【0067】
波形(a)と波形(b)とを比較すると、同図から分かるように、VSWRが3以下における周波数帯域は、波形(a)の方が広くなっている。特に、周波数が7(GHz)〜8(GHz)では、波形(a)ではVSWRが3以下になっているのに対して、波形(b)では、VSWRが3以上となっている。従って、サイズが10×5×1(mm)のアンテナ1では、基板10の端に配置した方(波形(a)の方)が広帯域化を図ることができることがわかる。
【0068】
次に、波形(c)と波形(d)とを比較すると、同図から分かるように、VSWRが3以下の周波数帯域は、波形(d)の方が広くなっている。特に、周波数が7(GHz)〜9(GHz)では、波形(d)の方が波形(c)に比してVSWRが小さくなっている。従って、サイズが10×10×1(mm)のアンテナ1では、基板10の端に配置した方(波形(d)の方)が広帯域化を図ることができる。
【0069】
図6(a)〜(d)に本実施の形態のアンテナ1を基板に取り付けた後、水平に回転させて指向性の指標となる遠方界面放射特性利得を測定した結果を示す。なお、図6(b)〜(d)において円周部分に示された0、90、180、270は、アンテナ1を基板に取り付けた後、水平に回転させたときの回転角を示す。ここで、回転角はアンテナ1の基板に取り付けた後の正面方向と遠方界放射特性利得の測定装置(不図示)との位置関係を表している。
【0070】
すなわち、今回の例では、Z軸を回転させるとき(z)は、X−Y面上のX軸上が、回転の始めの地点0度であり、ここからY軸の矢印方向に測定装置を回転させて、90度回転させたときがY軸に相当する。また、円の半径に示される数値は遠方界放射特性利得を示している。また、図6(b)〜(d)において、V偏波は太線で、H偏波を細線にて示している。周波数は、3.1GHz(図6(b))、4GHz(図6(c))、4.9GHz(図6(d))について測定している。
【0071】
同図から分かるように、本実施の形態のアンテナ1では、H(水平)偏波において、高い周波数利得が得られていることが分かる。
【0072】
図7は、図2に示すアンテナ1を背面から見た斜視図である。
【0073】
固定端子部5および給電端子部6は、同図に示すように、基板10(図3)にアンテナ1を固定するために、誘電体基板3面よりも突き出ている。これに対して、給電導体2の切り欠かれている部分に対応する誘電体基板3の部分には、固定端子部5や給電端子部6などの端子が設けられていないため、突き出た部分を有していない。そのため、アンテナ1を基板10に取り付けた際には、3点止めになり、アンテナ1ががたつき、アンテナ1の基板10への設置が不安定になってしまう。
【0074】
これを防止するために、図7に示すように、誘電体基板3における給電導体2の切り欠き部に相当する部分に、固定端子部5および給電端子部6と同じ高さまで突き出た突起部9を設けることが好ましい。これにより、アンテナ1を基板10に取り付けた際にアンテナ1が基板10に対してがたついて不安定な設置になることを防止することができる。
【0075】
〔実施の形態2〕
次に別の実施の形態のアンテナについて説明する。本実施の形態では、上記実施の形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施の形態1で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0076】
上記実施の形態1では、アンテナ1表面のうち、表面積の最も大きい面を基板10面に対向させて、アンテナ1を基板10に取り付けていた。つまり、アンテナ1を基板10に対して平行に配置していた。そのため上記では、給電端子部6は、アンテナ1を基板10に平面実装させやすいように、屈曲して構成されていた。
【0077】
しかしながら、これに限らず、本実施の形態のように、給電端子部6が設けられている面(給電端子6が突き出ている面)を基板10面に対向させて、アンテナ1を基板10に取り付けてもよい。つまり、アンテナ1を基板10に垂直に配置してもよい。この場合、図8に示すように、給電端子部6を屈曲させずに、ストレートにすることが好ましい。これにより、図9に示すように、ストレートの給電端子部6を基板10に突き刺すだけでよいので、アンテナ1をスルーホール端子として用いることもでき、かつ、基板10に対して垂直に配置させることが容易になる。
【0078】
このように、アンテナ1を基板10に対して垂直に配置させた場合にも、図9に示すように、上記実施の形態1と同様に、アンテナ1は基板10の端部に設けられており、基板10の端部側に給電電極部4の切り欠き部15が設けられている一方、基板10の中央側は矩形状になっており、かつ、この切り欠き部15は基板10の端に近づくにつれてグランドパターン11と給電電極部4との距離が離れるようになっている。そのため、上記実施の形態1と同様に、VSWRの広帯域化を図ることができる。
【0079】
また、アンテナ1を基板10に対して垂直に配置した場合、アンテナ1の指向性のパターンが変化し、V偏波(垂直偏波)を改善することができる。この点について、図10(a)〜(d)を用いて説明する。
【0080】
図10(a)〜(d)に本実施の形態のアンテナ1を基板に取り付けた後、水平に回転させて指向性の指標となる遠方界面放射特性利得を測定した結果を示す。なお、図10(b)〜(d)において円周部分に示された0、90、180、270は、アンテナ1を基板に取り付けた後、水平に回転させたときの回転角を示す。ここで、回転角はアンテナ1の基板に取り付けた後の正面方向と遠方界放射特性利得の測定装置(不図示)との位置関係を表している。
【0081】
すなわち、今回の例では、Z軸を回転させるとき(z)は、X−Y面上のX軸上が、回転の始めの地点0度であり、ここからY軸の矢印方向に測定装置を回転させて、90度回転させたときがY軸に相当する。また、円の半径に示される数値は遠方界放射特性利得を示している。また、図10(b)〜(d)において、V偏波は太線で、H偏波を細線にて示している。周波数は、3.1GHz(図10(b))、4GHz(図10(c))、4.9GHz(図10(d))について測定している。
【0082】
同図から分かる通り、本実施の形態のアンテナ1ではV(垂直)偏波において、高い周波数利得が得られていることが分かる。
【0083】
なお、本実施の形態では、アンテナ1の給電端子部6を基板10に対向させて、アンテナ1を基板10に対して垂直に設置しているため、上記の実施の形態1に示すような固定端子部5は不要である。そのため、コストを削減できると共に、アンテナ1の量産性を高めることができる。さらに、例えば上記実施の形態1における固定端子部5を収納自在とすることにより、アンテナ1の基板10に対する取り付け方向を切り替える(実施の形態1と本実施の形態とを切り替える)構成としてもよい。これにより、所望の指向性に合わせてアンテナ1を用いることができる。
【0084】
本実施の形態のアンテナ1も上記の実施の形態1と同様に、金型18(図4(a)〜(f)参照)を用いたインサート成形にて製造することができる。但し、本実施の形態のアンテナは、固定端子部5が不要であるため、金型18における端子位置決め部19は、1つでよい。
【0085】
〔実施の形態3〕
さらに、別の実施の形態のアンテナについて説明する。本実施の形態では、上記実施の形態1および実施の形態2との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施の形態1および実施の形態2で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0086】
上記いずれの実施の形態でも、給電導体2は、誘電体基板3にて挟持されていた。しかしながら、この構成に限らず、図11に示すように、誘電体基板(支持部材)21の表面に給電導体2を設けてもよい。なお、ここでは支持部材として誘電体基板21としたが、本実施の形態では、必ずしも支持部材は誘電性を有する必要はなく給電導体2の給電電極部4を支持することができるものであれば、何でもよい。但し、誘電体基板21が誘電体樹脂からなることが好ましい。誘電体基板21が誘電体樹脂から成っていれば、波長短縮効果によりアンテナサイズを小さくできる。
【0087】
より具体的には、チップ形状(平板状)の誘電体基板21の両面に上記の給電電極部4と同様の形状(湾曲した切り欠き部15を有する形状)の給電電極部(放射電極)4を設けることが好ましい。この誘電体基板21の両面に設けられた給電電極部4は、誘電体基板21の上面および下面にて接続されている(繋がっている)ことが好ましい。
【0088】
本実施の形態のアンテナ1は、上記の実施の形態とは異なり、インサート成形ではなく、いわゆるMID(Molded Interconnection Device)方法にて、誘電体基板21に給電導体2を貼り付けて製造することができる。なお、MID方法とは、立体成型された、樹脂または、セラミック等の絶縁体上に、銅その他の金属を用いて、電気回路を成型する手法をいう。
【0089】
本実施の形態のアンテナ1を図12(a)(b)に示すように、基板10に対して平行に取り付ける場合には、給電導体2が外側に露出しているため、実施の形態1のような給電端子部6は不要である。そのため、アンテナ1の量産性を高めることができる。
【0090】
また、本実施の形態のアンテナ1は、裏表をひっくり返すことにより、図12(a)(b)に示すように、基板10の両端のいずれにも取り付けることができる。また、誘電体基板3の両面に設けられている給電電極部14は、誘電体基板3の上面および下面にて接続されているので、この接続部分が給電機能を担うため、実施の形態2のように、基板10に対して垂直に取り付けることもできる。つまり、指向性に関しては、上記のいずれの実施の形態よりも汎用性が広い。
【0091】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のチップアンテナは、携帯電話などと通信可能な無線通信カード、携帯内蔵アンテナ、無線LANアンテナ、およびRF−IDアンテナとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態を示すものであり、アンテナの概略構成を示す透視図である。
【図2】図1に示すアンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示すアンテナを搭載したアンテナ搭載基板を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明の実施の形態を示すものであり、アンテナの製造方法を示す図である。
【図5】アンテナのサイズ、および、基板への載置位置を変更した際のVSWR特性を示すグラフである。
【図6】(a)〜(d)は、アンテナの放射特性解析の解析結果を示した図である。
【図7】図2に示すアンテナを背面から見た斜視図である。
【図8】本発明の別の実施の形態のアンテナを示す透視図である。
【図9】図8に示すアンテナを搭載したアンテナ搭載基板を示す斜視図である。
【図10】(a)〜(d)は、アンテナの放射特性解析の解析結果を示した図である。
【図11】本発明のさらに別の実施の形態のアンテナを示す斜視図である。
【図12】(a)(b)は、図11に示すアンテナを搭載したアンテナ搭載基板を示す斜視図である。
【図13】従来のアンテナを示す説明図である。
【図14】従来のアンテナを示す説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 アンテナ(広帯域アンテナ)
3 誘電体基板(誘電体)
4 給電電極部(給電体)
5 固定端子部(固定端子)
6 給電端子部(給電端子)
9 突起部
10 基板(広帯域アンテナ搭載基板)
11 グランドパターン(接地電極)
15 切り欠き部(切り欠き部分)
21 誘電体基板(支持部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電体を有する広帯域アンテナであって、
上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなることを特徴とする広帯域アンテナ。
【請求項2】
接地電極を有する基板に取り付けられる、給電体を有する広帯域アンテナであって、
上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっており、
上記給電体は、上記基板の端部側に、上記基板の端部に近づくにつれて上記接地電極と上記給電体との距離が離れるように、上記接地電極に対して上記切り欠き部分における上記1本の直線あるいは上記凸をなす円弧を対向させて、設けられていることを特徴とする広帯域アンテナ。
【請求項3】
上記給電体は、平板状の誘電体にて覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の広帯域アンテナ。
【請求項4】
上記角をなす2辺のうち、一方の辺に給電用の給電端子が、上記誘電体の外部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の広帯域アンテナ。
【請求項5】
上記給電端子は、上記誘電体の平面に直交して突出しており、該突出している部分が、L字状に折れ曲がっていることを特徴とする請求項4に記載の広帯域アンテナ。
【請求項6】
上記給電端子が設けられている上記一方の辺と対向する辺の両脇に1つずつ、固定用の固定端子が、上記誘電体の外部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の広帯域アンテナ。
【請求項7】
上記固定端子は、上記給電端子と同じ方向および同じ高さ突出している部分を有しており、L字状に折れ曲がっていることを特徴とする請求項6に記載の広帯域アンテナ。
【請求項8】
上記誘電体における上記切り欠き部分に相当する部分に、上記突出している部分と同じ方向および同じ高さ突出した突出部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の広帯域アンテナ。
【請求項9】
上記給電端子は、上記給電体の平面と平行に延びていることを特徴とする請求項4に記載の広帯域アンテナ。
【請求項10】
上記給電体と上記誘電体とはインサート成形にて互いに一体成形されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の広帯域アンテナ。
【請求項11】
上記誘電体は、高誘電率樹脂、または、高誘電率セラミックからなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の広帯域アンテナ。
【請求項12】
上記給電体は、平板状の支持部材の両面に設けられており、この両面に設けられている給電体は互いに繋がっていることを特徴とする請求項1または2に記載の広帯域アンテナ。
【請求項13】
上記支持部材は、誘電体からなることを特徴とする請求項12に記載の広帯域アンテナ。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の広帯域アンテナが搭載されていることを特徴とするアンテナ搭載基板。
【請求項1】
給電体を有する広帯域アンテナであって、
上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなることを特徴とする広帯域アンテナ。
【請求項2】
接地電極を有する基板に取り付けられる、給電体を有する広帯域アンテナであって、
上記給電体は、導電性の平板からなり、該平板は矩形の1角が切り欠かれ、該切り欠き部分が、角をなす2辺とこれら2辺を結ぶ1本の直線あるいはこれら2辺を結ぶ内側に凸をなす円弧とにより囲まれる部分からなっており、
上記給電体は、上記基板の端部側に、上記基板の端部に近づくにつれて上記接地電極と上記給電体との距離が離れるように、上記接地電極に対して上記切り欠き部分における上記1本の直線あるいは上記凸をなす円弧を対向させて、設けられていることを特徴とする広帯域アンテナ。
【請求項3】
上記給電体は、平板状の誘電体にて覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の広帯域アンテナ。
【請求項4】
上記角をなす2辺のうち、一方の辺に給電用の給電端子が、上記誘電体の外部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の広帯域アンテナ。
【請求項5】
上記給電端子は、上記誘電体の平面に直交して突出しており、該突出している部分が、L字状に折れ曲がっていることを特徴とする請求項4に記載の広帯域アンテナ。
【請求項6】
上記給電端子が設けられている上記一方の辺と対向する辺の両脇に1つずつ、固定用の固定端子が、上記誘電体の外部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の広帯域アンテナ。
【請求項7】
上記固定端子は、上記給電端子と同じ方向および同じ高さ突出している部分を有しており、L字状に折れ曲がっていることを特徴とする請求項6に記載の広帯域アンテナ。
【請求項8】
上記誘電体における上記切り欠き部分に相当する部分に、上記突出している部分と同じ方向および同じ高さ突出した突出部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の広帯域アンテナ。
【請求項9】
上記給電端子は、上記給電体の平面と平行に延びていることを特徴とする請求項4に記載の広帯域アンテナ。
【請求項10】
上記給電体と上記誘電体とはインサート成形にて互いに一体成形されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の広帯域アンテナ。
【請求項11】
上記誘電体は、高誘電率樹脂、または、高誘電率セラミックからなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の広帯域アンテナ。
【請求項12】
上記給電体は、平板状の支持部材の両面に設けられており、この両面に設けられている給電体は互いに繋がっていることを特徴とする請求項1または2に記載の広帯域アンテナ。
【請求項13】
上記支持部材は、誘電体からなることを特徴とする請求項12に記載の広帯域アンテナ。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の広帯域アンテナが搭載されていることを特徴とするアンテナ搭載基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−27894(P2007−27894A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203539(P2005−203539)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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