床タイル及びその製造方法
【課題】靴履にて歩行が行われる場合でも滑りにくく、汚れが付きにくい床タイルと、その製造方法を提供する。
【解決手段】タイル素地1と、この素地1の表面に設けられた釉層2と、この釉層2の表面に散点状に設けられた滑り止め用凸部3とを有する。釉層2の表面は表面が研磨されている。凸部3の高さtは0.1〜1mmであり、凸部3の基底部の面積は、1個当り0.28〜50mm2である。隣接する直近の凸部3同士の距離Lは1〜10mmである。凸部3の配置密度は1〜100個/cm2である。釉層2を設けない無釉タイルであってもよく、その場合はタイル素地1Aの表面を研磨して凸部3を設ける。
【解決手段】タイル素地1と、この素地1の表面に設けられた釉層2と、この釉層2の表面に散点状に設けられた滑り止め用凸部3とを有する。釉層2の表面は表面が研磨されている。凸部3の高さtは0.1〜1mmであり、凸部3の基底部の面積は、1個当り0.28〜50mm2である。隣接する直近の凸部3同士の距離Lは1〜10mmである。凸部3の配置密度は1〜100個/cm2である。釉層2を設けない無釉タイルであってもよく、その場合はタイル素地1Aの表面を研磨して凸部3を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り止め用の凸部を有した床タイルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
滑り止めを目的として凸部を表面に設けた床タイルとしては、下記特許文献1〜4に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1(特開平5−105559)に記載の滑り止めタイルは、第2図に示したように、タイル素地4の表面に釉層5が形成されると共に、この釉層5の表面から粒径50〜300μmの硬質粒子6の一部を突出させたものである。この硬質粒子はアルミナ、ジルコン等よりなり、タイル表面の1cm2当り10〜40個配置される。この滑り止めタイルは、生の又は仮焼された素地の表面に釉掛けし、次いで硬質粒子を散布し、焼成して素地を焼結させると共に、釉を素地に融着させ、且つ、硬質粒子の下半側を釉層内に没入させるようにして製造される。
【0004】
特許文献2(特開昭53−78629)の第2頁左下欄第1行〜右下欄第5行にも同様の微小突出部を有した滑り止めタイルの製造方法が記載されている。特に、この特許文献2の第2頁左下欄15〜16行には、第3図の通り、素地7と、該素地7上の第1釉層9aと、該第1釉層9a上の硬質粒子8と、該硬質粒子8を覆うように設けられた第2釉層9bとを有した滑り止めタイルが記載されている。この硬質粒子8を存在させることにより、第2釉層9bの表面に微小突出部が形成される。
【0005】
特許文献2の第3頁左下欄第5行には、微小突出部の突出高さは0.1〜0.7mmと記載されている。
【0006】
なお、この特許文献2の第5図には、微小突出部によって模様を描くことが記載されている。
【0007】
特許文献3(特開昭61−242256)には、第4図の通り、タイル素地10と、その上の凹凸状模様11と、これを覆うマット釉12とを有した滑り止めタイルが記載されている。特許文献3の第2頁左下欄4〜5行には、凹凸の高さは0.3mm以上、好ましくは0.5〜2.0mmと記載されている。
【0008】
特許文献4(特開2000−109384)には、第5図のように、タイル本体13の表面の釉薬層14の上に微小な凹凸15をインクによって設けることが記載されている。特許文献4の0004段落には、凹凸の高さは30〜100μm、間隔は200〜400μmと記載されている。
【特許文献1】特開平5−105559
【特許文献2】特開昭53−78629
【特許文献3】特開昭61−242256
【特許文献4】特開2000−109384
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
硬質粒子を散布して焼き付けるようにした滑り止め床タイルの場合、硬質粒子同士が凝集し、粒子間に汚れが溜り易い。
【0010】
また、一般に、滑り止め用の凸部を多くすると、滑り止め効果は高くなるが床タイルに汚れが付き易くなる。特に靴を履いて歩行する建物エントランスやロビーなどにあっては、汚れの付着が顕著になり易い。
【0011】
また、表面が研磨された磨きタイルの場合、滑り止め用凸部の数を多くしたり面積を大きくすると、磨き面の美観が低下することになる。
【0012】
本発明は、靴履にて歩行が行われる場合でも滑りにくく且つ汚れが付きにくい床タイルと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の床タイルは、表面に滑り止め用の凸部が設けられた床タイルにおいて、凸部の高さが0.1〜1mm、凸部の基底部の面積が0.28〜50mm2、隣接する直近の凸部同士の平均距離が1〜10mmであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の床タイルは、請求項1において、凸部の配置密度が1〜100個/cm2であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の床タイルは、請求項1又は2において、凸部と、その周囲の床タイル表面とが同系色であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の床タイルは、請求項1ないし3のいずれか1項において、凸部以外の床タイル表面が研磨面となっていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の床タイルは、請求項4において、該床タイルは施釉タイルであり、タイル素地と、該タイル素地の表面に設けられた、表面が研磨された釉層と、該釉層の表面に融着した、該釉層の釉よりも低融点の釉よりなる前記凸部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の床タイルは、請求項4において、該床タイルは施釉していない無釉タイルであり、タイル素地表面が研磨されたタイル素地と、該タイル素地の表面に融着した、融点がタイル素地の焼結温度よりも低い釉よりなる前記凸部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7の床タイルの製造方法は、請求項5の床タイルを製造する方法であって、タイル素地と、該タイル素地に設けられた、表面が研磨された釉層とを有する原タイルを用い、研磨された釉層の表面に、凸部を形成するための釉薬を印刷し、印刷された釉薬を釉層に焼き付けるように焼成することを特徴とするものである。
【0020】
請求項8の床タイルの製造方法は、請求項6の床タイルを製造する方法であって、表面が研磨されたタイル素地よりなる無釉の原タイルを用い、研磨されたタイル素地の表面に、凸部を形成するための釉薬を印刷し、印刷された釉薬をタイル素地に焼き付けるように焼成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の床タイルは、凸部を、相互間の間隔を広めにして設けたものであり、靴を履いて歩行する床面に施工された場合の滑り止め効果が高く、汚れも付きにくい。また、凸部とその周囲の床タイル表面とを同系色とすることにより、凸部も目立たず、美観が良好となる。
【0022】
本発明の床タイルは、凸部以外の表面が研磨面となっている場合に適用するのに好適である。この研磨面は、滑り易いところから、上記のように凸部を設けた場合の効果が大である。
【0023】
本発明の床タイルを表面が研磨された磨きタイルに適用する場合、凸部は、釉薬をこの研磨されたタイル表面に焼き付けることにより形成されたものであることが好ましい。かかるタイルは美感に優れ、また凸部も堅牢であり、耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
第1図(a)は第1の実施の形態に係る床タイルの斜視図、第1図(b)はこの床タイルの拡大断面図である。
【0026】
この床タイルは、タイル素地1と、この素地1の表面に設けられた釉層2と、この釉層2の表面に散点状に設けられた滑り止め用凸部3とを有する。
【0027】
この実施の形態では、釉層2の表面は研磨されており、この表面に釉層2の釉薬よりも融点が低い釉薬よりなる凸部3が融着されている。
【0028】
釉層2の厚さは0.2〜5mm特に0.5〜1.5mm程度が好適である。
【0029】
[第2の実施の形態]
第6図は第2の実施の形態に係る床タイルの拡大断面図である。
【0030】
この床タイルは、タイル素地1Aと、この素地1の表面に散点状に設けられた滑り止め用凸部3とを有する。
【0031】
この実施の形態では、釉層2は設けられておらず、タイル素地1Aの表面は研磨されており、この表面に釉薬よりなる凸部3が融着されている。この場合の釉薬としては、この凸部3を融着させるときの焼成によってタイル素地1Aに収縮が生じさせない程度に融点がタイル素地1Aの焼結温度よりも低いものが用いられる。
【0032】
[凸部3の詳細な説明]
第1及び第2の実施の形態において、凸部3の高さtは0.1〜1mmであり、好ましくは0.2〜0.5mmである。凸部3の基底部の直径dの平均値は0.3〜4mm特に0.5〜2mmが好ましく、この基底部の面積は、1個当り0.28〜50mm2特に0.79〜13mm2程度が好ましい。隣接する直近の凸部3同士の距離(凸部3の中心間の距離)Lの平均値は1〜10mm特に2〜8mmとりわけ3〜5mm程度が好ましい。凸部3の配置密度は1〜100個/cm2特に2〜50個/cm2とりわけ4〜16個/cm2程度が好ましい。
【0033】
凸部3の形状は円形、楕円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形などのいずれでもよいが、等方的であると共に印刷し易いところから円形が好ましい。
【0034】
このように凸部3を釉層2又はタイル素地1Aの磨き面上に設けた床タイルは、磨き面特有の平滑性及び光沢を有し、滑り止め性に優れ、しかも長期にわたって汚れが付きにくい。
【0035】
この床タイルを製造するには、まずタイル用原料を用いて生素地を成形する。
【0036】
タイル素地の原料としては、長石、陶石、粘土などを用いることができる。
【0037】
通常採用される配合の一例を示すと次の通りである。
【0038】
粘土 20〜50重量部
陶石 0〜45重量部
長石 20〜70重量部
【0039】
この素地組成物は、乾式プレスや湿式による押出成形など適宜の方法で成形体(生素地)とされる。成形体の厚さは3〜25mm、一辺の長さは50〜1800mm程度が好ましい。第1の実施の形態(施釉タイル)の場合、この生素地は、施釉前に仮焼されてもよい。
【0040】
第1の実施の形態では、その後、この素地に釉掛けし、乾燥後、焼成し、素地を焼結させると共に、釉層2を形成する。第2の実施の形態では、釉掛けすることなく、乾燥後、焼成してタイル素地1Aの焼結体とする。
【0041】
第1の実施の形態では、釉層2及び凸部3を構成するための釉薬としては、長石、珪砂、炭酸カルシウム、粘土、亜鉛華、ジルコン、アルミナ、ペタライト、硼砂などの釉薬原料を調合してなる各種の一般的な床タイル用の釉薬を用いることができる。釉層2については融点が700〜1300℃特に950〜1200℃程度のものが好ましく、凸部3の釉としては、それよりも融点が100〜700℃特に300〜550℃程度低いものが好ましい。
【0042】
第2の実施の形態では、凸部3を構成する釉薬としては、融点が600〜1050℃特に650〜950℃程度のものが好ましい。
【0043】
次いで、第1の実施の形態では、釉層2の表面を、第2の実施の形態ではタイル素地1Aの表面を研磨装置で研磨する。研磨装置としては湿式研磨装置、乾式研磨装置、バフ型研磨装置、ディスク型研磨装置などを用いることができる。
【0044】
その後、この研磨面にスクリーン印刷、凹版印刷などによって凸部3を形成するための釉薬を印刷する。乾燥後、この釉薬の融点よりも20〜300℃程度高い温度で焼成し、釉薬を融着(焼き付け)して凸部3を形成する。
【0045】
なお、他社で製造された磨き施釉タイル又は磨き無釉タイルを購入し、これに上記のようにして凸部3を形成してもよい。また、他社で製造された磨いてない施釉タイル又は無釉タイルを購入し、これを研磨した後、上記のように凸部3を形成してもよい。
【実施例】
【0046】
実施例1
下記配合の素地を乾式プレス(プレス圧300Kg/cm2)にて厚さ9mm、大きさ150×150mmの板状に成形した。
【0047】
素地配合
粘土 40重量部
長石 50重量部
陶石 10重量部
【0048】
この素地の上に下記組成の釉を乾式重量ベースにて素地表面1cm2当り8gの割合で釉掛けした。
【0049】
釉薬組成
長石 48重量部
珪砂 14重量部
炭酸カルシウム 25重量部
蛙目粘土 7重量部
亜鉛華 2重量部
アルミナ 1重量部
硼砂 3重量部
【0050】
次に、これを乾燥した後、ローラーハースキルンにて1250℃にて焼成した。その後、乾式バフ型研磨装置で釉層の表面を研磨し、厚さ0.8mmの釉層を形成した。
【0051】
この釉層の上に、凸部3を形成するために次の釉薬組成の釉薬スリップをスクリーン印刷にて印刷し、乾燥後、ローラーハースキルンで760℃にて焼成し、本発明の床タイルを製造した。
【0052】
釉薬組成
長石 38重量部
珪砂 19重量部
炭酸カルシウム 8重量部
蛙目粘土 10重量部
硼砂 25重量部
【0053】
この床タイルの凸部3は円形であり、基底部の平均直径は1mm、基底部の平均面積は0.79mm2、凸部3の平均高さは0.34mmである。隣接する直近の凸部3同士の距離Lの平均値は3mmであり、凸部3の配置密度は12.5個/cm2である。なお、凸部3は、第1図(a)の通り、正方形の枡目の交点上に位置するように配列されている。
【0054】
この床タイルは、磨きタイル特有の平滑性及び光沢を有し、美観に優れている。
【0055】
この床タイルの表面の摩擦特性を次のようにして測定した。
【0056】
測定するタイルに水を散布し、紳士靴の踵部分を測定片とし、該タイルに静置し、該測定片に体重80kg相当の荷重を該測定片に対して垂直にかけ、該測定片を一定の速度で水平に引っ張り、このとき水平方向に引っ張るのに要した荷重を測定し、該測定片の垂直方向にかかっている荷重で割った数値を摩擦係数とする。この摩擦係数が大きければ摩擦抵抗が大きく、該タイルは滑りにくく、この摩擦係数が小さければ摩擦抵抗が小さく、該タイルは滑りやすい。
【0057】
この方法で実施例1の床タイルを測定したところ、摩擦係数は0.76であった。
【0058】
実施例2〜6、比較例1〜3
凸部3の大きさ(基底部面積)、高さ、配置密度を表1のように変えた他は実施例1と同様にして床タイルを製造し、表面の摩擦特性を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の通り、本発明の床タイルは、美観が良好であり、しかも靴を履いて歩行する場合の滑り止め特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)は実施の形態に係る床タイルの斜視図、(b)はこの床タイルの拡大断面図である。
【図2】従来の床タイルの断面図である。
【図3】従来の床タイルの断面図である。
【図4】従来の床タイルの断面図である。
【図5】従来の床タイルの断面図である。
【図6】別の実施の形態に係る床タイルの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1,1A タイル素地
2 釉層
3 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り止め用の凸部を有した床タイルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
滑り止めを目的として凸部を表面に設けた床タイルとしては、下記特許文献1〜4に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1(特開平5−105559)に記載の滑り止めタイルは、第2図に示したように、タイル素地4の表面に釉層5が形成されると共に、この釉層5の表面から粒径50〜300μmの硬質粒子6の一部を突出させたものである。この硬質粒子はアルミナ、ジルコン等よりなり、タイル表面の1cm2当り10〜40個配置される。この滑り止めタイルは、生の又は仮焼された素地の表面に釉掛けし、次いで硬質粒子を散布し、焼成して素地を焼結させると共に、釉を素地に融着させ、且つ、硬質粒子の下半側を釉層内に没入させるようにして製造される。
【0004】
特許文献2(特開昭53−78629)の第2頁左下欄第1行〜右下欄第5行にも同様の微小突出部を有した滑り止めタイルの製造方法が記載されている。特に、この特許文献2の第2頁左下欄15〜16行には、第3図の通り、素地7と、該素地7上の第1釉層9aと、該第1釉層9a上の硬質粒子8と、該硬質粒子8を覆うように設けられた第2釉層9bとを有した滑り止めタイルが記載されている。この硬質粒子8を存在させることにより、第2釉層9bの表面に微小突出部が形成される。
【0005】
特許文献2の第3頁左下欄第5行には、微小突出部の突出高さは0.1〜0.7mmと記載されている。
【0006】
なお、この特許文献2の第5図には、微小突出部によって模様を描くことが記載されている。
【0007】
特許文献3(特開昭61−242256)には、第4図の通り、タイル素地10と、その上の凹凸状模様11と、これを覆うマット釉12とを有した滑り止めタイルが記載されている。特許文献3の第2頁左下欄4〜5行には、凹凸の高さは0.3mm以上、好ましくは0.5〜2.0mmと記載されている。
【0008】
特許文献4(特開2000−109384)には、第5図のように、タイル本体13の表面の釉薬層14の上に微小な凹凸15をインクによって設けることが記載されている。特許文献4の0004段落には、凹凸の高さは30〜100μm、間隔は200〜400μmと記載されている。
【特許文献1】特開平5−105559
【特許文献2】特開昭53−78629
【特許文献3】特開昭61−242256
【特許文献4】特開2000−109384
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
硬質粒子を散布して焼き付けるようにした滑り止め床タイルの場合、硬質粒子同士が凝集し、粒子間に汚れが溜り易い。
【0010】
また、一般に、滑り止め用の凸部を多くすると、滑り止め効果は高くなるが床タイルに汚れが付き易くなる。特に靴を履いて歩行する建物エントランスやロビーなどにあっては、汚れの付着が顕著になり易い。
【0011】
また、表面が研磨された磨きタイルの場合、滑り止め用凸部の数を多くしたり面積を大きくすると、磨き面の美観が低下することになる。
【0012】
本発明は、靴履にて歩行が行われる場合でも滑りにくく且つ汚れが付きにくい床タイルと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の床タイルは、表面に滑り止め用の凸部が設けられた床タイルにおいて、凸部の高さが0.1〜1mm、凸部の基底部の面積が0.28〜50mm2、隣接する直近の凸部同士の平均距離が1〜10mmであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の床タイルは、請求項1において、凸部の配置密度が1〜100個/cm2であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の床タイルは、請求項1又は2において、凸部と、その周囲の床タイル表面とが同系色であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の床タイルは、請求項1ないし3のいずれか1項において、凸部以外の床タイル表面が研磨面となっていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の床タイルは、請求項4において、該床タイルは施釉タイルであり、タイル素地と、該タイル素地の表面に設けられた、表面が研磨された釉層と、該釉層の表面に融着した、該釉層の釉よりも低融点の釉よりなる前記凸部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の床タイルは、請求項4において、該床タイルは施釉していない無釉タイルであり、タイル素地表面が研磨されたタイル素地と、該タイル素地の表面に融着した、融点がタイル素地の焼結温度よりも低い釉よりなる前記凸部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7の床タイルの製造方法は、請求項5の床タイルを製造する方法であって、タイル素地と、該タイル素地に設けられた、表面が研磨された釉層とを有する原タイルを用い、研磨された釉層の表面に、凸部を形成するための釉薬を印刷し、印刷された釉薬を釉層に焼き付けるように焼成することを特徴とするものである。
【0020】
請求項8の床タイルの製造方法は、請求項6の床タイルを製造する方法であって、表面が研磨されたタイル素地よりなる無釉の原タイルを用い、研磨されたタイル素地の表面に、凸部を形成するための釉薬を印刷し、印刷された釉薬をタイル素地に焼き付けるように焼成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の床タイルは、凸部を、相互間の間隔を広めにして設けたものであり、靴を履いて歩行する床面に施工された場合の滑り止め効果が高く、汚れも付きにくい。また、凸部とその周囲の床タイル表面とを同系色とすることにより、凸部も目立たず、美観が良好となる。
【0022】
本発明の床タイルは、凸部以外の表面が研磨面となっている場合に適用するのに好適である。この研磨面は、滑り易いところから、上記のように凸部を設けた場合の効果が大である。
【0023】
本発明の床タイルを表面が研磨された磨きタイルに適用する場合、凸部は、釉薬をこの研磨されたタイル表面に焼き付けることにより形成されたものであることが好ましい。かかるタイルは美感に優れ、また凸部も堅牢であり、耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
第1図(a)は第1の実施の形態に係る床タイルの斜視図、第1図(b)はこの床タイルの拡大断面図である。
【0026】
この床タイルは、タイル素地1と、この素地1の表面に設けられた釉層2と、この釉層2の表面に散点状に設けられた滑り止め用凸部3とを有する。
【0027】
この実施の形態では、釉層2の表面は研磨されており、この表面に釉層2の釉薬よりも融点が低い釉薬よりなる凸部3が融着されている。
【0028】
釉層2の厚さは0.2〜5mm特に0.5〜1.5mm程度が好適である。
【0029】
[第2の実施の形態]
第6図は第2の実施の形態に係る床タイルの拡大断面図である。
【0030】
この床タイルは、タイル素地1Aと、この素地1の表面に散点状に設けられた滑り止め用凸部3とを有する。
【0031】
この実施の形態では、釉層2は設けられておらず、タイル素地1Aの表面は研磨されており、この表面に釉薬よりなる凸部3が融着されている。この場合の釉薬としては、この凸部3を融着させるときの焼成によってタイル素地1Aに収縮が生じさせない程度に融点がタイル素地1Aの焼結温度よりも低いものが用いられる。
【0032】
[凸部3の詳細な説明]
第1及び第2の実施の形態において、凸部3の高さtは0.1〜1mmであり、好ましくは0.2〜0.5mmである。凸部3の基底部の直径dの平均値は0.3〜4mm特に0.5〜2mmが好ましく、この基底部の面積は、1個当り0.28〜50mm2特に0.79〜13mm2程度が好ましい。隣接する直近の凸部3同士の距離(凸部3の中心間の距離)Lの平均値は1〜10mm特に2〜8mmとりわけ3〜5mm程度が好ましい。凸部3の配置密度は1〜100個/cm2特に2〜50個/cm2とりわけ4〜16個/cm2程度が好ましい。
【0033】
凸部3の形状は円形、楕円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形などのいずれでもよいが、等方的であると共に印刷し易いところから円形が好ましい。
【0034】
このように凸部3を釉層2又はタイル素地1Aの磨き面上に設けた床タイルは、磨き面特有の平滑性及び光沢を有し、滑り止め性に優れ、しかも長期にわたって汚れが付きにくい。
【0035】
この床タイルを製造するには、まずタイル用原料を用いて生素地を成形する。
【0036】
タイル素地の原料としては、長石、陶石、粘土などを用いることができる。
【0037】
通常採用される配合の一例を示すと次の通りである。
【0038】
粘土 20〜50重量部
陶石 0〜45重量部
長石 20〜70重量部
【0039】
この素地組成物は、乾式プレスや湿式による押出成形など適宜の方法で成形体(生素地)とされる。成形体の厚さは3〜25mm、一辺の長さは50〜1800mm程度が好ましい。第1の実施の形態(施釉タイル)の場合、この生素地は、施釉前に仮焼されてもよい。
【0040】
第1の実施の形態では、その後、この素地に釉掛けし、乾燥後、焼成し、素地を焼結させると共に、釉層2を形成する。第2の実施の形態では、釉掛けすることなく、乾燥後、焼成してタイル素地1Aの焼結体とする。
【0041】
第1の実施の形態では、釉層2及び凸部3を構成するための釉薬としては、長石、珪砂、炭酸カルシウム、粘土、亜鉛華、ジルコン、アルミナ、ペタライト、硼砂などの釉薬原料を調合してなる各種の一般的な床タイル用の釉薬を用いることができる。釉層2については融点が700〜1300℃特に950〜1200℃程度のものが好ましく、凸部3の釉としては、それよりも融点が100〜700℃特に300〜550℃程度低いものが好ましい。
【0042】
第2の実施の形態では、凸部3を構成する釉薬としては、融点が600〜1050℃特に650〜950℃程度のものが好ましい。
【0043】
次いで、第1の実施の形態では、釉層2の表面を、第2の実施の形態ではタイル素地1Aの表面を研磨装置で研磨する。研磨装置としては湿式研磨装置、乾式研磨装置、バフ型研磨装置、ディスク型研磨装置などを用いることができる。
【0044】
その後、この研磨面にスクリーン印刷、凹版印刷などによって凸部3を形成するための釉薬を印刷する。乾燥後、この釉薬の融点よりも20〜300℃程度高い温度で焼成し、釉薬を融着(焼き付け)して凸部3を形成する。
【0045】
なお、他社で製造された磨き施釉タイル又は磨き無釉タイルを購入し、これに上記のようにして凸部3を形成してもよい。また、他社で製造された磨いてない施釉タイル又は無釉タイルを購入し、これを研磨した後、上記のように凸部3を形成してもよい。
【実施例】
【0046】
実施例1
下記配合の素地を乾式プレス(プレス圧300Kg/cm2)にて厚さ9mm、大きさ150×150mmの板状に成形した。
【0047】
素地配合
粘土 40重量部
長石 50重量部
陶石 10重量部
【0048】
この素地の上に下記組成の釉を乾式重量ベースにて素地表面1cm2当り8gの割合で釉掛けした。
【0049】
釉薬組成
長石 48重量部
珪砂 14重量部
炭酸カルシウム 25重量部
蛙目粘土 7重量部
亜鉛華 2重量部
アルミナ 1重量部
硼砂 3重量部
【0050】
次に、これを乾燥した後、ローラーハースキルンにて1250℃にて焼成した。その後、乾式バフ型研磨装置で釉層の表面を研磨し、厚さ0.8mmの釉層を形成した。
【0051】
この釉層の上に、凸部3を形成するために次の釉薬組成の釉薬スリップをスクリーン印刷にて印刷し、乾燥後、ローラーハースキルンで760℃にて焼成し、本発明の床タイルを製造した。
【0052】
釉薬組成
長石 38重量部
珪砂 19重量部
炭酸カルシウム 8重量部
蛙目粘土 10重量部
硼砂 25重量部
【0053】
この床タイルの凸部3は円形であり、基底部の平均直径は1mm、基底部の平均面積は0.79mm2、凸部3の平均高さは0.34mmである。隣接する直近の凸部3同士の距離Lの平均値は3mmであり、凸部3の配置密度は12.5個/cm2である。なお、凸部3は、第1図(a)の通り、正方形の枡目の交点上に位置するように配列されている。
【0054】
この床タイルは、磨きタイル特有の平滑性及び光沢を有し、美観に優れている。
【0055】
この床タイルの表面の摩擦特性を次のようにして測定した。
【0056】
測定するタイルに水を散布し、紳士靴の踵部分を測定片とし、該タイルに静置し、該測定片に体重80kg相当の荷重を該測定片に対して垂直にかけ、該測定片を一定の速度で水平に引っ張り、このとき水平方向に引っ張るのに要した荷重を測定し、該測定片の垂直方向にかかっている荷重で割った数値を摩擦係数とする。この摩擦係数が大きければ摩擦抵抗が大きく、該タイルは滑りにくく、この摩擦係数が小さければ摩擦抵抗が小さく、該タイルは滑りやすい。
【0057】
この方法で実施例1の床タイルを測定したところ、摩擦係数は0.76であった。
【0058】
実施例2〜6、比較例1〜3
凸部3の大きさ(基底部面積)、高さ、配置密度を表1のように変えた他は実施例1と同様にして床タイルを製造し、表面の摩擦特性を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の通り、本発明の床タイルは、美観が良好であり、しかも靴を履いて歩行する場合の滑り止め特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)は実施の形態に係る床タイルの斜視図、(b)はこの床タイルの拡大断面図である。
【図2】従来の床タイルの断面図である。
【図3】従来の床タイルの断面図である。
【図4】従来の床タイルの断面図である。
【図5】従来の床タイルの断面図である。
【図6】別の実施の形態に係る床タイルの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1,1A タイル素地
2 釉層
3 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に滑り止め用の凸部が設けられた床タイルにおいて、凸部の高さが0.1〜1mm、凸部の基底部の面積が0.28〜50mm2、隣接する直近の凸部同士の平均距離が1〜10mmであることを特徴とする床タイル。
【請求項2】
請求項1において、凸部の配置密度が1〜100個/cm2であることを特徴とする床タイル。
【請求項3】
請求項1又は2において、凸部と、その周囲の床タイル表面とが同系色であることを特徴とする床タイル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、凸部以外の床タイル表面が研磨面となっていることを特徴とする床タイル。
【請求項5】
請求項4において、該床タイルは施釉タイルであり、
タイル素地と、該タイル素地の表面に設けられた、表面が研磨された釉層と、該釉層の表面に融着した、該釉層の釉よりも低融点の釉よりなる前記凸部と
を備えてなることを特徴とする床タイル。
【請求項6】
請求項4において、該床タイルは施釉していない無釉タイルであり、
タイル素地表面が研磨されたタイル素地と、該タイル素地の表面に融着した、融点がタイル素地の焼結温度よりも低い釉よりなる前記凸部と
を備えてなることを特徴とする床タイル。
【請求項7】
請求項5の床タイルを製造する方法であって、
タイル素地と、該タイル素地に設けられた、表面が研磨された釉層とを有する原タイルを用い、
研磨された釉層の表面に、凸部を形成するための釉薬を印刷し、
印刷された釉薬を釉層に焼き付けるように焼成する
ことを特徴とする床タイルの製造方法。
【請求項8】
請求項6の床タイルを製造する方法であって、
表面が研磨されたタイル素地よりなる無釉の原タイルを用い、
研磨されたタイル素地の表面に、凸部を形成するための釉薬を印刷し、
印刷された釉薬をタイル素地に焼き付けるように焼成する
ことを特徴とする床タイル製造方法。
【請求項1】
表面に滑り止め用の凸部が設けられた床タイルにおいて、凸部の高さが0.1〜1mm、凸部の基底部の面積が0.28〜50mm2、隣接する直近の凸部同士の平均距離が1〜10mmであることを特徴とする床タイル。
【請求項2】
請求項1において、凸部の配置密度が1〜100個/cm2であることを特徴とする床タイル。
【請求項3】
請求項1又は2において、凸部と、その周囲の床タイル表面とが同系色であることを特徴とする床タイル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、凸部以外の床タイル表面が研磨面となっていることを特徴とする床タイル。
【請求項5】
請求項4において、該床タイルは施釉タイルであり、
タイル素地と、該タイル素地の表面に設けられた、表面が研磨された釉層と、該釉層の表面に融着した、該釉層の釉よりも低融点の釉よりなる前記凸部と
を備えてなることを特徴とする床タイル。
【請求項6】
請求項4において、該床タイルは施釉していない無釉タイルであり、
タイル素地表面が研磨されたタイル素地と、該タイル素地の表面に融着した、融点がタイル素地の焼結温度よりも低い釉よりなる前記凸部と
を備えてなることを特徴とする床タイル。
【請求項7】
請求項5の床タイルを製造する方法であって、
タイル素地と、該タイル素地に設けられた、表面が研磨された釉層とを有する原タイルを用い、
研磨された釉層の表面に、凸部を形成するための釉薬を印刷し、
印刷された釉薬を釉層に焼き付けるように焼成する
ことを特徴とする床タイルの製造方法。
【請求項8】
請求項6の床タイルを製造する方法であって、
表面が研磨されたタイル素地よりなる無釉の原タイルを用い、
研磨されたタイル素地の表面に、凸部を形成するための釉薬を印刷し、
印刷された釉薬をタイル素地に焼き付けるように焼成する
ことを特徴とする床タイル製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−116308(P2010−116308A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292361(P2008−292361)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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