説明

床体荷重試験装置

【課題】 本発明は、実際の住宅での歩行による繰り返し加力に対して床体がどの程度劣化するかの試験を行うことが出来る床体荷重試験装置を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 建物の床体に繰り返しかかる荷重の試験装置1であって、被試験床体2を載置する載置台3と、該載置台3上に載置された被試験床体2の上部に配置され、該被試験床体2に対して繰り返し荷重を付与する荷重付与手段となるエアーシリンダ機構4とを有する構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床体に繰り返しかかる荷重の試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、荷重試験機を固定して小部品を繰り返し加力する装置が一般的であり、例えば、実公昭61−39961号公報に記載されたように、繰り返し衝撃疲労試験装置として衝撃刃を昇降自在に設け、自動車用タイヤのゴムとコードの接着性やゴムの耐カット性、耐チッピング性等の試験を行うもの(特許文献1)や、特開2006−329974号公報に記載されたように、接着剤による鋼床版とコンクリートとの付着強度を引き剥がされる際の圧力を測定するもの(特許文献2)、或いは特開平08−122222号公報に記載されたように、繰り返し落下試験を行うもの(特許文献3)等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】実公昭61−039961号公報
【特許文献2】特開2006−329974号公報
【特許文献3】特開平08−122222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の従来例では、実際の住宅での歩行による繰り返し加力に対して材料単体だけでなく複数の材料が基礎や梁のスパン間に構成される床体がどの程度あるいはどの様に長期間で劣化するかの試験を行うことが出来ないといった問題があった。
【0005】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、実際の住宅での歩行による繰り返し加力に対して床体がどの程度劣化するかの試験を8畳程度の広さで床を構成している部材全体に対して行うことが出来る床体荷重試験装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明に係る床体荷重試験装置の第1の構成は、建物の床体に繰り返しかかる荷重の試験装置であって、被試験床体を載置する載置台と、前記載置台上に載置された被試験床体の上部に配置され、該被試験床体に対して繰り返し荷重を付与する荷重付与手段とを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る床体荷重試験装置の第2の構成は、前記第1の構成において、前記荷重付与手段は、上下方向に繰り返し加力を発揮するエアーシリンダ機構により構成され、前記エアーシリンダ機構による加力は、エアーシリンダのシリンダー速度、加力周期、加力保持時間、荷重のうちの少なくとも何れか1つにより調整されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る床体荷重試験装置の第3の構成は、前記第1、第2の構成において、前記載置台の外側に一対の固定レールが配置され、該固定レールに沿って移動可能に固定される門型フレームが該載置台の上方に配置され、前記荷重付与手段が該門型フレームに設けられた横行レールに沿って移動可能に固定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る床体荷重試験装置の第4の構成は、前記第1〜第3の構成において、前記被試験床体と前記載置台とにより囲まれる該被試験床体の下部空間を温湿調整空間とし、該温湿調整空間内の温度または湿度の少なくとも1つを調整する温湿調整手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被試験床体を自由に配置変更あるいは自由な組み合わせにしたり、層方向についても層構成を自由に組み合わせしたりして、それぞれの所望の被試験物の歩行による耐久試験や、試験される各部材間の接続状況の耐久試験を行い、劣化を予測することができる。
【0011】
本発明に係る床体荷重試験装置の第1の構成によれば、荷重付与手段により被試験床体に対して繰り返し荷重を付与することで、実際の住宅での歩行による繰り返し加力に近いように2点で相互に被試験床体に対して繰り返し加力することが出来る。
【0012】
また、本発明に係る床体荷重試験装置の第2の構成によれば、荷重付与手段として、上下方向に繰り返し加力を発揮するエアーシリンダ機構とし、該エアーシリンダ機構による加力を、エアーシリンダのシリンダー速度、加力周期、加力保持時間、荷重のうちの少なくとも何れか1つにより調整することで種々の歩行状況を想定した床体荷重試験が実施できる。
【0013】
また、本発明に係る床体荷重試験装置の第3の構成によれば、例えば被試験床体を8畳程度の範囲で設置し、固定レールに沿って門型フレームを移動して固定するか、或いは横行レールに沿って荷重付与手段を移動して固定することで、該荷重付与手段による加力点を被試験床体上の所望の位置に移動することが出来る。
【0014】
また、本発明に係る床体荷重試験装置の第4の構成によれば、被試験床体の下部に設けられた温湿調整空間内の温度または湿度を温湿調整手段により調整することで、温度や湿度を加味した床体荷重試験が実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図により本発明に係る床体荷重試験装置の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る床体荷重試験装置の構成を示す斜視説明図、図2は本発明に係る床体荷重試験装置の構成を示す正面図、平面図及び側面図、図3及び図4は各種の被試験床体の構成を示す断面説明図である。
【0016】
図1及び図2において、1は建物の床体に繰り返しかかる荷重の試験装置であり、被試験床体2を載置する載置台3と、該載置台3上に載置された被試験床体2の上部に配置され、該被試験床体2に対して繰り返し荷重を付与する荷重付与手段となる上下方向に繰り返し加力を発揮するエアーシリンダ機構4とを有して構成されている。
【0017】
被試験床体2の面積は、通常の住宅の居室程度の大きさである。載置台3は被試験床体2の周囲だけに限らず、実際の住宅において配置される基礎や梁などの架構位置を想定して設けられる。あるいは、試験の目的によって変更しても良い。
【0018】
通常、床は床仕上げ材、床パネル、断熱材、梁類、基礎類などで構成される。これらを接続するために釘、接着剤、ボルトなどが使用される。さらに床仕上げ材の下に床暖房パネルを設置することがある。本床体荷重試験装置1は、これらの構成を実物大にセットして縦横のいかなる部位にも、表面から加力し、耐久試験を可能にする。
【0019】
エアーシリンダ機構4による加力は、制御盤5を操作することによりエアーシリンダ4aのシリンダー速度、加力周期、加力保持時間、荷重のうちの少なくとも何れか1つにより調整することが出来るように構成されている。
【0020】
また、載置台3の外側には一対の固定レール6が配置され、該固定レール6に沿って移動可能に固定される門型フレーム7が該載置台3の上方に配置され、荷重付与手段となるエアーシリンダ機構4が該門型フレーム7に設けられた横行レール8に沿って移動可能に固定される。
【0021】
固定レール6は設置床面9に固定されており、該固定レール6には門型フレーム7の脚板7aに所定ピッチで設けられた図示しない貫通孔に対応するナット部6aが同じ所定ピッチで固定レール6の下面に取り付けられている。そして、固定レール6の所望の位置に門型フレーム7の脚板7aを載置し、該脚板7aの貫通孔に固定ボルト10を挿通してナット部6aに螺合締結して固定される。尚、固定レール6上の脚板7aが載置されない部位のナット部6aには固定ボルト10が螺合されてナット部6aが閉塞保護される。脚板7aには門型フレーム7を移動するための車輪19が設けられている。
【0022】
門型フレーム7の横行レール8にはエアーシリンダ機構4を搭載したキャリッジ部材11が該横行レール8に沿って移動可能に固定されており、横行モータ16により回転される台形ネジ17の回転に伴って該台形ネジ17に螺合するボールナット部が取り付けられたキャリッジ部材11が横行レール8に沿って移動する。
【0023】
横行レール8にはキャリッジ部材11に所定ピッチで設けられた図示しない貫通孔に対応するナット部が同じ所定ピッチで取り付けられており、横行レール8の所望の位置にキャリッジ部材11を移動し、該キャリッジ部材11の図示しない貫通孔に図示しない固定ボルトを挿通して図示しないナット部に螺合締結して固定される。尚、横行レール8上のキャリッジ部材11が固定されない部位のナット部には図示しない固定ボルトが螺合されてナット部が閉塞保護される。
【0024】
また、図4に示すように、被試験床体2と載置台3とにより囲まれる該被試験床体2の下部空間を断熱材12により閉塞して温湿調整空間13とし、該温湿調整空間13内の温度または湿度の少なくとも1つを温湿調整手段となるエアーコンディショナル装置(以下、「エアコン」という)等により調整することができる。
【0025】
本実施形態のエアーシリンダ機構4は2本のエアーシリンダ4aで交互に人の歩行を擬似的に加力を加えることが出来、加力は2本1組で2セット用意されている。足踏推力すなわち加力は一本当り500N〜2000Nとされ、荷重測定手段となるロードセル14を使用して荷重測定し、荷重表示することが出来る。また、変位測定手段となる変位計15によりエアーシリンダ4aの変位が測定され、ロードセル14、変位計15によりそれぞれ測定された荷重データ、及び変位量データは、図示しない荷重計アンプ、変位計アンプ、更にはAD(アナログ/デジタル)端子台、AD(アナログ/デジタル)ボード等を介してパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)に送られて表示される。
【0026】
エアーコンプレッサーにより圧縮空気が送られて作動するエアーシリンダ4aは直径63mm程度でシリンダーストロークは最大300mmとされ、1試験につき30万回、2000Nで最大300mmストロークでタイマーにより保持時間が0.5秒〜10秒程度に設定できるものを採用している。エアーシリンダ4aの下端には足型や、40mm径の筒にし、ゴムや硬質塩化ビニルなどを取り付ける。
【0027】
図3及び図4は被試験床体2の一例であり、図3では大引20、根太21、床板22からなる木造床パネル18の上部に、樹脂フォーム、ダミーマット、床暖房用寄木合板が順に積層された床体2a、樹脂フォーム、床暖房パネル、床暖房用寄木合板が順に積層された床体2b、樹脂フォーム、フェノール発泡樹脂フォーム、床暖房用寄木合板が順に積層された床体2cが配置されている。
【0028】
また、図4では、木造床パネル18の上部に、樹脂フォーム、ダミーマット、床暖房用寄木合板が順に積層された床体2a、樹脂フォーム、床暖房パネル、床暖房用寄木合板が順に積層された床体2bが交互に配置され、更にフェノール発泡樹脂フォーム、床暖房用寄木合板が順に積層された床体2dが配置されている。尚、図4中23は束である。
【0029】
上記構成によれば、荷重付与手段となるエアーシリンダ機構4により被試験床体2に対して繰り返し荷重を付与することで、実際の住宅での歩行による繰り返し加力に近いように2点で相互に被試験床体2に対して繰り返し加力することが出来る。
【0030】
また、荷重付与手段として、上下方向に繰り返し加力を発揮するエアーシリンダ機構4とし、該エアーシリンダ機構4による加力を、エアーシリンダ4aのシリンダー速度、加力周期、加力保持時間、荷重のうちの少なくとも何れか1つにより調整することで種々の歩行状況を想定した床体荷重試験が実施できる。
【0031】
また、例えば被試験床体2を8畳程度の範囲で設置し、固定レール6に沿って門型フレーム7を移動して固定するか、或いは横行レール8に沿って荷重付与手段となるエアーシリンダ機構4を移動して固定することで、該エアーシリンダ機構4による加力点を被試験床体2上の所望の位置に移動することが出来る。
【0032】
また、被試験床体2の下部に設けられた温湿調整空間13内の温度または湿度を温湿調整手段となるエアコン等により調整することで、温度や湿度を加味した床体荷重試験が実施できる。なお、必要により被試験床体2上部にも温湿度調整空間を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の活用例として、建物の床体に繰り返しかかる荷重の試験装置に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る床体荷重試験装置の構成を示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る床体荷重試験装置の構成を示す正面図、平面図及び側面図である。
【図3】各種の被試験床体の構成を示す断面説明図である。
【図4】各種の被試験床体の構成を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1…床体荷重試験装置
2…被試験床体
2a〜2d…床体
3…載置台
4…エアーシリンダ機構
4a…エアーシリンダ
5…制御盤
6…固定レール
6a…ナット部
7…門型フレーム
7a…脚板
8…横行レール
9…設置床面
10…固定ボルト
11…キャリッジ部材
12…断熱材
13…温湿調整空間
14…ロードセル
15…変位計
16…横行モータ
17…台形ネジ
18…木造床パネル
19…車輪
20…大引
21…根太
22…床板
23…束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床体に繰り返しかかる荷重の試験装置であって、
被試験床体を載置する載置台と、
前記載置台上に載置された被試験床体の上部に配置され、該被試験床体に対して繰り返し荷重を付与する荷重付与手段と、
を有することを特徴とする床体荷重試験装置。
【請求項2】
前記荷重付与手段は、上下方向に繰り返し加力を発揮するエアーシリンダ機構により構成され、
前記エアーシリンダ機構による加力は、エアーシリンダのシリンダー速度、加力周期、加力保持時間、荷重のうちの少なくとも何れか1つにより調整されることを特徴とする請求項1に記載の床体荷重試験装置。
【請求項3】
前記載置台の外側に一対の固定レールが配置され、該固定レールに沿って移動可能に固定される門型フレームが該載置台の上方に配置され、前記荷重付与手段が該門型フレームに設けられた横行レールに沿って移動可能に固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床体荷重試験装置。
【請求項4】
前記被試験床体と前記載置台とにより囲まれる該被試験床体の下部空間を温湿調整空間とし、該温湿調整空間内の温度または湿度の少なくとも1つを調整する温湿調整手段を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の床体荷重試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−85643(P2009−85643A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252847(P2007−252847)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(390007308)本田工業株式会社 (5)
【出願人】(500370702)株式会社マルイ (11)
【Fターム(参考)】