説明

床暖房仕上げ材用の固定部材

【課題】誤って循環パイプを打ち抜いてしまった場合にはこれを施工直後に確実に知ることができ、しかもこのために特別な施工を要することも、コスト高になることもない床暖房仕上げ材用の固定部材を提供する。
【解決手段】熱媒通過用の循環パイプを配管してある放熱体上に床暖房仕上げ材を積層固定するための固定部材7である。この固定部材7は、床暖房仕上げ材側から放熱体側に向けて打ち込まれる表面平滑釘4から成る部材である。そして、表面平滑釘4の先端4a側から基端4b側に一直線状に溝部5を凹設し、誤って循環パイプを打ち抜いた場合にはこの溝部5を通じて気密性を失わせるようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環パイプを配管してある放熱体上に床暖房仕上げ材を積層固定するための固定部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
循環パイプ1を配管してある放熱体2上に床暖房仕上げ材3を積層固定する工法においては、釘等の固定部材7や接着剤を用いることが一般的である。
【0003】
積層固定用に用いられる固定部材7としては従来から図3に示すように多種多様なものがある。このうち図3(a)に示す固定部材7は、釘表面に螺旋状のねじ山8が形成してあるスクリューネイルであって、手作業又は電動釘打機等を用いて床暖房仕上げ材3側から放熱体2側に向けて打ち込むものであるが、近年にあっては図3(b)、(c)に示すような表面平滑釘4から成る固定部材7を用い、釘打機によりこの固定部材7を床暖房仕上げ材3側から該放熱体2側に向けて打ち込んでいく方法が一般的になっている。なお、ここでの表面平滑釘4とは、ねじ山等が形成されていない平滑な表面を有する釘部材であり、図3(b)に示すものはフィニッシュネイル、図3(c)に示すものはステイプルである。
【0004】
上記のような表面平滑釘4から成る固定部材7にあっては、図4に示すように放熱体2中に配してある小根太9部分を打ち抜くように床暖房仕上げ材3側から打ち込むことが通常であるが、図5に示すように施工者が目視を誤って放熱体2中の循環パイプ1を打ち抜いてしまった場合には、施工直後の気密性又は水密性確認によってもこれに気付き難いといった問題がある。これは、循環パイプ1自体に伸縮性があるために、短期的には表面平滑釘4と循環パイプ1との間の密閉性が確保されてしまうからである。しかし、長期的には表面平滑釘4が酸化される等の経年変化が生じ、これにより突然の熱媒漏れに至って問題となるのである。
【0005】
上記問題に対して、放熱体2と床暖房仕上げ材3との間に導電性シートを積層させておき、該導電性シートの導通状態を検出することで循環パイプ1からの熱媒漏れを発見しようとする方法も提案されている(特許文献1参照)。しかしこの方法にあっては導電性シートや検出回路を設ける必要があるので、施工が面倒であるとともにコスト高となって都合が悪い。
【特許文献1】特開平5−180723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、誤って循環パイプを打ち抜いてしまった場合にはこれを施工直後に確実に知ることができ、しかもそのために特別な施工を要することも、コスト高になることもない床暖房仕上げ材用の固定部材を提供することを、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、熱媒通過用の循環パイプ1を配管してある放熱体2上に床暖房仕上げ材3を積層固定するために該床暖房仕上げ材3から該放熱体2に向けて打ち込まれる表面平滑釘4から成る、床暖房仕上げ材3用の固定部材7において、該表面平滑釘4の先端4a側から基端4b側に一直線状に溝部5を凹設してあることを特徴としたものとする。
【0008】
上記構成から成る固定部材7にあっては、表面平滑釘4によって放熱体2中の循環パイプ1を打ち抜いてしまった場合には、この循環パイプ1自体に伸縮性があったとしても表面平滑釘4に凹設してある溝部5によって該循環パイプ1の気密性や水密性を失わせることができる。即ち、施工直後に循環パイプ1に空気や熱媒(水等)を注入するとともに該循環パイプ1内の空気圧や熱媒圧(水圧等)を監視しておけば、空気圧や熱媒圧が低下することによって循環パイプ1が表面平滑釘4で打ち抜かれていることを確実に知ることができるのである。しかもこの固定部材7は、溝部5を備えていない従来のものと同様の施工方法で床暖房仕上げ材3を積層固定することができるので、特別な施工方法が必要になることもなく、またコスト高を招くこともない。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、誤って循環パイプを打ち抜いてしまった場合にはこれを施工直後に確実に知ることができ、しかもそのために特別な施工を要することも、コスト高になることもないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1には、本発明の実施形態における一例の固定部材7を示している。この固定部材7は図3(b)、図4等に示した従来のものと同様に、熱媒の通過する循環パイプ1を蛇行した状態で配管してある放熱体2上に床暖房仕上げ材3を積層固定するために用いる、表面平滑釘4から成るフィニッシュネイルである。なお本例にあっては上記熱媒は水であり、上記放熱体2は温水マットである。
【0011】
上記表面平滑釘4にあっては、その先鋭形状を成す先端4a側から基端4b側に向けて一直線状に溝部5を形成してある。この溝部5は、図1(c)に示すように表面平滑釘4の表面側から断面矩形状に凹設したものであるが、この断面形状には限定されず、例えば図1(d)のような断面V字形状や図1(e)のような断面U字形状であってもよいし、図1(f)のように溝内の幅が開口幅よりも幅広となるような断面形状であってもよい。また図示例では溝部5を一本だけ形成しているが、複数本の溝部5を所定の隙間を介して平行に形成してあっても構わない。更に、溝部5は必ずしも先端4aから基端4bにかけての全部に設ける必要はなく、図1(b)に示すように、少なくとも循環パイプ1に貫通する箇所において先端4a側から基端4b側に一直線状に溝部5が形成してあればよい。
【0012】
上記表面平滑釘4から成る一例の固定部材7を用い、図4に示したように釘打機(図示せず)によって床暖房仕上げ材3側から該放熱体2側に向けて表面平滑釘4の先端4a側を一直線状に打ち込むことで、放熱体2上に床暖房仕上げ材3を積層固定することができる。
【0013】
そして上記表面平滑釘4により、図5に示したように放熱体2中の循環パイプ1部分を打ち抜いてしまった場合には、施工直後の気密性又は水密性確認によってこの打ち抜きに確実に気付くことができる。つまり、床暖房仕上げ材3を積層固定した後に、循環パイプ1に空気や水を注入するとともに該循環パイプ1内の空気圧や水圧を監視しておけば、この空気圧や水圧が低下することによって、循環パイプ1が表面平滑釘4で打ち抜かれていることに確実に気付くものである。これは上記溝部5が、伸縮性を有する循環パイプ1と表面平滑釘4との間の密閉性を失わせるような形状及び深さに設けてあって、循環パイプ1内に注入された空気や水が上記一直線状の溝部5を通じて外部に漏出されるからである。
【0014】
なお、溝部5は表面平滑釘4の先端4a側から基端4b側へと同一断面形状で一直線状に形成してあるので、釘打機によりこの表面平滑釘4を一直線状に打ち込む際にも上記溝部5が邪魔になるようなことはなく、釘打ち作業は円滑に行われる。
【0015】
次に、本発明の実施形態における他例の固定部材7について説明するが、一例と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0016】
他例の固定部材7は図2に示すようなものであって、一対の表面平滑釘4の基端4b側を棒状の押え部6でコ字状に繋げて成るステイプルである。各表面平滑釘4には一例と同様の溝部5を凹設してある。上記一対の表面平滑釘4から成る他例の固定部材7を用い、これを釘打機によって床暖房仕上げ材3側から該放熱体2側に向けて打ち込むことで、床暖房仕上げ材3を積層固定することができる。なお、本例にあっても溝部5は図2(a)に示すように表面平滑釘4部分の先端4aから基端4bにかけての全部に形成してあってもよいし、図2(b)に示すように表面平滑釘4部分の循環パイプ1に貫通する箇所にだけ形成してあってもよい。また、図2(c)に示すように両側の表面平滑釘4の溝部5同士を押え部6に一直線状に形成してある溝部5で連通させてあってもよい。
【0017】
そして上記溝部5を有する一対の表面平滑釘4の少なくとも一方が放熱体2中の循環パイプ1を打ち抜いてしまった場合に、施工直後の気密性又は水密性確認によってこの打ち抜きに確実に気付くことが可能になっていることは、一例と同様である。
【0018】
上記各例にあっては表面平滑釘4から成るフィニッシュネイルやステイプルに溝部5を形成したものについて説明してきたが、実施の形態はこれに限定されるものではない。即ち、一つ又は複数の表面平滑釘4で形成される固定部材7であれば、該表面平滑釘4部分に同様の溝部5を凹設して同様の効果を得ることができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における一例の固定部材を示しており、(a)は概略正面図、(b)は溝を短く形成した場合の概略正面図、(c)は概略断面図、(d)は別の溝形状とした場合の概略断面図、(e)は更に別の溝形状とした場合の概略断面図、(f)はまた更に別の溝形状とした場合の概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態における他例の固定部材を示す説明図であり、(a)は溝を先端から基端まで形成した場合、(b)は溝を短く形成した場合、(c)は左右の溝を連通させた場合である。
【図3】従来の固定部材を示す概略正面図であり、(a)はスクリューネイル、(b)はフィニッシュネイル、(c)はステイプルである。
【図4】通常施工状態を示す説明用断面図である。
【図5】誤った施工状態を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 循環パイプ
2 放熱体
3 床暖房仕上げ材
4 表面平滑釘
4a 先端
4b 基端
5 溝部
7 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒通過用の循環パイプを配管してある放熱体上に床暖房仕上げ材を積層固定するために該床暖房仕上げ材側から該放熱体側に向けて打ち込まれる表面平滑釘から成る床暖房仕上げ材用の固定部材において、該表面平滑釘の先端側から基端側に一直線状に溝部を凹設してあることを特徴とする床暖房仕上げ材用の固定部材。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−263405(P2007−263405A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86048(P2006−86048)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】