説明

床暖房装置

【課題】簡便かつ正確、確実に施工可能な床暖房装置を提供し、たとえば、床暖房装置を導入するユーザが容易に施工できる程度に簡便な構成のものとすること。
【解決手段】加熱用長尺体11が装備された複数の床暖房パネル1と、その床暖房パネル1の上部に貼着固定される状態で並設される複数の床仕上材2とを備えた床暖房装置であって、隣接配置される床暖房パネル1及び床仕上材2のうち一方の部材どうしの対向する端面に設けられ、床暖房パネル1及び床仕上材2どうしの厚み方向の相対移動を規制するサネ接続部Bと、隣接配置される床暖房パネル1及び床仕上材2のうち他方の部材どうしの対向する端面に設けられ、床暖房パネル1及び床仕上材2どうしの水平方向の相対移動を規制する嵌合接続部Aと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱用長尺体が装備された複数の床暖房パネルと、その床暖房パネルの上部に接着剤等にて貼着される状態で並設される複数の床仕上材とを備えた床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、床暖房装置は、加熱用長尺体が装備された床暖房パネルを床下地材上に敷設し、さらに、そのように敷設した床暖房パネルの上部に、木質材等にて形成された床仕上材を接着剤等にて貼着する状態で並設するようにしてある。
【0003】
このような形態で床暖房装置を施工する場合、一般的には、床暖房パネルを床下地材に固定するのにクギや木ネジで固定する。また、床仕上材についても、固定が不十分であると、床仕上材どうしを並設する接続部分が浮き上がり易くなるなどの不都合が生じる場合がある。そこで、このような不都合を防止するために、確実な連結固定を行おうとすると、接着剤やクギによる固定作業が必要になるという実情がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−057200号公報(図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような施工形態を採る場合、施工作業に熟練を要し、一般ユーザが正確かつ見栄えよく施工するのが困難であるため、このような不都合を解消する床暖房装置が望まれている。
【0006】
したがって、本発明は上記実状に鑑み、簡便かつ正確、確実に施工可能な床暖房装置を提供し、たとえば、床暖房装置を導入するユーザが容易に施工できる程度に簡便な構成のものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の床暖房装置の特徴構成は、
加熱用長尺体が装備された複数の床暖房パネルと、その床暖房パネルの上部に貼着固定される状態で並設される複数の床仕上材とを備えた床暖房装置であって、
隣接配置される前記床暖房パネル及び前記床仕上材のうち一方の部材どうしの対向する端面に設けられ、前記床暖房パネル及び前記床仕上材どうしの厚み方向の相対移動を規制するサネ接続部と、
隣接配置される前記床暖房パネル及び前記床仕上材のうち他方の部材どうしの対向する端面に設けられ、前記床暖房パネル及び前記床仕上材どうしの水平方向の相対移動を規制する嵌合接続部と、を具備する点にある。
【0008】
〔作用効果1〕
上記構造では、隣接配置される前記床暖房パネル及び前記床仕上材のうち一方の部材が床暖房装置の厚み方向(上下方向)の移動をサネ接続部で規制し、他方の部材で水平方向の移動を嵌合接続部によって規制する。
【0009】
上記構成を具体例をあげて説明すると、
隣接配置される床仕上材の端面にサネ接続部を設けるとともに、隣接配置される加熱用長尺体が装備された床暖房パネルの端面に嵌合接続部を設けて、床暖房パネルの上部に前記床仕上材が貼着固定された状態で、前記サネ接続部が、床仕上材の厚み方向の相対移動を規制するとともに、前記嵌合接続部が、前記床暖房パネルどうしの水平方向の相対移動を規制する構成とすることができる。以下これを第一形態と呼ぶ。
【0010】
また、逆に、前記床暖房パネルの端面に前記サネ接続部を設けるとともに、前記床仕上材の端面に前記嵌合接続部を設けて、同様に構成することもできる。以下これを第二形態と呼ぶ。
【0011】
すなわち、このような構成にしてあると、前記床暖房装置は、前記床暖房パネルと前記床仕上材とが積層構造となり、前記第一形態によると、前記床暖房パネルどうしが水平移動規制され、前記床仕上材どうしが、厚み方向に移動規制されるとともに、前記床暖房パネルと前記床仕上材とが貼着固定されているから、前記床暖房装置が全体として、水平方向にも厚み方向にも位置ずれ不可に一体化されることになる。逆に第二形態によると、前記床仕上材どうしが水平移動規制され、前記床暖房パネルどうしが、厚み方向に移動規制され、同様に、前記床暖房装置が全体として、水平方向にも厚み方向にも位置ずれ不可に一体化される。これらの形態によると、いずれであっても、前記床暖房パネルと前記床仕上材とで、前記床暖房パネルの水平方向及び厚み方向の位置ずれ防止機能を分担して発揮する。
【0012】
このような床暖房パネルの構造によると、前記床仕上材と前記床暖房パネルとを一体として取り扱うことができるから、なお一層簡単に一体化した構成を組みあげることができ、利便性が高い。
【0013】
したがって、前記床暖房装置の構成を極めて簡便な構成としつつ、確実に施工できるようにすることができるので、床暖房装置を導入するユーザが容易に施工することができるようになった。
【0014】
なお、上記サネ接続部の構造は、いわゆる本サネ構造の他、いわゆるあいじゃくり構造であっても同様の効果を発揮する。
【0015】
〔構成2〕
また、上記構成において、前記床仕上材の端面に、前記サネ接続部を設けるとともに、前記床暖房パネルの端面に、前記嵌合接続部を設けてあることが好ましい。
すなわち、先に述べた構成のうち第一形態とすることが好ましい。
【0016】
〔作用効果2〕
上記構成によると、上面側の前記床仕上材の端面どうしの間に前記サネ接続部を設けてあるから、床仕上材に汎用されている構造がそのまま適用でき、かつ、前記床暖房パネルに対して前記嵌合接続部を導入しても、大幅に加工が困難になるわけではないから、前記第二形態を採用する場合に比べて、より簡便な構成を採用できる。また、前記床仕上材と前記床暖房パネルとを一体として取り扱い、前記床暖房パネルどうしを傾斜姿勢にして前記嵌合接続部を接合しつつ、前記床仕上材の前記サネ接続部を接続する作業性を行う場合に、前記サネ接続部が上側にあると、前記サネ接続部をガイドにしながら、前記嵌合接続部の接続作業が行えるから、前記第二形態よりも第一形態とするほうが作業性を高くすることができる。
【0017】
〔構成3〕
また、前記サネ接続部が、前記床仕上材の前記対向する端面に、上側あいじゃくりサネ部と下側あいじゃくりサネ部とに振りわけて形成されるとともに、前記上側あいじゃくりサネ部とその下方の床暖房パネルとにより、前記下側あいじゃくりサネ部を狭持可能に形成してあってもよい。
【0018】
〔作用効果3〕
上記構成によると、あいじゃくり構造によってもサネ接続部を構成することができ、このような構成により、前記床暖房パネル及び前記床仕上材どうしの厚み方向の相対移動を規制することができる。ここで、単純なあいじゃくり構造を採用するだけでは、前記床仕上材どうしの厚み方向の相対移動を規制する規制力が、本サネ構造に比べて弱くなる。しかし、上側あいじゃくりサネ部と床暖房パネル上面との間に、下側あいじゃくりサネ部を狭持可能に形成することにより、上記規制力を補うことができる。
【0019】
すなわち、通常の本サネ構造では、隣接する床仕上材どうしを、一方の端面に形成された側溝部に他方の端面の厚さ内に形成された突条部を嵌め込んで接合する形態となるのに対して、上記構成においては、上側あいじゃくりサネ部と床暖房パネルとが、前記本サネ構造における前記側溝部の役割を果たし、前記下側あいじゃくりサネ部が、前記本サネ構造における、突条部の役割を果たすため、床仕上材と床暖房パネルとの積層構造が全体として本サネ構造を形成し、前記側溝部が前記突状部の厚み方向の相対移動を確実に規制することができる構造を実現できる。
【0020】
また、このような場合、本サネを形成するために必要な厚みに比べて、あいじゃくりサネを形成するために必要な厚みが小さくなることから、床暖房装置全体として薄形に形成することができるとともに、床暖房パネルから上方への熱伝達効率も高めることができる。
【0021】
〔構成4〕
また、前記嵌合接続部は、隣接する前記他方の部材どうしの対向する端面の一方に、他方の前記端面に向けて突出する嵌合突出部を設け、前記他方の端面に、前記嵌合突出部を挟み込んで係脱可能に嵌合する嵌合凹部を設けて構成してあってもよい。
【0022】
〔作用効果4〕
つまり、上記構成によると、隣接する前記他方の部材どうしの対向する端面の一方に設けられる嵌合突出部と、他方に設けられる嵌合凹部との間で、前記嵌合接続部を係脱可能に嵌合接続させることができる。この際、前記嵌合突出部と前記嵌合凹部とは、前記嵌合凹部が前記嵌合突出部を水平方向から挟み込む簡単な構造で嵌合するから、前記他方の部材どうしが端面に沿う方向で水平方向に位置ずれするのを規制し、前記床暖房装置を構成する前記他方の部材が相対移動して位置ずれするのを抑制する。なお、ここでいう端面の一方、他方はいずれの他方の部材に配置されていてもよく嵌合突出部と嵌合凹部の振りわけ方は問わない。
【0023】
〔構成5〕
また、上記構成において、前記嵌合接続部を設けた対向する端面の一方である第一端面の面内に凹部を形成するとともに、前記凹部内に前記嵌合突出部及び前記嵌合凹部の一方を設け、前記対向する端面の他方である第二端面に前記嵌合突出部及び前記嵌合凹部の他方を設け、
前記嵌合突出部と前記嵌合凹部との嵌合状態で、前記第一端面と第二端面とが当接または近接するように形成されていてもよい。
【0024】
〔作用効果5〕
上記構成によると、前記嵌合突出部と前記嵌合凹部を嵌合させた場合、前記第一端面と第二端面とが当接または近接するから、前記第一、第二端面の端部位置を目安に位置合わせを容易にすることができるという利点も生じる。
【0025】
〔構成6〕
前記嵌合凹部は板バネ体から形成されていてもよい。
【0026】
〔作用効果6〕
前記嵌合凹部を形成する部材は、嵌合操作性の観点からは、板ばね体で形成することにより、前記嵌合凹部内に前記嵌合突出部を押し込み、引き抜く操作で簡便に着脱可能にするとともに、抜け止め効果を発揮させることができる。
また、前記嵌合凹部が板バネ体であると、嵌合凹部が嵌合突出部を挟み込みつつ嵌合姿勢に引きよせるよう作業をすすめられるので作業性が高く、かつ、嵌合接続部の抜け止めの機能も果たし易い。
【0027】
このような板ばね体としては、金属バネ材や、樹脂材があげられる。
【0028】
〔構成7〕
前記嵌合接続部がローラー部と幅太部を設けた差込片とからなるローラーキャッチで構成されていてもよい。
【0029】
〔作用効果7〕
前記嵌合接続部をローラー部と幅太部を設けた差込片とからなるローラーキャッチから構成しておくと、ローラーキャッチのローラー部が嵌合凹部を成すとともに、幅太部を設けた差込片が嵌合突出部を成すので、嵌合接続部の着脱操作を簡便な構成で行え、かつ、抜け止め効果を発揮させることができる。また、ローラーキャッチのローラー部は、差込片の幅太部をローラー部が乗り越える位置まで差し込むと、前記嵌合凹部を板バネ体から構成した場合と同様に、ローラー部が差込片を挟み込みつつ嵌合姿勢に引きよせるよう作業をすすめられるので作業性が高く、かつ、嵌合接続部の抜け止めの機能も果たし易い。
【0030】
〔構成8〕
前記加熱用長尺体が、可撓性材料からなり、隣接する前記床暖房パネル間を横断する形態で配備されるとともに、前記隣接する床暖房パネルの端面に沿う直線部分を備える形態であることが望ましい。
【0031】
〔作用効果8〕
前記加熱用長尺体が可撓性材料からなり、隣接する前記床暖房パネル間を横断する形態で配備されると、前記床暖房パネルどうしを山谷交互に折り畳むように積層して、一体のものとして取り扱うことができる。
【0032】
ここで、前記隣接する床暖房パネル間を斜めに横断する加熱用長尺体は、前記隣接する床暖房パネルにおける端面に沿う直線部分を備えるから、前記床暖房パネルどうしを交互に折り畳んだときに、前記加熱用長尺体における床暖房パネルにおける端面に沿う直線部分が全体的に捩れる状態となる。
【0033】
また、前記隣接する床暖房パネルどうしを、その端面に沿う前記加熱用長尺体の直線部分を介して、接続しつつ相互に離間した状態とすることができる。そのため、床暖房パネルを山谷交互に折り畳みやすくなるとともに、前記床暖房パネルを敷設施工する場合に、嵌合接続部の嵌合のための余裕代を確保し易いものとなる。また、前記床暖房パネルを前記離間状態から近接させつつ接続作業を行う際に、前記直線部分が、嵌合接続部を位置合わせする際のガイドとなる。よって、床暖房パネルの接合のための作業が行い易いものとなる。
【0034】
したがって、パネル形成体を山谷交互に折り畳む際の熱媒流通管の折れ曲がりを一段と抑制するようにする上で好適な手段を提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
したがって、簡便かつ正確、確実に施工可能で、熟練を要さず簡単操作で施工可能な、簡単な構成の床暖房装置を提供することができるようになり、床暖房装置を導入するユーザが容易に施工できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の床暖房装置の平面図である。
【図2】パネル成形体の斜視図である
【図3】嵌合接続部の作用説明斜視図である。
【図4】嵌合接続部の作用説明横断平面図である。
【図5】嵌合接続部の作用説明縦断側面図である。
【図6】本発明の床暖房装置の施工状態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の床暖房装置を説明する。なお、以下に好適な実施形態を記すが、これら実施形態はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0038】
〔床暖房装置〕
図1、図6に示すように、床暖房装置Hは、加熱用長尺体としての熱媒流通管11が装備され且つ表面にシート状の均熱体12が止着された床暖房パネル1と、床暖房パネル1の上部に接着剤等にて貼着される状態で並設される複数の床仕上材2とを備えて構成してあるパネル成形体Pからなり、パネル成形体Pの複数を並設して、互いに嵌合接続して敷設可能に構成してある。ここで、前記床暖房装置Hは、室内のフローリング等の床下地材Fに敷設された状態で用いられ、たとえば外形形状が矩形となるように前記床仕上材2を上面として水平方向に並設される。また、並設されたパネル成形体Pの周辺には、周辺パネル固定部材P2が配設され、前記床下地材Fと前記床仕上材2の上面との間の段差をなだらかに接続するとともに、前記パネル成形体Pの位置決め固定を行うように構成する(図6(b)参照,図6(a)におけるVIb−VIb断面)。
【0039】
前記熱媒流通管11は、ヘッダ3を介して前記周辺パネル固定部材P2とともに床下地材Fに固定される熱媒供給装置4に接続されてダミーパネル41の挿通孔に通した温水供給管がヘッダ3に連通するように接続され、前記パネル成形体Pにそれぞれ設けられた熱媒流通管11どうしが全体として、熱源機等の熱媒供給装置4から熱媒の供給を受けて、前記均熱体12、床仕上材2を介して室内に放熱可能な大きな一本の熱媒流通路を形成するように構成してある。
【0040】
〔床暖房パネル〕
図1、図2に示すように、前記パネル成形体Pは、床暖房パネル1上に、床仕上材2を貼着してなり、前記床暖房パネル1は、熱伝導率が低く軽量の発泡ポリスチレン等の断熱パネル体13の上面に熱媒流通管11を敷設するための配設パターンに沿った溝部11aを形成するとともに、前記溝部11aに銅管、可撓性の架橋ポリエチレン、ポリブテン等からなる樹脂製の熱媒流通管11が嵌入固定される。また、前記断熱パネル体13の周部には、木質の補強枠14が設けられている。また、前記断熱パネル体13の上面には、アルミシート等からなる前記均熱体12が止着されている。これにより、前記熱媒流通管11に供給された、温水等の熱媒から伝達される熱は、前記均熱体12に沿って前記床暖房パネル1の表面側全面に伝達され、上方空間を均等に加熱可能に構成される。
【0041】
なお、前記熱媒流通管11は、複数の床暖房パネル1にわたって装備されるとともに、前記熱媒流通管11は、隣接する床暖房パネル1間を斜めに横断する形態で配備されている。また、熱媒流通管11が隣接する床暖房パネル1間を斜めに横断する形態が、前記隣接する床暖房パネル1における端面に沿う直線部分11bを備え、かつ、その直線部分11bの両端より湾曲する状態で伸びる一対の湾曲状部分11cを備える。
【0042】
図3〜5に示すように、前記床暖房パネル1の一つの端面(第一端面)14aには、端面どうしの間に、嵌合接続部Aを形成するための凹部15を設けてある。前記凹部15は、前記床暖房パネル1の補強枠14に、直方体形に形成されるとともに、その凹部15内に矢じり形の嵌合突出部16を形成してある。また、前記床暖房パネル1を並設したときに、互いに隣接する床暖房パネル1における他の端面(第二端面)14bには、前記嵌合突出部16に対向する位置に、板ばね材を屈曲形成してある嵌合凹部17を前記嵌合突出部16に対して密嵌自在に取り付けて設けてある。また、前記嵌合突出部16は、前記パネル成形体Pの第二端面14bに設けた嵌合凹部17を接続したときに、隣接する前記パネル成形体Pどうしの間における前記第一端面14aと第二端面14bとが接当するように形成されている。なお、前記嵌合突出部16は、パネル成形体Pの第一端面14aに複数設けてある。
【0043】
〔床仕上材〕
前記床仕上材2は、木質材にて矩形板状に形成してあり、隣接する床仕上材2どうしを、一方の端面に形成された側溝部21に他方の端面の厚さ内に形成された突条部22を嵌め込んで接合する、所謂、サネにて接合するサネ接続部Bを設けて構成してある。この床仕上材2は、接着剤等にて前記床暖房パネル1に接着一体化されている。
【0044】
〔施工方法〕
そして、図1及び図2に示すように、前記床暖房装置Hは、床暖房パネル1と前記床仕上材2とが一体化されてなるパネル成形体Pからなり、山谷交互に折り畳まれた状態から、互いに端面を突き合わせた状態で隣接する床暖房装置Hどうしが嵌合接続部Aどうし、及び、サネ接続部Bどうしがそれぞれ嵌合接続されるように展開され、一体化された床暖房装置H全体を前記周辺パネル固定部材P2を用いて位置決め固定するとともに接続された床暖房装置Hそれぞれに設けられた熱媒流通管11をヘッダ3を介して前記周辺パネル固定部材P2とともに床下地材Fに固定される熱媒供給装置4に接続されてダミーパネル41の挿通孔に通した温水供給管がヘッダ3に連通するように接続される。これらの作業は、各部材を順次嵌めこみ組み上げていくことにより行えるから、一般ユーザが簡便に行えるものとなっている。なお、前記パネル成形体Pどうしを突き合わせた際に、前記床暖房パネル1どうしは、当接するように設けられても良いが、施工作業性や、床暖房パネル1の熱膨張しろを考慮して、約1mm〜5mm程度のクリアランスを持ちつつ近接するように形成されている。
【0045】
このようにして固定された床暖房装置H間は、隣接配置される前記床仕上材2の端面どうしの間に、サネ接続部Bを設けて前記床仕上材2どうしの厚み方向の相対移動を規制するとともに、隣接配置される前記床暖房パネル1どうしの端面どうしの間に、嵌合接続部Aを設けて前記床暖房パネル1及び前記床仕上材2どうしの水平方向の相対移動を規制してあるから、全体として強固に一体化し、簡便に設置できるものでありながら、厚み方向にめくれたり、水平方向に位置ずれしたりしにくい安定した構造となる。
【0046】
〔実施形態の変形例〕
(1)上記実施形態では、床暖房パネル1どうしを嵌合接続部Aにより接続するとともに、床仕上材2どうしの接続をサネ接続部Bにより行ったが、逆でも良い。つまり、床暖房パネル1どうしをサネ接続部Bにより接続するとともに、床仕上材2どうしの接続を嵌合接続部Aにより行ってもよい。
【0047】
(2)嵌合接続部Aは、嵌合突出部16を第一端面14aの凹部15内に設け、嵌合凹部17を第二端面14bに設けたが、逆でもよい。つまり、嵌合凹部17を第一端面14aの凹部15内に設け、嵌合突出部16を第二端面14bに設けてもよい。さらにいえば、前記凹部15を設けることなく嵌合突出部16と嵌合凹部17とを設けてあってもよい。また、前記嵌合突出部16や嵌合凹部17の形状や材質についても種々変更を行うことができる。
【0048】
(3)前記嵌合接続部Aは、前記実施形態における板バネに代えて、ローラーキャッチを用いることもできる(図7参照)。
【0049】
(4)前記サネ接続部Bとしては、上記実施形態における本サネ構造に代えて、あいじゃくり構造とすることができる。
【0050】
このような構成としては、図7に示すように前記床仕上材2の端面に、一方側に上側あいじゃくりサネ部21aを設け、他方側に下側あいじゃくりサネ部22aを設けてなるサネ接続部を設け、上側あいじゃくりサネ部21aと床暖房パネル1上面との間に、下側あいじゃくりサネ部22aを狭持可能に形成することにより、全体として本サネ構造を形成し、あいじゃくり構造のサネ接続部が前記床仕上材2どうしの厚み方向の相対移動を規制する機能を補わせることができる。
【0051】
なお、図7においては、嵌合接続部Aは、第一端面14aの凹部15内に嵌合凹部17を設けるとともに第二端面14bに嵌合突出部16を設けた構成としてあり(上記変形例(2))、前記嵌合凹部17として、ローラーキャッチのローラー部、前記嵌合突出部16として、ローラーキャッチの差込片を採用している(上記変形例(3))例を図示している。このような構成により、差込片の幅太部がローラー部を乗り越える位置まで差し込むと、前記嵌合凹部17を板バネ体から構成した場合と同様に、ローラー部が差込片を挟み込みつつ嵌合姿勢に引きよせるよう作業をすすめられるので作業性が高く、かつ、嵌合接続部Aの抜け止めの機能も果たし易い。
【0052】
(5)上記実施形態では一本の熱媒流通管11がパネル成形体Pの複数にわたって装備され、床暖房装置H全体として折り畳み可能とし、施工作業性を高める構成としたが、個々のパネル成形体が個別に形成されて、各別に取り外し可能である構成とし、施工時に、各パネル成形体に設けられた熱媒供給管どうしを、それぞれのパネル成形体Pに設けられるヘッダにより一体化する構成として、床暖房装置の拡張性、配置の自由度を高める構成としてあってもよい。
【0053】
(6)前記実施形態では、前記熱媒流通管11は前記隣接する床暖房パネル1の端面に沿う直線部分11bを備える構成としたが、前記隣接する床暖房パネル1間のクリアランスが充分にある場合、単に隣接する床暖房パネル1間を斜めに横断する形態で配備されていてもよい。この場合、前記クリアランスの部分を斜めに横断する熱媒流通管部分11dを揺動させることにより、前記床暖房パネル1どうしを離間させることができるので、パネル成形体Pどうしを山谷交互に折り畳んだり、敷設施工作業を行うための余裕代を確保したりすることができる。なお、揺動可能な熱媒流通管11の部分を充分に確保するためには、図8に示すように、床暖房パネル1の端面における前記熱媒流通管11の横断箇所近傍に前記熱媒流通管11の揺動を許容する凹部18を設けてあることが好ましい。このようにしてあれば、前記熱媒流通管11は、前記凹部18をクリアランスとして床暖房パネル1間を斜めに横断する形態となり(図8(a))、前記凹部18内の前記熱媒流通管部分11dが比較的長い区間にわたって揺動変形可能になるため(図8(b))、上記余裕代が充分に確保し易い。また、前記熱媒流通管11は、パネル成形体どうしを敷設施工した後に、蛇行する姿勢で前記凹部18内に収納される形態となっていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の床暖房装置は、極めて簡便な構成で確実に施工できるので、床暖房装置を導入するユーザが容易に施工することができるようになり、床暖房装置の普及に寄与する。
【符号の説明】
【0055】
1 :床暖房パネル
11 :熱媒流通管(加熱用長尺体)
11a :溝部
12 :均熱体
13 :断熱パネル体
14 :補強枠
14a :第一端面
14b :第二端面
15 :凹部
16 :嵌合突出部
17 :嵌合凹部
2 :床仕上材
21 :側溝部
22 :突条部
3 :ヘッダ
4 :熱媒供給装置
41 :ダミーパネル
A :嵌合接続部
B :サネ接続部
F :床下地材
H :床暖房装置
P :パネル成形体
P2 :周辺パネル固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用長尺体が装備された複数の床暖房パネルと、その床暖房パネルの上部に貼着固定される状態で並設される複数の床仕上材とを備えた床暖房装置であって、
隣接配置される前記床暖房パネル及び前記床仕上材のうち一方の部材どうしの対向する端面に設けられ、前記床暖房パネル及び前記床仕上材どうしの厚み方向の相対移動を規制するサネ接続部と、
隣接配置される前記床暖房パネル及び前記床仕上材のうち他方の部材どうしの対向する端面に設けられ、前記床暖房パネル及び前記床仕上材どうしの水平方向の相対移動を規制する嵌合接続部と、を具備する床暖房装置。
【請求項2】
前記床仕上材の端面に、前記サネ接続部を設けるとともに、前記床暖房パネルの端面に、前記嵌合接続部を設けてある請求項1に記載の床暖房装置。
【請求項3】
前記サネ接続部が、前記床仕上材の前記対向する端面に、上側あいじゃくりサネ部と下側あいじゃくりサネ部とに振りわけて形成されるとともに、前記上側あいじゃくりサネ部とその下方の床暖房パネルとにより、前記下側あいじゃくりサネ部を狭持可能に形成してある請求項2に記載の床暖房装置。
【請求項4】
前記嵌合接続部は、隣接する前記他方の部材どうしの対向する端面の一方に、他方の前記端面に向けて突出する嵌合突出部を設け、前記他方の端面に、前記嵌合突出部を挟み込んで係脱可能に嵌合する嵌合凹部を設けて構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の床暖房装置。
【請求項5】
前記嵌合接続部を設けた対向する端面の一方である第一端面の面内に凹部を形成するとともに、前記凹部内に前記嵌合突出部及び前記嵌合凹部の一方を設け、前記対向する端面の他方である第二端面に前記嵌合突出部及び前記嵌合凹部の他方を設け、
前記嵌合突出部と前記嵌合凹部との嵌合状態で、前記第一端面と第二端面とが当接または近接するように形成されている請求項4に記載の床暖房装置。
【請求項6】
前記嵌合凹部は板バネ体から形成されている請求項4または5に記載の床暖房装置。
【請求項7】
前記嵌合接続部が、ローラー部と、幅太部を設けた差込片とからなるローラーキャッチで構成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の床暖房装置。
【請求項8】
前記加熱用長尺体が、可撓性材料からなり、隣接する前記床暖房パネル間を横断する形態で配備されるとともに、前記隣接する床暖房パネルの端面に沿う直線部分を備える形態である請求項1〜7のいずれか一項に記載の床暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19646(P2013−19646A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155141(P2011−155141)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】